説明

遊技場用管理システム

【課題】不正を行うことなく遊技することで収支が一定値以上となっている遊技者を排除しつつ、不正を行っている可能性の高い遊技者を効果的に特定する。
【解決手段】管理装置5は、例えば収支が予め設定されている基準収支を超えたことで異常を検出した回数や、初期投資が予め設定されている基準投資額を超えなかったことで異常を検出した回数を異常検出数として管理し、その異常検出数が基準検出数を超えた遊技者を注意遊技者として特定する。遊技者の遊技情報の累計値が高い場合であっても、遊技場の許容範囲に収まる遊技者を無用に注意遊技者と特定することなく、遊技場の許容範囲に収まらない遊技者だけを注意遊技者として特定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技者毎の遊技状況を管理することで、不正を行っている可能性の高い遊技者を特定する遊技場用管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機やスロットマシン等の遊技機が設置される遊技場を管理する場合、遊技者毎にどのような遊技状況にあるのかを管理することは重要である。例えば特許文献1では、カメラにて撮像することで遊技者を特定し、遊技者単位での収支を管理することが提案されている。このように遊技者単位で収支を管理すれば、例えば収支が一定値以上である遊技者に注目することで、何らかの不正行為を行っているのではないかとして、監視レベルを高め、不正を検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−033573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したように単純に収支が一定値以上である遊技者に対して一律に監視レベルを高めてしまうと、例えば1日だけ大勝ちしそれ以外では小額だけ負けている場合や、毎日大勝ちしていないが少しずつ勝っている場合に、累計の収支が一定値以上となることで不正が検出される虞があり、不正行為を行わずに遊技をしている遊技者に対しても無用に監視レベルを上げ、遊技者に不愉快な思いをさせることになり、その結果、遊技場の評判が落ち、稼働が落ち込む虞も生ずる。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、不正を行うことなく遊技することで収支が一定値以上となっている遊技者を排除しつつ、不正を行っている可能性の高い遊技者を効果的に特定し得る遊技場用管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明は、遊技者の識別情報を取得し、遊技者を特定する遊技者特定手段と、遊技者が遊技する遊技機側から出力される遊技信号として、遊技者の収支、又は遊技者が獲得した遊技価値である獲得価値を特定可能な収支信号を取込むことで、少なくとも遊技者の収支、又は獲得価値を含む複数種類の遊技情報を特定する遊技情報特定手段と、前記遊技情報特定手段により特定される遊技情報であって、予め設定される単位期間において、前記遊技者特定手段により遊技者が特定された期間における遊技情報を、その単位期間における遊技情報である単位情報として遊技者毎に特定する単位情報特定手段と、前記単位情報と、当該単位情報に対して予め設定される基準値である基準単位情報とを比較することにより、その単位情報を異常である異常単位情報として特定する異常情報特定手段と、前記単位情報が前記異常単位情報として特定された回数である異常検出数を、遊技者単位で遊技情報の種類にて区分けして管理する異常情報管理手段と、同一種類の遊技情報に対して管理される前記異常検出数が、当該異常検出数に対して予め設定される基準値である基準検出数を超えた遊技者を、注意遊技者として特定する注意遊技者特定手段と、注意遊技者である旨を報知出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記異常情報管理手段は、最新の遊技者の検出、又は最新の遊技が検出された前記単位期間である最新単位期間を起点として、予め設定される参照設定値分遡った期間である参照期間における前記単位情報を対象として前記異常検出数を管理し、前記参照期間は、遊技者の検出、又は遊技が検出された前記単位期間を対象として遡った期間であり、遊技者単位で特定されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、前記遊技情報特定手段は、前記遊技信号として遊技者の投資額を特定可能な売上信号、及び予め設定される特定の大当たりが発生したことを特定可能な特定大当たり信号を取込み、前記複数種類の遊技情報の1種類として前記特定大当たりが発生するまでの投資金額である初