説明

過カルボン酸の界面活性剤含有分散体中での安定化方法

本発明は、室温で固体である粒状の過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸(例えば PAP)の、好ましくは水性の界面活性剤含有分散体中での安定化方法に関する。本発明によれば、分散状態において、分散体中の過カルボン酸の分解を防ぐか、少なくとも減ずるか、又は遅らせる、或いは分散体中の過カルボン酸の溶解性を減少するような方法で、特に、ハロゲン化物イオン含有量を最小にし、pH 値を 7 以下に低下させ、フリー又は活性な界面活性剤の含有量を最小にし、非イオン性界面活性剤含有量を最小にし、錯化剤を添加し、カタラーゼを添加し、又は過カルボン酸の溶解性が低い溶媒を添加することなどによって、分散体を安定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温で固体である過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の、界面活性剤含有分散体、好ましくは水性分散体中での安定化方法、及び該方法により得られた界面活性剤含有分散体、並びに工業的利用における、洗剤及び洗浄剤、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、並びに脱色剤配合物又は漂白剤配合物での該分散体の使用に関する。更に、本発明は、安定化された過カルボン酸の界面活性剤含有分散体を含む、特に工業的利用における、洗剤及び洗浄剤、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、脱色剤配合物又は漂白剤配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
より優れより速い溶解性及び実用性といったプラスの製品特性のため流行しつつある液体、特に水性の洗剤及び洗浄剤において、漂白(剤)成分の配合物又は混合物への添加は、多くの理由から問題がある。分解反応又は加水分解及び洗剤配合物の他成分(例えば酵素又は界面活性剤)に対する不適合性のため、添加された漂白剤は、しばしば、貯蔵中既に又は製品使用中でさえ、その活性を失う。これにより生じる不利な結果は、洗剤配合物の洗浄能力、特に漂白能力が著しく低下し、特に、漂白可能な汚れを満足に除去できないことである。
【0003】
固体洗剤配合物に通常使用される漂白剤、例えば過ホウ酸塩又は過炭酸塩は、湿度に敏感であり、その結果として、液体、特に水性洗剤又は洗浄剤中では、活性酸素を失うので、数日以内に漂白能力を失う。
【0004】
他方、過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸(最も重要な代表例はフタルイミド過カプロン酸(PAP)である)は、より有効で加水分解に対して敏感ではなく、洗剤及び洗浄剤用の漂白剤として従来技術で既知である。それにも関わらず、その貯蔵安定性は、結果的に活性を失うことなく対応する洗剤及び洗浄剤の長期使用を保証するには、明らかに不十分である。故に、過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の、液体の洗剤及び洗浄剤への添加は、特に問題がある。
【0005】
イミド過カルボン酸(特に PAP)の分解の結果として、洗剤配合物及び洗浄剤配合物の変更から生じる欠点のため、従来技術において、該配合物中でのイミド過カルボン酸の安定性又は貯蔵安定性を向上させるような、イミド過カルボン酸(例えば PAP)含有洗剤及び洗浄剤を改良するための試みが行われてきた。
【0006】
従って、従来技術の目的は、このような過カルボン酸が水性分散体と如何なる接触もしないように、過カルボン酸上に保護殻層を設けることによって安定させることであった。しかしながら、従来技術で既知の層状殻系は、しばしば分散媒体に十分適合せず、必要な安定性を常には提供しない。例えば、ある種の殻物質は、時間と共に分散媒体に溶解し得る。他の殻層状物質、特に高融点を有するワックス(EP 0 510 761 B1 及び US-A-5 230 822 参照)は、包囲された又はカプセル化された過カルボン酸を比較的高温で、ほとんどの場合は遅延なく放出するのみで、更に不溶性残渣を残すという欠点を有する。
【0007】
他方、従来技術において、過カルボン酸を安定させるように、過カルボン酸用の分散媒体を調整する試みが行われてきた。しかしながら、従来技術で既知の方法は、界面活性剤の存在下で過カルボン酸を適切に安定させるのに不十分である。
【0008】
例えば、EP 0 334 405 B1 は、固体粒状の、基本的に不水溶性の有機過カルボン酸を含む水性漂白剤配合物を記載しており、1〜30 重量%の二級 C8〜22 アルカンスルホネート及び 0.5〜10 重量%の脂肪酸が、水性液体からの相分離に対して過カルボン酸を安定させるために添加される。添加剤が極めて特有な化合物であるため、このような漂白剤配合物は一般に利用できない。更に、得られる安定効果は、通常不十分である。
【0009】
同様に、EP 0 334 404 B1 では、水性液体からの相分離に対して過カルボン酸を安定させることが試みられた。しかしながら、過カルボン酸を分解に対して十分に安定化することはできなかった。
【0010】
概して、水性分散体中での過カルボン酸の十分な安定化について、従来技術では、有効な方法は開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、この背景に対して、本発明の目的は、高い貯蔵安定性を有する、過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、例えばフタルイミド過カプロン酸(PAP)の界面活性剤含有分散体を提供し、その適当な製造方法を明らかにすることである。
【0012】
更なる目的は、従来品と比較して改善された特性を有する、貯蔵安定な、過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、例えばフタルイミド過カプロン酸(PAP)の界面活性剤含有分散体、及びその適当な製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の更に別の目的は、固体粒状過カルボン酸を含み、過カルボン酸の良好な安定化、従って向上した貯蔵安定性をもたらす、界面活性剤含有分散体の提供である。特に、本発明では、とりわけ工業的利用などにおける、洗剤又は洗浄剤、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、及び脱色剤配合物又は漂白剤配合物として使用でき、とりわけ工業的利用などにおける、洗剤又は洗浄剤、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、及び脱色剤配合物又は漂白剤配合物に配合できる分散体を提供することが特に意図されている。このため、分散体中に存在する過カルボン酸は、まず、濃縮分散体状で高い貯蔵安定性を有し、次に、製品の使用時、特に水での希釈時(例えば、洗浄過程の際)に、高活性能力を有するか、又は完全な漂白活性を発揮しなければならない。
