説明

運動低下状態及び/又は運動亢進状態の検出

本発明は、人の運動状態を決定する自動化方法に関する。本方法は、人の四肢に装着された加速度計から加速度計データを取得し、加速度計データを処理して運動状態に対する測定値を決定する。本発明はさらに、人の運動状態を決定する装置に関する。本装置は、人の四肢に装着された加速度計から得られるデータを処理し、そのデータから運動状態に対する測定値を決定するように構成されたプロセッサを備える。本方法及びシステムにおいて、運動状態は、運動緩慢、ジスキネジア及び運動亢進のうちの少なくとも1つである。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2008年6月12日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2008902982号及び2009年6月9日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2009902616号からの優先権を主張し、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、運動症状をモニタリングして運動緩慢及び/又はジスキネジア若しくは運動亢進を検出することにより、人の運動状態を分析することに関する。
【背景技術】
【0003】
さまざまな疾患、薬剤、外傷及び他の要因により、人は、運動亢進状態であるジスキネジア又は運動低下状態である運動緩慢等の運動症状を有することになる可能性がある。
【0004】
たとえば、運動緩慢は、パーキンソン病の重要な現れである。パーキンソン病の患者には、Lドーパすなわちレボドパが投与されることが多く、それには、投与後のある期間、患者がジスキネジアになるという影響がある可能性がある。パーキンソン病が進行すると、Lドーパの半減期が短くなり、有効用量範囲が低減し、投薬管理が極めて困難且つ複雑になる。これは、一般には、症状を管理して患者が妥当な生活の質を有することができるようにするために、投薬回数を増やす、時には毎日10回程度投与することによって管理される。したがって、パーキンソン病の患者には、1日に数回、Lドーパの1回の投与の過程を通して、運動緩慢、ジスキネジア及び正常な運動機能の期間がある可能性がある。
【0005】
ある時点で十分な投与法(dosage regime)に達する場合であっても、パーキンソン病が進行性であることにより、神経科医は、患者の継続する治療投薬を有効に管理するために患者の症状を定期的に再検討しなければならないことになる。客観的且つ継続的なモニタリングなしには、医師がジスキネジアのエピソードを過度に増加させる過剰な用量か、又は運動緩慢のエピソードを防止しない不適切な用量の処方を回避することは、非常に困難である。さらに、症状の改善に用量の変更が有効であったか否かを断定する客観的な測度はない。
【0006】
熟練した神経科医は、臨床的観察から、通常、運動緩慢及びジスキネジアの存在を検出することができる。一手法では、観察する医師は、観察したエピソードの重症度を示すために、0〜20の範囲のスコアを与える。図1は、3人の神経科医が与えたスコアを示し、各プロット点は、1つのジスキネジアのエピソードを観察している2人の神経科医によって与えられたスコアを表している。神経科医1のスコア(三角形)及び神経科医3のスコア(円形)が、神経科医2からのスコアに対してプロットされている。明らかであるように、このスコアリング手法の主観的な性質により、ばらつきが顕著になる。1つの極端な例では、神経科医2は、1つのジスキネジアのエピソードを、重症度10(神経科医2が過去に与えた最高スコアは13であったことを留意すると、極めて重症である)としてスコアリングしており、一方で、神経科医3は、同じエピソードを重症度0(ジスキネジアが観察されない)としてスコアリングしている。したがって、医師は、通常、観察中にジスキネジア及び他の運動状態を検出することはできるが、これら状態は容易には定量化されず、投薬管理が非常に主観的になる。
【0007】
さらに、臨床的観察は、一般的に、6週間又は8週間に一度、通常は数十分間程度の、患者が訪れる短い期間にしか行われない。1日を通して且つ日によって運動状態が変動することにより、患者の運動状態を評価する試みが著しく複雑になる。臨床医は、約束した診察日の間の患者の継続的な運動状態を理解するために、患者の記憶及び/又は書かれた日記に頼ることが多い。しかしながら、患者は、めったに客観的スコアを与えることはできず、運動のエピソード自体の影響が、運動変動の性質及びタイミングのいかなる記録をとることも困難にすることが多い。
【0008】
たとえばパーキンソン病の別の一般的な症状は振戦である。パーキンソン病の振戦は、大部分の振戦の形態より低速であり、周波数は4〜6サイクル/秒である。動きの他の要素と比較して、振戦は、比較的少ない周波数成分の振動からなる。スペクトル分析により、振戦は、通常、正常な動きの周波数範囲(4Hz未満)を明らかに上回る狭い周波数範囲(4〜6Hz)における離散ピークとして現れる。振戦は、多くの研究の対象となっており、特にスペクトル分析を用いる研究に適している。振戦は、連続的な繰返しの動きであり、正弦波の特徴を与え、めったに連続的ではない正常な人間の運動から容易に識別できるため、比較的検出が容易である。振戦は、パーキンソン病の管理において、ジスキネジア及び運動緩慢よりはるかに問題ではない。投薬を調整しようとして、振戦の測定値から人の運動緩慢状態を推測する試みがなされてきた。しかしながら、多くの患者の場合、振戦と運動緩慢との間に密接な関連性がなく、この技法を用いることにより薬剤が不正確に投与される可能性がある。
【0009】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、物品等のいかなる説明も、単に本発明に関する状況を提供することを目的とするにすぎない。これらのもののいずれか又はすべてが、従来技術の基礎の一部を形成し、又は、本出願の各請求項の優先日の前に存在したものとして、本発明に関する技術分野における一般的な常識であったという、承認としてみなされるべきではない。
【0010】
本明細書を通して、「備える、含む(comprise)」という語又は「備える、含む(comprises)」若しくは「備えている、含んでいる(comprising)」等の変形は、述べている要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップ群の包含を意味し、いかなる他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップ群の排除をも意味するものではないことが理解されよう。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様によれば、本発明は、人の運動状態を決定する自動化された方法を提供し、本方法は、
人の四肢に装着される加速度計から加速度計データを取得するステップと、
データを処理して、運動状態に対する測定値を決定するステップであって、運動状態が、運動緩慢、ジスキネジア及び運動亢進のうちの少なくとも1つである、ステップと、
を含む。
【0012】
第2の態様によれば、本発明は、人の運動状態を決定する装置を提供し、本装置は、
人の四肢に装着された加速度計から得られるデータを処理し、且つデータから運動状態に対する測定値を決定するように構成されたプロセッサであって、運動状態が、運動緩慢、ジスキネジア及び運動亢進のうちの少なくとも1つである、プロセッサ
を備える。
【0013】
第3の態様によれば、本発明は、コンピュータに対し、人の運動状態を決定する手続きを実行させるコンピュータプログラム手段を備えるコンピュータプログラム製品であって、本コンピュータプログラム製品は、
人の四肢に装着された加速度計からデータを取得するコンピュータプログラムコード手段と、
データを処理して運動状態に対する測定値を決定するコンピュータプログラムコード手段であって、運動状態が、運動緩慢、ジスキネジア及び運動亢進のうちの少なくとも1つである、コンピュータプログラムコード手段と、
を備える。
【0014】
したがって、特に、本発明により、人の運動状態に関して、その人の四肢に装着された単一の加速度計から得られる測定値に基づいて決定を行うことができる。本明細書では、運動状態という用語を、運動障害状態であるものと定義する。本発明では、四肢に装着された単一のセンサが、運動緩慢及び/又はジスキネジア若しくは運動亢進の状態の決定を可能にする適切な運動関係データを提供するということを認識する。したがって、本発明の実施形態は、2つ以上のセンサを取り付けることが実際的でない虚弱な人、年配者又は障害者に特に適切であり得る。実施形態によっては、加速度計は、手首の上等、肘より下に装着される。他の実施形態では、センサを、足首等、膝の下に装着してもよい。
【0015】
さらに、本発明は、運動緩慢及びジスキネジアのうちの少なくとも一方である運動状態の自動決定を可能にし、したがって、不正確である可能性のある、振戦の測定値に基づく運動緩慢の推測に頼らない技術を提供する。
【0016】
好ましい実施形態では、運動緩慢に対する測定値とジスキネジアに対する測定値との両方を決定するために、加速度計データを処理する。
【0017】
運動緩慢
運動緩慢の測定値を決定するいくつかの実施形態では、加速度計からのデジタルデータをバンドパスフィルタ処理し、対象帯域に関してデータを抽出する。対象帯域は、DCを取り除くように選択される下端カットオフ周波数を有することができる。下端カットオフ周波数は、たとえば、0.05Hz〜1Hzの範囲であってもよく、好ましくは0.2Hzである。対象帯域は、一般に正常な人間の動きからは発生しない高周波数成分を除去するように選択される上端カットオフ周波数を有することができる。上端カットオフ周波数は、たとえば、3Hz〜15Hzの範囲であってもよく、好ましくは4Hzである。約4Hzの上側カットオフは、通常4Hzを上回る振戦の影響をなくすか又は最小限にするために有益であり得る。
【0018】
さらに又は別法として、運動緩慢の測定値を決定するいくつかの実施形態では、デジタル加速度データの時間ブロックすなわち「ビン」を、時系列のデータから抽出し、分離して考慮し、各ビンの持続時間を、そのビンの間に人の有意な動きを適度に可能にするのに十分長いが、運動緩慢の比較的規則的な測定値が決定されるために十分短いように選択する。たとえば、ビン持続時間は、2秒〜60分の範囲であってもよく、より好ましくは15秒〜4分の範囲であり、最も好ましくは30秒〜2分の範囲である。
【0019】
さらに又は別法として、運動緩慢の測定値を決定するいくつかの実施形態では、好ましくは、ウインドウの長さが正常な人間の動きの持続時間の一部である移動平均を使用して、最大値に対するデジタルデータを探索し、たとえば、移動平均のウインドウの長さは、0.02秒〜30秒の範囲であってもよく、実質的に0.2秒であってもよい。人によるピーク加速度の動きを表す、データが最高平均を有することが分かるウインドウを取得する。こうした実施形態では、正常な運動状態にある人は、一般に、運動緩慢の人より高いピーク加速度で動作し、したがって、ピーク加速度は、運動緩慢状態を検出し定量化するのに用いることができる指標であることを認識する。データビンを評価する実施形態では、ビンiに対し、最高平均をPKiと呼び、これはピーク加速度のウインドウである。閾値を適用することができ、それにより、いくつかのビンに対し、運動緩慢の人と正常に運動する人とが各々単に静止したままであり得る可能性を考慮するように、閾値を下回るPKiの値を排除する。
【0020】
