説明

運転支援装置

【課題】 信号機付近における余計な制動制御や警報等を抑制し、もってドライバに与える煩わしさを軽減することができる車両の運転支援装置を提供する。
【解決手段】 運転支援ECU1は、車両用信号機に並設された歩行者信号機に関する歩行者信号状態に基づいて、運転支援の態様を調整する。たとえば、車両用信号機における点灯色が青である場合、車両用信号機に並設された歩行者信号機が青または赤である場合には、警報装置4による警報を行う通常のサービスを行う。また、車両用信号機に並設された歩行者信号機が点滅状態にある場合には、ドライバのドライバ特性に応じて運転支援の態様を調整する。ドライバ特性が安全に停止するドライバであれば、警報装置4による警報を中止する。ドライバ特性が安全に停止しないドライバであれば、警報装置4による警報を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援を行う運転支援装置に係り、特に、車両の進行方向前方に位置する車両用信号の点灯色情報に基づく運転支援を行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転支援を行う運転支援装置として、従来、車両の進行方向前方に位置する車両用信号の点灯色情報に基づいて運転支援を行って、車両の制動制御等を行う車両の安全装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この運転支援装置では、自車両の制動に関する交通安全を確保するための安全装置本体を備え、交通信号機の信号情報を検出するとともに検出した信号情報の内容に応じて異なった態様で安全装置本体を作動させるものである。さらに具体的には、交通信号機の信号情報が黄信号または赤信号であるときには、後方車両へ警報を発したり、自動制動を作動させたり、自車両のドライバに警報を発したりするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−12592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示された車両の安全装置では、車両用の交通信号機の信号情報のみに基づいて車両の制動制御を行ったり、ドライバ等に対する警報を発したりする制御を行っている。このため、たとえばドライバが交通信号機の信号灯色の変化を事前に予測しているような状況下であっても、車両の制動制御を行ったり、ドライバ等に対する警報を発したりすることとなり、ドライバに対して煩わしさを与えることがあるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、信号機付近における余計な制動制御や警報等を抑制し、もってドライバに与える煩わしさを軽減することができる車両の運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明に係る運転支援装置は、車両の進行方向前方に位置する車両用信号の点灯色情報に基づいて車両の運転支援を行う運転支援装置であって、車両用信号機に並設される歩行者信号機に関する歩行者信号情報に基づいて、運転支援の態様を調整することを特徴とするものである。
【0007】
車両のドライバは、車両用信号機に並設される歩行者信号機に関する歩行者信号の点灯色を確認することによって、車両用信号機の変化を予測することが多い。このため、歩行者信号機の点灯色に基づいて、ドライバの車両用信号の点灯色の変化の予測状態をある程度推定することができる。ここで、本発明に係る運転支援装置においては、車両用信号機に並設される歩行者信号機に関する歩行者信号情報に基づいて、運転支援の態様を調整している。このため、ドライバが予測した車両用信号の変化に応じた運転支援を行うことができる。したがって、信号機付近における余計な制動制御や警報等を抑制し、もってドライバに与える煩わしさを軽減することができる。
【0008】
歩行者信号機が点滅状態にある場合には、歩行者信号機が点灯状態にある場合と異なる態様の運転支援を行う態様とすることができる。
【0009】
歩行者信号機が点滅状態にある場合には、ドライバは、車両用信号機の点灯色が青から赤に変化することを予測していることが多い。このため、歩行者信号機が点滅状態にある場合には、歩行者信号機が点灯状態にある場合と異なる態様の運転支援を行うことにより、ドライバが予測した車両用信号の変化に応じた運転支援をさらに好適に行うことができる。
【0010】
また、車両を運転するドライバの運転特性に基づいて、運転支援の態様をさらに調整する態様とすることができる。
【0011】
