説明

過熱水蒸気による加熱処理装置

【課題】搬送ベルト等の被処理物の出入するトンネル通路の左右両端の開口部から水蒸気が漏出するのを防止するとともに、横風が吹き付けてもトンネル通路内の温度分布の変動を抑え均一に保つことのできる過熱水蒸気による加熱処理装置を提供する。
【解決手段】被処理物の走行する両端の開口したトンネル通路内に過熱水蒸気を供給して前記被処理物の加熱処理を行うものにおいて、前記トンネル通路を構成する中空筐体の両端の開口部付近に、前記トンネル通路内の水蒸気および外部からトンネル通路内に侵入する外気をこのトンネル通路より下方へ吸引して、外部へ排気する排気ダクトを結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過熱水蒸気により搬送ベルトあるいはこの搬送ベルトによって搬送される物品等の被処理物を加熱して、洗浄、除菌、加工または乾燥等を行う過熱水蒸気による加熱処理装置に関するものである。例えば、食品の加工、製造工程においては、連続的に搬送される食品またはこの食品を搬送するベルトコンベア装置の搬送ベルトを加熱したり、洗浄、殺菌したりするために過熱水蒸気による加熱処理装置が用いられる。また、グラビア印刷された気体不透過性の紙またはフィルムからなる薄膜上のインクの乾燥を行うためにも、過熱水蒸気による加熱処理装置が用いられる。
【背景技術】
【0002】
食品の製造加工を行う場合、食品の安全性を高めるために、食品自身または、この食品を搬送するベルトコンベアなどの製造設備を入念に洗浄・殺菌することが必要である。このような食品やその製造設備等の加工、殺菌処理に過熱水蒸気を用いると、処理時間を短縮することができるとともに、処理温度を低下させたり装置を小型化したりすることが可能となる等の多くの長所があることから、従来から過熱水蒸気による加熱処理方法または装置が多数提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、食品の加熱処理を連続的に行うために、食品を搭載して搬送する搬送ベルトを通すトンネルを設け、このトンネル内にノズルから水蒸気を注入、充満し、この充満された水蒸気に赤外線を照射して加熱することにより過熱水蒸気雰囲気を生成し、この過熱水蒸気により食品等を加熱処理するようにした熱処理装置が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、食肉搬送ラインにおいて、水蒸気を電磁誘導加熱装置により加熱して100℃以上の過熱水蒸気を発生し、この過熱水蒸気をノズルにより搬送設備の搬送ベルトに噴出して、洗浄・殺菌を行う洗浄殺菌装置が記載されている。
【0005】
さらに、搬送装置等の加熱・殺菌処理に使用された水蒸気は最終的に装置の外部へ排出されなければならないが、その方法としては、特許文献3に示されるように、トンネルを構成する筐体より外部へ漏洩する水蒸気を別の筐体で受ける方法がある。また、特許文献4に示されるように、処理装置におけるトンネルの入口および出口から漏れる水蒸気を回収するために吸引ブロアを設け、この吸引ブロアにより入口側および出口側フードを介してトンネルの入口および出口から漏洩する水蒸気を吸引することが行われている。
【0006】
このような水蒸気を回収する従来技術においては、水蒸気を排気するための排気口は、コンベアベルトの通過する開口部を利用するか、トンネルを構成する筐体の上部に設けられている。
【0007】
水蒸気は空気より軽く自然対流によって上方へ流れるため、排気口を上方に設けることは合理的であり、本件出願人もすでに、排気口および排気流路を搬送ベルトの搬送面より上側に設けた、図4に示すような過熱水蒸気による加熱処理装置を特願2008‐295322として提案している。
【0008】
この図4に示す従来の加熱処理装置は、筒状筐体20によって構成された搬送ベルト11の走行するトンネル通路21内に水蒸気噴出ノズル41から過熱水蒸気を供給して、搬送ベルトにより搬送される食品等の被処理物または搬送ベルト自身を加熱処理して、洗浄・殺菌等を行うものである。搬送ベルト11は駆動ローラ12によって駆動される。
【0009】