さらに又は別法として、運動緩慢の測定値を決定するいくつかの実施形態では、ピーク加速度の前及び後の両方の複数のデータ点を含むサブビンを取得する。サブビンは、好ましくは、2のべき乗である複数のデータ点を含み、サブビンは、好ましくは、ピーク加速度を中心に対称的に配置される。サブビンは、好ましくは、正常な人間の1つの動きの持続時間と実質的に同じである期間にわたって取得されるデータ点を含み、たとえば、サブビンの持続時間は、0.5秒〜30秒の範囲、より好ましくは1秒〜3秒の範囲であってもよく、たとえば、実質的に2.56秒であってもよい。サブビンは、さらに、好ましくは、あるとすれば関連するビンの長さのほんの一部である。サブビンのスペクトル分析を、好ましくは、たとえばサブバンドスペクトル測定値を取得するようにサブビンのデータに対して高速フーリエ変換を実行することによって行う。サブバンドは、幅が対象帯域の約1/4であり得る。サブバンドの幅は、0.1Hz〜2Hzの範囲、より好ましくは0.6Hz〜1Hzの範囲であってもよく、実質的に0.8Hzであってもよい。サブバンドは、周波数領域において重なっていてもよく、たとえば、8つの部分的に重なるサブバンドが考えられ得る。
【0021】
したがって、こうした実施形態により、人のピーク運動が非常に低い周波数成分を有する場合、これは運動緩慢を示すということを認識して、ピーク加速度の単一運動のスペクトル成分が取得される。したがって、実施形態によっては、いずれの単一のサブバンドが最大パワーを有するかを特定し、低周波数サブバンドが最大パワーを有する場合、運動緩慢の存在のより強い指示を与えることができる。さらに又は別法として、サブバンドスペクトル測定値のうちのいくつか又はすべてに重み付けを適用することにより、重み付き平均スペクトルパワーMSPを生成することができ、それにより、最大値(MSP)が小さく且つ低周波数サブバンドに存在する時、運動緩慢のより大きい指示が与えられ、最大値(MSP)が高く且つ高周波数サブバンドに存在する時、運動緩慢のより小さい指示が与えられる。
【0022】
さらに又は別法として、運動緩慢の測定値を決定するいくつかの実施形態では、複数nの連続したビンを考慮することができ、各ビンに対してPKi及びMSPiを決定し、n個のビンからPKiの最大値(PKi.max)を選択し且つMSPiの最大値(MSPi.max)を選択することができる。次いで、運動緩慢スコアBKを
BK=PKi.max×MSPi.max
として計算することができる。
別法として、運動緩慢スコアを、
BK=A×log(PKi.max×MSPi.max)−B
として計算することができる。ここで、A、c及びBは選択可能な調整用の定数である。非限定的な例では、A=16.667、n=10及びB=116.667である。こうした実施形態では、人が静止し続けている場合、個々のビンは、正常に運動する人と運動緩慢の人との識別を可能にする情報をほとんど有してない可能性があることを認識する。連続したビンを考慮することにより、実際の運動が考慮されている確率が上昇する。
【0023】
さらなる又は別の実施形態では、BKスコアが、人が長時間動かずにいるか否かによって影響され得るようにすることができる。こうした実施形態では、正常に運動する人と運動緩慢の人との重要な識別因子を認識し、それは、正常に運動する人は、いかなる長時間にも完全に動かないままでいることはめったになく、一方で運動緩慢の人は、長時間完全に動かないままである可能性がある、ということである。こうした実施形態では、たとえば、小さい値をとる、PK値の最頻値等、複数のビンのPKの閾値加速度値を考慮することができる。人のPKが長期間(平穏時又はQTと呼ぶ)閾値を超過しない場合、こうした実施形態では、これを、運動緩慢状態を示すものとみなすことができる。たとえば、運動緩慢スコアを、
BK=A×log(PKi.max×MSPi.max)/QT−B
として計算することができ、それにより、大きいQTはBKスコアを低減し、それにより、運動緩慢がより強力に示される。mの値は好ましくは1以上であり、それにより、長期間のQTはBKスコアにより強く影響を与える。
【0024】
こうした実施形態は、一般的な臨床的な客観的測度と一致して、正常に運動する人に対してより大きい値であり運動緩慢の人には0により近いより小さい値であるBKスコアをもたらすことが留意されよう。
【0025】
別の実施形態では、QTを、それ自体BKの追加の指標として使用することができる。大きいQTは非常にBKである。
【0026】
結果を平滑化するために、複数の連続したBKスコアの移動平均を出力することができる。実施形態によっては、運動緩慢の測定値を、ある期間にわたって繰返し決定することができ、たとえば、測定値を数分毎に決定することができる。こうした実施形態では、運動状態の累積的指示を提供するために、個々の測定値の合計を含む累積的な運動緩慢スコアを決定することができる。たとえば、累積的スコアを、Lドーパの1回の投与の過程にわたり又は1日にわたって決定することができる。
【0027】
したがって、本発明の実施形態によっては、運動緩慢の動きは加速度及び速度がより低いことと、スペクトル分析において、すべての周波数における比較的多数の低周波数及び低下したパワーにより、運動緩慢の動きの低い周波数、振幅、速度及び加速度が明示されることとを認識する。
【0028】
ジスキネジア
ジスキネジアの測定値を決定するいくつかの実施形態では、加速度計からのデジタルデータをバンドパスフィルタ処理し、対象帯域に関してデータを抽出する。対象帯域は、DC成分を取り除くように選択される下端カットオフ周波数を有することができ、それはたとえば、0.05Hz〜2Hzの範囲であり、好ましくは1Hzである。対象帯域は、一般に正常な人間の動きからは発生しない高周波数成分を除去するように選択される上端カットオフ周波数を有することができ、それはたとえば、3Hz〜15Hzの範囲であり、好ましくは4Hzである。約4Hzの上側カットオフは、通常4Hzを上回る振戦の影響をなくすか又は最小限にするために有益であり得る。
【0029】
さらに又は別法として、ジスキネジアの測定値を決定するいくつかの実施形態では、デジタル加速度データの時間ブロックすなわち「ビン」を、時系列のデータから抽出し分離して考慮し、各ビンの持続時間を、そのビンの間に正常に運動する人がほとんどか全く動かない期間があることを適度に可能にするのに十分長いが、ジスキネジアの比較的規則的な測定値が決定されるために十分短いように選択する。たとえば、ビン持続時間は、10秒〜10分の範囲であり、より好ましくは30秒〜4分の範囲であり、最も好ましくは実質的に2分であり得る。こうした実施形態では、正常に運動する人とジスキネジアの人との識別因子は、正常に運動する人にはほとんど又は全く動かない期間があるが、一方でジスキネジアの人は一般に静止したままでいることができず、したがってほとんど又は全く動かない期間がほとんどないということである、ということを認識する。
【0030】
さらに又は別法として、ジスキネジアの測定値を決定するいくつかの実施形態では、データを閾値と比較することができ、データが閾値を下回ったままである期間又は時間の割合を決定することができる。こうした測定値は、人が動きを低減する期間又は時間の割合に関連し、本明細書では、低減した動きの時間(TRM)と呼ぶ。閾値は、データの平均値であり得る。雑音の影響を低減するために、データの移動平均が、閾値と比較されるものであり得る。たとえば、移動平均のウインドウの長さは、0.5秒〜4秒の範囲であってもよく、好ましくは実質的に1秒である。こうした実施形態で生成されるTRM測定値は、ジスキネジアの人は動かない期間がほとんどないため、そうした人の場合は小さくなり、正常に運動する人の場合は大きくなるため、ジスキネジアを検出して定量化することができる。
【0031】
さらに又は別法として、ジスキネジアの測定値を決定するいくつかの実施形態では、データを閾値と比較することができ、閾値を下回るデータのパワー測定値を決定することができる。こうした実施形態では、ジスキネジアの人の場合、完全に動かないことがほとんどないため、閾値を下回るデータが、正常に運動する人より大きいパワーを有することになる。閾値は、データの平均値であってもよく、ジスキネジアの人の場合は値が高くなり、閾値を下回るデータのパワーが高くなり、それにより、より正確にジスキネジアを検出し定量化することが可能になる。閾値を下回るデータのパワー測定値は、閾値を下回るデータに対して高速フーリエ変換を実行することによって取得される平均スペクトルパワー(SPRM)を含むことができる。SPRMの二乗平均平方根(RMS)値をとることにより、SPRM.RMSを取得することができる。
【0032】
さらに又は別法として、ジスキネジアの測定値を決定するいくつかの実施形態では、データの周波数成分の分散(VAR)を取得することができる。こうした実施形態では、ジスキネジアが、広範囲の周波数での動きをもたらすことが多く、それによりVARが大きくなり、一方で正常に運動する人は、大部分の動きに対して同様の速度で動く傾向があり、VARが小さくなるということを認識する。したがって、VARは、ジスキネジアを検出し定量化することができるさらなる測定値を提供する。
【0033】
ジスキネジアの測定値を決定するいくつかの実施形態では、ジスキネジアスコアを
DK=A×log(SPRM/TRM
として計算することができる。
【0034】
さらに又は別法として、ジスキネジアの測定値を決定するいくつかの実施形態では、ジスキネジアスコアを、
DK=A×log(Acc×SPRM/TRM
として計算することができる。
【0035】
さらに又は別法として、ジスキネジアの測定値を決定するいくつかの実施形態では、ジスキネジアスコアを、
DK=A×log(RMSRM/TRM
として計算することができる。ここで、A及びcは選択可能な調整用の定数であり、TRMは低減した動きの時間であり、RMSRMは閾値を下回る加速度計データの二乗平均平方根値である。
【0036】
さらに又は別法として、ジスキネジアの測定値を決定するいくつかの実施形態では、ジスキネジアスコアを、
DK=A×log(VAR/TRM
として計算することができる。
【0037】
さらに又は別法として、ジスキネジアの測定値を決定するいくつかの実施形態では、ジスキネジアスコアを、
DK=A×log(VAR×SPRM/TRM
として計算することができる。
【0038】
SPRM、SPRM.RMS、VAR及びAccは、ジスキネジアの人の場合は大きく、TRMは、ジスキネジアの人の場合は小さいため、上記スコアは、一般的な臨床的な客観的測度と一致して、大きい数字がジスキネジアを示す。
【0039】
結果を平滑化するために、複数の連続したDKスコアの移動平均を出力することができる。実施形態によっては、ジスキネジアの測定値を、ある期間にわたって繰返し決定することができ、たとえば、測定値を数分毎に決定することができる。こうした実施形態では、運動状態の累積的指示を提供するために、個々の測定値の合計を含む累積的なジスキネジアスコアを決定することができる。たとえば、累積的スコアを、Lドーパの1回の投与の過程にわたり又は1日にわたって決定することができる。
【0040】
したがって、本発明の実施形態によっては、ジスキネジアの動きは、パワーが大きく、振幅が増大し、連続した絶え間ない特性のものであることを認識する。
【0041】
実施形態によっては、運動緩慢の測定値とジスキネジアの測定値とをともに生成するようにデータを処理する。こうした実施形態では、人が同時に又は短い間隔で連続して運動緩慢及びジスキネジアの両方の状態になる可能性があり、加速度計が返すデータから各状態を独立して定量化することができることを認識する。
【0042】
したがって、本発明の実施形態によっては、運動緩慢状態及び/又はジスキネジア状態を客観的に検出し且つ定量化することができ、それは、臨床試験及び通常の臨床の場の両方において、特に根本的治療(disease modifying)介入の使用を案内するために、治療薬の効果を評価するために重要である。これら実施形態は、1日を通して実質的に連続して又は高頻度で測定を行うことにより、運動症状が変動する場合であっても上記を達成する。さらに、本発明の実施形態は、患者又は神経科医の主観的な測度に頼るのではなく、24時間にわたる等、より長い期間に自動的な比較分析を行うことができるように客観的測定値を提供する。こうした実施形態では、Lドーパ等の治療薬の効果をよりよく評価するために、より長い期間の分析が有益であることを認識する。
