説明

運転支援装置および運転支援方法

【課題】運転者の覚醒状態を適切に誘導することができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】車室内の温度を調整するための温調風を、車室内に送風する車室内温冷手段162と、運転者の覚醒度を検出する覚醒度検出手段と、車室内温冷手段162とは独立に温度制御が可能となっており、運転者の覚醒度が所定範囲内にない場合に、運転者の覚醒度に応じた温度の風を、運転者の手部に対して送風する運転者手部温冷手段152と、運転者手部温冷手段152により運転者の手部に対して送風を行なうことによる、車室内の温度変化を抑制するように、車室内温冷手段162に、運転者手部温冷手段152による送風に応じた制御を行わせる協調制御手段と、を備えることを特徴とする運転支援装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置および運転支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転中に居眠りすることを防止するため、運転者の覚醒度が低下した場合に、運転者の手部に対して冷風を送風する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−50888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、運転者の手部に対する冷風の送風により、車室内の温度が低下してしまう場合があり、運転者や同乗者に不快感を与えてしまう場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、運転者の覚醒状態を適切に誘導可能な運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導するために、運転者の覚醒度に応じた温度の風を、運転者の手部に対して送風する場合に、運転者の覚醒度に応じた温度の風を、運転者の手部に対して送風することによる、車室内の温度変化を抑制するように、車室内の温度を調整するための送風を、運転者の手部に対する送風に応じて制御することで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車室内の温度を調整するための送風を、運転者の手部に対する送風に応じて制御することで、車室温の温度変化を適切に抑制することができ、車室内の温度変化により、運転者や同乗者に与える不快感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る運転支援装置の車両配置関係を示す図である。
【図2】本実施形態に係る運転支援装置のうち、運転者の覚醒度を検出するための構成を示す構成図である。
【図3】本実施形態に係る運転支援装置のうち、運転者の覚醒状態を誘導するための構成を示す構成図である。
【図4】運転者の覚醒度が低い場合における運転支援方法を説明するための図である。
【図5】運転者の覚醒度が高い場合における運転支援方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る運転支援装置の車両配置関係を示す図である。また、図2は、本実施形態に係る運転支援装置のうち、運転者の覚醒度を検出するための構成を示す構成図である。
【0011】
図2に示すように、本実施形態に係る運転支援装置は、運転者の覚醒度を検出するために、生体信号センサ101と、顔画像撮像カメラ102と、操舵角センサ103と、横Gセンサ104と、走行路撮像カメラ105と、処理装置110とを備える。
【0012】
生体信号センサ101は、運転者の脳波、心拍数、および皮膚電位などの運転者の生体信号の検出を行う。生体信号センサ101により検出された生体信号は、処理装置110に送信される。
【0013】
顔画像撮像カメラ102は、図1に示すように、運転者の顔面部を撮像することができるように、運転者の正面のインストルメントパネル内に設置され、運転者の顔面部を撮像する。顔画像撮像カメラ102により撮像された運転者の顔面部の画像データは、処理装置110に送信される。なお、顔画像撮像カメラ102は、画像処理機能を備える構成としてもよく、この場合、顔画像カメラ102を、時系列に沿って撮像した運転者の顔画像データに基づいて、運転者の眼の開閉状態や運転者の表情を検出し、運転者の眼の開閉判定や運転者の表情変化の判定を行い、これら判定結果を、処理装置110に送信する構成としてもよい。
【0014】
操舵角センサ103は、ステアリングの操舵角の検出を行い、検出したステアリングの操舵角データを、処理装置110に送信する。また、横Gセンサ104は、車両に発生する横方向の加速度の検出を行い、検出した横方向の加速度データを、処理装置110に送信する。
【0015】
