説明

運搬車

【課題】傾斜地における木材などの長尺物の運搬を小型の車両で行うこと。
【解決手段】本発明の実施形態における運搬車1は、車体80と、回転軸を中心にして前記車体の前後方向に回転可能なブーム部10と、ブーム部10に接続部40を介して回転可能に取り付けられたアーム20と、アーム20に取り付けられたグラップル30とを具備し、接続部40がブーム部10の回転軸の位置よりも車体80の後方に移動可能となるようにブーム部10の回転範囲が設定され、ブーム部10の回転軸に沿った方向に見た場合に、グラップル30がブーム部10に対して車体80の前後方向に移動可能とするように、アーム20の回転範囲が設定され、ブーム部10およびアーム20の回転範囲においては、アーム20およびグラップル30が車体80およびブーム部10に接触しないように設定されていることを特徴とする運搬車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を効率よく運搬する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
山林において伐採された木材は、クレーン車などを用いて運搬車に積み込まれ、運搬車により伐採地から林道付近の土場へ運搬される。伐採地となる場所の性質から、木材の積み込み作業をする場所、木材の運搬経路は、傾斜地になる場合が多い。そのため、作業を行いやすくするために、例えば、重心の位置を変更可能なクレーン車(例えば、特許文献1)、傾斜地における長尺物の運搬を容易にするための運搬車(例えば、特許文献2)が開発されている。また、伐採は樹木が密集する場所で行われることもあり、狭い場所でも作業ができるようにクレーン車と運搬車との役割を一体化した車両(例えば、特許文献3)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−58462号公報
【特許文献2】特開平7−52704号公報
【特許文献3】特開平10−309975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
山林における木材の伐採のうち、植林された木々の成長に合わせ、残された木々の健全な成長を促すことを目的として密集化した立木を間引く間伐がある。間伐により発生した間伐材は、建築材料として用いるには適当でないものが多く、山林に放置され林地残材となることが多かったが、これを有効活用して、近年バイオマス資源として用いることにより環境保全に役立てることが検討されている。
一方、重量の大きな間伐材を伐採地から運搬して林道に下ろしてくるためには、上記のように特殊な車両であることだけでなく、運搬中に車両のバランスが崩れないように安定させる目的で、大型で重い車両を用いる必要がある。そのため、車両が通る広い道を確保するために別途伐採を行う必要があるなど、高コストになってしまっていた。建築材料として用いられる木材については、多少コストが高くても事業として成り立つ。しかし、間伐材を有効活用してバイオマス資源として用いるためには、低コストで無ければ代替資源として用いることが困難となり、結果的には事業化に結びつかなくなる場合があった。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、傾斜地における木材などの長尺物の運搬を小型の車両で行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、走行可能な車体と、前記車体に回転軸を介して取り付けられたブームであって、前記回転軸を中心にして回転すると前記車体とは反対側の当該ブームの先端部分が前記車体の前後方向に移動するブームと、前記回転軸と概ね一致した方向に沿った回転軸となる接続部を介して前記ブームに取り付けられ、当該接続部を中心として回転可能なアームと、前記アームに取り付けられ、前記ブームの回転軸方向に開閉可能であり、閉じることにより物体を把持するグラップルとを具備し、前記接続部が前記ブームの回転軸の位置よりも前記車体の後方側に移動可能となるように前記ブームの回転範囲が設定され、前記ブームの回転軸に沿った方向に見た場合に、前記グラップルが前記ブームに対して前記車体の前後方向に移動可能となるように、前記アームの回転範囲が設定され、前記ブームおよび前記アームの回転範囲においては、前記アームおよび前記グラップルが前記車体および前記ブームに接触しないように設定されていることを特徴とする運搬車を提供する。
【0007】
また、別の好ましい態様において、前記車体の前後方向の傾斜量を測定する測定手段と、前記グラップルが物体を把持した状態において、前記車体に対する前記接続部の位置が前記測定手段によって測定された傾斜量に応じて変化するように、前記ブームの回転量を制御する制御手段とをさらに具備することを特徴とする。
【0008】
また、別の好ましい態様において、前記制御手段は、前記グラップルが物体を把持した状態において前記車体が移動するときには、前記接続部が前記車体の鉛直上方に位置するように、前記ブームの回転量を制御することを特徴とする。
【0009】
また、別の好ましい態様において、前記車体に回転軸を介して取り付けられ、前記ブームと一体となって回転する第2ブームをさらに具備し、前記接続部は、前記ブームと前記第2ブームとを連結するように取り付けられ、前記アームは、当該アームが回転した場合に前記グラップルが前記ブームと前記第2ブームとの間を移動するように、前記接続部に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
また、別の好ましい態様において、前記アームは、自由に回転するように前記接続部に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
また、別の好ましい態様において、前記制御手段が前記ブームの回転量を変化させていないときに、前記アームの回転を抑制する抑制手段をさらに具備することを特徴とする。
【0012】