【0043】
実施形態によっては、加速度計は、3軸加速度計であり、各感度軸に対して、その軸に沿った加速度に対して比例する出力を与える。各出力を、好ましくは、ある時間にわたる加速度を表すデータを取得するようにサンプリングする。たとえば、100Hzサンプリングを使用してもよい。
【0044】
本発明の第2の態様の実施形態によっては、装置は、人から遠隔であり通信ネットワークを介して加速度計からデータを受信するように構成された中央コンピューティングデバイスであり得る。こうした実施形態では、中央コンピューティングデバイスを、その人に関連する医師又は臨床医等に運動状態の決定された測定値を通信するようにさらに構成することができる。
【0045】
本発明の第2の態様による他の実施形態では、装置は、データが取得される加速度計を備えた装着式装置であり得る。こうした実施形態は、人に運動状態の決定された測定値を示す、ディスプレイ等の出力手段をさらに備えることができる。こうした実施形態では、装置のプロセッサを、運動状態の測定値を使用してその人の投薬法(medication regime)を更新し、更新した投与法をその人に示すようにさらに構成することができる。投与法を、薬剤の用量の変更、及び/又は薬剤の投与のタイミングの更新により更新することができる。
【0046】
以下、本発明の例を、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】3人の神経科医が与えたジスキネジアスコアのプロット図であり、各プロット点は、1つのジスキネジアのエピソードを観察した時の2人の神経科医が与えたスコアを表している。
【図2】本発明の実施形態によるさまざまなパーキンソン病の臨床状態を検出する手段の概略図である。
【図3】本発明の一実施形態による運動状態のモニタリング及び報告を示す図である。
【図4】ジスキネジアスコアのプロット図であり、各点は、同じエピソードを観察している3人の神経科医が与えるスコアの平均に対してプロットされた、1つのジスキネジアのエピソードに対し本発明の一実施形態によって生成されたスコアを示す。
【図5】各被験者群(C=対照被験者、B=運動緩慢の被験者、及びD=ジスキネジアの被験者)に対してプロットされた作業2中に達成された平均ピーク加速度(APA)(運動緩慢スコア)を示す図である。
【図6A】じっと座っている間(点線、作業3)と随意運動を行っている間(作業1、太線)との健常被験者から取得されたパワースペクトルを示す図である。
【図6B】被験者に対し、人差し指を使用して、オシロスコープの面を横切って移動する2Hz及び4Hzの振動を追跡するように求めた場合のスペクトル出力を示す図である。
【図7】「minimum」という語を書いている健常被験者から取得されたパワースペクトルを示す図である。
【図8】各スペクトルバンドに対し作業1又は作業3を行っている健常被験者(C)、運動緩慢の被験者(B)及びジスキネジアの被験者(D)に対するMSPのプロット図である。
【図9A】ABSに対するAPAのプロット図である。
【図9B】Lドーパの投与後の時間に対してプロットされた1人の患者の運動緩慢の変化を示す図であり、太線はAPAによって決定される運動緩慢であり、点線はABSによって決定される運動緩慢である。
【図10A】ADSに対してプロットされたIMSを示す図である。
【図10B】Lドーパの投与後の時間に対してプロットされた1人の患者のジスキネジアの変化を示す図であり、太線はAPAによって決定されるジスキネジアであり、点線はADSによって決定されるジスキネジアである。
【図11】本発明の装置及びシステムを使用する、結果として得られた患者のスキャンと結果の決定とを示す図である。
【図12】本発明を実施する例示的なシステムで使用することができる汎用コンピューティングデバイスを示す図である。
【図13】全身に対するIMSスコアと比較した手首に対するIMSスコアを示す図である。
【図14】1日を通しての個人の実質的に連続したDK及びBKスコアリングを示すグラフである。
【図15】各投与に続く期間のDKスコアの累積合計を、1日を通してのBKスコアの値とともにプロットすることにより、本発明の結果を提示することができる別の方法を示すグラフである。
【図16】ジスキネジアである患者に対しDKスコア及びBKスコアをプロットするグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図2は、本発明の実施形態によるさまざまなパーキンソン病又は運動状態を検出する装置15の概略図である。装置15は手首装着式であって、本発明者らが認識したように、全身の運動状態の十分に正確な表現を提供する。たとえば、図13に、全身に対するIMSスコアと比較した手首に対するIMSスコアを示し、手首が適切な運動状態情報を与えることを示している。装置15は、人の四肢の動きデータを取得する3つの要素を備えている。装置15は、加速度計の形態の動きモニタ21と、運動緩慢及びジスキネジアの客観的な決定を可能にするように、受け取ったデータを記録し分析する評価部22と、臨床医が薬剤を処方することができるか又は人が自身の運動状態をより理解することができるように、ある期間にわたって運動緩慢又はジスキネジアの客観的決定を出力する出力手段23とを備えている。
【0049】
装置15は、人の最も影響を受ける手首に装着されるように意図されている軽量装置である。装置は、腕の上でぐらつかず、したがって加速度を誇張しないように十分固く支持されるように、弾性リストバンドに取り付けられる。装置は、動きの誇張を最小限にするように人の手首からの盛上りが最小限であるように構成されている。装置は、バックルで固定されたリストバンドであってもよく、それにより、装置のバックルを外し且つ装置を取り外す行為により、回路が切断され、ロガーに対して装置が装着されていないことが通知される。患者は、好ましくは、就寝時まで、その日に最初に薬剤を服用する少なくとも30分前に装置を装着する。これにより、装置は、この時点で通常最悪である早朝の運動緩慢を記録することができる。そして、装置は、1日のすべての投薬に対する運動反応を記録し続ける。
【0050】
加速度計21は、0〜10Hzの帯域幅にわたり3つの軸X、Y、Zにおける加速度を記録し、3つのチャネルのデータを装置に搭載されたメモリに記録する。この装置は、最長3日間データを装置に格納することができるように250MBの記憶容量を有しており、格納した後、装置を、データがダウンロードされ分析されるように管理者に提供することができる。さらに、この実施形態では、装置は、毎晩患者の就寝時に取り外されると、ドックに配置され且つドックとインタフェースし、それにより装置がドックにデータを転送するように構成されており、ドックはその後、無線ブロードバンドを介してデータを主要会社(図3の114参照)の分析サーバに送信する。ドックとのインタフェースにより、装置のバッテリが充電されることも可能である。
【0051】
潜在的に虚弱である人に対して意図された手首装着式装置として、装置は、サイズ及び重量が最小である。さらに、この理由で、ドッキングインタフェースは、装置が単にインタフェースの接続を行うように適所に置かれ、接続がなされたという非常に明確なフィードバックを提供するように設計されている。1つの別の形態では、患者がデータ転送を行うためにドッキングさせる必要をなくすように、データロガーからの情報を、Bluetooth等により無線でPDA(携帯情報端末)に送信してもよい。
【0052】
図3は、本発明の一実施形態による運動状態モニタリング及び報告を示す。患者112は、図2の装置を装着している。装置15は、加速度計データの記録を取り、それを中央演算施設114に通信する。演算施設114は、アルゴリズム(後述する)を使用してデータを分析し、人112の運動緩慢状態に対する時系列のスコアと、その人のジスキネジア状態に対する時系列のスコアとを取得する。これらスコアは、神経科医の時間の効率的な使用を確実にするために、神経科医が迅速に解釈することができるフォーマットで、神経科医116に報告される。報告は、主な動きのカテゴリを示し、医師に直接電子メールで送られるか、又はウェブサイトで入手可能となる。この報告から、患者の投薬手順(medication protocol)を最適化することができる。そして、神経科医116は、運動状態報告を解釈し、それに従って患者の薬剤処方を更新する。
【0053】
加速度計は、1軸加速度計を使用して0〜10Hzの周波数範囲にわたり±4gの測定範囲で加速度を測定する。別法として、より優れた感度を実現するために3軸加速度計を使用することができる。
【0054】
装置は、最大7日間、1日最大16時間のデータを格納する。そして、格納されたデータは、手動で又は無線ブロードバンドで中央演算施設114に、又はBluetooth無線を介してPDA等に転送される。したがって、記録システムは完全に携帯型であり、家庭において患者が装着することができるものである。
【0055】
この実施形態では、ジスキネジアスコア及び運動緩慢スコアを生成するために、中央演算施設114により、取得されたデータに対してアルゴリズムが適用される。
【0056】
運動緩慢スコアリングアルゴリズム
自動運動緩慢スコア(BK)を生成するアルゴリズムは、運動緩慢患者が、動きの間の間隔が長く、動く時の加速度が低いという認識から始まる。したがって、運動緩慢患者は、動きのある時間の割合が低い。正常に運動する人は、動いている時間の割合はより高く、動きのピーク加速度もより高い。臨床的観察に基づく目下使用されている主観的測度に沿って、このアルゴリズムでは、低いBKスコアはより重症な運動緩慢を示し、高いBKスコアは運動緩慢がほとんどないか又は全くないことを示す。運動緩慢スコアリングアルゴリズムは、記録されたデータに対し以下のステップで作用する。
【0057】
BK1:DC、手首の回転、4Hzを上回る振戦及びロガーの偶発的なぶつかり等を取り除くために、データをバンドパスフィルタ処理し、0.2〜4Hzの範囲の成分を抽出する。
【0058】
BK2:一度にデータの短いビンを検索し、それは、この実施形態ではビン毎に30秒間又は3000データ点である。ビンの長さは、人がそのビン期間内で有意な動きをとることによりそうした動きからパラメータPK及びSPmaxi(後述する)が発生し得る適当な可能性があるように、十分長い。
【0059】
ステップBK3〜BK9は、ビンにおける最大加速度とこの加速度が発生した周波数とを見つけるように設計されている。ここでは、正常な動きでは、より高い周波数でより高い加速度が発生し、運動緩慢では、より低い周波数で発生するより低いピーク加速度を特徴とすることを認識する。
【0060】
BK3:雑音を除去するために0.2秒(20データ点)移動平均を使用して、最大加速度値に対してi番目のビンを探索する。最高平均の0.2秒期間が、ピーク加速度PKiであるとみなされる。他の実施形態では、中央値を取ることにより、又は高い値を選び出すことにより、又はローパスフィルタ処理を行うことにより、雑音を除去してもよい。
【0061】
BK4:PKiの両側のX個の点を収集して、FFTに使用される2X個のデータ点のサブビンを作成する。この実施形態では、両側で128個の点を取得して256個の点(2.56秒)のサブビンを生成する。
【0062】
BK5:生加速度計信号に対し、ピーク加速度サブビンに対してFFTを実行し、PKiの周囲に存在する周波数成分を見つける。
【0063】
BK6:重なっている0.8Hz帯域を考慮する。すなわち、
A 0.2〜1.0Hz
B 0.6〜1.4Hz
C 1.0〜1.8Hz
D 1.4〜2.2Hz
E 1.8〜2.6Hz
F 2.2〜3.0Hz
G 2.6〜3.4Hz
H 3.0〜3.8Hz
である。
最大平均スペクトルパワーSPmaxiを含む帯域を特定する。
【0064】
BK7:8つの周波数ビンの各々の値を以下のように重み付けする。
A×0.8
B×0.9
C×1.0
D×1.1
