説明

遊技機、及び遊技機用スピーカ装置

【課題】 パーラ内に設置された遊技機の効果音や店内放送の音量を抑制しても、音響による演出効果を高めることができる遊技機、及び遊技機用スピーカを提供する。
【解決手段】 遊技機または遊技機の近傍にスピーカアレイを設けて、このスピーカアレイから効果音やアドバイスなどの音声を放音させる。スピーカアレイは、複数のスピーカユニットをマトリックス状またはライン状に配置したものであり、複数の音声ビームを出力でき、各音声ビームの出力方向の制御もでき、拡散音を出力できる。したがって、遊技機で発生したイベント毎に異なる音声を異なる伝搬状態で出力できる。また、音声を音声ビームとして出力させた場合、効果音は周囲には拡散せず1点で焦点を結ぶので、音量を従来のように大きくしなくても対象者に音声を聞かせることができる。したがって、パーラ内の効果音や放送の音量を低下させることができ、客や店員の音による疲れを改善できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響による演出効果を高めた遊技機、及び遊技機用スピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、パチンコ台やパチスロ台などの遊技機には、効果音やアドバイスなどの音声を立体的に再生できるように、ステレオスピーカが設けられている。また、遊技者を包み込むような音場など臨場感にあふれた音場を形成するために、サラウンド機能が付加された遊戯機に関する発明が開示されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−177452公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1は、従来のパーラ内における音声の放音状態を示す図である。パーラ内に設置された従来のステレオで音声を再生する遊技機101では、図1に示すように、左右のスピーカから音声LS・RSをステレオで再生することで、遊技機で発生したイベントに応じた演出効果を遊技者Yに与えることができる。また、特許文献1に記載のサラウンド機能が付加された遊戯機では、効果音などの音声により遊技者を包み込むことで、遊戯機で発生したイベントに応じて臨場感を遊技者に与えることができる。
【0004】
上記従来の遊技機では、イベントが発生したときに遊技者の気分を盛り上げるために、大きな音量で効果音などの音声を放音する。また、上記遊技機では、特定のイベントが発生した際には、パーラ内の雰囲気を盛り上げるために、他の遊技機の遊技者にも聞こえるような大きな音量で効果音などの音声を放音する。さらに、パーラ内では、BGMや各種の案内などの店内放送が、遊技機から音声が放音されていても聞こえるように、大音量で流されている。
【0005】
このように、パーラ内では、パチンコ玉やコインなどの音に加えて、遊技機の効果音や各種の案内などの音声が常に大きな音で放音されている。そのため、パーラ内にいる客(遊技者)や店員は、これらの音声を常に聞き続けなければならず、短時間で疲れを感じてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、パーラ内に設置された遊技機の音声や店内放送の音量を抑制しても、音響による演出効果を従来と変化なく高めることができ、さらに新たな演出効果を与えることができる遊技機、及び遊技機用スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0008】
(1)遊技者の操作に応じたイベントを発生する遊技機能部と、
イベントの発生を検出するイベント検出手段と、
複数のスピーカユニットをマトリックス状またはライン状に配列したスピーカアレイと、
前記イベント毎に設定された音声を出力する音声出力手段と、
前記イベント毎に前記各スピーカユニットに設定された遅延量及びゲインで、前記音声出力手段から出力された音声信号を遅延及び増幅して、前記各スピーカユニットに供給する音声信号処理手段と、
を備え、
前記音声出力手段は、前記スピーカアレイから放音された音声が、前記イベント毎に設定された状態で伝搬するように、前記音声信号処理手段に対して前記イベント毎に各スピーカユニットの遅延量及びゲインを設定することを特徴とする。
【0009】
