説明

遊技機の球払出装置

【課題】 球抜きの際に、スプロケットを回転させることなく、すべての遊技球を遊技機の外部に放出できる遊技機の球払出装置を提供すること。
【解決手段】 遊技機10の上部から球導入通路31に送り出される遊技球Aを、賞球払出通路32と球抜通路33とに流下させる球払出装置20に、球抜部材27と、スプロケット25とを設けた。球抜部材27は、球導入通路31と、賞球払出通路32と、球抜通路33との交差部に設けられた支点を中心に回転可能に取り付けた。スプロケット25は、賞球払出通路32内に突出させた状態で、賞球払出通路32と球抜通路33との間に配置し、回転することにより送られてくる遊技球Aを下方に通過させるようにした。そして、球抜部材27で、球導入通路31と賞球払出通路32とを連通させたときに、球抜部材27で構成される通路とスプロケット25で構成される通路とが直結するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機の上部から球導入通路に送り出される遊技球を、賞球払出通路と球抜通路とに振り分けて流下させる遊技機の球払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パチンコ機等の遊技機においては、遊技機の上部から下方に位置する所定の球受部に遊技球を流下させることが行われている。打球発射部から発射された遊技球が入賞口に入賞したときには、所定数の遊技球を賞球として遊技機の上部に設けられた球タンクから賞球払出通路を介して遊技機の表面に設けられた上皿に流下させる。また、遊技球を遊技機から取り出すときには、遊技球を球タンクから球抜通路を流下させて外部に放出する。このような遊技機には、遊技機の上部から流下する遊技球の流れを遊技機表面の上皿側と遊技機の外部の球受部側とに切り替えるための球払出装置が備わっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この遊技機の球払出ユニット(球払出装置)では、遊技球を流下させる球供給通路の下端よりも下方部分が払出通路と球抜き通路とに分岐しており、その分岐点に通路を切り替えるための通路切替部材が設けられている。そして、払出通路における通路切替部材の下方に、外周に複数の配置凹部が形成され回転することにより遊技球を1個ずつ通過させる整流板が設けられている。このため、遊技球を上タンクから球受皿に流下させる際には、通路切替部材の操作により球供給通路と払出通路とを連通させ、整流板を回転させることによって、遊技球を球受皿に供給することができる。また、遊技球を遊技機の外部に取出す際には、通路切替部材の操作により球供給通路と球抜き通路とを連通させることによって、遊技球を遊技機の外部に放出することができる。
【0004】
また、球供給通路から分岐した球払出通路と球抜き通路との分岐点にスプロケットを設置し、このスプロケットの回転方向を変更することにより、遊技球を球払出通路側に通過させたり球抜き通路側に通過させたりする遊技機もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253784号公報
【特許文献2】特開2004−81499号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された遊技機の球払出装置では、球供給通路と払出通路とを連通させた状態から、通路切替部材の操作により球供給通路と球抜通路とを連通させて、遊技球を遊技機の外部に取り出す際に、払出通路における通路切替部材と整流板との間にある遊技球を遊技機の外部に放出することができないという問題がある。また、特許文献2に記載された遊技機の球払出装置では、遊技球を、球払出通路を通過させるときだけでなく、球抜き通路を通過させる場合にも駆動装置を作動させてスプロケットを回転させなければならないという問題がある。
