説明

過熱蒸気発生装置及び方法,過熱蒸気加工方法

【課題】取付部位や部品が複雑な形状であったり、作業空間が狭いような場合でも、良好にクリップ等を必要としない部品の取り付けを行うとともに、安全性の向上を図る。
【解決手段】過熱蒸気の出力が指示されると、制御部70によって、蒸気供給部20,交流電源44,出力報知部50が駆動され、蒸気供給部20から飽和蒸気が過熱蒸気発生部30に供給されるとともに、交流電源44から交流電流が電磁誘導加熱部40の誘導コイル42に供給される。これにより、過熱蒸気発生部30の発熱体32に誘導電流が流れて発熱し、更には、飽和蒸気が発熱体32によって加熱され、過熱蒸気が生成される。生成された過熱蒸気は、ノズル34から吐出される。同時に、出力報知部50から着色剤等が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱蒸気発生装置及び方法,過熱蒸気加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の組み立て工程などでは、下記特許文献1に開示されているように、クリップやビスを利用して内装部品の取り付けが行われている。しかし、それらクリップやビスを使用することなく、部品の取り付けを行うことができれば、作業工程の簡略化,自動車の軽量化などを図ることができ、好都合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平01-25936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クリップなどを使用することなく、部品を取り付ける方法の一つとして、電磁誘導加熱により該当部位を加熱して接着剤を溶融し、部品を接着する方法が考えられる。しかし、この方法では、電磁誘導によって発熱する金属板などの発熱体を被接着物と接着物との間に設ける必要がある。また、取付部位や部品が複雑な形状であったり、作業空間が狭いような場合は、電磁誘導加熱用のヘッドを該当部位に近接させることができず、良好に該当部位を加熱することができない恐れがある。
【0005】
本発明は、以上のような点に着目したもので、その目的は、発熱体がなくても、良好にクリップ,ネジ(ビス),それらの支持部品を必要としない部品の取り付けを行うことである。他の目的は、取付部位や部品が複雑な形状であったり、作業空間が狭いような場合でも、良好にクリップ等を必要としない部品の取り付けを行うことである。更に他の目的は、熱可塑性あるいは熱硬化性の接着剤の可塑反応あるいは硬化反応を促進し、反応時間の短縮を図ることである。クリップやネジ等を使用することなく部品の取付けを行って、作業工程の簡略化,作業時間の短縮,各種機器の軽量化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、過熱蒸気を発生するための過熱蒸気発生装置であって、前記過熱蒸気の出力に対応して、有色気体,有臭気体,光,音,もしくは振動のうちの少なくとも一つを出力して、過熱蒸気が出力されていることを報知する報知手段,を備えたことを特徴とする。他の発明は、前記過熱蒸気に着色もしくは着臭を行って、過熱蒸気が出力されていることを報知する報知手段,を備えたことを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つは、前記過熱蒸気を、電磁誘導加熱によって生成することを特徴とする。他の形態の一つは、前記電磁誘導加熱を行うためのコイルを冷却する冷却手段を備えたことを特徴とする。更に他の形態の一つは、過熱蒸気を再加熱して吐出する吐出ヘッドを備えたことを特徴とする。更に他の形態の一つは、過熱蒸気を吐出するノズルを、吐出対象に応じて交換することを特徴とする。更に他の形態の一つは、解除されることによって前記過熱蒸気の出力を可能とするか、もしくは、過熱蒸気の出力中に所定の事態が生じたいときに前記過熱蒸気の出力を停止する安全手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の過熱蒸気発生方法は、色,臭,光,音,もしくは振動のうちの少なくとも一つによって、前記過熱蒸気が出力されていることを報知することを特徴とする。主要な形態の一つは、過熱蒸気を使用して対象物に穴あけもしくは切断を含む所望の加工を施すことを特徴とする。他の形態の一つは、前記加工が対象物に被対象物を取り付ける加工であり、該対象物と被対象物との間に、接着剤もしくは樹脂溶着棒による溶融樹脂のみが介在することを特徴とする。