説明

遊技機用施錠装置

【課題】シンプルな構造で、背面側及び正面側に突出部がなくコンパクトに構成でき、装置の搬送時や使用時の他部材との干渉を回避することができる遊技機用施錠装置を提供する。
【解決手段】基枠1は、正面側の取付板2、背面側の背面板4、及び右側面側の支持板3を各々略直角に曲折し、横断面を略コ字状とするチャンネル状に形成される。受け金具53を受け入れる受入開口部1aが背面板4から支持板3の上部と下部に形成される。フック部材5,6及びロック部材10,11は、施錠時及び解錠時共に基枠1の取付板2、支持板3及び背面板4で囲まれた内側空間に位置する。フック部材5,6とロック部材10,11間にコイルばね12,13が掛け渡される。コイルばね12,13は、フック部材5,6を解錠側に付勢すると共に、ロック部材10,11をロック側に付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機、スロットマシンなどの遊技機の施錠装置に関し、特に、遊技機の表枠(前面枠、前扉)を本体枠(筐体)に対し施錠するフック部材を備えた遊技機用施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パチンコ機の前面枠を本体枠に対し施錠する施錠装置として、下記特許文献1に記載されるように、断面L字状の取付板と支持板からなる基枠の内側に摺動杆が摺動可能に配設され、摺動杆の上部と下部に鉤部が側方に突出して形成され、取付板の中間部にシリンダ錠がその錠軸を取付板に設けた孔から内側に差込むように固定され、錠軸の先端に摺動杆と係合するカム部材が固定されてなる施錠装置が、使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−3784号公報
【特許文献2】特開2009−160223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の施錠装置は、前面枠を施錠するために、前面枠を本体枠に対し閉じると、本体枠側に固定した受け金具の係止部に、摺動杆の上部と下部の鉤部が当たり、鉤部が摺動杆と共に解錠方向に一旦移動しながら元の位置に戻ってそのフック状の係止部分に係止され、施錠される。
【0005】
しかしながら、この種の施錠装置は、前面枠を解錠して開放した状態において、フック状の鉤部が施錠装置の基枠体から突出す形態となるので、鉤部の先端が他の部材や点検作業のために前面枠を開放した作業者に干渉することがあり、できれば、鉤部が施錠装置の基枠体から外側に突出しないことが、点検作業などの際には望ましい。また、施錠装置を製造の段階で、遊技機の組立工程の場所まで搬送する際などに、鉤部が基枠体から突出した状態の施錠装置を搬送する場合、鉤部が他の部材と干渉しやすく、鉤部の干渉により搬送途中の不具合が生じやすい。さらに、ワイヤや針金等を遊技機の隙間から挿入するような不正解錠が行われた場合、鉤部が施錠装置の基枠体から突出する形態では、鉤部にワイヤや針金等がかかりやすく、不正解錠される可能性があった。
【0006】
一方、上記特許文献2において、遊技機用施錠装置として、本体枠側に固定したピン状のストライカを、回動可能なフックとポールとの間に係止して施錠する遊技機用施錠装置が提案されている。この遊技機用施錠装置は、ストライカを係止するフックとポールが長尺のベース内に回動可能に取り付けられ、フックとポールはベース内に配置され、ベースから外側に突出する部材を少なくするようにしている。
【0007】
しかし、フックとポールの形状が複雑となって前後方向に比較的長くなること、及び複雑な構造のフックとボールが施錠装置の側面に露出することから、フックとポールを取り付ける部分のベースの前後幅が幅広となって露出するので、施錠装置全体から見た場合、やはりストライカを係止するフックとポールの部分で施錠装置が背面側に突出し、しかも、フック、ポール、スライダ、コイルばね等がベースの側面に大きく露出する。