【0014】
これに関連して、過カルボン酸、特に PAP は、界面活性剤存在下での液体、特に水性媒体、例えば洗剤配合物及び洗浄剤配合物に、しばしば多量(例えば 0.5〜30 重量%、特に 5〜30 重量%)に添加した際、速やかに分解されることが頻繁に観察され、界面活性剤含有液体、特に水性媒体でのそれらの使用を、非常に限定されたものにする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下に詳細を記すような特有の安定化特性を有する場合、有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸(例えば PAP)を、長い貯蔵安定性を有する界面活性剤含有媒体又は分散体に配合できることが、意外にも見出された。
【0016】
従って、第一の要旨による本発明の主題は、固体の過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の、界面活性剤含有分散体、好ましくは水性分散体での安定化方法であって、界面活性剤含有分散体中に存在する過カルボン酸の分散体中での分解を防ぐか、少なくとも減ずるか、又は遅らせる、或いは分散体中の過カルボン酸の溶解性を減少するような方法で界面活性剤含有分散体を調整する方法である。
【0017】
本発明において、用語「界面活性剤含有分散体」は、例えば洗剤及び洗浄剤に必要とされるように、有意の界面活性剤含有量(例えば、分散体又は連続分散体相に基づいて、0.5〜30 重量%、特に 5〜30 重量%)を有する液体、特に水性系又は媒体を意味すると特に理解される。特に、用語「界面活性剤含有分散体」は、その最終使用に関して、例えば、配合物が洗剤又は洗浄剤作用を与えるように、十分な界面活性剤含有量を有する配合物を意味すると理解される。
【0018】
本発明の方法は、液体、特に水性分散体又は媒体中での過カルボン酸(例えば PAP)が、界面活性剤の存在下、効果的に安定化され、このような媒体中での過カルボン酸の分解が効果的に最小化されることを可能にする。これは、このような系での過カルボン酸の使用を可能にする。これらの適当な方法なしでは、過カルボン酸(例えば PAP)は、液体、特に水性分散体又は媒体中で不安定であり、速やかに分解されるので、界面活性剤含有液体、特に水性媒体での過カルボン酸の使用は、今まで不可能であったか、又は非常に限定されていた。
【0019】
本発明において使用される過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸は、室温(20 ℃)及び常圧又は大気圧(101,325 Pa)下で固体粒状物又は粒子形状であり、即ち微粒子である。
【0020】
本発明の目的のため、用語「分解」は、特に過カルボン酸の化学的及び/又は物理的分解過程又は分解反応、とりわけ化学的分解過程又は分解反応、例えば加水分解、還元、酸化、分裂などを意味すると理解される。このような反応は、過カルボン酸の不可逆分解又は分裂、従ってその適用性の減損、特にこのような過カルボン酸分散体の漂白性能の減損を招く。
【0021】
分散体のハロゲン化物イオン含有量を最小にした場合、特に分散体が基本的にハロゲン化物イオン(特に塩化物イオン及び/又は臭化物イオン)を含まないか、又は少なくともほとんどふくまない場合、過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸(例えば PAP)の、界面活性剤含有分散体、特に界面活性剤含有水性分散体中での分解を、効果的に妨げ、又は少なくとも著しく抑え、又は減ずることが、意外にも見出された。
【0022】
従来の洗剤及び洗浄剤において一般に見られるような、高いハロゲン化物イオン濃度(特に塩化物イオン又は臭化物イオン濃度)が、過カルボン酸の分解を増加させることが、意外にも見出された。従って、ハロゲン化物イオン濃度(特に塩化物イオン又は臭化物イオン濃度)の低下が、過カルボン酸の(濃縮)分散体での分解を減少させ得る。よって、ハロゲン化物イオン濃度の低下又は最小化は、分散体中に存在する固体粒状過カルボン酸の分解を著しく減少するか、又は有意に安定化する。
【0023】
ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオン及び/又は臭化物イオンの総含有量が、連続分散相に基づいて 100 ppm、特に 50 ppm、好ましくは 30 ppm、特に好ましくは 15 ppm を超えない(即ち、分散体連続相中でのハロゲン化物の総重量が、100 ppm 以下、特に 50 ppm 以下、好ましくは 30 ppm 以下、特に好ましくは 15 ppm 以下である。)場合、分散体中の過カルボン酸は、特に良好に安定化される。本発明において、上記の量は、基本的に、ハロゲンフリー又はハロゲン欠乏範囲又は量を意味すると理解される。本発明において、用語「分散体連続相」は、その中に溶解される成分又は物質(例えば塩、界面活性剤など)を伴う分散媒を意味すると理解される。本発明において、好ましい分散媒は水である。
【0024】
本発明において行われる、本発明の分散体中の、ハロゲン化物イオン含有量、とりわけ塩化物イオン及び臭化物イオン含有量の最小化は、ある種の要素、成分などを選択するか又は回避すること(例えば、基本的にハロゲンフリー成分、即ちハロゲンフリー界面活性剤、ハロゲンフリーホスホン酸塩などの使用)によって達成できる。本発明において、低ハロゲン化物イオン濃度、特に低塩化物イオン濃度は、例えばハロゲンフリーカチオン性界面活性剤の、例えば、(硫酸メチル、リン酸メチル、トシル酸メチル又はスルホン酸クメン)化合物としての添加によって達成できる。他方、洗剤の工業用成分の多く、特に列挙され得るアニオン性界面活性剤の工業グレードは、時々、無視できない濃度の塩化物又は臭化物を含む。従って、本発明において、好ましくはこれらの洗剤成分だけは、特に界面活性剤は、少なくとも基本的にハロゲン化物イオン又は塩化物イオンを含まず、特に低いハロゲン化物含有量又は塩化物含有量を有する原料のみを選択する。
【0025】
一般に、本発明の分散体製造方法に使用される添加成分は、第一に基本的にハロゲンフリー又は少なくとも貧ハロゲンであり、第二に過カルボン酸に対して少なくとも十分に適合性である、即ち、活性の損失、特に分解を招き得る、添加成分と過カルボン酸との望ましくない化学反応、例えば分解、特に還元反応、酸化反応及び/又は加水分解反応を生じず、これら反応が、過カルボン酸への更なる成分の添加により誘発されないという条件で選択される。
【0026】