このように、車両を運転するドライバの運転特性に基づいて、運転支援の態様をさらに調整するにより、ドライバの運転特性も考慮した運転支援を行うことができる。このため、ドライバの運信号機付近における余計な制動制御や警報等をさらに抑制することができ、もってドライバに与える煩わしさを好適に軽減することができる。
【0012】
他方、上記課題を解決した本発明に係る運転支援装置は、車両の進行方向前方に位置する車両用信号の点灯色情報に基づいて車両の運転支援を行う運転支援装置であって、車両用信号機に並設される歩行者信号機をドライバが視認したか否かを検出し、ドライバが歩行者信号を視認したことを検出した場合に、運転支援の態様を調整することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る運転支援装置においては、車両用信号機に並設される歩行者信号機に関する歩行者信号の点灯色を確認することによって、車両用信号機の変化を予測することが多い。このため、歩行者信号機の点灯色に基づいて、ドライバの車両用信号の点灯色の変化の予測状態をある程度推定することができる。ここで、本発明に係る運転支援装置においては、ドライバが歩行者信号を視認したことを検出した場合に、運転支援の態様を調整している。このため、ドライバが予測した車両用信号の変化に応じた運転支援を行うことができる。したがって、信号機付近における余計な制動制御や警報等を抑制し、もってドライバに与える煩わしさを軽減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る運転支援装置によれば、信号機付近における余計な制動制御や警報等を抑制し、もってドライバに与える煩わしさを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る運転支援装置のブロック構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る運転支援装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態における支援実行判断処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態における支援実行判断処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0017】
図1は本発明の第1の実施形態に係る運転支援装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る運転支援装置は、運転支援ECU(Electronic ControlUnit)1を備えており、運転支援ECU1には、アンテナ2、車両前方カメラ3、および警報装置4が接続されている。
【0018】
運転支援ECU1は、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。また、運転支援ECU1は、インフラ情報取得部11、画像処理部12、車両用信号状態取得部13、歩行者信号状態取得部14、ドライバ特性記憶部15、サービス内容決定部16、および支援実行判断部17を備えている。
【0019】
アンテナ2は、車両の外における路側装置20や図示しない基地局などとの間での情報の送受信を行う。路側装置20からは、車両用信号機や歩行者信号機における点灯色に関する車両用信号情報や歩行者用信号情報等が送信される。路側装置20から送信されたこれらの情報は、アンテナ2によって受信され、運転支援ECU1におけるインフラ情報取得部11に送信される。
【0020】
車両前方カメラ3は、車室内におけるフロントウィンドウ上部、たとえばルームミラーの内側に配置されており、車両の前方を撮像する。車両前方カメラ3は、車両の前方を撮像して画像を取得し、取得した画像に関する画像情報を運転支援ECU1における画像処理部12に送信する。
【0021】
警報装置4は、ドライバに対して警告音を発生するスピーカを備えている。警報装置4は、運転支援ECU1における支援実行判断部17から送信された警報情報を受信した場合に、スピーカから所定の警告音をドライバに対して発生する。また、警報装置4は、制動制御装置を備えている。警報装置4は、運転支援ECU1における支援実行判断部17から送信された警報情報を受信した場合に、制動制御装置を作動させて、車両を停止または減速させる制動制御を行う。
【0022】
また。運転支援ECU1におけるインフラ情報取得部11は、アンテナ2を介して受信した路側装置20から送信された信号情報の中から、車両用信号機および歩行者信号機の点灯色等に関する車両用信号情報および歩行者信号情報を取得する。インフラ情報取得部11は、取得した車両用信号情報および歩行者信号情報を車両用信号状態取得部13および歩行者信号状態取得部14にそれぞれ出力する。