E×1.2
F×1.3
G×1.4
H×1.5
線形ルックアップ関数を使用して、重み付き帯域値から最大重み付き平均スペクトルパワー(MSPMAX)を特定する。
【0065】
BK8:高周波数及び高振幅の高いMSPmaxを、非運動緩慢状態を示す可能性がより高いものとし、一方で小さいMSPmaxは、運動緩慢を示す可能性がより高い。
【0066】
BK9:ステップBK3〜BK8を、一連のMSPmax.i値を取得するように30秒ビン毎に繰り返す。
【0067】
BK10:分析ビン群にわたる最大の動きを特定し記録する。たとえば、分析ビン群は、4つのビンにわたって広がることにより2分毎にBKスコアを生成することができ、又は、6つのビンにわたって広がることにより、3分毎にBKスコアを生成することができる。ビン群の最大PKi及びビン群の最大重み付きMSPmax.iを選択し、これら2つの値は同じビンから発生していない可能性があることを留意する。以下を計算することにより運動緩慢スコアを生成する。
BK=A×log10(MSPmax×PKi)−B
したがって、このステップは、2〜3分のウインドウ毎に「最適な」すなわち最強の動きに対して作用する。そして、時間に対してBKスコアをプロットする。
【0068】
BK11:神経科医に対し直観的に提示するために結果をフィルタリングするように、2〜10分のウインドウ(ウインドウの長さは可変である)にわたってBK値の移動平均を取得し、時間に対してプロットする。
【0069】
したがって、このアルゴリズムで生成されたBKスコアにより、各投薬からのある時間にわたるBKの変化を評価することができ、投薬の時刻からのBKの相対的な変化を測定することができる。これにより、毎日又は各投薬期間に対し患者が各BKスコアである時間の割合の評価も可能となる。正常に運動する人々が、短期間運動緩慢のように挙動する可能性があることを留意して、人の運動緩慢の持続性及び深さの両方を評価することが重要であり、これはこの実施形態によって可能になる。
【0070】
ジスキネジアスコアリングアルゴリズム
自動ジスキネジアスコアを生成するアルゴリズムは、ジスキネジアの被験者が動きの間にほとんど間隔又は中断がなく、一方で非ジスキネジアの人々は、動きのないより長い期間があるという認識から始まる。ジスキネジアの人はまた、より大きいスペクトルパワーで動く。したがって、このアルゴリズムは、過度な随意運動の期間がある正常に運動する人々と、過度な不随意運動があるジスキネジアの人とを識別するように作用する。ジスキネジアスコアリングアルゴリズムは、以下のステップで記録されたデータに対して作用する。
【0071】
DK1:DC、手首の回転、振戦及びセンサのぶつかりを取り除くために、生データに対してバンドパスフィルタ処理を行うことにより1〜4Hzの範囲の成分を抽出する。
【0072】
DK2:ヌル
【0073】
ステップDK3〜DK7は、データセットから正常な随意運動を取り除くように、平均加速度を上回るデータの部分を除去することを目的とする。
【0074】
DK3:データを、各々が分離して考慮される120秒ビンに分解する。ビンの幅は可変であり、この実施形態では、12000のデータ点を含む。ビン期間が長いほど、信号の大部分は振幅が小さくなるため、高い加速度の動きを排除する可能性が高くなる。
【0075】
DK4:各120秒ビンiに対し、データの絶対振幅を使用して、平均加速度振幅(Acc)を測定する。Accを閾値として使用し、それを下回るデータを、「低減した動き」を表すものとみなす。
【0076】
DK5:そのビンにわたって1秒(100データ点)移動点平均を計算する。
【0077】
DK6:正常な随意運動を排除するように、平均加速度がAccより大きいデータのいかなる1秒間も、それ以上考慮しない。
【0078】
DK7:ビンに残っているデータを、低減した動きの期間に関連するものと仮定し、したがって、低減動き(RM)データセットと呼ぶ。ビン内の低減動きの期間はTRMである。ビンに残っているRMデータを単純に連結する。
【0079】
ステップDK8〜DK12は、RMデータの不随意運動におけるパワーを測定するいくつかの方法を評価して、データに残っている「不随意」運動セットの特性を測定することを目的とする。ジスキネジア患者は、不随意運動におけるパワーが高いことを留意する。
【0080】
DK8A:各120秒ビンにおいてRMデータセットに対してFFTを実行する。各120秒ビンにおけるRMの平均スペクトルパワーはSPRMである。これは、DK1におけるフィルタリングのために1〜4Hz範囲である。ジスキネジアでは、このパワーが、正常に運動する人よりも高くなる。
【0081】
DK8B:低減した動きのパワーを得るために、低減動きデータセット絶対値のRMS値を取得する。
【0082】
DK8C:完全な120秒ビンか又はRMデータセットにおける周波数の分散(VAR)又は標準偏差を取得する。
【0083】
DK9:DKスコアを
DKsp=A SPRM/TRM
として計算し、DKspをプロットする。
【0084】
DK10:DKスコアを
DKacc=log(Acc×SPRM)/TRM
として計算し、DKaccをプロットする。
【0085】
DK11:DKスコアを
DKrms=A logRMSRM/TRM
として計算し、
DKrmsをプロットする。
【0086】
DK12:DKスコアを
DKvar=A logVAR/TRM
として計算し、DKvarをプロットする。
【0087】
神経科医に対して直観的に提示するために結果をフィルタリングするように、2〜10分のウインドウ(ウインドウの長さは可変である)にわたりDK値の移動平均を取得し、時間に対してプロットする。さらに、毎日又は各投与期間に対し患者が異なる絶対DKスコアである時間の割合を評価する。これは、正常に動作する人が短期間ジスキネジアのような動きをとる可能性があるが、ジスキネジア患者のみが動きに対して絶え間ない性質を有するということを認識し、それが、この手法で測定されるものである。
【0088】
この実施形態では、さらに、日常の投薬期間、たとえば午前9時〜午後12時の期間からのDKスコアを、より強力な測定値を得るために複数の日にわたって平均化することができる。
【0089】
図4は、ジスキネジアスコアのプロットであり、各点は、同じ事象を観察している3人の神経科医が与えたジスキネジアの平均スコアに対してプロットされた1つのジスキネジアのエピソードに対する、本発明の一実施形態によって生成されたDKスコアを示す。図示するように、本発明は、好ましくは、3人の神経科医の平均スコア(「判断基準(Gold standard)」と呼ぶ)(特異度93.6%、感度84.6%)と比較し、この実施形態が、日常の臨床的モニタリングに対する許容可能な代用であることを論証している。
【0090】
図11は、1人の患者に対して、図2のシステムを使用し且つ上記アルゴリズムを使用して得られた結果を示す。患者は、午前6時15分に起床し、手首記録装置を装着した。患者の動きにより、装置及びアルゴリズムは、この時点でBK4の非常に低いBKスコアを与え、それは患者が非常に運動緩慢であることを示し、それはパーキンソン病の原則的な特徴である。そして、患者は、午前7時にLドーパを2錠服用したが、錠剤が吸収され且つ脳に患者の運動緩慢を低減し始めるのに十分な濃度があるようになるまで、運動緩慢であり続けた。午前8時頃から午前9時半まで、患者の運動緩慢は、BK4からBK1まで改善し続けた。BK1は正常なパターンの動きである。しかしながら、この段階でのLドーパの濃度により、午前9時頃においてピーク用量ジスキネジアが導入され始めた。患者は、午前10時近くでBK状態にぶり返した。患者の2度目の投薬が午前10時45分になされ、それによって患者はすぐにBK1の正常なBKスコアに戻った。午後12時半頃にジスキネジアが再び発症した。
【0091】
理解されるように、運動緩慢及びジスキネジアのこうした同時の継続する客観的測定値により、神経科医に、薬剤の適切な用法を策定するのに役立つ詳細な情報が提供される。たとえば、この記録に応じて、神経科医は、患者の運動緩慢時間を短縮するようにLドーパの最初の投与を朝のより早い時間にし、第2の投与までの時間間隔を、第3の投与までの間隔は維持しながら幾分か短くするように選択することができる。この患者に対する目的は、BK1状態における時間の割合をより高くするようにBKを維持することであり、一方で、DK2状態及びDK3状態に費やされる時間を短くするようにDKスコアを低減することも目的とする。当然ながら、こうした変更の影響をモニタするために本発明によりさらなる測定を行うことができる。
【0092】
したがって、この実施形態により、その人が臨床的環境においてある範囲の自然な動き及び制御されない動きにわたって正常な日常活動を行っている場合であっても、高い選択度及び感度により、その人の運動緩慢状態及びジスキネジア状態を認識し定量化することが可能になる。
【0093】
図14は、1日を通しての個人に対する実質的に連続したDK及びBKスコアリングを示す。垂直線で示す時刻に、Lドーパ治療が行われた。本発明の本実施形態で生成されたこの図は、患者が非常に低いジスキネジア及び非常に著しい運動緩慢を有することを明確に示しており、これによって神経科医が、患者が完全に治療されていないように見えることを迅速に推測することができる。
【0094】
図15は、各投与に続く期間にDKスコアの累積合計をプロットすることにより、本技法の結果を提示することができる別の方法を示す。実際のDKスコアを、薄い線で示し、累積DKスコア(CUSUM DK)を実線で示す。この場合もまた、各投薬の時刻を垂直線で示す。平坦なCUSUMは、正常な運動状態を示し、そのため図15は、この患者には特に午後の間に著しいジスキネジアが出ることを示す。したがって、この場合、本発明は、神経科医に対し、その日を通して特定の投薬毎に誘発されるジスキネジアに関する価値のある情報を提供する。図15はまた、その日を通してBKスコアの値もプロットしている。
【0095】
図16は、別の患者に対するDKスコア及びBKスコアをプロットしており、これらの結果から、この患者に非常にジスキネジアであることが分かる。この患者のBKスコアは非常に正常であり、したがって、神経科医に対し、運動緩慢は完全に治療されているが高いジスキネジアが発生しているため投薬を低減させてもよい、という価値のある洞察を提供する。午前8時15分辺りの異常なBKスコアは、たとえばシャワーを浴びている時に患者がロガーを取り外すことによってもたらされた可能性がある。
【0096】
被験者に対してある形態の装置及びシステムを試験する際、以下を行った。12人の被験者、すなわちパーキンソン病の患者と8人の健康な被験者(対照)とを調査した(表1)。被験者を、運動緩慢[B]、ジスキネジア[D]及び健常[C]として認識した。パーキンソン病患者は、1つの診療所から集められ、パーキンソン病に対する投薬を受けていた。対照には、いかなる神経学的異常はなかった。すべての処置が、世界医師会ヘルシンキ宣言に準拠し、倫理委員会(Human Research & Ethics Committee)によって承認され監督された。すべての被験者が、実験手順の詳細な説明に従って同意した。
【表1】

【0097】
Lドーパの治療
時刻0において患者が運動緩慢であることを確実にするために、患者に対し、調査の開始10時間前に通常の治療を停止するように要請した。食物及び水分摂取は制限しなかった。調査の開始時(0分)、患者に対してLドーパが250mgでありカルビドパが25mgの1つの錠剤を与えた。そして、患者に対し、薬剤投与の0分後、10分後、20分後、30分後、45後、60分後、90分後、120分後及び180分後に与えた一組の単純な作業を完了するように要請した。
【0098】
臨床的評価
