説明

過酸化水素水処理装置

【課題】%オーダーの比較的高濃度の過酸化水素含有排水であっても、連続運転で安定かつ効率的な処理を行える、構成が簡易で比較的小型な過酸化水素水処理装置を提供する。
【解決手段】被処理水を過酸化水素分解触媒と接触させて、該被処理水中の過酸化水素を酸素と水とに分解して処理水を得る過酸化水素水処理装置において、該被処理水の導入口と処理水の排出口を有し、内部に過酸化水素分解触媒1が充填された過酸化水素分解反応器2と、該過酸化水素分解反応器2の流出水が導入される気液分離器3とを有し、該気液分離器3は、上部に排気配管13が接続され、下部に排水配管14が接続された筒状容器4よりなり、該筒状容器4の側部に、前記流出水が導入されることを特徴とする過酸化水素水処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水を過酸化水素分解触媒と接触させて、該被処理水中の過酸化水素を酸素と水とに分解して処理水を得る過酸化水素水処理装置に係り、詳しくは、比較的高濃度の過酸化水素含有排水を連続的に処理することができる、構成が簡易で比較的小型な過酸化水素水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の洗浄や表面処理に、酸やアルカリなどの薬液と共に、酸化剤として過酸化水素水がよく用いられている。また、過酸化水素水は、各種の水処理系内を殺菌洗浄する際にも用いられ、ウェット洗浄において重要な役割を担っている。
【0003】
過酸化水素はその酸化力のため殺菌力が高く、系外へ排出する前に分解処理する必要がある。また、排水を回収して再利用する場合においても、排水中の過酸化水素は、回収設備内の生物処理設備に影響を与えることから、予め分解処理する必要がある。
【0004】
従来、過酸化水素を無害化する方法としては、過酸化水素を酸素と水に分解して処理する方法が一般的であり、過酸化水素の分解のために、薬品や酵素(カタラーゼ)を添加したり、活性炭に接触させたりする方法が採用されている。
【0005】
しかし、薬品や酵素による方法は、反応時間の確保のために所定の滞留時間を稼げるだけの容量の反応槽を必要とし、スペースの面で問題があった。また、酵素を用いる場合には、酵素分解に適当なpHに調整する必要もあり、処理が煩雑であった。
また、活性炭は、過酸化水素の分解能力が高くないために、%オーダーの比較的高濃度の過酸化水素含有排水の処理には不適当であった。
【0006】
これに対して、本願出願人は先に、平均粒子径1〜50nmの白金族金属のナノコロイド粒子を担体に担持させた過酸化水素分解触媒を用いて被処理水中の過酸化水素を除去する方法を提案した(特許文献1)。
このような過酸化水素分解触媒を用いる方法であれば、過酸化水素分解触媒を充填したカラムに被処理水を通水することにより、被処理水中の過酸化水素を効率的に分解処理することができ、特に、特許文献1で提案されるナノコロイド化した白金族金属の微粒子を担体に担持させた触媒であれば、反応速度が非常に速く、空間速度(SV)を大きくすることができ、通水液量が多いために触媒からの金属の流出の影響が小さくなり、また、触媒量が少なくて済み、処理コストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−185587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、主として、超純水製造装置中の過酸化水素含有水、より具体的には、超純水製造装置の紫外線酸化処理装置から排出される、過酸化水素濃度約30ppb(μg/L)程度の極微量の過酸化水素を含む水を処理対象としており、過酸化水素濃度が高く、過酸化水素の分解で大量の酸素が発生する場合についての検討がなされていない。
【0009】
即ち、特許文献1では、過酸化水素分解触媒を充填したカラムに過酸化水素含有水を好ましくは下向流通水した後、カラム流出水を直接膜脱気装置等の溶存酸素除去装置に通水して過酸化水素の分解で生成した酸素を除去している。
【0010】
しかしながら、過酸化水素を%オーダーで含むような、比較的過酸化水素濃度の高い過酸化水素含有排水を被処理水とした場合、過酸化水素の分解で生成する酸素量も多く、従って、このような多量の酸素を含むカラム流出水を特許文献1に記載されるように直接膜脱気装置等に通水すると、分離すべき酸素量が多いために、一般的な膜脱気装置では負荷が大きすぎることにより、安定運転を行えないという問題がある。
【0011】
