説明

運動装置及び移動装置

【課題】軌道体の延在方向に直交する方向の外形寸法を極力小さく抑え、小型化することができる運動装置及び移動装置を提供する。
【解決手段】軌道体2と、この軌道体2に挿通され該軌道体2の延在方向Lに往復移動可能に案内される移動体3とを備えた運動装置1であって、移動体3は、内部に転動体5を保持しており、転動体5は、移動体3の延在方向Lの端部に配置されると共に内部に転動体方向転換路4aが形成された蓋体4によって、移動体3の内部に封止されており、これら移動体3と蓋体4とを覆うようにして、外装部材6が配設され、外装部材6によって、移動体3及び蓋体4が互いに固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールスプライン、ボールねじ、ガイド等、延在する軌道体に沿って移動体を相対移動させる運動装置及び移動装置に関する。
本願は、2007年8月31日に、日本に出願された特願2007−226649号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械や各種産業機械等の機械設備において、ワークやツールを精度よく送り移動させたり、或いは精密機器等において、可動部材を精度よく可動させたりするために、種々の用途に合わせ、様々なサイズのボールスプライン、ボールねじ、ガイド等の運動装置が用いられている。特に近年では、機械や機器のコンパクト化に対応して、これらを構成する運動装置自体の小型化に対する要望が多い。
【0003】
一般に、運動装置は、延在して設けられる軌道体と、該軌道体に挿通され、その延在方向に移動可能に支持される移動体とから構成されている。この移動体の内部には、多数のボール等からなる転動体が保持されている為、これら転動体を介し、移動体と軌道体とが滑らかに相対移動が可能である。そして、これら移動体と軌道体とを相対移動させることにより、運動装置に取り付けられる部材を可動させる。
【0004】
前記移動体は、内部に転動体を保持するために、その軌道体の延在方向の両端の部分が二つの蓋体に狭まれるように当接されて封止され、これらが一体に形成されている。一般に、これら蓋体の移動体への固定は、ネジ止めにより行われている。そして、蓋体と移動体との当接面に直交する方向に延びて設けられるネジ穴にネジを螺合し、これらを固定して、内部に転動体を封止する。
【0005】
また、特許文献1には、上記移動体が略円筒状に形成されており、その外周面を軸受けに軸支される運動装置が記載されている。この運動装置は、これら軸受けと軌道体とが、前記軌道体の延在方向に相対移動可能とされるとともに、移動体の周方向にも相対回転移動可能に構成されているので、運動の自由度が増し、様々な用途に対応することができる。そして、軸受けに内蔵されるボール(軸受け転動体)の内周側を、軸受けの内輪で受ける代わりに移動体の外周面に形成された円周溝(軸受け転動体転走面)で支持させ転走させることによって、装置の径方向の外形寸法をなるべく小さく抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−142021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記移動体と蓋体とは、軌道体の延在方向に延びるネジ穴にネジを用いて螺合して固定されているため、これらの当接面(側面)には、ネジ穴を設けるために一定以上の表面積を確保する必要がある。そのため、これら移動体及び蓋体の前記延在方向に直交する方向の外形寸法は一定以下の寸法には形成できず、小型化に限界がある。特に精密機器等に用いられる運動装置においては、機器のコンパクト化に対応して、運動装置自体のさらなる小型化が要望されており、いかにして装置の前記外形寸法を縮小し小型化するか、ということが課題とされている。
【0008】
