説明

運動ニューロン栄養因子の遺伝子配列

本発明は、哺乳動物のニューロンの生存、成長、増殖または維持を促進する運動ニューロン栄養因子をコードする配列に関連した核酸、その配列によってコードされるポリペプチドおよびその配列を検出するためのアッセイに関する。また、具体的には、本発明は、配列番号1を含む配列;配列番号2を含む配列;ならびに配列番号の相補体および配列番号2の相補体からなる群より選択される、単離されたMNTF関連ポリヌクレオチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年11月7日に提出した米国仮出願番号60/518,581(それら全てを本明細書において参考として援用する)の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ニューロンの成長、維持、生存、および選択された集団の機能的能力を促進する特殊なタンパク質グループをコードするヒト遺伝子に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ニューロン栄養因子(Neuronotrohic factor)(NTF)は、ニューロンの生存、成長、維持、およびニューロンの選択された集団の機能的能力を促進する機能がある特殊なグループのタンパク質である。近年の研究において、脊椎動物の神経系の神経細胞死は成長と発生のある期間の間に生じることが証明された。しかしながら、関連する標的組織からの可溶性ニューロン栄養因子の増加は、この神経細胞死の現象を軽減する役目を果たす。次の引用はニューロン栄養因子について議論したものであり、それらの開示を本明細書において参考として援用する:非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;および非特許文献6。
【0004】
脊椎動物の神経筋系において、胚性運動ニューロンの生存は、その関連した発生している骨格筋から生じる特定の栄養性物質に依存していることが見出されていた。骨格筋は、胚性運動ニューロンを分解および後に生じる自然細胞死から防ぐことにより、運動ニューロンの生存および発生の機能を高める能力がある物質を生成することがインビボおよびインビトロの両方の研究によって示されている。非特許文献7;非特許文献8(それらの開示を本明細書において参考として援用する)を参照のこと。同様に、ヒナおよびラットの骨格筋は、インビボとインビトロの両方において、胚性運動ニューロンの自然細胞死を防ぐことができる特定の栄養因子を持っていることが、数名の研究者により報告された。非特許文献9;非特許文献10;および非特許文献11(それらの開示を本明細書において参考として援用する)を参照のこと。
【0005】
加えて、ポリペプチドがラットの骨格筋から単離され、このポリペプチドはインビボで胚性のヒナ運動ニューロンの生存、同様にこれらの運動ニューロン内でのコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を選択的に高めることが見出された。このポリペプチドは、コリンアセチルトランスフェラーゼ発生因子(Choline Acetyltransferase Development Factor)(CDF)と命名されており、その生物学的機能は、他の栄養因子、例えば神経成長因子(NGF)、毛様体神経節神経栄養因子(CNTF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、および網膜神経節神経栄養因子(RGNTF)とは異なっていることが証明された。非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15(それらの開示を本明細書において参考として援用する)を参照のこと。
【0006】
ラットの筋組織由来の35kDおよび22kDの見かけの分子量をもつ2つの運動ニューロン栄養因子(motoneuronotrophic factor)の単離と特定が報告されていた。非特許文献16を参照のこと。その35kDのタンパク質は、運動ニューロン栄養因子1(MNTF1)として定義され、その見かけの22kDのタンパク質は運動ニューロン栄養因子2(MNTF2)として定義された。これら2つの栄養因子は、単離された前角運動ニューロンとラット腰椎脊髄の脊髄外植片の両方の成長および/または再生を支援することがインビトロで証明された。
【0007】
次いで、その2つの栄養因子(MNTF1とMNTF2)のクローニングおよびヒト網膜芽細胞腫cDNAライブラリーからのヒトMNTF1遺伝子断片のクローニングが報告された。特許文献1を参照のこと。ヒトMNTF1 cDNA断片は発現ベクターへサブクローニングされ、発現した融合タンパク質に含まれるMNTF1ポリペプチド断片は、インビトロにおけるラット前角運動ニューロンの成長を支援するという点で、「天然の」MNTF1タンパク質の生物学的活性とよく似た活性を示した。
【0008】
MNTF1の様々な生物学的側面が決定されMNTF活性があるペプチドをコードしているcDNA断片が報告されてきたが、ヒトMNTF1の全長cDNAは開示されていなかった。したがって、依然としてさらなるMNTF cDNAの配列(これはMNTF遺伝子をヒト染色体DNAの特定の領域内にマッピングするために使用され得る)
を決定する必要性がある。
【特許文献1】米国特許第6,309,877号明細書
【非特許文献1】Chau,R.M.Wら,「Neuronotrophic Factor,6」,Chin.J.Neuroanatomy,129,1990年
【非特許文献2】Kuno,M.,「Target Dependence of Motoneuronal Suvival」,The Current Status,9,Neurosci.Res.155,1990年
【非特許文献3】Bard,Y.A.,「Trophic Factors and Neuronal Suvival」,2,Neuron,1525,1989年
【非特許文献4】Oppenheim,R.W.,「The Neurotrophic Theory and Naturally Occurring Motoneuron Death」,12,TINS,252,1989年
【非特許文献5】Bard,Y.A.,「What,If Anything,is a Neurotrophic Factor?」,11,TINS,343,1988年
【非特許文献6】Thoenen,H.,およびEdgar,D.,「Neurotrophic Factors」,229,Science,238,1985年
【非特許文献7】O’Brian,R.J.およびFischbach,G.D.,「Isolation of Embryonic Chick Motoneurons and Their Survival In Vitro」,6,J.Neurosci.3265,1986年
【非特許文献8】Hollyday,M.およびHamburger,V.,「Reduction of the Naturally Occurring Motor Neuron Loss by Enlargement of the Periphery」,170,J.Comp.Neurol.311,1976年
【非特許文献9】McManaman,J.Lら、「Purification of a Skeletal Muscle Polypeptide Which Stimulates Choline Acetyltransferase Activity in Cultured Spinal Cord Neurons」,263,J.Biol.Chem.5890,1988年
