説明

遊技機

【課題】音声発生装置を遊技者方向に指向させて型成形部品に固着する際に複雑な成形型を使用することなく簡単な構造でネジにて固定することが可能な遊技機を提供すること。
【解決手段】カバープレートに傾斜面を備えた支持部を型成形によって一体的に形成し、その傾斜面に指向性のあるスピーカ装置を固着する際に、支持部36の成形型の型抜き方向V2と直交する面V2に対して傾斜面37を傾斜させて構成する。そして支持部36に傾斜面37に開口する透孔38を形成し、透孔38の内周壁面38aを型抜き方向に沿って延出した形状とする。一方スピーカ装置30側にはスピーカ装置30を傾斜面37に配置させた状態で透孔38位置に一致させ、その軸線P方向が傾斜面37方向と直交するネジ孔47を形成し、透孔38に対して支持部36裏面側より傾斜面37と軸線P方向を直交させるようにタッピンネジ41を挿通してスピーカ装置30を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は指向性のある音声発生装置を内蔵した遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりパチンコ機やスロットマシン等に代表される遊技機では、遊技における各種の効果音を出力する音声発生装置としてのスピーカ装置が内蔵されている。このようなスピーカ装置はかつては単に聞こえればよいというように遊技において副次的な意味が強かったのであるが、近年では音声による遊技の演出効果が重視されるようになてきている。そのため、複数のスピーカ装置を使用してステレオ装置からより臨場感のある音声を出力したり、スピーカ装置をなるべく耳に近い遊技機の前面パネルに配設し遊技者により明瞭な音質のよい状態で効果音を聞かせたりするようにしている。
さらに、近年では指向性のあるスピーカ装置を単に遊技機の前面パネルに配設するだけではなく、遊技者の頭部方向に傾けて配置することで更なる音質の向上を実現するようにしている。このように遊技者はスピーカ装置の配置状態の改良によってより臨場感のある効果音を体感することができ、遊技の興趣が増すこととなっている。
【0003】
ところで、スピーカ装置はネジ止めによって所定の取り付け位置に固着するのが一般的である。すなわち、支持部側のネジ孔とスピーカ装置側の取り付け孔を一致させ、ネジを螺合させることでスピーカ装置を拘止するわけである。しかし、上記のように傾けてスピーカ装置を配置する場合には支持部にネジ孔を設けることが困難な場合がある。つまり、一般にスピーカ装置を支持する支持部は現状の遊技機では金型を使用したプラスチック成形によって他の部分、例えば前面パネルのベースプレートと一体的に形成される型成形部品とされている。金型によるプラスチック成形ではなるべく金型を少なくし、なおかつ単純なスライド型抜きができることが好ましい。すなわち、図16(a)に示すような2つの分割金型A,Bによって2分割できれば金型も単純化してコストが抑制でき、型抜き時のトラブルも少ないため好ましい。
しかし、図15のように基準となる垂直面sに対してスピーカ装置を傾けて支持部に配設する場合にはネジ孔100もその傾斜に応じ傾けて形成する必要がある。しかし、この場合には分割金型A,Bを使用することはできない場合がある。つまり図16(b)で示す矢印方向に分割金型A,Bをそれぞれスライドさせた場合に、ネジ孔100の向き(孔の軸p方向)は型抜き方向とはずれているため、ネジ孔に充填され固化したプラスチックが障害となって型抜きができなくなるからである。これを避けるためには例えば図16(c)のようにABCの3つの分割金型を使用しなくてはならないわけである。しかしこれでは、型抜きが非常に面倒になり、金型のコストもかかってしまうこととなる。また、金型形状が複雑になればそれだけ製品の不良品率も高くなるため好ましくない。更に、実際にはこのように単純に3つ以上の分割金型で抜く方向の異なるネジ孔に対応できるわけではなく、支持部の構造や他の構成との兼ね合いで傾斜したネジ孔を支持部に形成できない場合もありうる。
【0004】