トンネル通路21を構成する筒状筐体20の両端のトンネル通路入口22および出口23の付近に、トンネル通路21内の水蒸気とともに外部から侵入する外気を上方へ吸引する1対の吸引ダクト31,32の一端をそれぞれ結合し、この1対の吸引ダクト31,32の他端に、このダクトで吸引された水蒸気および外気を吸引ファン35により吸引して外部へ排気する排気ダクト34を結合している。
【0010】
このような加熱処理装置においては、吸引ダクト31,32により搬送ベルト11の出入するトンネル通路21の両端の入口22および出口23から侵入する外部の空気とともにトンネル通路21内の余剰の水蒸気が吸引され、排気ダクト34を通して外部へ排出される。搬送ベルト11の出入口を構成する開口部は左右に2箇所あるので、吸引ダクトも左右にそれぞれ設けられ、筒状筐体20の上方に配設される。
【0011】
吸引ダクト31,32および排気ダクト34で構成された排気通路は、空気より軽い高温の水蒸気が通過するため、煙突の排気原理によってトンネル通路21の出入口22,23を構成する開口部から外気を吸引する効果があり、その強さは、排気通路を流れる気体の密度が低いほど大きくなる。
【0012】
このような排気通路の煙突効果等によりトンネル通路の出入口で排気通路を構成する吸引ダクトによって外気が良好に吸引されることにより、トンネル通路内への外気の侵入が抑制されるため、トンネル通路内の温度低下を防止することができるとともにトンネル通路内の温度分布の均一性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平06−153881号公報
【特許文献2】特開平11−346645号公報
【特許文献3】特開2002‐199986号公報
【特許文献4】特開2004‐041098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記の従来の過熱水蒸気による加熱処理装置においては、搬送ベルトより上位方へ外気を吸引し、排気するように排気通路が設けられているため次のような問題がある。
【0015】
すなわち、何らかの原因により水蒸気の排気量が左右何れかの排気通路で偏りが生じると、水蒸気の流量が多くなった側の排気通路では気体密度が低くなり、煙突効果が高くなるため、一層排気量が大きくなる。一方、水蒸気の量が減少した側の排気通路では、気体密度が高くなり煙突効果が低下するため、排気量が一層低下する。このため、水蒸気の排気量の偏りがさらに増大されることになる。
【0016】
また、排気量の少なくなった側のトンネル通路の出入口部では、水蒸気の排気量が減少するため、外気の流入を抑えることができなくなることにより、トンネル通路内の温度が低下するという問題が生じる。
【0017】
そして排気通路を細くして排気通路の通流抵抗を大きくすれば、排気量の偏りを抑制することができるが、同じ排気量に対して大きな容量の吸引ファンなどの排気装置が必要となるため、装置のコストが増大する問題が生じる。
【0018】
加熱処理装置の設置された建屋内の空調設備等から加熱処理装置に横風が吹き付けられるような状況では、無風状態の時より水蒸気の排気量が片側の排気通路に偏る現象が発生しやすくなる。すなわち、横風の吹き付ける側の出入口の開口部では、外気の流入が増大する代わりに水蒸気の排気量が少なくなるため、加熱空間であるトンネル通路内の温度が横風の吹き込む側の入口または出口付近で低下し、均一な温度分布を維持することができなくなる。
【0019】
この発明の課題は、このような問題点を解決して、搬送ベルトの出入するトンネル通路の左右両端の開口部から水蒸気が漏出するのを防止するとともに、横風が吹き付けてもトンネル通路内の温度分布の変動を抑え均一に保つことのできる過熱水蒸気による加熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明は、前記の課題を解決するため、被処理物の走行する両端の開口したトンネル通路内に過熱水蒸気を供給して前記被処理物の加熱処理を行うものにおいて、前記トンネル通路を構成する中空筐体の両端の開口部付近に、前記トンネル通路内の水蒸気および外部からトンネル通路内に侵入する外気をこのトンネル通路より下方へ吸引して、外部へ排気する排気ダクトを結合したことを特徴とするものである。
【0021】
