説明

過酸化物含有ポリオレフィンの過酸化物含有量を再活性化により富化するための方法

過酸化物含有オレフィン重合体の過酸化物含有量を高めるための方法であって:a)過酸化物含有オレフィン重合体を第一の酸素濃度を有する第一の気体混合物と反応器中で接触させ;b)オレフィン重合体を、予備温度に少なくとも等しいがしかしオレフィン重合体の軟化点よりも低い第一の温度に、第二の酸素濃度を有する第二の気体混合物の存在下で加熱し、このとき、予備温度は過酸化物含有オレフィン重合体を製造するときの最終の熱処理温度であり;そして c)オレフィン重合体の温度を少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い第二の温度に、最大で0.004容量%の酸素濃度を有する雰囲気中で維持し、それによって富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料を形成させる;以上の工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、制御された量の酸素の存在下で、過酸化物機能性(peroxide functionality)を有するポリオレフィンの過酸化物含有量を富化するための方法に関する。
過酸化物機能性を有するポリオレフィンは、電子ビーム照射と酸化のプロセスを用いることによって調製することができる。このプロセスは通常、実質的に不活性の雰囲気中で粒状のポリプロピレン材料に照射し、この照射されたプロピレン重合体材料を制御された量の酸素に曝露し、そして重合体材料を特定の時間にわたって特定の温度に加熱することを含む。得られた重合体は、このオレフィン重合体とビニル単量体の間のグラフト共重合反応の開始に対して反応性であることが見出されている。米国特許5,817,707号は、電子ビーム照射と酸化のプロセスによって調製された過酸化物含有ポリオレフィンを用いてグラフト重合を行う方法を開示する。照射と酸化のプロセスによって製造された過酸化物含有ポリオレフィンは界面活性剤の存在下で水の中に分散され、それにより固体/水懸濁液が形成される。次いで、還元剤とビニル単量体を懸濁液の中に攪拌しながら添加することによって、遊離基開始機構により、グラフト化したポリオレフィンが生成した。
【0002】
照射と酸化のプロセスは、米国特許5,820,981号に開示されているように、粘度低下した(visbroken)ポリプロピレンと繊維を調製するのにも有用である。低いメルトフローレートを有する単独重合体を電子ビーム照射を用いて酸素の実質的な不存在下で処理し、次いで、制御された量の酸素の存在下で多段階の処理を行なうことによって、300dg/分以上のメルトフローレートを有するポリプロピレン単独重合体が調製された。
【0003】
米国特許出願10/305,816号に開示されているように、過酸化物含有ポリオレフィンを調製するために液体過酸化物プロセスを用いることもでき、それにおいては、液体過酸化物がポリオレフィン材料と混合され、次いで酸化工程が行われる。
【0004】
照射プロセスは電子ビーム発生器の使用を必要とし、このことによりその用途は大規模な適用に典型的に限定され、また照射によって発生する遊離基の短い半減期のため、酸化反応器を電子ビーム発生器に隣接させる必要がある。液体過酸化物プロセスは、遊離基開始剤として過酸化ジアシル、過酸化ケトン、ペルオキシ酸エステル、過酸化ジアルキル、およびペルオキシケタールなどの液体過酸化物を用いる。液体過酸化物は、それらの熱的不安定性のために特別な貯蔵と取扱いを必要とする。従って、両者のプロセスは固有の欠点を有していて、高性能の反応装置や適切に設計された設備を持たない使用者にとっては特に、用いるのは困難である。本発明は、照射や液体過酸化物に頼らずに、過酸化物基を高温で再活性化し、そして過酸化物含有オレフィン重合体上に遊離基を形成させることによって、望ましいメルトフローレートと過酸化物含有量を有する過酸化物含有ポリオレフィンを調製するための新規な手法を提供する。様々なメルトフローレートと過酸化物含有量を有する富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料のための出発物質として、照射と液体過酸化物プロセスのいずれかを用いることによって調製された低い過酸化物含有量を有するオレフィン重合体のマスターバッチ(master batch)を用いることができる。
【0005】