【非特許文献10】Oppenheim,R.Wら,「Reduction of Naturally Occurring Motoneuron Death In Vitro by a Target Derived Neurotrophic Factor」,240,Science,919,1988年
【非特許文献11】Smith,R.Gら,「Selective Effects of Skeletal Muscle Extract Fractions on Motoneurons Development In Vivo」,6,J.Neurosci.439,1986年
【非特許文献12】Levi−Montalcini,R.,「Developmental Neurobiology and the Natural History of Nerve Growth Factor」,5,Ann.Rev.Neurosci.341,1982年
【非特許文献13】Varon,Sら,「Growth Factors」,In:Advances in Neurology,Vol.47:Functional Recovery in Neurological Disease,Waxman,S.G.(ed.),Raven Press,New York,pp.493−521,1988年
【非特許文献14】Barde,Y.A.,「Trophic Factors and Neuronal Survival」,2,Neuron,1525,1989年
【非特許文献15】Chau,R.M.Wら,「The Effect of a 30kD Protein from Tectal Extract of Rat on Cultured Retinal Neurons」,34,Science in China,Series B,908,1991年
【非特許文献16】Chau,R.M.Wら,「Muscle Neuronotrophic Factors Specific for Anterior Horn Motoneurons of Rat Spinal Cord」,In:Recent Advances in Cellular and Molecular Biology,Vol.5,Peeters Press,Leuven,Belgium,pp.89−94,1992年
【発明の開示】
【0009】
本発明は、運動ニューロン栄養因子(特にMNTF1関連ポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列(それは染色体16q22内にマッピングされている)を提示し、同じ上流調節配列(すなわち、MNTF1のプロモーターおよび/または転写開始点配列)を持つMNTF関連ポリペプチドも提示する。本発明はまた新規のDNA配列も提示する。その新規DNA配列は、様々なオープンリーディングフレームをコードするcDNAを含み、少なくとも1つの運動ニューロン栄養因子、MNTF遺伝子と一致するヒト染色体DNA、これらの新規DNA配列を含むベクター、これらの新規DNA配列を含む発現系および関連宿主、合成MNTFペプチドおよび前述の発現系によって生成された新規組み換えヒトMNTF1タンパク質を含む。本発明のさらなる側面として、ハイブリッド形成処置に用いるMNTF関連プライマーおよびプローブ、ならびにそのようなアッセイに用いる構成物、キットおよびパネルも含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、栄養および刺激効果を運動ニューロンにおいて働かせるための能力をもつニューロン栄養因子ファミリー、ならびにニューロン栄養因子をコードする遺伝子に関連する。単離された因子、組換え因子および化学的に合成されたポリペプチド因子は運動ニューロンの生存能力の継続および軸策突起の伸長を誘導できることが証明された。例えば、米国特許第6,309,877号及び2003年1月21日出願の国際PCT特許出願、「MNTF Peptides and Compositions and Methods of Use」(米国仮出願番号60/441,772号(2003年1月21日出願の利益を主張する)(それら全てを本明細書において参考として援用する)を参照のこと。それゆえに、これらの因子は「運動ニューロン栄養因子(motoneuronotrophic factor)」または「MNTF」として分類した。さらにMNTFは抗瘢痕効果および抗炎症効果を示し、さらに神経障害、神経障害性の疼痛、糖尿病性神経障害および糖尿病性神経障害性の疼痛の処置で適用されている。本発明は、ヒトの脳組織、下垂体組織および胎盤組織の供給源から単離される新しいcDNA配列、およびヒト16番染色体に由来する対応するDNA配列を含む。
【0011】
便宜上、MNTF1をコードしている配列および/またはMNTF1遺伝子全長(その配列は16番染色体上に位置する(配列番号2))を含む核酸の付加的な隣接する核酸配列は、MNTF関連核酸、MNTF関連ポリヌクレオチド、またはMNTF関連オリゴヌクレオチドとして本明細書において言及された。同様に、MNTF1遺伝子全長内で見出されるオープンリーディングフレームによってコードされている他のポリペプチドは、MNTF関連タンパク質、MNTF関連ポリペプチドまたはMNTF関連ペプチドとして本明細書において言及された。
【0012】
(I.MNTF1 生物学的活性)
MNTFは、ラットとヒト両方の供給源から単離され、それらの生物学的活性は、インビボおよびインビトロの両方で試験された。例えば、それらの潜在的な生物学的活性は、外科的な軸索切断した動物および遺伝病に罹患した動物の両方で試験した。米国特許第6,309,877号を参照のこと。
【0013】
さらに近年、合成MNTFが抹消神経の再生を強めることを示したインビボでの研究において、MNTFの栄養効果を確認した。ラット坐骨神経内の8mmの囲まれた裂孔内に、MNTFを含む90%ビトロジェン(Vitrogen)を満たした。そのMNTF濃度(モル希釈)と、1ヶ月で、Fluoro Goldにより遠位断端から標識される裂孔を横断する得られた運動ニューロンの数は、生理食塩水コントロール、540;10−7M、678;10−6M、765;10−5M、873;10−4M、1111;10−3M、1130であった。
【0014】
さらに、MNTFの刺激効果もまたインビボでの最近の研究で確認した。それから、10−4Mの最適濃度のMNTF中に、または生理食塩水中に3週間、横断および縫合されたラットの大腿神経を浸した。大腿筋及び皮枝を2重標識することによって再生を評価した(Brushart,T.M.ら、The Journal of Neuroscience、22(14):6631−6638、2002(方法論について、本明細書において参考として援用される)を参照のこと)。生理食塩水での処理後、平均100の運動ニューロンが正確に筋肉に突き出し、平均87の運動ニューロンが不正確に皮膚に突き出し、平均51の運動ニューロンが二重標識された。MNTF処理後、正確に筋肉に尽きだしている運動ニューロンの平均数は、173(p=0.0008)に増加し、平均59の運動ニューロンが皮膚に突き出し、47の運動ニューロンが2重標識された。MNTFは、感覚ニューロンへの突出のパターンに、有意な影響はなかった。
【0015】
(II.MNTF遺伝子の配列の発現とクローニング)
運動ニューロン栄養因子(MNTF)は、もとは、網膜芽細胞腫cDNAライブラリー(Clontech)を、3週齢のラットからの筋肉抽出物に対する抗体でスクリーニングを行うことにより、33アミノ酸のペプチドとして単離された(米国特許第6,309,877号(本明細書において参考として援用する))。そのMNTF遺伝子927bp断片をクローニングし、その核酸配列を決定した(米国特許第6,309,877号で配列号番号2として開示される)。