この発明においては、前記トンネル通路を構成する中空筐体内のトンネル通路の上方に断熱室または断熱材を設け、この断熱室内または断熱材上方に水蒸気噴出ノズルを収容し、この水蒸気噴出ノズルにより前記トンネル通路内に過熱水蒸気を吹き込むようにするのがよい。
【0022】
さらに、前記トンネル通路の底壁と前記排気ダクトの間に断熱室または断熱材を設けることもできる。
【発明の効果】
【0023】
このように被処理物の走行するトンネル通路両端の開口したトンネル通路内に過熱水蒸気を供給して前記被処理物の加熱処理を行うものにおいて、前記トンネル通路を構成する中空筐体の両端の開口部付近に排気ダクトを結合して前記トンネル通路内の水蒸気および外部からトンネル通路内に侵入する外気をこのトンネル通路より下方へ吸引して外部へ排出するようにしたので、排気通路の片方へ水蒸気の排気量の偏りが生じると、水蒸気の排気量が増大した側の排気通路では、水蒸気の上向きの浮力が増加して排気通路への流入量を抑える方向に煙突効果が作用するため、排気量を減少させ、反対に水蒸気の排気量が減少した側の排気通路では、煙突効果が相対的に増大するため流入量を増大させるので、両端の排気通路の排気量の偏りを抑制して平衡させることができる。
【0024】
また、加熱処理装置へ横風が吹きこむようなことがあっても、同様の原理によって排気流量の偏りの発生を抑制することができる。さらに、外部からトンネル通路内に侵入する外気は低温のため、トンネル通路の底面に沿って内部に侵入するためトンネル通路の下方に吸引することにより外気のトンネル通路の奥への侵入が抑制される効果も得られる。したがって、この発明によれば、加熱処理装置のトンネル通路の両端開口部付近の温度低下を抑制できトンネル通路内の温度分布が均一な過熱水蒸気による加熱処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施例の加熱処理装置の構成を示す正面断面図。
【図2】図1のII−II線の縦断面図。
【図3】この発明の実施例の加熱処理装置および従来の加熱処理装置におけるトンネル通路内の温度分布を比較して示す特性図。
【図4】従来の加熱処理装置の構成を示す正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の実施の形態を、図に示す実施例について説明する。
【0027】
図1および図2はこの発明の実施例を示すものであり、図4に示す従来装置と同一の機能を有する構成要素は同一の符号を付して示す。
【0028】
図1および図2において、1は食品等の被処理物を搬送するベルトコンベアであり、搬送ベルト11とこれを駆動する駆動ローラ12を備える。2は加熱処理装置であり、中空筐体としての筒状筐体20を備える。ここで、この実施の形態では、中空筐体として断面形状が四角形の筒状筐体20を例に挙げて説明するが、中空筐体の断面形状は円形または多角形としてもよい。
【0029】
この筒状筐体20は、内部に搬送ベルト11を通すために左右の両端に入口22および出口23となる開口部を備えたトンネル通路21を形成する。筒状筐体20は、さらにトンネル通路21の上部に断熱材を充填して構成された断熱室61を備える。この断熱室61はトンネル通路21の上部を外気から断熱するものであり、この室内には過熱水蒸気噴出用の複数の水蒸気噴出ノズル41〜43が収容されている。
【0030】
なお、この実施の形態では中空空間を有する断熱室61としているが、これに代えてトンネル通路21の上部に断熱材を設け、この断熱材の上方に複数の水蒸気噴出ノズル41〜43を配置するようにしても良い。この断熱室61に収容された水蒸気噴出ノズル41〜43は、搬送ベルト11の走行方向に適宜の間隔で分散して配置され、過熱水蒸気をトンネル通路21内に吹き込むためにそれぞれの噴出口41a〜43aをトンネル通路21の天上壁24に貫通して設けた吹込口24a〜24cにそれぞれ挿入してトンネル通路21と連通させる。各水蒸気噴出ノズルの噴出口41a〜43aはトンネル通路21内を走行する搬送ベルト11の全幅にわたって均等に過熱水蒸気を噴き出すためにトンネル通路21の横幅と等しい長さに形成された水蒸気噴出ノズルのほぼ全長に亘って開口したスリットにより形成されている。
【0031】
