説明

運転評価提供装置

【課題】運転者に煩わしさを与えずに、運転操作の評価をわかりやすく提供することができる装置を提供すること。
【解決手段】車両の運転者の加速操作及びその後の減速操作を評価する運転操作評価部14と、所定数の加速操作と所定数の減速操作からなる加減速操作が行われる毎に、加速操作及び減速操作の評価を一体として運転者に提供する運転評価提供部16と、を備える運転評価提供装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者の運転操作を評価し、提供する運転評価提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転を評価する装置であって、実走行燃費データを測定し、測定された実燃費走行データと効率の良い試験走行燃費データとを比較して、走行燃費の低下の程度から実走行での運転操作を評価し、その情報を表示する装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−210487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行においては、加速操作による加速走行とその後の減速操作による減速走行を繰り返し行うことにより、燃費が向上することが知られている。しかし、上述した装置のように、個々の運転操作ごとに情報を表示すると、運転者に煩わしさを与えてしまい、燃費の良い運転を阻害してしまうという問題があった。また、このような装置において、走行終了時にまとめて運転操作の評価情報を表示すると、どの運転操作の評価なのか運転者にわかりにくくなるという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、運転者に煩わしさを与えずに、運転操作の評価をわかりやすく提供することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の運転評価提供装置は、車両の運転者の加速操作及びその後の減速操作を評価する運転操作評価手段と、所定数の加速操作と所定数の減速操作からなる加減速操作が行われる毎に、加速操作及び減速操作の評価を一体として運転者に提供する運転評価提供手段を有する。
【0007】
上記運転評価提供装置においては、所定数の加速操作と所定数の減速操作からなる加減速操作が行われる毎に、加速操作及び減速操作の評価を一体として運転者に提供する。車両の走行においては上述のように、加速操作による加速走行とその後の減速操作による減速走行を行うことにより、燃費が向上するが、個々の運転操作ごとに評価を提供することと比べ、提供頻度を抑制して運転評価を提供することによって、煩わしさを運転者に与えることがなくなる。このため、運転者は提供された評価に基づいて、燃費の良い運転操作を行うことができる。また、所定数の加速操作と所定数の減速操作からなる加減速操作が行われる毎に、評価を運転者に提供することは、走行終了時にまとめて運転操作の評価を提供する場合よりも、運転者にとって評価がわかりやすくなり、燃費の良い運転に係る学習効果が向上しやすくなる。
【0008】
本発明の運転評価提供装置において、運転操作評価手段は、加速操作及び減速操作と燃費の最適な運転操作とを比較し、運転評価提供手段は上記比較を提供することが好ましい。加速操作及び減速操作と燃費の最適な運転操作とを比較し、その比較を運転者に提供することによって、運転者の運転操作の良い点、悪い点をよりわかりやすく提供することが可能となる。この結果、運転者は提供された比較(評価)に基づいて、より燃費の良い運転操作を行うことができる。
【0009】
また、本発明の運転評価提供装置において、車両の走行状態に基づいて、燃費抑制に有効な減速走行手段の情報を提供する減速走行情報提供手段を備えることが好ましい。車両の走行状態に基づいて、燃費抑制に有効な減速走行手段の情報を提供することによって、運転者はより燃費の良い運転操作を行うことが可能となる。
【0010】
さらに、本発明の運転評価提供装置においては、上記所定数は1回であることが好ましい。加速操作と続けて行われる減速操作の1セットの評価を一体として運転者に提供することにより、複数回の加減速操作の評価を提供される場合よりも、運転者は運転操作の評価をよりわかりやすく認識することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運転者に煩わしさを与えず、運転操作の評価をわかりやすく提供することができる装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る運転評価提供装置の構成概要図である。
【図2】本運転評価提供装置における提供内容及び提供タイミングの一例を示す説明図である。
【図3】運転評価提供の手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】加速中の燃費F(a,V)の導出を示す説明図である。