【0008】
このため、遊技機の点検作業などの際、前面枠を開放したときに、施錠装置のフック、ポール、スライダ、コイルばね等がやはり作業者や他の部材と干渉しやすく、また、施錠装置の搬送時にも、フック、ポール、スライダ、コイルばね等が他の部材と干渉し、搬送途中に部品が外れるなどの不具合が生じやすいという課題があった。
【0009】
さらに、この施錠装置は、フック、ポール、スライダ、コイルばね等の部品点数が多く、製造工程も増大し、製造コストが高く、しかも、装置の側面にフック、ポール、スライダ、コイルばね等が大きく露出するので、ワイヤや針金等を遊技機の隙間から挿入するような不正解錠が行われた場合、フック、ポール、スライダ、コイルばね等にワイヤや針金等がかかりやすく、不正解錠される可能性が大きい。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、シンプルな構造で、背面側及び正面側に突出部がなくコンパクトに構成でき、装置の搬送時や使用時の他部材との干渉を回避し、遊技機の表枠などを確実に施錠し円滑に解錠することができ、不正解錠を有効に防止可能な遊技機用施錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の遊技機用施錠装置は、
細く長尺の基枠内の上部と下部に回動可能に軸支され、回動しながら本体枠側の受け金具を受け入れて係止する係止凹部を有したフック部材と、
該基枠内の上部と下部に摺動可能に配設され、該各フック部材が回動して該受け金具を該係止凹部内に受け入れて係止したとき、該各フック部材をロック状態に保持するロック部材と、
該基枠の正面側の取付板に、錠軸に固定したカム部材を該基枠内に位置させて取り付けられたシリンダ錠と、
該基枠内に長手方向に沿って摺動可能に配設され、該シリンダ錠による解錠操作時に該カム部材と係合して摺動し、該各ロック部材を解錠側に摺動させ、該フック部材とロック部材との係合を外して該各フック部材を解錠動作させる作動杆と、
を備え、該基枠が遊技機の表枠の内側に縦に取付けられ、該遊技機の本体枠に取付けられた受け金具に、上部と下部の該フック部材を係止させて該表枠を施錠する遊技機用施錠装置において、
前記基枠は、正面側の取付板、背面側の背面板、及び右側面側の支持板を各々略直角に曲折し、横断面を略コ字状とするチャンネル状に形成される一方、該受け金具を受け入れる受入開口部を該背面板から該支持板の上部と下部に形成して構成され、
前記フック部材及びロック部材は、施錠時及び解錠時共に該基枠の取付板、支持板及び背面板で囲まれた内側空間に位置し、
該フック部材と該ロック部材間にコイルばねが掛け渡され、該コイルばねは、該フック部材を解錠側に付勢すると共に、該ロック部材をロック側に付勢し、且つ解錠時に前記作動杆を元の位置に戻すように付勢することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、上記フック部材、ロック部材、コイルばね及び作動杆を、チャンネル状の基枠内にコンパクトに配して、安価に製造することができ、また、基枠から外側に突出す部分が殆どなく、搬送時、実際の使用時共に、フック部材、ロック部材、コイルばね等と他の部材との干渉を回避して、搬送時の不具合を解消し、施錠装置を遊技機に取り付けて使用された場合、遊技機の点検時などに表枠を開放した際の作業者との干渉を回避することができる。さらに、フック部材、ロック部材、コイルばね等が基枠内に収容されるため、ワイヤや針金等を遊技機の隙間から挿入するような不正解錠が行われたとしても、フック部材、ロック部材、コイルばね等にワイヤや針金等がかかりにくく、不正解錠を防止することができる。
【0013】
ここで、上記ロック部材に傾斜凸部が設けられ、上記フック部材に該傾斜凸部と係合可能な係合凸部が設けられ、該係合凸部は、回動自在な係合ピンにより形成することが好ましい。これによれば、施錠時に、係合ピンが回動しながらロック部材の傾斜凸部を押して摺動させるので、その間の摩擦抵抗を小さくし、より軽く施錠することができる。