また、別の好ましい態様において、物体の予め決められた位置に取り付けられた認識部材の位置を認識する認識手段をさらに具備し、前記制御手段は、前記認識手段によって認識された認識部材の位置に基づいて、当該認識部材が取り付けられた物体を前記グラップルに把持させるように、前記ブームの回転量、前記グラップルの把持、および前記車体の位置を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、傾斜地における木材などの長尺物の運搬を小型の車両で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における運搬車の外観を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態における運搬車の長尺物の把持状態および運搬状態を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態における運搬車の傾斜地における運搬状態を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態における運搬車の内部構成を説明するブロック図である。
【図5】本発明の実施形態における運搬車の移動経路を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態における記録部によって生成される記録情報の内容を説明する図である。
【図7】本発明の変形例1における運搬車の移動部の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
本発明の実施形態における運搬車1は、山林などにおいて間伐された木材を林道付近に設けられた土場まで運搬するための車両である。この運搬車1は、操作者によって上記の運搬を行うだけでなく、土場から出発して木材を運搬して戻るまでの動作を自動で行うこともできる。まず、運搬車1の外観構成について説明する。
【0016】
[外観構成]
図1は、本発明の実施形態における運搬車1の外観を説明する図である。図1(a)は、長尺物を運搬していない状態で走行するときの運搬車1の側面方向から見た図である。図1(b)は、運搬車1を上方から見た図である(A矢視図)。図1(c)は、運搬車1を前方から見た図である(B矢視図)。この例においては、第1分割車体81側(図1(a)の左側)が前方、第2分割車体82側(図1(a)の右側)が後方とする。また、接地面Gと略平行かつ車体80の前後方向と垂直な方向を車体80の左右方向(図1(b)の上下方向、図1(c)の左右方向)という。
【0017】
図1に示すように、運搬車1は、第1ブーム11および第2ブーム(以下、これらをまとめて表す場合には、ブーム部10という)、回転軸15、アーム20、グラップル30、接続部40、移動部50、センサ部55、操作部60、撮影部70、発光部75、車体80および通信部90を有する。
【0018】
車体80は、第1分割車体81と第2分割車体82とを連結部83により連結した構成であり、いわゆるホイールローダーのように中折れ式で操舵される。この例においては、第1分割車体81にはブーム部10が回転軸15を介して取り付けられている。回転軸15は、概ね車体80の左右方向に沿って、第1分割車体81の前方に設けられている。
また、第2分割車体82には操作部60の各構成(ステアリングハンドル61、操作パネル62など)が取り付けられている。なお、図1においては、第2分割車体82には操作者が座る座席85が設けられているが、この座席85はなくてもよい。また、車体80は、移動部50によって走行可能である。
【0019】
操作部60は、ステアリングハンドル61、操作パネル62の他、図示しないアクセルペダル、ブレーキペダル、ブーム部10、グラップル30を動作させるための操作レバーなどを有する。また、操作部60は、運搬車1の手動制御、自動制御を切り替える指示、また、自動制御を行うための走行記録処理の開始終了指示、その他、運搬車1に対する各種指示が可能になっている。なお、操作部60は、直接車体80に取り付けられているものでなくてもよく、例えば、運搬車1の動きを遠隔操作するためのリモコンなどであってもよい。
【0020】
第1ブーム11と第2ブーム12とは、一体となって、回転軸15を中心にして回転可能に第1分割車体81に並列に取り付けられ、その回転動作を油圧で行う油圧式ブームである。これにより、ブーム部10は、回転軸15を中心に回転するとAR1方向またはAR2方向に回転して、車体80とは反対側の先端部分(接続部40付近)を車体80の前後方向に移動させるようになっている。ブーム部10の回転範囲は、ブーム部10の回転軸15よりも車体80の後方側の位置に接続部40が移動可能となるように設定されている。
接続部40は、棒状の両端が第1ブーム11および第2ブーム12における第1分割車体81とは反対側の端部付近に取り付けられ、第1ブーム11と第2ブーム12とを連結している。接続部40の長尺方向は、回転軸15と概ね一致した方向に沿って設けられている。
【0021】
アーム20は、上方の一端部付近において、棒状の接続部40における中心付近からぶら下がるように取り付けられ、接続部40を回転軸としてAR3方向またはAR4方向に回転可能になっている。また、アーム20の幅(車体80の左右方向に沿った長さ)は、第1ブーム11および第2ブーム12の距離Lよりも狭くなっている。そのため、アーム20は、回転範囲においてブーム部10に接触しないようになっている。また、アーム20は、車体80にも接触しない長さになっている。アーム20は、このような関係で接続部40に取り付けられているため、アーム20が回転すると、第1ブーム11と第2ブーム12との間を移動するようになっている。
【0022】
アーム20は、この例においては、外部からの制御により回転量が制御され、その位置が制御される構成ではなく、自由に回転して安定した位置に存在するようになっている。例えば、アーム20は、グラップル30が何も把持していない状況においては、アーム20およびグラップル30全体の重心が最も低くなるような位置に存在することになる。グラップル30が把持している物体がある場合には、その物体も含めて安定してつりあう位置に存在する。したがって、ブーム部10が回転動作をすると、アーム20は、ブーム部10に対して回転し、ブーム部10に対する位置関係を変化させる。例えば、図1の状態において、ブーム部10がAR1方向に回転すると、アーム20は、AR3方向に回転することになり、ブーム部10がAR2方向に回転すると、アーム20は、AR4方向に回転することになる。