走行路撮像カメラ105は、自車両前方の走行路を撮像し、撮像した走行路の画像データを、処理装置110に送信する。なお、走行路撮像カメラ105は、画像処理機能を備える構成としてもよく、この場合、走行路撮像カメラ105を、撮像した自車両前方の走行路の画像データに基づいて、自車両が走行する走行区分帯や前方車両を認識し、自車両と走行区分帯との距離や、自車両と前方車両との距離を算出し、算出結果を、処理装置110に送信する構成としてもよい。
【0016】
処理装置110は、運転者の覚醒度を検出するための処理を行う。具体的には、処理装置110は、生体信号センサ101、顔画像撮像カメラ102、操舵角センサ103、横Gセンサ104、および走行路撮像カメラ105から、運転者の覚醒度を検出するための各種データを取得し、取得した各種データに基づいて、運転者の覚醒度の検出を行う。
【0017】
例えば、処理装置110は、生体信号センサ101から運転者の脳波信号を取得し、運転中の運転者の脳波信号と、運転前の運転者の脳波信号とを比較することで、運転者の覚醒度を検出することができる。また、処理装置110は、顔画像撮像カメラ102から運転者の眼の開閉判定の結果を取得し、所定時間に発生した閉眼数の積算値に基づいて、運転者の覚醒度を算出することができる。さらに、処理装置110は、操舵角センサ103から操舵角データを時系列に沿って取得し、取得した操舵角の時系列データについて周波数分析を行い、操舵角の時系列データの周波数成分のうち特定周波数の積分値に基づいて、運転者の覚醒度を検出することができる。同様に、処理装置110は、横Gセンサ104から横方向の加速度データを時系列に沿って取得し、取得した横方向の加速度の時系列データについて周波数分析を行うことで、運転者の覚醒度を検出することができる。加えて、処理装置110は、走行路撮像カメラ105により撮像された自車両前方の走行路の画像データを時系列に沿って取得し、取得した画像データに基づいて、自車両と走行区分帯との距離を検出し、検出した自車両と走行区分帯との距離から、運転者の覚醒度を検出することができる。このように、本実施形態では、各種センサやカメラから取得したデータに基づいて、運転者の覚醒度を適切に検出することができる。
【0018】
そして、処理装置110は、検出した運転者の覚醒度を、手部温冷用制御装置141に送信する。これにより、手部温冷用制御装置141により、後述するように、運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導するための処理が行われることとなる。
【0019】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る運転支援装置の各構成について説明する。図3は、本実施形態に係る運転支援装置のうち、運転者の覚醒状態を誘導するための各構成を示す構成図である。図3に示すように、本実施形態に係る運転支援装置は、室内気温計121、車外気温計122、外気導入口131、ヒーターコア132、エバポレーター133、手部温冷用制御装置141、車室内温冷用制御装置142、手部温冷用チャンバー151、運転者手部吹き出し口152、車室内温冷用チャンバー161、車室用吹き出し口162、およびフロッガ163を備えている。なお、図3においては、各構成間における信号の流れを破線の矢印で、各構成間における空気の流れを実線の矢印で示している。
【0020】
室内気温計121は、車室内の温度を計測し、計測した車室内の温度データを、手部温冷用制御装置141および車室内温冷用制御装置142に送信する。また、車外気温計122は、車外の気温を計測し、計測した車外の温度データを、手部温冷用制御装置141および車室内温冷用制御装置142に送信する。
【0021】
外気導入口131からは、車外の外気を取り込むことができるようになっており、外気導入口131から取り込まれた外気は、手部温冷用チャンバー151や車室内温冷用チャンバー161に導入される。なお、外気導入口131からの外気の取り込みは、手部温冷用制御装置141または車室内温冷用制御装置142の制御により行われる。
【0022】
ヒーターコア132は、エンジン冷却水を熱源として、手部温冷用チャンバー151および車室内温冷用チャンバー161に送風される空気を加熱する。また、エバポレーター133は、冷凍サイクルを構成し、熱交換により、手部温冷用チャンバー151および車室内温冷用チャンバー161に送風される空気を冷却する。なお、空気を加熱、冷却するための装置は、ヒーターコア132およびエバポレーター133に限定されず、空気を加熱、冷却可能な他の装置を用いてもよい。
【0023】