更に他の形態の一つは、前記加工の対象物が成形品であり、該成形品に、前記過熱蒸気を使用して二次成形を施すことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、過熱蒸気を使用して対象物の加工を行うこととしたので、発熱体がなくても、良好にクリップ,ネジ,それらの支持部品を必要としない部品の取り付けを行うことでき、作業工程の簡略化,作業時間の短縮,各種機器の軽量化を図ることができる。また、取付部位や部品が複雑な形状であったり、作業空間が狭いような場合でも、良好にクリップ等を必要としない部品の取り付けを行うことができる。更に、過熱蒸気を使用することで、熱可塑性あるいは熱硬化性の接着剤の可塑反応あるいは硬化反応を促進し、反応時間の短縮を図ることができる。色,臭,光,音,もしくは振動のうちの少なくとも一つによって、前記過熱蒸気が出力されていることが報知されるので、過熱蒸気を利用する際の安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1にかかる過熱蒸気発生装置の構成を示す図である。
【図2】各種のノズルの例を示す図である。
【図3】本発明の実施例2にかかる過熱蒸気発生装置の構成を示す図である。
【図4】前記実施例2の吐出ヘッドを用いた作業例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
最初に、図1を参照しながら、本発明にかかる過熱蒸気発生装置の実施例について説明する。図1には、本実施例にかかる過熱蒸気発生装置の構成が示されている。同図において、過熱蒸気出力ヘッド10は、蒸気供給部(ボイラー)20から供給される飽和蒸気を過熱蒸気発生部30で加熱して過熱蒸気を生成し吐出する機能を備えている。過熱蒸気発生部30の外周には、電磁誘導加熱部40が設けられており、これによって、過熱蒸気発生部30の発熱体32が電磁誘導により加熱されるようになっている。更に、過熱蒸気発生部30の過熱蒸気吐出側には、ノズル34が設けられている。ノズル34には、各種の交換ノズルが着脱可能となっており、過熱蒸気の出力先(用途や目的)に応じて、適宜の形状や長さのものが用意される。ノズル34自体を交換してもよい。
【0013】
電磁誘導加熱部40は、過熱蒸気発生部30の外周に巻回された誘導コイル42を中心に構成されており、その外側には冷却管90が巻回されている。誘導コイル42には、交流電源44から駆動用の交流電流が供給されるようになっている。冷却管90には、配管92から冷却水が供給されるようになっている。冷却管90を通過した冷却水は、配管94によって蒸気供給部20に供給されるようになっている。蒸気供給部20及び交流電源44は、制御装置70に接続されている。
【0014】
過熱蒸気出力ヘッド10(もしくは過熱蒸気発生部30)には、出力報知部50が設けられている。出力報知部50としては、着色部52,着臭部54,発光部56,発音部58,振動部60の少なくとも一つが該当する。これらのうち、着色部52は、スイッチ52SがOFFからONとなったときに、発煙筒のような着色気体容器から色がついた気体を吐出するか、もしくは、過熱蒸気に着色するための着色剤を吐出する機能を備えている。着色剤の吐出量は、過熱蒸気の吐出量に応じて設定され、制御装置70により制御される。着臭部54は、スイッチ54SがOFFからONとなったときに、臭気の圧縮容器から臭いとして感じられる気体を吐出するか、もしくは、過熱蒸気に臭いをつけるための付臭剤を吐出する機能を備えている。付臭剤の吐出量は、過熱蒸気の吐出量に応じて設定され、制御装置70により制御される。発光部56は、スイッチ56SがOFFからONとなったときに、LEDなどの発光手段を点灯ないし点滅させる機能を有している。発音部58は、スイッチ58SがOFFからONとなったときに、警告音を鳴らす機能を有している。振動部60は、スイッチ60SがOFFからONとなったときに、振動素子を駆動して振動を発する機能を有している。スイッチ52S〜60Sは、制御装置70に接続されており、過熱蒸気が出力されるときに、OFFから0Nに切替制御されるようになっている。
【0015】