繰り返しの振動する動きを行っている間に最大加速度を測定することにより、運動緩慢を評価した。被験者に対し、1枚の厚紙の上に300mm離れて配置された2つの大きい点(直径30mm)の間で人差し指をスライドさせるように求めた。これを、被験者自身のペースで30秒間行わせ、その後30秒間休ませた後、30秒間可能な限り高速で繰り返させた。四肢の動きが胴体に向かい且つ離れるのではなく胴体を横切るものであるように、点を配置した。これは、運動緩慢を評価する既知の有効なキー押し(key press)又はペグボード(peg board)テストの変形であった。平均ピーク加速度(APA)は、20の最大加速度の中間値であり、それを臨床的運動緩慢スコアとして使用した。
【0099】
ジスキネジアスコアを、パーキンソン病に精通し変更IMSスコアリング方法の使用の経験がある訓練された神経科医によって提供されたスコアの平均から取得した。評価者のうちの2人は、この調査で採用した患者のいずれをも以前に検査したことがなく、第3の評価者は、患者の神経学的な日常治療を提供した。評価者は、各々無関係にスコア付けした。
【0100】
5つの指定された作業(後述する)を行っている被験者をビデオ撮影した。ビデオを30秒の時期に分割し、評価者は、各時期に対してスコアを提供した。上述した方法から変更された変更不随意運動スコア(IMS)を用いて、以下の5つの体の部位の各々に対し0〜4のスコアを提供した、すなわち、上肢;腕、手首、手及び指、下肢;脚、膝、足首及びつま先、体幹運動;背中、肩及び腰:頭部運動;首及び顔:全体的判断;全体的なジスキネジアの重症度。スコアは以下の通りである。0=ジスキネジアなし、1=素人を除く訓練された医師には認識可能なジスキネジア、2=容易に検出可能なジスキネジア、3=日々の活動には影響を与えなるがそれらを制限しないジスキネジア、4=日々の活動を制限するジスキネジア。したがって、最大IMSは20である。
【0101】
テスト手順
加速度計を、回内/回外運動に対して最も感度が高いように方向付け、パーキンソン病の被験者の最も深刻に影響を受けている四肢と、対照被験者の利き側の四肢とに取り付けた。加速度計のリードを、加速度計の外膜移動を防止するように、肘の下に別個に固定した。
【0102】
作業1.無制限の随意運動:被験者は、ネクタイを結ぶ等、何かを作成する、建てる又は行う方法の説明が必要な主題に関して会話を行った。特別に選択された作業中のみでなく、通常の活動中にも、スペクトログラムを使用して運動緩慢及びジスキネジアを検出することができるか否かを確立するために、自発運動を記録した。
【0103】
作業2.繰り返しの交互の随意運動:これについては上述しており(臨床的評価)、これを用いて臨床的な運動緩慢スコアリングを行った。
【0104】
作業3.制限された随意運動:被験者に対し、ジスキネジア等の不随意運動を識別するように、可能な限り静止したままであるように要請した。被験者に対し、両手を膝の上に置いて背筋を伸ばして座るように指示し、1分間随意運動をしないように要請した。この作業中にジスキネジアに対して被験者にスコア付けした。
【0105】
作業4.患者は、600mlまで満たされた1Lの水差しから、3つのプラスチック製の250mlコップに水を注いだ。この作業を行うのに半分間から2分間かかった。患者に対して、加速度計が取り付けられた手首を使用して注ぐように求めた。
【0106】
作業5.患者は、2.5メートルの距離を歩行し、180度回転してさらに2.5メートル歩行した。これを、少なくとも30秒間繰り返したが、被験者によっては1サイクルを行うのに1分間かかった。1人の患者は、車椅子に乗っており、この作業を行うことができなかった。
【0107】
各作業を行うのにおよそ2分間かかった。調査の第1部では、被験者は最初の3つの作業を一度で完了した。Lドーパのテスト投与に続き、被験者に対し、薬剤投与の後に規則的な間隔で5つのすべての作業を行うように要請した。この試験は、1回の用量のLドーパの影響を網羅し、結果としての短時間の運動変動を含むように設計されていた。
【0108】
統計的分析
0.5〜8.0Hz周波数帯域を周波数の3つのビン又は帯域、すなわち0.5〜2.0Hz、2.0〜4.0Hz及び4.0〜8.0Hzに分割した(図7)。周波数帯域を、特定の運動挙動に関連する可能性のある周波数を表すように選択した。FFTが、一連の離散点を通して引かれた線であるため、帯域内のすべての点を合計し平均化することにより、後にその周波数帯域に対するMSP(平均スペクトルパワー)と呼ぶ平均をもたらすことができる。したがって、MSP0.5〜2.0Hzは、0.5〜2.0Hzの周波数帯域からの平均スペクトルパワーを指す。
【0109】
調査の第1段階では、マン・ホイットニー(Mann−Whitney)検定を用いて、運動緩慢の被験者から得られたMSPとジスキネジアの被験者から得られたMSPとを比較し、0.01未満のP値を有意であるとみなした。統計的有意性に対する検定を行ったが、機能的に有用な結果のみが、特定の検定に対してさまざまな臨床群で重なりがほとんど又は全くないようにする。
【0110】
結果
パーキンソン病の被験者における運動緩慢及びジスキネジアの選択及び特徴付け
この調査における患者は、この患者らが明らかな運動緩慢を有する(運動緩慢患者として既知である)か又はLドーパの投薬に続き顕著なジスキネジアを有する(ジスキネジアの被験者)ため、選択した。運動緩慢の被験者を、投薬をやめた時に評価したが、大部分が、Lドーパを投与した時に顕著なジスキネジアを発症しなかった。本発明者らは、運動緩慢の重症度に対する「基準」として、点スライドからのAPA(本方法で説明した)を使用した。ジスキネジアの被験者のAPAスコアは、健常と運動緩慢との中間であった。ビデオ撮影された動きの各2分セグメントに対してジスキネジアスコアを与えた3人の神経科医が、総IMSスコアを提供した。3人の評価者間の同意は、彼らのスコア間の強い関連性に反映された。
【表2】

【0111】
記録された腕に対するIMSスコアが、1つのみの腕における加速度の測定値(図13)を正当化する総IMSスコアと相関性が高かった(r=0.85、図13も参照)ということが重要である。
【0112】
次の調査のセットは、健常被験者のパワースペクトルが、種々の運動を識別するために適当であるか否かの疑問に対処した。健常被験者がじっと座っていた(作業3、図6A)時、広範な調査周波数にわたるパワーは、被験者が随意運動(作業1、図6A)を行っていた時より低かった。そのため、2Hz及び4Hzの四肢の振動を測定することができることを論証するために、健常被験者は、人差し指を用いて、オシロスコープ画面上で2Hz及び4Hzの振動を追跡した。パワースペクトルでは、関連周波数での明らかなピークが明白であった(図6B)。被験者が「minimum」という語を書いた時、およそ3Hzの広いピークが明白であった(図7)。
【0113】
そして、パワースペクトルを3つの帯域に分割し(図7)、各帯域のMSPを評価した(図8)。会話中に手首を動かしている場合(作業1)、3つの周波数帯域すべてにおけるパワースペクトルが、健常被験者より運動緩慢の被験者の方が低かった(図8)。被験者が静止したままでいるように求められた時にこの差がそれほど明白でなかったことは驚くべきことではない。すなわち、運動緩慢患者は、健常な被験者と同様に静止したままでいることができる(たとえば、作業3、図8)。
【0114】
ジスキネジア運動の周波数範囲は、正常な運動に類似していたが、実質的にパワーが増大していた。予測され得るように、ジスキネジアの被験者は、完全に静止したままでいることが困難であった(作業3、図8)。健常被験者及びジスキネジアの被験者のMSPを3つのスペクトルバンドの各々に完全に分離したが、分離はMSP2.0〜4.0Hzにおいて最大であった(作業3、図8)。
【0115】
運動緩慢
すべての時点におけるすべての患者からのMSP2.0〜4.0Hzを、同じ時点に測定されたAPAと相関させた。
【表3】

【0116】
MSP2.0〜4.0Hzは、(APAによって測定された)運動緩慢とは相関性が弱かった。これは、運動緩慢を予測するMSP2.0〜4.0Hzの低い特異度(76%)及び感度(65.1%)に反映された。
【0117】
低い相関性は、MSPによって測定された運動緩慢が作業依存するために発生する可能性が最も高い。たとえば、健常な人がじっと座っているように「選択した」場合、MSPは、より迅速に動くことができない運動緩慢の人と識別不可能である。したがって、要件は、迅速に動くことができない運動緩慢患者から、大部分の時間静止していたが、迅速な動きをすることができる患者を認識することであった。考慮すると、運動緩慢の被験者は、健常被験者より動きが少なく、そのため、動きの間の間隔が長い。さらに、運動緩慢の動きが発生した場合、その動きのパワーは低く、より低い加速度及び振幅を反映する。
【0118】
したがって、本質的に、各間隔においてもたらされた最大加速度とこのピークを包囲する期間におけるMSPとを使用してABS(自動運動緩慢スコア)を生成する、本発明の一実施形態によるアルゴリズムを開発した。論拠は、健常被験者にはMSPが低い期間がある可能性があるが、彼らが行ういかなる動きも、運動緩慢の被験者よりはるかに高い加速度で行われる、ということであった。ABSを導出するために使用したアルゴリズムを、APAに対して逐次変更し最適化した。最適となると、新たなデータのセットを収集し、APAに対してプロットした(図9A)。ABSは、特異度が87.5%であり感度が94.5%であって、運動緩慢「基準」(r=0.628、p<0.001、n=79)と相関性が強かった。Lドーパの投与の後の時間に対してAPA及びABSをプロットし、1人の被験者の例を図9Bに示す。この場合、APAとABSとの相関性はr=0.77であった。
【0119】
ジスキネジア
自動ジスキネジアスコア(ADS)も開発した。臨床的ジスキネジアスコアは、MSP1〜4Hz及びAPAの両方と相関性が強いことが分かった。
【表4】

【0120】
これらの相関を考慮すると、いずれの加速度計測定値も、神経学的評価と一致するジスキネジアの客観的測定値を提供する。しかしながら、MSPの感度(76.9%)及び特異度(63.6%)は、許容できないほど低かった。相関は、患者が行っている作業に対する依存性が高かった。特に、この相関は、被験者がじっと座っている時のジスキネジアは考慮しておらず、ジスキネジアのレベルは、わずかに30秒後に発生したが被験者が歩行している時より著しく高かった。したがって、ジスキネジアの測定値としてのスペクトルパワーの問題は、運動緩慢で直面した問題に類似しており、すなわち、随意運動が増大する期間と不随意運動(ジスキネジア)が増大する期間とを識別する問題である。ジスキネジアの被験者の検査と神経科医との討議とにより、ジスキネジアの被験者は動きのない期間がより短いということが示唆された。
【0121】
したがって、本発明の一実施形態によれば、動きがない期間又は加速度計記録において振幅が低い期間を特定するDKアルゴリズムを開発した。要するに、各2分セグメントにおける平均加速度を推定し、平均加速度を上回る動きを、随意運動又はジスキネジア運動のいずれかとみなした。加速度が平均を下回る時期を抽出し、MSP1.0〜4.0Hzを加速度の低い期間の数で割って自動ジスキネジアスコア(ADS)を生成した。非ジスキネジアの被験者は、平均加速度を下回りMSP1.0〜4.0Hzが低い期間がより多いはずであり、一方でジスキネジアの被験者は、平均加速度ウインドウを下回る時間がより少ないはずであり、MSP1.0〜4.0Hzが大きいはずである。本質的に、本手法は、被験者がじっとしたままである時間を定量化することである。ADSを導出するために使用したこの実施形態のアルゴリズムを、IMSに対して逐次変更し最適化した。最適となると、データの新たなセットを収集し、IMSに対してプロットし、相関係数(スペアマン)を計算した(r=0.766、p<0.0001、n=85、図10A)。この相関性がMSP1〜4HzとIMSとの間より弱かったが、感度及び特異度ははるかに高かった(感度=84.6%、特異度=93.6%)。本方法は、患者の長期記録により適しており、それは、行われた作業のタイプによる影響が低いためである。
【0122】