アーム20の回転範囲は、ブーム部10の回転軸方向にみた場合に、少なくともグラップル30がブーム部10に対して車体80の前後方向に移動可能とするように設定されている。この例においては、アーム20は、接続部40を中心として360度回転可能になっている。
【0023】
グラップル30は、アーム20における接続部40側とは反対側の端部に取り付けられている。アーム20の接続部40と接続される部分から、グラップル30の下方先端部分までの距離が、接続部40から車体80までの距離よりも短く構成されている。また、グラップル30の幅(車体80の左右方向に沿った長さ)は、第1ブーム11および第2ブーム12の距離Lよりも狭くなっている。そのため、グラップル30もアーム20と同様に、アーム20が回転する範囲においてブーム部10および車体80に接触しないようになっている。
グラップル30は、このような関係でアーム20に取り付けられているため、アーム20が回転すると第1ブーム11と第2ブーム12との間を移動するようになっている。
【0024】
また、グラップル30は、車体80の前後方向に長尺方向を持つ木材などの長尺物の側面を把持可能な向きでアーム20に取り付けられている。すなわち、グラップル30は、ブーム部10の回転軸15に沿った方向に開閉可能になっている。そして、グラップル30はAR5方向に閉じることにより長尺物を把持する。このようにグラップル30が取り付けられているため、ブーム部10が回転して接続部40が上方に移動するように動作すると、グラップル30に把持された長尺物は、車体80に近い側が持ち上げられ、車体80の前後方向に沿って移動し、第1ブーム11と第2ブーム12との間に挿入された状態に位置することになる(図2(b)参照)。
【0025】
移動部50は、車体80を走行させるための三角型のクローラ(デルタクローラ)である。デルタクローラは、第1分割車体81および第2分割車体82のそれぞれの両側面側に取り付けられている。
センサ部55は、車体80の傾きを測定するための3軸の加速度センサ、角速度センサなどである。このセンサは、この例においては、第1分割車体81および第2分割車体82にそれぞれに取り付けられ、測定結果を出力する。また、センサ部55は、車体80の移動量を測定するためのセンサを有する。このセンサは、例えば、車速センサなどであるが、上記加速度センサを、移動量を測定するためのセンサとして用いてもよい。なお、各センサは、移動部50、すなわち各デルタクローラに取り付けられてもよい。
【0026】
撮影部70は、特定の範囲を撮影するCCD(Charge Coupled Device)カメラなどであり、撮影した内容を示す撮影データを出力する。特定の範囲とは車体80前方であってもよいし、車体80の周囲を撮影するものであってもよい。
発光部75は、特定の範囲に対して光を照射するLED(Light Emitting Diode)などを用いたライトである。特定の範囲とは、撮影部70が撮影する範囲を含むものであることが望ましいが、前方方向だけであってもよい。
通信部90は、運搬車1と管理車両HC(図5参照)との間で無線通信により情報のやり取りを行う通信手段である。通信部90を用いて無線通信をすることにより、管理車両HCは、運搬車1を遠隔操作することも可能である。
以上が、運搬車1の外観の構成についての説明である。続いて、運搬車1の外観動作について説明する。
【0027】
[外観動作]
図2は、本発明の実施形態における運搬車1の長尺物(この例においては木材1000)の把持状態および運搬状態を説明する図である。図2(a)は、運搬車1が木材1000を把持するときの状態を説明する図である。図2(b)は、運搬車1が木材1000を把持した状態で運搬するときの状態を説明する図である。以下の説明においては、操作者が操作部60を操作して把持、運搬動作を行う場合について説明する。自動で行う場合については後述する自動制御処理の説明において別途述べるが、内部的な動作が変わるだけであり、外観に現れるブーム部10、アーム20、グラップル30などの動作については、以下の説明と変わるものではない。
【0028】
図2(a)に示すように、運搬車1は、操作部60の操作などに応じて、接地面Gに置かれた木材1000の長尺方向が車体80の前後方向に位置するように移動し、グラップル30が木材1000の側面を把持することができる位置に移動するように、ブーム部10をAR2方向に回転させて接続部40の位置を下げる。そして、運搬車1は、操作部60の操作などに応じて、グラップル30により木材1000を把持する。
【0029】
グラップル30により木材1000が把持したことを操作者が確認して操作部60を操作すると、または、運搬車1がグラップル30により木材1000が把持したことをセンサなどにより認識すると、運搬車1は、ブーム部10をAR1方向に回転させて、図2(b)に示すように、車体80の前後方向における重心位置CBの鉛直上方の位置に自動的に接続部40を移動させる。なお、接続部40の位置は、必ずしも重心位置CBの直上にならなくてもよく、重心位置CBの概ね鉛直上方であればよい。また、接続部40の位置は、操作者が目視により接続部40の位置を確認しながら操作部60を操作してブーム部10を回転させることにより、重心位置CBの概ね鉛直上方に移動されるようにしてもよい。
【0030】
そして、運搬車1は、操作部60の操作などに応じて、この接続部40の位置を保ったまま、後方(図2右側)に移動して、木材1000の一部を接地面Gに接触させたまま引きずるようにして運搬する。なお、木材1000の長さが短い場合には、引きずらない場合もある。
【0031】