これらの課題を解決するためにいくつかの手段が取りうる。例えば特許文献1には同文献1の図8に示すようにネジ下孔170の開口形状を傾斜方向に沿った長孔とし、成形型の抜き方向より内壁面上部側が外方に拡がった形状とすることで型抜きを可能とし、同じくその図9に示すようにタッピングネジ168の軸線方向を取付板26に対して直交させるようにして螺合させている。
また、他の手段として図17及び図18に示すように傾斜面101と平行にコーン形スピーカ装置102を配置する際に、支持部側の上下に配設された爪状のフック103,104によってスピーカ装置102を固定するようにすることが可能である。スピーカ装置102側の張り出し部108は支持ピン105,106及びフック103,104とによって上下2箇所で挟持され、傾斜した状態で支持されることとなる。
【特許文献1】特開2003−180954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1ではタッピングネジ168が螺合されるネジ下孔170は長孔形状とされているため、タッピングネジ168の全周がネジ下孔170に食い込むわけではない。タッピングネジ168はネジ下孔170内部でいわば前後の内周壁面によって挟持されているような状態で螺入されているにすぎない。従って、このような構造では型抜きは可能となるもののタッピングネジ168のネジ下孔170内における食い込み量が足らず締結力が十分発揮されないおそれがある。
また、上記図17及び図18に示すスピーカ装置102の固定手段では、張り出し部108の端を支持ピン105,106及びフック103,104とによって挟持しているにすぎないためネジによる固定に比べて固定力が弱く、また固定はされているものの、ネジのようなしっかりと締結されているのではないためコーンの振動に追随してスピーカ装置102自身が振動してしまい、発せられる音声が歪んで(いわゆる音が割れたり、びびるという症状)しまうという不具合が生じる。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、音声発生装置を遊技者方向に指向させて型成形部品に固着する際に複雑な成形型を使用することなく簡単な構造でネジにて固定することが可能な遊技機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1の発明では、遊技者と対面する前面部に装飾部材を備えるとともに、型成形により形成される型成形部品を備え、内部機器を前方から封塞する前面パネルであって、同型成形部品には傾斜面を備えた支持部が一体成形によって形成され、同傾斜面に指向性のある音声発生装置を配置させた状態で同支持部に対して同音声発生装置を固着し、同音声発生装置から発せられる音声を同前面パネルの前方かつ中央寄りに指向させるようにした遊技機において、前記型成形部品の成形型の型抜き方向と直交する面に対して前記傾斜面は傾斜して構成されるとともに、前記支持部には同傾斜面に開口する表裏に貫通した透孔を形成し、同透孔の内周壁面を型抜き方向に沿って延出した形状とし、前記音声発生装置側には同音声発生装置を同傾斜面に配置させた状態で同透孔位置に一致しその軸線方向が前記傾斜面方向と直交するネジ孔を形成し、
同透孔に対して前記支持部裏面側より前記傾斜面と軸線方向を直交させるようにネジを挿通し、同ネジを同透孔を介して同ネジ孔に対して螺合させ締め付けることで前記音声発生装置を同傾斜面に拘止させるようにしたことをその要旨とする。
【0007】
音声発生装置を支持部にネジ止めで固定する場合、支持部側のネジ孔と音声発生装置側のネジ孔を一致させネジを螺合させてこれを行う。しかし、支持部が傾斜面を備え音声発生装置をこの傾斜面に配置させる場合には、支持部側のネジ孔の軸線は傾斜面と直交させなければ音声発生装置側のネジ孔と一致させることはできない。ところが、型成形により支持部が一体成形される型成形部品では型抜き方向がその支持部側のネジ孔の軸線の方向と一致させられない場合がある。そのようなケースでは支持部側のネジ孔の軸線は傾斜面と直交させることはできず、このような傾斜面に音声発生装置をネジだけで固定することは困難である。