また、トンネル通路21の底壁25の両端部のトンネル通路21の入口22および出口23に付近にこれを貫通する排気口25a、25bを設け、筐体20の下方に、両端をこれらの排気口25a,25bにそれぞれ連通結合した吸引ダクト71を設けている。吸引ダクト71の中央部に排気ヘッダ72を設け、この排気ヘッダ72に吸引ファン74を備えた排気ダクト73を結合している。吸引ダクト71とトンネル通路21の底壁25との間の空間に断熱材を充填して断熱室62を構成し、これによってトンネル通路21の下部を外気から断熱する。なお、この実施の形態では中空空間を有する断熱室62としているが、これに代えてトンネル通路21の下部に断熱材のみを設けるようにしても良い。
【0032】
次に、このように構成された加熱処理装置により搬送ベルト11を洗浄・殺菌するための加熱処理について説明する。
【0033】
特に、食肉等の生鮮食品の製造、加工に使用される食品搬送用ベルトコンベア1は、メッシュ状または梯子状の金属ベルトで構成された搬送ベルト1上に生鮮食品を直載して搬送するので、搬送ベルトを清潔な衛生状態に保つために、加工開始前または加工終了後に、ベルトコンベア1を空運転し、搬送ベルト11を加熱処理装置2のトンネル通路21の中を通して高温の過熱水蒸気により加熱処理して洗浄・殺菌を行い、清潔な状態に維持する必要がある。
【0034】
このような洗浄・殺菌のための加熱処理を開始する前に、加熱処理装置2の電気ヒータ51により搬送ベルト11の通されたトンネル通路21の予熱を行うが、この電気ヒータ51は、断熱室61内に、トンネル通路21の天上壁24に接合して配置されるため、効率よくトンネル通路21の予熱を行うことができ、トンネル通路21内の温度を短時間で所定の温度まで昇温することができる。
【0035】
このような電気ヒータ51による予熱によってトンネル通路21内の温度が所定の温度まで高められたところで、水蒸気噴出ノズル41〜43により150〜400℃の高温に加熱された過熱水蒸気をトンネル通路21内に吹き込んで、トンネル通路21内の温度を洗浄・殺菌に必要な温度まで高める。過熱水蒸気の吹き込みと同時に吸引ファン74の運転を開始する。
【0036】
過熱水蒸気によってトンネル通路21内の温度が洗浄・殺菌に必要な温度まで高められたところで、食品搬送用ベルトコンベア1を状態で運転し、搬送ベルト11が加熱処理装置2のトンネル通路21内を連続的に通過する過程でトンネル通路21内に充満たされた高温の過熱水蒸気に曝されて洗浄・殺菌処理される。
【0037】
この発明の加熱処理装置2においては、トンネル通路21の長さ方向、すなわち搬送ベル11の走行方向に適宜の間隔をおいて配置された水蒸気噴出ノズル41〜43の噴出口41a〜43aを適宜な形状にして各噴出ノズルからジェット流としてトンネル通路21内に噴き出される過熱水蒸気の方向がトンネル通路21の底面に向けて下向きまたは両方向(出入口方向)に斜め下向きとなるようにしている。これにより過熱水蒸気はノズル41と42の間および42と43の間で図1に実線矢印で示すように、循環する流れを作り出すことができる。このようなトンネル通路21内における過熱水蒸気の循環流により、トンネル通路21内の温度を均一にすることができる。
【0038】
噴出ノズル41〜43から吹き込まれた過熱水蒸気によりトンネル通路21内の内圧が大気圧より高い圧力に高められ、トンネル通路21の搬送ベルト11の出入りする入口22および出口23からトンネル通路内への外気の侵入が抑制されるので、出入口22、23付近の蒸気濃度を高く維持することができ、この付近で凝縮水が発生するのを防止することができる。
【0039】
また、排気ダクト73に設けた吸引ファン74の吸引作用によりトンネル通路21の両端の入口22および出口23付近の排気口25aおよび25bに両端を結合した吸引ダクト71を通してトンネル通路21内の余剰の水蒸気が、入口22および出口23から侵入する外気(点線矢印)とともに吸引され、排気ヘッダ72および排気ダクト73を通して外部へ排出される。これによっても、外気がトンネル通路21の奥まで侵入するのが抑制される。そして外気とともに吸引された余剰の水蒸気は、排気ダクト73の先端に接続された図示しない水蒸気を冷却して凝縮する凝縮装置により水に戻して回収される。
【0040】