【0023】
画像処理部12は、車両前方カメラ3から送信される画像情報に基づく画像の中から、車両用信号機および車両用信号機に並設された歩行者信号を検出する。ここで、車両用信号機および歩行者用信号機が検出された場合には、検出された車両用信号機および歩行者用信号機の点灯色を検出する。
【0024】
画像処理部12は、車両用信号機の検出結果および車両用信号機の点灯色に関する車両用信号画像情報を車両用信号状態取得部13に出力する。また、画像処理部12は、歩行者信号機の検出結果および歩行者信号機の点灯色に関する歩行者信号画像情報を歩行者信号状態取得部14に出力する。
【0025】
車両用信号状態取得部13は、インフラ情報取得部11から出力される車両用信号情報および画像処理部12から出力される車両用信号画像情報に基づいて、車両の前方に位置する車両用信号機の状態を取得する。ここでの車両用信号機の状態とは、車両用信号機の点灯色、車両用信号機の点灯色が変化するまでの時間等をいう。車両用信号状態取得部13は、取得した車両用信号機の状態に関する車両用信号状態情報をサービス内容決定部16に出力する。
【0026】
歩行者信号状態取得部14は、インフラ情報取得部11から出力される歩行者信号情報および画像処理部12から出力される歩行者信号画像情報に基づいて、車両の前方に位置する車両用信号機に並設された歩行者信号機の状態を取得する。ここでの歩行者信号機の状態とは、歩行者信号機の点灯色、点灯態様(点灯か点滅か)、歩行者信号機の点灯色が変化するまでの時間等をいう。歩行者信号状態取得部14は、取得した歩行者信号機の状態に関する歩行者信号状態情報を支援実行判断部17に出力する。
【0027】
ドライバ特性記憶部15は、図示しないドライバ特性判断部で判断されるドライバ特性を記憶する。ドライバ特性判断部は、信号機の手前近傍位置におけるドライバの運転に関する運転特性を取得する。ここでのドライバの運転特性とは、車両用信号機の点灯色が赤色である場合に、ブレーキペダルを踏み始めるタイミングや、車両用信号機の点灯色が黄色である場合に、車両信号機の何メートル手前位置であればブレーキペダルを踏むかなどである。ドライバ特性判断部では、これらのドライバの運転特性を取得してドライバ特性記憶部15に記憶しておく。
【0028】
サービス内容決定部16は、車両用信号状態取得部13から出力される車両用信号状態情報に基づいて、運転支援として行うサービスの内容を決定する。ここで決定するサービスの内容としては、警報装置4におけるスピーカから警告音を発生するサービスや警報装置4における制動制御装置による制動制御が含まれる。サービス内容決定部16は、決定したサービス内容に応じたサービス内容情報を支援実行判断部17に出力する。
【0029】
支援実行判断部17は、サービス内容決定部16から送信されるサービス内容情報に応じたサービスに基づく警報情報を警報装置4に送信する。また、支援実行判断部17では、歩行者信号状態取得部14から出力される歩行者用信号状態情報に基づいて、運転支援の態様を調整し、運転支援として行う警報装置4による警報の実施または不実施を判断する。
【0030】
さらには、支援実行判断部17は、ドライバ特性記憶部15に記憶されるドライバ特性をも加味して警報装置4による警報の実施または不実施を決定する。そして支援実行判断部17は、警報装置4による警報の実施を行うと判断した場合に、警報装置4に対して警報情報を送信し、警報装置4による警報を実施しないと判断した場合には、警報装置4に対する警報情報の送信を中止する。
【0031】
次に、運転支援装置の動作について説明する。図2は運転支援装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【0032】
図2に示すように、運転支援ECU1では、最初に、インフラ情報取得部11において、路側装置20から送信されるインフラ情報を受信して取得する(S1)。ここで取得するインフラ情報には、車両用信号機に関する車両用信号情報および車両用信号に並設される歩行者信号機に関する歩行者信号情報が含まれる。ここで、インフラ情報取得部11は、取得したインフラ情報を車両用信号状態取得部13および歩行者信号状態取得部14に出力する。
【0033】
次に、画像処理部12において、車両前方カメラ3で車両の前方を撮像して得られた画像情報を取得する(S2)。この画像情報には、車両の前方における車両用信号に関する車両用信号機およびこの車両用信号機に並設された歩行者用信号機の状態に関する車両状態信号情報および歩行者用信号状態情報が含まれる。画像処理部12は、取得した画像情報を車両用信号状態取得部13および歩行者信号状態取得部14に出力する。