ところが、請求項1では、支持部の表裏に貫通して形成され傾斜面に開口する透孔の内周壁面は型成形部品の型抜き方向に沿って延出した形状とされている。そのため、型成形部品の型抜きが可能とされている。そして、この透孔は支持部の裏面側からネジを挿通した際にその軸線が傾斜面と直交するようにネジを進出することが可能となっている。一方、音声発生装置側のネジ孔もその軸線方向が傾斜面方向と直交するため、音声発生装置を傾斜面に透孔とネジ孔が一致させることができる。つまり、ネジを透孔の裏面側から挿入してネジとネジ孔の軸線がずれることなく両者をしっかりと螺合させることが可能となっている。ネジの締め付けによって最終的に音声発生装置は支持部の傾斜面に拘止される。
これによって、型成形部品の型抜きが可能となるとともに、支持部裏面からネジをその軸線方向において傾斜面方向に対して直交するように進出させてネジ孔に螺合させることもでき、型抜き方向に左右されずに種々の傾斜の傾斜面を設けることができるとともに音声発生装置をネジだけでしっかりと固定することが可能となる。
【0008】
また、上記の目的を達成するために請求項2の発明では、遊技者と対面する前面部に装飾部材を備えるとともに、型成形により形成される型成形部品を備え、内部機器を前方から封塞する前面パネルであって、同型成形部品には傾斜面を備えた支持部が一体成形によって形成され、同傾斜面に指向性のある音声発生装置を配置させた状態で同支持部に対して同音声発生装置を固着し、同音声発生装置から発せられる音声を同前面パネルの前方かつ中央寄りに指向させるようにした遊技機において、前記型成形部品の成形型の型抜き方向と直交する面に対して前記傾斜面は傾斜して構成されるとともに、前記支持部には同傾斜面に開口する表裏に貫通した透孔を形成し、同透孔の内周壁面を表裏方向に向かって拡開した形状とし、前記音声発生装置側には同音声発生装置を同傾斜面に配置させた状態で同透孔位置に一致しその軸線方向が前記傾斜面方向と直交するネジ孔を形成し、同透孔に対して前記支持部裏面側より前記傾斜面と軸線方向を直交させるようにネジを挿通し、同ネジを同透孔を介して同ネジ孔に対して螺合させることで前記音声発生装置を同傾斜面に拘止させるようにしたことをその要旨とする。
【0009】
音声発生装置を支持部にネジ止めで固定する場合、支持部側のネジ孔と音声発生装置側のネジ孔を一致させネジを螺合させてこれを行う。しかし、支持部が傾斜面を備え音声発生装置をこの傾斜面に配置させる場合には、支持部側のネジ孔の軸線は傾斜面と直交させなければ音声発生装置側のネジ孔と一致させることはできない。ところが、型成形により支持部が一体成形される型成形部品では型抜き方向がその支持部側のネジ孔の軸線の方向と一致させられない場合がある。そのようなケースでは支持部側のネジ孔の軸線は傾斜面と直交させることはできず、このような傾斜面に音声発生装置をネジだけで固定することは困難である。
ところが、請求項2では、支持部の表裏に貫通して形成され傾斜面に開口する透孔の内周壁面は表裏方向に向かって拡開した形状とされている。そのため、型成形部品の型抜きが可能とされている。そして、この透孔は支持部の裏面側からネジを挿通した際にその軸線が傾斜面と直交するようにネジを進出することが可能となっている。一方、音声発生装置側のネジ孔もその軸線方向が傾斜面方向と直交するため、音声発生装置を傾斜面に透孔とネジ孔が一致させることができる。つまり、ネジを透孔の裏面側から挿入してネジとネジ孔の軸線がずれることなく両者をしっかりと螺合させることが可能となっている。ネジの締め付けによって最終的に音声発生装置は支持部の傾斜面に拘止される。
これによって、型成形部品の型抜きが可能となるとともに、支持部裏面からネジをその軸線方向において傾斜面方向に対して直交するように進出させてネジ孔に螺合させることもでき、型抜き方向に左右されずに種々の傾斜の傾斜面を設けることができるとともに音声発生装置をネジだけでしっかりと固定することが可能となる。
これによって、型成形部品の型抜きが可能となるとともに、支持部裏面からネジをその軸線方向において傾斜面方向に対して直交するように進出させてネジ孔に螺合させることもでき、型抜き方向に左右されずに種々の傾斜の傾斜面を設けることができるとともに音声発生装置をネジだけでしっかりと固定することが可能となる。
【0010】
また、上記の目的を達成するために請求項3の発明では請求項2の発明の構成に加え、前記傾斜面が下向きである場合における同透孔の内周壁面は下方側が、同傾斜面が上向きである場合における同透孔の内周壁面は上方側がそれぞれ同傾斜面と略直交するようにしたことをその要旨とする。