期投資額を特定可能であり、前記出力手段は、前記異常検出数が前記基準検出数を超えた遊技情報の種類数に応じて、前記注意遊技者である旨の出力態様を変化させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載した発明は、前記遊技者特定手段は、遊技者を撮像することにより遊技者の識別情報を取得して遊技者を特定する第1の遊技者特定、及び遊技者により提示される識別情報を受付けることにより遊技者の識別情報を取得して遊技者を特定する第2の遊技者特定を実行可能であり、前記異常情報特定手段は、前記基準単位情報と比較することにより前記異常単位情報として特定され得る前記単位情報が特定された場合であっても、当該単位情報に対応する単位期間において前記第2の遊技者特定により遊技者が特定されていれば、その単位情報を前記異常単位情報として特定しないを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載した発明は、前記注意遊技者特定手段は、前記異常検出数が前記基準検出数に達した遊技情報の種類が複数ある前記注意遊技者であって、その異常検出数の差が、当該異常検出数の差に対して予め設定される基準値である略同一基準差数未満となる注意遊技者を重複注意遊技者として特定し、前記出力手段は、前記重複注意遊技者である旨を出力する場合に、前記重複注意遊技者ではない前記注意遊技者の出力態様とは異なる出力態様にて出力することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載した発明は、前記注意遊技者特定手段は、前記注意遊技者において、同一単位期間にて複数種類の単位情報が異常単位情報として特定された場合に、その単位期間を重複異常単位期間として特定し、前記出力手段は、前記注意遊技者である旨を出力する場合に、前記重複単位期間が特定されている場合には、当該重複単位期間における単位情報を抽出して、又は識別可能に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した発明によれば、単位期間における遊技情報である単位情報が異常であると検出された回数を異常検出数として管理し、その異常検出数が基準検出数を超えた遊技者を注意遊技者として特定するようにしたので、遊技者の遊技情報の累計値が高い場合であっても、遊技場の許容範囲に収まる遊技者を無用に注意遊技者と特定することなく、遊技場の許容範囲に収まらない遊技者だけを注意遊技者として特定することができる。又、複数種類の遊技情報について各々異常検出を特定することで、遊技者が偶々同一単位期間に複数種類の遊技情報にて異常が生じさせる遊技情報を得たとしても、重複して計数することがなく異常検出数が基準検出数に達することを防止することができる。
【0013】
請求項2に記載した発明によれば、参照期間を遊技者単位で特定することで、遊技者毎の来店頻度に関わらず、参照期間を適切に特定することができる。
請求項3に記載した発明によれば、不正者が不正を行う場合には、同一単位期間に複数種類の遊技情報に異常が生ずる可能性が高い。勿論、通常の(不正を行わない)遊技者が偶々大勝ちした場合であっても同様であるが、通常の遊技者の場合はそれが度重なることが少なく、不正者はそれが度重なることが多い。更に、通常の遊技者の参照期間における遊技情報の1種類の異常検出数が基準検出数に達しても複数種類の異常検出数が基準検出数に達する可能性は低い。このような事情から、異常検出数が基準検出数を超えた遊技情報の種類数に応じて、注意遊技者である旨の出力態様を変化させることで、不正者として特定すべき否かを適切に判断し得る指標を提供することができる。
【0014】
請求項4に記載した発明によれば、不正者は本能的に自身の身分を隠したがる傾向にあり、身分を識別し得る識別情報を受付けるか否かを不正者自らが選択し得る状況では、識別情報を受付ける可能性は極めて低い。このような事情から、第2の遊技者特定によって遊技者を特定していれば、単位情報を異常単位情報として特定しないことで、自分から身分を識別し得る識別情報を提示するような遊技者は不正者ではないとして特定することができ、通常の遊技者を無用に不正者として特定する虞をなくすことができる。
【0015】
請求項5に記載した発明によれば、上記した請求項3に記載した通りに不正者が不正を行う場合には、同一単位期間に複数種類の遊技情報に異常が生ずる可能性が高い。又、不正者が不正を紛らわすために、敢えて不正を行わずに遊技することも想定し得る。即ち、複数種類の遊技情報の異常検出数が略一致していれば同一単位期間にて複数の遊技情報の異常検出が行われていると想定することができ、重複注意遊技者である旨を、重複注意遊技者ではない注意遊技者の出力態様とは異なる出力態様にて出力することで、不正を紛らわすために通常の遊技を行うような不正者を適切に特定することができる。