【0007】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、球抜きの際に、スプロケットを回転させることなく、すべての遊技球を遊技機の外部に放出できる遊技機の球払出装置を提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明に係る遊技機の球払出装置の構成上の特徴は、遊技機(10)の上部から球導入通路(31)に送り出される遊技球(A)を、賞球払出通路(32)と球抜通路(33)とに振り分けて流下させる遊技機の球払出装置(20)において、球導入通路と、賞球払出通路と、球抜通路との交差部近傍に設けられた支点(22h,23e)を中心に回転可能に取り付けられ、球導入通路に連通する通路を賞球払出通路と球抜通路とに振り分ける球抜部材(27)と、賞球払出通路内に突出した状態で、賞球払出通路と球抜通路との間に配置され、回転することにより賞球払出通路に送られてくる遊技球を下方に通過させるスプロケット(25)とを備え、球抜部材で、球導入通路と賞球払出通路とを連通させたときに、球抜部材で構成される通路とスプロケットで構成される通路とが直結するようにしたことにある。
【0009】
本発明に係る遊技機の球払出装置では、遊技球を流下させる球導入通路の下端部を、互いに分岐した賞球払出通路と球抜通路とに連通させている。そして、球導入通路と、賞球払出通路と、球抜通路との交差部近傍に支点を設けるとともに、この支点を中心に回転することにより、球導入通路に連通する通路を賞球払出通路と球抜通路とに振り分ける球抜部材が設けられている。このため、球抜部材を回転操作することにより、遊技機の上部から球導入通路に送り出された遊技球を、状況に応じて賞球払出通路と、球抜通路とに振り分けて流下させることができる。また、賞球払出通路内に突出させた状態でスプロケットを設けているため、球導入通路と賞球払出通路とを連通させた状態で、スプロケットを回転させることにより、賞球払出通路に送られてくる遊技球を下方に通過させることができる。
【0010】
そして、球抜部材を、球導入通路と賞球払出通路とを連通させる方向に回転させたときに、球抜部材で構成される通路とスプロケットで構成される通路とが直結するようにしている。このため、球抜部材を、球導入通路と賞球払出通路とを連通させた状態から球導入通路と球抜通路とを連通させる方向に回転させて、遊技球を遊技機の外部に放出させるときには、球導入通路と賞球払出通路とは遮断されて賞球払出通路におけるスプロケットの上流側には、遊技球が位置しなくなる。これによって、遊技機の上部から流下してくる遊技球は、すべて球抜通路を通過するようになる。また、この場合、スプロケットを回転させる必要もない。
【0011】
なお、本発明に係る球抜部材で構成される通路は、球抜部材だけで構成されていてもよいし、球払出装置の本体部分と球抜部材とで構成されていてもよい。また、スプロケットは、遊技球を1個収容できる複数の凹部が間隔を保って外周部に形成された回転体で構成されており、本発明に係るスプロケットで構成される通路は、この凹部の縁部と凹部に対向する球払出装置の本体部分とで構成されるものとする。さらに、球抜部材の回転の中心となる支点は、穴部や凹部からなる軸受けや軸部で構成することができる。また、球抜部材で構成される通路とスプロケットで構成される通路とが直結するとは、球抜部材とスプロケットとの間に遊技球が位置したり通過したりすることのできる間隔がなければよいものとする。
【0012】
また、本発明に係る遊技機の球払出装置の他の構成上の特徴は、球抜部材を樋状に形成して、樋状の長手方向に沿った開口側を球払出装置の本体壁面(22a)に対向させることにより球抜部材で構成される通路を構成し、球抜部材内に遊技球が位置している状態で、球抜部材を、球導入通路と賞球払出通路とを連通させた状態から球導入通路と球抜通路とを連通させる方向に回転させたときに、遊技球が球抜部材とともに球抜通路側に移動するようにしたことにある。
【0013】
この場合の樋状は、円筒体を軸回り方向に分割して両端と分割面側が開口した形状に形成されたものとするが、長手方向が曲がった形状であったり、各部分の大きさや形状が異なったりしているものであってもよい。本発明によると、球抜部材を簡単な構造にして、遊技機から遊技球を放出する際に、すべての遊技球を、球抜通路を介して外部に流下させることができる。
【0014】
また、本発明に係る遊技機の球払出装置のさらに他の構成上の特徴は、球払出装置の表面に表面カバー(23)が設けられているとともに、表面カバーに球抜部材が回転する際の回転軌道に沿う円弧状のスリット(23f)が形成され、球抜部材にスリットを貫通して外部に突出する摘み部(27c)が形成されていることにある。これによると、摘み部を手で持って球抜部材を回転操作できるため、球抜部材の操作が容易になる。なお、この場合の表面は、球払出装置の表面であり、球払出装置が遊技機の裏面に設けられている場合には、遊技機の裏面になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る球払出装置を備えたパチンコ機の概略を示した正面面である。