過酸化物含有オレフィン重合体の過酸化物含有量を富化するための方法は、次の工程を含む:
a)過酸化物含有オレフィン重合体(A)を、第一の酸素濃度すなわち約0.1〜約6容量%の酸素、好ましくは約0.2〜約4容量%の酸素を有する第一の気体混合物と反応器中で接触させ;
b)オレフィン重合体を、予備温度に少なくとも等しいがしかし重合体の軟化点よりも低い第一の温度、好ましくは約100℃〜約145℃に、第二の酸素濃度、好ましくは約0.1〜約6容量%の酸素、最も好ましくは約0.2〜約4容量%の酸素を有する第二の気体混合物の存在下で加熱し、
このとき、予備温度は過酸化物含有オレフィン重合体(A)を製造するときの最終の熱処理温度であり;そして
c)オレフィン重合体の温度を少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い第二の温度に、最大で0.004容量%の酸素濃度を有する雰囲気中で維持し、それによって富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料(B)を形成させる;
このとき、オレフィン重合体(A)の過酸化物含有量に対するポリオレフィン材料(B)の過酸化物含有量の比率は、モルで約1.05〜約100である。
【0006】
本発明の別の態様によれば、富化した過酸化物含有ポリオレフィン混合物を製造するための方法は、次の工程を含む:
a)オレフィン重合体混合物(D)を反応器中で調製する工程であって、
I.約10.0〜約95.0wt%、好ましくは約20.0〜約90.0wt%、最も好ましくは約30.0〜約70.0wt%の過酸化物含有オレフィン重合体(A)を、第一の酸素濃度、好ましくは約0.1〜約6容量%の酸素、最も好ましくは約0.2〜約4容量%の酸素を有する第一の気体混合物の存在下で反応器の中に添加し、そして
II.約5.0〜約90.0wt%、好ましくは約10.0〜約80.0wt%、最も好ましくは約30.0〜約70.0wt%の非酸化オレフィン重合体を反応器の中に添加し、それによって重合体混合物を形成させる工程、
このとき、成分I+IIの合計は100wt%に等しい;
b)反応器の中の重合体混合物を、予備温度に少なくとも等しいがしかし重合体の軟化点よりも低い第一の温度、好ましくは約100℃〜145℃に、第二の酸素濃度、好ましくは約0.1〜約6容量%の酸素、最も好ましくは約0.2〜約4容量%の酸素を有する第二の気体混合物の存在下で加熱する工程、
このとき、予備温度は過酸化物含有オレフィン重合体を製造するときの最終の熱処理温度である;および
c)重合体混合物の温度を少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い第二の温度に、最大で0.004容量%の酸素濃度を有する雰囲気中で維持し、それによって富化した過酸化物含有ポリオレフィン混合物(C)を形成させる工程;
このとき、オレフィン重合体混合物(D)の過酸化物含有量に対するポリオレフィン混合物(C)の過酸化物含有量の比率は、モルで約1.05〜約100である。
【0007】
本発明の別の態様によれば、富化した過酸化物含有量を有するオレフィン重合体であって、次の工程を含む方法によって製造されるオレフィン重合体が提供される:
a)過酸化物含有オレフィン重合体(A)を、第一の酸素濃度すなわち約0.1〜約6容量%の酸素、好ましくは約0.2〜約4容量%の酸素を有する第一の気体混合物と反応器中で接触させ;
b)オレフィン重合体を、予備温度に少なくとも等しいがしかし重合体の軟化点よりも低い第一の温度、好ましくは約100℃〜約145℃に、第二の酸素濃度、好ましくは約0.1〜約6容量%の酸素、最も好ましくは約0.2〜約4容量%の酸素を有する第二の気体混合物の存在下で加熱し、
このとき、予備温度は過酸化物含有オレフィン重合体(A)を製造するときの最終の熱処理温度であり;そして
c)オレフィン重合体の温度を少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い第二の温度に、最大で0.004容量%の酸素濃度を有する雰囲気中で維持し、それによって富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料(B)を形成させる;
このとき、オレフィン重合体(A)の過酸化物含有量に対するポリオレフィン材料(B)の過酸化物含有量の比率は、モルで約1.05〜約100である。
【0008】
