説明

過剰体重を防止または治療するためのオキシンソモジュリン

【課題】哺乳動物における過剰体重の防止または治療に使用するための組成物および方法を提供する。
【解決手段】組成物は、食物摂取を低減するのが示されるオキシントモジュリンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類の動物の体重減少に使用するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最も高い発生率を有するが有効な治療が欠如している疾患の1つに肥満がある。それは、生活の質を低下させるとともに他の疾患のリスクを実質的に増加させる衰弱状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
米国においては、現在、成人人口の25%が、臨床的に肥満であると考えられている。米国の健康管理費用の450億ドル、すなわち年間の健康管理支出全体の8%、が肥満の直接の結果である、と推定されている。ヨーロッパにおいては、この問題は、増加しつつある。新たな取り組みなしでは、2005年までに20%を超えるイギリスの人口が、臨床的に肥満になるであろう、と予想されている。肥満が代謝病であるという事実は、医療専門家および保険機関によって、ますます認識されつつある。しかしながら、肥満の長期管理のための食事療法および運動と共に使用できる、有効かつ安全な薬物が不足している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、そのような薬物を提供するとともに、さらなるそのような薬物を同定しかつ開発する手段を提供することである。
【0005】
プレプログルカゴン(Preproglucagon)は、160アミノ酸ポリペプチドであり、これは、プロホルモン変換酵素(convertase)−1および−2によって組織特異的な仕方で分割(cleave)されて、中枢神経系(CNS)および末梢組織の両方においてさまざまな機能を有する多数の生成物を生じる。腸内およびCNS内では、プレプログルカゴン分割(cleavage)の主な翻訳後の生成物は、図Aに示すように、グルカゴン様(glucagon-like)ペプチド−1(GLP−1)、グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)、グリセンチン(glicentin)、およびオキシントモジュリン(oxyntomodulin)(OXM)である。現在までのところ、CNS内の役割については、OXMに対して明らかにされていなかった。
【0006】
GLP−1およびGLP−2が、食物摂取を阻害することは示されてきたが、そのような役割は、明確なペプチドOXMに対しては明らかにされていなかった。生理活性ペプチドとしてのOXMの重要性は、明らかにされていなかった。
【0007】
予想に反して、驚くべきことには、OXMペプチドが、食物摂取を阻害しかつ体重を低減できることが見出された。
【0008】
従って、本発明は、第1の態様に従うと、哺乳動物の過剰体重の防止または治療における使用のための、OXMを含む組成物を提供する。
【0009】
本願では、「オキシントモジュリン」という用語は、「OXM」と同じであり、以下のようなOXMペプチド配列またはその類似体を含むどのような組成物にも関連する。
【0010】
OXM配列は、当業技術内でよく知られており、記録が残されている。本発明は、以下のOXMヒト(human)配列(ラット、ハムスター、およびウシ(bovine)OXM配列と同じである):
His Ser Gln Gly Thr Phe Thr Ser Asp Tyr
Ser Lys Tyr Leu Asp Ser Arg Arg Ala Gln
Asp Phe Val Gln Trp Leu Met Asp Thr Lys
Arg Asn Lys Asn Asn Ile Ala、
以下のOXMアンコウ(angler fish)配列:
His Ser Glu Gly Thr Phe Ser Asn Asp Tyr
Ser Lys Tyr Leu Glu Asp Arg Lys Ala Gln
Glu Phe Val Arg Trp Leu Met Asn Asn Lys
Arg Ser Gly Val Ala Glu、
および、以下のウナギ(eel)OXM配列:
His Ser Gln Gly Thr Phe Thr Asn Asp Tyr
Ser Lys Tyr Leu Glu Thr Arg Arg Ala Gln
Asp Phe Val Gln Trp Leu Met Asn Ser Lys
Arg Ser Gly Gly Pro Thr、
を特に含む、ここに列挙される全てのシーケンスに関する。
【0011】
本願で使用されるOXMという用語は、また、上述したOXM配列のどのような類似体も含み、1位にあるヒスチジン残基は、正電荷を有する芳香族部分(aromatic moiety)またはその誘導体によって置換または維持され、好ましくは、この部分は、アミノ酸であり、より好ましくは、それは、ヒスチジン誘導体であり、上述したOXM配列内の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22個の他のアミノ酸が、1位にあるヒスチジンを除いて、任意の他の独立して選択されたアミノ酸によって独立して置換され得る。
【0012】
配列内のいずれか1つまたは複数(22個まで)の他のα−アミノ酸残基が、任意の他の1つのα−アミノ酸残基によって独立して置換され得る。好ましくは、ヒスチジンを除く任意のアミノ酸残基は、当業技術内でよく知られる保存的置換、すなわち、1つの疎水性アミノ酸を別のものに置き換えるなどといったアミノ酸を化学的に類似の種類の1つに置き換えることによって置換される。
【0013】
上述したように、1から22個のアミノ酸が置換され得る。上述した置換の選択肢に加えて、これは、アミノ酸の非必須形態、修飾形態、または異性形態によって行われ得る。例えば、1から22個のアミノ酸は、異性形態(例えば、D−アミノ酸)、修飾アミノ酸、例えばノルアミノ酸(nor-amino acid)(ノルロイシンまたはノルバリンなど)、または非必須アミノ酸(タウリンなど)によって置換できる。さらに、1から22個のアミノ酸は、その側鎖を介して結合された対応するまたは異なるアミノ酸(例えば、γ−結合(gamma-linked)グルタミン酸)によって置換できる。上述した各置換では、1位にあるヒスチジン残基は、変更されないか、あるいは、上述したように規定される。
【0014】
さらに、1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基が、1位にあるヒスチジンを除いて(または上に規定したように)、OXM配列から除去できる。削除される残基は、任意の2、3、4、または5個の隣接残基、または全く別々の残基とすることができる。
【0015】
OXM配列のC末端は、さらなるアミノ酸残基または他の部分を付加するように修飾できる。上述したOXMは、その対応する塩として供給され得る。OXMおよびその類似体の製薬上許容可能な塩の例としては、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、塩酸塩、および硫酸塩などをそれぞれ与えるメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸などの有機酸、塩酸、および硫酸などの鉱酸から誘導されたもの、または、有機塩基および無機塩基などの塩基から誘導されたものが挙げられる。本発明の化合物の塩を生成するのに適した無機塩基の例としては、アンモニア、リチウム、ナトリウム、カルシウム、カリウム、アルミニウム、鉄、マグネシウム、亜鉛などの水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩が挙げられる。また、塩は、適切な有機塩基を用いて形成され得る。本発明の化合物との製薬上許容可能な塩基付加塩(base addition salt)を形成するのに適したそのような塩基としては、毒性がなくかつ塩を形成するのに十分に強い有機塩基が挙げられる。このような有機塩基は、当業技術内でよく知られており、アルギニンおよびリシンなどのアミノ酸、モノ−、ジ−、およびトリエタノールアミン、コリンなどのモノ−、ジ−、またはトリヒドロキシアルキルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびトリメチルアミンなどのモノ−、ジ−、およびトリアルキルアミン、グアニジン、N−メチルグルコサミン、N−メチルピペラジン、モルホリン、エチレンジアミン、N−ベンジルフェネチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどを含み得る。
【0016】