従って、本発明は上記特許文献1における問題を解決し、%オーダーの比較的高濃度の過酸化水素含有排水であっても、連続運転で安定かつ効率的な処理を行える、構成が簡易で比較的小型な過酸化水素水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1)の過酸化水素水処理装置は、被処理水を過酸化水素分解触媒と接触させて、該被処理水中の過酸化水素を酸素と水とに分解して処理水を得る過酸化水素水処理装置において、該被処理水の導入口と処理水の排出口を有し、内部に過酸化水素分解触媒が充填された過酸化水素分解反応器と、該過酸化水素分解反応器の流出水が導入される気液分離器とを有し、該気液分離器は、上部に排気配管が接続され、下部に排水配管が接続された筒状容器よりなり、該筒状容器の側部に、前記流出水が導入されることを特徴とする。
【0013】
請求項2の過酸化水素水処理装置は、請求項1において、前記過酸化水素分解触媒が、白金属金属を担体に担持してなることを特徴とする。
【0014】
請求項3の過酸化水素水処理装置は、請求項2において、前記白金属金属が、平均粒子径1〜50nmの白金族金属のナノコロイド粒子であることを特徴とする。
【0015】
請求項4の過酸化水素水処理装置は、請求項2又は3において、前記担体がイオン交換樹脂であることを特徴とする。
【0016】
請求項5の過酸化水素水処理装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記被処理水の過酸化水素濃度が0.1〜5重量%であることを特徴とする。
【0017】
請求項6の過酸化水素水処理装置は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記被処理水は、前記過酸化水素分解反応器に上向流で通水されることを特徴とする。
【0018】
請求項7の過酸化水素水処理装置は、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記被処理水は、前記過酸化水素分解反応器に、空間速度(SV)10〜500hr−1で通水されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の過酸化水素水処理装置は、過酸化水素分解反応器の後段に気液分離器を有し、この気液分離器において、過酸化水素分解反応器における過酸化水素の分解で生成し、過酸化水素分解反応器流出水中に含まれる酸素を効率的に気液分離することができる。
このため、%オーダーの比較的高濃度の過酸化水素含有排水を処理する場合であっても、高濃度の過酸化水素を分解することにより生成した多量の酸素を円滑に系外に除去して、安定かつ効率的な連続処理が可能となる。
【0020】
本発明において、過酸化水素分解触媒としては、過酸化水素分解の触媒活性に優れることから、白金属金属を担体に担持してなるものが好ましく(請求項2)、特に、平均粒子径1〜50nmの白金族金属のナノコロイド粒子を担体に担持したものが好ましく(請求項3)、担体としては、イオン交換樹脂が好ましい(請求項4)。
【0021】
このような本発明の過酸化水素水処理装置は、過酸化水素濃度が0.1〜5重量%というような、比較的高濃度の過酸化水素を含む水の処理に有効である(請求項5)。
【0022】
また、このように、比較的高濃度の過酸化水素含有排水を処理する場合、被処理水を過酸化水素分解反応器に下向流通水すると、過酸化水素分解反応器内において、過酸化水素の分解で発生する比較的多量の酸素の気泡を効率的に過酸化水素分解反応器から排出し得ず、また、この気泡がカラム内に滞留し、被処理水の偏流を引き起こして過酸化水素分解触媒と十分に接触しない水が過酸化水素分解反応器から流出し、この結果、流出水中の残留過酸化水素濃度が高いものとなる。従って、被処理水は、過酸化水素分解反応器に上向流で通水することが好ましい(請求項6)。
【0023】
また、被処理水の通水速度は小さ過ぎると処理効率が悪いが、大き過ぎると過酸化水素濃度の高い被処理水中の過酸化水素を十分に分解することができないことから、過酸化水素分解反応器の通水速度は、空間速度(SV)として10〜500hr−1とすることが好ましい(請求項7)。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の過酸化水素水処理装置の実施の形態示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を参照して本発明の過酸化水素水処理装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の過酸化水素水処理装置の実施の形態を示す系統図であり、図1において、過酸化水素を含む被処理水は、配管11より、過酸化水素分解触媒1が充填された過酸化水素分解反応器2に上向流で通水され、過酸化水素分解反応器2の流出水は配管12より気液分離器3に導入され、気液分離器3で気液分離された酸素を含むガスは排気配管13より、また、処理水は排水配管14より、それぞれ系外へ排出される。