【0016】
図1は、MNTFをコードする配列を含むmRNAが、胎児の胸腺、下垂体、肝臓、腎臓、および8〜9週の胎盤において強く発現し、胎児筋での発現は弱いことを示す。わずかな発現が成体の筋肉に見られる。
【0017】
さらなるクローニング実験および配列決定実験により、次に述べるようなMNTF配列の改善をもたらした。
【0018】
脳cDNAの部分配列は、927bp断片の出発点から上流にさらなる配列(配列番号1の核酸残基1〜582)を含んだ。
【0019】
約1.8kbの比較的豊富なcDNAを下垂体組織から単離した。その配列を標準的なPCRとRACEによって増幅し、得られた1859bpのcDNA配列を決定した(配列番号1を参照のこと)。配列番号1は、927bp断片の出発点から上流の脳cDNAの部分配列と同一である5’配列を含む。さらに配列番号1は、その927bp断片の配列1〜236と完全同一の部分を含む(配列番号1の核酸残基583〜757)。しかし、表1にまとめたように、配列番号1は、927bp断片からの多くのバリエーションを含む。
【0020】
【表1】

したがって、配列番号1の核酸残基758〜1473とはじめに開示された927bp配列の対応する領域には、正確に適合しない。さらに、MNTF転写物のさらに下流の残基の配列(すなわち、配列番号1の残基番号1474〜1859)は、これまで開示されていなかった。
【0021】
cDNAライブラリー(標準化したヒト胎盤から調製された)を、別の組織源からの別のMNTF cDNAの、単離と配列決定にも利用した。その胎盤のcDNA配列は、配列番号1の配列と一致する。
【0022】
したがって、本発明は、MNTFをコードする核酸そして/またはMNTF関連核酸(すなわち、配列番号1、配列番号1の相補配列およびその一部または断片)の配列情報の向上をもたらした。さらに、好ましい実施形態は、以前に開示された927bp断片の一部と厳密には一致しない配列番号1の一部(配列番号1の核酸残基758〜1473以外)を含む。
【0023】
(III.染色体DNA上のMNTF遺伝子配列)
ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列を対応する配列番号1の配列と比較するため、配列の包括的なアライメントは、National Center for Biotechnology Information(ワールドワイドウェブ ncbi.nlm.nih.gov上)を通して公に入手可能なBLASTプログラムを用いて行い得る。包括的なアライメントを行う前に、配列番号1はGenBankへ提出され得る。そのNational Center for Biotechnology Informationが提供するデフォルトパラメーターは包括的なアライメントに用いられ得る。
【0024】
データベース(例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.govまたはhttp://genome.ucsc.edu)を用いたDNA解析は、配列番号1を含む遺伝子が、16番染色体(染色体バンド:16q22)上に位置することを示す。その染色体バンドの跡は、分解能800バンドで、ギムザ染色された染色体上で見られたバンドのおおよその位置を表す。Barbara Trask,Vivian Cheung,Norma NowakおよびBAC Resource Consortiumのその他の人々は、染色体上の大きなゲノムクローンについての細胞遺伝位置の決定に、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を用いた。
【0025】
BAC Resource Consortiumについてのさらなる情報については、「Integration of cytogenetic landmarks into the draft sequence of the human genome」Nature,409:953〜958,Feb.2001と同時にウェブサイト Human BAC Resourceを参照のこと。
【0026】
GenBankで、その座は、AC092383、アクセッション番号AP001588、Homo sapiens 16番染色体、クローンRP11−787D11である。クローンRP11−787D11内での配列番号1の位置は、80244から80730の間である。
【0027】
そのMNTFの1859bp cDNA配列(配列番号1)は、NIN283遺伝子(染色体16q22の74813548から74907022に位置する(UCSC genome blat使用))のイントロン内にマッピングされている。その16番染色体上のMNTF cDNA配列の前にあるあらゆる上流調節配列の位置を決定するため、染色体16q22の74813548から74907022の領域内(UCSC genome blat使用)の潜在的なプロモーターおよび/または転写開始部位を同定するため、コンピューター分析による理論上のモデリングを行った。
【0028】
配列番号2は、16番染色体からの4359bp配列(UCSC genome blat使用して、74818596から74814238に対応)を示す。その配列は、MNTF cDNA配列から上流のゲノム配列を含み、そのcDNA配列は、推定第1プロモーター部位(配列番号2の核酸残基862〜911)、推定第2プロモーター部位(配列番号2の核酸残基2315〜2364)、そして潜在的な転写開始配列(配列番号2の核酸残基2355〜2501)を含む。配列番号2はまたMNTF cDNA(核酸残基2501〜4359)を含み、このcDNAは、MNTF活性を有することが公知の21アミノ酸のペプチド(配列番号29)をコードする領域(核酸残基3058〜3120)を含む。
【0029】
図5は、下垂体組織からのMNTF cDNAと16番染色体配列のアライメントを示す。そのMNTF cDNA配列は、2箇所において16番染色体配列とは異なった。図6は、DNA配列決定により、16番染色体上の配列と比較して、cDNA配列の2箇所でバリエーションがあることを示す。
【0030】
したがって、本発明のさらなる実施形態は、配列番号2、配列番号2の相補的配列、および配列番号2の一部または断片を含む。好ましい断片は、少なくとも1つの推定プロモーターおよび/または潜在的な開始配列を含む。
【0031】
(IV.MNTF関連ポリペプチド)
cDNA配列に由来する3つのリーディングフレームの解析により、そのMNTF cDAN配列(配列番号1)内にいくつかのオープンリーディングフレーム(ORF)が存在していることが示される。以下の表2に示したアミノ酸配列は、それぞれのリーディングフレーム中にコードされる推定ペプチド配列であり、その配列は、メチオニン(M)の開始コドン(ATG)で始まり、終止コドンで終わる。
【0032】
【表2】

配列番号29は、米国特許第6,309,877号において配列番号4として開示される33アミノ酸のうちの21アミノ酸を含む。その21アミノ酸は、MNTF活性をもつことが示された。興味深いことに、配列番号29は、そのMNTF mRNAの第1オープンリーディングフレームにコードされていない。どの推定ペプチド残基の前にも明確なコザック(Kozak)配列はないようである。そのことは、MNTFのコード配列の上流のさらなるORFの存在が、MNTFおよび/またはMNTF関連ポリペプチド発現に対する翻訳制御における代替メカニズムを提供し得ることを示唆する。
【0033】