塩は、当業技術内でよく知られる方法を用いる従来の仕方で調製できる。上記塩基化合物の酸付加塩は、必要な酸を含有する水性または水性アルコール溶液または他の適切な溶媒中に遊離(free)塩基化合物を溶解することによって調製できる。OXMが酸性官能基(function)を含む場合は、上記化合物の塩基塩は、上記化合物を適切な塩基と反応させることによって調製できる。酸塩または塩基塩は、直接分離できるか、または、溶液を濃縮すること、例えば蒸発によって、得ることができる。OXMは、溶媒和または水和された形態でも存在し得る。
【0017】
本発明のOXMは、脂質、糖、タンパク質、またはポリペプチドなどの1つまたは複数の群に複合化(conjugate)され得る。OXMは、これらの群に(例えば、共有結合またはイオン結合を介して)付着(attach)されることにより複合化され得るか、またはそれらと会合(associate)され得る。複合結合は、OXMがこれらの群に付着されるときは、好ましくは、C末端またはN末端アミノ酸を通してではない。OXMは、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体などのポリマー、セルロース、セルロース誘導体、キトサン、
アラビアゴム(acacia gum)、カラヤゴム(karaya gum)、グアールガム(guar gum)、キサンタンガム(xanthan gum)、トラガカントゴム(tragacanth)、アルギン酸、カラギーナン(carrageenan)、アガロース、フルセララン(furcellarans)、デキストラン、デンプン、デンプン誘導体、ヒアルロン酸などの多糖、ポリエステル、ポリアミド、ポリ無水物(polyanhydrides)、およびポリオルトエステル(polyortho esters)に複合化され得る。
【0018】
OXMは、化学的に修飾できる。特に、OXMのアミノ酸側鎖、N末端、およびC酸末端のうちの少なくとも1つが、修飾され得る。例えば、OXMは、1つまたは複数の、アルキル化、ジスルフィド形成、金属錯体形成、アシル化、エステル化、アミド化、ニトロ化、酸を用いた処理、塩基を用いた処理、酸化、または還元を受けることができる。これらの処理を実行する方法は、当業技術内でよく知られている。特に、OXMは、低級(lower)アルキルエステル、低級アルキルアミド、低級ジアルキルアミド、酸付加塩、カルボン酸塩、またはこれらのアルカリ付加塩として提供される。特に、OXMのアミノ末端またはカルボキシル末端は、例えば、エステル化、アミド化、アシル化、酸化、または還元によって誘導され得る。特に、OXMのカルボキシル末端は、アミド部分を形成するように誘導できる。
【0019】
OXMは、金属、特に二価金属を用いて処理できる。従って、本発明の目的のために、OXMは、1つまたは複数の以下の金属、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、または鉄の存在下に提供され得る。
【0020】
OXMは、製薬上許容可能な担体または希釈剤と組み合わせて提供され得る。適切な担体および希釈剤の少なくとも一方は、当業技術内でよく知られており、製薬等級のデンプン、マンニトール、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石粉(talcum)、セルロース、グルコース、スクロース、(または他の糖)、炭酸マグネシウム、ゼラチン、油、アルコール、界面活性剤(detergents)、乳化剤、または水(好ましくは、滅菌したもの)を含む。組成物は、組成物の混合製剤とすることができ、あるいは、同時、別々、または逐次の使用(投与を含む)のための組み合わされた製剤とすることができる。OXMは、結晶性の固体、粉末、水溶液、懸濁液として、または油中で提供できる。
【0021】
上述した徴候において使用するための本発明による組成物は、任意の都合のよい方法によって、例えば、経口(吸入を含む)、非経口、粘膜(例えば、口腔(buccal)、舌下、鼻腔(nasal))、直腸、皮下または経皮の投与およびそれに従って適合された組成物によって、投与され得る。
【0022】
経口投与では、組成物は、液体または固体、例えば、溶液、シロップ、懸濁液、または乳濁液、錠剤(tablets)、カプセル、およびトローチ剤(lozenges)として処方できる。
【0023】
液体処方は、一般に、適切な水性または非水系の1つまたは複数の液体担体中、例えば、水、エタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、または油中の、化合物または生理的に許容可能な塩の懸濁液または溶液から構成されるものである。また、処方は、懸濁剤(suspending agent)、防腐剤(preservative agent)、香味剤(flavouring agent)、または着色剤を含み得る。
【0024】
錠剤の形態の組成物は、固体処方を調合するのに日常業務で使用される任意の適切な1つまたは複数の製薬担体を用いて調合できる。このような担体の例としては、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトース、スクロース、および微晶質セルロースが挙げられる。
【0025】
カプセルの形態の組成物は、日常業務のカプセル化処理を用いて調合できる。例えば、活性成分を含有する粉末、顆粒、またはペレットが、標準担体を用いて調製でき、次に、硬質(hard)ゼラチンカプセル内に充填され、代替としては、分散液(dispersion)または懸濁液が、任意の適切な1つまたは複数の製薬担体、例えば、水性ゴム、セルロース、ケイ酸塩、または油を用いて調製でき、次に、この分散液または懸濁液は、軟質(soft)ゼラチンカプセル内に充填される。
【0026】
経口投与のための組成物は、活性成分が消化管を通る間にそれを分解(degradation)から、例えば、錠剤またはカプセル上への処方の外側被覆によって、保護するように設計され得る。
【0027】
通常の 非経口組成物は、滅菌した水性または非水系の担体または経口的に許容可能な油、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、落花生油、またはゴマ油中の化合物または生理的に許容可能な塩の溶液または懸濁液から成る。代替としては、溶液は、凍結乾燥され、次に、投与の直前に適切な溶媒を用いて元に戻され得る。
【0028】
鼻腔または経口投与のための組成物は、エーロゾル、滴(drops)、ゲル、および粉末として都合よく処方できる。エーロゾル処方は、一般に、生理的に許容可能な水性または非水系の溶媒中の活性物質の溶液または微細な懸濁液から成り、通常は、密閉容器内の滅菌した形態で単一または複数投与量として存在しており、密閉容器は、噴霧装置と共に使用するためにカートリッジまたは詰め替えの形態をとることができる。代替としては、密閉容器は、単一投与量鼻腔吸入器などの単一投薬装置(unitary dispensing device)、または、絞り弁を備えるエーロゾルディスペンサーであって、一旦、容器の内容物が使い尽くされると処分が予定されているものとすることができる。投与量形態が、エーロゾルディスペンサーを含む場合は、製薬上許容可能な推進剤(propellant)を含むことになる。エーロゾル投与量形態は、ポンプ噴霧器の形態をとることもできる。
【0029】
口腔または舌下投与に適した組成物は、活性成分が、糖、およびアラビアゴム、トラガカントゴム、またはゼラチンおよびグリセリンなどの担体を用いて処方される、錠剤、トローチ剤、および香錠(pastilles)を含む。
【0030】
直腸または膣投与のための組成物は、都合よく、坐剤(カカオバターなどの従来の坐剤基剤を含む)、膣坐剤、膣錠、泡および浣腸剤の形態となる。
【0031】
経皮投与に適した組成物としては、軟膏、ゲル、貼付剤、および粉末注入を含む注入が挙げられる。
【0032】
組成物は、都合よく、錠剤、カプセル、またはアンプルなどの単一投与量形態となる。
【0033】
OXMは、過剰の体重増加を防止する予防として使用でき、あるいは、過剰体重を減少させる治療として使用できる。
【0034】
過剰体重は、通常は肥満であるとはいえ、哺乳動物は、過剰体重に苦しんでいることになる目的で、臨床的に肥満であるとして認定されることはない。OXMは、液体、固体、または半固体の形態となり得る。
【0035】
今日の社会では、哺乳動物の過剰体重の防止または治療は、現実に必要とされている。好ましくは、哺乳動物は、ヒトであるとはいえ、それは、ウマ、イヌ科の動物(canine animals)(特に、飼いならされたイヌ科の動物)、ネコ科の動物(feline animals)(特に、飼いならされたネコ科の動物)などの他の哺乳類の動物、さらには、ブタ(porcine)、ウシ(bovine)、およびヒツジ(ovine)などの動物のように、肉のために生産されている哺乳動物も含み得る。本発明は、赤身肉の生産を最大にするために、そのような動物の過剰体重を防止するのに使用できる。
【0036】
本願全体に亘って、「防止」という用語は、どのような過剰体重も、どのような程度でも緩和するどのような効果も意味する。本願全体に亘って、「治療」という用語は、どのような程度でも、過剰体重の改善を意味する。
【0037】