【0016】
請求項6に記載した発明によれば、注意遊技者である旨を、重複単位期間が特定されている場合には当該重複単位期間における単位情報を抽出して又は識別可能に出力することで、不正を紛らわすために通常の遊技を行うような不正者を適切に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を示す全体構成図
【図2】異常収支検出設定を示す図
【図3】異常収支検出設定(機種別)を示す図
【図4】遊技者情報記憶領域(遊技者ID=「00001」)を示す図
【図5】遊技者情報記憶領域(遊技者ID=「00002」)を示す図
【図6】遊技者情報記憶領域(遊技者ID=「00003」)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は遊技場用管理システムの全体構成を概略的に示している。遊技場には遊技機(パチンコ機)1に対応して貸出機2が設置されている。2台の遊技機1及び2台の貸出機2は1台の中継装置3に接続されており、中継装置3はLAN4を介して管理装置5(遊技者特定手段、遊技情報特定手段、単位情報特定手段、異常情報特定手段、異常情報管理手段、注意遊技者特定手段、出力手段に相当)に接続されている。管理装置5は、遊技場内の例えば管理室に設置されている。又、LAN4には島端計数機(図示せず)やPOS端末(図示せず)も接続されている。尚、図1では省略しているが、数100台の遊技機1が管理装置5の管理対象となる。本実施形態では上記したように遊技機としてパチンコ機を想定していることから、遊技媒体(遊技価値)としてパチンコ玉を想定している。
【0019】
遊技機1は、発射装置を構成する操作ハンドル6を有すると共に、盤面7に、普図入賞口8、第1始動口9、第2始動口10、液晶表示部11、入賞口12、大入賞口13等を有する。遊技機1は以下の動作を行う。
【0020】
(1)操作ハンドル6が操作されたことにより盤面7に発射された玉が第1始動口9又は第2始動口10に入賞(始動入賞)することに応じて大当たり抽選を行い、抽選結果に基づいて所謂特別図柄(特図)による図柄変動を液晶表示部11にて実行し、その結果に応じて大当たりを発生させる。尚、所謂保留玉の上限は各4個ずつであり、保留中に始動入賞した場合は上限まで保留し、図柄変動終了後に順次保留した図柄変動を実行する。
【0021】
(2)第1始動口9は入賞率が変動しない所謂ヘソタイプの入賞口である一方、第2始動口10は普図抽選によって入賞率が変動する所謂電チュータイプの入賞口である。
(3)大当たり抽選の当選確率(大当たり確率)は1/300であり、大当たりのうち大当たり後に確変状態(確変)となる大当たりの割合は66.6%(2/3)であり、大当たりが発生すると対応するラウンド数(R)に応じた分だけ大入賞口13を開放する。尚、1Rの上限入賞数(上限数)は8個であり、上限開放時間は30秒であり、上限数又は上限開放時間の何れかが満たされた場合に1Rを終了する。
【0022】
(4)大当たりに対応するラウンド数は5Rと16Rとがあり、その振分割合は5Rが25%であり、16Rが75%である。
(5)確変中は大当たり確率が1/30に向上すると共に、第2始動口10への入賞率が向上する時短状態(時短)になる。尚、確変は次回大当たりまで継続するため、大当たり後に通常状態(通常)となる大当たり(通常大当たり)が発生するまで継続し、通常大当たりが発生した場合は通常状態へと戻る。
【0023】
貸出機2は、CPUからなる制御部、CF(コンパクトフラッシュ(登録商標))、RAM、ROMからなる記憶部、信号を送受信するためのインターフェースからなる送受信部等を有する所謂CRサンドとして構成されており、遊技者が貨幣を投入するための貨幣投入口14、遊技情報等を表示すると共に遊技者からの操作入力を受付けるタッチパネル式の液晶表示部15、遊技機1に玉を払出す払出ノズル16、遊技者を識別可能な会員ID(遊技者ID)等が記録されている会員カード17を遊技者が投入するためのカード挿入口18、カード挿入口18に挿入されている会員カード17を排出するために遊技者が操作するカード排出ボタン19、遊技者を撮像する例えば周知のCMOSセンサやCCDセンサ等の撮像素子からなる顔認証用のカメラ20等を有する。顔認証用のカメラ20は、遊技者が当該カメラ20の存在を認識不可能なように貸出機2に内蔵されている。
【0024】
貸出機2では、遊技者が貨幣(対価)を貨幣投入口14に投入すると、投入した貨幣に応じた数の玉が払出ノズル16から遊技機1の受皿21に払出される。又、遊技者が会員カード17をカード挿入口18に挿入すると、会員カード17に記録されている会員ID等が読取装置(図示せず)により読取られ、会員カード17を所有する遊技者毎に集計された遊技データ等が液晶表示部15に表示可能となる。