さらなる実施形態は、本明細書において開示されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、生物学的活性のある哺乳動物のポリペプチド(例えば、インビトロで単離されるもの、インビトロで発現されるもの、または化学的に合成されるものを含む)と、哺乳動物のニューロンの生存、成長、増殖または維持および神経幹細胞のニューロンへの分化を促進するためにそのポリペプチドを用いる方法を含む。代替的実施形態において、本発明は、本明細書に開示される推定ペプチド配列の、少なくとも10の連続したアミノ酸残基、少なくとも15の連続したアミノ酸残基、少なくとも20の連続したアミノ酸残基、少なくとも25の連続したアミノ酸残基、または少なくとも30の連続したアミノ酸残基を含むポリペプチドを包含する。
【0034】
本発明の範囲内のMNTF関連ポリペプチドはまた、異種タンパク質に結合された、配列番号1のオープンリーディングフレームを含む融合タンパク質であり得る。異種タンパク質には、MNTF関連ポリペプチドに実質的には類似していないアミノ酸配列を有する。その異種タンパク質は、そのMNTF関連ポリペプチドのN末端またはC末端に融合され得る。融合タンパク質としては、酵素の融合タンパク質(例えば、ベータ−ガラクトシダーゼ融合物、ポリ−His融合物、MYC−タグ化融合物およびIg融合物)が挙げられ得るが、これらに限定されない。そのような融合タンパク質(特にポリ−His融合物)は組換え型MNTF関連ポリペプチドの精製を容易にし得る。
【0035】
融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって生成され得る。例えば、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連結した遺伝子断片間で相補的な突出部を生じるアンカープライマーを用いて行い得る。その断片は、キメラ遺伝子配列を生成するためにアニーリングおよび再増幅され得る(Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,1992)。そのキメラ遺伝子は、適切な宿主細胞内で発現され得る。あるいは、MNTF関連ポリペプチドをコードするDNA断片を、既に異種タンパク質を含む市販の発現ベクターにクローニングし得る。その結果として、その異種タンパク質へインフレームで融合されたMNTF関連タンパク質が生じる。
【0036】
(V.発現ベクター)
本発明のもう1つのバージョンは、本明細書において記載されるオープンリーディングフレーム配列のうちの1以上をコードするMNTF関連ポリペプチドを含むベクターを提供する。そのベクターは、核酸分子を維持するためのクローニングベクター、または発現ベクターであり得る。種々のクローニングベクターおよび発現ベクターは、当業者に周知である。例としては、プラスミドベクター、1本鎖もしくは2本鎖のファージベクター、1本鎖もしくは2本鎖のDNAウイルスベクターもしくはRNAウイルスベクター、または人工染色体(例えば、BACおよびYAC)が挙げられる。発現ベクターは、プロモーターに作動可能に連結した、本明細書において記載されるMNTF関連ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。種々の原核生物および真核生物の宿主細胞において転写および翻訳を制御するために適切なプロモーター、ターミネーターおよび他の調節領域は、当該分野で周知である(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989)。
【0037】
本発明のさらに他のバージョンにおいて、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。その宿主細胞は、哺乳動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、酵母および他の心筋または細菌であり得る。様々な発現ベクターに適した宿主細胞は、当業者に周知である(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989)。
【0038】
発現ベクターは、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、陽イオン脂質媒介性トランスフェクション、電気穿孔法、形質導入、リポフェクションのような技術、および当業者に周知の他の技術により、適切な宿主細胞へ導入され得る(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989)。
【0039】
(VI.核酸の検出)
本明細書に開示される核酸配列は、MNTF関連タンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチドの発現を指向することにおける用途に加えて、様々な他の用途がある。例えば、核酸ハイブリダイゼーションに伴う実施形態において、それらはプローブまたはプライマーとして有用である。したがって、発明の別の側面は、MNTFタンパク質またはその誘導体をコードするヌクレオチド配列と患者の生物学的試料内のヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを検出することによって、MNTF関連転写物の発現を検出するための代替方法を含む。
【0040】
ヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイ(ハイブリダイゼーション条件下で、患者の生物学的試料由来の核酸を本発明のMNTF関連ポリヌクレオチドへ接触させるという手段)を用いて、そのハイブリダイゼーション産物を検出する。その方法はMNTF関連ゲノムDNAまたはmRNAを検出するために用いられ得る。ノザンブロット分析、RT−PCR、またはPCRおよびリガーゼ連鎖反応(LCR)をアッセイの基礎として用い得る。これらの技術は、当業者に周知である。PCRおよびLCR技術は当該分野で広く利用し得る。例えば、その基礎的なPCR技術は、米国特許第4,683,202号、同第4,683,195号、同第4,800,159号、および同第4,965,188に記載されている。その基礎的なLCR技術は、EPA−320,308、EPA−439,182、EPA−336,731、WO89/09835、WO89/12696およびWO90/01069に記載されている。
【0041】
オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーは、好ましくは、比較されるMNTF関連核酸配列の長さに沿って、相同性が少なくとも60%で、少なくとも10の連続したヌクレオチドまたは少なくとも30の連続したヌクレオチドを含む。そのようなプローブ/プライマーの例およびMNTF関連核酸を検出するためにPCRを行う方法は、実施例1および実施例3に記載される。
【0042】
したがって、本発明のヌクレオチド配列は、DNAおよび/またはRNAの相補的な範囲と選択的に二重鎖分子を形成する能力、または試料由来のDNAもしくはRNAの増幅のためプライマーを提供する能力のために用いられ得る。表3にはプローブまたはプライマーとして利用し得る多数の典型的なMNTF関連核酸配列を表す(実施例1および実施例3に、さらに詳細に記載される)。
【0043】
【表3】

想定される適用に依存して、標的配列に対するプローブまたはプライマーの様々な選択性の程度を達成するために、種々のハイブリダイゼーション条件を使用することが望まれる。
【0044】