本発明の別の態様によれば、富化した過酸化物含有量を有するオレフィン重合体混合物であって、次の工程を含む方法によって製造されるオレフィン重合体混合物が提供される:
a)オレフィン重合体混合物(D)を反応器中で調製する工程であって、
I.約10.0〜約95.0wt%、好ましくは約20.0〜約90.0wt%、最も好ましくは約30.0〜約70.0wt%の過酸化物含有オレフィン重合体(A)を、第一の酸素濃度、好ましくは約0.1〜約6容量%の酸素、最も好ましくは約0.2〜約4容量%の酸素を有する第一の気体混合物の存在下で反応器の中に添加し、そして
II.約5.0〜約90.0wt%、好ましくは約10.0〜約80.0wt%、最も好ましくは約30.0〜約70.0wt%の非酸化オレフィン重合体を反応器の中に添加し、それによって重合体混合物を形成させる工程、
このとき、成分I+IIの合計は100wt%に等しい;
b)反応器の中の重合体混合物を、予備温度に少なくとも等しいがしかし重合体の軟化点よりも低い第一の温度、好ましくは約100℃〜145℃に、第二の酸素濃度、好ましくは約0.1〜約6容量%の酸素、最も好ましくは約0.2〜約4容量%の酸素を有する第二の気体混合物の存在下で加熱する工程、
このとき、予備温度は過酸化物含有オレフィン重合体を製造するときの最終の熱処理温度である;および
c)重合体混合物の温度を少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い第二の温度に、最大で0.004容量%の酸素濃度を有する雰囲気中で維持し、それによって富化した過酸化物含有ポリオレフィン混合物(C)を形成させる工程;
このとき、オレフィン重合体混合物(D)の過酸化物含有量に対するポリオレフィン混合物(C)の過酸化物含有量の比率は、モルで約1.05〜約100である。
【0009】
適当な非酸化オレフィン重合体と過酸化物含有オレフィン重合体のための出発材料は、プロピレン、エチレン、およびブテン-1の重合体材料から選択することができる。
過酸化物含有オレフィン重合体を製造するための非酸化オレフィン重合体材料と出発材料としてプロピレン重合体材料が用いられるとき、そのプロピレン重合体は次の(a)〜(e)のものとすることができる:
(a)約80%よりも大きい、好ましくは約90%〜約99.5%のアイソタクチック指数を有するプロピレンの結晶性単独重合体;
(b)プロピレンと、エチレンおよびC4−C10α-オレフィンから選択されるオレフィンとの結晶性ランダム共重合体、このとき、重合化したオレフィンの含有量は、エチレンが用いられるときは約1〜10重量%、好ましくは約1〜約4重量%であり、C4−C10α-オレフィンが用いられるときは約1〜約20重量%、好ましくは約1〜約16重量%であり、共重合体は約60%よりも大きい、好ましくは少なくとも約70%のアイソタクチック指数を有する;
(c)プロピレンと、エチレンおよびC4−C8α-オレフィンから選択される二つのオレフィンとの結晶性ランダム三元共重合体(ターポリマー)、このとき、重合化したオレフィンの含有量は、エチレンが用いられるときは約1〜約5重量%、好ましくは約1〜約4重量%であり、C4−C10α-オレフィンが用いられるときは約1〜約20重量%、好ましくは約1〜約16重量%であり、三元共重合体は約85%よりも大きいアイソタクチック指数を有する;
(d)次の(i)、(ii)および(iii)のものを含むオレフィン重合体組成物:
(i)約10〜約60重量%、好ましくは約15〜約55重量%の、約80%よりも大きい、好ましくは約90〜約99.5%のアイソタクチック指数を有する結晶性プロピレン単独重合体、または(a)プロピレンとエチレン、(b)プロピレン、エチレンおよびC4−C8α-オレフィン、および(c)プロピレンとC4−C8α-オレフィンから選択される単量体の結晶性共重合体、この共重合体は約85重量%よりも大きい、好ましくは約90〜約99重量%の重合化したプロピレンの含有量および約60%よりも大きいアイソタクチック指数を有する;
(ii)約3〜約25重量%、好ましくは約5〜約20重量%の、エチレンとプロピレンまたはC4−C8α-オレフィンとの共重合体であって、周囲温度においてキシレンに不溶性の共重合体;および