また、特許文献1に記載されるような、移動体の外周面を軸受けで軸支した運動装置についても、移動体と軸受けとを一体にして小型化されているものの未だ十分とは言えず、さらなる小型化の要望があり、その前記外形寸法をいかにして小さく抑えられるかが課題とされている。また、このような運動装置に駆動源を組み合わせた移動装置についても、同様に小型化の要望がある。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、軌道体の延在方向に直交する方向の外形寸法を極力小さく抑え、小型化することができる運動装置及び移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、軌道体と、この軌道体に挿通され前記軌道体の延在方向に往復移動可能に案内される移動体とを備えた運動装置であって、前記移動体は、内部に転動体を保持しており、前記転動体は、前記移動体の前記延在方向の端部に配置されると共に内部に転動体方向転換路が形成された蓋体によって、前記移動体の内部に封止されており、前記移動体と蓋体とを覆うようにして、外装部材が配設され、前記外装部材によって、前記移動体及び前記蓋体が互いに固定されていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る運動装置によれば、移動体と蓋体とが、前記移動体と蓋体を覆うようにして配設される外装部材によって、前記延在方向に互いに密着して固定される。従って、従来のように、移動体と蓋体とを、これらの当接する面に直交するように延びて設けられるネジ穴にネジを螺合し固定する必要はない。よって、この当接する面には、ネジ穴を設けるために一定以上の表面積を確保する必要がない。従ってこの運動装置は、移動体の、軌道体の延在方向に直交する方向に沿った外形寸法を極力小さく形成して小型化でき、種々の用途や様々な要望に対応することができる。
【0012】
また本発明の運動装置において、前記外装部材は、前記移動体の両端部にそれぞれ対向配置されており、互いに向かい合う端部に、それぞれ凸部と凹部とが形成され、これら凸部と凹部とを噛合するよう配置されてもよい。これによれば、対向配置されるそれぞれの外装部材の凸部と凹部とが互いに噛合するように配置されるので、この外装部材は、例えばその軌道体の延在方向の長さが短い場合でも、移動体と蓋体とを固定する前記延在方向の長さを極力長くとることができる為、これら移動体と蓋体とを強固に固定できる。また、対向配置される前記外装部材は、噛合される前記凸部及び凹部によって、軌道体を中心とする円周方向に沿った互いの相対位置を精度よく位置決めすることができる。
【0013】
また本発明の運動装置において、前記外装部材による前記移動体及び前記蓋体の固定は、接着されてもよい。これによれば、前記固定は、少なくとも移動体及び蓋体の外装面と、外装部材の内装面とのいずれか一方に塗布される接着剤によって接着されるので、従来のように、移動体及び蓋体の固定にネジを使って、ネジが紛失したり噛み込んだりして、作業性を悪くしたり生産性を低下させない。また接着剤により固定することにより、生産の自動化が容易となる。
【0014】
また本発明の運動装置において、前記外装部材は、前記蓋体と一体に形成されるとともに、前記移動体を覆うようにして配設され、前記外装部材によって、前記移動体及び前記蓋体が互いに固定されてもよい。これによれば、運動装置を構成する部品点数を更に削減できるので、組立工程数を減らし、生産性を向上することができる。
【0015】
また本発明は、前述の運動装置と、この運動装置を前記軌道体の延在方向に駆動するための駆動源とを備える移動装置としてもよい。この駆動源としては、例えばリニアモータ機構を用いることができる。そして、この駆動源を運動装置と前記延在方向に並列に組み合わせると、軌道体の延在方向に直交する方向における外形寸法が極めて小さな移動装置を形成できる。更に、この移動装置は、運動の制御性・位置精度に非常に優れているので、多様な用途に対応できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る運動装置及び移動装置によれば、軌道体の延在方向に直交する方向における外形寸法を極力小さく抑え、小型化ができるとともに、この移動装置は、自立して移動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の運動装置としてのボールスプラインの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の運動装置としてのボールスプラインの概略構成を示す平面図である。