【0011】
このような構成では、請求項2の作用及び効果に加え、ネジを透孔に挿入する際に傾斜面と略直交する内周壁面に沿わせて透孔内に進出させることができるとともに、透孔の裏面側におけるネジの頭部と透孔周縁部との当接面積を多くすることが可能となる。
また、上記の目的を達成するために請求項4の発明では請求項1〜3のいずれかの発明の構成に加え、前記ネジ孔は前記音声発生装置の一部を構成する本体フレームに直接形成されていることをその要旨とする。
このような構成では、請求項1〜3のいずれかの発明の作用及び効果に加え、音声発生装置を固定するためのフレームを別途用意しなくともそのまま傾斜面に固着することができるので、コスト削減、軽量化、音声発生装置の装着作業の簡略化等に貢献する。
【発明の効果】
【0012】
上記各請求項に記載された発明では、音声発生装置を傾斜して装着するための傾斜面が形成された支持部を備えた型成形部品の型抜きが可能となるとともに、音声発生装置を傾斜面にネジだけでしっかりと固定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をパチンコ機に応用した実施の形態1について図面に基づいて説明する。まず、図1及び図2に基づいてパチンコ機の概略を説明する。
パチンコ機11の外枠12には遊技機本体13と前枠14がヒンジ15を介して開閉自在に取り付けられている。遊技機本体13はパチンコ遊技機の構造的な中核を形成するパネル状の構成部材であってその背面には図示しないタンク、賞球排出ユニット16、取り付けベース17等から構成される機構盤18が配設されている。遊技機本体4の上半身には遊技盤20が装着されている(遊技盤20は図2では省略)。遊技盤5の前面はほぼ垂直に構成された遊技面21とされている。尚、図1においては遊技面21に植設される釘の図示は省略されている。前枠14の上方位置にはガラス窓Gが嵌合されており、同ガラス窓Gの下方位置には上受け皿22が形成されている。前枠14の下方位置には前面パネルとしてのカバープレート23が配設されている。カバープレート23は遊技機本体13に対してヒンジ15を介して開閉自在に取り付けられている。カバープレート23には前方に突出形成された下受け皿24が形成されている。下受け皿24の右側方には操作ハンドル27が取付けられている。前枠14の前面部には装飾部材としての図示しないLED等の光源を内蔵した装飾パネル25や装飾部材としての凹凸部26等が形成されている。
前記カバープレート23の背面中央寄りには音声発生装置としてのスピーカ装置30が配設されている。
【0014】
次に、カバープレート23においてスピーカ装置30が取り付けられている付近の取り付け構造についてより詳しく説明する。
スピーカ装置30はカバープレート23の一部を構成するベースプレート29の支持部31に取り付けられている。ベースプレート29は均等な厚みに構成された横長に配置された長方形形状の均等な肉厚の板体であって、図示しない金型を使用したプラスチック成形によって一体的に形成される。ベースプレート29の型抜き方向は図3において垂直に延出される基準面V1に対して直交する前後方向、つまり図3における2つの矢印の方向とする(つまり2つの分割金型によって成形されるものとする)。ここに、ベースプレート29の基準面V1とはパチンコ機11の設置状態におけるほぼ垂直方向に延出される面をいう(ほぼ、としたのは実際にはパチンコ機11はごくわずかに後傾して設置されるため)。ベースプレート29の前面には前面プレート32が配設されている。ベースプレート29及び前面プレート32によってカバープレート23の骨格が構築されている。前面プレート32の下受け皿24の内側に面した位置にはスピーカ装置30から出力される効果音の出口となる多数の音声発生孔33が形成されている。
【0015】