【図2】図1のパチンコ機の概略を示した背面面である。
【図3】球払出装置の斜視図である。
【図4】球払出装置を示しており、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】正面側から見た球払出装置の分解斜視図である。
【図6】背面側から見た球払出装置の分解斜視図である。
【図7】ステッピングモータ、アイドルギアおよびスプロケットの連結状態を示した背面図である。
【図8】図4(c)の8−8断面図である。
【図9】図8の状態から球抜部材を球払出装置の中央側に回転させた状態を示した断面図である。
【図10】球抜部材を球抜き側に回転させた状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1および図2は、同実施形態に係る球払出装置20を備えた本発明に係る遊技機としてのパチンコ機10を示している。パチンコ機10の表面における上部側部分には遊技領域11が設けられており、その下方には、遊技球A(図8ないし図10参照)を一旦溜めて順次発射位置に供給する上皿12と、上皿12から間隔を保って1個ずつ供給される遊技球Aを遊技領域11内に向けて発射するハンドル13を含む球発射装置が設けられている。そして、上皿12の下方に、遊技球Aを溜めるための下皿14が設けられている。
【0017】
また、遊技領域11の中央には、演出効果を発揮するための画像を表示する液晶画面15が設けられ、遊技領域11における液晶画面15の下方に2つの入賞装置16a,16bとアウト口17とが、前述した順に、上方から下方に間隔を保って設けられている。入賞装置16aは、いわゆるチャッカーを構成する入賞口であり、入賞装置16a内に遊技球Aが入ると、所定数の遊技球Aが賞球として、図2に矢印で示したように、パチンコ機10の裏面上部に設置された球タンク18から傾斜樋18a、球導入通路本体19、球払出装置20および賞球払出通路本体19aを介して上皿12に送られる。
【0018】
また、入賞装置16bは、いわゆるアタッカーを構成する入賞口であり、「大当たり」の際に、所定時間開閉することにより遊技球Aを入賞し易くする。この場合も、入賞装置16b内に遊技球Aが入ると、所定数の遊技球Aが賞球として、図2に示した矢印に沿って、球タンク18から上皿12に送られる。アウト口17は、入賞装置16a,16bに入らなかった遊技球Aを通過させてパチンコ機10の下方に設置された回収タンク(図示せず)に送るためのゲート穴である。
【0019】
球払出装置20は、図3および図4に示したように、略矩形の装置からなっており、図5および図6に示した、後カバー21、ケース本体22および前カバー23で球払出装置20の本体となる収容ケースが構成されている。そして、球払出装置20は、収容ケースに、ステッピングモータ24、スプロケット25、アイドルギア26、球抜部材27およびフォトセンサ28を組み付けて構成されている。以下、前カバー23側を前方、後カバー21側を後方とし、左右および上下は、球払出装置20を前方から見た状態を基準として説明する。
【0020】
後カバー21は、縦長の四角板状の後壁部21aと、後壁部21aの周縁部から前方に突出する周壁部21bとを備えている。後壁部21aの下部側部分には、円形の穴の上部に下方に向かって突出する円弧状の突出部を設けた形状の穴部21cが形成されており、その穴部21cにおける下部側部分の縁部に前方に向かって突出する壁部21dが形成されている。また、後壁部21aの略中央には、支持穴21eが形成され、後壁部21aの上部右側部分と下部左側部分とにはそれぞれねじ挿通穴21f,21gが形成されている。そして、後壁部21aの前面の下部右側部分にフォトセンサ28を設置するための枠状のセンサ設置部21hが形成されている。
【0021】