第2の態様によれば、本発明は、哺乳動物の過剰体重の防止または治療のための方法を提供し、この方法は、OXMを含む組成物を哺乳動物に投与することを含む。哺乳動物は、過剰体重の防止または治療の必要がありそうである。体重減少は、美容用になり得る。OXMを含む組成物は、効果的な濃度で投与されるものである。
【0038】
本発明の第1の態様の好ましい特徴の全てが、第2の態様にもあてはまる。
【0039】
本発明の第3の態様は、哺乳動物の美容用体重減少のための方法を提供し、この方法は、OXMを含む組成物を哺乳動物に投与することを含む。この環境では、体重減少は、純粋に美容用容姿の目的のためである。
【0040】
第1および第2の態様の好ましい特徴の全てが、第3の態様にもあてはまる。
【0041】
この理論に拘束されずに、本発明は、哺乳類の身体への食物摂取に対する阻害剤として作用するOXMの投与による過剰体重の防止または治療を提供することが理解される。そのような食物摂取の低減は、哺乳動物の過剰体重の防止または治療となる。本願では、「食物」という用語は、消化されるとともにカロリーの値を有する物質を含む。
【0042】
本発明の第4の態様は、過剰体重の防止または治療のための医薬の製造におけるOXMの使用を提供する。
【0043】
第1および第3の態様の好ましい特徴の全てが、第4の態様に全てあてはまる。
【0044】
本発明の第1、第2、および第4の態様は、医薬に関し、この医薬のための特定の投与量の型(regime)は、最終的には主治医によって決定されるものであるとともに、使用されるOXM、動物の種類、年齢、体重、症状の度合いおよび適用される治療の度合いの少なくとも一方、医薬の投与の方法、有害な反応および反対の徴候の少なくとも一方、などといった因子を考慮するものである。具体的に規定された投与量の範囲は、標準的に設計された臨床試験(clinical trials)によって決定でき、患者の進行および回復は、十分にモニタされる。
【0045】
このような試験は、ヒトにおける初期投与量として動物における最大許容投与量の低いパーセンテージを用いる次第に増加する投与量設計を利用し得る。
【0046】
本発明の第5の態様は、哺乳動物の食物摂取を阻害する薬剤を同定するためのOXMの使用に関する。本発明のこの態様は、過剰体重の防止または治療のためのさらなる適切な医薬を同定しかつ開発する手段を提供する。
【0047】
OXMの使用は、ペプチドそれ自体の使用を含むことができ、あるいは、OXMの理論またはモデルの特性の使用を含み得る。利用されるOXMの機能的または構造的特性は、ペプチドそれ自体のものとすることができ、あるいは、コンピュータ生成モデル、物理的二次元または三次元モデル、または電気的に生成された(例えば、コンピュータ生成)一次、二次、または三次構造、さらには、薬物体(pharmacophore)(三次元電子密度マップ)またはそのX線結晶構造のものとなり得る。
【0048】
構造的特性は、OXMと相互作用しそれによってその機能に影響を及ぼし得る潜在的な薬剤の同定を可能とし得る。同定は、コンピュータモデリングおよび合理的ドラッグデザインの少なくとも一方によるものとなり得る。
【0049】
本発明の各態様の好ましい特徴は、必要な変更を加えて、他の態様のそれぞれと同様である。
【0050】
本発明は、ここでは、以下の図面を参照して単に一例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図A】
【0052】
プレプログルカゴンおよびその構成要素部分を図式的に示す図。
【図1A】図1(図1Aおよび図1B)は、絶食させたラットにおける食物摂取に対するICVおよびiPVNプログルカゴン誘導および関連生成物の影響の比較である。図1Aは、絶食させた動物内へのGLP−1、OXM、グルカゴン、またはグリセンチン(全て3nmol)のICV注入後、8hまでの累積食物摂取(g)を例示する。食塩水対照に対して、*、P<0.05。
【図1B】図1(図1Aおよび図1B)は、絶食させたラットにおける食物摂取に対するICVおよびiPVNプログルカゴン誘導および関連生成物の影響の比較である。図1Bは、絶食させた動物内へのGLP−1、OXM(両方とも1nmol)、またはエクセンジン−4(0.03nmol)の急性iPVN注入後、24hまでの累積食物摂取(g)を例示する。1、2、および4hにおける全ての群について食塩水対照に対して、*、P<0.01。8hにおけるエクセンジン−4だけについて食塩水対照に対して、*、P<0.05。
【図2A】図2(図2Aおよび図2B)は、絶食させたラットにおける食物摂取に対するICVおよびiPVN OXMの影響の2つのグラフを示す。図2Aは、OXM(0.3、1、3、または10nmol)の急性ICV注入後、8hまでの累積食物摂取(g)。食塩水対照に対して、*、P<0.05。
【図2B】図2(図2Aおよび図2B)は、絶食させたラットにおける食物摂取に対するICVおよびiPVN OXMの影響の2つのグラフを示す。図2Bは、絶食させた動物内へのOXM(0.1、0.3、または1.0nmol)の急性iPVN注入後、8hまでの累積食物摂取(g)。食塩水対照に対して、*、P<0.05。
【図3A】図3(図3Aおよび図3B)は、暗相の開始におけるICV OXMの影響の2つの棒グラフを示す。満腹したラットが、暗相の開始において、OXM、GLP−1(3nmol)、または食塩水のICV注入を受けた。図3Aは、注入後1hにおいて決定された食物摂取(グラム)。食塩水対照に対して、*、P<0/05。
【図3B】図3(図3Aおよび図3B)は、暗相の開始におけるICV OXMの影響の2つの棒グラフを示す。満腹したラットが、暗相の開始においてOXM、GLP−1(3nmol)、または食塩水のICV注入を受けた。図3Bは、注入後1hにおいて決定された行動。食塩水対照に対して、*、P<0/05。
【図4A】図4(図4Aおよび図4B)は、食物摂取に対するOXMおよびGLP−1影響へのエクセンジン−(9−39)による阻害の2つの棒グラフを示す。図4Aは、GLP−1(3nmol)、GLP−1およびエクセンジン−(9−39)(30nmol)、OXM(3nmol)、OXMおよびエクセンジン−(9−39)(30nmol)、またはエクセンジン−(9−39)(30nmol)のみ、の急性ICV注入1時間後の食物摂取。食塩水対照に対して、**、P<0.005。
【図4B】図4(図4Aおよび図4B)は、食物摂取に対するOXMおよびGLP−1影響へのエクセンジン−(9−39)による阻害の2つの棒グラフを示す。図4Bは、絶食させた動物内へのGLP−1(1nmol)、GLP−1およびエクセンジン−(9−39)(10nmol)、OXM(1nmol)、OXMおよびエクセンジン−(9−39)(10nmol)、またはエクセンジン−(9−39)(10nmol)のみ、の急性iPVN注入後の食物摂取。食塩水対照に対して、**、P<0.005。
【図5】GLP−1およびOXMによるラット視床下部膜内の[125I]GLP−1結合の競合のグラフ。
【図6a】24時間絶食させたラットにおける、初期暗相の間に注入したIP OXM(500μl食塩水中、30、100、および300nmol/kg)、または食塩水の累積食物摂取(g)に対する影響を例示する(黒四角=食塩水、白丸=OXM 30nmol/kg、黒三角=OXM 100nmol/kg、白三角=OXM 300nmol/kg)。食塩水に対して、*P<0.05。
【図6b】絶食させていないラットにおける、暗相の開始前に注入したIP OXM(500μl食塩水中、30および100nmol/kg)、または食塩水の累積食物摂取に対する影響を例示する(黒四角=食塩水、白丸=OXM 30nmol/kg、黒三角=OXM 100nmol/kg)。食塩水に対して、*P<0.05。
【図7a】OXM(50nmol/kg)、または食塩水の7日間、毎日2回のIP注入の累積食物摂取(g)に対する影響を例示する。食塩水に対して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005。
【図7b】OXM(50nmol/kg)、または食塩水の7日間、毎日2回のIP注入の体重増加(g)に対する影響を例示する。食塩水に対して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005。
【図8】IP OXM(50nmol/kg)、食塩水、または陽性の対照(1時間=GLP−1(50nmol/kg);2時間=CCK(15nmol/kg))の36時間絶食ラットの胃内容排出に対する影響を例示する。胃の内容物(乾燥重量)は、30分間の摂食時間中の食物摂取のパーセンテージとして表された。食塩水に対して、**P<0.01。
【図9】24時間絶食させたラットの弓状核内へ投与したときのOXMの増加する投与量(0.01−1.0nmol)の1時間食物摂取に対する影響を例示する。食塩水に対して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005。