過熱蒸気出力ヘッド10には、また、吐出スイッチ72,吐出設定つまみ74,及び温度センサ76がそれぞれ設けられている。これらのうち、吐出スイッチ72は、過熱蒸気発生部30からの過熱蒸気の吐出のON・OFFを指示するためのスイッチである。吐出設定つまみ74は、過熱蒸気発生部30からの過熱蒸気の吐出量及び温度を設定するためのスイッチである。温度センサ76は、吐出される過熱蒸気の温度を検知するためのセンサである。これらの吐出スイッチ72,吐出設定つまみ74,温度センサ76も、制御装置70に接続されている。
【0016】
過熱蒸気出力ヘッド10には、更に、過熱蒸気吐出における安全性を確保するための安全装置78が設けられている。具体的な形態としては、例えば、
a,過熱蒸気を吐出する際に作業者が操作する複数のレバーやスイッチなどの安全機構:安全機構(複数あるときはそれらのすべて)を解除しなければ、過熱蒸気が吐出されない。
b,過熱蒸気出力ヘッド10が支持機構や作業者の手から離れて、握力や支持力が低下したときに、それを検知する圧力感知センサ:該センサによる検知があったときは、過熱蒸気の吐出が停止ないし中断される。
c,熱蒸気出力ヘッド10に、一定以上の振幅の振動や衝撃あったことを検知する振動センサ:該センサによる検知があったときは、過熱蒸気の吐出が停止ないし中断される。
d,ロボットアームの予め登録した想定外の動きを検知するセンサ:該センサによる検知があったときは、過熱蒸気の吐出が中断される。
e,上記a〜dの少なくとも2つの組み合わせ
が考えられる。このような安全装置76も、制御装置70に接続されている。
【0017】
上述した過熱蒸気発生部30には、更に、圧力センサ300,安全弁302,飽和蒸気検知器304,簡易排出口306が設けられている。これらのうち、圧力センサ300は、過熱蒸気発生部30内の蒸気圧力を検知するためのものであり、例えばノズル34の蒸気吐出口がつまるなどのために異常な圧力が検知されたときは安全弁302が動作して圧力を下げるようになっている。飽和蒸気検知器304は、過熱蒸気発生部30で発生している蒸気が過熱蒸気か飽和蒸気かを検知するためのセンサで、飽和蒸気が検知されたときは安全弁302が動作して加熱温度や蒸気発生量を制御するようになっている。簡易排出口306は、過熱蒸気吐出の停止時に、残留過熱蒸気を吐出するためのものである。これら圧力センサ300,安全弁302,飽和蒸気検知器304,簡易排出口306も、制御装置70に接続されている。なお、圧力センサ300と安全弁302を兼用してもよい。安全弁302は、所定の圧力になると過熱蒸気を逃がすように動作するので、安全弁302が動作したということは、過熱蒸気発生部30内が所定の蒸気圧力となったことを意味する。
【0018】
制御装置70には、主制御プログラム70Aと、バックアップ制御プログラム70Bが設けられている。通常は主制御プログラム70Aが動作し、各部の動作を制御する。バックアップ制御プログラム70Bは、主制御プログラム70Aの動作を監視しており、主制御プログラム70Aの動作に異常が生じたときは、その動作を停止するとともに、バックアップ制御プログラム70Bが動作を開始する。
【0019】
ノズル34の先端部34Aには、必要に応じて各種の形状の交換ノズルが取り付けられる。図2には、その一例が示されている。同図(A)は、吐出口の形状が円であって、口径が異なる例である。同図(B)は、吐出口の形状が楕円であって、口径が異なる例である。同図(C)は、吐出口が形状が長円ないしスリット状であって、長さや幅が異なる例である。同図(D)は、吐出口の形状を変更する例である。同図(E)は、交換ノズルが曲折している例である。曲折の前後で口形状を変更してもよい。図示したものの他、口の形状,大きさ,長さなど、必要に応じて適宜設定してよい。このような交換ノズルは、例えば金属バンドなどの接続用締め具を利用して前記ノズル34の先端部34Aに接続固定される。ノズル34が長いと過熱蒸気の温度が下がってしまうので、例えば200mm以内とする。ノズル34として長いものを使用するときは、ノズル34における温度降下を考慮して、ノズル手元側,すなわち過熱蒸気発生部30における過熱蒸気の温度を上げるようにする。
【0020】
更に、本実施例では、過熱蒸気発生部30,電磁誘導加熱部40及び出力報知部50によって構成された過熱蒸気出力ヘッド10は、作業者ないし作業ロボットなどによって持ち運び可能な可搬型となっており、他の蒸気供給部20,交流電源44及び制御部70は、据置型となっている。なお、各部を可搬型又は据置型のいずれとするかは、必要に応じて適宜決めてよい。
【0021】