ケース本体22は、縦長の四角板状の本体壁部22aと、本体壁部22aの下縁部および所定部分を除いた縁部から前方に突出する壁部22bとを備えている。本体壁部22aの前面で本発明に係る本体壁面が構成される。本体壁部22aの前面における下部側部分には、スプロケット25の後部を設置するためのスプロケット設置部22cが形成されている。このスプロケット設置部22cは、後カバー21の穴部21cに嵌合できるように、前面側が凹部で後面側が突部になった形状に形成されており、穴部21cの上部の円弧状部分に対応する部分には開口22dが形成されている。また、スプロケット設置部22cの中央には円筒状の支持穴部22eが形成されている。
【0022】
本体壁部22aの前面における上部左側部分には、ステッピングモータ24を設置するための枠状のモータ設置部22fが形成されている。また、本体壁部22aにおけるモータ設置部22f内の中央部分には、ステッピングモータ24の後部を挿通させる穴部22gが形成され、モータ設置部22fの右下の角部には支持穴22hが形成されている。さらに、本体壁部22aの後面の略中央には、支持穴22iが形成され、本体壁部22aの後面の上部右側部分と下部左側部分とにはそれぞれ円筒状のねじ穴部22j,22kが形成されている。なお、本体壁部22aの後面を示した図6は、図5と左右方向が逆になっている。
【0023】
ケース本体22に後カバー21を組付けたときに、支持穴22iと支持穴21e、ねじ穴部22jとねじ挿通穴21f、ねじ穴22kとねじ挿通穴21gは、それぞれ同軸上に位置する。また、本体壁部22aの後面の下部右側部分には、センサ設置部21hとでフォトセンサ28を挟持固定するセンサ設置部22mが形成されている。そして、本体壁部22aの後面における左上部分には、段部からなる凹部22nが形成され、凹部22nの上部右側部分と下部左側部分とにそれぞれ円筒状のねじ穴部22o,22pが形成されている。
【0024】
ケース本体22の上部右側部分には、壁部22bが形成されてなく、モータ設置部22fと壁部22bの右側部分との間に、球導入通路本体19の内部からケース本体22の右側部分を下方に延びる空間部が形成されている。この空間部で球導入通路31(図8〜10参照)の後部側部分31aが構成される。また、本体壁部22aの前面におけるスプロケット設置部22cの下方には、前方に突出する幅広の隔壁22qが形成されている。
【0025】
この隔壁22qと壁部22bの下部右側部分との間に形成される空間部で賞球払出通路32(図8〜10参照)の後部側部分32aが構成され、隔壁22qと壁部22bの下部左側部分との間に形成される空間部で球抜通路33(図8〜10参照)の後部側部分33aが構成される。また、隔壁22qの上部には、円筒状のねじ穴部22rが形成されている。なお、賞球払出通路32は、賞球払出通路本体19aに連通し、球抜通路33は、図示せぬ球抜通路本体に連通している。球抜通路本体の下端部は、パチンコ機10の外部に延びている。
【0026】
前カバー23は、段差を備えた縦長の四角板状の前壁部23aと、前壁部23aの下縁部および所定部分を除いた縁部から後方に突出する壁部23bとを備えており、本発明に係る表面カバーを構成する。前壁部23aの上部左側部分には、ステッピングモータ24の前部を露出させるための穴部23cが形成され、穴部23cの周縁部から後方に向かってステッピングモータ24の前部を支持する枠状のモータ支持部23dが突出している。前壁部23aの後面におけるモータ支持部23dの右下部分には円筒状の支持穴部23eが形成され、前壁部23aの中央よりもやや下方にスリット23fが形成されている。
【0027】
スリット23fは、支持穴部23eを中心とした円弧上に形成されており、左右方向の中央側が下方に突出している。そして、スリット23fの両端を除いた部分は均一な幅に形成され、スリット23fの両端には、それぞれ上方に膨らんだ幅の広い部分が形成されている。また、前カバー23の上部右側部分には、壁部23bが形成されてなく、前壁部23aの後面における穴部23cの右側には、前カバー23の上端から下方に延びる通路壁23gが形成されている。この通路壁23gと壁部23bの上部右側部分との間に、球導入通路本体19の内部から前カバー23の右側部分を下方に延びる空間部が形成されており、この空間部で球導入通路31の前部側部分31bが構成される。
【0028】