図3〜図5に示すように、ベースプレート29の中央寄り位置に一体成形により形成された支持部31は所定間隔を開けて左右に配置された一対の後方突出部34a、34bから構成されている。この間隔はスピーカ装置30から出力される音声を遮らないようなスピーカ装置30の横幅に応じた間隔とされている。両後方突出部34a、34bは対称形状とされており、上方ほど幅広に構成された後方張り出し部35と、後方張り出し部35から鈎の手状に相向かい合う方向に屈曲された傾斜部36から構成されている。傾斜部36は上方ほど後傾した板体とされ、相対向する傾斜部36の端部はスピーカ装置30の形状に応じて湾曲されている。傾斜部36の後面はスピーカ装置30前面が当接される傾斜面37とされている。傾斜面37はベースプレート29の基準面V1に対して本実施の形態1ではθの角度で後傾されている。
両後方突出部34a、34bのそれぞれの傾斜部36の上下寄り位置には同傾斜部36の厚み方向に貫通する透孔38が形成されている。同透孔38は断面円形に形成され、その内周壁38aはベースプレート29の基準面V1に対して直交する方向、つまり型抜き方向V2に沿って延出されている。
【0016】
図3〜図7に示すように、スピーカ装置30は支持部31(後方突出部34a、34b)に対して取り付けフレーム40を介してタッピンネジ41によるネジ止めによって固着されている。
スピーカ装置30は前方に向かって拡開された金属製の本体フレーム42と、同本体フレーム42の尻部に固着されたコイル、マグネット等から構成される振動機構部43と、振動板としての円錐状のコーン紙44とから構成された既知のスピーカ構造とされている。コーン紙44は本体フレーム42の前方開口部と振動機構部43間に張設されている。
スピーカ装置30の取り付けに使用される取り付けフレーム40は、スピーカ装置30の本体フレーム42の外形に対応した椀形の外形をなした取り付け部材であって、図示しない金型を使用してプラスチック成形によって一体的に形成される。取り付けフレーム40は本体フレーム42を包囲する包囲部45と包囲部45先端の円形の開口部の周縁に一体的に形成されたフランジ状当接縁46から構成されている。図4及び図5に示すように、フランジ状当接縁46は正方形形状の外形に構成され、その四方角部にはそれぞれネジ孔47が形成されている。ネジ孔47はフランジ状当接縁44の板厚よりも厚く構成された肉厚部48の厚み方向に貫通する透孔として構成され、その中心軸線Pはフランジ状当接縁46の前面46aと直交するとともに支持部31に配設された状態において傾斜面37に対して直交する(図6参照)。
タッピンネジ41は外周に雄ネジが形成されたネジ本体49と頭部50とから構成されている。ネジ本体49の先端は尖鋭状とされている。頭部50にはドライバー等の器具によってタッピンネジ41を回動させる際の係合部となるプラス溝51が形成されている。
【0017】
スピーカ装置30の取り付け構造についてその取り付け工程と合わせてさらに詳しく説明する。スピーカ装置30の取り付けは例えば次のように行われる。
まず、スピーカ装置30を取り付けフレーム40内に収容し、本体フレーム42前面のフランジ状当接縁46の前面46aを傾斜面37に密着させる。このとき、スピーカ装置30の本体フレーム42前端と取り付けフレーム40のフランジ状当接縁46の前面46aは面一となっているため本体フレーム42前端も傾斜面37に当接させられる。
取り付けフレーム40の位置を上下左右に動かして調整し、ネジ孔47を傾斜部36側の透孔38と一致させる。そして、傾斜部36の裏面側(パチンコ機11全体としては前面側に相当する。従ってここに「表面」とはベースプレート29のスピーカ装置30の取り付け側であって、パチンコ機11全体としては後面側に相当する。以下同様。)から透孔38内にタッピンネジ41をその中心線軸Qが傾斜面に直交するように挿入する。
図6に示すように、ネジ本体49の直径dは傾斜部36の透孔38の内側開口部上方角部を通り傾斜面37と直交する線分T1と透孔38の外側開口部下方角部を通り傾斜面37と直交する線分T2との間隔Sよりも小さく構成されている。このような構成でなければネジ本体49が内周壁38aと干渉してタッピンネジ41を傾斜面37に直交するように進出させられないからである。また、ネジ本体49の直径dは取り付けフレーム40のネジ孔47の内径よりもわずかに大きく構成されている。これはタッピンネジ41によってネジ孔47に食い込ませながら(つまりネジ切りを行いながら)同時にタッピンネジ41をネジ孔47に螺合させるためである。
【0018】