手部温冷用チャンバー151には、手部温冷用制御装置141の制御により、ヒーターコア132により加熱された空気、エバポレーター133により冷却された空気、および外気導入口131から取り込んだ外気がそれぞれ導入され、手部温冷用制御装置141の制御により、運転者手部吹き出し口152へと送風される。また、本実施形態では、手部温冷用チャンバー151において、手部温冷用制御装置141の制御により、外気導入口131から導入した外気と、ヒーターコア132により加熱された空気とが混合され、所定温度の風が生成される。同様に、手部温冷用チャンバー151においては、手部温冷用制御装置141の制御により、外気導入口131から導入した外気と、エバポレーター133により冷却された空気とが混合され、所定温度の風が生成される。そして、手部温冷用チャンバー151で生成された所定温度の風は、手部温冷用制御装置141の制御により、運転者手部吹き出し口152へと送風される。
【0024】
運転者手部吹き出し口152は、図1に示すように、インストルメントパネルに設置されており、運転者手部吹き出し口152から、手部温冷用チャンバー151で生成された所定温度の風が、運転者の手部に対して送風される。これにより、運転者手部吹き出し口152から送風される所定温度の風が、運転者の手部に当たり、運転者の末梢自律神経を刺激することで、運転者の覚醒状態を誘導することができるようになっている。
【0025】
手部温冷用制御装置141は、運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導するために、処理装置110から運転者の覚醒度を取得し、運転者の覚醒度に応じた温度の風を、運転者の手部に対して送風するように制御を行う。具体的には、手部温冷用制御装置141は、運転者の覚醒度が低い場合には、たとえば、手部温冷用チャンバー151において、皮膚温感感覚にて冷感を刺激する温度域のうち最も低温である10℃の冷風を生成し、生成した冷風を、運転者手部吹き出し口152から、運転者の手部に対して送風する。また反対に、手部温冷用制御装置141は、運転者の覚醒度が高い場合には、たとえば、手部温冷用チャンバー151において、皮膚温熱感覚にて最も温感を刺激する40℃の温風を生成し、生成した温風を、運転者手部吹き出し口152から、運転者の手部に対して送風する。
【0026】
また、車室内温冷用チャンバー161には、車室内温冷用制御装置142の制御により、ヒーターコア132により加熱された空気、エバポレーター133により冷却された空気、および、外気導入口131から取り込まれた外気が導入され、車室内温冷用制御装置142の制御により、車室用吹き出し口162およびデフォガ用吹き出し口163へと送風される。また、本実施形態では、車室内温冷用制御装置142の制御により、車室内温冷用チャンバー161において、外気導入口131から導入した外気と、ヒーターコア132により加熱された空気とが混合され、所定温度の風が生成される。同様に、車室内温冷用チャンバー161においては、車室内温冷用制御装置142の制御により、外気導入口131から導入した外気と、エバポレーター133により冷却された空気とが混合され、所定温度の風が生成される。そして、車室内温冷用チャンバー161で生成された所定温度の風も、車室内温冷用制御装置142の制御により、車室用吹き出し口162およびデフォガ用吹き出し口163へと送風される。
【0027】
車室用吹き出し口162は、図1に示すように、インストルメントパネルに設置されており、車室用吹き出し口162から、車室内温冷用チャンバー161で生成された所定温度の風が、車室内へと送風される。なお、車室用吹き出し口162の数は、特に限定されるものではなく、図1に示すように2つとしてもよいし、それ以外の数としてもよい。
【0028】
車室内温冷用制御装置142は、たとえば、図示しない操作部を介して、運転者により設定された設定温度や、車外気温計122により計測された外気の温度に基づいて、車室内の温度の制御を行う。たとえば、車室内温冷用制御装置142は、車室内の温度が、運転者により設定された設定温度よりも低い場合には、ヒーターコア132で加熱した温風や、ヒーターコア132で加熱した温風と外気とを混合した温風を、車室内温冷用吹き出し口162から車室内に送風する暖房運転を行う。また、車室内温冷用制御装置142は、車室内の温度が、運転者により設定された設定温度よりも高い場合には、エバポレーター133で冷却した冷風や、エバポレーター133で冷却した冷風と外気とを混合した冷風を、車室内温冷用吹き出し口162から、車室内に送風する冷房運転を行う。
【0029】
このように、本実施形態においては、運転者の覚醒状態を誘導するための手部温冷用制御装置141、手部温冷用チャンバー151、および運転者手部吹き出し口152と、車室内の温度を調整するための車室内温冷用制御装置142、車室内温冷用チャンバー161、および車室用吹き出し口162とが独立して構成されており、運転者の覚醒状態を誘導するための所定温度の風と、車室内の温度を調整するための所定温度の風とを、それぞれ独立に生成可能となっている。
【0030】