このような余剰水蒸気の吸引は、トンネル通路21の口22および出口23から水蒸気がトンネル通路外へ流出しないようにするために行うものであり、実施例の装置では、吸引する排気流量を0.25〜4.0Nm3/minの範囲で調整できるようにしている。吸引する排気流量が少ないと排気の温度が高くなり、吸引ファン35の前段に排気を冷却して水蒸気を除去するための凝縮器が必要となる場合がある。
【0041】
図1および図2に示すようにトンネル通路21の過熱水蒸気の一部を吸引して排気する吸引ダクト71は、トンネル通路21の両端の排気口25a、25bからトンネル通路内21内の過熱水蒸気および外気をこれより下方に吸引するように、トンネル通路21の下方に配設されている。このように、排気口25a,25bから下方に過熱水蒸気および外気を吸引すると、排気口25aおよび25b付近において、外気より高温で密度の低い過熱水蒸気に吸引を妨げる方向の上昇力が働くため、吸気ダクト71における過熱水蒸気による煙突効果が抑制されるようになる。
【0042】
通常は、トンネル通路21の両端の排気口25aおよび25bからの吸気量が等しく平衡するように設定されているが、何らかの原因、例えば、図1に図示するように、トンネル通路21の出口23に向けて横風Wが吹き込むことにより平衡が崩れ、一方の入口22側の排気口25aからの水蒸気の吸気量が大きくなり他方の出口23側の排気口25bからの水蒸気の吸気量が小さくなるような偏りが生じることがある。
【0043】
このように、両端の排気口25aおよび25bにおける水蒸気の吸気量に偏りが生じた場合、この発明の装置においては、前記したように過熱水蒸気が煙突効果を抑制するように作用するため、水蒸気の吸気量の大きくなった側の排気口においては、過熱水蒸気の量が増大することによって、吸気作用が抑制され、水蒸気の吸気量の小さくなった側の排気口においては、過熱水蒸気の量が減少することによって、吸気作用が増大されるようになる。これにより、トンネル通路21の両端の排気口25aおよび25bの水蒸気の吸気量が平衡に戻され過熱水蒸気の排気量の偏りが解消される。
【実施例】
【0044】
次のような諸元を有するこの発明の実施例の装置についてシミュレーションによりトンネル内の温度分布特性を求めたので、以下にこれについて説明する。
(1)ベルトコンベア1の搬送ベルト11の寸法:幅=600mm
(2)トンネル通路21の寸法:長さ=1600mm×幅=650mm×高さ=40mm(但し幅および高さの寸法は、出入口22、23の寸法)
(3)水蒸気噴出ノズル(41,42、43)の噴出口のスリットの寸法:幅=0.8mm×長さ=620mm
(4)水蒸気噴出ノズルの配置位置:水蒸気噴出ノズル42をトンネル通路21の中央の位置(0mm)に配置。水蒸気噴出ノズル41および43をそれぞれ中央から左右にそれぞれ−500mmおよび+500mm離れた位置に配置。
(5)水蒸気噴出ノズル41、42,43からの噴出過熱水蒸気流量の合計:14kg/h
(6)水蒸気噴出ノズル(41,42,43)からの噴出過熱水蒸気の温度:400℃
このような実施例の加熱処理装置2のトンネル通路21内の温度分布特性を図3に示す。トンネル通路21は中央の水蒸気噴出ノズル42を中心にして左右対称となっている。図3における横軸の距離は、中央の水蒸気噴出ノズル42の配置された中央の位置を基準(0mm)にして左側を(−)、右側を(+)の距離で示している。
【0045】
この図3の温度分布図は、前記諸元のとおりに構成された加熱処理装置2を、3個の蒸気噴出ノズル41、42,43から400℃に加熱された過熱水蒸気を14kg/hの流量でトンネル通路21内に吹込み、吸引ダクト71により両端の排気口25aおよび25bからトンネル通路21内の流体(主として水蒸気)を2.0Nm3/minの流量で吸引しながら運転している状態におけるトンネル通路21内の各位値におえる温度分布を示すものである。このとき、トンネル通路21の出口23側からトンネル通路21に向けて0.2m/sの横風が吹き込んでいる状態にあり、外気の温度は20℃としている。
【0046】
図3には、この発明の実施例の温度分布特性線Aと、図4に示す従来例の温度分布特性線Bを比較して示す。ここに比較例として示す従来装置の諸元は、吸引ダクト31,32の配置を除いてこの発明の実施例と同じにしてある。すなわち、図4には水蒸気噴出ノズルは、1個しか示されていないが、比較例とした従来装置は、この発明と同様に水蒸気不出ノズルを3個設置している。
