説明

運行記録制御方法、車両運行記録装置及び運行記録プログラム

【課題】車両の運行業務が終了した時に、収集した情報を乗務員カードに記録するための作業を行う機会、及び事務所で乗務員カードに記録されているデータを読み取り、出力する機会を減らすことができる運行記録制御装置を提供する。
【解決手段】運転手を識別するための第1の識別情報を読み取る第1読取ステップと、前記第1読み取りステップ以降に検出した第1の運行記録データを、前記第1の識別情報に対応させて記録する第1記録ステップと、運転手を識別するための第2の識別情報を読み取る第2読取ステップと、前記第2読み取りステップ以降に検出した第2の運行記録データを、前記第1の運行記録データの後に記録された運行記録データとして、前記第2の識別情報に対応させて記録する第2記録ステップと、前記第1記録ステップ及び前記第2記録ステップにて記録したデータを記録媒体に書き込む書込ステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両上に搭載され、前記車両の運行状況を表す情報を逐次収集し、所定の記録媒体上にデジタルデータとして前記情報を記録する運行記録制御方法、車両運行記録装置および運行記録プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トラックやタクシー、配送用車両等の業務用車両については、乗務員の労務管理や安全管理のために、車両の運行状況を自動的に記録する車両運行記録計、すなわちタコグラフが車載器として各々の車両に搭載されている。このようなタコグラフは、その車両の走行速度やエンジン回転数といった走行状態を検出して自動的に記録する。各車両のタコグラフによってチャート紙等に記録された情報は、車両の運行を管理している会社の営業所等において読み取られ、乗務員の労務管理や安全管理に利用される。
【0003】
近年では、上述のような車両運行記録計は一般的にデジタルタコグラフと呼ばれ、様々な機能が追加されている。デジタルタコグラフは、車両の走行センサやエンジン回転数センサからの出力を基に割り出される走行速度やエンジン回転数といった、時々刻々変化する車両の走行状態に関する時系列情報を、デジタルデータの形で収集し不揮発性メモリを内蔵したメモリカードのような記憶媒体に自動的に記録する。更に、例えば乗務員が車両を運転した時間の情報や、車両の急発進、急停止の回数といった、乗務員の運行業務の状態に関する情報も収集されデジタルデータの形で記憶媒体に記録される。
【0004】
ところで、例えば個人タクシーのように個人で営業を行っている場合でない限り、一人の乗務員が常に同じ車両を使用して運行業務を行うわけではない。従って、車両運行記録計を使用する場合には、乗務員毎に個別に情報を収集して管理する必要がある。そこで、現状では以下に説明するような状態で管理を行っている。
【0005】
1.乗務員を管理している会社の事務所では、各々の乗務員を特定可能な乗務員コードが書き込まれた乗務員カード(メモリカード)を作成し、各々の乗務員に1枚ずつ乗務員カードを配布する。
2.各乗務員は、運行業務を開始する前に、自分の乗務員カードを使用する車両に搭載された車両運行記録計(車載装置)に装填し、車両の運行業務を開始する。
3.車両の運行業務を行っている間は、車両運行記録計が情報を収集する。
4.車両の運行業務が終了した時に、収集した情報をデジタルデータとして装填された乗務員カードに記録し、乗務員は自分の乗務員カードを車両上の車両運行記録計から抜き取って持ち帰る。
5.乗務員を管理している会社の事務所で、乗務員が自分の乗務員カードを管理用コンピュータのカードリーダに装填し、この乗務員カードに記録されているデータを読み取り、例えば紙にデータの内容を印刷して出力する。
【0006】
従って、各乗務員カードに記録されている乗務員コードにより各乗務員を特定できるので、車両運行記録計により収集され、前記管理用コンピュータにより出力されるデータと特定の乗務員とを対応付けることができる。これにより、乗務員毎に労務管理や安全管理を行うことができる。
【0007】
一方、過去に大容量のメモリカードが高価であった時には、車両毎に1枚のメモリカードを割り当てて車両運行記録計が収集したデータを車両のメモリカードに記録していた。しかし、この場合には車両のメモリカードに記録される運行記録情報の中に複数の乗務員のデータが混在する可能性があるので、乗務員毎の労務管理や安全管理が困難であった。
【0008】