【図3】ボールスプラインの第二変形例の概略構成を示す平面図である。
【図4】ボールスプラインの第三変形例の概略構成を示す平面図である。
【図5】ボールスプラインの第四変形例の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態の運動装置としてのボールスプラインの概略構成を示す分解斜視図、図2は図1のボールスプラインの概略構成を示す平面図、図3乃至図5はボールスプラインの変形例の概略構成を示す平面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態の運動装置としてのボールスプライン1は、延在する丸棒状或いはパイプ状のスプライン軸(軌道体)2を備えており、スプライン軸2の外周面には、その軸線L方向(延在方向)に沿って延び、スプライン軸2の直径方向に対向配置される、2条の転動体転走溝(転動体転走面)2aが形成されている。そして、スプライン軸2に挿通するように、円筒状の移動体3が設けられている。この移動体3には、その内周面に、転動体転走溝2aにそれぞれ対向するように2条の負荷転動体転走溝(負荷転動体転走面)3aが形成されている。
【0020】
図2に示すように、前期転動体転走溝2aと負荷転動体転走溝3aとによって軸線L方向に形成される直線状の空間は負荷転動体転走路3bであり、移動体3を軸線L方向に貫通している。また、図1に示すように、移動体3の内周面と外周面との間には、負荷転動体転走路3bと略平行に延びる直線状の転動体戻り通路3cが設けられており、同様に移動体3を貫通している。また、移動体3の外周面には、複数の接着剤充填溝3dが周方向に形成されている。
【0021】
また、図2に示すように、移動体3の軸線L方向の両端部には、リング状の蓋体4がそれぞれスプライン軸2に挿通されて配置され、前記移動体3に当接されている。蓋体4は、その外径寸法が移動体3の外径寸法と略同一に形成されている。また蓋体4は、その移動体3の端面と当接する面の近傍に、負荷転動体転走路3bと、前記負荷転動体転走路3bに隣接して配置される転動体戻り通路3cとを繋ぐ半円環状空間である転動体方向転換路4aを備えている。そして、負荷転動体転走路3b、転動体戻り通路3c、転動体方向転換路4aによって形成される略楕円環状若しくはサーキット状の空間に、ボールからなる複数の転動体5が循環自在に収容されている。
【0022】
これにより、負荷転動体転走路3bを転動した転動体5は、負荷転動体転走路3bの一端側から転動体方向転換路4aに導入され向きを反転されて方向転換する。その後、転動体戻り通路3cを転動し、他端側の転動体方向転換路4aに導入されて方向転換され、再び負荷転動体転走路3bの他端側に入り転動するという無限循環が可能である。そして、これら転動体5が転動することによって、移動体3とスプライン軸2とが軸線L方向に滑らかに相対移動可能に構成されている。
【0023】
また、蓋体4の軸線L方向の外方には、それぞれ、略多段円筒状のキャップ(外装部材)6が対向配置されて、スプライン軸2に遊嵌している。これらキャップ6は、その大径に形成される円筒状部分の内周面の直径寸法が、移動体3及び蓋体4の外径寸法より若干大径に設定されており、移動体3及び蓋体4をキャップ6の内周面に内接するように嵌め合わされている。また、キャップ6の互いに向かい合う端部は、凸部6eと凹部6fとが周方向に交互に噛合して配設されている。
【0024】
また、少なくとも移動体3及び蓋体4の外周面と、キャップ6の内周面とのいずれか一方には、これらを嵌合する以前に予め接着剤が塗布されている。よって、移動体3、蓋体4、キャップ6は接着剤によって軸線L方向に互いに密着された状態で接着固定されている。なお、移動体3の外周面に設けられる接着剤充填溝3dは、前記接着剤を保持し接着性を高めるために形成されている。また前記接着において、移動体3と蓋体4が当接する面の間には極力接着剤を介在させないことが、内部に保持される転動体5を良好に転動させるために望ましい。このようにして、移動体3の両端面に蓋体4が配置され、蓋体4の軸線L方向の外方にキャップ6がそれぞれ対向配置される。キャップ6は蓋体4を外方から内方の移動体3に向け密着させた状態で固定されている。
【0025】