ハロゲン化物濃度の最小化によって達成される安定化効果は、界面活性剤含有分散体中に存在する過カルボン酸に関して、界面活性剤含有分散体を酸性に、特に弱酸性に、必要に応じて中性に調整することによって増加し得ることが意外にも見出された。好ましくは、分散体を、最大 7、特に 3.5〜7、好ましくは 4.0〜6.5、より好ましくは 4.5〜6、特に好ましくは約 5 の pH に調整する。
【0027】
意外にも、過カルボン酸ベース、例えば PAP ベースの漂白剤は、酸性界面活性剤含有分散体中で、効果的に安定化され得る。なぜなら、酸性 pH で、過カルボン酸は分散媒、特に水に僅かしか溶けず、結晶性分散体として存在するのに対し、中性又はアルカリ性 pH では、増加した溶解性のため、過カルボン酸(例えば PAP)の比較的速い分解が生じるからである。それにも拘わらず、分散体、特に洗剤又は洗浄剤の pH は、分散体中に場合により存在する酵素の分解又は不活性化を回避するため、酸性に調整しすぎてはならない。従って、本発明において記載される pH 値は、この背景の最適範囲の 1 つを表す。
【0028】
本発明において、分散体の pH の調整、特に酸性範囲への低下又は移行は、酸又は酸性塩によって行い得る。本発明における pH 調整用の適当な酸又は酸性塩は、例えば有機ポリカルボン酸、重硫酸塩及び重リン酸塩である。更に、キレート剤として使用されるホスホン酸塩がホスホン酸として配合され得、続いて、アルカリの添加によって所望の pH に調整され得る(pH 調整法)。
【0029】
更に、意外にも、例えば洗剤及び洗浄剤の場合のように、分散体中に存在する界面活性剤が不活性状態に転化されている場合、即ち、分散体が活性状態の界面活性剤を少なくとも基本的に含まない場合、分散体中に存在する過カルボン酸の、記載の方法を用いることによって得られた安定化効果が、更に増加され得ることが立証された。分散体又は分散体連続相中の総活性界面活性剤含有量は、分散体又は連続分散体相に基づいて 5 %未満、特に 2.5 %未満、好ましくは 1 %未満である。換言すれば、分散体中の総不活性界面活性剤含有量は、総界面活性剤に基づいて 95 %超、特に 97.5 %超、好ましくは 99 %超である。
【0030】
これに関連して、活性界面活性剤により、過カルボン酸はより溶解され、この溶解状態では著しく不安定なので、有機過カルボン酸、特に PAP は、活性界面活性剤(即ち、洗剤配合物又は洗浄剤配合物中に、フリー及び/又はミセル状で存在する界面活性剤)の存在下で迅速に分解されることが示された。これに関連して、非イオン性界面活性剤、例えばアルカリポリグリコールエーテルベース界面活性剤は、過カルボン酸の分解を促進する。従って、本発明の方法では、分散体は、最適化された、特に低い非イオン性界面活性剤/帯電界面活性剤比を有する。ここで、アルキルポリグリコールエーテル含有量は、可能な限り小さくする。
【0031】
界面活性剤は、硫酸塩、特に好ましくは硫酸ナトリウムを添加することによって不活性化され得る。これは特に、界面活性剤の塩析を生じ(即ち、相分離が誘発され、界面活性剤欠乏連続相及び好ましくは薄層状の通常高粘度の結晶性又は液晶性界面活性剤リッチ相が形成される)、界面活性剤は、特にミセル活性体から好ましくは薄層状の結晶体又は液晶体(結晶形成物又は液晶形成物)に転化され、ほぼ界面活性剤フリーの連続相中に分散される。連続相における本発明の洗剤配合物及び洗浄剤配合物中のフリー界面活性剤含有量が、分散体又は分散体連続相に基づいて、特に好ましくは 1 %を超えない場合、過カルボン酸の特に優れた安定化を達成することができる。
【0032】
好ましくは、界面活性剤は、分散体連続相に硫酸ナトリウムを配合することによって不活性化され得る。このため、硫酸ナトリウムを、分散体に、5〜30 重量%、特に 15〜30 重量%、好ましくは 20〜30 重量%の量で配合し得る。本発明において、用語「配合」は、例えば解離又は可溶化によって、分散体中に配合される硫酸ナトリウムを溶解することを意味すると特に理解される。
【0033】
予想外にも、上記工程の全て(即ち、ハロゲン化物含有量の最小化、pH の低下、界面活性剤の不活性化、非イオン性界面活性剤の最適化又は最小化)を分散体中で行う場合、分散体中に存在する過カルボン酸の特に優れた安定化が得られることが見出された。意外にも、上記工程は相乗的に作用し、分散固体粒状過カルボン酸の特に効果的な安定化、従ってこのような分散体の優れた貯蔵安定性を導く。
【0034】
本発明の、室温で固体である過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の、界面活性剤含有分散体、特に水性分散体中での安定化方法は、一般的に、
・ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオン及び/又は臭化物イオンの総含有量が、連続分散相に基づいて、100 ppm、特に 50 ppm、好ましくは 30 ppm、特に好ましくは 15 ppm を超えない;及び/又は
・分散体が、最大 7、特に 3.5〜7、好ましくは 4.0〜6.5、より好ましくは 4.5〜6、特に好ましくは 約 5 の pH を有する;及び/又は
・分散体が、少なくとも基本的に、活性体としての界面活性剤を含まず、特に、分散体連続相における総活性界面活性剤含有量が、連続分散相に基づいて 5 %未満、特に 2.5 %未満、好ましくは 1 %未満である
ような方法で分散体を調整することによって行い得る。
【0035】
予想外にも、少なくとも 1 種のキレート剤を水性分散体に、好ましくは 0〜10 重量%の量で添加する場合、本発明の分散体中の過カルボン酸の安定化が更に増すことが見出された。キレート剤は、キノリン及び/又はその塩、アルカリ金属ポリホスホネート、ピコリン酸及びジピコリン酸、モノ-又はポリホスホン酸、とりわけ 1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アザシクロヘプタンジホスホネート(AHP)、ニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸及び/又は短鎖ジカルボン酸から選ばれ得る。本発明において、これらのキレート剤は、酸化工程において触媒として作用し、従って過カルボン酸(例えば PAP)の分解を招き得る重金属イオンをキレート化するために特に添加される。重金属イオンは、例えば送水管又は製造装置の金属成分から、或いは本発明の洗剤又は洗浄剤中の原料又は成分から導入され得る。
【0036】
加えて、本発明の方法では、水性分散体における過カルボン酸の安定化を更に増すために、少なくとも 1 種のカタラーゼを添加し得る。ここで、カタラーゼは、分散体中に存在する、又は形成された過酸化水素を除去するために特に使用される。過酸化水素は、過カルボン酸と水との反応から形成され得る。カタラーゼの添加は、分散体中の過酸化水素含有量を効果的に減少させ、従って、更なる酸化に過敏な成分、例えば酵素を効果的に保護する。この目的で、少なくとも 1 種のペルオキシダーゼ及び/又は少なくとも 1 種の酸化防止剤、場合により更なる少なくとも 1 種のカタラーゼを、本発明の洗剤又は洗浄剤に同様に添加し得る。本発明において好ましい酸化防止剤は、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、没食子酸又はこれらの誘導体である。