この構成おいては、遊技機は、複数のスピーカユニットから成るスピーカアレイを備えており、音声出力手段は、音声信号処理手段に対して、遊技機で発生したイベント毎に各スピーカユニットの遅延量及びゲインを設定する。また、効果音やアドバイスなどの遊技機から放音する音声を音声ビームとして出力する場合には、音の減衰がほとんどなく周囲にも拡散しないので、音量を上げなくても遊技者に音声を十分聞かせることができ、周囲に対しても効果音やアドバイスなどの音声が騒音となるのを防止できる。したがって、遊技機では、イベントが発生すると、そのイベント毎に設定された音声が、音声ビームや拡散音として放音されるので、遊技機から放音する音声による効果を従来と同様に維持できるとともに、各遊技機から放音される音声の音量を低下させることができ、パーラ内全体の音量を低下させることが可能となる。
【0010】
(2)前記音声出力手段は、同時に複数の音声を出力し、出力した複数の音声が、それぞれ所定の間隔で並ぶ音声ビームとなるように、前記音声信号処理手段に対して各スピーカユニットの遅延量及びゲインを設定することを特徴とする。
【0011】
この構成おいては、効果音やアドバイスなどの複数の音声を、それぞれ所定の間隔で並ぶ音声ビームとしてスピーカアレイから放音させるので、例えば、遊技者が遊技中に頭の位置を少し動かすことで、別の音声を聞くことができる。また、音声ビームが焦点を結ぶように放音させることで、ある音声が聞こえるときには、別の音声が聞こえないようにすることも可能である。したがって、遊技機でイベントが発生した際に、ヒントなどの音声を副音声として放音させることも可能であり、遊技者の雰囲気をさらに盛り上げることができる。
【0012】
(3)他の遊技機またはサーバ装置と通信する通信手段と、
他の遊技機またはサーバ装置から送信された音声データ及び音声の伝搬状態の情報である音声伝搬制御情報を一時的に記憶する記憶手段と、
を備え、
前記音声出力手段は、他の遊技機またはサーバ装置から送信された音声データ及び音声伝搬制御情報を前記通信手段で受信すると、前記記憶手段に一時的に記憶させるとともに、
前記他の遊技機から送信された音声データに基づく音声を、前記音声伝搬制御情報に基づいた状態で伝搬するように、前記音声信号処理手段に対して前記音声伝搬制御情報に基づいて各スピーカユニットの遅延量及びゲインを設定することを特徴とする。
【0013】
この構成おいては、遊技機は、通信手段で他の遊技機またはサーバ装置と通信して、他の遊技機またはサーバ装置から送信された音声データを、音声伝搬制御情報に基づいた状態で伝搬するように、スピーカアレイから放音する。例えば、ある遊技機であるイベントが発生した際に、隣接する遊技機や向かい合う遊技機からも、その遊技機の遊技者に対して効果音を放音することで、その遊技者の雰囲気を盛り上げることができる。また、サラウンド音声によりその遊技者を包み込むことも可能である。さらに、ある遊技機であるイベントが発生した際に、そのことを周囲の遊技機の遊技者に対して音声ビームで報知することも可能である。加えて、パーラ内の各遊技者に対する放送を、サーバ装置から音声データとして各遊技機へ送信して、各遊技機から音声ビームとして各遊技者へ放送することが可能である。これらにより、パーラ内に設置されたスピーカから大音量で放送したり、イベントが発生したことを他の遊技者へ伝えるために遊技機から放音する効果音の音量を大きくしたりすることなく、各遊技者へそれらのことを伝えることが可能となる。したがって、パーラ内で放音される音声の音量を大幅に抑制することができ、客(遊技者)や店員が音を聞くことにより疲れるのを防止できる。
【0014】
(4)遊技者の顔の位置を検出する顔位置検出手段を備え、
前記音声出力手段は、前記音声出力手段から出力された音声、または他の遊技機またはサーバ装置から送信された音声データが、遊技者の顔の位置に音声ビームとして放音されるように、前記音声信号処理手段に対して各スピーカユニットの遅延量及びゲインを設定することを特徴とする。
【0015】
遊技機の遊技者は、それぞれ座高が異なるため、遊技機に対する顔の高さが遊技者によって異なる。そのため、どの遊技者にも効果音などの音声を聞かせるためにはある程度幅のある音声ビームか、または拡散音を放音する必要があり、スピーカアレイのスピーカユニット数を増加させたり、スピーカアレイから放音させる音声の音量を大きくする必要があった。この構成おいては、遊技者の顔の位置を検出して、その位置へ音声ビームを放音することができるので、スピーカアレイのスピーカユニット数を増加させることなく、音声の音量を抑制して、遊技者にのみ音声せることができる。
【0016】
(5)遊技機に接続する遊技機用スピーカ装置であって、
複数のスピーカユニットをマトリックス状またはライン状に配列したスピーカアレイと、
前記遊技機で発生したイベント毎に前記各スピーカユニットに設定された遅延量及びゲインで、前記遊技機から出力された音声信号を遅延及び増幅して、前記各スピーカユニットに供給する音声信号処理手段と、
を備え、