高い選択性を必要とする適用については、代表的には、ハイブリッドを形成するために、比較的高いストリンジェンシーの条件が使用され得る。例えば、約50℃から70℃の温度で、約0.02Mから約0.10M NaClにより提供されるような比較的低い塩および/または高い温度の条件。そのような高ストリンジェンシー条件は、プローブまたはプライマーと、鋳型または標的鎖との間に、あるとしても、ほとんどミスマッチを許容せず、特定の遺伝子を単離するか、または特定のmRNA転写物を検出するために特に適している。一般的には、さらにホルムアミドの量の増加により、条件をよりストリンジェントにし得ることが理解される。
【0045】
別の適用、例えば、部位指向性変異誘発については、より低いストリンジェンシー条件が好ましいことが理解される。これらの条件下では、ハイブリダイズしようとしている鎖の配列が完全には相補的でなくても、ハイブリダイゼーションは生じうるが、1以上の位置にミスマッチがある。塩濃度の増加および/または温度の低下により、より低いストリンジェンシー条件にし得る。
【0046】
特定の実施形態において、例えば、ハイブリダイゼーションを測定するための標識のような、適切な方法と組み合わせて、本発明の規定される核酸配列を使用することは有利である。検出能がある広範な種々のインジケーター手段が当該分野で公知であり、その手段としては、蛍光、放射性、酵素、または他のリガンド(例えば、アビジン/ビオチン)が挙げられる。
【0047】
一般的に、本明細書に記載されるプローブまたはプライマーは、溶相ハイブリダイゼーションにおける試薬、PCRTMにおける試薬、一致する遺伝子の発現を検出するための試薬、ならびに固相を採用する実施形態における試薬として有用であることが予測される。固相を含む実施形態においては、その試験DNAまたはRNAを、選択したマトリックスまたは表面に吸着するか、または別のやり方ではりつける。次いで、この固定した1本鎖の核酸を、望ましい条件下で選択されたプローブとのハイブリダイゼーションに供する。この特定の適用におけるハイブリダイゼーション条件の最適化は、当業者に周知である。非特異的に結合したプローブ分子を取り除くため、ハイブリダイズした分子を洗浄した後、ハイブリダイゼーションを、結合した標識の量を決定することにより、検出および/または定量する。
【0048】
標準的な方法論(Sambrookら、1989)に従って、増幅のため鋳型として使用される核酸は、細胞、組織、または他のサンプルから単離され得る。特定の実施形態において、その鋳型核酸を実質的に精製せずに、全細胞または組織のホモジネート、または生物学的液体のサンプルで解析を行う。その核酸は、ゲノムDNA、または分画したRNAまたは全細胞RNAである。RNAを用いる場合、まず、RNAから相補的DNAへの転換が望まれ得る。
【0049】
本明細書で用いられる用語「プライマー」は、鋳型依存のプロセスにおいて、新生核酸の合成を促進する能力のあるあらゆる核酸を包含することを意味する。代表的なプライマーは、長さが10から20および/または30塩基対のオリゴヌクレオチドであるが、より長い配列も使用されうる。
【0050】
配列番号1または配列番号2の一部と一致する核酸へ選択的にハイブリダイズするように設計されたプライマー対は、選択的なハイブリダイゼーションを可能にする鋳型核酸と接触される。一旦、ハイブリダイズされると、鋳型−プライマー複合体は、鋳型依存の核酸合成を促進する1以上の酵素と接触される。複数回の増幅(サイクルともいわれる)を、十分な量の増幅産物が生成されるまで行う。
【0051】
その増幅産物を、検出または定量する。特定の適用において、その検出は視覚的手段で行われ得る。あるいは、その検出は、化学発光、取り込まれた放射性標識を用いた放射性シンチグラフィー、または蛍光標識によるか、あるいは電気的および/または熱のインパルスシグナルを用いた系(Affymax technology、Bellus、1994年)による、その産物の間接的な検出方法を含み得る。
【0052】
あらゆる増幅に続き、鋳型および/または過剰なプライマーから増幅産物を分離することが望ましい。ひとつの実施形態において、増幅産物は、標準的な方法を使用して、アガロース、アガロースアクリルアミド、またはポリアクリルアミドゲル電気泳動(Sambrookら、1989)により分離される。核酸の分離は、当該分野で公知のクロマトグラフィー技術(例えば、吸着、分配、イオン交換、ヒドロキシアパタイト、分子ふるい、逆相、カラム、ペーパー、薄層およびガスクロマトグラフィー、ならびにHPLC)によっても達成される。
【0053】
(VII.アッセイキット、試薬およびパネル)
ヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイのためのアッセイキットも含まれる。このキットは、MNTF関連核酸またはそれらの誘導体に特異的なプローブおよび/またはプライマーを含む。そのキットはまた、サンプル調製試薬、洗浄試薬、検出試薬およびシグナル生成試薬を含む。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
どの組織がMNTFの最も高い発現を示すかを特定するために、多数の異なる組織源より得られたcDNAからPCR産物を増幅した。種々の組織由来の成体または胎児のcDNAパネルを注文し(Clontech)、染色体マッピング実験に基づいて遺伝子特異的プライマーを合成した(以下を参照)。
【0055】
次のプライマーセットを使用した:
【0056】
【化1】

予期されるPCR産物の長さは541塩基対であった。
【0057】
A.PCRプロトコル
1.マスターミックスPCR1×
35μl 水
5μl 10×緩衝液
1.5μl MgCl(50mmol)
1μl dNTP
1μl 各プライマー
2U Taq Platinum ポリメラーゼ酵素
5μl テンプレートDNA。
【0058】
2.PCR サイクリング
5分 95℃。
以下を38サイクル:
30秒 95℃
30秒 53℃ アニーリング
45秒 72℃ 伸長。
5分 72℃ 最終伸長。
【0059】
B.結果
図1は、MNTFの成体組織における発現が、当該発現が低かった脳と骨格筋を除いた全ての組織においてだいたい同じであったことを示している。図1を参照すると、プライマーを使用してMNTF1の541bpの産物を増幅し(上のパネル)、この産物をG3PDHハウスキーピング遺伝子発現により標準化した(下のパネル)。レーン内のサンプルは、両方のゲルで一貫している。左から右へ:レーン1、マーカー:レーン2、脳:レーン3、肺;レーン4、胸腺;レーン5、骨格筋;レーン6、腎臓;レーン7、心臓;レーン8、肝臓;レーン9、胎盤;そしてレーン10、ネガティブHOコントロール。
【0060】
図2は、MNTFの胎児の組織における発現が、胸腺、腎臓、肝臓において最も高く、骨格筋では最も低かったことを示している。図2の上のパネルを参照すると、レーン1、マーカー:レーン2、脳:レーン3、肺;レーン4、胸腺;レーン5、骨格筋;レーン6、脾臓;レーン7、腎臓;レーン8、心臓;レーン9、肝臓;そしてレーン10、ネガティブHOコントロール。
【0061】
この実験は、胸腺、腎臓、肝臓組織において、胎児と成体両方のMNTFの発現が比較的高いレベルであることを決定した。
【0062】
(実施例2)
総RNAを、次の組織:海馬、胎盤、脳(胎児の脳と成体の脳の両方)、網膜、下垂体、心臓、胎児筋からRISO RNA単離法(Cat#06−200)(Genemed Biotechnologies,Inc.,South San Francisco,CA)によって抽出した。この方法は、RNA分解の速度を遅延させるため、RNase、チオシアン酸グアニジン(GTC)そしてベータ−メルカプトエタノールの公知の強力なインヒビターを併用する。この方法はまた、核タンパク質複合体を壊し、RNAを液体中に放出させ、そしてタンパク質夾雑物を含まずに単離させる。この最終総RNAを、酸性フェノールとクロロホルム抽出によって夾雑からさらに精製し、そしてイソプロパノール沈殿によって濃縮する。さらなる精製を、エタノール沈殿といかなる残存タンパク質も夾雑する塩を取り除くための洗浄によって行った。