(iii)約10〜約85重量%、好ましくは約15〜約65重量%の、(a)エチレンとプロピレン、(b)エチレン、プロピレンおよびC4−C8α-オレフィン、および(c)エチレンとC4−C8α-オレフィンから選択される単量体の弾性共重合体、この共重合体は場合により約0.5〜約10重量%の重合化したジエンを含み、また約70重量%未満、好ましくは約10〜約60重量%、最も好ましくは約12〜約55重量%の重合化したエチレンを含み、また周囲温度においてキシレンに可溶性であり、そして約1.5〜約6.0dl/gの固有粘度を有する;
このとき、(ii)と(iii)の合計は、全体のオレフィン重合体組成物に基づいて約50〜約90重量%であり、また(ii)/(iii)の重量比は約0.4未満、好ましくは0.1〜0.3であり、そして好ましくはその組成物は少なくとも二つの段階において重合によって調製される;および
(e)これらの混合物。
【0010】
富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料を製造するための過酸化物含有オレフィン重合体のための非酸化オレフィン重合体と出発材料としてエチレン重合体材料が用いられるとき、そのエチレン重合体材料は好ましくは次の(a)〜(d)のものから選択される:
(a)エチレンの単独重合体;
(b)エチレンと、約1〜約20重量%、好ましくは約1〜約16重量%の重合化したα-オレフィンの含有量を有するC3−C10α-オレフィンから選択されるα-オレフィンとのランダム共重合体;
(c)エチレンと、約1〜約20重量%、好ましくは約1〜約16重量%の重合化したα-オレフィンの含有量を有する二つのC3−C10α-オレフィンとのランダム三元共重合体;および
(d)これらの混合物;
このとき、C3−C10α-オレフィンは、例えばプロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン、および1-オクテンなどの線状および枝分れアルファ-オレフィンを含む。
【0011】
エチレン重合体がエチレン単独重合体であるとき、それは典型的に0.89g/cm3以上の密度を有し、そしてエチレン重合体がC3−C10α-オレフィンを有するエチレン共重合体であるとき、それは典型的に0.91g/cm3以上で0.94g/cm3未満の密度を有する。適当なエチレン共重合体としては、エチレン/ブテン-1、エチレン/ヘキセン-1、エチレン/オクテン-1およびエチレン/4-メチル-1-ペンテンがある。エチレン共重合体は、高密度エチレン共重合体または短鎖が枝分れした線状低密度エチレン共重合体(LLDPE)とすることができ、そしてエチレン単独重合体は高密度ポリエチレン(HDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)とすることができる。典型的に、LLDPEとLDPEは0.910g/cm3以上で0.94g/cm3未満の密度を有し、そしてHDPEと高密度エチレン共重合体は0.940g/cm3よりも大きい密度、通常は0.95g/cm3以上の密度を有する。一般に、0.89〜0.97g/cm3の密度を有するエチレン重合体材料が、本発明の実地において用いるのに適している。好ましくは、エチレン重合体はLLDPEおよびHDPEである。
【0012】
富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料を製造するための過酸化物含有オレフィン重合体のための非酸化オレフィン重合体と出発材料としてブテン-1重合体材料が用いられるとき、そのブテン-1重合体材料は好ましくは次の(a)〜(c)のものから選択される:
(a)ブテン-1の単独重合体;
(b)ブテン-1と、エチレン、プロピレンまたはC5−C10アルファ-オレフィンとの共重合体または三元共重合体、このとき、これらコモノマーの含有量は約1モル%〜約15モル%の範囲である;および
(c)これらの混合物。
【0013】
適当なポリブテン-1単独重合体または共重合体はアイソタクチックまたはシンジオタクチックであってもよく、そして約0.1〜150dg/分、好ましくは約0.3〜100dg/分、そして最も好ましくは約0.5〜75dg/分のメルトフローレート(MFR)を有する。
【0014】
これらのブテン-1重合体材料、それらの調製方法およびそれらの特性は、当分野で公知である。適当なポリブテン-1重合体は、例えば、WO 99/45043に記載されているように、ブテン-1を伴うチーグラー-ナッタ触媒を用いることによって、あるいはWO 02/102811に記載されているようにブテン-1のメタロセン重合によって得ることができる。これらの開示は本明細書中に参考文献として援用される。
【0015】