【0047】
この発明の実施例のトンネル通路21内の温度は、図3の特性線Aから明らかなとおり、入口22および出口23付近を除いてほとんどが330〜380℃の範囲に保たれ、ほぼ均等な温度分布となっている。外部から横風の吹き込むトンネル通路21の出口23側では、外気が吹き込む関係で温度は、入口22側に比べて変動するが、温度の低下は入口22側とほとんど同じで差がなく、横風の影響をほとんど受けていないことが分かる。これは、出口23から横風により吹き込まれた外気により排気口25bから吸引される水蒸気の吸気量を減少させようとする作用が排気口25aと排気口25bでの煙突効果によるバランス回復作用によって抑えられることと、横風によって吹き込まれた外気がトンネル通路21の奥まで到達せず出口23の近傍で排気口25bから吸気ダクト71に吸引されることによるものである。
【0048】
これに対して従来装置は、図3の特性線Bで示すとおり、トンネル通路21内の温度が、水蒸気噴出ノズル41と43とに囲まれた範囲であっても200〜330℃まで低下し、横風の吹き込む出口側では、トンネル通路21の出口23から水蒸気噴出ノズル43の噴き出し位置付近まで外気が吹き込み、20℃付近まで低下し、トンネル通路21内の温度分布が大きく変動し不均一となる。このように従来装置は、横風が吹き込む場合、これの影響を大きく受けて、温度分布が大きく変動し、均一な温度分布を得ることができないのである。
【0049】
以上の説明から明らかなように、この発明によれば、搬送ベルトの出入口となるトンネル通路の左右両端の開口部からの水蒸気の漏出を防止することができるとともに、横風が吹き付けてトンネル通路内への外気侵入を抑制できるので、温度分布の均一性が良好な過熱水蒸気による加熱処理装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明の過熱水蒸気による加熱処理装置は、高温での処理の必要な食品の加熱処理、食品製造設備の洗浄・殺菌処理や、印刷物の乾燥処理等の多くの分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:ベルトコンベア、11:搬送ベルト、12:駆動ローラ、
2:加熱処理装置、20:筒状筐体、21:トンネル通路、22:入口、23:出口、
25a,25b:排気口、41〜43:蒸気噴出ノズル、41a〜43a:噴出口、
61,62:断熱室。
71:吸引ダクト、72:排気ヘッダ、73:排気ダクト、74:吸引ファン、
W:横風。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の走行する両端の開口したトンネル通路内に過熱水蒸気を供給して前記被処理物の加熱処理を行うものにおいて、前記トンネル通路を構成する中空筐体の両端の開口部付近に、前記トンネル通路内の水蒸気および外部からトンネル通路内に侵入する外気をこのトンネル通路より下方へ吸引して、外部へ排気する排気ダクトを結合したことを特徴とする過熱水蒸気による加熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の過熱水蒸気による加熱処理装置において、前記トンネル通路を構成する中空筐体内のトンネル通路の上方に断熱室または断熱材を設け、この断熱室内または断熱材上方に水蒸気噴出ノズルを収容し、この水蒸気噴出ノズルにより前記トンネル通路内に過熱水蒸気を吹き込むことを特徴とする過熱水蒸気による加熱処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の過熱水蒸気による加熱処理装置において、前記トンネル通路の底壁と前記排気ダクトの間に断熱室または断熱材を設けてることを特徴とする過熱水蒸気による加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−279432(P2010−279432A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133328(P2009−133328)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】