タッピンネジ41を透孔38内に挿入し、その先端をネジ孔47に押し当てる。この時タッピンネジ41の中心線軸Qをネジ孔47の中心軸線Pと一致させようにする。タッピンネジ41を押圧しながら回転させネジ本体49をネジ孔47の内周面47aに食い込ませながら徐々に進出させていく。図7に示すように、タッピンネジ41の頭部50を傾斜部36裏面側の透孔38周縁に当接させ、さらに強く締め付けることで取り付けフレーム40は支持部31(後方突出部34a、34b)に拘止させられる(図7の状態)。本実施の形態1では4箇所に同様の操作でタッピンネジ41をネジ孔47に螺合させることで取り付けが完了する。これによって取り付けフレーム40に被覆されたスピーカ装置30は支持部31の傾斜面37に圧着させられることとなる。
【0019】
このような構成とすることで、本実施の形態1では次のような効果が奏される。
(1)傾斜部36に形成された透孔38の内周壁38aは型抜き方向V2に沿って延出されているため、ベースプレート29をプラスチック成形により成形した際の型抜きが可能となっている。そして、透孔38を利用してタッピンネジ41を傾斜面37と直交するように挿入することができる。その結果、タッピンネジ41の中心線軸Qをネジ孔47の中心軸線Pと一致させることができ、取り付けフレーム40をネジ止めして傾斜面47に密着させることが可能となる。そして、スピーカ装置30は傾斜面37に配設されることで前方斜め上方の遊技者の顔方向に音声を指向させることになるため、効果音の音質が向上し音がより聞き取りやすく臨場感あるものとなる。
また、例え傾斜部36の傾斜が大きくなっても透孔38の内周壁38aは型抜き方向に沿って延出させられていれば型抜きは可能であるため、種々の傾斜角度・傾斜方向を持った傾斜部に対応させることが可能である。
(2)タッピンネジ41はネジ孔47としっかりと螺合するためスピーカ装置30は取り付けフレーム40を介して支持部31の傾斜面37にしっかりと密着させられるため、自身の振動で音声が歪むことがない。
(3)板状の傾斜部36に透孔38が形成されているため、透孔38の奥行きが浅く、傾斜面37に対してタッピンネジ41の中心線軸Q方向が直交するように挿通する場合にネジ本体49が透孔38の内周面38aと干渉することがなく(つまり上記間隔Sが狭くならない)、透孔38を大きく開口しなくともネジを挿通することが可能となり、タッピンネジ41の頭部50が透孔38周縁にしっかりと係合させることが可能となる。
【0020】
(実施の形態2)
次に図8〜図10に基づいて実施の形態2について説明する。実施の形態2は実施の形態1に比較的近いバリエーションであり、透孔38の形状のみを異にし他の構成は同じとされる。そのため、実施の形態1と異なる構成を主に説明し、共通する構成部材については図上同じ符号を付すことで詳しい説明は省略する。
実施の形態2において傾斜部36に形成された透孔38の内周壁38aは表裏において均等な上下幅の内周壁38aではなく、裏面側よりも表面側が拡開されて構成されている。つまり、図10(a)に示すように裏面側では円形の開口部とされ、図10(b)に示すように表面側では上下方向に長軸を有する楕円形状とされている。内周壁38aの下側壁部55aは傾斜面37に対して直交方向に延出されており、上側壁部55bはベースプレート29の基準面V1に対して直交方向に延出されている。
このような構成とすることで、上記実施の形態1の(1)〜(3)と同様の効果を奏するとともに、下側壁部55aを案内としてタッピンネジ41を傾斜面37に対して直交方向に延出させることができる。また、実施の形態1と比較して分かるように傾斜部36の裏面側における透孔38の開口部が小さくなるためタッピンネジ41の頭部50と透孔38周縁との当接面積が増え、よりしっかりタッピンネジ41を締め付けることが可能となる。
【0021】
(実施の形態3)
次に図11〜図14に基づいて実施の形態3について説明する。実施の形態3は実施の形態1に比較的近いバリエーションでありスピーカ装置30の取り付け構造のみを異にし他の構成は同じとされる。そのため、実施の形態1と異なる構成を主に説明し、共通する構成部材については図上同じ符号を付すことで詳しい説明は省略する。
実施の形態3においてはスピーカ装置30は取り付けフレーム40のような仲介部材を介さず直接支持部31に固着されている。