そこで、例えば特許文献1では、車両運行記録計において複数の乗務員を区別するための技術を開示している。具体的には、各乗務員が所有しているカードから乗務員識別コードを読み取って、あるいはテンキーから入力された乗務員識別コードを読み取って、この乗務員識別コードと事前に車両運行記録計に登録された登録情報とを照合し、そのカードの保有者を識別することを提案している。
【0009】
また、特許文献2には、カードの情報を読み取ってその情報に含まれる識別情報と事前に登録された登録情報とを照合し、そのカードの保有者を識別する機器操作権管理端末が開示されている。また、照合に失敗した場合に、運転不可の情報を表示出力することも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−306407号公報
【特許文献2】特開2000−311220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、乗務員は、上述した1から5の手順のうち、2、4及び5の手順を車両に乗り込む度に行っている。特に、4及び5の手順については、運行業務終了後の乗務員に作業を強いるため乗務員に負担をかける手順であるとともに、乗務員がその作業をし忘れることもある。このため、乗務員カードを車両運行記録計から取り出すためのイジェクトボタンが乗務員カードへのデータの書き込みを開始させるための操作ボタンを兼ねるようにした車両運行記録計もある。しかしながら、このような車両運行記録計は、乗務員にかける負担の軽減及び乗務員カードへの書き込み忘れの防止には寄与するものの、乗務員が4及び5の手順のための作業をしなければならないことに変わりはない。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の運行業務が終了した時に、収集した情報を乗務員カードに記録するための作業を行う機会、及び事務所で乗務員カードに記録されているデータを読み取り、出力する機会を減らすことができる運行記録制御方法、車両運行記録装置及び運行記録プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る運行記録制御方法は、下記(1)を特徴としている。
(1) 運転手を識別するための第1の識別情報を読み取る第1読取ステップと、
前記第1読み取りステップ以降に検出した第1の運行記録データを、前記第1の識別情報に対応させて記録する第1記録ステップと、
運転手を識別するための第2の識別情報を読み取る第2読取ステップと、
前記第2読み取りステップ以降に検出した第2の運行記録データを、前記第1の運行記録データの後に記録された運行記録データとして、前記第2の識別情報に対応させて記録する第2記録ステップと、
前記第1記録ステップ及び前記第2記録ステップにて記録したデータを記録媒体に書き込む書込ステップと、
を有すること。
【0014】
上記(1)の構成の運行記録制御方法によれば、車両の運行業務が終了した時に、収集した情報を乗務員カードに記録するための作業を行う機会、及び事務所で乗務員カードに記録されているデータを読み取り、出力する機会を減らすことができる。
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両運行記録装置は、下記(2)、(3)を特徴としている。
(2) 運行記録データを記録する記録部と、
運転手を識別するための識別情報を読み取る読取部と、
記録媒体を挿抜可能であって、挿し込まれた該記録媒体に前記記録部に記録されたデータを書き込む書込部と、
を備え、
前記記録部は、前記読取部が第1の識別情報を読み取った第1の時点以降に検出された第1の運行記録データを、該第1の識別情報に対応させて記録するとともに、前記読取部が第2の識別情報を読み取った、前記第1の時点より後の、第2の時点以降に検出された第2の運行記録データを、前記第1の運行記録データの後に記録された運行記録データとして、該第2の識別情報に対応させて記録する、
こと。
(3) 上記(2)の構成の車両運行記録装置であって、
前記読取部は、非接触ICカードに記録された前記識別情報を読み取り可能な非接触リーダーである、
こと。
【0016】
上記(2)、(3)の構成の車両運行記録装置によれば、車両の運行業務が終了した時に、収集した情報を乗務員カードに記録するための作業を行う機会、及び事務所で乗務員カードに記録されているデータを読み取り、出力する機会を減らすことができる。
【0017】
前述した目的を達成するために、本発明に係る運行記録プログラムは、下記(4)を特徴としている。
(4) コンピュータに、上記(1)に記載の運行記録制御方法の各ステップを実行させるための運行記録プログラム。