このようにして、車体80の重心位置CBの鉛直上方に位置するように接続部40を移動させることにより、運搬車1の重量が運搬対象の木材1000の重量に比べて非常に大きなものとしなくても、運搬車1は、木材1000の運搬時に車体80のバランスを崩しにくくなるため、安定した走行により木材1000を運搬することができる。したがって、運搬車1の大きさを大きくする必要も無いため、山林の木々の隙間を移動していくことも可能である。
ここまでは接地面Gが水平であることを前提に説明したが、接地面Gが傾斜している場合について図3を用いて説明する。
【0032】
図3は、本発明の実施形態における運搬車1の傾斜地における運搬状態を説明する図である。図3に示すように接地面Gが傾斜している場合には、図2(b)に示す場合と比べて、車体80の後方側が低くなっている。そのため、ブーム部10の位置を固定したまま図2(b)に示す接続部40の位置をそのまま変化させない場合には、接続部40の位置は、重心位置CBの鉛直上方ではなく後方側になってしまう。したがって、斜面下側方向に力がかかるため、運搬車1のバランスが悪化する。
【0033】
そこで、図3に示すように、接地面Gが水平面に比べて傾斜している場合には、運搬車1は、上述したように、重心位置CBの鉛直上方に接続部40が位置するように、AR2方向にブーム部10を回転させる。具体的には、運搬車1は、加速度センサ(センサ部55を用いてもよい)などにより車体80の前後方向の傾斜角度を測定し、その傾斜角度に応じて重心位置CBの鉛直上方を認識する。そして、運搬車1は、認識した鉛直上方に接続部40が移動するようにブーム部10を回転させる。なお、接続部40の位置は、操作者が目視により接続部40の位置を確認しながら操作部60を操作してブーム部10を回転させることにより、重心位置CBの概ね鉛直上方に移動されるようにしてもよい。
【0034】
このようにして、運搬車1は、車体80の重心位置CBの鉛直上方が、接地面Gの傾斜量に応じて変化しても、ブーム部10を回転させて重心位置CBの鉛直上方に接続部40が位置するようにする。したがって、運搬車1は、接地面Gが傾斜していても、木材1000の運搬時に車体80のバランスを崩しにくくなるため、安定した走行により木材1000を運搬することができる。
続いて、運搬車1の内部構成について説明する。
【0035】
[内部構成]
図4は、本発明の実施形態における運搬車1の内部構成を説明するブロック図である。運搬車1は、上述した外観構成のほか、内部構成として、手動制御部110、動作処理部120、測定部130、記録部140、自動制御部150および補正部160を有する。これらの各構成により、運搬車1は、操作者による手動制御と、予め記録した内容に従った自動制御とを切り替えて、それぞれ処理を行う。
【0036】
手動制御部110は、操作部60において手動制御に切り替える指示がなされると、操作部60からの操作内容に応じて出力される操作情報を取得し、操作情報に応じて動作処理部120を制御して、ブーム部10(第1ブーム11および第2ブーム12)、グラップル30、移動部50を動作させる。すなわち、手動制御部110は、ブーム部10、グラップル30、移動部50を手動で動作させるための構成である。ここで、操作情報とは、電気的に伝達される情報であってもよいし、機械的な構成が動作することにより伝達される情報であってもよい。
【0037】
動作処理部120は、手動制御部110および自動制御部150からの制御により、ブーム部10、グラップル30、移動部50を動作させる。例えば、動作処理部120は、油圧の制御によりブーム部10、グラップル30を動作させ、エンジンの回転動力の移動部50への伝達制御により、移動部50を動作させて車体80を走行させる。また、移動部50の動作には、ステアリングハンドル61の操作による走行方向の変更も含まれる。
測定部130は、センサ部55から出力される検出結果に基づいて、車体80の傾き、車速を測定する。そして、測定部130は、これらの測定した結果を示す測定情報を出力する。
【0038】
記録部140は、操作部60において走行記録処理の開始指示がなされると、走行記録処理の終了指示がなされるまでの間、操作部60から出力される操作情報、測定部130から出力される測定情報を取得し、それぞれを対応付けて時系列に記録した記録情報を生成する。記録部140は、このようにして生成した記録情報を記憶するための不揮発性メモリなどの記憶手段を有する。
記録情報の内容については、後述の走行記録処理の説明において行う。
【0039】
自動制御部150は、操作部60において自動制御に切り替える指示がなされると、記録部140によって生成された記録情報を時系列順に読み出し、読み出した内容に応じて動作処理部120を制御して移動部50を動作させる。すなわち、自動制御部150は、操作部60の操作によらない自動で動作させるための構成である。ここで、自動制御部150は、記録情報に応じて動作処理部120を制御するときには、補正部160からの補正指示に応じてその制御の内容を補正する。また、自動制御部150は、発光部75を発光させ、撮影部70から出力される撮影データに応じて、ブーム部10、グラップル30を動作させる。
自動制御部150における詳細の処理については、後述の自動制御処理の説明において行う。
【0040】
補正部160は、操作部60において自動制御に切り替える指示がなされると、記録部140によって生成された記録情報を時系列順に読み出し、読み出した内容と、測定部130から出力される測定情報とを比較する。補正部160は、この比較結果が予め決められた関係を満たすように移動部50を動作させるための補正指示を自動制御部150に対して行う。例えば、記録情報に応じて移動部50が動作しているにもかかわらず、移動のずれが生じるなどして、記録情報に含まれる測定情報と、測定部130から出力される現在の測定結果である測定情報とがずれてくる場合があるが、その場合に、補正部160は、これらが予め決められた関係を満たすように移動部50を動作させるための補正指示を行う。ここで、予め決められた関係とは、完全一致であってもよいし、一定範囲でのずれまでは許容するようにした関係であってもよい。
以上が、運搬車1の内部構成について説明である。続いて、走行記録処理について説明する。
【0041】
[走行記録処理]