本発明のこれら実施形態の根底にある前提は、訓練された観察者によって認識された動きのパターンを、動きの追跡を記録し、観察者がパターンを特徴付けるために用いる特徴をモデル化することによって定量化することができることであった。この調査において、本発明者らは、まず、スペクトル分析により運動緩慢とジスキネジアとを識別することができることを示した。しかしながら、本方法の感度及び選択度は、種々の活動が発生した場合、低下した。
【0123】
特に、運動緩慢とじっと座っている健常被験者とを識別し、ジスキネジアと何らかの形態の正常な活動とを識別するために、より複雑な分析が必要であった。これを、訓練された観察者が見るもの、すなわち、運動緩慢の被験者には、動きの間の間隔がより長く、そうした被験者が動く時、加速度が低い、ということをモデル化することによって達成した。ジスキネジアの被験者は、動きの間の間隔が少なく、高いスペクトルパワーで動く。この手法を用いて、自然の動きの範囲にわたって高い選択度及び感度で、運動緩慢の動き及びジスキネジアの動きを認識することができた。
【0124】
本発明のこの実施形態を検証するには、「判断基準」への言及が必要であった。臨床医は、ジスキネジア及び運動緩慢を見ると分かり、臨床的観察を定量化しようとして、臨床的尺度が開発されてきた。しかしながら、これら尺度は主観的であり、訓練及び経験が必要であって、同じ臨床医が繰り返した場合に最も正確である。必然的に、これら尺度は、訓練された観察者がいる場合にしか使用することができず、しかしながら、パーキンソン病は、1日を通して、日によって大きく変化し、1回の一瞬の印象では、疾患の作用及び変動の真の測定値を提供することはできない。使用される運動緩慢及びジスキネジアの格付け尺度は、スペクトル分析の出力と比較するために利用可能な、もっと広く許容されている半客観的方法である。運動緩慢に対する最も一般的な臨床的ベッドサイド検査は、迅速な交互の指の運動を要求するというものである。低速な振幅の小さい動き(低加速度)は運動緩慢とみなされ、ペグボード、キー押し及び点スライド(作業2)等の振動運動の間に展開されたピーク加速度を測定するいくつかの定量的尺度がある。これらは、繰返しの数、又は動きのタイミング、又は達成される動きの「量」に従って変化する。同様に、低振幅低速の手書き及び1分毎のキー押しも、運動緩慢に対する非常に有効な試験である。これら尺度の各々が、運動緩慢の測定値として、正常な加速度に達することができないことに依存する。ジスキネジアスコアは、他のジスキネジア格付け尺度の変形であった。臨床的尺度と本実施形態の自動尺度との相関の程度により、自動尺度が有効であり、長期にわたって臨床状態を連続的にスコアリングするために使用することができることが示唆される。DKスコア及びBKスコアは、臨床状態を認識することができ、したがって、有効な臨床的ツールを提供することができる。
【0125】
したがって、本発明の記載した実施形態では、投薬によるPDの改善された管理には、臨床的観察がなされていない時であっても、1日を通して、運動緩慢及びジスキネジアの両方のモニタリングが必要であるということを認識する。したがって、本実施形態は、規定された期間にわたり、患者の動き状態を、遠隔で且つ実質的に連続して、取り込み、解釈し、報告する手段を提供する。このシステムは神経科医に自動的に報告するため、患者又は患者の介護人が記憶すること、記録を残すこと又は記録を維持することを気にする必要がない。さらに、この実施形態の単純な手首装着装置は、使用が容易であり、家庭又は他の場所で使用することができ、日々の活動を邪魔することがなく、技術の理解を必要としない単純なシステムである。さらに、主要施設での診療所に容易に通うことができない地方及び遠隔地に住んでいる人々に対して、患者の地元の開業医と連携して、用量の変更を神経科医が遠隔で行うことができる。
【0126】
本発明の上述した実施形態は、神経科医に、パーキンソン病(PD)の患者の症状の客観的評価を(デジタル報告フォーマットで)自動的に提供することにより、神経科医にはさらに有益である。これにより、神経科医に、客観的且つ連続的なデータ収集に基づき、重要な期間にわたり患者の運動状態に関する確実な情報が提供される。この情報により、医師は、ジスキネジア及び運動緩慢、すなわちPD患者にとって重要な症状の発生を低減するようにより効率的に薬剤の用量を設定することができる。これにより、患者の管理が改善され、PD患者の生活の質が向上する。これにより、さらに、医者/診療所を訪れる回数が減少し、神経科医がより多くの患者に有効なケアを提供することが可能になる。
【0127】
この実施形態のより広い利点には、ヘルスケアシステムに対する金銭的負担を軽減する改善された患者管理、外来患者の訪問の減少、入院が必要な、症状に関連する転倒及び合併症の発生の低減、並びに高度且つ専門の高齢者介護の低減があり得る。
【0128】
この実施形態は、さらに、手首装着式装置をプログラム可能とすることができ、それにより、神経科医は、患者の必要に基づいて、記録の時刻及び頻度を設定することができ、さらに、装置を、薬剤を服用するように患者に対してリマインダを与えさせることができる。
【0129】
したがって、この実施形態は、連続してPD患者の動きを遠隔で記録し、神経科医が必要とする日にちにわたって、2〜3分毎に評価をもたらす、客観的報告ツールを提供する。それは、PDの症状の確実な測定という問題を解決し、神経科医に報告を電子メール又は適当なウェブサイトを介して自動的に提供する。すべてのPD段階に対して有用であるが、ジスキネジアが発現し始める、疾患の中間段階中が特に有効である。医師は、疾患進行を診断し、患者が訪れる前の3〜4日に記録された客観的データに基づいて、薬剤投与を変更することができる。医師は、投薬を変更した後に記録されたデータを用いて、投薬の有効性を決定するか又はさらなる変更を行うことができる。記録は患者の履歴とともに容易に保持される。
【0130】
したがって、本実施形態は、パーキンソン病の患者の症状の客観的な連続した評価を可能にする。したがって、この実施形態は、医師が運動緩慢及びジスキネジアの場合をより非効率に決定するのに役立つことができ、したがって、より適切な投薬を提供することによって患者管理を改善し、パーキンソン病の人等、運動緩慢及び/又はジスキネジアの人々に対し、生活の質を向上させる。
【0131】
この詳細な説明のいくつかの部分を、コンピュータメモリ内のデータビットに対する操作のアルゴリズム及び記号表現に関して提示する。これらアルゴリズムに関する記述及び表現は、データ処理技術の当業者が、自身の仕事の内容を他の当業者に最も有効に伝えるために使用する手段である。アルゴリズムは、本明細書では、且つ一般に、所望の結果に導く首尾一貫した一連のステップであると考えられる。それらステップは、物理量の物理的操作を必要とするものである。通常、必ずしもではないが、これら量は、格納され、転送され、結合され、比較され且つ他の方法で操作されることが可能な電気信号又は磁気信号の形態をとる。時に、原則的に一般的な使用の理由で、これら信号を、ビット、値、要素、記号、文字、項、数字等と呼ぶことが好都合であることが証明されている。
【0132】
したがって、時にコンピュータ実行の、と呼ぶこうした行為及び動作は、構造化形式のデータを表す電気信号の、コンピュータの処理ユニットによる操作を含むことが理解されよう。この操作は、データを変換し、又はコンピュータのメモリシステムの記憶場所に維持し、当業者にはよく理解される方法で、コンピュータの動作を再構成し又は他の方法で変更する。データが維持されるデータ構造は、データのフォーマットで定義される特定の特性を有するメモリの物理的な記憶場所である。しかしながら、本発明を上述した文脈で説明しているが、それは限定するように意図するものではなく、当業者が理解するように、記載したさまざまな行為及び動作をハードウェアで実装してもよい。
【0133】
しかしながら、これらの用語及び同様の用語のすべてが、適切な物理量と関連するべきであり、単にこれらの量に適用される好都合なラベルであることを留意すべきである。説明から明らかであるように特に明示しない限り、説明を通して、「処理」又は「演算」又は「計算」又は「決定」又は「表示」等の用語を利用する説明は、コンピュータシステム、又はコンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内で物理(電子)量として表されるデータを操作し、コンピュータシステムメモリ又はレジスタ又は他のこうした情報記憶装置、伝送装置又は表示装置内で物理量として同様に表される他のデータに変換する、同様の電子コンピューティングデバイスの動作及びプロセスを指すことが理解されよう。
【0134】
本発明はまた、本明細書の動作を実行する装置に関する。この装置を、特に、要求される目的に対して構成してもよく、又は装置は、格納したコンピュータプログラムによって選択的に起動されるか又は再構成される汎用コンピュータを含んでもよい。こうしたコンピュータプログラムを、限定されないが、フロッピーディスク、光ディスク、CD−ROM及び光磁気ディスクを含む任意のタイプのディスク、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気或いは光カード、又は電子命令を格納するために適している任意のタイプの媒体を含むコンピュータ可読記憶媒体に格納することができ、それらは各々コンピュータシステムバスに結合される。
【0135】
本明細書で提示したアルゴリズム及び表示は、本質的に、いかなる特定のコンピュータ又は他の装置に関連していない。さまざまな汎用システムを、本明細書の教示に従うプログラムで使用してもよく、又はより専用の装置を、要求される方法ステップを実行するように構成することが好都合であることが分かる場合もある。種々のこれらのシステムに対する必要な構造は、説明から明らかとなろう。さらに、本発明を、いかなる特定のプログラミング言語にも関連して説明していない。種々のプログラミング言語を使用して、本明細書に記載した本発明の教示を実施することができることが理解されよう。
【0136】
機械可読媒体には、機械(たとえばコンピュータ)が可読な形態で情報を格納し又は送信する任意の機構が含まれる。たとえば、機械可読媒体には、リードオンリメモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(たとえば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号等)等がある。
【0137】
図12を参照すると、本発明が、適当なコンピューティング環境で実施されるように示されている。必須ではないが、本発明を、パーソナルコンピュータによって実行されるプログラムモジュール等のコンピュータ実行可能命令の一般的な文脈で説明する。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行するか又は特定の抽象データ型を実装する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。さらに、当業者は、本発明を、ハンドヘルドデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベース又はプログラム可能な家電製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ等を含む他のコンピュータシステム構成で実施してもよいことを理解するであろう。本発明を、通信ネットワークでリンクされる遠隔処理装置によってタスクが実行される分散コンピューティング環境で実施してもよい。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールを局部メモリ記憶装置及び遠隔メモリ記憶装置の両方に配置してもよい。
【0138】