また、キャップ6の小径に形成される円筒部分は、蓋体4の移動体3側と反対側に突出して設けられており、突出部6aである。この突出部6aの内周面の直径寸法は、スプライン軸2の外径寸法より若干大径に形成されている。突出部6aの外周面(外装面)6bは、突出部6aの外径寸法が移動体3及び蓋体4よりも小径に形成されており、また外周面6bには軸受け7が嵌合されて、突出部6aを軸支している。軸受け7は、軸線L方向に移動不可に固定されており、その外径寸法はキャップ6の外径寸法よりも若干大径に形成されている。
【0026】
本実施形態のボールスプライン1によれば、移動体3と蓋体4とが、前記移動体3と蓋体4を覆うようにして配設されるキャップ6によって、軸線L方向に、互いに密着して固定されている。従って、従来のように、移動体3と蓋体4とを、移動体3と蓋体4の当接する面に直交する軸線L方向に延びるネジ穴を設けてネジを螺合し固定させる必要はない。よって、移動体3と蓋体4の当接する面には、ネジ穴を設けるために一定以上の表面積を確保する必要がない。従って、ボールスプライン1は、移動体3及び蓋体4の外径寸法を極力小さく形成することができるので、小型化が可能である。
【0027】
また、このボールスプライン1は、キャップ6の軸線L方向の外方の端部に設けられる突出部6aが移動体3及び蓋体4よりも縮径されて形成されている。更に、突出部6aの外周面6bに軸受け7が配設され、突出部6aは軸受け7により軸支されている。従って、装置の最大径部分である軸受け7の外径寸法が、従来のように、軸受け7を移動体3の径方向外方に配置して軸支させた場合に比べ、例えば、50%程度も縮小される。よって、このボールスプライン1はその外径寸法を極力小さく形成し小型化することができるので、種々の用途や様々な要望に対応可能である。また、このボールスプライン1には軸受け7が配設されているので、軸受け7とスプライン軸2とは、前記スプライン軸2の軸線L方向に相対移動が可能なだけでなく、スプライン軸2を中心とする周方向にも相対回転移動が可能に構成されているので、運動方向の自由度が増し、さらに多くの用途に対応できる。
【0028】
また、ボールスプライン1は、キャップ6による移動体3及び蓋体4の固定が、少なくとも移動体3及び蓋体4の外周面と、キャップ6の内周面とのいずれか一方に塗布される接着剤によって接着されている。従って、従来のように、移動体3と蓋体4との固定にネジを使って、ネジが紛失したり噛み込んだりして、作業性を悪くしたり生産性を低下させたりする虞がない。また接着剤で接着固定を行うことにより、生産の自動化が容易である。
【0029】
また、ボールスプライン1は、対向配置されるキャップ6のそれぞれの凸部6eと凹部6fとが互いに噛合されて配置しているので、例えばキャップ6の軸線L方向の長さが短い場合でも、移動体3と蓋体4とを固定する軸線L方向の長さを極力長くとれるので、移動体3と蓋体4とを強固に固定することができる。また、対向配置されるキャップ6は、噛合される凸部6e及び凹部6fによって、スプライン軸2を中心とした周方向の互いの相対位置を精度よく位置決めができる。
【0030】
また、図3に示すボールスプライン11は、本実施形態の第二変形例であり、突出部6aの外周面6bの周方向に、軸受け転動体転走溝(軸受け転動体転走面)6cが設けられている。更に、突出部6aを軸支する軸受け7に内蔵される軸受け転動体7aの内周側を、前記軸受け7の内輪部材で支持する代わりに、軸受け転動体転走溝6cで支持するとともに、突出部6aと軸受け7とが一体に形成されている。上記構成により、軸受け7は、軸受け7の外径寸法をさらに小さく形成することができるとともに、このボールスプライン11は、部品点数が削減されて組立工程数が減り、生産性が向上される。また、図3に示すように、キャップ6は、互いに向かい合う端部に前述の凸部6eと凹部6fとを形成しなくても良い。
【0031】
図4に示すボールスプライン21は、本実施形態の第三変形例であり、突出部6aが、蓋体4から軸線L方向外方へ延びている。さらに、この突出部6aの外周面6bには軸受け転動体転走溝6cが設けられている。軸受け転動体転走溝6cは、突出部6aを軸支する軸受け7の軸受け転動体7aの内周側を、前記軸受け7の内輪部材で支持する代わりに、軸受け転動体転走溝6cで支持するとともに、突出部6aと軸受け7とが一体に形成されている。