【0025】
又、貸出機2では、対応する遊技機1で遊技する遊技者をカメラ20にて随時撮像して記憶し、撮像した画像と既に記憶している画像とを照合することで同一人物であるか否かを判定し、同一人物である旨を特定した場合には、それらの画像を同一の遊技者の画像として対応付け、この一連の処理を繰返して行うことで、同一遊技者を継続して撮像している期間は、同一遊技者が遊技しているとして、その期間における対応する遊技機1の遊技情報をその遊技者(画像)と対応付けて記憶する(同一遊技者の遊技情報として特定する)。尚、貸出機2がカメラ20にて撮像した画像を管理装置5へ送信することで、上記した画像を照合して同一人物であるか否かを判定する処理を管理装置5にて行うようにしても良い。又、上記した対応する遊技機1で遊技する遊技者をカメラ20にて撮像して遊技者を特定することが第1の遊技者特定であり、会員カード17に記録されている会員ID等を読取って遊技者を特定することが第2の遊技者特定である。
【0026】
遊技機1及び貸出機2からは以下の遊技信号が出力される。
「アウト信号」:使用玉を回収するアウトBOXから出力される使用玉数(使用媒体数、アウト)を特定可能な信号である。回収(使用、打込)玉10玉に対して1パルスが出力されるので、「アウト信号数×10」をアウトとして特定する。尚、遊技機1から出力される信号であっても良い。特定の大当たりが発生したことを特定可能な特定大当たり信号に対応する。
【0027】
「セーフ信号」:遊技機1から出力される払出玉数(払出媒体数、セーフ)を特定可能な信号である。遊技機1での遊技(入賞)に応じた払出玉10玉に対して1パルスが出力されるので、「セーフ信号数×10」をセーフとして特定する。尚、補給装置から出力される補給信号をセーフ信号としても良い。アウト信号と同様に、特定の大当たりが発生したことを特定可能な特定大当たり信号に対応する。
【0028】
「始動入賞信号」:遊技機1から出力される第1始動口9又は第2始動口10への入賞(始動入賞)数を特定可能な信号である。第1始動口9又は第2始動口10への入賞1回につき1パルスが出力されるので、「始動入賞信号数×1」をスタート(S、始動入賞数)として特定する。
【0029】
「図柄変動信号」:遊技機1から出力される始動入賞により変動(作動)する液晶表示部11(役物)における図柄変動(役物作動、単位遊技)を特定可能な信号である。図柄変動確定時に出力されるので、信号入力に応じて図柄変動を特定する。
【0030】
「大当たり信号」:遊技機1から出力される大当たりを特定可能な信号である。大当たり中にレベル出力される状態信号なので、大当たり信号受信中を大当たり中として特定する。特定の大当たりが発生したことを特定可能な特定大当たり信号に対応する。
【0031】
「特別状態信号」:遊技機1から出力される特別状態(甘中)を特定可能な信号である。第2始動口10の入賞率が向上する特別状態中(時短中)にレベル出力される状態信号なので、特別状態信号受信中を特別状態中として特定する。尚、大当たり確率が向上する確変中にレベル出力される状態信号(確変信号)であっても良い。又、大当たり信号と特別状態信号の何れも受信していない期間を通常状態として特定する。
【0032】
「売上信号」:貸出機2から出力される売上情報(売上玉数、売上額)を特定可能な信号である。遊技者に対する有価価値を対価とした貸出玉25玉毎に1パルスが出力されるので、「売上信号数×25」を売上玉数として特定し、売上玉数×貸単価を売上額として特定する。遊技者の収支を特定可能な収支信号、遊技者の投資額を特定可能な信号に対応する。
【0033】
中継装置3は、CPUからなる制御部、CF(コンパクトフラッシュ(登録商標))、RAM及びROM等からなる記憶部、I/Fからなる送受信部等を有し、各種信号や各種情報を送受信する(中継する)。
【0034】
管理装置5は、CPUからなる制御部、HDD、RAM、ROMからなる記憶部、信号を送受信するためのインターフェースからなる送受信部等を有し、遊技機1及び貸出機2から遊技信号を受信し、遊技者単位の遊技情報(アウト、セーフ、差玉、売上情報等)を特定して集計したり遊技状態(大当たり等)を特定したりする。ここで、管理装置5は、本発明に関連して、図2に示す異常収支検出設定を遊技場全体に対して設定可能であると共に、図3に示す異常収支検出設定(機種別)を機種単位に対して設定可能である。図2及び図3に示す異常収支検出設定の各項目の意味は以下の通りである。
【0035】