【0063】
この組織サンプルから抽出された総RNAの純度と量を、ゲル電気泳動によって決定し、A260/A280の比によって示した。1gの組織から約3.5mgの総RNAを単離し;このA260/A280の比は1.65で、このA260/A230の比は1.20であった。
【0064】
図3は異なるヒト組織のサンプル10mgから単離された総RNAの解析を示している。1.2%アガロースホルムアルデヒドゲルのレーン毎に、RNAを3ミクログラムずつ流した。レーン1〜6は、それぞれ下垂体、胎盤、脳、網膜、心臓、そして胎児筋からの総RNAを示す。レーンMは0.24〜9.7kbRNAラダーを示す。
【0065】
cDNAをGenemed cDNA調製技術(係属中の特許)を用いてmRNAから調整した。このmRNAのいくつかは、Clontech(Palo Alto、CA)から購入した。mRNAを二本鎖cDNAにコピーすること、その後、ベクターライゲーションのために末端を調製することに関する酵素によって、代表的なcDNAライブラリーを構築した。第1鎖をニワトリ骨芽球症ウイルス逆転写酵素とランダムヘキサマープライマーにより合成した。第2鎖を、RNase HとDNAポリメラーゼIにより合成した。末端を平滑にするためにT4 DNAポリメラーゼで処理した後、2本鎖cDNA分子を、アダプターライゲーションによってクローニングするために調製した。
【0066】
(実施例3)
配列決定のため、標準的DNA精製キットを用いてDNAの準備をした。Sangerら(1977)によって開発されたジデオキシ法を用いてDNA配列決定を行った。その方法は、DNAポリメラーゼが2’,3’−ジデオキシヌクレオチドを基質として組み込むことができることを利用する。DNAポリメラーゼにより伸長鎖へヌクレオチドを付加することによって、1本鎖鋳型DNAを複製した。鎖伸長は、プライマー(すなわち、その鋳型にアニールするオリゴヌクレオチド)が3’末端で生じる。鋳型への塩基対マッチングによって、伸長産物に付加されデオキシヌクレオチドが選択される。伸長産物は、プライマーの伸長末端である3’ヒドロキシル基と、結合してくるジデオキシヌクレオチドの5’リン酸基との間のホスホジエステル架橋の形成によって伸長する。伸長は5’から3’方向である。DNAポリメラーゼはまた、ヌクレオチド塩基のアナログを組み込み得る。伸長鎖の3’末端にジデオキシヌクレオチドアナログが組み込まれた時、鎖伸長は、その鎖の3’ヒドロキシル基の欠失によって、選択的にA、C、GまたはTで終結する。
【0067】
配列決定プロセスのために、PE Applied BiosystemsのABI 377シークエンサーを使用した。Applied Biosystemsの自動蛍光配列決定法では、5’に色素標識されたプライマー(色素プライマー)または3’に色素標識されたジデオキシヌクレオチド三リン酸(色素ターミネーター)を用いて、蛍光色素標識をDNA伸長産物へと組み込む。DNAシークエンサーは、Aの伸長反応、Cの伸長反応、Gの伸長反応、そしてTの伸長反応を識別するために用いた4つの異なる色素からの蛍光を検出する。それぞれの色素は、アルゴンイオンレーザーによって励起されると異なる波長の光を発し、4つの塩基を示す4つの色がゲル内で検出および識別され得る。
【0068】
(実施例3)
このMNTF遺伝子の単離とスクリーニングのために、2つの異なる戦略(すなわち、標準的なPCRと5’−RACE)を用いた。
【0069】
A.標準的なPCR
その最初の戦略は、異なるプライマーセットを用いてこの遺伝子をスクリーニングすることである。その目的は、標的となるcDNAライブラリー中に全長MNTFが存在しているかどうかを見つけることである。次のオリゴヌクレオチド配列は、MNTF配列の標準的なPCR増幅に用いるためのプライマー対の例である。
【0070】
【化2】

標準的なPCR法を用いて、異なる組織から調製されたcDNAのスクリーニングを行った。海馬組織、胎児の脳組織、胎盤組織、網膜組織、下垂体組織、胎児筋の組織、または心臓組織からcDNAライブラリーを増幅するために、それぞれのプライマー対を用いた。
【0071】
増幅条件は、20mM Tris−HCl(pH7.5)、50mM KCl、3.5mM MgCl、0.1% Triton X−100、0.8mM dNTP、ぞれぞれのプライマー100pmol、そしてApplied BiosystemsのTaq DNAポリメラーゼ2.5uから成った。以下:94℃、1分;55℃、2分;72℃、3分、を35サイクル行った。
【0072】
DNA増幅産物を、電気泳動によって分離し、UV下で検出した。目に見えて増幅されたバンドがあったときは、そのバンドを低量の融解アガロースゲルで単離し、フェノール抽出し、エタノール沈殿させた。その増幅されたバンドをクローニングのために調製した。1つの部分的なPCR断片を単離し、その配列を決定した。1つの部分的なDNA配列(長さは約700塩基対)(配列番号1の核酸残基1〜713と一致)を、脳組織から調製されたcDNAから増幅した。
【0073】
B.5’−RACE増幅
5’−RACEは、このMNTF遺伝子の5’−末端を見出すために用いられる別の戦略である。5’RACEまたはアンカーPCRは、メッセンジャーRNA(mRNA)からのMNTF 5’末端の単離および特徴づけを容易にする。Invitrogen Life Technologies(Carlsbad,CA)からRACE(rapid amplification of cDNA ends)のためのRACEシステムを改変し、そのMNTF cDNAを得るために用いた。そのRACE手順を、このMNTF mRNAの規定した内側部分と3’末端または5’末端のどちらかの未知の配列との間の総mRNAからcDNA配列を増幅するために用いた。異なる組織からmRNAを単離後、第1鎖cDNAの合成を遺伝子特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてプライムする。これは、MNTF特異的mRNA(およびMNTFに関連したmRNAのファミリー)をcDNAに転換することを可能にし、メッセージの5’末端への完全な伸長のための可能性を最大限にする。cDNA合成の後、組み込まれなかったdNTPおよびMNTFプライマーから第1鎖産物を精製する。cDNAの3’末端にホモポリマーテールを付加するために、TdT(ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ)を用いる。次いでネスト化(nested)遺伝子特異的プライマーと、相補的なホモポリマーを含むアンカープライマーとホモポリマーテールからの増幅を可能にする、対応するアダプタープライマーとの組合わせの混合物を用いたPCRによって、その末端cDNAを増幅する。これはMNTF特異的プライマー配列とmRNAの5’末端との間の未知の配列の増幅を可能にする。
【0074】
図4は、そのRACE手順から生成したDNA断片を示している。この反応に約0.1μgのmRNAを用いた。図4に示したその結果は、1μlのRACE反応を用いることにより得られた。その反応温度は94℃で2分間;94℃で50秒間、65℃で30秒間、72℃で3分間を30サイクル;そして最後に72℃で10分間であった。図4のレーン1〜6はそれぞれ、下垂体、胎盤、脳(胎児の脳と成体の脳の両方)、網膜、心臓、ならびに胎児筋からの総RNAを示す。DNA分子重量マーカーはMと名称をつける。約1.8kbの比較的大量のRACE産物が下垂体RNAから生成された。
【0075】