【0014】
また、解錠動作時に、受け金具を押し出す押出部を、上記フック部材に形成する構成とすることができる。これによれば、解錠時、フック部材がコイルばねの付勢力により解錠側に回動する際、押出部が受け金具を押し出すように作用し、表枠を自動的に押し開くことができる。
【0015】
また、遊技機の本体枠側に取り付けられてフック部材に係止される受け金具には、施錠時にフック部材の背面側を覆うカバー部を設けることが好ましい。これによれば、施錠状態で、カバー部がフック部材を背面から覆うこととなるので、本体枠と表枠の隙間から針金等を挿入して行う不正解錠を、一層防止することができる。
【0016】
さらに、上記構成の遊技機用施錠装置において、ガラス枠が前記遊技機の表枠に対し開閉可能に取り付けられ、該ガラス枠の上部と下部に施錠用のガラス枠受け部が設けられ、前記基枠内の上部と下部にガラス枠施錠用の鉤部材が取付板に設けたスリットからその係止部を正面側に突出して該基枠内に摺動可能に取り付けられ、該上部と下部の該鉤部材には各々施錠側に付勢するコイルばねがかけられ、該鉤部材をガラス枠のガラス枠受け部に係止させてガラス枠を施錠するように構成され、該基枠の内側に1本の作動杆が上下に摺動可能に配設され、該作動杆には前記ロック部材及び鉤部材と係合する係合部が設けられ、該作動杆の上または下への摺動により、表枠用の該ロック部材又はガラス枠用の該鉤部材を上または下へ摺動させ、該ロック部材によるフック部材または鉤部材の係止を解除して解錠側に回動または摺動させて、表枠またはガラス枠を解錠するように構成することができる。
【0017】
この発明によれば、コンパクトな施錠装置により、遊技機の表枠とガラス枠の両方を施錠することができ、また、1本の作動杆の上または下への摺動により、表枠またはガラス枠の解錠を簡単に行うことができる。
【0018】
また、上記施錠装置において、上記作動杆は、上記ガラス枠用の鉤部材を施錠側に付勢するコイルばねと、上記ロック部材を付勢するコイルばねとにより、中立位置に保持されるように構成することができる。この発明によれば、少ない部品点数で比較的簡単な構造により、解錠操作時、カム部材を介して作動杆を軽い操作力で上または下に摺動させて、表枠またはガラス枠を円滑に解錠することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の遊技機用施錠装置によれば、簡単な構造で、背面側及び正面側に突出部がなくコンパクトな構造として、安価に製造することができる共に、基枠内にフック部材を位置させて他の部材との干渉を回避し、不正解錠を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例を示す施錠装置の正面図である。
【図2】同施錠装置の右側面図である。
【図3】同施錠装置の背面図である。
【図4】同施錠装置の正面側の斜視図である。
【図5】同施錠装置に背面側の斜視図である。
【図6】同施錠装置の分解背面図である。
【図7】同施錠装置の分解右側面図である。
【図8】同施錠装置の上部斜視図である。
【図9】同施錠装置の下部斜視図である。
【図10】パチンコ機に施錠装置を取り付けた状態の概略正面図である。
【図11】パチンコ機に施錠装置を取り付けた状態の概略右側面図である。
【図12】表枠を閉じる際の上部拡大右側面図である。
【図13】表枠を施錠した状態の上部拡大右側面図である。
【図14】表枠を閉じる際の下部拡大右側面図である。
【図15】表枠を施錠した状態の上部拡大右側面図である。