【0018】
上記(4)の構成の運行記録プログラムによれば、車両の運行業務が終了した時に、収集した情報を乗務員カードに記録するための作業を行う機会、及び事務所で乗務員カードに記録されているデータを読み取り、出力する機会を減らすことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の運行記録制御方法、車両運行記録装置及び運行記録プログラムによれば、車両の運行業務が終了した時に、収集した情報を乗務員カードに記録するための作業を行う機会、及び事務所で乗務員カードに記録されているデータを読み取り、出力する機会を減らすことができる。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の車両運行記録装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す車両運行記録装置を使用する前の準備に関するシステムの構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す車両運行記録装置を使用する前の準備に関するシステムの構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す車両運行記録装置上に登録情報を書き込む際の車両運行記録装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】図1に示す車両運行記録装置を用いて車両の運行業務を開始する際の車両運行記録装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1に示す車両運行記録装置を用いて車両の運行業務を記録する際の車両運行記録装置のデータ記録動作を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の運行記録制御方法、車両運行記録装置及び運行記録プログラムに関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0023】
本実施形態の車両運行記録装置100の構成例が図1に示されている。図1に示す車両運行記録装置100は、車載器であり、管理対象の車両上に搭載して使用される。この車両運行記録装置100は車両の運行状況に関する様々な情報を自動的に収集しデジタルデータとして記録し保存する。
【0024】
図1に示すように、この車両運行記録装置100には、マイクロコンピュータ(CPU)10、不揮発性メモリ21、揮発性メモリ22、記録媒体インタフェース23、音声インタフェース24、時計回路(RTC:リアルタイムクロック)25、メモリ(EEPROM)26、スイッチ入力部27、LCDコントローラ28、液晶表示器(LCD)29、速度/エンジン回転インタフェース(IF)31、速度/エンジン回転警報部32、外部入力インタフェース33、アナログ入力インタフェース34、外部出力インタフェース35、プリンタインタフェース36、GPSインタフェース37、CAN通信インタフェース38、通信端末インタフェース39、電源部40が備わっている。
【0025】
マイクロコンピュータ(CPU)10は、メモリ26上に保持されているプログラムを実行することにより、車両運行記録装置100を制御するために必要な処理を行う。主要な制御の内容として、マイクロコンピュータ10は車両の営業運行中に、運行状態を表す様々な情報を収集し、得られたデジタルデータを記録し保存する。それ以外の特徴的な制御については、後で詳細に説明する。
【0026】
不揮発性メモリ21は、電源部40から供給される電源電力が遮断された時でも記憶された情報を保持することのできる記憶装置であり、情報の書き込み及び読み出しが可能である。不揮発性メモリ21は、車両運行記録装置100の動作に必要な情報、例えば後述するような乗務員に関する登録情報や、車両の運行業務の間に車両運行記録装置100によって自動的に収集される様々な運行状況の情報を保持するために利用される。
【0027】
揮発性メモリ22は、情報の書き込み及び読み出しが可能な半導体メモリであり、電源部40から電源電力が供給されている時に、一時的に使用するデータの書き込み及び読み出しのためにマイクロコンピュータ10によってアクセスされる。
【0028】
記録媒体インタフェース23は、記録媒体である所定のメモリカードを装着可能なカードスロットを備えており、装着されたメモリカードに対してマイクロコンピュータ10がアクセスするためのインタフェースとして機能する。メモリカードはカードスロットに着脱自在である。