【0027】
本発明において、処理対象とする被処理水は過酸化水素を含む水であり、その過酸化水素濃度としては特に制限はないが、過酸化水素濃度0.1〜5重量%というような、比較的過酸化水素濃度の高い被処理水の処理に対して、過酸化水素の分解で生成する酸素を分離する気液分離器を備える本発明の過酸化水素水処理装置の効果が有効に発揮され、好ましい。
【0028】
過酸化水素分解反応器2に充填される過酸化水素分解触媒1としては、特に制限はないが、過酸化水素の分解反応に対する触媒活性に優れることから、白金族金属を担体に担持体してなる過酸化水素分解触媒が好ましく、とりわけ、平均粒子径1〜50nmの白金族金属のナノコロイド粒子を担体に担持したものが好ましい。
【0029】
触媒活性成分としての白金族金属としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金を挙げることができる。こられの白金族金属は、1種を単独で用いることができ、2種以上を組み合わせて用いることもでき、2種以上の合金として用いることもでき、あるいは、天然に産出される混合物の精製品を単体に分離することなく用いることもできる。これらの中で、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金の単独又はこれらの2種以上の混合物が、触媒活性が強いので特に好適に用いることができる。
【0030】
白金族金属のナノコロイド粒子を製造する方法に特に制限はなく、例えば、金属塩還元反応法、燃焼法などを挙げることができる。これらの中で、金属塩還元反応法は、製造が容易であり、安定した品質の金属ナノコロイド粒子を得ることができるので好適に用いることができる。金属塩還元反応法としては、例えば、白金等の白金族金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、金属錯化物などの0.1〜0.4mmol/L水溶液に、アルコール、クエン酸又はその塩、ギ酸、アセトン、アセトアルデヒドなどの還元剤を4〜20当量倍添加し、1〜3時間煮沸することにより、白金族金属のナノコロイド粒子を製造することができる。また、例えば、ポリビニルピロリドン水溶液に、ヘキサクロロ白金酸、ヘキサクロロ白金酸カリウムなどを1〜2mmol/L溶解し、エタノールなどの還元剤を加え、窒素雰囲気下で2〜3時間加熱還流することにより、白金ナノコロイド粒子を製造することができる。
【0031】
本発明に用いる白金族金属のナノコロイド粒子の平均粒子径は好ましくは1〜50nmであり、より好ましくは1.2〜20nmであり、さらに好ましくは1.4〜5nmである。白金族金属のナノコロイド粒子の平均粒子径が1nm未満であると、過酸化水素の分解除去に対する触媒活性が低下するおそれがある。白金族金属のナノコロイド粒子の平均粒子径が50nmを超えると、ナノコロイド粒子の比表面積が小さくなって、過酸化水素の分解除去に対する触媒活性が低下するおそれがある。
【0032】
本発明において、白金属金属のナノコロイド粒子を担持させる担体に特に制限はなく、例えば、マグネシア、チタニア、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、活性炭、ゼオライト、ケイソウ土、イオン交換樹脂などを挙げることができる。これらの中で、アニオン交換樹脂を特に好適に用いることができる。即ち、白金族金属のナノコロイド粒子は電気二重層を有し、負に帯電しているので、アニオン交換樹脂に安定に担持されて剥離しにくい。また、アニオン交換樹脂に担持された白金属金属のナノコロイド粒子は、過酸化水素の分解除去に対して強い触媒活性を示す。
【0033】
アニオン交換樹脂としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体とした強塩基性アニオン交換樹脂であることが好ましく、特にゲル型樹脂であることがより好ましい。また、アニオン交換樹脂の交換基は、OH形であることが好ましい。OH形アニオン交換樹脂は、樹脂表面がアルカリ性となり、過酸化水素の分解を促進する。
【0034】