「単位期間」:不正検知を行うための単位期間である。図2では「1日」を設定し、営業日基準で設定しているが、時間的な期間だけでなく、遊技する遊技機1を変更する所謂台移動や、遊技媒体を計数したり景品交換したりする等の基準で、開始と終了を特定し、その開始から終了までを単位期間として定めても良い。
【0036】
「基準アウト」:アウトに対する単位期間を遊技者の来店として特定するための設定値である。単位期間におけるアウトがこの設定値以上となった場合に、その単位期間を遊技単位期間として特定する。
【0037】
「参照設定期間」:不正検知を行うために参照する期間である参照期間を特定するための設定値であり、単位期間単位で設定する。尚、遊技場の営業日基準ではなく、遊技者毎の遊技単位期間を基準として遊技者の最新遊技単位期間である遡り基準からこの設定値分遡り、その遡った期間を参照期間とする。
【0038】
「基準収支」:不正検知を行うための基準収支であり、遊技単位期間の収支である単位収支がこの設定値以上である場合に、その単位収支を注意収支として特定する。
「基準期間」:不正検知を行うための基準数であり、単位期間単位で設定する。参照期間における単位期間のうち単位収支が注意収支として特定された単位期間数がこの設定値以上である場合に、不正者である可能性が高い異常収支者として特定する。
【0039】
「基準T1Y」:不正検知を行うための基準T1Y(大当たり1回の出玉=大当たり中セーフ−大当たり中アウト)である。
「基準投資額」:基準T1Y以上のT1Yの大当たりを発生させるまでの売上額である初期投資に対する基準投資額であり、初期投資がこの設定値未満である場合に、その初期投資を注意投資として特定する。参照期間における単位期間のうち初期投資が注意投資として特定された単位期間数が基準期間以上である場合に、不正者である可能性が高い異常投資者として特定する。尚、参照期間が参照設定期間に達していなくとも、初期投資が注意投資として特定された単位期間数が基準期間に達した時点で異常投資者を特定する。これは異常収支者についても同様である。
【0040】
「基準平均T1Y」:参照設定期間分の遊技単位期間がある遊技者における参照期間の大当たり1回当たりの平均T1Yに対する設定値であり、平均T1Yがこの設定値以上である場合に、不正者である可能性が高い異常出玉者として特定する。
【0041】
管理装置5は、本発明に関連して、遊技者毎の単位期間毎の遊技履歴を記憶する記憶領域として図4乃至図6に示すような遊技者情報記憶領域を有する。この場合、管理装置5は、同一の遊技者を特定して図2で説明した単位期間(営業日)が同一であると判定した場合には同一レコードを更新することで遊技情報を更新し、単位期間が同一でないと判定した場合には次のレコードを作成して遊技情報を更新することで、遊技者単位の遊技情報を管理する。図4乃至図6は遊技者IDが「00001」〜「00003」の遊技履歴を例示しており、各項目の意味は以下の通りである。
【0042】
「来店日」:遊技者を検知した日(単位期間(図2で説明した「1日」))である。
「NO」:最新の来店日における情報をNO1とし、その前の来店日における情報をNO2とするように来店日毎の昇順である。
【0043】
「アウト」:遊技者が遊技していることを特定している期間(遊技期間)に特定したアウトである。尚、「アウト」の他に、遊技期間に特定したセーフである「セーフ」や、遊技期間に特定した売上額である「売上情報」等も記憶している。
【0044】
「遊技」:アウトが図2で説明した基準アウト(「10000」)に達したことで遊技単位期間と特定できれば「○」を記憶する一方、アウトが基準アウトに達しておらず遊技単位期間と特定できなければ「×」を記憶する。
【0045】
「収支」:遊技者の収支(売上金額−(売上玉+セーフ−アウト)×交換単価)である。尚、交換単価は玉を景品交換した際の1玉当たりの交換価値で3円を想定している。
「注意収支」:収支が図2で説明した基準収支(「10000円」)を超えたことで注意収支として特定できれば「○」を記憶する一方、収支が基準収支を超えていないことで注意収支として特定できなければ「×」を記憶する。
【0046】
「初期投資」:図3で説明した基準投資額にて説明した通りである。
「注意収支」:初期投資が図3で説明した基準投資額(「18000円」)を超えていないことで注意投資として特定できれば「○」を記憶する一方、初期投資が基準投資額を超えたことで注意投資として特定できなければ「×」を記憶する。
【0047】
「大当たり」:遊技期間における大当たり数である。
「累計T1Y」:遊技期間におけるT1Y(大当たり中セーフ−大当たり中アウト)の合計である。
【0048】
「平均T1Y」:大当たり1回当たりのT1Yの平均(累計T1Y÷大当たり)である。