【図10】OXM(30nmol/kg)、GLP−1(30nmol/kg)、または食塩水のIP投与前15分間に注入された、エクセンジン9−39(5nmol)または食塩水のiARC投与の1時間食物摂取(g)に対する影響を例示する。(S=食塩水、G=GLP−1(30nmol/kg)、Ox=OXM(30nmol/kg)、Ex=エクセンジン9−39(5nmol))。
【図11a】視床下部の弓状核内における、A)IP食塩水、または、B)IP OXM(50nmol/kg)、に応答するfos様免疫反応の発現を例示する(x40倍率)。食塩水に対して、***P<0.005。
【図11b】脳幹のNTSおよびAPにおける、A)IP食塩水、B)IP OXM(50nmol/kg)、または、C)IP CCK(15nmol/kg)に応答するfos様免疫反応の発現を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
実施例
A− OXMは、ICVおよびiPVNの両方で注入されたとき、絶食誘発再摂食において大幅な低減を引き起こす。
【0054】
ペプチドおよび化学薬品:
GLP−1、グリセンチン、グルカゴン、およびSP−1は、Peninsula Laboratories, Inc. (St. Helens, UK)から購入した。OXMは、IAF BioChem Pharma (Laval, Canada)から購入した。エクセンジン−4(exendin-4)およびエクセンジン−(9−39)は、Medical Research Council, Hemostasis Unit, Clinical Sciences Center, Hammersmith Hospital, London, UK において、396MPSペプチド合成装置(396 MPS peptide synthesiser) (Advanced ChemTech, Inc.)にF−moc化学(F-moc chemistry)を用いて合成され、C8カラム(Phenomex, Macclesfield, UK)上の逆相HPLCにより精製された。正確な分子量は、質量分析法により確認された。全ての化学薬品は、特に言及しない限り、Merck & Co. (Lutterworth, Leicester, UK)から購入した。
【0055】
動物:
大人のオスのウィスターラット(Wistar rats)(ICSM, Hammersmith Hospital)が、個々のケージ内において温度(21−23℃)および光(12hの光、12hの闇)の制御条件下で、食物(RM1 飼料(diet), Special Diet Services UK Ltd., Witham, UK)および水道水への随意(ad libitum)アクセスと共に維持された。動物は、手術からの回復後、研究の完了まで、毎日取り扱われた。実施した全ての動物の処置は、British Home Office Animals (Scientific Procedures Act 1986 (Project License PIL 90/1077)によって承認された。
【0056】
ICVおよびiPVNカニューレ挿入および試験化合物の点滴注入(infusions):
動物は、永久ステンレス鋼ガイドカニューレ(Plastics One, Roanoke, VA)定位固定埋め込み(stereotactically implanted)ICVまたはiPVNを有した。全ての研究は、24h絶食後、0900−1100hの間、初期明相(light phase)において実行され、食物摂取は、注入後1、2、4、8、および24hにおいて測定された。
【0057】
摂食研究プロトコル:
プログルカゴン誘導生成物および関連ペプチドの食物摂取に対する影響の比較。
【0058】
研究1aにおいては、ラットは、10μl食塩水(saline)、GLP−1(13nmol)、OXM(3nmol)、グルカゴン(3nmol)、またはグリセンチン(3nmol;n=8/群)がICVで注入された。
【0059】
全ての研究においては、以下の配列:
His Ser Gln Gly Thr Phe Thr Ser Asp Tyr
Ser Lys Tyr Leu Asp Ser Arg Arg Ala Gln
Asp Phe Val Gln Trp Leu Met Asp Thr Lys
Arg Asn Lys Asn Asn Ile Ala、
を有する、ヒト(human)OXMが使用された。
【0060】
以下の配列:
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val
Ser Ser Tyr Leu Glu Gly Gln Ala Ala Lys
Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg、
を有する、ヒト(human)GLP−1が使用された。
【0061】
研究1bにおいては、ラットは、1μ食塩水、GLP−1(1.0nmol)、OXM(1.0nmol)、グリセンチン(1.0nmol)、グルカゴン(1.0nmol)、またはSP−1(3.0nmol;n=12−15/群)がiPVNで注入された。エクセンジン−4は、ICVで注入されるとき、GLP−1より強力に食物摂取を阻害する。従って、エクセンジン−4は、0.03nmolの投与量においてiPVNで注入された。
【0062】
OXMの増加する投与量の食物摂取に対する影響の調査:
研究2aにおいては、ラットは、食塩水、GLP−1(3nmol)、またはOXM(0.3、1、3、または10nmol;n=8/群)がICVで注入された。研究2bにおいては、ラットは、食塩水、GLP−1(1.0nmol)、またはOXM(0.1、0.3、または1.0nmol;n―12−15/群)がiPVNで注入された。OXMがGLP−1受容体を介して作用するか評価するために、GLP−1受容体アンタゴニストエクセンジン−(9−39)を用いた研究が行われた。
【0063】
夜時間摂食および行動分析:
研究3. OXMが、非特異的な味覚嫌悪を介して食物摂取を阻害すること、および、それが、真の飽満因子でないこと、は可能性がある。従って、ICVカニューレが挿入されたラットは、暗相(dark phase)の開始(onset)において、GLP−1(3nmol)、OXM(3nmol)、または食塩水(n=6/群)を投与された。食物摂取は、注入後1hにおいて測定され(研究3a)、行動が評価された(研究3b)。ラットは、行動得点記入表(score sheet)を用いて注入後1hに観察された。
【0064】
研究4aにおいては、ラットは、食塩水、GLP−1(3nmol)、GLP−1(3nmol)およびエクセンジン−(9−39)(30nmol)、OXM(3nmol)、OXM(3nmol)およびエクセンジン−(9−39)(30nmol)、またはエクセンジン−(9−39)(30nmol)のみ、がICVで注入された。研究4bにおいては、ラットは、食塩水、GLP−1(1nmol)、GLP−1(1nmol)およびエクセンジン−(9−39)(10nmol)、OXM(1nmol)、OXM(1nmol)およびエクセンジン−(9−39)(10nmol)、またはエクセンジン−(9−39)(10nmol;n=10−12/群)のみ、がiPVN注入された。
【0065】
受容体結合アッセイ:研究5.
受容体結合アッセイが、最終体積の0.5mlのラット視床下部膜(200μgタンパク質)、500Bq(100pM)[125I]GLP−1、および指定されたような非標識競合ペプチド(GLP−1およびOXM)の中において実行された。膜は、室温で90分間培養された。結合および遊離放射能が、遠心分離(2分間、4℃)によって分離された。ペレット化された膜は、アッセイ緩衝液(0.5ml、氷冷(ice-cold))で洗浄され、膜は、上述したように遠心分離された。上澄みは除去され、ペレット内の放射能が、γ線計数器を用いて計数された。特異的(飽和できる)結合が、1μmGLP−1またはOXMの存在(飽和できない結合)と不存在(結合全体)の中に結合された[125I]GLP−1の量との間の差として計算された。全ての曲線は、三重(in triplicate)の点を用いて構成された。IC50値は、プリズム3プログラム(Prism 3 program)(GraphPad Software, Inc., San Diego, CA)を用いて計算された。
【0066】
統計:
食物摂取分析では、データは、平均±SEMとして表示される。実験群の間の統計差は、ANOVAによって、続いて、事後最小有意差検定(post-hoc least significant difference test)(Systat8. 0, Evanston, IL)によって決定された。行動分析では、データは、範囲と各行動の出現の中央値(median)数として表示される。群間の比較は、Mann−Whitney U検定(Mann-Whitney U test)(Systat 8.0)を用いて行われた。全ての場合に、P<0.05が、統計的に有意であると見なされた。
【0067】
結果:
プログルカゴン誘導生成物および関連ペプチドの食物摂取に対する影響の比較。
【0068】
ICV投与.