【図5】加速操作と減速操作における燃費の導出を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る運転評価提供装置1の構成を示す概略構成図である。本運転評価提供装置1は、運転者の運転操作を評価し、運転者に提供する機能を有する。運転評価提供装置1は、アクセルセンサ2、ブレーキセンサ3、車速センサ4、加速度センサ5、ナビゲーションシステム6、ECU(Electronic Control Unit)10、運転評価提供部16及び減速走行情報提供部17を有している。
【0015】
アクセルセンサ2は、運転者によるアクセルペダルの操作量を判定するセンサである。アクセルセンサ2では、その検出したアクセル操作量をアクセル信号としてECU10に送信する。また、ブレーキセンサ3は、運転者によるブレーキペダルの操作量を判定するセンサである。ブレーキセンサ3では、その検出したブレーキ操作量をブレーキ信号としてECU10に送信する。
【0016】
車速センサ4は、車両の車速を検出するものであり、例えば車両の4つの車輪にそれぞれ設けられ、車輪の回転速度から検出した車速を車速信号としてECU10に送信する。また、加速度センサ5は、車両の加速度を検出するものであり、検出した加速度を加速度信号としてECU10に送信する。
【0017】
ナビゲーションシステム6は、車両の現在位置(自車位置)や走行方向の検出及び目的地までの経路案内などを行うシステムである。ナビゲーションシステム6は、地図データベースを備え、地図情報や交差点情報などが格納されており、車両の地図上における走行位置や走行方向を検出し、カーナビ信号としてECU10へ送信する。
【0018】
ECU10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート等を備え、CPUがROMに記憶されている制御プログラムに従い、RAMに対するデータの読み書きを行いながら作動するものであり、上記アクセルセンサ2、ブレーキセンサ3、車速センサ4、加速度センサ5、ナビゲーションシステム6、運転評価提供部16と電気的に接続され、車両状態履歴取得部11、車両走行軌跡推定部12、減速走行手段選択部13及び運転操作評価部14を有している。
【0019】
車両状態履歴取得部11は、車両状態を各センサから取得し、その履歴を保存する機能を有する。車両状態とは、アクセルペダルやブレーキペダルなどの操作量、エンジンやトランスミッションの回転数、車速やトルクの状態値などを意味する。
【0020】
車両走行軌跡推定部12は、車両の走行軌跡を推定する機能を有する。走行軌跡とは、例えば加速走行から減速走行までの所定の走行区間(以下、「山」という場合がある)における車両の走行の軌跡である。走行軌跡は、車両状態履歴取得部11で取得した車両状態や、ナビゲーションシステム6で検出された車両の走行位置や走行方向、車両の減速走行手段などを加味することによって推定できる。減速走行手段とは、例えばフリーラン走行(惰性走行)やニュートラル走行、エンジンフリクション低減走行などである。
【0021】
減速走行手段選択部13は、車両が減速して走行する区間における走行手段を選択する機能を有する。減速走行手段選択部13は、車両にとって最も燃費が良くなる減速走行手段を選択することが好ましい。減速走行手段は、例えば車両状態履歴取得部11で取得された履歴から、車両が直前に走行した山における減速走行終了時の車速を取得し、減速終了時の車両状態と車両特性から燃費の良い減速走行手段を選択する。車両特性とは、車両におけるエンジンやトランスミッションなどの諸元値、燃料マップやトルクマップ、損失トルクなどの特性であり、表1に示す各減速走行手段の特性も含む。
【0022】
【表1】

【0023】
表1に示すように、フリーラン走行はエンジンブレーキがゼロであるため、減速で走行できる距離が長くなる。また、エンジン停止状態のため燃料消費もゼロとなり、減速中の燃料消費にも優れる。しかし、再加速時にはエンジンがゼロ回転から加速開始しなければならないため、再加速時の燃料消費は悪くなる。エンジンフリクション低減走行は、エンジンブレーキが低減されるため減速で走行できる距離がある程度長くなる。また、燃料カットのため燃料消費もゼロとなり、減速中の燃料消費にも優れる。さらに、エンジン連れまわし状態(1500〜3000rpm)から再加速を開始することから、再加速時の燃料消費も良くなる。一方、ニュートラル走行は、エンジンブレーキがゼロであるため減速で走行できる距離は長くなる。しかし、アイドリング相当量の燃料を消費するため、減速中の燃料消費は良くならず、アイドリング相当から再加速を開始しなければならないため、再加速時の燃料消費も良くならない。
【0024】
運転操作評価部14は、運転者の運転操作(加速操作及びその後に行われる減速操作)を評価する機能を有する。運転者の運転操作を評価することは、自己の運転の良い部分や、悪い部分を把握することができるため、燃費の良い運転のために有効である。加速操作の評価は、例えばアクセルセンサ2からのアクセルペダル操作量に関する情報、車速センサ4、加速度センサ5からの車速や加速度などの情報を用いて判定される。また、減速操作の評価も、例えばブレーキセンサ3からのブレーキペダル操作量に関する情報、車速センサ4からの車速などの情報を用いて判定される。