【0034】
続いて、車両用信号状態取得部13では、インフラ情報に含まれる車両用信号情報および画像情報に含まれる車両用信号情報を抽出して車両用信号情報を取得する(S3)。ここで取得する車両用信号情報には、車両から車両用信号機までの距離、車両用信号機の点灯色、車両用信号機の点灯色が変化するまでの時間が含まれる。車両用信号状態取得部13は、取得した車両用信号情報をサービス内容決定部16に出力する。
【0035】
その後、サービス内容決定部16では、車両用信号情報に基づいて、通常サービス内容を決定する(S4)。ここでの通常サービス内容は、車両用信号機の点灯色、車両用信号の点灯色が変化するまでの時間、および車両の車両用信号機までの距離等によって決定される。
【0036】
たとえば、車両用信号機の点灯色が青である場合であって、車両用信号機の点灯色が変化するまでの時間が長く、現在の車両の車両用信号機までの距離を加味して、車両用信号機が設けられた交差点を車両が十分に通過可能であるときがある。このときには、サービス内容として警報装置4による警報を行わないサービスを決定する。
【0037】
また、車両用信号機の点灯色が青である場合であって、車両用信号機の点灯色が変化するまでの時間が短く、現在の車両の車両用信号機までの距離を加味して、車両用信号機が設けられた交差点を車両が通過不可能であるときがある。このときには、サービス内容として、警報装置4による警報を行うサービスを決定する。
【0038】
さらに、車両信号機の点灯色が黄または赤である場合には、原則的に警報装置4による警報を行うサービスを決定する。サービス内容決定部16は、決定したサービス内容に応じたサービス内容情報を支援実行判断部17に出力する。
【0039】
こうして、通常サービス内容を決定したら、歩行者信号状態取得部14において、インフラ情報に含まれる歩行者信号情報および画像情報に含まれる歩行者信号情報を抽出して歩行者信号情報を取得する(S5)。ここで取得する歩行者信号情報には、歩行者信号機の点灯色、歩行者信号機の点灯状態、歩行者信号機の点灯色が変化するまでの時間が含まれる。歩行者信号状態取得部14は、取得した歩行者信号情報を支援実行判断部17に出力する。
【0040】
続いて、支援実行判断部17において、支援実行判断処理を行う(S6)。支援実行判断処理は、図3に示す手順に沿って行われる。図3は、支援実行判断処理の手順を示すフローチャートである。
【0041】
図3に示すように、支援実行判断処理では、まず、車両用信号機に歩行者信号機が並設されているか否かを判断する(S11)。車両用信号機に歩行者信号機が並設されているか否かの判断は、歩行者信号状態取得部14から歩行者信号情報が出力されたか否かによって行われる。
【0042】
その結果、歩行者信号情報が出力されておらず、車両用信号機に歩行者信号機が並設されていないと判断した場合には、サービス内容決定部16で決定した通常のサービスを実施する(S17)。このため、支援実行判断部17では、サービス内容決定部16から出力されたサービス内容情報に応じた警報信号を警報装置4に送信する。こうして、処理を終了する。
【0043】
一方、車両用信号機に歩行者信号機が並設されていると判断した場合には、歩行者信号機の点灯色が青となる青表示であるか否かを判断する(S12)。歩行者信号機が青表示であるか否かの判断は、歩行者信号状態取得部14から出力された歩行者信号状態情報に基づいて行われる。
【0044】
その結果、歩行者信号機が青表示であると判断した場合には、サービス内容決定部16で決定した通常のサービスを実施する(S17)。このため、支援実行判断部17では、サービス内容決定部16から出力されたサービス内容情報に応じた警報信号を警報装置4に送信する。こうして、処理を終了する。
【0045】
また、歩行者信号機が青表示でなく、青色が点滅する点滅表示または赤表示であると判断した場合には、歩行者信号機が点滅表示となっているか否かを判断する(S13)。歩行者信号機が点滅表示となっているか否かの判断は、歩行者信号状態取得部14から出力された歩行者信号状態情報に基づいて行われる。
【0046】
その結果、歩行者信号機が点滅状態となっておらず、赤表示となっていると判断した場合には、サービス内容決定部16で決定した通常のサービスを実施する(S17)。このため、支援実行判断部17では、サービス内容決定部16から出力されたサービス内容情報に応じた警報信号を警報装置4に送信する。こうして、処理を終了する。
【0047】
一方、歩行者信号機が点滅状態となっていると判断した場合には、ドライバが、車両用信号機が設置された交差点において安全停止を行うドライバであるか否かを判断する(S14)。車両用信号機が設置された交差点において安全停止を行うドライバであるか否かの判断を行うにあたり、支援実行判断部17は、ドライバ特性記憶部15に記憶されたドライバ特性を読み出す。