研究1aにおいては、OXMおよびGLP−1(3nmol)は、再 摂食を有意に低減した。この食物摂取の阻害は、注入後4hまで持続した(図1A)。グルカゴンおよびグリセンチン(3nmol)は、どの時点でも食物摂取に影響しなかった(図1A)。
【0069】
iPVN投与.
研究1bにおいては、OXM、GLP−1(3nmol)、およびエクセンジン−4(0.03nmol)も、iPVNで投与されたときは、再摂食を阻害した。この阻害は、ICVで注入されたときより長く注入後少なくとも8h持続した(図1B)。グリセンチン、グルカゴン(1nmol)、およびSP−1(3nmol)は、iPVNで注入されたときは、どの時点でも食物摂取に影響しなかった。
【0070】
OXMの増加する投与量の食物摂取に対する影響。
【0071】
ICV投与.
研究2aにおいては、ICVで注入されたときは、OXMは、投与量に依存した仕方で再摂食を低減し、注入後1、2、および4hにおいて,3nmolの投与量で最大効果に到達した(図2A)。
【0072】
iPVN投与.
研究2bにおいては、食物摂取は、iPVNで注入されたGLP−1およびOXM(両方とも1nmol)によって、注入後8hまで有意に低減された(図2B)。
【0073】
暗相の開始におけるICVカニューレ挿入満腹(sated)ラットにおけるOXMの影響:
暗相は、ラットの自然な摂食時間である。従って、このような時間において非絶食動物における推定飽満(putative satiety)因子の影響を評価することは、より生理的な影響を表すであろう。
【0074】
OXMの食物摂取に対する影響.
研究3aにおいては、初期暗相において注入されるとき、GLP−1およびOXM(3nmol)の両方とも、注入後1hにおいて食塩水処置動物の食物摂取に比較して有意に食物摂取を低減した[図3A]。
【0075】
OXMのICV注入後の行動の観察.
初期暗相におけるOXM(3nmol)のICV投与は、摂食エピソード(episodes)(研究3a)における有意な低減、および、後ろ足で立つ(rearing)行動の増加(研究3b)となった[図3B]。毛づくろい(grooming)、静止(still)、項垂れ(head down)、穴掘り(burrowing)、または移動(locomotion)エピソードには変化はなかった。
【0076】
OXMがGLP−1Rを介して作用するか評価するために、GLP−1Rアンタゴニスト、エクセンジン−(9−39)を用いる研究が行われた。
【0077】
ICV投与.研究4.
GLP−1受容体アンタゴニストエクセンジン−(9−39)のGLP−1との10:1(アンタゴニスト/アゴニスト)の割合でのICV共投与(coadministration)は、GLP−1の食欲抑制効果を阻害した[図4A]。さらに、エクセンジン−(9−39)のOXMとの共投与は、OXMの食欲抑制効果の減衰となった[図4A]。
【0078】
iPVN投与.
同様に、iPVNで投与されたときは、GLP−1およびOXMの両方の食欲抑制効果は、エクセンジン−(9−39)と共注入(coinjected)されるときに阻害される[図4B]。
【0079】
受容体結合アッセイ.研究5.
ラット視床下部膜組織標本(preparations)内におけるGLP−1のGLP受容体に対する親和性(IC50)は、0.16nMであった(図5)。同じ膜組織標本内におけるOXMのGLP−1受容体に対する親和性は、8.2nMであった(図5)が、これは、GLP−1の親和性よりほぼ2桁弱い大きさである。
【0080】
検討.
OXMは、ICVおよびiPVNの両方で注入されるとき、絶食誘発再摂食の大幅な低下を引き起こす。この効果は、注入後8hまで(iPVN)または4hまで(ICV)持続された。OXMの効果は、等モル投与量においてICVおよびiPVNで投与されるとき、GLP−1の効果とほぼ同じ大きさおよび時間経過である。さらに、OXMは、暗相の開始における非絶食ラットにおける食物摂取を阻害し、この時、これらのラットは、嫌悪行動の徴候を示さなかった。
【0081】
胃粘膜内にはOXM特異的結合部位(site)があることが示唆された。しかしながら、そのような結合部位は、CNS内では同定されなかった。従って、OXMは、GLP−1およびOXMが摂食研究において類似の強さを有するので、視床下部GLP−IRを介してその効果を媒介することが、提案された。OXMは、GLP−IRに対するナノモル親和性(IC50=8.2nM)を有することが示された。この親和性は、GLP−1の親和性(IC50=0.16nM)よりほぼ2桁弱い大きさである。しかもなお、GLP−1Rに対するこの低減された親和性にもかかわらず、OXMは、同じ大きさまで食物摂取を低減する。これに対する1つの説明は、OXMが、視床下部内のGLP−1Rおよびそれ自体の受容体の両方を通して作用し得るであろうということである。従って、OXMは、GLP−IRに対するそのより低い親和性にもかかわらず、GLP−1の応答に匹敵する応答を顕在化し得るのであろう。
【0082】
エクセンジン−(9−39)、GLP−1Rアゴニストエクセンジン−4の断片(fragment)は、GLP−1Rにおける強力で選択的なアンタゴニストである。GLP−1およびエクセンジン−(9−39)が共注入されるとき、GLP−1の食欲抑制作用は、阻害される。OXMがエクセンジン−(9−39)と共注入されるとき、OXMの食欲抑制効果も完全に阻害される。これは、OXMがGLP−1Rを介してその効果を媒介するという主張に説得力を加えるものであろう。
【0083】
我々は、絶食ラットにおける急性ICV注入後のグリセンチンおよびグルカゴンの影響を調べた。これらのペプチドの投与後に、絶食誘発食物摂取に対する影響は、見られなかった。さらに、これらのペプチドが、iPVNで投与されたときに、これらのペプチドの影響はなかった。SP−1、OXMの推定最小活性構造、がiPVNで注入されたとき、食物摂取の阻害は観察されなかった。従って、OXMに見られる効果は、特異的である。
【0084】
B− OXMの末梢投与も、食物摂取および体重増加を低減する。
【0085】
ペプチドおよび化学薬品:
OXMは、IAF BioChem Pharma (Laval, Canada)から購入した。GLP−1は、Peninsula Laboratories Inc. (St. Helens, UK)から購入した。エクセンジン(9−39)は、Medical Research Council, Hemostasis Unit, Clinical Sciences Centre, Hammersmith Hospital, London, UK において、396MPSペプチド合成装置(396 MPS peptide synthesizer) (Advanced ChemTech Inc., Louisville, KY)にF−moc化学(F-moc chemistry)を用いて合成され、0.1%トリフルオロ酢酸上へのアセトニトリルの勾配(gradient)を用いてC8カラム(Phenomex, Macclesfield, UK)上の逆相HPLCにより精製された。正確な分子量は、質量分析法により確認された。全ての化学薬品は、特に言及しない限り、Merck Eurolab Ltd. (Lutterworth, Leicestershire, UK)から購入した。
【0086】
動物:
大人のオスのウィスターラット(180−200g)が、個々のケージ内において温度(21−23℃)および光(12hの光、12hの闇)の制御条件下で、標準ラット食餌(standard rat chow)(RM1 飼料(diet), Special Diet Services UK Ltd., Witham, Essex, UK)および水への随意アクセスと共に維持された。実施した全ての動物の処置は、British Home Office Animals (Scientific Procedures) Act 1986 (Project Licenses PPL: 90/1077,70/5281 and 70/5516)によって承認された。
【0087】
弓状核内カニューレ挿入:
動物は、ブレグマ(bregma)に対して3.3mm後方かつ0.3mm側方であって頭蓋の外側表面の9.0mm下方に位置するカニューレを使用するカニューレ挿入プロトコルを用いて、視床下部の弓状核内へ定位固定埋め込みされた永久留置(indwelling)一側性(unilateral)ステンレス鋼ガイドカニューレ(Plastics One, Roanoke, VA)を有した。
【0088】
腹膜内(IP)注入:
全てのIP注入は、1ml注射器および25ゲージ(gauge)針を用いて供給された。注入の最大体積は、500μlであり、個々の動物の体重に従って調節された。全てのペプチドは、食塩水に溶解した。