図12では、汎用コンピューティングデバイスを、処理ユニット21と、システムメモリ22と、システムメモリを含むさまざまなシステムコンポーネントを処理ユニット21に結合するシステムバス23とを含む従来のパーソナルコンピュータ20の形態で示す。システムバス23は、メモリバス又はメモリコントローラ、周辺バス、及び種々のバスアーキテクチャのうちの任意のものを使用するローカルバスを含む、いくつかのタイプのバス構造のうちの任意のものであってもよい。システムメモリは、リードオンリメモリ(ROM)24及びランダムアクセスメモリ(RAM)25を含む。ROM24には、起動中等、パーソナルコンピュータ20内の要素間で情報を転送するのに役立つ基本ルーチンを含む基本入出力システム(BIOS)26が格納されている。パーソナルコンピュータ20は、ハードディスク60に対し読書きを行うハードディスクドライブ27と、リムーバブル磁気ディスク29に対し読書きを行う磁気ディスクドライブ28と、CD ROM又は他の光媒体等のリムーバブル光ディスク31に対し読書きを行う光ディスクドライブ30とをさらに含む。
【0139】
ハードディスクドライブ27、磁気ディスクドライブ28及び光ディスクドライブ30は、それぞれ、ハードディスクドライブインタフェース32、磁気ディスクドライブインタフェース33及び光ディスクドライブインタフェース34によりシステムバス23に接続されている。ドライブ及びそれらの関連するコンピュータ可読媒体は、パーソナルコンピュータ20に対する、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール及び他のデータの不揮発性記憶を提供する。図示する例示的な環境はハードディスク60、リムーバブル磁気ディスク29及びリムーバブル光ディスク31を採用するが、当業者には、例示的な動作環境において、磁気カセット、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク、ベルヌーイカートリッジ、ランダムアクセスメモリ、リードオンリメモリ、ストレージエリアネットワーク等、コンピュータがアクセス可能なデータを格納することができる他のタイプのコンピュータ可読媒体を使用してもよいということが理解されよう。
【0140】
ハードディスク60、磁気ディスク29、光ディスク31、ROM24又はRAM25に、オペレーティングシステム25、1つ又は複数のアプリケーションプログラム36、他のプログラムモジュール37及びプログラムデータ38を含む、複数のプログラムモジュールを格納してもよい。ユーザは、キーボード40及びポインティングデバイス42等の入力装置を介して、パーソナルコンピュータ20内に命令及び情報を入力することができる。他の入力装置(図示せず)には、マイクロフォン、ジョイスティック、ゲームパッド、衛星放送受信用アンテナ、スキャナ等があり得る。これら及び他の入力装置は、システムバスに結合されるシリアルポートインタフェース46を通して処理ユニット21に接続されることが多いが、パラレルポート、ゲームポート又はユニバーサルシリアルバス(USB)又はネットワークインタフェースカード等の他のインタフェースによって接続されてもよい。システムバス23には、モニタ47又は他のタイプの表示装置もまた、ビデオアダプタ48等のインタフェースを介して接続されている。モニタに加えて、パーソナルコンピュータは、通常、スピーカ及びプリンタ等、図示しない他の周辺出力装置を有している。
【0141】
パーソナルコンピュータ20は、ネットワーク環境においてリモートコンピュータ49等、1つ又は複数のリモートコンピュータへの論理接続を用いて動作することができる。リモートコンピュータ49は、別のパーソナルコンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピアデバイス又は他の一般的なネットワークノードであってもよく、メモリ記憶装置50しか図示していないが、通常、パーソナルコンピュータ20に関して上述した要素のうちの多く又はすべてを含む。記述した論理接続には、ローカルエリアネットワーク(LAN)51及び広域ネットワーク(WAN)52がある。こうしたネットワーク環境は、オフィス、企業規模のコンピュータネットワーク、イントラネット、特にインターネットにおいて一般的である。
【0142】
LANネットワーク環境で使用する場合、パーソナルコンピュータ20は、ネットワークインタフェース又はアダプタ53を介してローカルネットワーク51に接続される。WANネットワーク環境で使用される場合、パーソナルコンピュータ20は、通常、WAN52による通信を確立するためにモデム54又は他の手段を有している。内部であっても外部であってもよいモデム54は、シリアルポートインタフェース46を介してシステムバス23に接続される。ネットワーク環境では、パーソナルコンピュータ20又はその一部に対して示すプログラムモジュールを、遠隔メモリ記憶装置に格納してもよい。図示するネットワーク接続は例示的なものであり、コンピュータ間の通信リンクを確立する他の手段を使用してもよいということが理解されよう。
【0143】
当業者により、広く説明した本発明の範囲から逸脱することなく、特定の実施形態で示した本発明に対し、多数の変形及び/又は変更を行ってもよいことが理解されよう。たとえば、上述した実施形態は、Lドーパを用いて治療される特発性パーキンソン病患者に対してジスキネジアスコア及び運動緩慢スコアを取得することに関するが、いずれかのスコアのみを取得してもよく、且つ他の原因による運動の症状がある人に対していずれかの又は両方のスコアを取得してもよいことが理解されるべきである。
【0144】
運動緩慢スコアリングアルゴリズムに関して、BK7において、BK6において特定されたサブバンドA〜Hの各々の値を重み付けし、MSPMAXを、重み付き帯域値から特定した。そして、BK10で定義された式BK=10 log10(MSPmax×PKi)に従って、運動緩慢スコアを計算した。任意の実施形態では、最大平均スペクトルパワーSPmaxiを含む単一の0.8Hzサブバンドを特定してもよく、それをMSPmaxの代りに用いてもよい。
【0145】
ジスキネジアスコアリングアルゴリズムのDK4では、Accを閾値として使用し、それを下回るデータを、「低減した運動」を表すものとみなす。この実施形態又は任意の実施形態では、Accに対する最小閾値を、たとえば、任意の低いレベルに設定するか、又は非常に低いBKスコアに応じて生成することができる。
【0146】
本発明を、たとえば、ジストニア、舞踏病及び/又はミオクローヌス等、運動亢進症の運動の個々の評価に適用することができることが理解されるべきである。本発明の別の実施形態によって評価したジスキネジアは、たとえば、ハンチントン病、頸部ジストニア、下肢静止不能症候群、発作性運動誘発性ジスキネジア、睡眠運動障害、チック(正常であるが理由のない常同運動)、トゥレット症候群、遅発性ジスキネジア、遅発性トゥレット、Halaroidan、有棘赤血球症、ハレルフォルデン・スパッツ病又はパントテン酸欠乏症或いは瀬川病から発生する可能性がある。
【0147】
本発明の別の実施形態が評価する運動緩慢又は運動低下は、多系統委縮症、線条体黒質変性症、進行性核上麻痺、オリーブ橋小脳変性症、大脳皮質基底核神経節変性症、ハンチントン病、薬剤性パーキンソニズム、外傷性パーキンソニズム、淡蒼球ルイ体変性症又は脳血管性パーキンソニズムから発生する可能性がある。
【0148】
本発明の別の実施形態は、Philips ARM−Based Microcontroller LPC2138によってサンプリングされる加速度計(ADXL330)を含み、データは、分析のために後にPCに手動でダウンロードされるように装置に搭載されたSDフラッシュメモリカードに格納される。患者は従来の充電を行うのに苦労するため、装置は、充電なしに4日間、1日16時間、患者から記録するようにプログラムされる。データは、日付及び時間がスタンプされ、患者の詳細を含むヘッダを有する。サービス提供者は、患者の詳細、各日の開始及び終了の時刻並びに記録する日数をプログラムすることができ、それらはすべてデータファイルヘッダに格納される。
【0149】
装置は、DC10Hz帯域幅(チャネル毎に100Hzでサンプリング)を用いて3軸すなわちX、Y、Zにおける加速度を記録する。信号は、「重力g」で較正され、加速度は+4gと−4gとの間で測定される。リアルタイムクロックは、将来のいずれかの指定された日付及び時刻で記録を開始するように、神経科医又はサービス提供者によってプログラムされることが可能である。翌日及び朝一番である可能性が最も高い。装置は、毎日、午前6時〜午後10時のデフォルト期間記録するが、この期間は、神経科医又はサービス提供者によってプログラム可能である。記録する日数は、デフォルトで丸3日間であるが、これを、1日〜7日以上の範囲でプログラムすることができる。この装置は、薬剤が服用される日付及び時刻の入力を取り込むことがさらに可能である。これは、患者が手首装置と通信して薬剤を服用したことを通知することも可能にする。
【0150】
夜間、患者が床につき、データロガーが手首から取り外されると、データロガーは、バッテリ充電と、中央サーバ又は医者自身のサーバへのデータのダウンロードのために、クレードルに配置される。
【0151】
したがって、本実施形態は、すべての点において例示的であるとみなされるべきであり、限定的であるとみなされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の運動状態を決定する自動化された方法であって、
前記人の四肢に装着される加速度計から加速度計データを取得するステップと、
前記加速度計データを処理して、前記運動状態に対する測定値を決定するステップであり、前記運動状態が、運動緩慢、ジスキネジア及び運動亢進のうちの少なくとも1つである、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
加速度計データをバンドパスフィルタ処理し、対象帯域に関してデータを抽出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象帯域が、DCを取り除くように選択された下端カットオフ周波数と、一般に正常な人の動きからは発生しない高周波数成分を除去するように選択された上端カットオフ周波数とを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記運動状態が運動緩慢であり、前記下端カットオフ周波数が0.05Hz〜1Hzの範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記下端カットオフ周波数が0.2Hzである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記上端カットオフ周波数が3Hz〜15Hzの範囲である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記上端カットオフ周波数が4Hzである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記運動状態が運動緩慢であり、
当該方法が、時系列の前記加速度データから加速度データの1つ又は複数のビン(bin)を抽出するステップであり、前記各ビンのビン持続時間は、運動緩慢の比較的規則的な測定値が決定可能となる程度に小さいが、当該ビン中における前記人の有意な動きの合理的な可能性を与える程度に長くなるように選択される、ステップをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ビン持続時間が2秒〜60分の範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ビン持続時間が15秒〜4分の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ビン持続時間が30秒〜2分の範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記運動状態が運動緩慢であり、