【0048】
支援実行判断部17では、読み出したドライバ特性に基づいて、車両用信号機が設置された交差点において安全停止を行うドライバであるか否かの判断を行う。安全停止を行うドライバであるか否かの判断は、ドライバ特性記憶部15に記憶されたドライバ特性に基づいて、車両用信号機が設置された交差点において、ドライバが減速を開始する時間と減速を開始する時の車速、さらには減速度等を加味して行う。
【0049】
その結果、ドライバが安全停止を行うドライバであると判断した場合には、警報装置4による警報処理を行うと判断する(S15)。このため、サービス内容決定部16から送信されたサービス内容情報によらず、警報装置4に対して警報情報を送信して、処理を終了する。
【0050】
一方、ドライバが安全停止を行うドライバであると判断した場合には、警報装置4による警報を不実施とすると判断する(S16)。このため、サービス内容決定部16から送信されたサービス内容情報によらず、警報装置4に対して警報情報を送信することなく、そのまま処理を終了する。
【0051】
車両用信号機に対して歩行者信号機が並設されている場合、車両のドライバは、歩行者信号機の点灯色や点灯色の変化によって車両信号機の点灯色の変化を予測することが多い。たとえば、歩行者信号機が点滅状態にある場合には、ドライバは、車両用信号機の点灯色は青であるが、黄から赤に変化することを容易に予測することができる。このような状況下において、車両用信号機の点灯色にのみ基づいて警報装置4による警報を行った場合、たとえばドライバは車両用信号機が黄から赤に変化することを予測しているにもかかわらず、警報装置4による警報が発生することがある。このような警報装置4による警報は、ドライバにとって余計な警報となる。
【0052】
この点、本実施形態に係る運転支援装置においては、歩行者信号機に関する歩行者信号情報に基づいて支援実行判断を行っている。具体的には、歩行者信号機が点滅表示となっている場合には、サービス内容決定部16で決定した通常サービスと異なるサービスを行うようにしている。このため、ドライバが予測した車両用信号の変化に応じた運転支援を行うことができる。したがって、信号機付近における余計な制動制御や警報等を抑制し、もってドライバに与える煩わしさを軽減することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る運転支援装置においては、ドライバが予測した車両用信号の変化に応じた運転支援を行うにあたり、ドライバ特性を考慮するようにしている。具体的に、ドライバ特性が安全停止を行うドライバ特性である場合には、警報装置4による警報処理を中止するとともにドライバ特性が安全停止を行わないドライバ特性である場合には、常に警報装置4による警報処理を行うようにしている。このため、ドライバの運転特性も考慮した運転支援を行うことができる。このため、ドライバの運信号機付近における余計な制動制御や警報等をさらに抑制することができ、もってドライバに与える煩わしさを好適に軽減することができる。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る運転支援装置は、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。また、本実施形態に係る運転支援装置では、上記第1の実施形態と比較して、支援実行判断処理の手順が主に異なる。以下、第1の実施形態との相違点を中心として、本実施形態に係る運転支援装置について説明する。
【0055】
図4は、本実施形態に係る運転支援装置における支援実行判断処理の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る運転支援装置では、図2に示すフローと同様の手順を経て、支援実行判断処理に移行する。
【0056】
図4に示すように、本実施形態に係る運転支援装置においては、支援実行判断処理を行うにあたり、歩行者信号状態取得部14において、歩行者信号機の有無および歩行者信号機における時間表示の有無に関する情報を取得する(S21)。次に、支援実行判断部17において、車両用信号機に歩行者信号機が並設されているか否かを判断する(S22)。この判断は、上記第1の実施形態と同様にして行われる。
【0057】
その結果、車両用信号機に歩行者信号機が並設されていると判断した場合には、歩行者信号機がドライバから視認可能であるか否かを判断する(S23)。歩行者信号機がドライバから視認可能であるか否かの判断は、画像処理部12で取得される画像情報に基づく画像中における歩行者信号機の位置に基づいて行う。車両前方カメラ3は、車両の所定位置に固定されていることから、画像中における任意の位置は、ドライバから視認可能であるか否かを判断することができる。