走行記録処理とは、運搬車1に自動制御処理を行わせるに先立って、運搬車1が走行して移動すべき経路を記録するための処理、すなわち記録情報を生成する処理である。この移動経路は例えば、図5に示すような経路である。
【0042】
図5は、本発明の実施形態における運搬車1の移動経路を説明する図である。図5(a)に示すように、運搬車1は、林道WRの付近に設けられている土場WYから、移動経路R1を通って林地残材が置かれている伐採地CAへ移動する。土場WYには土場マーカーPYが設けられている。
運搬車1は、林地残材である木材1000を把持して、伐採地CAから、経路R2を通って土場WYへ移動し、土場WYに木材1000を置く。このようにして、運搬車1は、伐採地CAから土場WYに木材1000を運搬する。この木材1000には、図5(b)に示すように光を乱反射して、運搬車1に木材1000の位置を認識させる認識部材である木材マーカー500が設けられている。また、土場WYには、土場WYにおける走行記録処理を開始する位置、向きを規定するための土場マーカーPYが設けられている。
続いて、走行記録処理により生成される記録情報について説明する。
【0043】
図6は、本発明の実施形態における記録部140によって生成される記録情報の内容を説明する図である。
運搬車1を土場マーカーPYに規定される位置、向きに移動させた後、走行記録処理が開始されると、操作者は、運搬車1を手動で制御して、移動経路R1をたどって運搬車1を土場WYから伐採地CAに移動させる。このとき、運搬車1は、記録部140において、走行記録処理開始タイミングからの経過時間と、各経過時間に対応するタイミングにおいて操作部60から出力された操作情報(D1、D2、・・・)、および各経過時間に対応するタイミングにおいて測定部130から出力された測定情報(M1、M2、・・・)とを対応付けて記録情報として生成する。
【0044】
例えば、図6に示すように、経過時間が「00:00:01」において、操作部60から出力された操作情報は「D2」、測定部130から出力された測定情報は「M2」であることを示している。この例においては、操作情報とは、ステアリングハンドル61の回転量を示す情報を含んでいる。また、測定情報とは、第1分割車体81および第2分割車体82の傾きを示す情報と、車速を示す情報とを含んでいる。
【0045】
そして、操作者は、伐採地CAに到着すると、操作部60を操作して、伐採地CAに運搬車1が到着したことを示す到着情報CAPを記録情報に記録する。この例においては、経過時刻「49:15:46」において到着情報CAPが記録される。これにより、移動経路R1について記録情報が生成される。この到着情報CAPは、自動制御処理において伐採地CAにある林地残材である木材1000を把持する処理を行う指示となる。
【0046】
続いて、操作者は、操作部60を操作して、記録情報に経路R2についての記録を行う指示を行った後、運搬車1を手動で制御して、移動経路R2をたどって運搬車1を伐採地CAから土場WYに移動させる。このとき、操作者は、第2分割車体82が進行方向前方になるように運搬車1を移動させながら移動経路R2をたどる。なお、操作者は、木材1000をグラップル30により把持した状態で運搬車1を移動させてもよい。
移動経路R1の場合と同様に、運搬車1は、移動経路R2をたどりながら、記録部140において、到着情報CAPが記録された続き(「49:15:47」)から、操作部60から出力された操作情報(D4、D5、・・・)、および測定部130から出力された測定情報(M4、M5、・・・)とを対応付けて記録情報に記録する。
【0047】
そして、操作者は、土場WYに到着すると、操作部60を操作して、土場WYに運搬車1が到着したことを示す到着情報WYPを記録情報に記録する。この例においては、経過時刻「113:25:88」において到着情報WYPが記録される。これにより、移動経路R2について記録情報が生成される。この到着情報CAPは、自動制御処理において土場WYに運搬した木材1000を置く処理を行う指示となる。
このようにして、記録部140によって記録情報が生成される。以上が、走行記録処理である。続いて、自動制御処理について説明する。
【0048】
[自動制御処理]
自動制御処理とは、予め生成した記録情報にしたがって運搬車1を制御し、自動的に移動経路R1を移動させ、伐採地CAにおける木材1000を把持し、土場WYまで運搬する処理である。まず、運搬車1は、土場WYに設置され自動制御に切り替えられる。これは管理車両HCから遠隔操作によって行ってもよい。また、図に示すように、複数の運搬車1が同時に自動制御されてもよい。
【0049】
運搬車1を土場マーカーPYに規定される位置、向きに移動させた後、自動制御に切り替えられると、自動制御部150は、記録情報を時系列順に読み出して、読み出した記録情報の操作情報におけるステアリングハンドル61の回転量に応じて、移動部50の進行方向を決定する。また、自動制御部150は、補正部160からの補正指示により、測定部130によって測定される車速が、読み出した記録情報の測定情報における車速になるように移動部50の移動速度を決定する。そして、自動制御部150は、決定した進行方向、移動速度で移動部50が動作するように動作処理部120を制御する。
【0050】
このとき、補正部160は、読み出した記録情報の測定情報における傾きと、測定部130によって測定される傾きとの関係が予め決められた関係になるように自動制御部150の制御の内容を補正する指示を行う。例えば、進行方向に対して右側が徐々に高くなるような車体80の傾きを示す測定情報が記録情報に記録されているのに対し、測定部130において測定された傾きでは右側の高くなり方が少ない場合、本来いるべき位置よりも運搬車1が左側に寄っているものと考えられるため、補正部160は、運搬車1が、より右側に移動するように自動制御部150の制御の内容を補正する指示を行う。
【0051】
運搬車1が走行する山林は、傾斜地が多く、また、地面の凹凸も多く存在する。したがって、運搬車1は、車体80の傾きについても記録情報と測定部130による測定結果とが一致するように移動することにより、記録情報を生成するために移動した経路に沿った移動の正確性を高めることができる。