好ましくは、ブテン-1重合体材料は約15モル%以下の共重合化したエチレンまたはプロピレンを含有する。より好ましくは、ブテン-1重合体材料は、広角X線回折で測定して7日後に少なくとも約30重量%、より好ましくは約45〜約70重量%、最も好ましくは約55〜約60重量%の結晶化度を有する単独重合体である。
【0016】
過酸化物含有オレフィン重合体は、照射プロセスまたは液体過酸化物プロセスのいずれかによって調製することができる。
典型的な照射プロセスにおいて、オレフィン重合体は不活性雰囲気中で0.1〜15メガrad(Mrad)の線量率で電子ビームの照射を受ける。次いで、この照射された重合体は、0.004容量%よりも大きく21容量%未満の濃度、好ましくは8容量%未満、より好ましくは5容量%未満、そして最も好ましくは1.3〜3容量%の濃度で、少なくとも25℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い温度、好ましくは約25℃〜約140℃、より好ましくは約25℃〜約100℃、そして最も好ましくは約40℃〜約80℃の温度で、直ちに酸素で処理される。次いで、第二の処理工程において、重合体は、少なくとも25℃で重合体の軟化点以下の温度、好ましくは100℃から重合体の軟化点未満までの温度に、第一の処理工程におけるのと同じ範囲内の酸素濃度において、加熱される。全体の反応時間は、典型的には3時間以下である。酸素で処理した後、場合により、重合体は、少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い安定化温度で、典型的に1時間にわたって、窒素などの不活性雰囲気中で、すべての活性な遊離基を不活性にするために処理される。
【0017】
酸化したオレフィン重合体材料を製造するためのこの方法は周知である。例えば、このプロセスは米国特許5,817,707号、同5,820,981号、および同6,337,373号に記載されている。これらの開示は本明細書中に参考文献として援用される。
【0018】
典型的な液体過酸化物プロセスにおいて、オレフィン重合体は、制御された量の酸素を添加しながら0.1〜4%の有機過酸化物開始剤で処理され、これにより、このオレフィン重合体材料は、0.004容量%よりも大きく15容量%未満、好ましくは8容量%未満、より好ましくは5容量%未満、そして最も好ましくは1.3〜3容量%に、少なくとも25℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い温度、好ましくは約25℃〜約140℃の温度で曝露される。次いで、第二の処理工程において、重合体は、少なくとも25℃で重合体の軟化点以下の温度、好ましくは100℃から重合体の軟化点未満までの温度に、第一の処理工程におけるのと同じ範囲内の酸素濃度において、加熱される。全体の反応時間は、典型的には3時間以下である。酸素で処理した後、場合により、重合体は、少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い安定化温度で、典型的に1時間にわたって、窒素などの不活性雰囲気中で、すべての活性な遊離基を不活性にするために処理される。この液体過酸化物プロセスは米国特許出願10/305,816号に開示されている。その開示は本明細書中に参考文献として援用される。
【0019】
適当な有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイルや過酸化ジベンゾイルなどの過酸化アシル;ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシドなどの過酸化ジアルキルや過酸化アラルキル;クミルブチルペルオキシド;1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン;2,5-ジメチル-1,2,5-トリ-tert-ブチルペルオキシヘキサン、およびビス(アルファ-tert-ブチルペルオキシイソプロピルベンゼン)、およびビス(アルファ-tert-ブチルペルオキシビバレートなどのペルオキシ酸エステル;tert-ブチルペルベンゾエート;2,5-ジメチルヘキシル-2,5-ジ(ペルベンゾエート);tert-ブチル-ジ(ペルフタレート);tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、および1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、およびジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(n-プロピル)ペルオキシジカーボネート、およびジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル) ペルオキシジカーボネートなどのペルオキシカーボネートがある。