【0025】
運転者の加速操作及び減速操作は個々に評価してもよいが、所定数の加速操作と所定数の減速操作からなる加減速操作を一体的に評価することが好ましい。所定数の操作を一体的に評価することによって、後述する運転評価提供部16における一体的提供が行いやすくなる。特に、1回の加速操作及び1回の減速操作、つまり1セットの加速操作及び減速操作を1つとして評価することは、ひと山における走行の燃費などを評価しやすいこと、より好ましい。また、1セットの加速操作及び減速操作を評価することで、加速操作及び減速操作からなる波状走行の効果を認識することができ、運転者は率先して波状走行を行うようになるなど、低燃費走行を促進する効果も得られる。
【0026】
運転操作評価部14は、加速操作及び減速操作と燃費の最適な運転操作とを比較することが好ましい。加速操作及び減速操作と、同一走行区間における燃費の最適な運転操作とを比較することによって、自己の運転の良い部分や悪い分をわかりやすく把握することが可能となる。
【0027】
ここで、燃費の最適な運転操作とは、運転者が加速操作による走行及び減速操作による減速走行を行う走行区間における燃費が最も良い理想的な運転操作であり、燃費最適な加速操作や加速度、燃費最適な減速操作や減速度である。燃費最適な加速操作としては、例えば短時間で一気に加速する加速操作があり、燃費最適な減速操作としてはフリーラン走行で燃料を消費せずに減速走行する減速操作などが挙げられる。燃費の最適な運転操作は、例えば、過去の走行した区間における燃費の最適な運転操作を車両状態として車両状態履歴取得部11に記憶していてもよく、運転操作評価部14が評価を行うために燃費の最適な走行パターンとして保存していてもよく、燃費最適な加速度や車両特性から、燃費最適な加速度を実現できる運転操作として算出してもよい。
【0028】
運転評価提供部16は、運転操作評価部14によりなされた運転操作の評価を運転者に提供する機能を有する。ここで、運転操作の評価は、運転操作評価部14によりなされた加速操作及び減速操作に係る評価であり、運転評価提供部16は運転者に一体として提供する。加速操作や減速操作の個々の操作ごとに評価を運転者に提供すると、運転者は運転に集中することができず、評価が煩わしくなってしまい、その結果、燃費の良い運転が阻害されてしまう。しかし、本実施形態の運転評価提供装置1によれば、所定数の加速操作と所定数の減速操作からなる加減速操作が行われる毎に、加速操作及び減速操作に係る評価を運転者に一体として提供するため、運転者に煩わしさを生じさせなくなる。また、走行終了時にまとめて運転操作の評価を提供する場合よりも、運転者は評価をわかりやすく認識できるため、評価に基づいた燃費の良い運転を行うことが可能となる。ここで、所定数とは運転者の運転能力や記憶力、走行距離などによって異なるが、例えば1〜10回であり、好ましくは1〜5回であり、より好ましくは1〜3回である。特に、上記所定数が1回である場合、つまり1回の加速操作及び1回の減速操作の1セットの評価を一体として運転者に提供することは、複数回の加減速操作の評価の提供よりも、運転者にとって評価をよりわかりやすく認識することができることから、特に好ましい。なお、本発明において提供とは、提示、教示などの概念も包含している。
【0029】
運転者への評価の提供は、運転者が評価を認識できる提供方法であれば特に制限はなく、例えば、車内モニターやメータ等への表示でもよく、ブザーなどの警報音で行ってもよい。また、燃費の最適な運転操作の提供は、例えば、アクセルペダル反力で教示してもよく、バイワイヤ・アクチュエータ(アクセルバイワイヤ、ブレーキバイワイヤ)などにより、アクセル特性やブレーキ特性を制御する運転支援として提供してもよい。
【0030】
また、運転評価提供部16は、上述の運転操作評価部14における加速操作及び減速操作と燃費の最適な運転操作との比較を運転者に提供することが好ましい。加速操作及び減速操作と、同走行区間における燃費の最適な運転操作との比較を運転者に提供することによって、運転者は自らの運転操作の良い点や悪い点をより理解しやすくなる。
【0031】
さらに、運転評価提供部16は、燃費の最適な運転操作を運転者に提供してもよく、運転操作の評価又は燃費の最適な運転操作とともに、燃費情報を提供してもよい。走行した区間における燃費の情報を提供されることによって、自己の運転操作が良かったか否かを学習することができる。また、次に走行する区間における燃費(理想燃費)の情報を提供されることによって、運転者は理想燃費を目標に燃費の良い運転に取り組むことが可能となる。
【0032】
減速走行情報提供部17は、車両の走行状態に基づいて、燃費抑制に有効な減速走行手段の情報を提供する機能を有する。具体的には、減速走行手段選択部13において選択された減速走行手段に関する情報を、減速を開始する前に運転者に提供する。これにより、運転者は燃費の良い減速操作を行うことが可能となる。