スピーカ装置30の本体フレーム42の前端にはフランジ状当接縁61が一体的に形成されている。フランジ状当接縁61は正方形形状の外形に構成され、その四方角部にはそれぞれバーリング加工したネジ孔62が形成されている。バーリング加工とは下穴を形成後に、下穴を中心にプレスし、同下穴を拡開しながら(皿押しディンプリング加工)フランジ状当接縁61の裏面側に凹状の円錐部63を加工する工法である。
このような構成とすることで、上記実施の形態1の(1)〜(3)と同様の効果を奏するとともに、取り付けフレーム40のような仲介部材を介さずに直接スピーカ装置30を傾斜面37に固着することができるため、コスト削減、軽量化、音声発生装置の装着作業の簡略化等に貢献することとなる。
【0022】
本発明は以下のような態様に変更して実施することが可能である。
・上記支持部31の形状は一例であって、限定されるものではない。
・指向性のあるスピーカ装置であれば上記に限定されるものではない。
・上記各実施の形態ではスピーカ装置30はカバープレート23の背面に配設したが、もちろんこの位置に限定されるものではない。例えば前枠14に配設するようにしても構わない。また、スピーカ装置は複数配設することももちろん可能である。
・ネジとしては上記各実施の形態ではタッピンネジ41を使用したが、他のネジ、例えばボルトとナットを使用して締結することも可能である。
・上記実施の形態ではスピーカ装置30はカバープレート23の背面に配設したが、前面、例えばカバープレート23であれば前面プレート32に配設するようにしても構わない。
・上記実施の形態2では透孔38は表面方向に向かって拡開させていたが、裏面側に向かって拡開させるようにしてもよい。また、実施の形態2では下側壁部55aを傾斜面37に対して直交方向に延出させ、上側壁部55bをベースプレート29の基準面V1に対して直交方向に延出させるようにしていた。つまり、上側壁部55b側によって透孔38の内周壁38aの拡開を実現していたがどのような拡開形状とするかは自由である。
さらに、拡開方向は表裏いずれかではなく両方向に行ってもよい。つまり透孔の側断面形状で鼓状に構成するようにしてもよい。
・上記実施の形態はパチンコ機に応用した例について説明したが、本発明の趣旨からしてその他の遊技機、例えばスロットマシンやパチロット等に応用することは自由である。 その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【0023】
上記請求項に適宜追加可能な上記実施の形態から把握できる本発明のその他の技術的思想について下記に付記として説明する。
(1)前記音声発生装置は前記支持部を構成する板体の表面に圧着され、同支持部に形成された前記透孔は板面の厚み方向に貫通して形成されること。
具体的には例えば上記実施の形態1において傾斜部36に透孔38が形成され傾斜面37に圧着されていることが相当する。このように構成すると、透孔38の奥行きが浅くなるため傾斜面と軸線方向を直交させるようにネジを挿通する場合に透孔38を大きく開口しなくともネジを挿通することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を応用した実施の形態1〜3のパチンコ機の正面図。
【図2】同じパチンコ機における前枠を開放した状態(遊技盤は省略)の斜視図。
【図3】実施の形態1の要部となるベースプレート背面の支持部位置の説明図であって、(a)はスピーカ装置を取り付けた状態、(b)は取り付け前の状態。
【図4】実施の形態1及び2におけるベースプレート背面の支持部位置付近の分解斜視図。
【図5】実施の形態1及び2におけるベースプレート背面の支持部位置付近の斜視図。
【図6】実施の形態1において傾斜部に対して取り付けフレームを取り付ける際の取り付け工程を説明する説明図。
【図7】実施の形態1において傾斜部に対して取り付けフレームを取り付けた状態の説明図。
【図8】実施の形態2において傾斜部に対して取り付けフレームを取り付ける際の取り付け工程を説明する説明図。
【図9】実施の形態2において傾斜部に対して取り付けフレームを取り付けた状態の説明図。