【0029】
音声インタフェース24は、音声の入出力を行うためのインタフェースである。すなわち、乗務員等が発声する音声等の音響を電気信号として入力し、デジタルデータに変換して音声情報として収集したり、アナウンスなどの音声信号を合成して音響として出力することができる。
【0030】
時計回路25は、所定のクロックパルスを常時計数しており、現在の日付および時刻を把握してその情報を出力することができる。
【0031】
スイッチ入力部27は、乗務員が操作可能な複数のスイッチを有している。乗務員が各スイッチのボタンを操作した場合には、該当するスイッチの状態を表す信号がスイッチ入力部27からマイクロコンピュータ10に入力される。
【0032】
液晶表示器29は、車両運行記録装置100の筐体の前面パネルに配置された表示画面を有し、この表示画面上に数値や文字列を表示することができる。マイクロコンピュータ10は、LCDコントローラ28を介して液晶表示器29の表示内容を制御することができる。
【0033】
速度/エンジン回転インタフェース31は、車速やエンジンの回転数を把握するための各種電気信号をマイクロコンピュータ10に入力するためのインタフェースである。例えば、車両の車輪の回転量(回転速度)に応じてパルス信号を発生する車速センサの出力や、エンジン駆動部の回転量に応じた信号を出力するエンジン回転センサの出力が速度/エンジン回転インタフェース31の入力に接続される。
【0034】
速度/エンジン回転警報部32は、検出した車速やエンジン回転数(rpm)が異常な状態になった場合に、警報音を出力するために用いられる。
【0035】
外部入力インタフェース33は、オプションとして用意された外部機器、例えばスイッチユニットのような入力機器を接続するために利用される。アナログ入力インタフェース34は、アナログ電気信号を入力するために利用される。アナログ入力インタフェース34はアナログ/デジタル変換器を内蔵している。外部出力インタフェース35は、オプションとして用意された外部機器、例えばドライブレコーダのような出力機器を接続するために利用される。
【0036】
プリンタインタフェース36は、オプションとして用意されたプリンタを接続するために利用される。GPSインタフェース37は、GPS受信機を接続するために利用される。GPS受信機はGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信して車両の現在位置を表す位置情報を出力することができる。
【0037】
CAN通信インタフェース38は、車両上に搭載されている他の装置との間で、CANの通信規格に従ったデータ通信を行うためのインタフェースである。通信端末インタフェース39は、所定の通信端末と車両運行記録装置100とを接続するためのインタフェースである。
【0038】
電源部40は、車両の電源回路(バッテリーの出力)の電圧をマイクロコンピュータ10が電源として利用可能な所定の電圧に変換するための電源回路である。
【0039】
図1に示した車両運行記録装置100を正しく使用するためには事前に次に説明するような準備を行う必要がある。
まず最初の準備として、車両運行記録装置100を搭載する特定の車両を運転する可能性のある複数の乗務員(例えば10人分)の情報を登録情報として車両運行記録装置100上に書き込む必要がある。
【0040】
この準備作業を行う場合には、図2に示すようなシステムを用いる。図2に示すシステムに含まれる事務所内端末200は、複数の乗務員を管理している会社の事務所内に設置され、所定の管理者により操作される。この事務所内端末200は、一般的なパーソナルコンピュータと同様に、コンピュータ本体201、キーボード202、ディスプレイ203、カードリーダ/ライタ204を備えている。
【0041】
また、コンピュータ本体201は乗務員の情報を管理するためのアプリケーションプログラムを有し、カードリーダ/ライタ204に装着される各メモリカードに対して乗務員の情報を書き込むことができる。
【0042】
車両運行記録装置100に前述の登録情報を書き込む際には、図2に示す設定カード301を用いる。この設定カード301は、カードリーダ/ライタ204に装着可能なメモリカードである。すなわち、メモリカードをカードリーダ/ライタ204に装着して事務所内端末200を操作することにより必要な情報をメモリカードに書き込み、これを設定カード301として利用できる。
【0043】