【0089】
これらの研究においては、上の第15および16頁において与えられる配列を有するヒトOXMおよびヒトGLP−1が、使用された。
【0090】
生体内(in vivo)プロトコル:
1.OXMの末梢投与の、絶食動物における食物摂取に対する投与量応答影響の調査:
動物は、研究の前に24時間絶食させた。初期明相(light phase)の間(09.00−10.00hr)に、ラットには、500μlの体積で、食塩水、GLP−1(陽性の対照として、30nmol/kg体重)、またはOXM(10−300nmol/kg体重)(n=12毎群)の単一IP注入が与えられた。注入後、動物は、それらの元(home)のケージに戻され、前もって重量測定された量の食餌が与えられた。食物摂取は、注入後1、2、4、8、および24時間において測定された。
【0091】
2.OXMの末梢投与の、暗相中の非絶食動物における食物摂取に対する影響の調査:
暗相は、ラットにとって「通常(normal)」の摂食時間である。従って、この時間における食物摂食のどのような阻害も、絶食後の再摂食に対する変化よりも生理的であると見なすことができた。動物は、消灯(lights out)前(18.00−19.00hr)に、食塩水、またはOXM(3−100nmol/kg体重)(n=12毎群)の単一IP注入を受けた。食物摂取は、消灯後1、2、4、8、および12時間において測定された。
【0092】
3.OXMの繰り返しIP注入の影響:
45匹の動物たちは、体重により無作為に次の3つの群(n=15毎群):1)食塩水処置で、食物への随意アクセスの群、2)OXM処置(50nmol/kg体重毎注入−投与量は前の投与量応答実験に基づく)で、食物への随意アクセスの群、3)食塩水処置であるが、食物は、OXM処置群の平均明および暗相食物摂取に制限した群、に分けた。動物は、7日間、毎日2回(07.00および18.00hr)、注入された。食物摂取(g)、体重(g)、および水摂取(ml)が、毎日測定された。8日目に、動物は、断頭により殺された。精巣上体白色脂肪組織(epididymal white adipose tissue)(WAT)および肩甲骨間褐色脂肪組織(interscapular brown adipose tissue)(BAT)が、除去され、体脂肪過多症の評価として重量測定された。
【0093】
4.OXMの末梢投与の、胃内容排出(gastric emptying)に対する影響の調査:
動物は、胃を確実に空にするように36時間絶食させた。初期明相の間(09:00−10:00)に、前もって重量測定された量の標準ラット食餌が30分間許可された。この後、食物は、除去され、再び重量測定された。次に、動物は、食塩水、OXM(50nmol/kg体重)、またはCCK−8(15nmol/kg体重)が、IP注入された。次に、ラットは、前の摂食研究において用いたのと同じ時間:摂食後1、2、4、または8時間、において殺された(n=12毎群毎時点)。CCK−8群は、2時間の時点のみにおける実験のための陽性の対照として使用された。動物は、二酸化炭素窒息により殺された。開腹が迅速に行われ、胃が露出された。幽門接合部(pyloric junction)が、結紮され(2.0 Mersilk, Johnson & Johnson, Belgium)、次に、胃−食道接合部(gastro-oesophogeal junction)の結紮が続き、胃が除去された。次に、胃内容物が、除去され、前もって重量測定された計量用舟形容器に置かれ、48時間の空気乾燥に掛けられた。乾燥した後、内容物は、重量測定され、次に、ラット毎に胃内に残留する半時間再摂食時間中に消化された食餌のパーセンテージが、以下の式:
%胃内残留食物=(胃内容物の乾燥重量/消化された食物の重量)×100、
を用いて計算された。
【0094】
5.弓状内OXMの増加する投与量の影響の調査:
弓状内(ARC内(Intra-ARC)(iARC))カニューレ挿入ラット(n=12−15毎群)が、重量により無作為に6つの群に分けられた。初期明相の間(0900−1000)に、24時間絶食ラットが、食塩水、OXM(0.01、0.03、0.1、0.3、または1.0nmoles)のiARC注入を受けた。食物摂取が、注入後1、2、4、8、および24時間において測定された。
【0095】
6.末梢的に投与されたOXMが直接、弓状核GLP−1受容体を介して作用するかの調査:
弓状核内へカニューレ挿入されたラットが、無作為に6つの群(n=10−12毎群)に分けられた。初期明相の間(0900−1000)に、24時間絶食ラットが、食塩水、またはエクセンジン9-39(5nmoles)のiARC注入を受け、その後、15分間後に、食塩水、OXM(30nmoles/kg体重)、またはGLP−1(30nmoles/kg毎体重)のIP注入を受けた。注入の詳細は、以下の表1に記載される。
【0096】
【表1】

【0097】
免疫組織化学(immunohistochemistry):
OXM(50nmol/kg)、CCK(15nmol/kg)、または食塩水のIP注入90分間後に、ラットは、末期的に麻酔(terminally anaesthetized)され、0.1Mリン酸塩緩衝食塩水(phosphate buffered saline)(PBS)、次に、4%PB−ホルマリン(PBF)が、心臓を通して灌流(transcardially perfused)された。脳は、除去され、PBF内で一夜、後固定(post-fixed)され、次に、一夜、PB−スクロース(20%w/v)に移された。脳および脳幹の40μm冠状切片が、凍結ミクロトーム上で切断され、アビチン−ビオチン−ペルオキシダーゼ法(avitin-biotin-peroxidase method)によりfos様(fos-like)免疫反応性(FLI)に対して染色された。次に、切片は、ポリ−L−リシン被覆スライドガラスに載せられ、増加する濃度のエタノール(50−100%)中で脱水され、キシレン中で脱脂(delipidated)され、DPX試料接着物質(mountant)を用いてカバーガラスで覆った。スライドガラスは、光学顕微鏡(Nikon Eclipse E-800)を用いてFLI陽性核が検査され、画像が、顕微画像装置(microimager)(Xillix Microlmager)を用いて撮影された。視床下部および脳幹内のFLI陽性核の数は、実験群に対しては予備知識のない(blinded)研究チームとは独立したメンバーにより計数された。切片毎のFLI陽性核平均数が、計算され、各動物に対して整数で表示された。
【0098】
視床下部外植片静止培養(hypothalamic explant static incubation):
静止培養システムが行われた。オスのウィスターラットが、断頭により殺され、脳全体が直ちに除去された。脳は、腹面(ventral surface)を最も上にして載せられ、振動ミクロトーム(Microfield Scientific Ltd. , Dartmouth, UK)内に置かれた。1.7mmの薄片が、基底(basal)視床下部から取られ、ウィルス環(Circle of Willis)に対して側方に閉塞されて、95%O2および5%CO2と平衡に保たれた1mlの人工脳脊髄液を含む室(chambers)内で培養された。視床下部薄片は、内側視索前野(medial pre-optic area)、PVN(室傍視床下部核(paraventricular hypothalamic nucleus))、背内側核(dorsomedial nucleus)、腹内側核(ventromedial nucleus)、外側視床下部(lateral hypothalamus)、およびARCを含む。管は、37Cに維持された水浴中の乗せ台(platform)上に置かれた。最初の2時間の平衡時間後に、各外植片は、試験時間に掛けられる前に、600μlのaCSF内で45分間(基底時間)、培養された。OXM、100nMが、GLP−1受容体に対するそのIC50の濃度の10倍の濃度を表す投与量として使用された。組織の生存率は、56mM KClを含有するaCSFへの最後の45分間の曝露によって確認された。各実験時間の最後においては、aCSFは、除去され、ラジオイムノアッセイによるαMSH免疫反応性の測定まで、−20℃において貯蔵された。
【0099】
αMSH−IRを測定するためのラジオイムノアッセイ:
αMSHは、Chemicon International Inc.からの抗体を使用して発現された組織内(in-house)ラジオイムノアッセイを用いて測定された。
【0100】
統計分析:
IPおよびiARC摂食研究からのデータは、事後LSD(最小有意差)検定を用いるANOVAにより分析された。異なる処置群からの脂肪体(fat pad)重量が、不対(unpaired)t検定を用いて分析された。視床下部外植片培養研究からのデータは、各外植片がそれ自体の基底時間と比較され、対(paired)t検定により分析された。全ての場合に、P<0.05が、統計的に有意であると見なされた。
【0101】
結果:
1.絶食動物におけるOXMの末梢投与の影響:
OXM(100nmol/kg、および300nmol/kg)の腹膜内投与は、食塩水対照と比較して、注入後1時間における24時間絶食動物の再摂食において有意な阻害を引き起こした(1時間:食塩水、6.3±0.2gに対して、OXM 100nmol/kg、5.4±0.2g(P<0.05)、300nmol/kg、4.5±0.2g(P<0.05))。100nmol/kgにより引き起こされた食物摂取の低減は、注入後8時間まで持続された。しかしながら、OXMの最大投与量(300nmol/kg)は、注入後24時間、食物摂取を有意に阻害し続けた(24時間:食塩水、17.5±0.7gに対して、OXM、300nmol/kg、9.5±0.6g;P<0.05)(図6a)。30nmol/kgおよび10nmol/kgは、調査されたどの時点でも食物摂取を変化させなかった。
【0102】
2.OXMの末梢投与の、非絶食動物における暗相中の食物摂取に対する影響:
OXM、3および10nmol/kgは、調査されたどの時点でも、暗相の直前に注入された夜間摂食(nocturnally feeding)ラットにおいて食物摂取に影響しなかった。しかしながら、OXM、30nmol/kgは、注入後2時間まで食物摂取を有意に阻害した(2時間:食塩水、5.8±0.4gに対して、OXM、30nmol/kg、4.5±0.4g;P<0.05)。食物摂取は、注入後4時間、低減されたが、これは、有意ではなかった。OXM、100nmol/kgは、暗相の全体を通して食物摂取を有意に阻害した(8時間:食塩水、16.9±0.5gに対して、OXM、100nmol/kg、14.1±0.8g;P<0.05)(図6b)。
【0103】
3.OXMの繰り返しIP投与の影響:
OXM(50nmol/kg)の7日間、毎日2回のIP注入は、食塩処置対照動物に比較して、累積日毎(cumulative daily)の食物摂取における有意な低減を引き起こした(累積食物摂取7日目:食塩水、180±4.3gに対して、OXM、50nmol/kg、168±4.6g;P<0.01)(図7a)。さらに、OXM処置動物は、食塩水対照よりゆっくりと有意に体重が増加した(累積体重増加7日目:食塩水、37.6±1.9gに対して、OXM、50nmol/kg、21.0±1.5g;P<0.005)。また、食物制限「対飼育(pair fed)」動物は、同じ食物摂取を受けているにもかかわらず、OXM処置動物ほどゆっくりとは体重が増加しなかった(7日目:対飼育、33.5±2.0g;食塩水(随意摂食)に対して、P=NS、OXMに対して、P<0.05)(図7b)。さらに、長期に亘るOXMは、食塩水注入対飼育動物には見られない、脂肪過多症の低減を引き起こした(表2)。水摂取は、実験の1日目および2日目でOXM処置動物において有意に低減した(1日目:食塩水、28.1±1.33mlに対して、OXM、24.1±1.28ml;P<0.05)。その後の日においては、食塩水処置動物に比較して毎日の水摂取に増加はなかった(3−6日目)。しかしながら、7日目まで、食塩水およびOXM処置群の間には水摂取に差はなかった(図示せず)。
【0104】
【表2】

【0105】
表2は、7日間、毎日2回の食塩水またはOXM(50nmol/kg)のIP投与の、食物制限および随意摂食ラットにおける、精巣上体WATおよび肩甲骨間BATの重量に対する影響。
【0106】
4.OXMの食欲抑制効果に対する遅延(delayed)胃内容排出の役割:
食物が36時間絶食させたラットに与えられた1時間後では、GLP−1処置動物の胃の内容物の乾燥重量(30分間の摂食時間中に消費された食物のパーセンテージとして)は、食塩水処置動物のものより有意に大きかった(1時間:食塩水、65.8±1.6gに対して、GLP−1、50nmol/kg、76.9±2.7g;P<0.01)が、これは、GLP−1が胃内容排出において有意な低減を引き起こしたことを示唆する。OXM処置動物の胃の内容物は、食塩水処置対照のものより多量であったが、これは、統計的に有意ではなかった(1時間:食塩水 65.8±1.6gに対して、OXM、50nmol/kg、72.0±1.4g;P=0.07)。摂食後2時間では、OXMは、食塩水処置動物に比較して、胃の内容物に影響しなかった。しかしながら、この時点での陽性の対照、CCK(15nmol/kg)が注入された動物は、有意により多量の胃内容物を有していた(2時間:食塩水、38.5gに対して、CCK、15nmol/kg、64.7±6.4g;P<0.01)が、これは、CCKが、胃内容排出の速度において有意な低減を引き起こしたことを示唆する。摂食後4または8時間においては、食塩水処置動物に比較して、胃の内容物に対するOXMの影響はなかった(図8)。
【0107】
5.弓状核内注入OXMの増加する投与量の影響の調査:
食物摂取は、24時間絶食後の再摂食の1時間目の間に、iARCで投与されたOXMの全ての投与量(0.01nmolesを除く)によって有意に阻害された(1時間:全て、食塩水、7.7±0.2gに対して、OXM 0.03nmoles、6.1±0.5g(P<0.05);0.1nmoles、5.6±0.4g(P<0.05);0.3nmoles、5.1±0.6g(P<0.01);1.0nmole、3.6±0.5g(P<0.005))(図9)。OXM0.3および1.0nmolesは、注入後8時間まで食物摂食を有意に阻害し続けた。注入後24時間では、食物摂取は、OXM1.0nモmolesにより阻害されたが、これは、有意ではなかった(24時間:食塩水、40.8±1.6gに対して、OXM、1.0nmole、37.8±3.0g;P=NS)。
【0108】
6.末梢的に投与されたOXMが、弓状核GLP−1受容体を介して作用するかの調査:
GLP−1(30nmol/kg)およびOXM(30nmol/kg)の両方の腹膜内投与は、暗相内への1時間の食物摂取の有意な低減を引き起こした(1時間:食塩水、9.2±0.3gに対して、GLP−1、5.0±0.6g、OXM、5.1±0.4g)。しかしながら、OXMのIP投与により引き起こされた食欲不振は、ARC内へ直接注入されたGLP−1受容体アンタゴニスト、エクセンジン9−39(300nmol/kg)の前投与により阻害された(表3および図10)。IP GLP−1による食物摂取の阻害は、エクセンジン9−39の前iARC投与によっては影響されなかった。
【0109】
【表3】

【0110】
表3は、OXM(30nmol/kg)、GLP−1(30nmol/kg)、または食塩水のIP投与の15分間前に注入されたエクセンジン9−39(5nmoles)または食塩水のiARC投与の1時間食物摂取(g)に対する影響(S=食塩水、G=GLP−1(30nmol/kg)、Ox=OXM(30nmol/kg)、Ex=エクセンジン9−39(5nmoles))。
【0111】
7.応答IP OXMにおける視床下部内のFLI発現のマッピング:
IP OXM投与(50nmol/kg)後、FLIの濃厚(dense)な染色が、ほとんどもっぱら視床下部弓状核内において見出された(図11a)。他の視床下部核(PVN(室傍視床下部核)、DMH(背内側視床下部核(dorsomedial hypothalamic nucleus))、VMH(腹内側視床下部核)(ventromedial hypothalamic nucleus))は、特異的c−fos染色を示さなかった。
【0112】
脳幹においては、IP CCK(15nmol/kg)は、最も著しくは、NTS(孤束核(nucleus tractus solitarius))および最後野(area postrema)において、FLIの濃厚な染色を引き起こした(図6b)。しかしながら、IP 食塩水およびIP OXM(50nmol/kg)のどちらも、調査された同じ脳幹核内においてc−fos発現の特異的増加は引き起こさなかった(図11b)。
【0113】
8.OXMと共に培養されたときの視床下部外植片からのα−MSH放出の変化:
視床下部外植片とOXM(100nM)を培養することは、基底放出に比較して、α−MSHの放出において有意な増加を引き起こした(α−MSH:2.6±0.5fmol/外植片に対して、OXM、100nM、4.1±0.6fmol/外植片;P<0.005)。外植片生存率が、56mM KClと共に培養することにより評価され、生存率は、外植片の>80%において確認された。生存可能でない外植片は、分析から除外された。
【0114】
検討.