また、前壁部23aの後面におけるスリット23fの下方には、後方に突出してケース本体22の隔壁22qを左右から挟むことのできる一対の板状の壁部からなる挟持壁23hが形成されている。この挟持壁23hの右側部分と壁部23bの下部右側部分との間に形成される空間部で賞球払出通路32の前部側部分32bが構成され、挟持壁23hの左側部分と壁部23bの下部左側部分との間に形成される空間部で球抜通路33の前部側部分33bが構成される。また、挟持壁23h間の上部には、支持穴23iが形成され、挟持壁23h間の中央部には、円筒状のねじ挿通穴部23jが形成されている。ケース本体22に前カバー23を組付けたときに、支持穴部23eと支持穴22h、支持穴23iと支持穴部22e、ねじ挿通穴部23jとねじ穴部22rは、それぞれ同軸上に位置する。そして、支持穴部23eと支持穴22hとで本発明に係る支点が構成される。
【0029】
ステッピングモータ24は、モータ本体24aと、モータ本体24aの後面に設けられた固定用板24bと、固定用板24bを貫通してモータ本体24aから後方に延びる回転軸24cと、回転軸24cの先端に取り付けられたモータギア24dとを備えている。また、モータ本体24aの外周面には、モータ本体24aを外部機器に接続するためのコネクタ24eが取り付けられている。固定用板24bの上部右側と下部左側にはそれぞれモータ本体24aの外周側に突出する突部が形成されており、その突部にねじ挿通穴24f,24gが形成されている。
【0030】
ステッピングモータ24は、モータ本体24aとコネクタ24eとの前部を前カバー23の穴部23c内に位置させ、モータギア24dをケース本体22の穴部22gを貫通させて凹部22nに位置させた状態で、ケース本体22のモータ設置部22f内に設置されている。そして、ねじ挿通穴24fにねじ(図示せず)を挿通してねじ穴部22oに螺合させるとともに、ねじ挿通穴24gにねじ(図示せず)を挿通してねじ穴部22pに螺合させることにより、ケース本体22に固定される。
【0031】
スプロケット25は、スプロケット本体25aと、スプロケット本体25aの後面に設けられた円形板部25bと、円形板部25bの後面に設けられたギア部25cと、スプロケット本体25aの前部中央と、ギア部25cの後部中央とに突出した中心軸部25dとで構成されている。スプロケット本体25aは、遊技球Aを1個だけ位置させることのできる大きさの3つの円弧状の凹部25eが外周に等間隔で形成された略三角形の回転体で構成されている。
【0032】
スプロケット25は、ギア部25cをスプロケット設置部22c内に位置させた状態でケース本体22に組み付けられる。そのとき、円形板部25bの前面は、本体壁部22aの前面と同一面上に位置するようになり、ギア部25cの上部は、開口22dから上方に突出した状態になる。そして、スプロケット25は、中心軸部25dの後端部を支持穴部22e内に挿入させるとともに、中心軸部25dの前端部を支持穴23i内に挿入させて回転可能な状態で、ケース本体22と前カバー23とに支持される。このとき、円形板部25bと、凹部25eと、前カバー23の後面と、ケース本体22の壁部22bの右側部分とで、遊技球Aを通過させる通路が形成される。
【0033】
アイドルギア26は、ギア部26aと中心軸部26bとで構成されており、図7に示したように、モータギア24dとギア部25cとを連結して、ステッピングモータ24の回転駆動力をスプロケット25に伝達するためのギアである。このアイドルギア26は、中心軸部26bの後端部を支持穴21e内に挿入させるとともに、中心軸部26bの前端部を支持穴22i内に挿入させて回転可能な状態で、後カバー21とケース本体22とに支持される。また、アイドルギア26およびギア部25cの歯数は、モータギア24dの歯数よりも多く、アイドルギア26とギア部25cとの歯数は、同じか、アイドルギア26の方がギア部25cよりも僅かに多くなっている。これによって、アイドルギア26の回転数はモータギア24dの回転数よりも少なくなり、ステッピングモータ24の駆動力は減速されてスプロケット25に伝わる。
【0034】