【0037】
更に、意外にも、特に水混和性溶媒(例えばグリセリン)を分散体に添加するか、又は水混和性溶媒が分散媒又は分散体でさえある場合、過カルボン酸の本発明の界面活性剤含有分散体中での安定性が増加し得ることが見出された。溶媒は、有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸に対して貧溶媒であるべきである。この溶媒は、好ましくはグリセリンである。好ましくは、溶媒(例えばグリセリン)の量は、分散体に基づいて、20 重量%超、特に好ましくは 30 重量%超であり得る。これらの溶媒ベースの変更のために、洗剤配合物又は洗浄剤配合物の含水量は、分散体に基づいて約 5 重量%であり、グリセリン含有量は 70 重量%を超え得る。グリセリンは、有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸に対して貧溶媒であり、このことが、過カルボン酸の本発明の分散体中での安定化を導き得る。従って、任意に添加されたグリセリンの量は、添加成分に、特に分散体中での添加成分の溶解性に関して悪影響を及ぼさないようにするべきである。しかしながら、全般的にみて、水が好ましい分散媒である。
【0038】
過カルボン酸の本発明の分散体中での安定性、特に貯蔵安定性を更に増すために、過カルボン酸は、その加工又は応用の観点から望ましく又は必要とされるならば、少なくとも 1 つの殻を有するか、又は少なくとも 1 つのマトリックス中に挿入され得、例えば、少なくとも 1 種の過カルボン酸ベースカプセルコアを有するカプセル系がある。本発明の態様として、過カルボン酸の貯蔵安定性は、過カルボン酸と周囲との、特に分散体又は分散媒及びその溶解物質又は分散物質との直接接触を、少なくとも基本的に防止することによって、又は少なくとも減ずることによって増加される。
【0039】
例えば、殻又はマトリックスは、少なくとも 1 種の無機塩、特に無機硫酸塩、特に好ましくは硫酸ナトリウムを含むか、又はそれらからなる。この種のカプセル系のために、本発明の分散体は、貯蔵中、硫酸塩殻が少なくとも基本的に分解されず、特に剥離又は溶解することのないように形成されなければならず、これは、殻の溶解性に影響する塩、例えば無機硫酸塩、特に好ましくは硫酸ナトリウムを添加することによって特に達成され得る。そして、過カルボン酸の放出が、使用の際、特に洗濯液中で、殻の分解に付随した希釈効果に対応して生じる。
【0040】
有利には、過カルボン酸上への殻又はマトリックスの被覆は、分散体への配合前に行う。殻又はマトリックスは、例えばゲル、特に、安定剤、とりわけゲル形成剤によって硬化された又はゲル化された油相ベースゲルであり得る。更に、本発明の方法において、殻は、例えば、多層多価電解質カプセル殻であり得る。また、殻又はマトリックスは、例えば、無機塩、特に硫酸塩及び/又はリン酸塩、無機酸化物、有機ポリマー、特にセルロースエーテル、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルピロリドン(PVP)を含み得る。
【0041】
過カルボン酸を少なくとも 1 つの殻又はマトリックスで被覆することによって、過カルボン酸ベースカプセルコアに加えて、下記のような殻マテリアルベースカプセル殻を有する、カプセル系が得られる。このように、加工又は応用の理由から必要とされ、又は望まれている場合、カプセルコア及びカプセル殻の両方は、カプセル系特性の調整のために更なる物質を有し得る。従って、有機過カルボン酸は、それ自身との吸熱反応、特に、80 ℃未満、とりわけ 70 ℃未満の温度での結晶化反応又は分解反応による水の放出を生じ得る物質で被覆され得る。しかしながら、この物質は、過カルボン酸と混合又は配合され得る。例えば、この物質はホウ酸であり得る。更に、殻又はマトリックスは、少なくとも 1 種のキレート剤、特に既に記載したキレート剤を含み得る。
【0042】
更に、特に洗濯液中でのカプセル系の溶解速度、従って使用中の過カルボン酸の放出速度は、必要に応じ、過カルボン酸上に殻又はマトリックスを被覆することによって調節され得る。このように、本発明のカプセル系に含まれる過カルボン酸に関する「制御された放出効果」が達成できる。「制御された放出効果」は、例えば、カプセル系からの過カルボン酸の、洗濯液又は洗浄液中への希釈又は放出において、僅かに遅らせた、例えば 1〜15 分間遅らせた、使用時のカプセル系の溶解を意味すると特に理解される。
【0043】
分散体使用中の(例えば洗濯液中での)カプセル殻の分解、特に剥離又は溶解は、一般に、物理的又は化学的な相互作用或いは反応によって、例えば、特に洗濯液中での希釈効果の結果としての可溶化又は解離過程を生じる。
【0044】
本発明の方法において、分散体中に配合される有機過カルボン酸の粒度は、3000 μm 以下、特に 2500 μm 以下、有利には 2250 μm 以下、好ましくは 2000 μm 以下、特に好ましくは 1500 μm 以下であり得る。これに関連して、有機過カルボン酸の粒度は、10〜3000 μm、特に 50〜2500 μm 、好ましくは 100〜1500 μm である。
【0045】
本発明の方法において、有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の含有量は、分散体に基づいて、0.1〜30 重量%、特に 0.5〜25 重量%、有利には 1〜20 重量%、好ましくは 1〜15 重量%である。本発明において、固体過カルボン酸粒子の粒度は、後の使用に対応して設定された粒度になるように、専門家に既知の方法、例えば、剪断、振動及び/又は超音波、微粉砕、摩砕などによって、過カルボン酸粒子の分散体への配合前に調整され得る。
【0046】
所望の製品特性への制御された調整又は適合は、粒度、及び分散体中の無機過カルボン酸含有量を選択することによって行われ得る。
【0047】
本発明の方法では、本発明の分散体において、有機過カルボン酸は安定化される物質として使用される。過カルボン酸は、有機モノ又はジ過カルボン酸から選ばれ得る。好ましい例は、ドデカンビス(ペルオキソ)酸又は好ましくはイミド過カルボン酸、特に好ましくは 6-フタルイミド過カプロン酸(6-フタルイミド過ヘキサン酸、PAP)である。有利には、過カルボン酸は、大気圧(101,325 Pa)下で 20 ℃超、特に 25 ℃超、有利には 35 ℃超、好ましくは 45 ℃超、より好ましくは 50 ℃超、特に好ましくは 100 ℃超の融点を有する。これによって、使用される過カルボン酸が、主に固体粒子として存在することが確実になり、本発明の分散体中における過カルボン酸の分解は少なくとも減少される。
【0048】