過酸化物は純粋な状態で、または希釈溶媒中で用いることができ、それは0.1〜6.0pph、好ましくは0.2〜3.0pphの活性濃度を有する。特に好ましいものは鉱油中の50重量%分散液としてのtert-ブチルペルオクトエートであり、これはLupersol PMSの商標名で商業的に販売されている。
【0020】
富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料または混合物を調製するために用いられる過酸化物含有オレフィン重合体は、約10〜約10000dg/分のメルトフローレートを有し、好ましくは約50〜5000dg/分、そして最も好ましくは約100〜1000dg/分のメルトフローレートを有する。
【0021】
富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料(B)を調製するための典型的な方法において、過酸化物含有オレフィン重合体(A)は、第一の酸素濃度を有する第一の気体混合物と反応器中で接触される。気体混合物中の酸素濃度は典型的に、気体混合物の全容量に対して、酸素について0.004容量%よりも大きく15容量%未満、好ましくは8容量%未満、より好ましくは約0.1〜約6容量%、そして最も好ましくは約0.2〜4容量%であり、このとき、本発明の方法において用いられる気体混合物について好ましいこととして、気体混合物は典型的に窒素中に酸素を含む。次いで、過酸化物含有オレフィン重合体は、予備温度に少なくとも等しいがしかし重合体の軟化点よりも低い第一の温度、好ましくは約100℃〜約145℃に、気体混合物の全容量に対して、酸素について0.004容量%よりも大きく15容量%未満、好ましくは8容量%未満、より好ましくは約0.1〜約6容量%、そして最も好ましくは約0.2〜4容量%の第二の酸素濃度を有する第二の気体混合物の存在下で加熱される。このとき、本発明の方法において用いられる気体混合物について好ましいこととして、気体混合物は典型的に窒素中に酸素を含む。予備温度は、上述の照射プロセスまたは液体過酸化物プロセスのいずれかによって過酸化物含有オレフィン重合体(A)を調製するのに用いられる最終の熱処理温度である。全体の反応時間は、典型的には3時間以下である。酸素で処理した後、オレフィン重合体は、これを冷却し、排出し、そして収集する前にすべての活性な遊離基を不活性にするために、少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い第二の温度で、典型的に1時間にわたって、最大で0.004容量%の酸素濃度を有する雰囲気中で処理され、それによって富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料(B)が形成される。第二の温度は第一の温度と同じであっても、異なっていてもよい。第二の気体混合物の酸素濃度は第一の気体混合物の酸素濃度と同じであっても、異なっていてもよい。
【0022】
富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料(B)の過酸化物含有量は、好ましくは、1キログラムの過酸化物含有オレフィン重合体中に約2〜約200ミリモル(mmol/kg)の過酸化物の範囲であり、より好ましくは約5〜約150mmol/kg、そして最も好ましくは約10〜100mmol/kgである。過酸化物含有オレフィン重合体(A)の過酸化物含有量に対する富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料(B)の過酸化物含有量の比率は、約1.05〜約100である。
【0023】