前記音声出力手段は、前記スピーカアレイから放音された音声信号が、前記イベント毎に設定された状態で伝搬するように、前記音声信号処理手段に対して前記イベント毎に各スピーカユニットの遅延量及びゲインを設定することを特徴とする。
【0017】
この構成おいては、遊技機用スピーカ装置は、遊技機から出力された効果音などの音声を、音声ビームや拡散音として放音させることができる。したがって、遊技機でイベントが発生すると、そのイベント毎に設定された音声が、遊技機用スピーカ装置から音声ビームや拡散音として放音されるので、遊技機から放音する音による効果を従来と同様に維持できるとともに、各遊技機から放音される音声の音量を低下させることができ、パーラ内全体の音量を低下させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、遊技機では、イベントが発生すると、そのイベント毎に設定された音声が、音声ビームや拡散音として放音されるので、遊技機から放音する音声による効果を従来と同様に維持できるとともに、各遊技機から放音される音声の音量を低下させることができ、パーラ内全体の音量を低下させることができる。
【0019】
また、遊技機でイベントが発生した際に、ヒントなどの音声を副音声として放音させることも可能であり、遊技者の雰囲気をさらに盛り上げることができる。
【0020】
さらに、遊技機は、通信手段で他の遊技機またはサーバ装置と通信して、他の遊技機またはサーバ装置から送信された音声データを、音声伝搬制御情報に基づいた状態で伝搬するように、スピーカアレイから放音するので、パーラ内に設置されたスピーカから大音量で放送したり、イベントが発生したことを他の遊技者へ伝えるために遊技機から放音する音声の音量を大きくしたりすることなく、各遊技者へそれらのことを伝えることができる。これにより、パーラ内で放音される音声の音量を大幅に抑制することができ、客(遊技者)や店員が音を聞くことによって疲れるのを防止できる。
【0021】
加えて、遊技者の顔の位置を検出して、その位置へ音声ビームを放音することができるので、スピーカアレイのスピーカユニット数を増加させることなく、音声の音量を抑制して、遊技者にのみ音声を聞かせることができる。
【0022】
また、遊技機でイベントが発生すると、そのイベント毎に設定された音声が、遊技機用スピーカ装置から音声ビームや拡散音として放音されるので、遊技機から放音する音による効果を従来と同様に維持できるとともに、各遊技機から放音される音声の音量を低下させることができ、パーラ内全体の音量を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図2は、本発明の実施形態に係る遊技機及び遊技機用スピーカの概略の外観図である。図3は、スピーカアレイにおける各スピーカユニットの配置を示す図である。図2(A)に示すように、本発明の実施形態に係る遊技機1(一例としてパチンコ機を示す。)は、盤面上部にスピーカアレイ11を、盤面下部に低音用スピーカ12を、備えている。
【0024】
また、図2(B)に示すように、本発明の実施形態に係る遊技機用スピーカ2は、一例として遊技機3の上部にスピーカアレイ2Aを、遊技機3の下部に低音用スピーカ2Bを配置して使用する。遊技機用スピーカ2は、遊技機3と図外のケーブルにより接続されている。
【0025】
なお、スピーカアレイ11,2A、及び低音用スピーカ12,2Bの位置は、図に示した位置に限定するものではなく、他の位置であっても良い。
【0026】
スピーカアレイ11及び遊技機用スピーカ2のスピーカアレイ2Aは、図3(A)に示すように、n個のスピーカユニット13−1〜13−nを所定の間隔でライン状に配置された構成である。また、スピーカアレイ11及び遊技機用スピーカ2は、図3に示すように、n個のスピーカユニット13−1〜13−nを所定の間隔でマトリックス状(図3(B))、またはハニカム状(図3(C))に配列された構成であっても良い。
【0027】
ここで、スピーカアレイの原理について説明する。図4は、スピーカアレイの原理を説明するための図である。図4に示した例では、スピーカアレイ11または遊技機用スピーカ2を長手方向から見た状態を示している。
【0028】
図4(A)には、全てのスピーカユニット13に同じ位相の音声信号を同時に入力した場合を示している。全てのスピーカユニット13に同位相の信号を同時に入力すると、各スピーカユニット13からは同時に同じ位相の信号が出力される。個別のスピーカユニット13から出力された信号波形は放射状(円形)に伝搬していくが、全てのスピーカユニット13から出力された信号の合成波面は、同図に示すように、平行で前方のみに伝搬するもの、すなわち音声ビームになっている。これ以外の方向へ伝搬する成分は、各スピーカユニット13から出力された信号成分が合成されることによって(干渉しあうことによって)打ち消され、前方に向かう成分のみが合成によって強められて音声ビームとして残っている。