【図16】他の実施形態における表枠を閉じる際の上部拡大右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1はパチンコ機に適用される遊技機用施錠装置の正面図を、図2はその右側面図を、図3はその背面図を示している。図において、1は施錠装置のフレームとなる縦長の基枠であり、基枠1は、横断面を略コ字状としたチャンネル材状に形成され、正面側の取付板2、背面側の背面板4、及び右側面側の支持板3を各々略直角に曲折し、横断面を略コ字状とする形状に形成されている。
【0022】
基枠1の正面に位置する取付板2は、遊技機の表枠の内側に縦に固定されるように、複数の固定孔が固定ねじのために形成され、さらに、取付板2の中間部下寄りに、シリンダ錠用の取付部2aが正面側に突出すように形成され、その取付部2aに、シリンダ錠7を挿入固定するための異形穴が形成される。シリンダ錠7はフランジ7bを有すると共に、ロータの先端が錠軸7aとして内側に突設され、錠軸7aの先端にカム部材9が固定される。シリンダ錠7は、取付板2の異形穴に内側から挿通し、フランジ7bを取付板2の内側に当て、固定ねじなどで締め付け固定され、基枠1の取付部2aの正面側にシリンダ錠7が突出する形態で取り付けられる。図14,15などに示すように、カム部材9には2個の係合凸部9a,9bが両側に、対称型に突設されている。
【0023】
さらに、基枠1の上部と下部には、受け金具53の係止板54を受け入れるための受入開口部1aが背面板4から支持板3にかけて形成される。さらに、基枠1の取付板2、支持板3及び背面板4で囲まれた内側空間における受入開口部1aの近傍に、フック部材5.6が支持板3の内側に枢軸5a,6aを介して回動可能に軸支される。フック部材5,6は、図12〜図14に示すように、受け金具53の係止板54を嵌入させるための係止凹部5b、6bが形成され、枢軸5a,6aを軸にフック部材5,6を、施錠時と解錠時との間(図12の角度αの範囲)で回動させたとき、フック部材5,6はその殆どの部分が基枠1内にあり、外側に突出しない形状に形成されている。
【0024】
つまり、フック部材5,6は、施錠時、図13,15に示す如く、基枠1の内側にその略全体が収納されてロックされ、且つ解錠時においても、図12,14に示す如く、基枠1の内側にその略全体が収納された状態を維持するようになっており、これにより、施錠装置の搬送時に、フック部材5,6が他の部材と干渉し、或いは施錠装置の点検時などに作業者の邪魔にならない構造となっている。
【0025】
さらに、図12,14のように、フック部材5,6の係止凹部5b、6bの近傍には、解錠時にフック部材5,6が回動した際、係止凹部5b、6bに係止していた受け金具53の係止板54を押し出すための押出部5d、6dが膨出形状として形成されている。さらに、フック部材5,6には、図12,14に示すように、ロック部材10,11に係合する係合凸部5c、6cが、部材の一部を右側に折り曲げるように形成され、施錠時に、受け金具53の係止板54がフック部材5,6の係止凹部5b、6b内に押し込まれ、フック部材5,6が図12、14の時計方向に回動したとき、ロック部材10,11の傾斜凸部10a,11aを押し下げて下降させるようになっている。
【0026】
ロック部材10,11は、施錠時、フック部材5,6が施錠位置まで回動したとき、フック部材5,6をロックする部材であり、上記のように、施錠時に、受け金具53の係止板54がフック部材5,6の係止凹部5b、6b内に押し込まれ、フック部材5,6が図12、14の時計方向に回動したとき、押し下げられて下降し、図13,15のように、その傾斜凸部10a,11aをフック部材5,6の係合凸部5c、6cに係止させてフック部材5,6をロック位置に係止するようになっている。また、図7などに示すように、ロック部材10,11の下部には、係合部10b、11bがその一部を作動杆8側に折り曲げるように形成され、作動杆8のロック解除用の係合部8b、8cと係合可能となっている。
【0027】