「参照情報」:参照期間における情報である。即ち、「遊技」が「×」のレコードを除外したNO1を起点として参照設定期間に対応するレコード分だけ遡った期間の情報であり、「合計」は参照期間中の合計であり、「平均」は1日当たりの平均である。「遊技」、「注意収支」、「注意投資」は「○」の合計を示す。又、「平均T1Y」は合計又は平均における累計T1Y÷大当たりであり、大当たり1回当たりの平均である。
【0049】
「累計情報」:記憶される全てのレコードにおける「合計」と「平均」である。「参照情報」と同様に、「遊技」、「注意収支」、「注意投資」は「○」の合計を示す。又、「参照情報」と同様に、「平均T1Y」は合計又は平均における累計T1Y÷大当たりであり、大当たり1回当たりの平均である。
【0050】
ここで、図4乃至図6について説明する。
遊技者IDが「00001」の遊技者の遊技履歴である図4は、単位期間(1日)における収支はプラスになるものの基準収支(10000円)に達することなく遊技を終了しており、遊技場にとって許容し得る範囲の収支の遊技を繰返している遊技者を想定した遊技履歴である。
【0051】
遊技者IDが「00002」の遊技者の遊技履歴である図5は、「NO3」のレコードのように参照期間中に数回(1回や2回)大勝ちして参照情報の合計にて大きくプラスになっているものの、他の遊技日の多くは負けていることから遊技場にて許容し得る範囲の遊技を行っている遊技者を想定した遊技履歴である。
遊技者IDが「00003」の遊技者の遊技履歴である図6は、「NO3」のレコードのように参照期間中に負けているものの多くのレコードでは基準収支以上の収支を獲得しており、多くは不正を行っているものの、その不正を紛らわすためにわざと負けている不正者を想定した遊技履歴である。
【0052】
ここで、参照情報の「収支」に注目すると、図4乃至図6では「収支」が略同じである一方、参照情報の「注意収支」に注目すると、図4及び図5では収支が基準収支を超えた回数である「○」の合計が何れも「2」であるが、図6では収支が基準収支を超えた回数である「○」の合計が「16」であり、遊技者IDが「00003」の遊技者を異常収支者として特定することができる。
【0053】
又、参照情報の注意投資に注目すると、図4及び図5では初期投資が基準投資額を超えていない回数である「○」の合計が「8」、「3」であるが、図6では初期投資が基準投資額を超えていない回数である「○」の合計が「16」であり、遊技者IDが「00003」の遊技者を異常投資者として特定することができる。即ち、遊技者IDが「00003」の遊技者が大当たりを発生させることに対して何らかの不正を行っている可能性を想定することができる。更に、注意収支の検出回数(「16」)と注意投資の検出回数(「16」)が同数であることから、わざと負けている営業日には不正を行わないため、収支が基準収支以下であり、初期投資も基準投資額以上であるということも特定することができる。平均T1Yも同様であり、図4及び図5では平均T1Yが基準平均T1Y(900)以下であるものの、図6では平均T1Yが基準平均T1Yを大きく上回っており、出玉の多い大当たりを不正により得ていると特定することができる。
【0054】
このように、参照期間における収支が同程度であっても異常収支者を適切に特定することができる。又、異常収支者に加えて異常投資者や異常出玉者を検出対象とすることにより、異常収支者がどのような不正を行って、異常な収支を得ているのかを把握することができ、そのような遊技者に対して監視レベルを上げることで、効果的に不正を摘発することができる。尚、管理装置5は、異常収支者、異常投資者又は異常出玉者として特定した遊技者IDが「00003」の遊技者を注意遊技者として特定し、その注意遊技者として特定した参照情報等を一覧にて識別可能に表示したり印字したりする等して出力する。尚、注意遊技者として特定した参照情報等を識別可能とする方法は、反転表示したり色を区別したりすれば良い。
【0055】
以上に説明したように本実施形態によれば、管理装置5において、例えば収支が予め設定されている基準収支を超えたことで異常を検出した回数や、初期投資が予め設定されている基準投資額を超えなかったことで異常を検出した回数を異常検出数として管理し、その異常検出数が基準検出数を超えた遊技者を注意遊技者として特定するようにしたので、遊技者の遊技情報の累計値が高い場合であっても、遊技場の許容範囲に収まる遊技者を無用に注意遊技者と特定することなく、遊技場の許容範囲に収まらない遊技者だけを注意遊技者として特定することができる。
【0056】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形又は拡張することができる。