本発明において、アニオン交換樹脂等の担体への白金族金属のナノコロイド粒子の担持量は、0.01〜0.2重量%であることが好ましく、0.04〜0.1重量%であることがより好ましい。白金族金属のナノコロイド粒子の担持量が0.01重量%未満であると、過酸化水素の分解除去に対する触媒活性が不足するおそれがある。白金族金属のナノコロイド粒子の担持量は0.2重量%以下で過酸化水素の分解除去に対して十分な触媒活性が発現し、通常は0.2重量%を超える金属ナノコロイド粒子を担持させる必要はない。また、金属ナノコロイド粒子の担持量が増加すると、水中への金属の溶出のおそれも大きくなる。
【0035】
このような過酸化水素分解触媒2が充填される過酸化水素分解反応器1の構成材料としては特に制限はないが、過酸化水素の分解による反応熱により、被処理水の過酸化水素濃度に応じて3〜35℃程度の水温上昇が起こり得ることから、耐熱性を有してるものが好ましく、耐熱性と強度を兼備することから、FRP(繊維強化プラスチック)、ポリエチレン、耐熱性ポリ塩化ビニル等が好適に用いられる。
【0036】
前述の如く、過酸化水素は、分解により下記反応式に従って酸素と水を発生する。
2H→O+2H
従って、被処理水を過酸化水素分解反応器2に導入した直後から酸素が発生し、過酸化水素分解反応器2内で酸素の気泡が生じることから、過酸化水素分解反応器2における被処理水の通水方向は、この気泡を排出し易くするために上向流通水とすることが好ましく、従って、図1に示す過酸化水素分解反応器2では、底部に被処理水の導入口を有し、上部に処理水の排出口を有する。
【0037】
また、過酸化水素分解反応器2への被処理水の通水速度が遅過ぎると処理効率が悪いが、過度に速いと過酸化水素の一部が未分解のまま排出されることになることから、通水速度は、過酸化水素分解触媒容量に対する空間速度(SV)で10〜500hr−1が好ましく、特に10〜150hr−1が好ましい。
【0038】
過酸化水素分解反応器2の流出水は、配管12より気液分離器3に導入されて気液分離される。
【0039】
この気液分離器3としては、図1に示す如く、上部に排気配管13が接続され、下部に排水配管14が接続された筒状容器4よりなり、この筒状容器4の側部に、過酸化水素分解反応器2からの流出水配管12が接続されたものが好ましく、このような気液分離器3であれば、簡易な構成で小型かつ安価な気液分離器により効率的な気液分離を行える。
【0040】
この気液分離器3の筒状容器4の寸法・容量や、排気配管13及び排水配管14の管径については、筒状容器4内での滞留時間を確保して効率的な気液分離を行うために、好適な範囲が存在し、例えば、次のような値とすることが好ましい。
【0041】
・筒状容器(円筒状容器の場合)
内径:線速度(LV)が0.05〜0.1m/secとなる内径
容器底部から流出水配管12接続部までの高さh:容器からの処理水排出部の圧力損
失の1〜3倍の水頭がとれる高さ
容器全体高さH:上記高さh×(2〜5)倍
(なお、円筒以外の筒状容器の場合、線速度に見合うように断面寸法が設計される。)
・排水配管14の管径(内径):筒状容器(円筒状容器)内径の0.5〜1.5倍
・排気配管13の管径(内径):排水配管14の0.2〜1.0倍
【0042】
なお、この筒状容器4の構成材料は、過酸化水素分解反応器におけると同様な理由から、FRP(繊維強化プラスチック)、ポリエチレン、耐熱性ポリ塩化ビニル等が好適に用いられる。
【0043】
このような気液分離器3において、過酸化水素分解反応器流出水中の酸素が効率的に気液分離され、分離された酸素は排気配管13より排水され、処理水は排水配管14より排出される。
【0044】
気液分離器3の排気配管13から排出される酸素は、高純度の酸素であるため、系外へ放出する場合は、支燃性ガスの取り扱い法に従って、火気に近づけず、また、20%以下程度の窒素などの不活性ガスで希釈するなどして排出することが好ましい。また、この酸素は、好気性生物処理槽の曝気ガスとするなど、他のプロセスで利用することもできる。
【0045】
一方、排水配管14から排出される処理水は、溶存酸素濃度の高い水であるが、必要に応じて空気曝気などによる脱酸素処理等の二次処理を行って系外へ排出するか、工業用水等として再利用される。
【実施例】
【0046】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0047】
[実施例1]
図1に示す過酸化水素水処理装置により、過酸化水素含有排水の処理を行った。
用いた過酸化水素水処理装置の各部の仕様は次の通りである。
【0048】
過酸化水素分解反応器:ポリエチレン製カラム(直径100mm、長さ600mm)
に、過酸化水素分解触媒として、栗田工業(株)製「ナノセ
イバーS」(平均粒径2nmの白金ナノコロイド粒子を0.