【0029】
このように、音声ビームは、干渉によって強められた拡散しない1方向への波動であるため、伝搬距離による減衰も少なく、1次元にスピーカユニット13を配列したときは1メートルあたり−3dB程度である。なお、通常の拡散する音声では−6dB/m程度である。
【0030】
図4(B)には、音声ビームを斜めに形成する場合を示している。同図では、音声ビームを、正面から右方向のθの角度に形成している。この場合、音声ビームの向きと反対側の端部(左端)のスピーカユニット13から最初に音声を出力する。続いて、時間τが経過する毎に順次右隣のスピーカユニット13から音声を出力する。この遅延時間は、各スピーカユニット13に接続されている指向性制御回路中の遅延回路によって制御される。このように、一列に並んでいるスピーカユニット13から出力する音声を一端から他端に向けて順次遅延することにより、合成波面は、図示のようにその遅延時間に応じて傾斜し、音声ビームを斜め方向に向けることができる。
【0031】
この傾斜角度θは、スピーカユニット13の間隔をd、音速をvとすると、sinθ=vτ/dの関係になる。したがって、その場所の気温に基づいて音速vが算出されていれば、τを制御することによってによって音声ビームの角度θを制御できることになる。
【0032】
図4(C)には、音声ビームが焦点Fに向かうように、つまり点Fで焦点を結ぶように制御する場合を示している。この場合、各スピーカユニット13から同じ音声信号を出力するが、各スピーカの音声信号が同時に焦点Fに到達するように遅延を与える。すなわち、音声ビームの焦点Fと最も距離の遠いスピーカユニット13から最初に音声を出力する。続いて、時間τが経過する毎に順次隣接するスピーカユニット13から音声を出力する。この遅延時間は、各スピーカユニット13に接続されている指向性制御回路中の遅延回路によって制御される。このように、一列に並んでいるスピーカユニット13から出力する音声を一端から他端に向けて順次遅延させることにより、合成波面は、図示したように、一点で焦点を結ばせることができる。この場合、例えば、効果音のビームの焦点Fをユーザの耳元に設定することにより、効果音がそのユーザにのみ聞こえて、周囲の人には聞こえないようにすることができる。
【0033】
図3(A)に示したように、各スピーカユニット13を水平方向にライン状に配列することで、水平方向の任意の方向への指向性制御が可能であり、垂直方向には広指向性(コーンビーム)となる。また、スピーカアレイ11,2Aにおいて、図3(B),(C)に示したように、各スピーカユニット13をマトリックス(行列)状またはハニカム状に二次元配列し、水平方向及び垂直方向で上記の制御を行うことにより、空間の任意の角度に音声ビームを形成することができる。2次元配列の場合は、理想的には音波は減衰しないので、遠くまで音声を伝達することができる。
【0034】
なお、スピーカアレイ11,2Aで指向性を制御できる下限周波数は、アレイ全幅で決定される。すなわち、良好な制御を行うためには、波長の数倍の幅が必要であるので、一例として1kHzでは波長が約30cmであることから、1m程度の幅を確保することが望ましい。一方、制御できる上限周波数は、各小型スピーカユニットの間隔(ピッチ)で決定される。波長がピッチよりも短くなればグレーティングローブすなわち意図した以外の方向に対してもビームが形成されてしまう。したがって、スピーカユニット自体の直径もエレメント間のピッチも可能な限り小さいことが望ましい。
【0035】
しかしながら、遊技機のサイズは規定されているため、スピーカアレイのサイズにも制限がある。そのため、遊技機1及び遊技機用スピーカ2では、前記のように低音用スピーカ12,2Bを備えており、スピーカアレイ11,2Aから出力する音声の低音域を補う構成としている。
【0036】
次に、遊技機1の構成について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る遊技機の概略のブロック図である。図5に示すように、遊技機1は、主制御部21、記憶部22、表示部23、センサ部24、排出制御部25、通信部26、操作部27、音響再生部28を備えている。
【0037】
また、遊技機1は、隣接する遊技機1L・1R、遊技機1L・1Rと向かい合う遊技機1SL・1SR、及びホールサーバ5と、通信部26を介して接続されている。
【0038】