球抜部材27は、通路形成部27aと、通路形成部27aの上端に形成され通路形成部27aの前後に突出する軸部27bと、通路形成部27aの前面における下部に設けられ前方に突出する摘み部27cとで構成されている。通路形成部27aは、横断面形状が略半円状になった長さの短い略樋状に形成されており、上部側から下部側にいくにしたがって左側に湾曲した形状をしている。また、軸部27bと摘み部27cとの間隔は、支持穴部23eとスリット23fとの間隔と略等しくなっている。この球抜部材27は、摘み部27cを、スリット23fを貫通させて前カバー23から前方に突出させた状態で、軸部27bの後端部を支持穴22h内に挿入させるとともに、軸部27bの前端部を支持穴部23e内に挿入させて回転可能な状態で、ケース本体22と前カバー23とに支持されている。
【0035】
また、通路形成部27aは、本体壁部22aの前面との間に遊技球Aを1個ずつ通すことのできる幅の通路を形成する。なお、通路形成部27aの後端部は、スプロケット本体25aの前面よりも僅かに前方に位置しており、通路形成部27aの後端部と本体壁部22aの前面との間には、スプロケット本体25aの前後方向の厚みよりも僅かに広い隙間が形成されている。このため、通路形成部27aの下部は、スプロケット本体25aの前方でスプロケット本体25aに接触することなく移動することができる。
【0036】
本実施形態においては、遊技球Aの直径が11mmであるのに対し、通路形成部27aの深さは4.8mmに設定され、スプロケット本体25aの厚みは6.2mmに設定されている。そして、通路形成部27aとスプロケット本体25aとの間には、0.5mmの隙間が設けられている。このため、遊技球Aが通過する通路形成部27aと本体壁部22aの前面との間の通路の幅は、11.5mmになる。
【0037】
図8ないし図10に示したように、通路形成部27aの上端部は、通路形成部27aの回転位置にかかわらず球導入通路31の下端に連通する。また、通路形成部27aの下端部は、球抜部材27が軸部27bを中心として反時計回り方向に回転しているとき(図8の状態)には、賞球払出通路32の上端に連通し、球抜部材27が軸部27bを中心として時計回り方向に回転しているとき(図10の状態)には、球抜通路33の上端に連通する。その際の球抜部材27の回転操作は、摘み部27cを手で持って左右に移動させることにより行われる。摘み部27cは、スリット23fの中央部分に位置したときには、スリット23fの上縁部に圧接した状態になるが、スリット23fの両端に位置したときには、幅の広い部分の内部に係合して安定した状態になる。
【0038】
また、図8に示したように、球抜部材27の下部が賞球払出通路32側に位置しているときには、遊技球Aは、球抜部材27の下端開口部分でスプロケット25に当接してスプロケット25が回転したときだけ、スプロケット25が設置された部分を通過することができる。図9に示したように、球抜部材27の下部が賞球払出通路32側から球抜通路33側に移動しているときには、遊技球Aは、球抜部材27の下端開口部分でスプロケット25に当接して球抜部材27の内部から出ることができない状態になる。そして、図10に示したように、球抜部材27の下部が球抜通路33側に位置しているときには、スプロケット25が障害になることはないため、遊技球Aは、自由に球抜部材27から球抜通路33内を流下していくことができる。
【0039】
フォトセンサ28は、センサ本体28aと、発光子28bと、受光子28cとで構成されており、発光子28bと、受光子28cとを、賞球払出通路32の下部に両側から対向させた状態で後カバー21とケース本体22との間に固定されている。そして、遊技球Aが賞球払出通路32を通過するときに、発光子28bから受光子28cに送られる光が遮断されることによって賞球払出通路32を通過する遊技球Aを検出する。このフォトセンサ28による遊技球Aの検出によって、遊技球Aの計数が行われる。また、パチンコ機10には、所定の処理を実行するCPU、CPUが実行するプログラムを記憶するROM、CPUの処理に使用されるデータなどを一時的に記憶するRAM等からなる制御部が備わっており、ステッピングモータ24のコネクタ24eおよびフォトセンサ28は、配線を介して制御部に接続されている。
【0040】