【0033】
図2は、本運転評価提供装置における提供内容及び提供タイミングの一例を示す説明図である。車両は加速走行及び減速走行により、まず所定の区間(N−1番目の山)を走行し、次にN番目の山を走行し、その次にN+1番目の山を走行する。
【0034】
図2の(a)において、車両がN−1番目の山を走行し終えたA地点では、N−1番目の山における運転操作と燃費情報、N−1番目の山における燃費の最適な運転操作と最適な燃費情報が運転者に比較して提供される。また、これから走行するN番目の山における燃費の最適な加速度と運転操作も運転者に対して提供される。車両の運転者は、提供された燃費の最適な加速度と運転操作に基づき、N番目の山において加速走行を開始する。
【0035】
また、図2の(b)において、N番目の山における加速走行が終了するB地点において、減速開始のタイミングと燃費最適な減速走行手段が運転者に提供される。車両の運転者は、提供された減速開始のタイミングと燃費最適な減速走行手段に基づき、N番目の山において減速走行を開始する。
【0036】
図3は、運転評価提供の手順の一例を示すフローチャートである。まずS1においては、運転者による運転評価提供装置のシステム起動要求があるか否かをスイッチ情報から判定する。スイッチとは、運転評価提供装置のシステム起動要求があるか否かを判断できるものであればよく、例えば、運転評価提供装置を起動させるためのボタンや、車両の運転を開始する際のイグニッションスイッチなどであってもよい。
【0037】
S1においてシステム起動要求があった場合には、S3において、各センサ情報から車両状態をモニタリングし、加速の開始が検出されるか否かを判定する。N−1番目の山における加速の開始を検出した場合には、N−1番目の山における車両の燃費計測を開始する(S5)。
【0038】
次にS7においては、車両の加速開始車速を確定し、減速終了車速を設定する。加速開始車速は、S3で検出した時刻における車速とする。また、減速走行終了時の車速から加速を開始すると推定し、減速終了車速は加速開始車速と同じ速度に設定する。
【0039】
S7で設定した減速終了車速を基に、S9において減速走行手段を決定する。N−1番目の山における減速走行手段を決定するには、下記式(1)を用いて車両の燃費を推定する。
【数1】

【0040】
上記式(1)中、aは加速度、Vは車速、F(a,V)は加速中の燃費、G(V)は減速度、H(V)は燃料噴射補正を示す。上記式(1)で推定されたひと山(N−1番目の山)の燃費から、N−1番目の山における燃費最適な減速走行手段を決定する。
【0041】
S11においては、減速走行時の走行軌跡を算出する。N−1番目の山における減速走行時の走行軌跡は、S9において決定した減速走行手段に基づいて算出する。
【0042】
次にS13においては、燃費最適な加速度を算出する。N−1番目の山における燃費最適な加速度は、S9において燃費を推定する際に燃費最適となった加速度を採用する。
【0043】
S15においては、加速走行時の走行軌跡を算出する。N−1番目の山における加速走行時の走行軌跡は、現在の車両状態とS13における加速度をもとに算出する。
【0044】
次にS17においては、加速終了車速を算出する。N−1番目の山における加速終了車速は、S11において算出した減速走行時の走行軌跡と、S15において算出した加速走行時の走行軌跡とが交わる箇所を加速終了地点と推定し、加速終了地点における車速を加速終了車速とする。
【0045】
S19においては、燃費最適な加速度と運転操作を提供する。N−1番目の山における燃費最適な加速度は、S13において算出した燃費最適な加速度であり、燃費最適な加速度と車両特性から、燃費最適な加速度を実現できる運転操作を算出し、提供する。
【0046】
次にS21においては、車両が加速終了車速に到達したか否かを判定する。車両が加速終了車速に到達したか否かは、各センサ情報から車両状態をモニタリングし、S17において算出した加速終了車速に到達したかどうかを判定する。
【0047】
S21において、車両がN−1番目の山における加速終了車速に到達したと判定した場合には、その瞬間に減速開始のタイミングを提供し、それと同時に、S9で決定したN−1番目の山における減速走行手段を提供する(S23)。
【0048】
S25においては、車両において加速が開始されるか否かを判定する。加速の開始は、各センサ情報から車両状態をモニタリングすることにより検出する。
【0049】
S25において加速の開始を検出した場合には、加速の開始はその直前の走行の山(N−1番目の山)における走行の終了と判定し、N−1番目の山の燃費計測を終了する(S27)。
【0050】
S29においては、直近の山(N−1番目の山)の運転操作と実燃費の情報、次に走行するN番目の山にける燃費最適な運転操作と最適燃費の情報を運転者に教示する。
【0051】
S31において、スイッチ情報から運転者による運転操作教示装置のシステム終了要求があるか否かを判定する。終了要求がある場合には、終了する。