遊技機1L・1R、1SL・1SRは、遊技機1と同様の構成である。また、ホールサーバ5は、各遊技機1のデータ管理を行ったり、店内放送の音声を各遊技機1のスピーカアレイ11から放音させたりする。
【0039】
主制御部21は、遊技機1の各部の動作を統括的に制御する。
【0040】
記憶部22は、主制御部21で実行するプログラムを記憶する。また、効果音やアドバイスなどの音声データを記憶する。さらに、遊技機1で発生したイベントに応じて、表示部23で表示するデータや、音響再生部28で再生する音声データなどを記憶する。
【0041】
ここで、以下の説明では、遊技機1が出力する効果音や音楽、アドバイスなどの人の声を音声と称する。
【0042】
表示部23は、遊技機1で発生したイベントに応じて、特徴的な画像や映像を表示する。
【0043】
センサ部24は、遊技機1の現在の状態を検出するための複数のセンサから成る。例えば、チャッカやアタッカやハンドルなどの状態を検出する各種のセンサを備えている。また、センサ部24は、遊技者Yの顔の位置(高さ)を検出する顔面位置検出センサ24F(図示せず。)を備えている。この顔面位置検出センサ24Fは、例えば、遊技機1に設けられるスピーカアレイ11の近傍に設けられる。
【0044】
排出制御部25は、賞球の排出を制御する。
【0045】
通信部26は、両隣の遊技機1L・1R、遊技機1SL・1SRなど他の遊技機と、音声データや、音声をどのように放音するかを制御するための情報である音声伝搬制御情報のやりとりを行う。また、通信部26は、ホールサーバ5とも、音声データや音声伝搬制御情報などのやりとりを行う。
【0046】
操作部27は、遊技機1の音声などを切り替える切り替えスイッチ27S(図示せず。)などを備えている。
【0047】
音響再生部28は、遊技機において発生したイベント(例えば、リーチや当たりなど)毎に設定された音声を再生・出力する。音響再生部28は、音源31、指向性制御回路32、スピーカアレイ11を備えている。主制御部21は、遊技機1で発生したイベントに応じた音声を出力するために、記憶部22から音声データを読み出して、音源31に効果音やアドバイスなどの音声再生指示を出力する。また、主制御部21は、遊技機1で発生したイベントに応じて再生する音声の指向性制御情報を指向性制御回路32へ出力する。
【0048】
音源31は、主制御部21から効果音やアドバイスなどの音声の再生指示があると、その指示にしたがって、再生音データを指向性制御回路32へ出力する。指向性制御回路32は、遅延部41、係数乗算器42−1〜42−n、加算器43−1〜43−n、及びアンプ44−1〜44−nを備えている。音源31から出力された音声信号は遅延部41に入力されて遅延され、各スピーカに対応する所定の遅延量のタップから音声信号が取り出される。取り出された音声信号は、係数乗算器42−1〜42−nでゲイン係数が乗算され、アンプ44−1〜44−nで増幅されたのち、スピーカアレイ11の各スピーカユニット13−1〜13−nから放音される。係数乗算器では、音声伝搬制御情報に応じた所定のゲイン係数が乗算される。
【0049】
次に、遊技機1及び遊技機用スピーカ2が出力する音声の仕様について説明する。図6は、単独の遊技機による音声の出力パターンを示した図である。なお、遊技機用スピーカ2は、遊技機1と同様に音声を放音することができるが、以下では説明を簡略化するために遊技機1の場合を例に説明する。図6に示すように、遊技機1は、イベントに応じて様々な音声の出力パターンを有している。
【0050】
図6(A)に示すように、遊技機1は、遊技者Yにのみ効果音やアドバイスなどの音声が聞こえるように、この音声のビームが遊技者Yの顔(耳)付近を通過するように制御することができる。図6(A)には、音声ビームをステレオ再生した場合を示している。
【0051】
また、図6(B)に示すように、遊技機1は、その盤面と垂直な方向に、異なる音声ビームを複数本出力することができる。このモードでは、遊技者Yが遊技機1で遊技中に、頭を左右に少し動かすことで、異なる効果音やアドバイスやヒントなどを聞くことができる。同図には、2種類の異なる音声をステレオ出力している場合を示したが、例えば、4種類の異なる音声をモノラル出力させることも可能である。また、ビーム数を変更することも可能である。
【0052】
さらに、図6(C)に示すように、遊技機1は、特定のイベントが発生したことを他の遊技機の遊技者にも知らせるために、周囲に拡散するように音声を放音することができる。
【0053】
加えて、図6(D)に示すように、遊技機1は、特定のイベントが発生したことを両隣の遊技機1L・1Rの遊技者YL・YRにも知らせるために、両隣の遊技機の遊技者に対して音声ビームを放音することができる。
【0054】