さらに、入賞装置16a,16bには、入賞球を検出する入賞球検出センサも備わっている。そして、遊技球Aを入賞球検出センサが検出すると、CPUの制御により、ステッピングモータ24が作動してスプロケット25が回転する。これによって、球タンク18や傾斜樋18aの遊技球Aは、所定数、例えば、入賞装置16aに入ると5球、入賞装置16bに入ると10球が、球導入通路31および賞球払出通路32を通過して、上皿12に送られる。なお、遊技者がプレイしているときには、球抜部材27は、球導入通路31と賞球払出通路32とが連通するように操作されている。このようにして組み付けられる各部材や各装置は、それぞれねじ挿通穴21fを挿通させたねじをねじ穴部22jに螺合させ、ねじ挿通穴21gを挿通させたねじをねじ穴部22kに螺合させ、ねじ挿通穴部23jを挿通させたねじをねじ穴部22rに螺合させることにより固定される。
【0041】
このように構成された球払出装置20が備わったパチンコ機10を使用する場合には、摘み部27cをスリット23fの右端に位置させて球抜部材27で球導入通路31と賞球払出通路32とが連通された状態にする。そして、上皿12に所定数の遊技球Aを入れ、この遊技球Aを1個ずつ打球発射部から発射して遊技領域11内に放出する。これによって、遊技球Aは、遊技領域11の入賞装置16a,16bまたはアウト口17に入る。入賞装置16a,16bやアウト口17に入った遊技球Aは、所定の通路を通って回収タンクに落下する。
【0042】
また、入賞装置16a,16bに入った遊技球Aを入賞球検出センサが検出すると、ステッピングモータ24が作動して、スプロケット25が図8の状態で時計周り方向に回転する。これによって、スプロケット25は、球タンク18や傾斜樋18aの遊技球Aを賞球として5球または10球通過させて、賞球払出通路本体19aを介して上皿12に送る。このとき、遊技球Aは、図2に矢印で示した方向に沿って球タンク18から上皿12に流下していく。そして、所定数の遊技球Aが賞球払出通路32を通過したことをフォトセンサ28が検出すると、CPUの制御により、ステッピングモータ24の作動が停止してスプロケット25も停止する。このようなことが繰り返されながらゲームが進んでいく。
【0043】
また、パチンコ機10の使用を停止して、球タンク18や傾斜樋18aの遊技球Aおよび球タンク18の上流側にある遊技球Aをすべて機外に取り出す場合には、摘み部27cをスリット23fの左端に位置させて球抜部材27で球導入通路31と球抜通路33とが連通された状態にする。この場合、球抜部材27は、図8に示した状態から、下部が左側に移動して図9に示した状態になったのちに、さらに下部が左側に移動して図10に示した状態になる。その間、球抜部材27が図10に示した状態になるまで、遊技球Aは、球抜部材27の内部から出ることができない状態になっている。そして、球抜部材27が図10に示した状態になったときに、球抜部材27内の遊技球Aも球抜部材27とともに球抜通路33側に移動する。これによって、すべての遊技球Aは、球抜部材27から球抜通路33内を流下して、予め準備された回収容器等に送られる。
【0044】
このように、本実施形態に係る球払出装置20では、球タンク18から遊技球Aが送られる球導入通路31の下部側を、上皿12に連通する賞球払出通路32とパチンコ機10の外部に連通する球抜通路33とに分岐させている。そして、球導入通路31と、賞球払出通路32と、球抜通路33との交差部に、回転することにより、球導入通路31に連通する通路を賞球払出通路32と球抜通路33とに振り分ける球抜部材27を設けるとともに、球抜部材27の近傍に、賞球払出通路32に送られてくる遊技球Aを下方に通過させるスプロケット25を設けている。このため、球抜部材27で、球導入通路31と賞球払出通路32とを連通させた状態で、スプロケット25を回転させることにより、賞球払出通路32に送られてくる遊技球Aを下方に通過させることができる。
【0045】
また、球抜部材27は、球導入通路31と賞球払出通路32とを連通させるときには、賞球払出通路32と直結し、球導入通路31と球抜通路33とを連通させるときには、球抜通路33と直結する。このため、球抜部材27で、球導入通路31と球抜通路33とを連通させて、遊技球Aをパチンコ機10の外部に放出するときには、球導入通路31と賞球払出通路32とは遮断されて賞球払出通路32におけるスプロケット25の上流側には、遊技球Aが位置しなくなる。これによって、パチンコ機10の球タンク18側から流下してくる遊技球Aは、すべて球抜通路33を通過するようになる。また、遊技球Aが球抜通路33を通過する際に、スプロケット25に接触しないため、球抜きの際に、スプロケット25に変形や破損が生じることもない。
【0046】