【0052】
このように自動制御部150および補正部160は、記録情報に応じて移動部50を動作させて、読み出した記録情報が到着情報CAPとなったときには、運搬車1が伐採地CAに到着していることになる。運搬車1は、伐採地CAに到着すると、続いて、木材1000の把持を行う把持処理を行う。
【0053】
自動制御部150は、発光部75を発光させるとともに、その光が木材1000に取り付けられた木材マーカー500により反射し、その反射光を撮影部70により撮影された内容から認識する。なお、自動制御部150は、発光部75を発光させる前の状態で、木材マーカー500の反射光を認識できるときには、発光部75を発光させなくてもよい。
【0054】
そして、自動制御部150は、木材1000の位置を認識しつつ、運搬車1がその木材1000を把持できる位置まで移動させる。
このとき、記録部140は、伐採地CAに到着してから木材1000を把持できる位置までの移動経路(以下、把持移動経路という)において、図6(b)に示すような把持記録情報を生成する。この把持記録情報は、記録情報と同様の構成であり、伐採地CAに到着してからの経過時間と、各経過時間に対応するタイミングにおいて操作部60から出力された操作情報(DC1、DC2、・・・)、および各経過時間に対応するタイミングにおいて測定部130から出力された測定情報(MC1、MC2、・・・)とを対応付けて記録されたものである。
【0055】
そして、運搬車1が木材1000を把持できる位置に移動すると、自動制御部150は、ブーム部10およびグラップル30を動作させて、木材1000を把持する(図2(a)参照)。把持する木材1000は、1本でもよいし、複数本でもよい。グラップル30が木材1000を把持すると、自動制御部150は、接続部40の位置が車体80の重心CBの概ね鉛直上方に位置になるようにブーム部10を動作させる。これにより、運搬車1は、図2(b)に示すように、木材1000を持ち上げる。
【0056】
続いて、自動制御部150は、記録部140によって生成された把持記録情報に応じて、移動部50を動作させる。このとき、自動制御部150および補正部160は、把持記録情報を時系列と逆順で読み出して、移動部50を動作させる。このようにして動作させると、運搬車1は、木材1000を把持するまでに移動した把持移動経路を逆にたどって移動し、木材1000を把持した状態で、伐採地CAに到着したときの位置に戻る。
【0057】
運搬車1が伐採地CAに到着したときの位置に戻ると、自動制御部150は、再び記録情報の到着情報CAPの続き、図6(a)の例では、経過時間「49:15:47」における操作情報D4、測絵地情報M4から時系列順に読み出して、移動部50を動作させる。
自動制御部150および補正部160は、記録情報に応じて移動部50を動作させて、読み出した記録情報が到着情報WYPとなると、運搬車1が土場WYに到着していることになる。自動制御部150は、土場WYに到着すると、ブーム部10およびグラップル30を動作させて、把持している木材1000を土場WYに配置する。
【0058】
自動制御部150は、上述した木材マーカー500による木材の認識と同様にして、土場マーカーPYを認識し、運搬車1を土場マーカーPYに規定される位置、向きに移動させる。そして、自動制御部150は、再び記録情報に応じて移動部50を動作させて、運搬車1を移動させる。
このようにして、運搬車1は、自動的に伐採地CAから土場WYに木材1000を運搬する動作を繰り返して行う。この運搬動作は、管理車両HCからの運搬車1への終了指示があるまで続けられる。
ここで、運搬車1は、このような運搬動作中において、通信部90を用いて各種の情報(測定情報、自動制御内容、撮影情報など)を管理車両HCに対して送信する。管理車両HCにおいては、これらの情報を取得して表示画面などに表示して、管理者に対して報知する。
【0059】
このように、運搬車1は、木材1000のような重量の大きい長尺物を運搬するときに、接続部40が車体80の重心位置CBの鉛直上方に位置するようにブーム部10を回転させる。また、運搬車1は、傾斜地が多い山林においても、接続部40の位置を調整しながら運搬する。したがって、運搬車1を大型化して重量を大きくしなくても、バランスを崩しにくくなるため、安定した走行により木材1000を運搬することができる。
また、操作情報と測定情報とに基づいて自動制御処理を行うことにより、運搬車1は、伐採地CAから木材1000を土場WYまで自動で運搬する。このとき、車体80の傾斜を測定しながら、自動制御処理に反映させることにより、山林などの傾斜地や地面の凹凸が多い場所において、予め記録した移動経路に沿った移動を精度よく行うことができる。また、複数台の運搬車1により自動制御処理を行ったとしても、それぞれが自律して移動するため少なくとも管理車両HCにおいて管理者がいればよい。したがって、この運搬車1を用いれば、木材1000の運搬において人的なコストを抑えることができる。
【0060】
<変形例>
以上、本発明の実施形態およびその実施例について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
【0061】
[変形例1]
上述した実施形態において、移動部50は、デルタクローラであったが、ホイールであってもよいし、さらに図7に示すように爪がホイール周囲に設けられた移動部50Aであってもよい。
【0062】
図7は、本発明の変形例1における運搬車1Aの移動部50Aの構成を説明する図である。このような移動部50Aにおいては、山林など地面が舗装されていない場所を走行する場合に好適であり、より斜度の大きい傾斜地であっても走行が可能になる。
【0063】
[変形例2]
上述した実施形態において、アーム20は、自由に回転するように接続部40を介してブーム部10に取り付けられていたが、アーム20の回転量を制御できるような構成になっていてもよい。すなわち、アーム20はぶら下がった状態ではなく、動作処理部120によりその回転量が制御されてもよい。このようにすると、運搬車1は、グラップル30により把持すべき長尺物が傾斜した状態で置かれていても、その長尺物を容易に把持することができる。