【0052】
以上の運転評価提供のフローにおける、車両の燃費の推定(S9)について図4及び図5を用いて更に説明する。図4は、加速中の燃費F(a,V)の導出を示す説明図である。図4に示すように、Fは車速と出力(パワー)の関係を示すグラフであり、Fはパワーと燃料噴射量の関係を示す図である。Fに示す車速と出力(パワー)の関係と、Fに示すパワーと燃料噴射量の関係から、車速と燃料噴射量の関係(F)を導くことができる。そして、このFにおける車速と燃料噴射量の関係を示す曲線から、加速中の燃費を導出することができる。
【0053】
また、図5は加速操作と減速操作における燃費の導出を示す説明図である。上記式(1)で求められるひと山の燃費において、減速度G(V)は、減速走行手段(フリーラン走行、ニュートラル走行、エンジンフリクション低減走行など)により異なる。
【0054】
しかし、所定の走行区間における燃費は、走行距離を噴射燃料の量で除すことにより求めることができることから、上記(1)で求めるひと山の燃費は、加速走行における燃費(加速燃費)に減速走行で伸びた距離分を補正することで算出できる。
【0055】
例えば、減速走行手段としてエンジンフリクション低減走行を選択した場合、図5に示すように、「加速+フューエルカット減速距離」は「加速距離」の(a+G(V))/G(V)倍となることから、ひと山の燃費は加速燃費の(a+G(V))/G(V)倍となる。なお、フューエルカット状態(エンジンフリクション低減走行)で減速走行する場合は、燃料噴射補正をする必要がないため、燃料噴射補正H(V)は1となる。また、フリーラン走行状態では、再加速する度に燃料を噴射する必要があるため、当該燃料分の補正を行う必要がある。さらに、ニュートラル走行状態においても、減速中はアイドリング相当分の燃料を噴射する必要があるため、当該燃料分の補正を行う必要がある。
【0056】
以上、本発明の運転評価提供装置1によれば、車両の運転者の加速操作及びその後の減速操作を評価する運転操作評価部14と、所定数の加速操作と所定数の減速操作からなる加減速操作が行われる毎に、加速操作及び減速操作の評価を一体として運転者に提供する運転評価提供部16と、を備える。これにより、個々の運転操作ごとに評価を提供する場合と比べ、煩わしさを運転者に与えることがなくなり、わかりやすく評価を提供できる。このため、運転者は燃費の良い運転操作を行うことが可能となる。
【0057】
なお、以上の説明は、本発明の実施形態についての説明であり、この発明の装置を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。
【0058】
例えば、上記実施形態においては運転評価提供装置1がECU10内に、車両状態履歴取得部11、車両走行軌跡推定部12、減速走行手段選択部13及び運転操作評価部14を有しているが、各部がそれぞれサブシステムを構成していてもよい。
【0059】
また、フリーラン走行(惰性走行)やニュートラル走行、エンジンフリクション低減走行などの減速走行手段は、車両の動力形態(エンジン、ハイブリッド、電気など)に応じて選択すればよい。
【符号の説明】
【0060】
1・・・運転評価提供装置、2・・・アクセルセンサ、3・・・ブレーキセンサ、4・・・車速センサ、5・・・加速度センサ、6・・・ナビゲーションシステム、10・・・ECU、11・・・車両状態履歴取得部、12・・・車両走行軌跡推定部、13・・・減速走行手段選択部、14・・・運転操作評価部(運転操作評価手段)、16・・・運転評価提供部(運転評価提供手段)、17・・・減速走行情報提供部(減速走行情報提供手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の加速操作及びその後の減速操作を評価する運転操作評価手段と、
所定数の加速操作と所定数の減速操作からなる加減速操作が行われる毎に、前記加速操作及び減速操作の評価を一体として前記運転者に提供する運転評価提供手段と、
を備える運転評価提供装置。
【請求項2】
前記運転操作評価手段は、前記加速操作及び減速操作と燃費の最適な運転操作とを比較し、
前記運転評価提供手段は前記比較を提供する、請求項1記載の運転評価提供装置。
【請求項3】
前記車両の走行状態に基づいて、燃費抑制に有効な減速走行手段の情報を提供する減速走行情報提供手段を備える、請求項1又は2記載の運転評価提供装置。
【請求項4】
前記所定数は1回である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の運転評価提供装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−164277(P2012−164277A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26115(P2011−26115)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】