また、図6(E)に示すように、遊技機1は、音声ビームをランダムな位置に出力させることができる。
【0055】
さらに、図6(F)に示すように、遊技機1は、音声ビームを連続的に左右に旋回させることができる。
【0056】
加えて、図6(G)に示すように、遊技機1は、顔面位置検出センサ24Fにより、遊技者の顔の位置を検出することで、その遊技者の顔の位置に応じて、垂直方向の音声ビームの位置を制御することができる。
【0057】
次に、遊技機1は、前記のように、隣接する他の遊技機や対向する他の遊技機と、音声データや音声伝搬制御情報をやりとりすることができるので、以下に記載するように、音声を放音させることができる。図7は、複数の遊技機による音声の出力パターンを示した図である。
【0058】
図7(A)に示すように、遊技機1は、その両隣の遊技機1L及び遊技機1Rに音声データ及び音声伝搬制御情報を出力することにより、音声を立体的に聞こえるように出力させることができる。例えば、遊技機1は、そのスピーカアレイ11からセンタ(C)チャンネルの音声データを放音し、遊技機1Lのスピーカアレイ11Lからレフト(L)チャンネルの音声データを放音させ、遊技機1Rのスピーカアレイ11Rからライト(R)チャンネルの音声データを放音させることができる。
【0059】
また、図7(B)に示すように、遊技機1は、その両隣の遊技機1L及び遊技機1R、遊技機1Lに対向する遊技機1SL及び遊技機1Rに対向する遊技機1SRに音声データ及び音声伝搬制御情報を出力することにより、効果音などの音声をサラウンド音声として聞こえるように出力させることができる。この場合には、遊技機1は、図7(A)に基づいて説明したように、遊技機1及び両隣の遊技機1L及び遊技機1Rにより、L、C、Rチャンネルの各音声データを放音させるのに加えて、遊技機1SLのスピーカアレイ11SLからリア側のレフト(SL)チャンネルの音声データを放音させ、遊技機1SRのスピーカアレイ11SRからリア側のライト(SR)チャンネルの音声データを遊技者Yに向けて放音させることができる。これにより、5チャンネルのサラウンド音声となった音声により遊技者Yを包むことができる。
【0060】
次に、本発明の実施形態に係る遊技機は、前記のようにパーラ内に設置されたホールサーバ5と接続されているので、このホールサーバ5から出力された店内放送の音声データを各遊技機1のスピーカアレイ11から放音させることができる。図8は、ホールサーバから出力された音声データの出力パターンを示した図である。
【0061】
図8(A)に示すように、各遊技者のみに伝えたい案内情報やBGMなどの店内放送の場合には、ホールサーバ5は、その音声データ及び音声伝搬制御情報を各遊技機1に出力する。各遊技機1は、スピーカアレイ11から各遊技者に対して音声ビームとして放音させる。なお、この場合には、店内放送は、他の遊技機の遊技者には聞こえないので、各遊技機1から放音させる音声ビームの出力タイミングを合わせる必要はない。
【0062】
また、図8(B)に示すように、各遊技者だけでなく店員にも伝えたい案内情報などの店内放送の場合には、ホールサーバ5は、各遊技機1の店内放送の出力タイミングを合わせながら、その音声データ及び音声伝搬制御情報を各遊技機1に出力する。この場合、各遊技機1は、音声データを各遊技機1のスピーカアレイ11から拡散音として放音させる。
【0063】
このように、従来はパーラ内全体に流されていた案内放送やBGMなども各遊技機1のスピーカアレイ11から音声ビーム、または拡散音として放音させることができるので、パーラ内に流す音声全体の音量を低下させることができる。また、音声ビームで放送を流すことができるので、例えば、通路を歩く客や店員は効果音や店内放送を常に聞かなくても良くなるため、疲れにくくなる。
【0064】
また、遊技機1の遊技者Yは、前記の切り替えスイッチ27Sを操作することで、遊技機1のスピーカアレイ11から放音される効果音やアドバイスなどの音声を切り替えたり、停止したりすることができる。これにより、遊技者の気分に応じてBGMを変更したり、遊技機1の前で携帯電話で通話する際に効果音や店内放送を停止したりすることができる。
【0065】
なお、以上の説明では、遊技機1の両隣、及び対向する遊技機1L・1R・1SL・1SRから遊技機1の音声を放音する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、他の遊技機からも音声を放音することが可能である。また、遊技機1の周囲の遊技機から遊技機1に対して音声を放音する際に、その遊技機の遊技者に対しても音声を放音することは当然可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来のパーラ内における音声の放音状態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る遊技機及び遊技機用スピーカの概略の外観図である。