本発明の第二の要旨に従った更なる主題は、室温で固体であり、本発明の方法に従って製造できる、過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の貯蔵安定な界面活性剤含有分散体、特に界面活性剤含有水性分散体に関する。本発明の界面活性剤含有分散体は、界面活性剤含有分散体の状態で存在する過カルボン酸の分解を防ぐか、少なくとも減ずるか、又は遅らせる、或いは界面活性剤含有分散体中の過カルボン酸の溶解性を減少するような方法で調整される。
【0049】
従って、本発明の貯蔵安定な界面活性剤含有分散体は、
・ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオン及び/又は臭化物イオンの含有量が、分散体の連続分散相に基づいて、100 ppm、特に 50 ppm、好ましくは 30 ppm、特に好ましくは 15 ppm を超えない;及び/又は
・分散体が、最大 7、特に 3.5〜7、好ましくは 4.0〜6.5、より好ましくは 4.5〜6、特に好ましくは 約 5 の pH を有する;及び/又は
・分散体が、少なくとも基本的に、活性体としての界面活性剤を含まず、特に、分散体連続相における総活性界面活性剤含有量が、連続分散相に基づいて 5 %未満、特に 2.5 %未満、好ましくは 1 %未満である
ような方法で調製され得る。
【0050】
本発明の分散体に関する更なる詳細については、本発明の分散体にも同様に有効である、本発明の方法に関する上記記載を参照することができる。
【0051】
本発明の分散体は、多数の応用可能性を有する。従って、本発明の更なる要旨によれば、本発明の分散体は、工業的利用において、洗剤及び洗浄剤、特に液体の洗剤配合物及び洗浄剤配合物、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、脱色剤配合物又は漂白剤配合物へ添加でき、又はそれらとして使用できる。
【0052】
この要旨において、記載した配合物又は混合物は、過カルボン酸について高い貯蔵安定性を示し、従って、長期間保管した後でさえ、高い活性、特に高い漂白活性を示す。
【0053】
本発明の別の要旨に従った、本発明の更なる主題は、本発明の分散体を含む、工業的利用における、洗剤及び洗浄剤、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、脱色剤配合物又は漂白剤配合物である。
【0054】
本発明の洗剤及び洗浄剤は、硬い表面及び/又は柔らかい、特に布地表面を洗浄するために使用できる。本発明の洗剤及び洗浄剤は、特に、食器用洗剤、汎用クリーナー、風呂用クリーナー、床用クリーナー、自動車用クリーナー、ガラスクリーナー、家具手入れ剤又はクリーナー、表面クリーナー、洗剤などとして、特に好ましくは洗剤として使用できる。更に、本発明の洗剤及び洗浄剤は、有利には、繊維、布地、カーペットなどを洗浄するのに適している。
【0055】
本発明の分散体に加えて、本発明の洗剤及び洗浄剤は、専門家に知られている一般的な成分又は要素(例えば、界面活性剤、香料、着色剤、酵素、酵素安定剤、臭気物質又は臭気ビルダー、pH 調整剤、他の漂白剤、漂白活性剤、銀保護剤、防汚剤、蛍光増白剤、グレーイング阻害剤、分解助剤、増粘剤、消泡剤、重金属キレート剤、色移り阻害剤、溶媒及び/又は任意に更なる一般的な成分)を含む。本発明において、これらの各成分又は要素の、それら自身との、そして本発明の分散体又は分散体に含まれる過カルボン酸との適合性に関して配慮がなされるべきであり、これは、成分又は要素及び/又はそれらの相対的特性の賢明な選択によって実現できる。このようにして、成分又は要素と本発明の分散体中に配合された過カルボン酸との望ましくない相互作用を回避することができる。
【0056】
本発明の洗剤又は洗浄剤、特に液体の洗剤又は洗浄剤は、例えば、下記の成分:
(i)0.1〜30 重量%、特に 0.5〜25 重量%、有利には 1〜20 重量%、好ましくは 1〜15 重量%の少なくとも 1 種の固体粒子有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸;及び/又は
(ii)界面活性剤、有利には不活性化界面活性剤、特に、有利には 0〜30 重量%の、カチオン性及び/又はアニオン性界面活性剤、及び/又は好ましくは 0〜30 重量%の、非イオン性界面活性剤;及び/又は
(iii)場合により、好ましくは 5〜30 重量%の、電解質、特に無機及び/又は有機塩、とりわけリン酸塩、クエン酸塩及び/又は硫酸塩、特に好ましくは硫酸ナトリウム;及び/又は
(iv)任意に、好ましくは 0〜10 重量%の、キレート剤、特に、キノリン及び/又はその塩、アルカリ金属ポリホスホネート、ピコリン酸及びジピコリン酸、モノ-又はポリホスホン酸、とりわけ 1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アザシクロヘプタンジホスホネート(AHP)、ニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸及び/又は短鎖ジカルボン酸の群から選ばれるキレート剤;及び/又は
(v)任意に、好ましくは 0〜10 重量%の、酵素、例えばプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ及び/又はリパーゼ、及び/又は酵素安定剤;及び/又は
(vi)任意に、好ましくは 0〜15 重量%の、ビルダー、特に脂肪酸、好ましくは飽和及び/又は分枝脂肪酸、特に 30 ℃未満の融点を有するもの、及び/又はクエン酸及び/又はクエン酸塩;及び/又は
(vii)任意に、好ましくは 0〜5 重量%の、香料;及び/又は
(viii)任意に、助剤、例えば消泡剤、pH 調整剤、流動調整剤(増粘剤)、溶媒、着色剤;及び/又は
(ix)任意に、一般的な添加剤、例えば蛍光増白剤など;及び/又は
(x)水;
を含み、明記した重量の全ては洗剤又は洗浄剤に基づく。
【0057】
一般に、本発明の洗剤配合物又は洗浄剤配合物は、過カルボン酸の安定性を、少なくとも本質的には減少させないように設計する。従って、本発明の洗剤又は洗浄剤に使用される成分は、過カルボン酸に対して少なくとも十分適合であるように、即ち、特に洗剤又は洗浄剤自体内で、とりわけ使用前の期間(貯蔵期間)中、過カルボン酸の早すぎる分解及び活性損失を導くであろう、これらの成分とゲルカプセルとの望ましくない化学反応、例えば特に、分解、酸化又は還元及び/又は加水分解反応が生じないように選択される。
【0058】
本発明の洗剤又は洗浄剤、特に液状の洗剤又は洗浄剤において、洗剤配合物及び洗浄剤配合物中の界面活性剤は、特に塩析、即ち界面活性剤欠乏連続相及び好ましくは薄層状の通常高粘度の結晶性又は液晶性界面活性剤リッチ相への相分離誘発によって、好ましくは洗剤配合物又は洗浄剤配合物への硫酸塩化合物、特に好ましくは硫酸ナトリウムの配合によって不活性化される。
【0059】