富化した過酸化物含有ポリオレフィン混合物(C)を調製するための典型的な方法において、約10.0〜約95.0wt%、好ましくは約20.0〜約90.0wt%、最も好ましくは約30.0〜約70.0wt%の過酸化物含有オレフィン重合体(I)および約5.0〜約90.0wt%、好ましくは約10.0〜約80.0wt%、最も好ましくは約30.0〜約70.0wt%の非酸化オレフィン重合体(II)を含有するオレフィン重合体混合物(D)は、第一の酸素濃度、好ましくは気体混合物の全容量に対して約0.1〜約6容量%の酸素、最も好ましくは約0.2〜約4容量%の酸素を有する第一の気体混合物と、反応器中で接触され、このとき、本発明の方法において用いられる気体混合物について好ましいこととして、気体混合物は典型的に窒素中に酸素を含み、また、成分I+IIの合計は100wt%に等しい。
【0024】
反応器の中の重合体混合物は、予備温度に少なくとも等しいがしかし重合体の軟化点よりも低い第一の温度、好ましくは約100℃〜145℃に、第二の酸素濃度、好ましくは気体混合物の全容量に対して窒素中に約0.1〜約6容量%の酸素、最も好ましくは約0.2〜約4容量%の酸素を有する第二の気体混合物の存在下で加熱され、このとき、本発明の方法において用いられる気体混合物について好ましいこととして、気体混合物は典型的に窒素中に酸素を含み、また、予備温度は上で定義したものと同じである。全体の反応時間は、典型的には3時間以下である。酸素で処理した後、オレフィン重合体は、これを冷却し、排出し、そして収集する前にすべての活性な遊離基を不活性にするために、少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い第二の温度で、典型的に1時間にわたって、最大で0.004容量%の酸素濃度を有する雰囲気中で処理され、それによって富化した過酸化物含有ポリオレフィン混合物(C)が形成される。第二の温度は第一の温度と同じであっても、異なっていてもよい。第二の気体混合物の酸素濃度は第一の気体混合物の酸素濃度と同じであっても、異なっていてもよい。
【0025】
富化した過酸化物含有ポリオレフィン混合物(C)の過酸化物含有量は、好ましくは、1キログラムの過酸化物含有オレフィン重合体中に約0.2〜約190ミリモル(mmol/kg)の過酸化物の範囲であり、より好ましくは約0.5〜約142.5mmol/kg、そして最も好ましくは約1〜95mmol/kgである。オレフィン重合体混合物(D)の過酸化物含有量に対する富化した過酸化物含有ポリオレフィン混合物(C)の過酸化物含有量の比率は、モルで約1.05〜約100である。
【0026】
反応器装置の中の制御された量の酸素を維持するために、反応器の中に酸素を恒常的に添加し、それによって、富化反応において消費され、また反応器の外へ排気された酸素を補う必要がある。
【0027】
富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料または混合物の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10000よりも大きいが、場合によってはもっと小さくてもよい。
富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料または混合物は、この富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料または混合物をビニル単量体化合物で高温において処理することによってグラフト共重合体を調製するために用いることができる。より具体的には、このグラフト化処理は、100部の富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料または混合物を、約5〜240部(pph)、好ましくは約10〜80pph、最も好ましくは20〜40pphの少なくとも一つの重合性単量体で、遊離基重合の条件下で少なくとも約50℃から重合体の軟化点未満までの温度において処理することを含む。
【0028】
ビニル単量体は1以上の不飽和結合を有し、またこの単量体は、C2−C20の脂肪族直鎖または枝分れ鎖、あるいは単環式化合物または多環式化合物中の置換または非置換芳香環、複素環または脂環を含んでいてもよい。好ましくは、ビニル単量体はC2−C20ビニル単量体である。ビニル単量体の例としては、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、メチルスチレン、メチルクロロスチレン、p-tert-ブチルスチレン、メチルビニルピリジン、エチルビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和酸無水物、不飽和酸の金属塩およびそれらの混合物、特にスチレン、アクリロニトリル、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルメタクリレート、およびこれらの混合物がある。