設定カード301上には、これが設定カードであることを表す設定カード識別コードと、登録情報とが書き込まれる。
【0044】
図2に示すように、事務所内端末200を用いて作成した設定カード301を車両運行記録装置100の記録媒体インタフェース23に装着し所定の操作を行うことにより、設定カード301が保持している登録情報を車両運行記録装置100上に書き込むことができる。
【0045】
また、車両運行記録装置100を搭載した車両を各乗務員が運転し運行業務(営業)を開始する時には、図3に示す乗務員カード302が必要になる。この乗務員カード302はカードリーダ/ライタ204に装着可能なメモリカードであり、図3に示すシステムのように前述の事務所内端末200を用いて作成することができる。
【0046】
すなわち、メモリカードをカードリーダ/ライタ204に装着して事務所内端末200を操作することにより必要な情報をメモリカードに書き込み、これを乗務員カード302として利用できる。乗務員カード302上には、これが乗務員カードであることを表す乗務員カード識別コードと、特定の乗務員に割り当てられた乗務員コードとが書き込まれる。
【0047】
図3に示すように、事務所内端末200を用いて作成した乗務員カード302を車両運行記録装置100の記録媒体インタフェース23に装着し所定の操作を行うことにより、車両運行記録装置100は乗務員カード302が保持している乗務員コードを読み取り乗務員を認識できる。
【0048】
図1に示した車両運行記録装置100上に登録情報を書き込む際のマイクロコンピュータ10の処理の内容が図5に示されている。すなわち、図2に示したように作成した設定カード301を車両運行記録装置100の記録媒体インタフェース23に装着して所定の操作を行うことにより、図4に示す処理が開始される。
【0049】
ステップS11では、マイクロコンピュータ10は記録媒体インタフェース23のカードスロットに装着されているメモリカードが設定カード301であるか否かを識別する。設定カード301上には、予め定めた設定カード識別コードが書き込まれているので、このコードの存在の有無によりメモリカードが設定カード301か否かを識別できる。装着されたメモリカードが設定カード301であればステップS13に進み、そうでなければステップS12に進む。
【0050】
ステップS12では、マイクロコンピュータ10は液晶表示器29の表示画面に所定のメッセージを表示する。具体的には、図4に示す表示画面M00のように、「設定カードではありません。設定カードを挿入して下さい。」のような内容が表示される。
【0051】
ステップS13では、マイクロコンピュータ10は、設定カード301から読み込んだ乗務員情報を登録情報として不揮発性メモリ21上に書き込む。従って、この処理により、10人分の乗務員の乗務員コードと乗務員名とが登録情報として不揮発性メモリ21上に保持される。
【0052】
図1に示した車両運行記録装置100を用いて車両の運行業務を開始する際のマイクロコンピュータ10の処理の内容が図5に示されている。すなわち、乗務員が運転する車両に搭載されている車両運行記録装置100に自分の所持している乗務員カード302を装着することにより、図5に示す処理が実行される。
【0053】
ステップS21では、マイクロコンピュータ10は、記録媒体インタフェース23のカードスロットに装着されているメモリカードが乗務員カード302であるか否かを識別する。各乗務員カード302上には、予め定めた乗務員カード識別コードが書き込まれているので、このコードの存在の有無によりメモリカードが乗務員カード302か否かを識別できる。装着されたカードが乗務員カード302であればステップS23に進み、そうでなければステップS22に進む。
【0054】
ステップS22では、マイクロコンピュータ10は液晶表示器29の表示画面に所定のメッセージを表示する。具体的には、図5に示す表示画面M01のように、「乗務員カードではありません。乗務員カードを挿入して下さい。」のような内容が表示される。そしてステップS21の処理に戻る。
【0055】
ステップS23では、マイクロコンピュータ10は不揮発性メモリ21上に前述の登録情報が存在するか否かを識別する。事前に図2に示したような手続きが行われ、登録情報が車両運行記録装置100に書き込まれていればステップS23からS25に進み、まだ登録情報が書き込まれていなければステップS24に進む。
【0056】
ステップS24では、マイクロコンピュータ10は液晶表示器29の表示画面に所定のメッセージを表示する。具体的には、図5に示す表示画面M02のように、「運転手未登録」のような内容が表示される。そしてステップS23の処理に戻る。