上述のように、界面活性剤の不活性化は、過カルボン酸を効果的に保護するか、又は安定性を増加させる。本発明の洗剤配合物及び洗浄剤配合物中のフリー界面活性剤含有量は、好ましくは、連続相中に 1 %を超えて存在しない。これに関連して、本発明の分散体又はその製造方法の説明に対応して、本発明の洗剤又は洗浄剤では、最適化された又は可能な限り最小化された非イオン性界面活性剤/帯電界面活性剤比が存在する。ここで、アルキルポリグリコールエーテル含有量は、できるだけ小さい方がよい。
【0060】
加えて、洗剤又は洗浄剤中の無機塩、特に好ましくは硫酸ナトリウムの含有量は、洗剤又は洗浄剤中の界面活性剤が、少なくとも基本的に、特に塩析によって、有利には硫酸塩化合物、特に好ましくは硫酸ナトリウムの添加によって、不活性化されるように選択される。本発明の洗剤又は洗浄剤中の硫酸塩濃度は、洗濯液中で本発明の洗剤又は洗浄剤を使用する際に界面活性剤が活性体として再度存在するようになり、これが、例えば、洗剤又は洗浄剤を洗濯液に添加する時、希釈効果によって達成され得るように選択される。上述のように、特に、洗剤又は洗浄剤中の硫酸塩濃度は、洗剤又は洗浄剤の連続相中に 1 %未満の活性界面活性剤が存在するように、そして硫酸塩が低温、特に 0 ℃まで下がった時に晶出しないように選択される。
【0061】
本発明の洗剤及び洗浄剤は、少なくとも基本的に、塩化物イオン又は臭化物イオン濃度を多く含まない;これは、(硫酸メチル、リン酸メチル、トシル酸メチル又はスルホン酸クメン)化合物を添加することによって達成できる。更に、原料は、特に低い塩化物又は臭化物濃度を有するものを選択する。
【0062】
本発明の洗剤又は洗浄剤は、少なくとも 1 種の脂肪酸を含み得る。本発明では、特に 30 ℃未満の融点を有する、飽和及び/又は分枝脂肪酸が好ましい。本発明において、本発明の洗剤又は洗浄剤に、例えば Sasol company 製 Isocarb-16(登録商標)を使用できる。
【0063】
本発明の洗剤又は洗浄剤に関する更なる詳細として、本発明の製造方法及び本発明の分散体に関する上記説明を参照する。
【0064】
洗濯液における十分な漂白能力を得るために、本発明の洗剤又は洗浄剤或いは本発明の分散体は、過カルボン酸が十分に早く活性化されるか、又は放出されるように転化されなければならない。過カルボン酸の活性化又は放出は、特に、物理的又は物理化学的或いは化学的方法による。従って、無機塩、特に硫酸ナトリウムが洗濯中で希釈された時、界面活性剤は、不活性体(例えば、液状結晶として存在する界面活性剤)から活性ミセル体に転化し、このように活性化された界面活性剤は、固体過カルボン酸を溶解するか、又は可溶化する。洗濯液中での希釈は、同時に、一般に酸性に調整されていた洗剤及び洗浄剤の pH を急上昇させ、過カルボン酸の溶解性が著しく増加することになる。
【0065】
更に、洗剤又は洗浄剤は、使用中、特に洗濯液中での使用中、特に上述したように、過カルボン酸上に被覆した任意の殻又はマトリックスの分解、特に溶解又は可溶化を確実にするように構成される。従って、例えば、任意に存在する硫酸塩殻の溶解は、上述の希釈効果によって達成できる。更に、任意に存在するゲルマトリックスは、洗濯液中の界面活性剤の活性化によって溶解又は可溶化できる。これに関連して、任意の多価電解質殻の溶解、特に可溶化は、活性化界面活性剤によって、促進されるか又は誘発される。ここでは物理的な力も寄与する。
【0066】
従来技術と比較して、本発明は、下記の利点を示す。
本発明の分散体は、特に塩化物又は臭化物の低含有量と組み合わせると、分散体に配合された過カルボン酸の貯蔵安定を有意に増加し、過カルボン酸の有効性、特に漂白能力も、長時間にわたって、又は長期貯蔵後に保証される。このように、相乗効果によって、分散体の処置又は調整の各々が、過カルボン酸の分散体中での貯蔵安定性を有意に増加する。
【0067】
本発明の分散体の製造方法は、簡単であり、非常に管理しやすいので、製造しにくい、それ故に高価な物質の添加を回避できる。このため、本発明の製造方法は、大きい工業規模での使用に非常に適している。
【0068】
分散体の各特性のための調整、特に塩化物含有量、界面活性剤の不活性化、pH 調整などの故に、第一に、過カルボン酸の非常に優れた安定性が達成され、特に、増加した安定性は、これらの調整方法を組み合わせることによる相乗効果によって達成される。第二に、本発明の分散体又は洗剤及び洗浄剤は、使用時に、特に洗濯液中で、過カルボン酸を放出又は活性化する。それ故、本発明の分散体又は洗剤及び洗浄剤は、適当な配合物に優れた洗浄能力、特に漂白能力を提供する。
【0069】
更に、分散体の成分及び活性物質含有量は、特に洗剤及び洗浄剤における各要求に個々に応じられるように、広範に変化させることができ、又は要求に応じて製造できる。その特有な構成のため、分散体は、広い分野にわたって様々な配合物にほぼ例外なく使用できる。
【0070】
加えて、更なる安定性のため殻又はマトリックスを備えた過カルボン酸も、本発明の分散体に配合できる。即ち、本発明の分散体は、このようなカプセル系にも適合する。
【0071】
上述した調整及びそれらの相乗的作用による改良(即ち特に、ハロゲン化物イオン含有量の低下、pH の最適化、キレート剤の添加、界面活性剤の不活性化、特定の溶媒又は酵素(例えばカタラーゼ又はペルオキシダーゼ)の使用、酸化防止剤の添加)の故に、繊細な過カルボン酸ベース漂白剤の分解が著しく減少するので、本発明の洗剤配合物及び洗浄剤配合物は従来技術と比較して重要な利点を有する。
【0072】
本発明の更なる発展、修正及び変更、並びに利点は、本明細書を読んだ専門家に、本発明の範囲から逸脱することなく、直ちに認識され、理解される。
本発明を下記の実施例によって説明するが、これらは本発明を決して限定するものではない。
【実施例1】
【0073】
実施例 1 では、PAP の安定性が塩化物によってどれ程損なわれるかを示す。PAP の 3 %水性分散体(水で希釈した Eureco(登録商標)W)を様々な濃度の NaCl で処理し、40 ℃で保管した。PAP の残存率(%で表示)を、異なった時間後に測定した。この結果を以下の表に示す。
【0074】
【表1】

塩化物濃度の増加に伴って、分解の増加が見られる。
【実施例2】
【0075】
実施例 2 では、本発明の塩化物濃度を有する原料(ここでは界面活性剤)の添加によって、PAP の安定性が著しく増加できることを示す。
下記配合の溶液を用意した。
1. 比較例:
3 % PAP
15 % SDS、Texapon(登録商標)K-12(Cognis)、塩化物含有量は 0.4 %未満
残りは水
2. 本発明の例:
3 % PAP
15 % SDS、再結晶、塩化物含有量は 1 ppm 未満
残りは水
試料を室温で保管した。PAP の残存率を以下の表に示す。