次に、本実施例の動作を説明する。自動車のボディ80と部品82との間には、予めホットメルト接着剤84が塗布される。また、作業者は、部品82の取り付け部位に好適なノズル34を過熱蒸気発生部30の吐出側に取り付けるとともに、吐出設定つまみ74によって必要な過熱蒸気の吐出量及び温度を設定する。そして、作業者が安全装置78を解除し、更に吐出スイッチ72をONとする。
【0022】
すると、制御装置70は、安全装置78が解除されていることを確認し、前記吐出量設定つまみ74によって設定された吐出量及び温度となるように、過熱蒸気出力ヘッド10,蒸気供給部20,交流電源44を駆動する。すなわち、蒸気供給部20から飽和蒸気が過熱蒸気発生部30に供給されるとともに、交流電源44から交流電流が電磁誘導加熱部40の誘導コイル42に供給される。これにより、過熱蒸気発生部30の発熱体32に誘導電流が流れて発熱し、更には、飽和蒸気が発熱体32によって加熱され、過熱蒸気が生成されるようになる。過熱蒸気の温度は、温度センサ76によって検知され、この検知結果に基づいて制御装置70は、過熱蒸気の温度が設定温度となるように制御を行う。例えば、誘導コイル42に対する通電量を調整する。過熱蒸気の吐出量は、例えば、蒸気供給部20からの飽和蒸気の供給量を調整する,ノズル34を加熱対象に近づける,などの方法で制御する。
【0023】
このとき、温度センサ76で異常な温度が検知されたり、安全装置78において異常な振動等が検知されたり、圧力センサ300で異常な圧力が検知されたり、飽和蒸気検知器304で飽和蒸気が検出されたときは、その旨が制御装置70に通知され、誘導コイル42に対する通電量を減らす,蒸気供給部20からの飽和蒸気の供給量を調整する,安全弁302を解放するなどの動作が行われる。
【0024】
ところで、生成された過熱蒸気がノズル34から吐出される際に、本実施例では、出力報知部50のスイッチ52S〜60Sが、制御装置70によってOFFから0Nに切り替えられる。例えば、出力報知部50が着色部52であり、そのスイッチ52SがOFFからONとなったときは、色がついた気体が吐出されるか、もしくは、過熱蒸気に着色するための着色剤が吐出される。これにより、過熱蒸気出力ヘッド10から過熱蒸気が出力されていることを目視等により知ることができる。過熱蒸気は、例えば自動車のボディ80と部品82との間に設けられたホットメルト接着剤84を溶解する。これにより、ボディ80に対する部品82の接着が行われる。また、電磁誘導加熱部40では、冷却管90に冷却水が供給され、その冷却が行われる。これによって暖められた冷却水ないし蒸気は、蒸気供給部20に供給されて再利用される。
【0025】
加えて、過熱蒸気吐出中に過熱蒸気出力ヘッド10を作業者が落としたといった事態が生じたときは、それが安全装置78によって検知され、制御装置70によって過熱蒸気の吐出が停止される。具体的には、蒸気供給部20による蒸気供給の停止や誘導コイル42に対する通電の停止が行われる。また、必要があれば、安全弁302から蒸気が解放される。
【0026】
このように、本実施例によれば、次のような効果がある。
(1)過熱蒸気により、自動車の素材・内装材で複雑な形状部位の取付接着を行うことで、発熱体を必要とせずに、クリップレスにする,あるいはメスネジや車体側の内装パネル支持部品をなくして接合ないし接着を行うことができ、作業工程の簡略化,作業時間の短縮,自動車の軽量化を図ることができる。
(2)過熱蒸気を使用することで、熱可塑性あるいは熱硬化性の接着剤の可塑反応あるいは硬化反応を促進することができ、反応時間の短縮を図ることができる。
(3)過熱蒸気の吐出ノズルを変えることにより、素材や部品の切断・穴加工などの各種の加工を行うことができる。なお、過熱蒸気の温度は、加工対象に応じて適宜設定してよいが、例えば200℃〜900℃で使用する。
(4)過熱蒸気の吐出ノズルを変えることにより、自動車の素材・部品・内装材で複雑な形状の部位を、二次成形加工することができる。
(5)取付部位や部品が複雑な形状であったり、作業空間が狭いような場合でも、過熱蒸気を
利用した加熱処理を行って部品の取り付けを行うことである。
(6)安全装置が解除されたときに過熱蒸気が出力され、また、出力報知部50によって過熱蒸気が出力されていることが報知されるので、安全性が確保される。
【実施例2】
【0027】
次に、図3を参照しながら、本発明の実施例2について説明する。より狭い部位の加熱を行うためには、蒸気吐出部分の小型化を図ることが望ましい。そこで、本実施例では、前記実施例1に示した過熱蒸気発生部30の先に、携帯型の吐出ヘッド100を設けている。
【0028】