図12〜図15に示す如く、フック部材5とロック部材10間、フック部材6とロック部材11間には、各々、コイルばね12,13が掛け渡され、このコイルばね12,13によって、フック部材5,6は解錠側(図12、14の反時計方向)に付勢され、ロック部材10,11はロック側(図12,14の上側)に付勢される。図7に示すように、ロック部材10,11には、長孔が縦に形成され、この長孔にリベット18b、18dが挿入され、リベット18b、18dの先端を基枠1の支持板3の内側面に固定し、ロック部材10,11を所定の範囲で上下摺動可能に基枠1内に配設している。なお、図12,14に示すように、リベット18b、18dは、作動杆8に形成された長孔にも挿通され、作動杆8が解錠時、シリンダ錠7のカム部材9の回動によって摺動可能に保持されるようになっている。
【0028】
作動杆8は、図4,5などに示すように、帯板状に形成されて基枠1の内側に、支持板3の内側に沿って上下摺動可能に収納される。上記のフック部材5とロック部材10、及びフック部材6とロック部材11は、支持板3と作動杆8との間に配設され、板状の作動杆8によりフック部材5,6及びロック部材10,11をカバーして露出させないようにしている。作動杆8は、解錠時に、シリンダ錠7の錠軸7aの一方向の回動力を、カム部材9を介して受けて下降し、それにより、ロック部材10,11を下方に摺動させて、フック部材5,6の係止状態を解除して、表枠を解錠する一方、他方向へのカム部材9の回動時には上昇し、ガラス枠施錠用の鉤部材14,15を上昇させて、ガラス枠を解錠するように構成される。
【0029】
このために、作動杆8には、その下部寄りに係合部8aが設けられ、シリンダ錠7の挿入した鍵を右に回してカム部材9を同方向に回したとき、カム部材9の係合凸部9aが係合部8aの上部に係合して、作動杆8を下降させ、一方、鍵を左に回してカム部材9を同方向に回したとき、カム部材9の係合凸部9bが係合部8aの下部に係合して、作動杆8を上昇させるようになっている。上述の如く、作動杆8には、その上部寄りと下端部に、ロック解除用の係合部8b、8cが設けられ、作動杆8が解錠時に下降したとき、係合部8b、8cがロック部材10,11の係合部10b、11bに係合して押し下げ、ロック部材10,11を下方に摺動させてフック部材5,6の係止を解除して解錠する構造である。
【0030】
さらに、基枠1の上部と中間部には、ガラス枠を施錠するための鉤部材14,15が、図4に示すように、基枠1の正面側の取付板2に設けたスリット2bからその係止部を突出すように取り付けられる。ガラス枠施錠用の鉤部材14,15は、図2、7に示すように、基枠1内に上下摺動可能に収容される長方形部分の正面側に、フック状の係止凹部を有する鉤部を、下向きに設けて構成される。鉤部材14,15には、係合凸部14a,15aがコイルばね16,17の掛止部と兼用部分として設けられ、上記作動杆8がシリンダ錠7のカム部材9の回動により上昇したとき、作動杆8のガラス枠解錠用の係合部8d,8eがその係合凸部14a,15aと係合し、鉤部材14,15を上方に摺動させ、ガラス枠を解錠する。つまり、作動杆8は、表枠解錠用とガラス枠解錠用との兼用の作動杆として基枠1内に配設され、その下降により、ロック部材10,11を下降させ、ロック部材10,11のフック部材5,6に対するロックを解除して、表枠を解錠し、その上昇により、ガラス枠施錠用の鉤部材14,15を上昇させて、ガラス枠を解錠するように構成される。
【0031】
鉤部材14,15の長方形部分に、長孔が形成され、その長孔にリベット18a,18cを挿入し、リベット18a,18cの先端を支持板3に固定することにより、鉤部材14,15は、リベット18a,18cと長孔をガイドとして、所定の範囲で上下摺動を可能として取り付けられる。また、図7に示すように、作動杆8にも、リベット18a,18c挿通用の長孔が設けられ、作動杆8は、このリベット18a,18cと長孔の係合により、上下摺動をガイドされる。鉤部材14,15と基枠1の取付板2間には、コイルばね16,17が掛けられ、鉤部材14,15は各々コイルばね16,17により下側(施錠側)に常時付勢されている。つまり、作動杆8は、ガラス枠用の鉤部材14、15を施錠側に付勢するコイルばね16、17と、ロック部材10、11を付勢するコイルばね12,13とにより、中立位置に保持されるようになっている。これにより、少ない部品点数で比較的簡単な構造により、解錠操作時、カム部材9を介して作動杆8を軽い操作力で上または下に摺動させて、表枠またはガラス枠を円滑に解錠することができる。