【図10】実施の形態2における透孔の開口部形状を説明する説明図であって、(a)は裏面側、(b)は表面側。
【図11】実施の形態3のスピーカ装置の背面図。
【図12】実施の形態3のスピーカ装置の側面図。
【図13】実施の形態3において傾斜部に対してスピーカ装置を取り付ける際の取り付け工程を説明する説明図。
【図14】実施の形態3において傾斜部に対してスピーカ装置を取り付けた状態の説明図。
【図15】従来のスピーカ装置を取り付けた状態の説明図。
【図16】成型品とその成形を行う金型の型抜き方向の関係を説明する説明図であって、(a)は2分割金型で型抜きが可能である状態、(b)は2分割金型で型抜きが不可能である状態、(c)が3分割金型で型抜きを可能とした状態。
【図17】他の従来のスピーカ装置の傾斜面への取り付け構造を説明する説明図。
【図18】図17の取り付け構造の一部断面側面図。
【符号の説明】
【0025】
11…遊技機としてのパチンコ機、23…前面パネルとしてのカバープレート、30…音声発生装置としてのスピーカ装置、31…支持部、36…支持部としての傾斜部、37…傾斜面、38…透孔、41…ネジとしてのタッピンネジ、47,62…ネジ孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技者と対面する前面部に装飾部材を備えるとともに、型成形により形成される型成形部品を備え、内部機器を前方から封塞する前面パネルであって、同型成形部品には傾斜面を備えた支持部が一体成形によって形成され、同傾斜面に指向性のある音声発生装置を配置させた状態で同支持部に対して同音声発生装置を固着し、同音声発生装置から発せられる音声を同前面パネルの前方かつ中央寄りに指向させるようにした遊技機において、
前記型成形部品の成形型の型抜き方向と直交する面に対して前記傾斜面は傾斜して構成されるとともに、前記支持部には同傾斜面に開口する表裏に貫通した透孔を形成し、同透孔の内周壁面を型抜き方向に沿って延出した形状とし、
前記音声発生装置側には同音声発生装置を同傾斜面に配置させた状態で同透孔位置に一致しその軸線方向が前記傾斜面方向と直交するネジ孔を形成し、
同透孔に対して前記支持部裏面側より前記傾斜面と軸線方向を直交させるようにネジを挿通し、同ネジを同透孔を介して同ネジ孔に対して螺合させ締め付けることで前記音声発生装置を同傾斜面に拘止させるようにしたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
遊技者と対面する前面部に装飾部材を備えるとともに、型成形により形成される型成形部品を備え、内部機器を前方から封塞する前面パネルであって、同型成形部品には傾斜面を備えた支持部が一体成形によって形成され、同傾斜面に指向性のある音声発生装置を配置させた状態で同支持部に対して同音声発生装置を固着し、同音声発生装置から発せられる音声を同前面パネルの前方かつ中央寄りに指向させるようにした遊技機において、
前記型成形部品の成形型の型抜き方向と直交する面に対して前記傾斜面は傾斜して構成されるとともに、前記支持部には同傾斜面に開口する表裏に貫通した透孔を形成し、同透孔の内周壁面を表裏方向に向かって拡開した形状とし、
前記音声発生装置側には同音声発生装置を同傾斜面に配置させた状態で同透孔位置に一致しその軸線方向が前記傾斜面方向と直交するネジ孔を形成し、
同透孔に対して前記支持部裏面側より前記傾斜面と軸線方向を直交させるようにネジを挿通し、同ネジを同透孔を介して同ネジ孔に対して螺合させることで前記音声発生装置を同傾斜面に拘止させるようにしたことを特徴とする遊技機。
【請求項3】
前記傾斜面が下向きである場合における同透孔の内周壁面は下方側が、同傾斜面が上向きである場合における同透孔の内周壁面は上方側がそれぞれ同傾斜面と略直交することを特徴とする請求項2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記ネジ孔は前記音声発生装置の一部を構成する本体フレームに直接形成されていることを特徴とする遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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