【0057】
ステップS25では、マイクロコンピュータ10は記録媒体インタフェース23に装着されている乗務員カード302の内容、すなわち乗務員コードを読み込む。
【0058】
ステップS26では、マイクロコンピュータ10はステップS25で読み込んだ乗務員コードと不揮発性メモリ21上の登録情報の各乗務員コードとを比較して、コードの合致する乗務員を検索する。
【0059】
ステップS27では、マイクロコンピュータ10はステップS26の処理でコードの合致する乗務員が見つかったか否かを識別する。見つかった場合はステップS29に進み、見つからない場合はステップS28に進む。
【0060】
ステップS28では、マイクロコンピュータ10は液晶表示器29の表示画面に所定のメッセージを表示する。具体的には、図5に示す表示画面M03のように、「該当する乗務員コード無し」のような内容が表示される。そして、車両運行記録装置100の動作は終了する。
【0061】
ステップS29では、マイクロコンピュータ10はステップS26の比較で合致した乗務員コードがあることを、メッセージとして液晶表示器29の表示画面に表示する。具体的には、図5に示す表示画面M04のように、「該当する乗務員コード有り」のような内容が表示される。尚、マイクロコンピュータ10はステップS26の比較で合致した特定の乗務員の情報を抽出し、その情報をメッセージとして液晶表示器29の表示画面に表示するようにしてもよい。
【0062】
ステップS30では、マイクロコンピュータ10は営業中の処理を行う。すなわち、時々刻々と変化する車速やエンジン回転数などの情報を一定の周期で繰り返し収集し、収集される様々な運行状況の情報を運行記録のデジタルデータとして不揮発性メモリ21に保持する。
【0063】
ステップS31では、マイクロコンピュータ10は、記録媒体インタフェース23に装着されている乗務員カード302が取り外されたかどうかを識別する。そして、マイクロコンピュータ10は、営業走行が終了して運転者がこの乗務員カード302を取り外すと、ステップS30における不揮発性メモリ21への運行記録の記録動作を終了し、一連の車両運行記録装置100の動作を終了する。
【0064】
車両運行記録装置100は、図5を参照して説明した処理を、記録媒体インタフェース23のカードスロットに乗務員カード302が装着される度に実行することにより、不揮発性メモリ21へ運行記録のデジタルデータが逐次、記録される。換言すれば、カードスロットに乗務員カード302を装着した延べ人数分の運行記録のデジタルデータが不揮発性メモリ21に記録されていることになる。ここで、図6に示す、図1に示す車両運行記録装置を用いて車両の運行業務を記録する際の車両運行記録装置のデータ記録動作を説明する模式図を参照して、車両運行記録装置のデータ記録動作を説明する。
【0065】
ステップS30では、収集される様々な運行状況の情報を運行記録のデジタルデータ(以下、運行記録データと称する)として記録するにあたって、ステップS25にて乗務員カード302から読み取っていた乗務員コードに対応させて記録する。つまり、図6に示すように、ヘッダとしての乗務員コードと、メインデータとしての運行記録データとから構成される一つのフレームを作成し、不揮発性メモリ21に記録する。その一つのフレームは一度の乗務員カードの挿抜から得られるものであり、乗務員カードの挿入、車両の運行、及び乗務員カードの抜出が繰り返されることにより、複数個のフレームが得られる。新たに作成されたフレームFnは、それ以前に作成されたフレームのうちの最も後に作成されたフレームF(n−1)におけるデータの終端から書き込まれる。これにより、フレームF1、フレームF2、・・・フレームnは、時系列に沿って不揮発性メモリ21に記録される。
【0066】
このようにして運行データが記録された後、車両運行記録装置100の不揮発性メモリ21から運行データを取り出すためのCFカードを車両運行記録装置100の記録媒体インタフェース23に装着し所定の操作を行うことにより、不揮発性メモリ21に記録されている運行データをCFカードに書き込み、データを車両運行記録装置100からCFカードへ転送する。尚、ここでは、CFカードに運行データを書き込む構成であったが、乗務員カード302が、車両の運行業務の間に車両運行記録装置100によって自動的に収集される様々な運行状況のデジタルデータを記録するための大容量の記憶領域を有している場合は、乗務員カード302に運行データを書き込む構成としてもよい。
【0067】