【図3】スピーカアレイにおける各スピーカユニットの配置を示す図である。
【図4】スピーカアレイの原理を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態に係る遊技機の概略のブロック図である。
【図6】単独の遊技機による音声の出力パターンを示した図である。
【図7】複数の遊技機による音声の出力パターンを示した図である。
【図8】ホールサーバから出力された音声データの出力パターンを示した図である。
【符号の説明】
【0067】
1,1L,1R,1SL,1SR,3−遊技機 2−遊技機用スピーカ
2A−スピーカアレイ 2B−低音用スピーカ 5−ホールサーバ
11,11L,11R,11SL,11SR−スピーカアレイ
12−低音用スピーカ 13−スピーカユニット
21−主制御部 22−記憶部 23−表示部 24−センサ部
24F−顔面位置検出センサ 25−排出制御部 26−通信部
27−操作部 27S−切り替えスイッチ 28−音響再生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技者の操作に応じたイベントを発生する遊技機能部と、
イベントの発生を検出するイベント検出手段と、
複数のスピーカユニットをマトリックス状またはライン状に配列したスピーカアレイと、
前記イベント毎に設定された音声を出力する音声出力手段と、
前記イベント毎に前記各スピーカユニットに設定された遅延量及びゲインで、前記音声出力手段から出力された音声信号を遅延及び増幅して、前記各スピーカユニットに供給する音声信号処理手段と、
を備え、
前記音声出力手段は、前記スピーカアレイから放音された音声が、前記イベント毎に設定された状態で伝搬するように、前記音声信号処理手段に対して前記イベント毎に各スピーカユニットの遅延量及びゲインを設定することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記音声出力手段は、同時に複数の音声を出力し、出力した複数の音声が、それぞれ所定の間隔で並ぶ音声ビームとなるように、前記音声信号処理手段に対して各スピーカユニットの遅延量及びゲインを設定する請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
他の遊技機またはサーバ装置と通信する通信手段と、
他の遊技機またはサーバ装置から送信された音声データ及び音声の伝搬状態の情報である音声伝搬制御情報を一時的に記憶する記憶手段と、
を備え、
前記音声出力手段は、他の遊技機またはサーバ装置から送信された音声データ及び音声伝搬制御情報を前記通信手段で受信すると、前記記憶手段に一時的に記憶させるとともに、
前記他の遊技機から送信された音声データに基づく音声を、前記音声伝搬制御情報に基づいた状態で伝搬するように、前記音声信号処理手段に対して前記音声伝搬制御情報に基づいて各スピーカユニットの遅延量及びゲインを設定する請求項1または2に記載の遊技機。
【請求項4】
遊技者の顔の位置を検出する顔位置検出手段を備え、
前記音声出力手段は、前記音声出力手段から出力された音声、または他の遊技機またはサーバ装置から送信された音声データが、遊技者の顔の位置に音声ビームとして放音されるように、前記音声信号処理手段に対して各スピーカユニットの遅延量及びゲインを設定する請求項3に記載の遊技機。
【請求項5】
遊技機に接続する遊技機用スピーカ装置であって、
複数のスピーカユニットをマトリックス状またはライン状に配列したスピーカアレイと、
前記遊技機で発生したイベント毎に前記各スピーカユニットに設定された遅延量及びゲインで、前記遊技機から出力された音声信号を遅延及び増幅して、前記各スピーカユニットに供給する音声信号処理手段と、
を備え、
前記音声出力手段は、前記スピーカアレイから放音された音声信号が、前記イベント毎に設定された状態で伝搬するように、前記音声信号処理手段に対して前記イベント毎に各スピーカユニットの遅延量及びゲインを設定することを特徴とする遊技機用スピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−263011(P2006−263011A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82818(P2005−82818)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】