【0058】
ここで、歩行者信号機がドライバから視認可能でないと判断した場合には、サービス内容決定部16で決定した通常のサービスを実施する(S31)。このため、支援実行判断部17では、サービス内容決定部16から出力されたサービス内容情報に応じた警報信号を警報装置4に送信する。こうして、処理を終了する。
【0059】
一方、歩行者信号機がドライバから視認可能であると判断した場合には、歩行者信号機が残秒表示を行う歩行者信号機であるか否かを判断する(S24)。ここでの残秒表示とは、信号灯の色が赤から青に変わるまでまたは赤から青に変わるまでの秒数を表示するもののほか、この秒数に対応する所定の表示、たとえばメーターバーの表示によるものも含むものとする。
【0060】
その結果、歩行者信号機が残秒表示を行う歩行者信号機でないと判断した場合には、サービス内容決定部16で決定した通常のサービスを実施する(S31)。このため、支援実行判断部17では、サービス内容決定部16から出力されたサービス内容情報に応じた警報信号を警報装置4に送信する。こうして、処理を終了する。
【0061】
また、歩行者信号機が残秒表示を行う歩行者信号機であると判断した場合には、車両用信号機が青表示であるか否かを判断する(S25)。本実施形態においては、車両用信号状態取得部13は、サービス内容決定部16とともに、支援実行判断部17に対しても車両用信号状態情報を出力している。支援実行判断部17では、車両用信号状態取得部13から出力された車両用信号状態情報に基づいて、車両用信号機が青表示であるか否かを判断する。
【0062】
その結果、車両用信号機が青表示でなく、黄表示または赤表示であると判断した場合には、サービス内容決定部16で決定した通常のサービスを実施する(S31)。このため、支援実行判断部17では、サービス内容決定部16から出力されたサービス内容情報に応じた警報信号を警報装置4に送信する。こうして、処理を終了する。
【0063】
さらに、車両用信号機が青表示であると判断した場合には、歩行者信号機の点灯色が青となる青表示であるか否かを判断する(S26)。この判断は、上記第1の実施形態と同様にして行われる。
【0064】
以下、上記第1の実施形態と同様の手順によって、歩行者信号機が点滅表示となっているか否かを判断する(S27)。さらには、ドライバが、車両用信号機が設置された交差点において安全停止を行うドライバであるか否かを判断する(S28)。そして、上記第1の実施形態と同様の手順により、警報処理(S29)または警報装置4による警報を不実施とする処理(S30)を行って処理を終了する。
【0065】
このように、本実施形態に係る運転支援装置においては、上記第1の実施形態と同様、歩行者信号機に関する歩行者信号情報に基づいて支援実行判断を行っている。このため、ドライバが予測した車両用信号の変化に応じた運転支援を行うことができる。したがって、信号機付近における余計な制動制御や警報等を抑制し、もってドライバに与える煩わしさを軽減することができる。また、ドライバが予測した車両用信号の変化に応じた運転支援を行うにあたり、ドライバ特性を考慮するようにしている。このため、ドライバの運転特性も考慮した運転支援を行うことができる。このため、ドライバの運信号機付近における余計な制動制御や警報等をさらに抑制することができ、もってドライバに与える煩わしさを好適に軽減することができる。
【0066】
さらに、本実施形態に係る運転支援装置では、歩行者信号機のドライバからの視認可能状態や歩行者信号機の特性として残秒表示があるか否かによって警報装置4による警報のサービスを行うか否かを判断している。このため、ドライバが予測した車両用信号の変化に応じた運転支援をより好適に行うことができる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、路側装置20から信号情報を受信するようにしているが、転者等に道路交通情報をリアルタイムで提供するVICS(Vehicle Information andCommunication Systems)等の道路交通情報システムによる情報を受信する態様とすることもできる。
【0068】
また、上記実施形態では、支援実行判断にあたり、通常サービスを行わない場合に、ドライバ特性として安全停止を行うドライバであるか否かによって処理を変更していたが、ドライバ特性に係わらずに処理を一定とする態様とすることもできる。この場合、歩行者信号機が点滅表示されたときには、常に警報装置4による警報を行うサービスを中止する態様とすることができる。あるいは、歩行者信号機が点滅表示である場合に、安全停止を行わないドライバである場合には、警報を早めあるいは強めに行う態様とすることもできる。