従って、このボールスプライン21は、蓋体4と軸受け7とが一体に形成されているので、部品点数が削減されて組立工程数が減り、生産性が向上される。
【0032】
図5に示すボールスプライン31は、本実施形態の第四変形例である。蓋体4は略多段円筒状をなし、蓋体4の外径が大きい側に形成される円筒部分がカバー(外装部材)6dとされ、このカバー6dの内周面で移動体3の外周面を覆うとともに、蓋体4と移動体3とが密着して固定されている。またカバー6dは、移動体3を挟んで軸線L方向の両側に対向配置されている。カバー6dは、凸部6eと凹部6fから成り、凸部6eと凹部6fとが周方向に交互に噛合している。
【0033】
また蓋体4の、軸線L方向の両端には、突出部6aが形成されている。突出部6aの外周面6bには軸受け転動体転走溝6cが設けられている。軸受け転動体転走溝6cは、突出部6aを軸支する軸受け7の軸受け転動体7aの内周側を支持している。更に、突出部6aと軸受け7は、一体に形成されている。従って、蓋体4と軸受け7は、一体に形成されている。また、第四変形例では、前述のキャップ6は用いられていない。また移動体3の、軸線L方向の突出部6a側と反対側に配置される蓋体4bは、略円筒状をなし、蓋体4のような突出部6aは設けられていない。そして、図5に示すように、移動体3及び蓋体4,4b、転動体5、軸受け7から構成される組体Aが、スプライン軸2上に対向配置され、そして互いの突出部6aをそれぞれ軸線L方向外方へ向け、2組設けられている。
【0034】
また第四変形例において、スプライン軸2は略パイプ状の非磁性材料により形成され、略パイプ状の内部には、軸線L方向に交互に極性を変化させるように配設されるマグネット8aが備えられている。また、スプライン軸2上に対向配置される2つの蓋体4bの間には、蓋体4bの両端面を当接するように、円筒状のコイル8bが設けられている。そしてこれら2組の組体Aとコイル8bとが一体に形成されており、スプライン軸2の軸線L方向に移動自在に配設されている。コイル8bは、コイル部材を巻き回して形成されており、電気的に接続される制御部(不図示)によって、両磁極を発生可能である。そして、マグネット8aとコイル8bとを備えるリニアモータ機構(駆動源)8が形成されており、このリニアモータ機構8によって、コイル8bはその両端に当接されて固定される2つの組体Aと共に、軸線L方向に駆動可能である。
【0035】
このボールスプライン31によれば、対向配置されるカバー6dのそれぞれの凸部6eと凹部6fとが互いに噛合して配置されるので、例えばこのカバー6dの軸線L方向の長さが短い場合でも、移動体3と蓋体4,4bとを固定する軸線L方向の長さを極力長くとれ、移動体3と蓋体4,4bとを強固に固定することができる。また、これら対向配置されるカバー6dは、噛合される凸部6e及び凹部6fによって、スプライン軸2を中心とした周方向の互いの相対位置を精度よく位置決めすることができる。
【0036】
また、突出部6aと軸受け7とが一体に形成され、突出部6aは蓋体4に設けられている。さらに蓋体4にはカバー6dが設けられ、これらの部材のすべてが一体に形成されている。従って、ボールスプライン31を構成する部品点数をより削減することができるので、組立工程数が減り、生産性が向上される。
【0037】
また、第四変形例のようにしてボールスプライン(運動装置)にリニアモータ機構(駆動源)8を組み込むことによって、外径寸法の極めて小さな移動装置を形成することができるとともに、この移動装置は、運動の制御性・位置精度に非常に優れているので、さらに多様な用途に対応することができる。
【0038】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態においては、運動装置としてボールスプライン1,11,21,31を用いて説明したがこれに限らず、ボールねじ、ガイド等、その他の運動装置であっても構わない。
【0039】
また、本実施形態では、転動体5が循環する形式の運動装置を用いて説明したが、これに限らず、転動体5が循環しない、転動体5の移動方向が制限されるので運動装置にも適用可能である。また、転動体5としてボールを用いて説明したがこれに限らず、ローラ等を用いても構わない。