【0076】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温で固体である粒状の過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の、界面活性剤含有分散体、特に水性分散体中での安定化方法であって、分散状態で存在する過カルボン酸の分解を防ぐか、少なくとも減ずるか、又は遅らせる、及び/又は分散体中の過カルボン酸の溶解性を減少するように分散体を調整する方法。
【請求項2】
室温で固体である過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の、界面活性剤含有分散体、好ましくは水性分散体、特に請求項1に記載の分散体中での安定化方法であって、
・ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオン及び/又は臭化物イオンの総含有量が、連続分散相に基づいて、100 ppm、特に 50 ppm、好ましくは 30 ppm、特に好ましくは 15 ppm を超えない;及び/又は
・分散体が、最大 7、特に 3.5〜7、好ましくは 4.0〜6.5、より好ましくは 4.5〜6、特に好ましくは 約 5 の pH を有する;及び/又は
・分散体が、少なくとも基本的に、活性体としての界面活性剤を含まず、特に、分散体連続相における総活性界面活性剤含有量が、連続分散相に基づいて 5 %未満、特に 2.5 %未満、好ましくは 1 %未満である
ような方法で分散体を調整する方法。
【請求項3】
少なくとも 1 種のキレート剤、特に、キノリン及び/又はその塩、アルカリ金属ポリホスホネート、ピコリン酸及びジピコリン酸、モノ-又はポリホスホン酸、とりわけ 1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アザシクロヘプタンジホスホネート(AHP)、ニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸及び/又は短鎖ジカルボン酸の群から選ばれる少なくとも 1 種のキレート剤を、とりわけ重金属イオンをキレート化するために、好ましくは 10 重量%までの量で分散体に添加する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも 1 種のカタラーゼ及び/又は少なくとも 1 種のペルオキシダーゼ、好ましくは少なくとも 1 種のカタラーゼ及び/又は少なくとも 1 種の酸化防止剤を、分散体に添加する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸が難溶性である、少なくとも 1 種の水混和性溶媒、とりわけグリセリンを分散体に添加する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
分散体中の不活性化界面活性剤の総含有量が、総界面活性剤に基づいて 95 重量%超、特に 97.5 重量%超、好ましくは 99 重量%超である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法であって、とりわけ、不活性化界面活性剤が、好ましくは薄層状の液晶性形状又は結晶性形状に転化され、及び/又は不活性化界面活性剤が、塩析によって、とりわけ界面活性剤欠乏連続相及び好ましくは薄層状の通常高粘度の結晶性又は液晶性界面活性剤リッチ相への相分離誘発によって、好ましくは分散体連続相への硫酸ナトリウムの、とりわけ連続相に基づいて 5〜30 重量%、特に 15〜30 重量%、好ましくは 20〜30 重量%の配合によって不活性化される方法。
【請求項7】
分散体の pH を、酸及び/又は酸性塩、とりわけ有機ポリカルボン酸、重硫酸塩、重リン酸塩、ホスホン酸及びホスホン酸塩の群から選ばれる酸及び/又は酸性塩によって調整する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
分散体が、最適化された、好ましくは低い非イオン性界面活性剤/帯電界面活性剤比を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
過カルボン酸が、更に、少なくとも 1 つの殻を有するか、又は少なくとも 1 つのマトリックス中に挿入される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
殻又はマトリックスが、少なくとも 1 種の無機塩、好ましくは無機硫酸塩、特に好ましくは硫酸ナトリウムを含むか又はそれらからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
殻又はマトリックスが、少なくとも 1 種のゲル、特に、安定剤、とりわけゲル形成剤によって硬化された及び/又はゲル化された油相ベースゲルを少なくとも 1 種含むか又はそれらからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
殻が、特に多層多価電解質カプセル殻である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
有機過カルボン酸の粒度が、3000 μm 以下、特に 2500 μm 以下、有利には 2250 μm 以下、好ましくは 2000 μm 以下、特に好ましくは 1500 μm 以下であり、及び/又は有機過カルボン酸の粒度が、10〜3000 μm、特に 50〜2500 μm、有利には 100〜1500 μm である、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の含有量が、分散体に基づいて、0.1〜30 重量%、特に 0.5〜25 重量%、有利には 1〜20 重量%、好ましくは 1〜15 重量%である、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
有機過カルボン酸が、有機モノ及びジ過カルボン酸、特にドデカンビス(ペルオキソ)酸又は好ましくはイミド過カルボン酸、特に好ましくは 6-フタルイミド過カプロン酸(6-フタルイミド過ヘキサン酸、PAP)から選ばれ、及び/又は有機過カルボン酸が、大気圧下で 20 ℃超、特に 25 ℃超、有利には 35 ℃超、好ましくは 45 ℃超、より好ましくは 50 ℃超、特に好ましくは 100 ℃超の融点を有する、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の方法によって得られた分散体。
【請求項17】
室温で固体である粒状の過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の、貯蔵安定な界面活性剤含有分散体、好ましくは水性分散体であって、分散状態で存在する過カルボン酸の分解を防ぐか、少なくとも減ずるか、又は遅らせる、及び/又は分散体中の過カルボン酸の溶解性を減少するように調整される分散体。
【請求項18】
室温で固体である粒状の過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の、貯蔵安定な界面活性剤含有分散体、特に水性分散体、とりわけ請求項17に記載の分散体であって、
・ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオン及び/又は臭化物イオンの総含有量が、連続分散相に基づいて、100 ppm、特に 50 ppm、好ましくは 30 ppm、特に好ましくは 15 ppm を超えない;及び/又は
・分散体が、最大 7、特に 3.5〜7、好ましくは 4.0〜6.5、より好ましくは 4.5〜6、特に好ましくは 約 5 の pH を有する;及び/又は
・分散体が、少なくとも基本的に、活性体としての界面活性剤を含まず、特に、分散体連続相における総活性界面活性剤含有量が、連続分散相に基づいて 5 %未満、特に 2.5 %未満、好ましくは 1 %未満である
ような方法で調整される分散体。
【請求項19】
分散体が少なくとも 1 種のキレート剤を含み、及び/又は分散体が少なくとも 1 種のカタラーゼ及び/又は少なくとも 1 種のペルオキシダーゼ、好ましくはカタラーゼ及び/又は少なくとも 1 種の酸化防止剤を含み、及び/又は分散体が有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸が難溶性である少なくとも 1 種の水混和性溶媒、好ましくはグリセリンを含む、請求項17又は18に記載の分散体。
【請求項20】
分散体が、最適化された、好ましくは低い非イオン性界面活性剤/帯電界面活性剤比を有する、請求項17〜19のいずれかに記載の分散体。
【請求項21】
過カルボン酸が、更に、少なくとも 1 つの殻を有するか、又は少なくとも 1 つのマトリックス中に挿入される、請求項17〜20のいずれかに記載の分散体。
【請求項22】
添加される有機過カルボン酸の粒度が、3000 μm 以下、特に 2500 μm 以下、有利には 2250 μm 以下、好ましくは 2000 μm 以下、特に好ましくは 1500 μm 以下であり、及び/又は添加される有機過カルボン酸の粒度が、10〜3000 μm、特に 50〜2500 μm、有利には 100〜1500 μm である、請求項17〜21のいずれかに記載の分散体。
【請求項23】
有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の含有量が、分散体に基づいて、0.1〜30 重量%、特に 0.5〜25 重量%、有利には 1〜20 重量%、好ましくは 1〜15 重量%である、請求項17〜22のいずれかに記載の分散体。
【請求項24】
有機過カルボン酸が、有機モノ及びジ過カルボン酸、特にドデカンビス(ペルオキソ)酸又は好ましくはイミド過カルボン酸、特に好ましくは 6-フタルイミド過カプロン酸(6-フタルイミド過ヘキサン酸、PAP)から選ばれ、及び/又は有機過カルボン酸が、大気圧下で 20 ℃超、特に 25 ℃超、有利には 35 ℃超、好ましくは 45 ℃超、より好ましくは 50 ℃超、特に好ましくは 100 ℃超の融点を有する、請求項17〜23のいずれかに記載の分散体。
【請求項25】
工業的利用における、洗剤及び洗浄剤、特に液体の洗剤配合物及び洗浄剤配合物、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、脱色剤配合物又は漂白剤配合物での、又はそれらとしての、請求項17〜24のいずれかに記載の分散体の使用。
【請求項26】
請求項16〜24のいずれかに記載の分散体を含む、工業的利用における、洗剤及び洗浄剤、特に液体の洗剤配合物及び洗浄剤配合物、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、脱色剤又は漂白剤。
【請求項27】
(i)0.1〜30 重量%、特に 0.5〜25 重量%、有利には 1〜20 重量%、好ましくは 1〜15 重量%の少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸;及び/又は
(ii)界面活性剤、有利には不活性化界面活性剤、特に、有利には 0〜30 重量%の、カチオン性及び/又はアニオン性界面活性剤、及び/又は好ましくは 0〜30 重量%の、非イオン性界面活性剤;及び/又は
(iii)場合により、好ましくは 5〜30 重量%の、電解質、特に無機及び/又は有機塩、とりわけリン酸塩、クエン酸塩及び/又は硫酸塩、特に好ましくは硫酸ナトリウム;及び/又は
(iv)任意に、好ましくは 0〜10 重量%の、キレート剤、特に、キノリン及び/又はその塩、アルカリ金属ポリホスホネート、ピコリン酸及びジピコリン酸、モノ-又はポリホスホン酸、とりわけ 1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アザシクロヘプタンジホスホネート(AHP)、ニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸及び/又は短鎖ジカルボン酸の群から選ばれるキレート剤;及び/又は
(v)任意に、好ましくは 0〜10 重量%の、酵素、例えばプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ及び/又はリパーゼ、及び/又は酵素安定剤;及び/又は
(vi)任意に、好ましくは 0〜15 重量%の、ビルダー、特に脂肪酸、好ましくは飽和及び/又は分枝脂肪酸、特に 30 ℃未満の融点を有するもの、及び/又はクエン酸及び/又はクエン酸塩;及び/又は
(vii)任意に、好ましくは 0〜5 重量%の、香料;及び/又は
(viii)任意に、助剤、例えば消泡剤、pH 調整剤、流動調整剤(増粘剤)、溶媒、着色剤;及び/又は
(ix)任意に、一般的な添加剤、例えば蛍光増白剤など;及び/又は
(x)水;
を含んでなり、明記した重量の全てが洗剤又は洗浄剤に基づく、請求項26に記載の洗剤又は洗浄剤、特に液体の洗剤又は洗浄剤。

【公表番号】特表2006−527291(P2006−527291A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515851(P2006−515851)
【出願日】平成16年6月8日(2004.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006166
【国際公開番号】WO2004/110610
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(391008825)ヘンケル・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチエン (309)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL KOMMANDITGESELLSCHAFT AUF AKTIEN
【住所又は居所原語表記】40191 Dusseldorf,Henkelstrasse 67,Germany
【Fターム(参考)】