説明

遊合形フランジを用いた配管の接続構造

【課題】配管材の接続部において、一時的に高い水圧や、一時的な曲げ応力が生じることで仮に水漏れが生じても圧力や曲げ応力が下がると、接続部の連結品質が元に回復することで接続信頼性に優れた遊合形フランジの提供を目的とする。
【解決手段】配管接続に用いる遊合形フランジであって、接続部に生じた一時的な異常液圧や異常曲げ応力に対して、回復機能を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つば出し管の連結に用いる遊合形フランジ及びその連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配管工事の分野においては、つば出し管同士の接続にいわゆるルーズフランジとも称される遊合形フランジが公知である。
従来の遊合形フランジは一般的に金属製である。
しかし、金属製の遊合形フランジは、接続部の水圧試験、引張試験、曲げ試験及び冷温水繰返し試験等の各種接続性能試験を実施した場合に、一旦、水漏れやエアー漏れが発生すると、そのまま破壊故障モードになる。
これに対して、配管の分野にあって地震等の一時的な振動や曲げ応力に対して接続部に漏れが生じた場合にも自ら回復機能を有していることは非常に重要な要素となる。
一方、ジシクロペンタジエン樹脂は登録商標ペンタム(日本ゼオン)として市販され、機械的強度が高く成形性に優れることから、鉄板、鋳物あるいは繊維強化プラスチックの代替材料として普及している。
例えば、特許文献1にはジシクロペンタジエン樹脂を排水桝に適用した例を示す。
しかし、これまでに商品化されたものは、強度が高いことを念頭におかれたものばかりである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−8484公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、配管材の接続部において、一時的に高い水圧や、一時的な曲げ応力が生じることで仮に水漏れが生じても圧力や曲げ応力が下がると、接続部の連結品質が元に回復することで接続信頼性に優れた遊合形フランジの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る遊合形フランジは、配管接続に用いる遊合形フランジであって、接続部に生じた一時的な異常液圧や異常曲げ応力に対して、回復機能を有することを特徴とする。 ここで回復機能を有する遊合フランジは、ジシクロペンタジエン樹脂製であってもよい。
よって、本発明に係る管の接続構造は、端部につば部を有する配管材同士を当該つば部にて突き合せて接続する管接続構造であって、つば部とつば部との間にシール部材を挟み込み、2つの突き合せたつば部の背面にそれぞれ回復機能を有する遊合形フランジを配設し、当該遊合形フランジ同士を複数のボルトにてボルト締結することを特徴とする。
回復機能を有するとは、異常圧力や曲げ応力が元に戻ると、フランジの水密性も元に戻る性質をいい、そのような機能を有するものであれば材質を問わないが、代表例としてジシクロペンタジエン樹脂がある。
ジシクロペンタジエン樹脂は、シクロペンタジエンの二量体モノマーを用い、RIM(Reaction Injection Moulding)法にて金型内で反応成形して得られる。
その物性値は、比重1.03〜1.23、曲げ弾性率(23℃)1.9〜3.7GPa、曲げ強さ(23℃)74〜81MPa、引張降伏強さ(23℃)43〜51MPa、熱変形温度(18.5kg/cm)108〜128℃である。
【発明の効果】
【0006】
ジシクロペンタジエン樹脂は、圧力や応力により一時的に変形しても圧力や応力が元に下がると変形も元に戻る性質があり、このような性質をフランジに用いた例はこれまでにない。
これまで、樹脂でフランジを製作すると、ボルト締結後にリラクゼーションによる軸力低下が生じ、実用化が困難とされていた。
しかし、ジシクロペンタジエン樹脂は軸力低下が少ないことが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る遊合形フランジの例及び接続構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る遊合形フランジ10を用いた配管接続例を図1に示す。
つば部1aを有する管1をつば部同士がその間にガスケット等のシール部材2を挟み込むようにして突き合せる。
つば部1aの背面にはドーナツ円盤状の遊合形フランジ10をそれぞれ配設する。
遊合形フランジ10は、ジシクロペンタジエン樹脂製であり、複数のボルト挿通孔11を有する。
一対の遊合形フランジ10,10は、ボルト20、ナット21により締結される。
次に接続部の品質試験方法及びその結果を説明する。
【0009】
<水圧試験方法>
管継手を接合した状態で最高使用圧力2.0MPaには、3.5MPa水圧を加えて2分間保持し、漏れや破壊その他の異常があってはならない「SAS363 6.4水圧試験準拠」。
ジシクロペンタジエン樹脂を用いて孔径100mm用(外径114.3mm,厚み4.5mm、8穴)フランジ(以下100Aという)を製作し、上記に基づいて水圧試験を実施したところ、3.5MPaの水圧では全く問題がなく、7.0MPaまで上昇させると、水漏れが発生した。
そこで、水圧を4.0MPaまで下げると水漏れが止まり、再度水圧を上昇させると、前回と同じ7.0MPaにて水漏れが発生した。
このような水圧上昇及び下降の試験を10回繰返し試験を行った結果、水圧を下げると耐圧品質が回復することが明らかになった。
【0010】
<引張試験方法>
管継手を接合した状態で空気圧0.2MPaを注入し、2.0mm/minの引張条件で引張りを行い、引抜き阻止力が既定値以下で漏れがあってはならない「SAS363 635引張試験準拠」。
100Aフランジの規定値は、39.7kNに対して実測値は約2倍の値を示した。
【0011】
<曲げ試験方法>
正常に組み立てられたサンプルに空気が残らない様に水を満たし、最高使用圧力の2.0MPaの水圧力を加えた状態で試料の両端を(中央のフランジから両側800mm)支持し中央に徐々に荷重を加え、漏れが発生した時点での評価を行う。
100Aのフランジの規定値は4.9kNであるのに対して、漏れ荷重11.7kNであった。
その時の漏れ角度2.6度であった。
その後に中央の荷重を下げると水漏れが止まり、再び荷重を加えると同じ11.7kNで漏れ始めた。
なお、荷重の上昇、下降を数回繰返した結果、曲げ試験においても本発明に係るフランジは回復することが明らかになった。
【0012】
<冷温水繰返し試験方法>
適当な長さの管継手を接合した状態で、管内に約80℃以上の温水20℃以下の水を30分間、交互に1000回流した後、常温で最高使用2.0MPaの水圧を1分間加えたとき、漏れその他の異状があってはならない「冷温水繰返し試験準拠」。
100Aのフランジの冷温水繰返し試験後の水圧規定値は1000回繰返し、10000回繰返しにおいて3.0MPaであるのに対して、水圧4.0MPaで漏れが発生せず、性能低下が見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管接続に用いる遊合形フランジであって、
接続部に生じた一時的な異常液圧や異常曲げ応力に対して、回復機能を有することを特徴とする遊合形フランジ。
【請求項2】
ジシクロペンタジエン樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の遊合形フランジ。
【請求項3】
端部につば部を有する配管材同士を当該つば部にて突き合せて接続する管接続構造であって、
つば部とつば部との間にシール部材を挟み込み、2つの突き合せたつば部の背面にそれぞれ回復機能を有する遊合形フランジを配設し、当該遊合形フランジ同士を複数のボルトにてボルト締結することを特徴とする管の接続構造。

【図1】
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