【0032】
このように構成された遊技機用施錠装置は、図10、11に示すように、パチンコ機における表枠51の自由端側の内側に、シリンダ錠7の先端を前面に露出させ、フック部材5,6をパチンコ機の本体枠50側に突出した状態で、取付板2の取付孔に固定ねじを挿入してねじこみ、縦に取付けられる。
【0033】
一方、本体枠50の内側のフック部材5,6に対応した上下位置には、受け金具53が固定される。受け金具53は、図9などに示すように、金属板を略コ字状に曲折して形成され、一方にフック部材5,6が係止される係止板54が突設され、その係止板54を背面側から覆うようにカバー部55が形成されている。また、表枠51の前面に開閉可能に装着されたガラス枠52には、図11のように、ガラス枠用の鉤部材14,15に対応した位置に、ガラス枠受け部56が設けられる。
【0034】
図10に示すように、この施錠装置は、パチンコ機の表枠51の自由端側縁部の内側に、縦に取り付けられるが、図10,11に示す如く、その基枠1の右側面に何れの解錠用部材も現れず、フック部材5,6、ロック部材10,11、作動杆8などは、基枠1の支持板3の内側に収納され、基枠1の背面側は背面板4により覆われる。このため、不正解錠の際に、本体枠50と表枠51の自由端側の隙間から、針金などが差し込まれたとしても、フック部材5,6、ロック部材10,11、作動杆8などに、針金等の不正器具は到達せず、その種の不正解錠を、効果的に防止することができる。また、表枠51を施錠するフック部材5,6及びガラス枠52を施錠する鉤部材14,15は各々独立して摺動可能な構造となっているので、それによっても、不正解錠を防止することができる。
【0035】
次に、上記構成の遊技機用施錠装置の動作を説明する。パチンコ機における表枠51を本体枠50に対し閉じると、図12〜15に示すように、受け金具53の係止板54が、基枠1の受入開口部1aから、フック部材5,6の係止凹部5b、6b内に進入し、コイルばね12,13の付勢力に抗して、フック部材5,6が図12,16の時計方向に回動する。
【0036】
このとき、フック部材5,6はその係合凸部5c、6cがロック部材10,11の傾斜凸部10a,11aを押して、ロック部材10,11を下側に摺動させ、図13,15のロック位置までフック部材5,6が回動したとき、図13,15に示すように、係合凸部5c、6cが傾斜凸部10a,11aに係止されて、フック部材5,6が受け金具53の係止板54を巻き込むように係止した施錠状態となる。
【0037】
一方、表枠51を解錠する場合は、キーによってシリンダ錠7の錠軸7aを右に回し、カム部材9を同方向に回転させる。このとき、カム部材9の係合凸部9aが作動杆8の係合部8aの上部に係合し、作動杆8を下側に押し下げる。
【0038】
この作動杆8の下降により、その係合部8b、8cがロック部材の係合部10b、11bに係合して、ロック部材10,11が下降する。このロック部材10,11の下降により、その傾斜凸部10a,11aとフック部材5,6の係合凸部5c、6cの係合が外れ、フック部材5,6は、コイルばね12,13のばね力により、図14,16の位置まで、反時計方向つまり背面側に回動し、表枠51が解錠状態となる。このとき、フック部材5,6の膨出した押出部5d、6dは、受け金具53の係止板54を押し出すように作用するため、その反力を受けた表枠51は、前面に押し出されるように軽く開くことができる。
【0039】