詳述すると、上述した図1の過熱蒸気発生部30のノズル34は、屈曲自在の配管102を介して、吐出ヘッド100の再加熱部110に接続されている。再加熱部110の内部には、発熱体112が設けられており、これが電磁誘導加熱部120によって発熱することで、過熱蒸気の再加熱が行われるようになっている。電磁誘導加熱部120のコイル122には、上述した交流電源44から交流電流が供給されている。また、再加熱部110の過熱蒸気吐出側には、ノズル114が設けられている。また、上述した出力報知部50,吐出スイッチ72,吐出設定つまみ74,温度センサ76,安全装置78は、いずれも吐出ヘッド100側に設けられている。なお、出力報知部50は、簡略化して示しているが、前記実施例と同様であり、着色部52,着臭部54,発光部56,発音部58,振動部60の少なくとも一つが該当する。
【0029】
本実施例によれば、上述した過熱蒸気発生部30も据え置かれており、吐出ヘッド100が自在に携帯可能となっている。過熱蒸気発生部30で生成された過熱蒸気は、配管102を通じて吐出ヘッド100に供給されるが、配管102を通過する際に温度が下がってしまう恐れがある。そこで、吐出ヘッド100の再加熱部110において過熱蒸気の再加熱が行われ、所望の温度の過熱蒸気が吐出ヘッド100から吐出されるようになる。
【0030】
図4には、本実施例の吐出ヘッド100を利用して自動車200に対する部品82の取り付けを行う様子が示されている。吐出ヘッド100は、ロボットアーム202の先端に把持され、所望の部位に向けて吐出ヘッド100から過熱蒸気が吐出される。このとき、吐出ヘッド100のノズル114を適宜の形状とすることで、ボディや部品の隙間にノズル先端を入り込ませることができ、狭空間内における過熱蒸気を吐出した各種処理が可能となる。本例でも、過熱蒸気が出力されているときは、出力報知部50による報知が行われるので、作業者(図示せず)の安全が確保される。
【0031】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、自動車ボディに部品を取り付ける場合を説明したが、自動車以外の各種の機器に適用可能である。金属と樹脂とを接合する場合に限らず、樹脂同士や樹脂成形品と化学繊維など、各種の組み合わせに適用可能である。また、部品の取り付けなどに限定されるものではなく、過熱蒸気を利用した各種の処理に適用してよい。
(2)前記実施例では、ホットメルト接着剤を過熱蒸気で加熱・溶解する場合を示したが、適宜のノズルを使用することで、各種の加熱を必要とする接合や加工に適用してよい。例えば、樹脂の切断加工や穴加工にも適用可能である。樹脂を切断する場合、切断端面に焦げ付きができたり、溶けて固まった変質部が形成されたりする恐れがある。しかし、過熱蒸気,特に高圧の過熱蒸気を使用することで、そのような不都合のない切断が可能となる。切断や穴あけ等の他に、樹脂の二次成形を行うようにしてもよい。例えば、自動車用素材,部品,内装材であって複雑な形状の部位を二次成形加工してよい。
(3)また、樹脂製のダボやスティックを、樹脂溶着棒として過熱蒸気で溶融して固定するようにしてよい。接着剤に重ねて樹脂溶接棒による溶融接着を行うようにしてもよい。
(4)前記実施例では、過熱蒸気発生部30に出力報知部50を設けたが、図2の実施例においては、吐出ヘッド100側に出力報知部50を設けるようにしてもよい。あるいは、過熱蒸気発生部30と吐出ヘッド100の両方に出力報知部50を設けてもよい。
(5)前記実施例では、電磁誘導加熱を利用して過熱蒸気を生成したが、各種の方法で生成してよい。図2の吐出ヘッドにおける再加熱についても同様に電磁誘導加熱以外の電気ヒーターなどによる加熱を行ってもよい。
(6)前記実施例では、誘導コイル42と冷却管90とをそれぞれ設けたが、冷却管90を銅製のパイプ等で構成し、誘導コイル42と兼用する構成としてもよい。
(7)前記実施例では、据置型,可搬型の場合を説明したが、もちろん携帯型とすることを妨げるものではない。携帯型過熱蒸気発生装置の場合、例えば、過熱蒸気出力ヘッド10に、蒸気供給部20の代わりに水供給部を設けるとともに、交流電源44,制御装置70を含め、更に、各部を駆動するためのバッテリーを追加するようにする。