また、本実施形態において、車室内温冷用制御装置142は、手部温冷用制御装置141から、手部温冷用制御装置141の送風状態を示す信号を受信する。たとえば、運転者の覚醒度が低く、手部温冷用制御装置141により、運転者の覚醒度に応じた冷風が、運転者の手部に対して送風される場合には、車室内温冷用制御装置142は、運転者の手部に対する送風が行われる前に、手部温冷用制御装置141から、運転者の覚醒度に応じた冷風を運転者の手部に対して送風する旨の信号を受信する。また、運転者の覚醒度が高く、手部温冷用制御装置141により、運転者の覚醒度に応じた温風が送風される場合には、車室内温冷用制御装置142は、運転者の手部に対する送風が行われる前に、手部温冷用制御装置141から、運転者の覚醒度に応じた温風を運転者の手部に対して送風する旨の信号を受信する。そして、車室内温冷用制御装置142は、手部温冷用制御装置141から受信した信号に基づいて、運転者の覚醒度に応じた温度の風を運転者の手部に対して送風することによる、車室内の温度変化を予め抑制するように、車室内の空調を制御するフィードフォワード制御を行う。なお、車室内の温度変化を抑制するためのフィードフォワード制御の制御方法については、後述する。
【0031】
さらに、本実施形態に係る運転支援装置は、車両の窓ガラスの曇りを除去するために、デフォガ用吹き出し口163を備える。デフォガ用吹き出し口163からは、車室内温冷用制御装置142の制御により、車室内温冷用チャンバー161で生成された所定温度の風が、車両の窓ガラスに向けて送風され、車両の窓ガラスの曇りを除去できるようになっている。特に、本実施形態では、デフォガ用吹き出し口163から車両の窓ガラスの曇りを除去するための送風を行う際に、車室内の温度変化を抑制するためのフィードフォワード制御を禁止して、車両の窓ガラスの曇りを除去するための送風が優先的に行うことで、車両の窓ガラスの曇りを適切に除去することが可能となっている。
【0032】
次いで、車室内の温度変化を抑制するためのフィードフォワード制御について説明する。ここで、図4は、運転者の覚醒度が低い場合における、車室内の温度変化を抑制するためのフィードフォワード制御を説明するための図である。なお、図4(A)〜(D)に示す場面では、運転者の覚醒度が低く、運転者の居眠りを防止するために、手部温冷用制御装置141により、たとえば、皮膚温感感覚にて冷感を刺激する温度域のうち最も低温である10℃の冷風が、運転者の手部に対して送風される。
【0033】
たとえば、図4(A)に示す例は、車室内温冷用制御装置142により冷房運転が行われている場面であり、かつ、外気の温度が、皮膚温感感覚にて冷感を刺激する温度よりも高いために、手部温冷用制御装置141により、エバポレーター133で冷却した冷風、あるいは、エバポレーター133で冷却した空気と外気導入口131から導入した外気とを混合した冷風が、運転者手部吹き出し口152から、運転者の手部に対して送風される場面である。このように、図4(A)に示す例では、車室内において冷房運転が行われており、さらに、手部温冷用制御装置141により運転者の手部に対する冷風の送風が行われてしまうと、車室内の温度が低くなり、運転者や同乗者に不快感を与えてしまう場合がある。そこで、車室内温冷制御装置142は、手部温冷用制御装置141から、運転者の手部に対して冷風を送風する旨の信号を受信した場合に、運転者の手部に対して冷風を送風することによる、車室内の温度低下を予め抑制するように、車室内の冷房運転における冷房出力を下げる制御を行う。
【0034】
また、図4(B)に示す例は、車室内温冷用制御装置142により冷房運転が行われていない場面であり、かつ、図4(A)に示す例と同様に、外気の温度が、皮膚温感感覚にて冷感を刺激する温度よりも高いために、エバポレーター133で冷却した冷風、または、エバポレーター133で冷却した空気と外気導入口131から導入した外気とを混合した冷風が、運転者手部吹き出し口152から、運転者の手部に対して送風される場面である。このように図4(B)に示す例では、外気の温度が高く、また、車室内において冷房運転が行われていないため、運転者の手部に対する冷風の送風が行われた場合に、直ぐに、運転者や同乗者に不快感を与えてることはないものと考えられるが、手部温冷用制御装置141により運転者の手部に対する冷風の送風が所定時間以上継続して行われた場合に、車室内の温度が低くなり、運転者や同乗者に不快感を与えてしまう場合がある。そこで、図4(B)に示す例において、車室内温冷制御装置142は、手部温冷用制御装置141から、運転者の手部に対して冷風を送風する旨の信号を受信した場合には、運転者の手部に対して冷風を送風することによる、車室内の温度低下を予め抑制するように、運転者の手部に対する冷風の送風が所定時間以上継続して行われる前に、暖房運転を開始するように制御を行う。
【0035】