当該方法が、最大値を見つけるために正常な人の動きの持続時間の一部であるウインドウ長を有する移動平均を使用して、前記加速度計データを探索するステップをさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記移動平均の前記ウインドウ長が0.02秒〜30秒の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記運動状態が運動緩慢であり、
当該方法が、ピーク加速度PKの前及び後の両方における複数のデータ点を含むサブビン(sub−bin)を取得するステップをさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のデータ点が2のべき乗であり、前記サブビンが、前記ピーク加速度を中心に対称的に配置される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記データ点が、正常な1つの人間の動きの持続時間と実質的に同じである期間にわたって取得可能である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記サブビンのスペクトル分析を行ってサブバンドスペクトル測定値を取得するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記サブバンドスペクトル測定値が、0.1Hz〜2Hzの範囲の幅を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記サブバンドスペクトル測定値が、0.6Hz〜1Hzの範囲の幅を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記運動状態が運動緩慢であり、
当該方法が、前記サブバンドスペクトル測定値の少なくともサブセットに重み付けを適用することにより、重み付き平均スペクトルパワー(MSP)を生成するステップをさらに含み、前記最大値(MSP)が小さく且つ低周波数サブバンドに存在する場合、運動緩慢のより大きい指示が与えられ、前記最大値(MSP)が高く且つ高周波数サブバンドに存在する場合、運動緩慢のより小さい指示が与えられる、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記運動状態が運動緩慢であり、
複数nの連続したビンを選択するステップと、
各選択されたビンに対してピーク加速度(PKi)及びMSPiを決定し、前記n個のビンから、PKの最大値(PKi.max)を選択し且つMSPiの最大値(MSPi.max)を選択するステップと、
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
次式
BK=PKi.max×MSPi.max
に従って運動緩慢スコアBKを計算するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
次式
BK=A×log(PKi.max×MSPi.max)−B
(式中、A、c及びBは選択可能な調整用の定数である。)
に従って運動緩慢スコアBKを計算するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
ある期間にわたって運動緩慢スコアBKを繰返し計算するステップをさらに含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記運動状態の累積的指示を提供するために、決定された前記個々の測定値の合計を含む累積的運動緩慢スコアを計算するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記運動状態がジスキネジアであり、前記下端カットオフ周波数が0.05Hz〜2Hzの範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項27】
前記下端カットオフ周波数が1Hzである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記上端カットオフ周波数が3Hz〜15Hzの範囲である、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記上端カットオフ周波数が4Hzである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記運動状態がジスキネジアであり、
当該方法が、時系列の前記加速度データから加速度データの1つ又は複数のビンを抽出するステップであり、前記各ビンのビン持続時間は、前記各ビンのビン持続時間は、ジスキネジアの比較的規則的な測定値が決定可能となる程度に小さいが、当該ビン中における前記人の有意な動きの合理的な可能性を与える程度に長くなるように選択される、ステップをさらに含む、請求項26〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ビン持続時間が2秒〜60分の範囲である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ビン持続時間が10秒〜10分の範囲である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ビン持続時間が30秒〜4分の範囲である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記運動状態に対して前記決定された測定値がジスキネジアであり、
当該方法が、
前記加速度計データを閾値と比較するステップと、
前記加速度計データが前記閾値を下回ったままである時間の割合を決定するステップであり、前記決定された時間の割合が低減した動きの時間(TRM)を表す、ステップと、
をさらに含む、請求項26〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記閾値が前記加速度計データAccの平均値である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記加速度計データを閾値と比較する前記ステップが、雑音の影響を低減するように、前記加速度計データの移動平均を前記閾値と比較するサブステップを含む、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記移動平均の前記ウインドウの長さが0.5秒〜4分の範囲である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記移動平均の前記ウインドウの長さが実質的に1秒である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記運動状態がジスキネジアであり、
当該方法が、
前記加速度計データを閾値と比較するステップと、
前記閾値を下回る前記加速度計データのパワー測定値を決定するステップと、
をさらに含む、請求項26〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記閾値を下回る前記データの前記パワー測定値が、前記閾値を下回る前記加速度計データに対して高速フーリエ変換を実行することによって得られる平均スペクトルパワー(SPRM)を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記運動状態がジスキネジアであり、
当該方法が、前記加速度計データの周波数成分の分散(VAR)を計算するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ジスキネジアの測定値を決定するようにジスキネジアスコアDKを計算するステップであり、DKが、次式
DK=A×log(VAR×SPRM/TRM)、及び、
DK=A×log(VAR/TRM
(式中、A及びcは選択可能な調整用の定数であり、TRMは低減した動きの時間である。)
のうちの一方に従って計算される、ステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ジスキネジアの測定値を決定するようにジスキネジアスコアDKを計算するステップであり、DKが、次式
DK=A×log(SPRM/TRM)、
DK=A×log(Acc×SPRM/TRM)、及び、
DK=A×log(SPRM.RMS/TRM
(式中、A、c及びAccは選択可能な調整用の定数であり、TRMは低減した運動の時間であり、SPRM.RMSはSPRMの二乗平均平方根値から取得可能である。)
のうちの少なくとも1つに従って計算される、ステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
所定期間にわたってジスキネジアスコアDKを繰返し計算するステップをさらに含む、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記運動状態の累積的指示を提供するために、決定された前記個々の測定値の合計を含む累積的ジスキネジアスコアを計算するステップをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
人の運動状態を決定する装置であって、
前記人の四肢に装着された加速度計から得られる加速度計データを処理し、且つ前記加速度計データから前記運動状態に対する測定値を決定するように構成されたプロセッサであり、前記運動状態が、運動緩慢、ジスキネジア及び運動亢進のうちの少なくとも1つである、プロセッサ
を備える装置。
【請求項47】
加速度計をさらに備える、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記加速度計が3軸加速度計であり、各感度軸に対し、当該感度軸に沿った加速度に比例する出力を与える、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
各出力がサンプリングされることにより、ある時間にわたる加速度を表すデータが取得される請求項47に記載の装置。
【請求項50】
前記人から遠隔であり、且つ通信ネットワークを介して前記加速度からデータを受信するように構成された中央コンピューティングデバイスを備える、請求項46〜49のいずれか一項に記載の装置。
【請求項51】
前記中央コンピューティングデバイスが、前記運動状態の前記決定された測定値を、前記人に関連する医師又は臨床医等に通信するように構成可能である、請求項50に記載の装置。
【請求項52】
前記人に対して前記運動状態の前記決定された測定値を表示する表示手段をさらに備える、請求項46〜51のいずれか一項に記載の装置。
【請求項53】
コンピュータに対し、人の運動状態を決定する手続きを実行させるコンピュータプログラム手段を備えるコンピュータプログラム製品であって、
前記人の四肢に装着された加速度計からデータを取得するコンピュータプログラムコード手段と、
前記データを処理して前記運動状態に対する測定値を決定するコンピュータプログラムコード手段であり、前記運動状態が、運動緩慢、ジスキネジア及び運動亢進のうちの少なくとも1つである、コンピュータプログラムコード手段と、
を備える、コンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−524192(P2011−524192A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512788(P2011−512788)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000751
【国際公開番号】WO2009/149520
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.フロッピー
【出願人】(510290289)グローバル カイネティクス コーポレーション ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】