なお、動作処理部120は、グラップル30により長尺物が把持されているときには、この回転量の制御を行わず、実施形態と同様に自由に回転する状態に切り替えられるようにしてもよい。
また、動作処理部120は、ブーム部10の回転量を変化させていないときにアーム20の回転を抑制し、回転量を変化させているときに自由に回転する状態にしてもよい。これにより運搬時の安定感を高めることもできる。
【0064】
[変形例3]
上述した実施形態における自動制御処理は、実施形態において示した運搬車1に限らず、様々な車両に適用することができる。この車両は傾斜地、地面の凹凸が多いところなどにおいて好適である。
また、この車両は移動経路の途中において特定の作業を行うための作業部を有する自動作業車であってもよい。特定の作業とは、例えば、実施形態における木材1000を把持する把持処理に対応し、ブーム部10、アーム20、グラップル30などが作業部に対応する。そして、この車両は、特定の作業を行うときに実施形態における把持記録情報に対応する記録情報を生成し、この記録情報を用いて、特定の作業を行う前にいた位置に戻ってから再び移動経路をたどって移動する処理を開始するようにすればよい。
【0065】
[変形例4]
上述した実施形態において、記録部140が生成する記録情報にはステアリングハンドル61についての操作情報が記録されていたが、さらに、アクセルペダル、ブレーキペダル操作に対応する操作情報が記録されるようにしてもよい。そして、自動制御部150は、記録情報に記録されたアクセルペダル、ブレーキペダルに対応する操作情報に応じてこれらを動作させるように制御するようにすればよい。この場合には、車速についての測定情報は記録情報に記録されなくてもよい。
【0066】
[変形例5]
上述した実施形態において、運搬車1は、測定部130において運搬車1の位置を測定する構成を有するようにしてもよい。この位置の測定は、例えば、GPS(Global Positioning System)の技術を用いればよい。そして、記録部140は、生成する記録情報に記録される測定情報に、測定部130において測定された位置の情報が含まれるようにすればよい。そして、補正部160は、記録情報に記録された測定情報が示す位置と、測定部130において測定された位置とが予め決められた関係(例えば、一致、または一定範囲を許容した関係)を満たすように、自動制御部150における制御の内容を補正するようにすればよい。
山林においては、GPSに用いる衛星からの信号が木々に遮蔽されて、運搬車1において受信できない場合もあるが、このような場合であっても、車体80の傾きにより移動部50が制御されるため正確に移動することが可能である。
なお、衛星からの信号が遮蔽されにくい環境であれば以下の処理を行ってもよい。まず、記録部140が、測定部130において測定された運搬車1の位置を示す位置情報を記録情報に記録しておく。そして、自動制御部150は、記録情報に記録された位置情報が示す位置と、測定部130において測定された位置とが一致するように、移動部50を動作させてもよい。この場合には、自動制御部150における制御に操作情報を用いる必要が無い。
【0067】
[変形例6]
上述した実施形態において、測定部130は、第1分割車体81と第2分割車体82との傾きをそれぞれ測定していたが、いずれか一方であってもよい。また、車体80は、第1分割車体81と第2分割車体82とが連結された構成であったが、分割されていない車体であってもよい。
【0068】
[変形例7]
上述した実施形態における走行記録処理において、記録部140は、撮影部70から出力される撮影情報についても記録情報に記録してもよい。そして、補正部160は、記録情報に記録された撮影情報が示す内容と、撮影部70から出力される撮影情報の内容とを比較して、この内容が予め決められた関係(例えば、一致、または一定範囲を許容した関係)を満たすように、自動制御部150における制御の内容を補正するようにすればよい。
【0069】
[変形例8]
上述した実施形態において、運搬車1が伐採地CAに向かうときの移動経路R1と、土場WYに戻るときの移動経路R2とは異なる経路で走行記録処理を行う例を示したが、移動経路R1と移動経路R2とが同一の経路、すなわち、運搬車1が伐採地CAから移動経路R1をたどって土場WYに戻るようにしてもよい。
この場合には、記録部140は、図6(a)に示す移動経路R1に対応する部分を記録した記録情報を生成すればよい。そして、伐採地CAから土場WYに戻るときには、実施形態における把持処理において説明したように、自動制御部150および補正部160は、記録情報を時系列と逆順に読み出して、移動部50を動作させるようにすればよい。
【0070】
[変形例9]
上述した実施形態において、走行記録処理を行っているときに、操作者が運搬車1を移動させる経路を間違えた場合に、間違えた部分については記録情報に記録されないようにしてもよい。
例えば、記録すべき経路を間違えたと認識した操作者が記録情報の訂正を操作部60の操作などにより運搬車1に指示すると、自動制御部150および補正部160は、これまで記録部140によって記録された記録情報を時系列と逆順に読み出して、移動部50を動作させる。このようにすると、運搬車1は、これまで移動してきた経路を戻るように移動する。
【0071】
そして、運搬車1が戻りたい地点まで移動したことを認識した操作者が操作部60の操作などにより運搬車1に停止を指示すると、自動制御部150は、移動部50の動作を停止させる。そして、操作者による操作部60の操作などにより運搬車1に走行記録の再開を指示すると、運搬車1は、再び走行記録処理を開始する。このとき、記録部140は、記録情報のうち、時系列の逆順に読み出された部分までを破棄し、その後から記録情報の記録を再開する。
このようにすれば、走行記録処理において操作者が運搬車1の操作を誤ったとしても、途中からやり直すことができる。
【0072】
[変形例10]