1重量%の担持量で強塩基性ゲル型アニオン交換樹脂に担持
させたもの)を3L充填したもの。
【0049】
気液分離器:耐熱ポリ塩化ビニル製カラム(直径40mm、高さ300mm)に内径
25mmの排水配管と内径10mmの排気配管を接続したものであり、
過酸化水素分解反応器の流出水配管は、カラムの底部から100mmの
高さ位置(全高の1/3の高さ位置)に接続されている。
【0050】
被処理水としては、過酸化水素濃度0.1重量%、0.5重量%、1重量%、3重量%、5重量%の5種類の過酸化水素含有排水を用い、それぞれについて、5L/minの流量で処理を行った。過酸化水素分解反応器における空間速度(SV)は100hr−1であった。
【0051】
得られた処理水(気液分離器の分離水)の過酸化水素濃度は、栗田工業(株)製過酸化水素試験紙「チェクルKS」(測定下限値3mg/L)で測定した。
その結果、いずれの過酸化水素濃度の被処理水の場合も、処理水の過酸化水素濃度は測定下限値以下であり、また、処理に要した時間(過酸化水素分解反応器に導入されてから、気液分離器を経て排出されるまでの時間)は50秒程度であり、低濃度過酸化水素含有排水から高濃度過酸化水素含有排水まで、簡易な構成の過酸化水素水処理装置により短時間で効率的に過酸化水素の分解処理を行って、高水質の処理水を得ることができた。
【0052】
[比較例1]
実施例1で処理した各濃度の過酸化水素含有排水を、それぞれ30Lの貯槽に一旦貯留し、この貯槽に酵素(カタラーゼ)を添加して撹拌機で均一に撹拌することにより、過酸化水素の酵素による分解を行ったところ、一定の反応時間の確保のために、処理には6分程度(貯槽に入れてから酵素を添加して撹拌し、貯槽から排出するまでの時間)を要し、処理時間が長いと共に、装置も複雑なものとなった。
【符号の説明】
【0053】
1 過酸化水素分解触媒
2 過酸化水素分解反応器
3 気液分離器
4 筒状容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を過酸化水素分解触媒と接触させて、該被処理水中の過酸化水素を酸素と水とに分解して処理水を得る過酸化水素水処理装置において、
該被処理水の導入口と処理水の排出口を有し、内部に過酸化水素分解触媒が充填された過酸化水素分解反応器と、
該過酸化水素分解反応器の流出水が導入される気液分離器とを有し、
該気液分離器は、上部に排気配管が接続され、下部に排水配管が接続された筒状容器よりなり、該筒状容器の側部に、前記流出水が導入されることを特徴とする過酸化水素水処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記過酸化水素分解触媒が、白金属金属を担体に担持してなることを特徴とする過酸化水素水処理装置。
【請求項3】
請求項2において、前記白金属金属が、平均粒子径1〜50nmの白金族金属のナノコロイド粒子であることを特徴とする過酸化水素水処理装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記担体がイオン交換樹脂であることを特徴とする過酸化水素水処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記被処理水の過酸化水素濃度が0.1〜5重量%であることを特徴とする過酸化水素水処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記被処理水は、前記過酸化水素分解反応器に上向流で通水されることを特徴とする過酸化水素水処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記被処理水は、前記過酸化水素分解反応器に、空間速度(SV)10〜500hr−1で通水されることを特徴とする過酸化水素水処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−240557(P2010−240557A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91250(P2009−91250)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】