アウトが基準アウト以上である単位期間を遊技期間として不正検出の対象を限定したが、基準アウトを設定しない構成や基準アウトに達しない場合等、遊技者を検出した全ての単位期間を対象としても良い。又、アウトの代わりに収支やセーフ等を採用しても良い。
【0057】
参照情報のように期間を区切って不正検出の対象を限定したが、累計情報のように期間を区切らずに不正検出を行っても良い。又、基準数として基準となる注意収支等の回数の設定を例示したが、例えば遊技回数や来店回数に対する基準数の割合を設定することで基準数を設定し、基準数を超えたか否かを判定しても良い。又、「収支」、「注意収支」、「初期投資」、「注意投資」を各々管理対象としたが、各々一方のみを管理対象としても良い。
【0058】
注意遊技者を検出した場合に、その時点で遊技場の管理者に報知することも重要であるが、その注意遊技者の次回来店時(単位遊技期間内の最初の検知時)に遊技場の管理者に報知することがより望ましい。このようにすれば、注意遊技者が来店し、監視レベルを高めた状態で注意遊技者の遊技を監視し、何か不正を行っているようであれば、不正者として取り押さえることができる。
【0059】
図6で説明したように注意収支と注意投資という複数種類の遊技情報により注意遊技者として特定された場合に、その種類数により出力態様を代えても良い。即ち、出力時の背景を注意遊技者として特定された遊技情報の種類が単数であれば青とし、複数であれば赤としたりする等、抽出表示時の一覧を遊技情報の種類が単数と複数とで区分けして表示したりする等しても良い。同様に、複数種類の遊技情報により注意遊技者として特定され、その異常検出数が同数遊技者を区別して注意遊技者として特定しても良い。この場合、複数種類の異常検出数の差を特定し、その差が略同一基準差数未満である等、基準範囲に属している場合に区別するのが実用的である。又、複数種類の遊技情報が重複して異常検知された単位期間の遊技情報を抽出又は識別して出力しても良い。
【0060】
注意収支等の特定には誤検出が避けられないため、例えば注意遊技者の検出時に遊技者情報記憶領域を表示した際等に、注意収支等の判定を修正可能としても良い。又、遊技者の特定として撮像による人物認証を例示したが、例えば指紋認証等の生体認証や会員カード17や遊技者の所有する携帯電話機等により遊技者を特定しても良いし、複数の特定方法を採用して認証精度を高めても良い。この場合、例えば会員カード17の挿入期間を遊技期間として特定したり、指紋認証等では指紋を検知してから遊技信号により非稼働が判定されるまでの期間を遊技期間として特定したりすれば良い。
【0061】
遊技機1毎の遊技情報を対象としたが、島端に設けられる島端計数機にて遊技者を特定して遊技結果となる計数値を特定し、その計数値が基準値以上である場合に注意収支等として特定した上で注意遊技者を特定しても良い。この場合、同一の単位期間にて複数の計数があった場合には同一単位期間における計数として処理すれば良い。又、島端計数機の計数玉数と遊技機1における持玉(売上玉+セーフ−アウト)との差が基準値以上である場合に注意収支等として特定しても良い。
【0062】
不正者は本能的に自身の情報を提示したく無いと考えるため、例えば貸出機2等の端末にて会員カード17を受付けた場合等、遊技者が識別情報を提示するか否かを選択可能な識別情報により遊技者を特定した場合には、検出対象から除外するようにしても良い。
【0063】
図3で説明したように異常収支検出設定を機種別に区分けしているがスペックに基づく設定情報を機種別に設定すれば、必ずしも機種別に区分けする必要は無い。又、機種に限らず、例えば設置される島単位で設定する等、グループ単位で設定しても良い。この場合、機種設定のようにグループを特定可能な設定を行う必要が勿論ある。又、図2で説明した異常収支検出設定をグループ単位で設定しても勿論良い。
【0064】
対象となる遊技機1としては、例示したパチンコ機以外のパチンコ機やスロットマシン等、どのような遊技機を対象としても良い。又、遊技機内にて遊技媒体を循環させ、ポイントを付与することで収支が変動するような所謂封入式の遊技機やクレジット式遊技機を対象としても勿論良い。特許請求の範囲では、この場合も考慮し、玉やメダル等の遊技媒体とポイントとを包含する遊技価値という表現を採用している。
【0065】
例示した全ての遊技情報について遊技信号から直接的又は間接的に特定する等どのように特定しても良い。又、実施形態で示した数値や項目等は全て例示であり、どのような数値や項目等を採用しても良く、例示した各構成をどのように組み合わせたり、採用しなかったりしても良い。更に、管理装置5が行う情報処理の一部を中継装置3等にて行う構成としても良い。
【符号の説明】
【0066】