OXMの末梢投与は、ラットにおいて食物摂取の低減を引き起こす。これは、明相における絶食に続き、夜間の摂食相の間に見られた。食欲抑制効果は、強力であり、24時間までの長さの時間、持続された。OXMの7日間、毎日2回のIP投与は、過耐性なしで、食塩水で処置されたものに比較して、毎日の食物摂取における低減を引き起こした。OXMで処置された動物は、2群とも同一の毎日のカロリーの摂取を受けているにもかかわらず、対飼育動物よりも体重増加が有意に少なかった。OXMの腹膜内投与は、水摂取を全く一過性で低減したとはいえ、これは持続されず、このことは、体重増加速度の低下が、脱水に起因しなかったことを示唆する。
【0115】
長期に亘る研究の結論では、精巣上体WATおよび肩甲骨間BATが、除去され、重量計量された。OXM処置動物の全ての脂肪体の重量には、同一の食物摂取にもかかわらず、対飼育動物に比較して低減があったことが見出された。従って、末梢OXM投与も、他の代謝パラメータに影響していると思われる。
【0116】
飽満に対する主要な誘因は、脳幹活性化につながる迷走神経媒介機構(vagally-mediated mechanism)を介する遅延された胃内容排出である。GLP−1およびOXMの両方が、齧歯類およびヒトにおける胃内容排出の強力な阻害物質であり、GLP−1の場合は、これが、GLP−1が飽満を促進する支配的な機構であると考えられる。我々は、OXMが、同じ仕方で作用しており、胃内容排出に対するその影響が、持続された食欲抑制の原因であったとの仮説を立てた。しかしながら、OXMの末梢投与は、食物の再導入後の第1の時間における胃内容排出のわずかな遅延につながるが、これは有意ではなく、影響は一時的であった。これは、OXMがゆっくりと胃内容排出を行うが、食物摂取の強固でかつ持続された阻害の原因とはなりそうにないことを示唆した。
【0117】
我々は、OXMの末梢投与が、ほとんどもっぱらARC内においてFLIを増加させることをここに報告する。さらに、我々は、OXMと共に視床下部外植片を培養することによって、視床下部外植片からのPOMC(プロ−オピオメラノコルチン)誘導生成物、αMSHの放出の有意な増加が生じたことを見出した。IP OXMは、迷走神経媒介情報を統合する際に重要であると知られている領域、NTSおよびAP内におけるFLIの発現に影響しなかったが、これは、OXMがこれらの経路を介して作用していないとの考えをさらに強化する。
【0118】
脳幹内の核は、GLP−1作用の一次部位であり、情報は、次に、視床下部PVNへと中継され、そこで、その食欲抑制効果が、媒介される、と考えられる。OXMのARC内への直接注入は、非常に低い投与量においてでさえ、食物摂取の強固でかつ持続された阻害を引き起こしたが、これは、ARCがOXMの作用部位であるとの仮説をさらに支持する。OXMの末梢投与により引き起こされる食欲抑制効果は、ARC内へのエクセンジン9-39の前投与により阻害された。しかしながら、興味深いことには、末梢的に投与されたGLP−1の食欲抑制作用は阻害されなかった。この発見は、OXMがARC内のGLP−1受容体を介して作用していることを強く示している。さらに、それは、GLP−1およびOXMの作用を媒介する別個の経路を同定した。
【0119】
総合すると、これらのデータは、OXMが食物摂取および体重維持の長期および短期の両方の調節において潜在的に重要であることを示す。胃内容排出の遅延および脳幹核の活性化を含む「従来の」飽満経路を介する食欲の低減よりは、循環OXMは、核内のPOMC(プロ−オピオメラノコルチン)ニューロンを潜在的に活性化させることにより、ARCとの直接相互作用を介して、その食欲抑制効果を媒介している。従って、OXMは、哺乳動物における肥満などの過剰体重の治療または防止に有用であり得るとともに、さらには、哺乳動物における肥満などの過剰体重の治療における治療薬剤の開発のための新規な標的となる。
【図A】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の過剰体重の防止または治療における使用のための、オキシントモジュリンを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記過剰体重は、肥満であることを特徴とする、請求項1に記載の使用のための、オキシントモジュリンを含む組成物。
【請求項3】
製薬上許容可能な賦形剤と組み合わせることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用のための、オキシントモジュリンを含む組成物。
【請求項4】
液体、固体、または半固体の形態であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の使用のための、オキシントモジュリンを含む組成物。
【請求項5】
前記哺乳動物は、ヒトであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の使用のための、オキシントモジュリンを含む組成物。
【請求項6】
オキシントモジュリンを含む組成物を哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、 哺乳動物の過剰体重の防止または治療のための方法。
【請求項7】
前記過剰体重は、肥満であることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
オキシントモジュリンを含む組成物を哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、哺乳動物の美容用体重減少のための方法。
【請求項9】
前記組成物は、オキシントモジュリンと、製薬上許容可能な賦形剤または担体とを含むことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記体重減少は、減少された食物摂取の結果であることを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
過剰体重の防止または治療のための医薬の製造における、オキシントモジュリンの使用。
【請求項12】
哺乳動物の食物摂取を阻害する薬剤を同定するための、オキシントモジュリンの使用。
【請求項13】
オキシントモジュリンの機能的特性および構造的特性の少なくとも一方についてであることを特徴とする、請求項12記載の使用。
【請求項14】
オキシントモジュリンの電気的に生成されたモデルについてであることを特徴とする、請求項12または13記載の使用。
【請求項15】
前記オキシントモジュリンの特性は、その一次、二次、三次構造薬物体、およびX線結晶構造の少なくとも1つであることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1つに記載の使用。
【請求項16】
本願明細書の実施例において記載されたような、哺乳動物の過剰体重の防止または治療における使用のための、オキシントモジュリンを含むことを特徴とする組成物。
【請求項17】
実施例を参照して記載されたことを特徴とする、哺乳動物の過剰体重の防止または治療のための方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【公開番号】特開2009−203235(P2009−203235A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−114118(P2009−114118)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【分割の表示】特願2003−526432(P2003−526432)の分割
【原出願日】平成14年9月9日(2002.9.9)
【出願人】(599008621)インペリアル イノベーションズ リミテッド (25)
【Fターム(参考)】