(8)前記実施例では、蒸気供給部20から飽和蒸気を過熱蒸気発生部30に供給して過熱蒸気を生成したが、飽和蒸気の代わりに、水ないし温水を過熱蒸気発生部30に供給して過熱蒸気を生成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、発熱体がなくても、良好にクリップ,ネジ(ビス),それらの支持部品を必要としない部品の取り付けを行うことができるとともに、取付部位や部品が複雑な形状であったり、作業空間が狭いような場合でも、良好にクリップ等を必要としない部品の取り付けを行って、作業工程の簡略化,作業時間の短縮,自動車等の各種機器の軽量化を図ることができ、過熱蒸気が出力されていることを着色等によって報知することとしたので、安全性も向上し、過熱蒸気を利用した各種の加工処理に好適である。
【符号の説明】
【0033】
10:過熱蒸気出力ヘッド
20:蒸気供給部
30:過熱蒸気発生部
32:発熱体
40:電磁誘導加熱部
42:コイル
44:交流電源
50:出力報知部
52:着色部
54:着臭部
56:発光部
58:発音部
60:振動部
70:制御装置
70A:主制御プログラム
70B:バックアップ制御プログラム
72:吐出スイッチ
74:吐出設定つまみ
76:温度センサ
78:安全装置
80:ボディ
82:部品
84:ホットメルト接着剤
90:冷却管
92,94:配管
100:吐出ヘッド
102:配管
110:再加熱部
112:発熱体
114:ノズル
120:電磁誘導加熱部
122:コイル
200:自動車
202:ロボットアーム
300:圧力センサ
302:安全弁
304:飽和蒸気検知器
306:簡易排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱蒸気を発生するための過熱蒸気発生装置であって、
前記過熱蒸気の出力に対応して、有色気体,有臭気体,光,音,もしくは振動のうちの少なくとも一つを出力して、過熱蒸気が出力されていることを報知する報知手段,
を備えたことを特徴とする過熱蒸気発生装置。
【請求項2】
過熱蒸気を発生するための過熱蒸気発生装置であって、
前記過熱蒸気に着色もしくは着臭を行って、過熱蒸気が出力されていることを報知する報知手段,
を備えたことを特徴とする過熱蒸気発生装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の過熱蒸気発生装置であって、
前記過熱蒸気を、電磁誘導加熱によって生成することを特徴とする過熱蒸気発生装置。
【請求項4】
前記電磁誘導加熱を行うためのコイルを冷却する冷却手段を備えたことを特徴とする請求項3記載の過熱蒸気発生装置。
【請求項5】
過熱蒸気を再加熱して吐出する吐出ヘッドを備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の過熱蒸気発生装置。
【請求項6】
過熱蒸気を吐出するノズルを、吐出対象に応じて交換することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の過熱蒸気発生装置。
【請求項7】
解除されることによって前記過熱蒸気の出力を可能とするか、もしくは、過熱蒸気の出力中に所定の事態が生じたいときに前記過熱蒸気の出力を停止する安全手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の過熱蒸気発生装置。
【請求項8】
過熱蒸気を発生するための過熱蒸気発生方法であって、
色,臭,光,音,もしくは振動のうちの少なくとも一つによって、前記過熱蒸気が出力されていることを報知することを特徴とする過熱蒸気発生方法。
【請求項9】
過熱蒸気を使用して対象物に穴あけもしくは切断を含む所望の加工を施すことを特徴とする請求項8記載の過熱蒸気加工方法。
【請求項10】
前記加工が対象物に被対象物を取り付ける加工であり、該対象物と被対象物との間に、接着剤もしくは樹脂溶着棒による溶融樹脂のみが介在することを特徴とする請求項9記載の過熱蒸気加工方法。
【請求項11】
前記加工の対象物が成形品であり、該成形品に、前記過熱蒸気を使用して二次成形を施すことを特徴とする請求項9又は10記載の過熱蒸気加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−189283(P2012−189283A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54848(P2011−54848)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(398048110)合資会社ブラウニー (3)
【Fターム(参考)】