図面中、1は遊技機、5は管理装置(遊技者特定手段、遊技情報特定手段、単位情報特定手段、異常情報特定手段、異常情報管理手段、注意遊技者特定手段、出力手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技者の識別情報を取得し、遊技者を特定する遊技者特定手段と、
遊技者が遊技する遊技機側から出力される遊技信号として、遊技者の収支、又は遊技者が獲得した遊技価値である獲得価値を特定可能な収支信号を取込むことで、少なくとも遊技者の収支、又は獲得価値を含む複数種類の遊技情報を特定する遊技情報特定手段と、
前記遊技情報特定手段により特定される遊技情報であって、予め設定される単位期間において、前記遊技者特定手段により遊技者が特定された期間における遊技情報を、その単位期間における遊技情報である単位情報として遊技者毎に特定する単位情報特定手段と、
前記単位情報と、当該単位情報に対して予め設定される基準値である基準単位情報とを比較することにより、その単位情報を異常である異常単位情報として特定する異常情報特定手段と、
前記単位情報が前記異常単位情報として特定された回数である異常検出数を、遊技者単位で遊技情報の種類にて区分けして管理する異常情報管理手段と、
同一種類の遊技情報に対して管理される前記異常検出数が、当該異常検出数に対して予め設定される基準値である基準検出数を超えた遊技者を、注意遊技者として特定する注意遊技者特定手段と、
注意遊技者である旨を報知出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする遊技場用管理システム。
【請求項2】
前記異常情報管理手段は、最新の遊技者の検出、又は最新の遊技が検出された前記単位期間である最新単位期間を起点として、予め設定される参照設定値分遡った期間である参照期間における前記単位情報を対象として前記異常検出数を管理し、
前記参照期間は、遊技者の検出、又は遊技が検出された前記単位期間を対象として遡った期間であり、遊技者単位で特定されることを特徴とする請求項1に記載した遊技場用管理システム。
【請求項3】
前記遊技情報特定手段は、前記遊技信号として遊技者の投資額を特定可能な売上信号、及び予め設定される特定の大当たりが発生したことを特定可能な特定大当たり信号を取込み、前記複数種類の遊技情報の1種類として前記特定大当たりが発生するまでの投資金額である初期投資額を特定可能であり、
前記出力手段は、前記異常検出数が前記基準検出数を超えた遊技情報の種類数に応じて、前記注意遊技者である旨の出力態様を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載した遊技場用管理システム。
【請求項4】
前記遊技者特定手段は、遊技者を撮像することにより遊技者の識別情報を取得して遊技者を特定する第1の遊技者特定、及び遊技者により提示される識別情報を受付けることにより遊技者の識別情報を取得して遊技者を特定する第2の遊技者特定を実行可能であり、
前記異常情報特定手段は、前記基準単位情報と比較することにより前記異常単位情報として特定され得る前記単位情報が特定された場合であっても、当該単位情報に対応する単位期間において前記第2の遊技者特定により遊技者が特定されていれば、その単位情報を前記異常単位情報として特定しないことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1に記載した遊技場用管理システム。
【請求項5】
前記注意遊技者特定手段は、前記異常検出数が前記基準検出数に達した遊技情報の種類が複数ある前記注意遊技者であって、その異常検出数の差が、当該異常検出数の差に対して予め設定される基準値である略同一基準差数未満となる注意遊技者を重複注意遊技者として特定し、
前記出力手段は、前記重複注意遊技者である旨を出力する場合に、前記重複注意遊技者ではない前記注意遊技者の出力態様とは異なる出力態様にて出力することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1に記載した遊技場用管理システム。
【請求項6】
前記注意遊技者特定手段は、前記注意遊技者において、同一単位期間にて複数種類の単位情報が異常単位情報として特定された場合に、その単位期間を重複異常単位期間として特定し、
前記出力手段は、前記注意遊技者である旨を出力する場合に、前記重複単位期間が特定されている場合には、当該重複単位期間における単位情報を抽出して、又は識別可能に出力することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1に記載した遊技場用管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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