一方、表枠51内のガラス枠52を表枠51に対し閉じる際には、ガラス枠52を表枠51に対し押して閉じる。このとき、ガラス枠52の内側に設けたガラス枠受け部56が、図11のように、鉤部材14,15の頭部の傾斜面に当り、これを上方に摺動させ、係止位置に達したとき、コイルばね16,17の付勢力により鉤部材14,15が原位置に(下方に)戻ることにより、図11の如く、ガラス枠受け部56に鉤部材14,15が係止され、ガラス枠52は施錠状態となる。
【0040】
一方、ガラス枠52を解錠する場合は、キーによってシリンダ錠7の錠軸7aを表枠解錠時とは逆の左に回し、カム部材9を同方向に回転させる。このとき、カム部材9の下側の係合凸部9bは作動杆8の係合部8aの下部に係合してこれを押し上げる。
【0041】
この作動杆8の上昇により、その係合部8d,8eが、ガラス枠用の鉤部材14,15の係合凸部14a,15aに当たり、これを押し上げる。これによって、ガラス枠用の鉤部材14,15が、コイルばね16,17のばね力に抗して上方に摺動し、このとき、ガラス枠受け部56が鉤部材14,15から外れ、ガラス枠52は解錠状態となる。
【0042】
このように、フック部材5,6、ロック部材10,11、コイルばね12,13.16,17及び作動杆8を、チャンネル状の基枠1内にコンパクトに配して、施錠装置をより少ない部品点数と加工工数で、より安価に製造することができる。また、フック部材5,6、ロック部材10,11、コイルばね12,13,16,17が基枠内に収容されるため、ワイヤや針金等を遊技機の隙間から挿入するような不正解錠が行われたとしても、フック部材、ロック部材、コイルばね等にワイヤや針金等がかかりにくく、不正解錠を防止することができる。
【0043】
さらに、基枠1から外側に突出す部分が殆どなく、搬送時、実際の使用時共に、フック部材5,6、ロック部材10,11、コイルばね等と他の部材との干渉を回避して、搬送時の不具合を解消し、施錠装置を遊技機に取り付けて使用された場合、遊技機の点検時などに表枠51を開放した際の作業者との干渉を回避することができる。
【0044】
また、コンパクトな施錠装置により、遊技機の表枠51とガラス枠52の両方を施錠することができ、1本の作動杆8の上または下への摺動により、表枠51またはガラス枠52の解錠を簡単に行うことができる。また、作動杆8は、ガラス枠用の鉤部材14,15を施錠側に付勢するコイルばね16,17と、ロック部材10,11を付勢するコイルばね12,13とにより、中立位置に保持されるので、少ない部品点数で比較的簡単な構造により、解錠操作時、カム部材9を介して作動杆8を軽い操作力で上または下に摺動させて、表枠51またはガラス枠52を円滑に解錠することができる。
【0045】
なお、ロック部材10,11の傾斜凸部10a,11aと係合可能な係合部として、上記でフック部材5,6に板状の係合凸部5c、6c設けたが、この係合凸部は、図16に示すように、回動自在な係合ピン25cとすることができる。このような係合ピン25cをフック部材5,6上に回動自在に設けることにより、施錠時に、係合ピン25cが回動しながらロック部材10,11の傾斜凸部10a,11aを押して摺動させるので、その間の摩擦抵抗を小さくし、施錠時に受け金具53の係止板54をフック部材5,6の係止凹部5b、6bに押し込み施錠する際、より軽く施錠操作を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 基枠
1a 受入開口部
2 取付板
2a 取付部
2b スリット
3 支持板
4 背面板
5 フック部材
5a 枢軸
5b 係止凹部
5c 係合凸部
5d 押出部
6 フック部材
7 シリンダ錠
7a 錠軸
7b フランジ
8 作動杆
8a 係合部
8b 係合部
8d 係合部
9 カム部材
9a 係合凸部
9b 係合凸部
10 ロック部材
10a 傾斜凸部
10b 係合部
11 ロック部材
14 鉤部材
14a 係合凸部
25c 係合ピン
50 本体枠
51 表枠