さらに、図4(C)に示す例は、車室内温冷用制御装置142により暖房運転が行われている場面であり、かつ、外気の温度が、皮膚温感感覚にて冷感を刺激する温度以下であるため、外気導入口131から導入した冷たい外気、または、外気導入口131から導入した冷たい外気とヒーターコア132で加熱した空気とを混合した冷風が、運転者手部吹き出し口152から、運転者の手部に対して送風される場面である。このように、図4(C)に示す例では、車室内において暖房運転が行われているが、手部温冷用制御装置141により運転者の手部に対する冷風の送風が行われると、車室内の温度が低くなり、運転者や同乗者に不快感を与えてしまう場合がある。そこで、図4(C)に示す例において、車室内温冷制御装置142は、手部温冷用制御装置141から、運転者の手部に対して冷風を送風する旨の信号を受信した場合に、運転者の手部に対して冷風を送風することによる、車室内の温度低下を予め抑制するように、車室内の暖房運転における暖房出力を上げるように制御を行う。また、図4(C)に示す例では、エバポレーター133で冷却した空気を用いないで、主に、外気導入口131から導入した冷たい外気を用いて、運転者の手部に対する冷風の送風を行うため、たとえば、省エネルギー化を図ることができるとともに、ヒーターコア132による空気の加熱とエバポレーター133による空気の冷却とが同時に行えないような場合であっても、車室内の温度変化を適切に抑制することができる。
【0036】
さらに、図4(D)に示す例は、外気の気温は低いが、車室内温冷用制御装置142により暖房運転が行われていない場面であり、かつ、図4(C)に示す例と同様に、外気の温度が、皮膚温感感覚にて冷感を刺激する温度以下となっており、手部温冷用制御装置141により、外気導入口131から導入した外気、または、外気導入口131から導入した冷たい外気とヒーターコア132で加熱した空気とを混合した冷風が、運転者手部吹き出し口152から、運転者の手部に対して送風される場面である。このように、図4(D)に示す例では、車室内において暖房運転が行われておらず、手部温冷用制御装置141により運転者の手部に対する冷風の送風が行われると、車室内の温度が低くなり、運転者や同乗者に不快感を与えてしまう場合がある。そこで、図4(D)に示す例において、車室内温冷制御装置142は、手部温冷用制御装置141から、運転者の手部に対して冷風を送風する旨の信号を受信した場合に、運転者の手部に対して冷風を送風することによる、車室内の温度低下を予め抑制するように、暖房運転を開始するように制御を行う。
【0037】
次に、図5を参照して、運転者の覚醒度が高い場合における、車室内の温度変化を抑制するためのフィードフォワード制御について説明する。ここで、図5は、運転者の覚醒度が高い場合における、車室内の温度変化を抑制するためのフィードフォワード制御を説明するための図である。なお、図5(E)〜(H)に示す例では、運転者の覚醒度が高く、運転者のイライラを抑えるために、手部温冷用制御装置141により、たとえば、皮膚温感感覚にて温感を最も刺激する40℃の温風が、運転者の手部に対して送風される。
【0038】
また、図5(E)に示す例は、車室内温冷用制御装置142により冷房運転が行われている場面であり、かつ、外気の温度が、皮膚温感感覚にて最も温感を刺激する温度以上であるために、外気導入口131から導入した温かい外気、または、外気導入口131から導入した外気とエバポレーター133で冷却した空気とが混合された温風が、運転者手部吹き出し口152から、運転者の手部に対して送風される場面である。このように、図5(E)に示す例では、車室内において冷房運転が行われているが、手部温冷用制御装置141により運転者の手部に対する温風の送風が行われると、車室内の温度が高くなり、運転者や同乗者に不快感を与えてしまう場合がある。そこで、車室内温冷制御装置142は、手部温冷用制御装置141から、運転者の手部に対して温風を送風する旨の信号を受信した場合に、運転者の手部に対して温風を送風することによる、車室内の温度上昇を予め抑制するように、車室内の冷房運転における冷房出力を上げるように制御を行う。また、図5(A)に示す例では、ヒーターコア132で加熱した空気を用いずに、主に、外気導入口131から導入した温かい外気を用いて、運転者の手部に対する温風の送風を行うため、たとえば、省エネルギー化を図ることができるとともに、ヒーターコア132による空気の加熱とエバポレーター133による空気の冷却とが同時に行えないような場合であっても、車室内の温度変化を適切に抑制することができる。
【0039】