上述した実施形態における自動制御処理において、運搬車1は、特定の条件を満たした場合に、自動制御処理を停止させるようにしてもよい。特定の条件としては、例えば、一定時間以上にわたって、記録情報に記録された測定情報が示す測定結果と、測定部130によって測定された測定結果とが予め決められた関係を満たさない状態が続いた場合である。また、その他の特定の条件としては、撮影部70による撮影内容などから、人が運搬車1に一定距離より近づいたことを検出した場合、移動部50を動作させるための負荷が一定値以上に増加した場合など、予め決められた異常を検知した場合である。
【0073】
このようにして運搬車1が停止した場合には、管理車両HCから遠隔操作により、または、管理者が運搬車1の位置に行って、特定の条件を満たさなくなるように対応すればよい。そして、運搬車1の移動経路を変更する必要が無い場合には、操作部60の操作、管理車両HCからの遠隔操作などにより、そのまま自動制御処理を再開させればよい。
【0074】
一方、運搬車1を移動させている場合には、走行記録処理を行うなどして、移動経路の再記録を行えばよい。このとき、変形例5に示す場合など、運搬車1の位置が記録情報から検出することができる場合には、運搬車1を移動経路上に戻して、戻ったところから再び記録情報を読み出して自動制御処理を行うようにしてもよい。特定の条件を満たさなくするためには、移動経路の変更が必要な場合には、操作者は運搬車1を一旦移動経路上の位置Aに戻し、別の移動経路上の位置Bまでの迂回経路を走行記録処理により記録して、元の記録情報における位置Aから位置Bに対応する部分の内容を迂回経路に対応して修正するようにしてもよい。
なお、運搬車1が移動経路上の位置に戻ったかどうかを操作者が認識するために、記録情報における位置と測定部130によって測定された位置とを比較して、運搬車1が移動経路上にいることを操作者に報知する報知手段を運搬車1に設けてもよい。この報知は、例えばLEDの発光などである。
【0075】
[変形例11]
上述した実施形態においては、ブーム部10は、第1ブーム11および第2ブーム12を有していたが、いずれか一方だけであってもよい。この場合は、接続部40は、一方のブームから突出した状態に取り付けられる。
【符号の説明】
【0076】
1,1A…運搬車、10…ブーム部、11…第1ブーム、12…第2ブーム、20…アーム、30…グラップル、40…接続部、50,50A…移動部、55…センサ部、60…操作部、61…ステアリングハンドル、62…操作パネル、70…撮影部、75…発光部、80…車体、81…第1分割車体、82…第2分割車体、83…連結部、85…座席、90…通信部、110…手動制御部、120…動作処理部、130…測定部、140…記録部、150…自動制御部、160…補正部、500…木材マーカー、1000…木材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、
前記車体に回転軸を介して取り付けられたブームであって、前記回転軸を中心にして回転すると前記車体とは反対側の当該ブームの先端部分が前記車体の前後方向に移動するブームと、
前記回転軸と概ね一致した方向に沿った回転軸となる接続部を介して前記ブームに取り付けられ、当該接続部を中心として回転可能なアームと、
前記アームに取り付けられ、前記ブームの回転軸方向に開閉可能であり、閉じることにより物体を把持するグラップルと
を具備し、
前記接続部が前記ブームの回転軸の位置よりも前記車体の後方側に移動可能となるように前記ブームの回転範囲が設定され、
前記ブームの回転軸に沿った方向に見た場合に、前記グラップルが前記ブームに対して前記車体の前後方向に移動可能となるように、前記アームの回転範囲が設定され、
前記ブームおよび前記アームの回転範囲においては、前記アームおよび前記グラップルが前記車体および前記ブームに接触しないように設定されている
ことを特徴とする運搬車。
【請求項2】
前記車体の前後方向の傾斜量を測定する測定手段と、
前記グラップルが物体を把持した状態において、前記車体に対する前記接続部の位置が前記測定手段によって測定された傾斜量に応じて変化するように、前記ブームの回転量を制御する制御手段と
をさらに具備する
ことを特徴とする請求項1に記載の運搬車。
【請求項3】
前記制御手段は、前記グラップルが物体を把持した状態において前記車体が移動するときには、前記接続部が前記車体の鉛直上方に位置するように、前記ブームの回転量を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の運搬車。
【請求項4】
前記車体に回転軸を介して取り付けられ、前記ブームと一体となって回転する第2ブームをさらに具備し、
前記接続部は、前記ブームと前記第2ブームとを連結するように取り付けられ、
前記アームは、当該アームが回転した場合に前記グラップルが前記ブームと前記第2ブームとの間を移動するように、前記接続部に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の運搬車。
【請求項5】
前記アームは、自由に回転するように前記接続部に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の運搬車。
【請求項6】
前記制御手段が前記ブームの回転量を変化させていないときに、前記アームの回転を抑制する抑制手段をさらに具備する
ことを特徴とする請求項5に記載の運搬車。
【請求項7】
物体の予め決められた位置に取り付けられた認識部材の位置を認識する認識手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記認識手段によって認識された認識部材の位置に基づいて、当該認識部材が取り付けられた物体を前記グラップルに把持させるように、前記ブームの回転量、前記グラップルの把持、および前記車体の位置を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の運搬車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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