52 ガラス枠
53 受け金具
54 係止板
55 カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細く長尺の基枠内の上部と下部に回動可能に軸支され、回動しながら本体枠側の受け金具を受け入れて係止する係止凹部を有したフック部材と、
該基枠内の上部と下部に摺動可能に配設され、該各フック部材が回動して該受け金具を該係止凹部内に受け入れて係止したとき、該各フック部材をロック状態に保持するロック部材と、
該基枠の正面側の取付板に、錠軸に固定したカム部材を該基枠内に位置させて取り付けられたシリンダ錠と、
該基枠内に長手方向に沿って摺動可能に配設され、該シリンダ錠による解錠操作時に該カム部材と係合して摺動し、該各ロック部材を解錠側に摺動させ、該フック部材とロック部材との係合を外して該各フック部材を解錠動作させる作動杆と、
を備え、該基枠が遊技機の表枠の内側に縦に取付けられ、該遊技機の本体枠に取付けられた受け金具に、上部と下部の該フック部材を係止させて該表枠を施錠する遊技機用施錠装置において、
前記基枠は、正面側の取付板、背面側の背面板、及び右側面側の支持板を各々略直角に曲折し、横断面を略コ字状とするチャンネル状に形成される一方、該受け金具を受け入れる受入開口部を該背面板から該支持板の上部と下部に形成して構成され、
前記フック部材及びロック部材は、施錠時及び解錠時共に該基枠の取付板、支持板及び背面板で囲まれた内側空間に位置し、
該フック部材と該ロック部材間にコイルばねが掛け渡され、該コイルばねは、該フック部材を解錠側に付勢すると共に、該ロック部材をロック側に付勢し、且つ解錠時に前記作動杆を元の位置に戻すように付勢することを特徴とする遊技機用施錠装置。
【請求項2】
前記ロック部材に傾斜凸部が設けられ、前記フック部材に該傾斜凸部と係合する係合凸部が設けられ、該係合凸部として回動自在な係合ピンが該傾斜凸部と係合可能に設けられたことを特徴とする請求項1記載の遊技機用施錠装置。
【請求項3】
解錠動作時に、前記フック部材が回動して前記受け金具を押し出すための押出部が該フック部材に設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の遊技機用施錠装置。
【請求項4】
遊技機の本体枠側に取り付けられて前記フック部材に係止される前記受け金具には、施錠時に該フック部材の背面側を覆うカバー部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の遊技機用施錠装置。
【請求項5】
ガラス枠が前記遊技機の表枠に対し開閉可能に取り付けられ、該ガラス枠の上部と下部に施錠用のガラス枠受け部が設けられ、前記基枠内の上部と下部にガラス枠施錠用の鉤部材が取付板に設けたスリットからその係止部を正面側に突出して該基枠内に摺動可能に取り付けられ、該上部と下部の該鉤部材には各々施錠側に付勢するコイルばねがかけられ、該鉤部材をガラス枠のガラス枠受け部に係止させてガラス枠を施錠するように構成され、該基枠の内側に1本の作動杆が上下に摺動可能に配設され、該作動杆には前記ロック部材及び鉤部材と係合する係合部が設けられ、該作動杆の上または下への摺動により、表枠用の該ロック部材又はガラス枠用の該鉤部材を上または下へ摺動させ、該ロック部材によるフック部材または鉤部材の係止を解除して解錠側に回動または摺動させて、表枠またはガラス枠を解錠することを特徴とする請求項1記載の遊技機用施錠装置。
【請求項6】
前記作動杆は、前記ガラス枠用の鉤部材を施錠側に付勢するコイルばね及び前記ロック部材を付勢するコイルばねにより、上下中立位置に保持されるように構成されたことを特徴とする請求項5記載の遊技機用施錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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