さらに、図5(F)に示す例では、外気の温度は高いが、車室内温冷用制御装置142により車室内の冷房運転が行われていない場面であり、かつ、図5(E)に示す例と同様に、外気の温度が、皮膚温感感覚にて最も温感を刺激する温度以上であるため、手部温冷用制御装置141により、外気導入口131から導入した温かい外気、または、外気導入口131から導入した外気とエバポレーター133で冷却した空気とを混合した温風が、運転者手部吹き出し口152から、運転者の手部に対して送風される場面である。このように図5(F)に示す例では、車室内において冷房運転は行われていないため、手部温冷用制御装置141により運転者の手部に対する温風の送風が行われた場合に、車室内の温度が高くなり、運転者や同乗者に不快感を与えてしまう場合がある。そこで、図5(F)に示す例において、車室内温冷制御装置142は、手部温冷用制御装置141から、運転者の手部に対して温風を送風する旨の信号を受信した場合には、運転者の手部に対して温風を送風することによる、車室内の温度上昇を予め抑制するように、冷房運転を開始するように制御を行う。
【0040】
また、図5(G)に示す例は、車室内温冷用制御装置142により暖房運転が行われている場面であり、かつ、外気の温度が、皮膚温感感覚にて最も温感を刺激する温度よりも低いため、手部温冷用制御装置141により、ヒーターコア132で加熱した温風、または、ヒーターコア132で加熱した空気と外気導入口131から導入した外気とを混合した温風が、運転者手部吹き出し口152から、運転者の手部に対して送風される場面である。このように、図5(G)に示す例では、車室内において暖房運転が行われているため、さらに、手部温冷用制御装置141により運転者の手部に対する温風の送風が行われると、車室内の温度が高くなり、運転者や同乗者に不快感を与えてしまう場合がある。そこで、図5(G)に示す例において、車室内温冷制御装置142は、手部温冷用制御装置141から、運転者の手部に対して温風を送風する旨の信号を受信した場合に、運転者の手部に対して温風を送風することによる、車室内の温度上昇を予め抑制するように、車室内の暖房運転における暖房出力を下げるように制御を行う。
【0041】
さらに、図5(H)に示す例は、外気の温度は低いが、室内温冷用制御装置142により暖房運転が行われていない場面であり、かつ、図5(G)に示す例と同様に、外気の温度が、皮膚温感感覚にて温感を刺激する温度よりも低く、手部温冷用制御装置141により、ヒーターコア132で加熱した温風、または、ヒーターコア132で加熱した空気と外気導入口131から導入した外気とを混合した温風が、運転者手部吹き出し口152から、運転者の手部に対して送風させる場面である。このように図5(H)に示す例では、車室内において暖房運転が行われていないため、運転者の手部に対する温風の送風が行われた場合に、直ぐに、運転者や同乗者に不快感を与えてることはないものと考えられるが、手部温冷用制御装置141により運転者の手部に対する温風の送風が所定時間以上継続して行われた場合に、車室内の温度が高くなり、運転者や同乗者に不快感を与えてしまう場合がある。そこで、図5(H)に示す例において、車室内温冷制御装置142は、手部温冷用制御装置141から、運転者の手部に対して温風を送風する旨の信号を受信した場合には、運転者の手部に対して温風を送風することによる、車室内の温度上昇を予め抑制するように、運転者の手部に対する温風の送風が所定時間以上継続して行われる前に、冷房運転を開始するように制御を行う。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る運転支援装置は、運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導するために運転者の手部に対して冷風を送風した場合には、運転者の手部に対して冷風を送風することによる、車室内の温度低下を抑制するために、車室内の温度を上げるように車室内の温度の制御を行う。また、運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導するために運転者の手部に対して温風を送風した場合には、運転者の手部に対して温風を送風することによる、車室内の温度上昇を抑制するために、車室内の温度を下げるように車室内の温度の制御を行う。これにより、本実施形態によれば、運転者の覚醒度に応じた温度の風を、運転者の手部に対して送風することによる、車室内の温度変化を有効に抑制することができるため、車室内の温度変化により、運転者や同乗者に与える不快感を低減することができる。特に、本実施形態において、車室内温冷用制御装置142は、運転者の手部に対する送風が行われる前に、手部温冷用制御装置141から、運転者の覚醒度に応じた冷風または温風を送風する旨の信号を受信し、受信した信号に基づいて、車室内の温度変化を予め抑制するように、フィードフォワード制御を行うことで、運転者の覚醒度に応じた温度の風を、運転者の手部に対して送風することによる、車室内の温度変化をより適切に抑制することができる。
【0043】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0044】