【0040】
また、スプライン軸(軌道体)2は直線状でなくてもよく、曲線状に形成されていても構わない。さらに、その断面形状及び転動体転走溝2aの条数も、本実施形態に限定されるものではない。
【0041】
また、蓋体4は、分割されていてもよく、例えば、転動体5の内周側を支持する内周案内部と、転動体5の外周側を支持する外周案内部とによって構成されていても構わない。
【0042】
また、本実施形態では、キャップ6の固定を、接着剤による接着で行う例を記載したが、これに限らず、例えばキャップ6と移動体3とをそれぞれ金属材料を用いて形成し溶接固定したり、或いはキャップ6の径方向外方から内方へ向けて、ネジ止め固定したりしても構わない。
【0043】
また、図1乃至図5において説明したように、突出部6aは、その形成される基体(外
装部材、蓋体等)が限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の運動装置は、小型化及び自立して移動可能である為、運動の制御性・位置精度
に非常に優れているので、多様な用途に対応できる。
【符号の説明】
【0045】
1…ボールスプライン(運動装置)、 2…スプライン軸(軌道体)、 3…移動体、 4…蓋体、 4a…転動体方向転換路、 4b…蓋体、 5…転動体、 6…キャップ(外装部材)、 6a…突出部、 6b…外周面(外装面)、 6c…軸受け転動体転走溝(軸受け転動体転走面)、 6d…カバー(外装部材)、 6e…凸部、 6f…凹部、 7…軸受け、 7a…軸受け転動体、 8…リニアモータ機構(駆動源)、 11…ボールスプライン(運動装置)、 21…ボールスプライン(運動装置)、 31…ボールスプライン(運動装置、移動装置)、 L…スプライン軸の軸線方向(延在方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道体と、この軌道体に挿通され該軌道体の延在方向に往復移動可能に案内される移動体とを備えた運動装置であって、
前記移動体は、内部に転動体を保持しており、
前記転動体は、前記移動体の前記延在方向の端部に配置されると共に内部に転動体方向転換路が形成された蓋体によって、該移動体の内部に封止されており、
これら移動体と蓋体とを覆うようにして、外装部材が配設され、
前記外装部材によって、前記移動体及び前記蓋体が互いに固定されていることを特徴とする運動装置。
【請求項2】
請求項1記載の運動装置であって、
前記外装部材は、前記移動体の両端部に夫々対向配置されており、
互いに向かい合う端部に、夫々凸部と凹部とが形成され、
これら凸部と凹部とを噛合するようにして配置されていることを特徴とする運動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の運動装置であって、
前記外装部材による前記移動体及び前記蓋体の固定は、接着により行われていることを特徴とする運動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の運動装置であって、
前記外装部材は、前記蓋体と一体に形成されるとともに、前記移動体を覆うようにして配設され、
前記外装部材によって、前記移動体及び前記蓋体が互いに固定されていることを特徴とする運動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の運動装置と、
この運動装置を前記軌道体の延在方向に駆動するための駆動源とを備えることを特徴とする移動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−79729(P2013−79729A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−19898(P2013−19898)
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2009−530118(P2009−530118)の分割
【原出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】