RACE手順を用いてMNTF配列を増幅するためのプライマーとして次のオリゴヌクレオチド配列が、使用され得る。
【0076】
【化3】

このMNTF遺伝子に対するcDNAを、RACEによって下垂体組織から単離した。配列番号1に示した配列は、いくつかのDNAシークエンシングランから構築した整理した。その配列はMNTF mRNAに対応する1859の連続した塩基を含んでいた(シークエンシングランごとの平均の長さは919塩基である)。
【0077】
(実施例4)
標準化したヒト胎盤(8〜9週)から調製されたスーパースクリプトcDNAライブラリーを、Invitrogen(カタログ番号SL.2NBHP89Wを参照のこと)から購入した。5’−cDNA末端と3’−cDNA末端からのMNTF遺伝子の増幅およびクローニングを容易にするために、ポリメラーゼ鎖反応に基づくRACE技術およびRACEプロトコルを用いた。
【0078】
MNTF cDNAを、そのcDNAライブラリーから単離した。その5’−末端配列を5’−末端RACEを用いて同定し、その3’−末端配列を3’−末端RACEを用いて同定した。遺伝子を単離する方法を、DNA RACEキットの手引書に従って行った。その行程の詳細は、製造会社:Ambion,Inc.,Austin,TXによって説明されている。次いで、遺伝子の同一性確認のために、その単離された遺伝子を配列決定した。
【0079】
MNTF cDNAを、ベクター(pcDNA3.1/V5−His−TOPO ベクター)へサブクローニングした。5’−末端配列と3’−末端配列との両方の連結をDNA配列決定反応で確認した。
【0080】
その胎盤cDNAの全体のDNA配列は、下垂体からのMNTF関連cDNAと一致する(配列番号1)。
【0081】
(実施例5)
NIN283として同定された遺伝子もまた染色体16q22上に位置する。NIN283は神経損傷に反応して発現する(登録番号NM032268、4633bp mRNA配列)。NIN283の公開された遺伝子配列は、染色体16q22の74812469から74813547、それから74907023から74907188、74918235から75918340、74919933から7490022、そして74921184から74924445上に位置する。そのMNTF 1859bp cDNA配列は、染色体16q22の74814238から74816096上に位置する(UCSC genome blat使用)。この2つのヌクレオチド配列には、重複も一致もないが、そのMNTF遺伝子配列はその第1断片(またはエキソン)と第2断片(またはエキソン)との間(NIN283遺伝子のイントロン領域内)に位置する。
【0082】
実際に、そのMNTF遺伝子がNIN283と関係がなく、記載されていないスプライス型におけるNIN283のエキソンではないことを確実するために、骨格筋からのポリA(+)RNAを用いてRT−PCRを行った。3つのプライマーセットを作製した。1つめは、NIN283の第1エキソン内の正方向プライマーおよびMNTFコーディング領域内の逆方向プライマー、そして2つめは、MNTFコーディング領域内の正方向プライマーおよびNIN283の第4エキソン内の逆方向プライマーである。スプライス型がNIN283のエキソンとしてMNTFとともに存在した場合、PCR産物を見出すことが予期される。しかしながら、意味のあるPCR産物はいかなるPCR反応においても生成されなかった。これらのRT−PCR反応の結果により、MNTFとNIN283が関係しているという可能性は非常に低い。
【0083】
本発明は、その特定の明らかに好ましい形態を参照してかなり詳細に記載されてきたが、他の形態も可能である。例えば、組織特異的および/または発生段階でのmRNA転写で使用する転写開始部位のバリエーションは、他の人によって記載されている。それゆえに、MNTFに関連するmRNAまたはcDNAの5’末端は、組織、細胞、発生段階ごとに位存して付加的な核酸残基、この核酸残基は配列番号2の選択された部分(例えば、推定の転写開始部位)をみ得る。加えて、ハイブリダイゼーションアッセイおよび/または増幅アッセイで使用される対応するMNTF関連オリゴヌクレオチドは、本発明の局面に従って、そのようなバリエーションのさらに明確な発現プロフィールを提供する有用性を有する。それゆえに、本発明の趣旨および範囲は、添付の特許請求の範囲内において特徴付けられ、その中に含まれる好ましいバリエーションの記載に制限されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
本発明は、よりよく理解され、添付の図面を参照することによって、当業者によりその利点が認められ得る。
【図1】図1は、成体ヒトMTCパネル(Clontech)内でのMNTF1遺伝子の発現パターンを示す。
【図2】図2は、胎児MTCパネル(Clontech)内でのMNTF1遺伝子の発現パターンを示す。
【図3】図3は、6つの異なるヒト組織、下垂体(レーン1)、胎盤(レーン2)、脳(レーン3)、網膜(レーン4)、心臓(レーン5)、胎児筋(レーン6)から単離した総RNAのアガロースゲル電気泳動による解析結果を示す。
【図4】図4は、下垂体(レーン1)、胎盤(レーン2)、胎児と成体の脳(レーン3)、網膜(レーン4)、心臓(レーン5)、および胎児筋(レーン4)からの総RNAを用いたRACE手順により生成されたDNA断片を示す。
【図5】図5は、下垂体組織由来のMNTF cDNAと16番染色体配列とのアライメントを示す。
【図6】図6は、DNA配列決定により、16番染色体上の配列と比較してそのcDNAには2つの位置でバリエーションがあることを証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1を含む配列;配列番号2を含む配列;ならびに配列番号の相補体および配列番号2の相補体からなる群より選択される、単離されたMNTF関連ポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号1の断片を含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチドであって、該断片は、i)配列番号1の残基1〜1849から選択される5’末端、およびii)該5’末端および3’末端を含む、配列番号1の少なくとも10の連続した核酸残基であって、ここで該断片の3’末端は、配列番号1の残基10〜1859から選択される、核酸残基、を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号1の断片を含む単離されたポリヌクレオチドであって、ただし該断片のヌクレオチド配列は、配列番号1の以下の残基:
残基1〜582;
残基758〜765;
残基886〜892;
残基1104〜1108;
残基1126〜1129;
残基1165〜1173;
残基1174〜1182;
残基1183〜1192;
残基1192〜1198;
残基1224〜1225;
残基1267;
残基1289;
残基1321〜1323;
残基1334〜1336;
残基1339〜1341;
残基1346〜1349;
残基1364〜1372;
残基1403〜1406;
残基1450〜1452;
残基1467〜1473;および
残基1474〜1859、
のいずれかから選択される、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号1の断片を含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチドであって、該断片は、以下:
a)配列番号3;
b)配列番号5;
c)配列番号6;および
d)配列番号10;