たとえば、上述した実施形態では、運転者の覚醒度を検出するために、生体信号センサ101、顔画像撮像カメラ102、操舵角センサ103、横Gセンサ104、および走行路撮像カメラ105を備える構成としていたが、これに限定されるものではなく、例えば、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサや、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキセンサを用いて、運転者の覚醒度を検出する構成としてもよい。また、上述した実施形態においては、生体信号センサ101、顔画像撮像カメラ102、操舵角センサ103、横Gセンサ104、および走行路撮像カメラ105を備える構成を例示したが、これらの装置を全て備える構成に限定されるものではなく、これらの装置のうち、いずれか1つ、または2以上の組み合わせを任意に選択してもよい。
【0045】
なお、上述した実施形態の車室内温冷用制御装置142、車室用吹き出し口162、およびデフォガ用吹き出し口163は、本発明の車室内温冷手段に、処理装置110は、本発明の覚醒度検出手段に、手部温冷用制御装置141および運転者手部吹き出し口152は、本発明の運転者手部温冷手段に、車室内温冷用制御装置142は、本発明の協調制御装置に、それぞれ相当する。
【符号の説明】
【0046】
110…処理装置
121…室内気温計
122…車外気温計
131…外気導入口
132…ヒーターコア
133…エバポレーター
141…手部温冷用制御装置
142…室内用温冷用制御装置
151…手部温冷用チャンバー
152…運転者手部吹き出し口
161…車室内温冷用チャンバー
162…車室用吹き出し口
163…デフォガ用吹き出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の温度を調整するための温調風を、車室内に送風する車室内温冷手段と、
運転者の覚醒度を検出する覚醒度検出手段と、
前記車室内温冷手段とは独立に温度制御が可能となっており、前記運転者の覚醒度が所定範囲内にない場合に、前記運転者の覚醒度に応じた温度の風を、運転者の手部に対して送風する運転者手部温冷手段と、
前記運転者手部温冷手段により運転者の手部に対して送風を行なうことによる、車室内の温度変化を抑制するように、前記車室内温冷手段に、前記運転者手部温冷手段による送風に応じた制御を行わせる協調制御手段と、を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置であって、
前記運転者手部温冷手段は、外気の温度が所定温度以下であり、前記車室内温冷手段が、外気の温度よりも高い温度の風を送風している場合において、前記運転者の覚醒度が所定値以下である場合には、主に外気を用いて、前記運転者の覚醒度に応じた温度の風を送風することを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の運転支援装置であって、
前記運転者手部温冷手段は、外気の温度が所定温度以上であり、前記車室内温冷手段が、外気の温度よりも低い温度の風を送風している場合において、前記運転者の覚醒度が所定値以上である場合には、主に外気を用いて、前記運転者の覚醒度に応じた温度の風を送風することを特徴とする運転支援装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の運転支援装置であって、
前記運転者手部温冷手段は、前記運転者の覚醒度に応じた温度の風を、運転者の手部に対して送風する際には、前記運転者手部温冷手段の送風状態に関する信号を、前記協調制御手段に対して送信し、
前記協調制御手段は、前記運転者手部温冷手段から受信した前記信号に基づいて、前記車室内温冷手段に、前記運転者手部温冷手段により運転者の手部に対して送風を行なうことによる、車室内の温度変化に対応した温度の風を予め送るフィードフォワード制御を行わせることを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の運転支援装置であって、
前記協調制御手段は、前記車室内温冷手段による送風が、車両の窓ガラスの曇りを除去するために行なわれている場合には、前記車室内温冷手段に、前記運転者手部温冷手段による送風に応じた制御を行わせないことを特徴とする運転支援装置。
【請求項6】
車室内の温度を調整するための温調風を車室内に送風するとともに、運転者の覚醒度を検出し、検出した前記運転者の覚醒度に応じた温度の風を、運転者の手部に対して送風する運転支援方法であって、
前記運転者の覚醒度に応じた温度の風を運転者の手部に対して送風することによる、車室内の温度変化を抑制するように、前記車室内への送風を、前記運転者の手部に対する送風に応じて制御することを特徴とする運転支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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