以上、本発明の運行記録制御方法、車両運行記録装置及び運行記録プログラムによれば、車両の運行の度に運行データを記録媒体に書き込み構成ではなく、複数回の運行に亘って車両運行記録装置100に蓄積された運行データを一度の操作によって車両運行記録装置100から記録媒体に移す構成であるため、車両の運行業務が終了した時に、収集した情報を乗務員カードに記録するための作業を行う機会、及び事務所で乗務員カードに記録されているデータを読み取り、出力する機会を減らすことができる。
【0068】
本発明の運行記録制御方法、車両運行記録装置及び運行記録プログラムは、乗務員カードが非接触ICカードによって構成され、車両運行記録装置が非接触ICリーダによって乗務員カードからデータを読み取る構成である場合に、特に有用である。従来、カードの挿抜をすることによって記録媒体への運行記録データの書き込みを忘れないよう乗務員に意識させていたが、その挿抜作業が不要となる上記の構成では、その意識が希薄になることが予想される。本発明では、運行記録データの車両運行記録装置の不揮発メモリ21への書き込みは乗務員がその書き込みを意識する必要は無いし、さらには、CFカードの転送はいつでも行えばよい処理である。このような意味で、本発明は、非接触ICカードを乗務員カードとして利用した場合に、特に顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0069】
10 マイクロコンピュータ
21 不揮発性メモリ
22 揮発性メモリ
23 記録媒体インタフェース
24 音声インタフェース
25 時計回路
26 メモリ(EEPROM)
27 スイッチ入力部
28 LCDコントローラ
29 液晶表示器
31 速度/エンジン回転インタフェース
32 速度/エンジン回転警報部
33 外部入力インタフェース
34 アナログ入力インタフェース
35 外部出力インタフェース
36 プリンタインタフェース
37 GPSインタフェース
38 CAN通信インタフェース
39 通信端末インタフェース
40 電源部
100 車両運行記録装置
200 事務所内端末
201 コンピュータ本体
202 キーボード
203 ディスプレイ
204 カードリーダ/ライタ
301 設定カード
302 乗務員カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転手を識別するための第1の識別情報を読み取る第1読取ステップと、
前記第1読み取りステップ以降に検出した第1の運行記録データを、前記第1の識別情報に対応させて記録する第1記録ステップと、
運転手を識別するための第2の識別情報を読み取る第2読取ステップと、
前記第2読み取りステップ以降に検出した第2の運行記録データを、前記第1の運行記録データの後に記録された運行記録データとして、前記第2の識別情報に対応させて記録する第2記録ステップと、
前記第1記録ステップ及び前記第2記録ステップにて記録したデータを記録媒体に書き込む書込ステップと、
を有することを特徴とする運行記録制御方法。
【請求項2】
運行記録データを記録する記録部と、
運転手を識別するための識別情報を読み取る読取部と、
記録媒体を挿抜可能であって、挿し込まれた該記録媒体に前記記録部に記録されたデータを書き込む書込部と、
を備え、
前記記録部は、前記読取部が第1の識別情報を読み取った第1の時点以降に検出された第1の運行記録データを、該第1の識別情報に対応させて記録するとともに、前記読取部が第2の識別情報を読み取った、前記第1の時点より後の、第2の時点以降に検出された第2の運行記録データを、前記第1の運行記録データの後に記録された運行記録データとして、該第2の識別情報に対応させて記録する、
ことを特徴とする車両運行記録装置。
【請求項3】
前記読取部は、非接触ICカードに記録された前記識別情報を読み取り可能な非接触リーダーである、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両運行記録装置。
【請求項4】
コンピュータに、請求項1に記載の運行記録制御方法の各ステップを実行させるための運行記録プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−33026(P2012−33026A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172447(P2010−172447)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】