からなる群より選択される、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号1に完全に相補的な核酸配列を有する断片を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子であって、該断片は、以下:
a)配列番号4;
b)配列番号7;
c)配列番号8;
d)配列番号11;および
e)配列番号12、
からなる群より選択される、単離された核酸分子。
【請求項6】
前記請求項1の断片は、少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含む、請求項3に記載の単離されたポリヌクレオチド断片。
【請求項7】
前記少なくとも1つのオープンリーディングフレームは、以下:
a)配列番号13;
b)配列番号14;
c)配列番号15;
d)配列番号16;
e)配列番号17;
f)配列番号18;
g)配列番号19;
h)配列番号20;
i)配列番号21;
a)配列番号22;
b)配列番号23;
c)配列番号24;
d)配列番号25;
e)配列番号26;
f)配列番号27;
g)配列番号28;
h)配列番号29;
i)配列番号30;
j)配列番号31;および
k)配列番号32、
からなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項6に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
第1のポリヌクレオチドおよび請求項7に記載の第2のポリヌクレオチドを含む組成物であって、ここで該第1のポリヌクレオチドは、配列番号29をコードするオープンリーディングフレームを含む、組成物。
【請求項9】
配列番号2の断片は、少なくとも1つの推定MNTFプロモーター配列および少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含む、請求項3に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記推定MNTFプロモーター配列は、以下:
a)配列番号2の残基862〜911;および
b)配列番号2の残基2315〜2364、
からなる群より選択される、請求項9に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
配列番号2の前記断片は、配列番号2の残基2501〜4359を含む潜在的転写開始配列を含む、請求項10に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記少なくとも1つのオープンリーディングフレームは、以下:
a) 配列番号13;
b) 配列番号14;
c) 配列番号15;
d) 配列番号16;
e) 配列番号17;
f) 配列番号18;
g) 配列番号19;
h) 配列番号20;
i) 配列番号21;
j) 配列番号22;
k) 配列番号23;
l) 配列番号24;
m) 配列番号25;
n) 配列番号26;
o) 配列番号27;
p) 配列番号28;
q) 配列番号29;
r) 配列番号30;
s) 配列番号31;および
t) 配列番号32、
からなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項9に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
配列番号1のオープンリーディングフレームにコードされる、単離されたMNTF関連ポリペプリヂド。
【請求項14】
異種のタンパク質に連結された、配列番号1のオープンリーディングフレームによりコードされるMNTF関連ポリペプチドを含む、融合タンパク質。
【請求項15】
請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチドに作動可能に連結された発現ベクターであって、ここで少なくとも1つのオープンリーディングフレームは、望ましい宿主ベクターと適合性の制御配列に作動可能に連結されている、発現ベクター。
【請求項16】
請求項15に記載の発現ベクターで形質転換された、単離された宿主細胞。
【請求項17】
媒体中におけるMNTF関連ポリヌクレオチドの存在を決定するための方法であって、以下の工程:
MNTF関連核酸配列を含み得る該媒体を、合成されかつ単離されたオリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、該合成されかつ単離されたオリゴヌクレオチドは、該媒体内で、前もって選択されたハイブリダイゼーション条件下で該MNTF関連核酸配列とハイブリダイズするが、該MNTF関連核酸配列以外の核酸配列とはハイブリダイズしない、工程;および
該前もって選択されたハイブリダイゼーション条件下において、該MNTF関連核酸配列の存在を検出する工程、
を包含する方法。
【請求項18】
異なるサンプルにおけるMNTF関連発現産物の相対量を比較する方法であって、以下:
第一のサンプルおよび第二のサンプルを得る工程であって、ここで該第一のサンプルは該第二サンプルと異なる、工程;
該第一のサンプルおよび該第二のサンプルについて、MNTF関連発現産物を検出する工程;ならびに
該第一のサンプルおよび該第二のサンプルの該MNTF関連発現産物の相対量を比較する工程、
を包含する、方法。
【請求項19】
MNTF RNAが前記発現産物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
MNTF関連ポリペプチドが前記発現産物である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも配列番号29を有するポリペプチドが前記発現産物である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記比較する工程が、前記RNAと相補的な核酸プローブとのハイブリダイゼーションを含む工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
ハイブリダイゼーションアッセイにおける使用のためのパネルであって、固相支持体の表面に安定して結合している、2つ以上の請求項1に記載のポリヌクレオチドを含むパネル。
【請求項25】
配列番号1または配列番号2の断片を含む単離されたポリヌクレオチドであって、ただし該断片のヌクレオチド配列は、米国特許第6,309,877号における配列番号2に完全には一致しない、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項26】
配列番号1または配列番号2の断片を含む単離されたポリヌクレオチドであって、ただし該断片のヌクレオチド配列は、米国特許第6,309,877号における配列番号5に完全には一致しない、単離されたポリヌクレオチド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−510417(P2007−510417A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538566(P2006−538566)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/038651
【国際公開番号】WO2005/047487
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(302062403)ジェナボン バイオファーマシューティカルズ エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】