さらに、遊技球Aは自由に流下するためスプロケット25を回転させる必要はなく、摘み部27cの操作も手動で行うため、電源を落とした状態で球抜き作業を行える。また、ステッピングモータ24を逆回転させたり連続回転させたりする必要がないため、複雑な制御やスイッチ等の部品も不要になり、制御や構造が簡単になる。さらに、球抜部材27とスプロケット25とを近傍に配置するため、球払出装置20を小型化できるという効果も生じる。また、球導入通路31と賞球払出通路32とが、略一直線状に延びるため、球払いの際の遊技球Aに対する抵抗が少なくなり、遊技球Aの払出速度を速くすることができる。球抜きに対して球払い出しは頻度が多いため、遊技球Aの払出速度を速くすることはより好ましい。
【0047】
さらに、球抜部材27の回転操作は、摘み部27cを手で持ってできるため、球抜部材27の回転操作が容易になる。また、スリット23fの両端に幅の広い部分を設けたため、摘み部27cの操作にクリック感が生じるとともに、摘み部27cをスリット23fの中央部に位置させるといった操作ミスがなくなるという効果も生じる。さらに、球抜部材27が一体からなる部材で構成されているため、部品点数を少なくすることができるとともに単純な構造にすることができる。
【0048】
また、本発明に係る遊技機の球払出装置は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更することができる。例えば、前述した実施形態では、球抜部材27を横断面形状が略半円状になった長さの短い樋状に形成して、本体壁部22aの前面との間に遊技球Aを通す通路を形成するようにしているが、球抜部材を筒状に形成して球抜部材だけで通路が構成されるようにしてもよい。また、支点を構成する支持穴部23eと支持穴22hとに代えてそれぞれ支持軸を用い、球抜部材27の軸部27bに代えて支持軸に嵌合する凹部を用いてもよい。また、遊技機の球払出装置のそれ以外の部分の構成についても本発明の技術的範囲内で適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
10…パチンコ機、20…球払出装置、22a…本体壁部、22h…支持穴、23…前カバー、23e…支持穴部、23f…スリット、25…スプロケット、27…球抜部材、27b…軸部、27c…摘み部、31…球導入通路、32…賞球払出通路、33…球抜通路、A…遊技球。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機の上部から球導入通路に送り出される遊技球を、賞球払出通路と球抜通路とに振り分けて流下させる遊技機の球払出装置において、
前記球導入通路と、前記賞球払出通路と、前記球抜通路との交差部近傍に設けられた支点を中心に回転可能に取り付けられ、前記球導入通路に連通する通路を前記賞球払出通路と前記球抜通路とに振り分ける球抜部材と、
前記賞球払出通路内に突出した状態で、前記賞球払出通路と前記球抜通路との間に配置され、回転することにより前記賞球払出通路に送られてくる遊技球を下方に通過させるスプロケットとを備え、
前記球抜部材で、前記球導入通路と前記賞球払出通路とを連通させたときに、前記球抜部材で構成される通路と前記スプロケットで構成される通路とが直結するようにしたことを特徴とする遊技機の球払出装置。
【請求項2】
前記球抜部材を樋状に形成して、前記樋状の長手方向に沿った開口側を前記球払出装置の本体壁面に対向させることにより前記球抜部材で構成される通路を構成し、前記球抜部材内に遊技球が位置している状態で、前記球抜部材を、前記球導入通路と前記賞球払出通路とを連通させた状態から前記球導入通路と前記球抜通路とを連通させる方向に回転させたときに、前記遊技球が前記球抜部材とともに前記球抜通路側に移動するようにした請求項1に記載の遊技機の球払出装置。
【請求項3】
前記球払出装置の表面に表面カバーが設けられているとともに、前記表面カバーに前記球抜部材が回転する際の回転軌道に沿う円弧状のスリットが形成され、前記球抜部材に前記スリットを貫通して外部に突出する摘み部が形成されている請求項1または2に記載の遊技機の球払出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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