【0069】
さらに、上記第2の実施形態では、ドライバが視認可能な位置に歩行者信号機があるか否かによって運転支援の態様を調整していた。これに対して、ドライバが歩行者信号機を視認したか否かを検出し、ドライバが歩行者信号機を視認したことを検出した場合に、サービスを中止する態様とすることができる。このとき、ドライバが歩行者信号機を視認していない場合には、ドライバが視認可能な位置に歩行者信号機がある場合でも、通常のサービスを行う態様とすることもできる。ドライバが歩行者信号機を視認したか否かの検出を行う際には、たとえばドライバの顔向きを検出し、ドライバが歩行者信号機の方向を向いている場合に、歩行者信号機を検出したと判断することができる。
【0070】
また、ドライバが視認可能な位置に歩行者信号機があるか否かの判断を、車両前方カメラ3で撮像した画面に基づいて行っていた。これに対して、車両が走行する道路の道路形状やドライバの目線位置、さらには前方交通状況も加味することができる。道路形状としては、路側装置20やVICSによって送信される道路形状情報を用いた判断を行うこともできるし、別途ナビゲーション装置を設けて、ナビゲーション装置から道路形状の情報を得ることができる。
【0071】
また、ドライバの目線位置については、シートポジションの前後位置や高さ、さらにはドライバの身長(座高)を検出して、これらの情報を用いて算出することができる。さらに、前方情報としては、車両前方カメラ3に撮像された画面に大型トラックが映っている場合などは、歩行者信号機が視認し難いと判断できるし、その他別途車車間通信やミリ波レーダ等を用いて前方車両までの距離を検出し、この距離を利用しても良い。さらには、前方を走行する車両の車高を加味して歩行者信号機が視認可能であるか否かを判断することもできる。
【0072】
さらに、上記実施形態では、車両用信号機の表示状態等によって運転支援の態様の調整を行うようにしているが、たとえば車両用信号機までの距離や車両用信号機に到達する到達予測時間を加味して運転支援の態様の調整を行うこともできる。たとえば、車両用信号機に並設された歩行者信号機が点滅状態にある場合でも、到達予測時間が所定のしきい値を超える長時間である場合には、通常のサービスを行う態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0073】
1…運転支援ECU、2…アンテナ、3…車両前方カメラ、4…警報装置、11…インフラ情報取得部、12…画像処理部、13…車両用信号状態取得部、14…歩行者信号状態取得部、15…ドライバ特性記憶部、16…サービス内容決定部、17…支援実行判断部、20…路側装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向前方に位置する車両用信号の点灯色情報に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援装置であって、
前記車両用信号機に並設される歩行者信号機に関する歩行者信号情報に基づいて、前記運転支援の態様を調整することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記歩行者信号機が点滅状態にある場合には、前記歩行者信号機が点灯状態にある場合と異なる態様の運転支援を行う請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記車両を運転するドライバの運転特性に基づいて、前記運転支援の態様をさらに調整する請求項1または請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
車両の進行方向前方に位置する車両用信号の点灯色情報に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援装置であって、
前記車両用信号機に並設される歩行者信号機を前記ドライバが視認したか否かを検出し、
前記ドライバが前記歩行者信号を視認したことを検出した場合に、前記運転支援の態様を調整することを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−191517(P2010−191517A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32652(P2009−32652)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】