【0029】
特に明記しない限り、以下の実施例で示されるオレフィン重合体材料の特性、組成およびその他の特徴は、以下で説明する試験方法に従って決定された:
メルトフローレート(「MFR」):
特に明記しない限り、ASTM D1238、dg/分の単位;230℃;2.16kg;100未満のMFRを有する重合体材料についてはフルダイ(full die)を用いる;100以上のMFRを有する重合体材料については1/2ダイを用いる。
【0030】
アイソタクチック指数(「I.I.」):
キシレンに不溶性のオレフィン重合体のパーセントとして定義される。室温においてキシレンに可溶性のオレフィン重合体の重量パーセントは、攪拌機を備えた容器中で室温において250mlのキシレンに2.5gの重合体を溶解させ、そして135℃において攪拌しながら20分間加熱することによって決定される。攪拌し続けながら溶液は25℃まで冷却され、次いで固体が沈降できるように攪拌せずに30分間静置される。固体はろ紙でろ過され、残った溶液は窒素の流れで処理することによって蒸発され、そして一定の重量に達するまで固体残留物は80℃で真空乾燥される。これらの値は実質的にn-ヘプタンを沸騰させて抽出することによって決定されるアイソタクチック指数に相当し、これは定義上ポリプロピレンのアイソタクチック指数に等しい。
【0031】
過酸化物の濃度:
S. Siggia他によるFunctional Groups(「官能基」), 4th Ed., NY, Wiley 1979, pp.334-42による定量有機分析。
【0032】
分子量および分子量分布(MWD):
試料は安定化した1,2,4トリクロロベンゼンの70mg/50mlの濃度(250μg/ml BHT)において調製される。次いで、試料は溶解度を高めるために170℃に2.5時間加熱される。次いで、試料は、同じ安定化した溶媒を用いてWaters GPCV2000で145℃において1.0ml/分の流量で流される。三つのPolymer Labカラムを直列にして用いた(Plgel, 20μmを混合したALS, 300×7.5mm)。
【0033】
オリゴマー含有量のガスクロマトグラフィー測定:
50mlの漿液バイアル(serum vial)の中に7〜8gの重合体試料を正確に秤量する。25mlの塩化メチレンをピペットで加え、テフロン(登録商標)で裏打ちした隔膜シールでバイアルにしっかりと蓋をする(シールが確実に固定されるように蓋をしっかりと縁曲げする)。バイアルを室温で超音波浴の中に置く。抽出物の一部を取り出し、ガスクロマトグラフ(Agilent 5890または同等のもの)によって分析する。
【0034】
本明細書において、特に明記しない限り、全ての部、パーセントおよび比率は重量に基づき、周囲温度は約25℃である。富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料は以下の手順に従って調製される。
【0035】
実施例1
工程1:過酸化物含有オレフィン重合体Aの調製
9.0dg/分のMFRと96.5%のI.I.を有するポリプロピレン単独重合体(Basell USA Inc. から商業的に入手できる)が、窒素で全面を覆った状態で0.5Mrad照射された。次いで、この照射された重合体は、0.8容量%の酸素で80℃において60分間処理され、次いで0.8容量%の酸素で140℃においてさらに60分間処理された。次いで、酸素は除去された。次いで、重合体は窒素で全面を覆った状態で140℃の安定化温度において60分間加熱され、冷却され、排出され、そして収集され、それによって過酸化物含有オレフィン重合体Aが形成された。得られた重合体材料のMFRは121dg/分であった。過酸化物の濃度は重合体の9.6meq/kgであった。
【0036】
工程2:富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料の調製
試料1: 過酸化物含有オレフィン重合体Aは、機械攪拌器を備えた1ガロンのオートクレーブの中に添加された。窒素中の0.8容量%の酸素濃度を有する気体混合物がこの反応器の中に導入された。重合体は145℃まで加熱され、そして60分間維持された。次いで、気体混合物は窒素によってパージされ、そして重合体はさらに60分間145℃で維持され、次いで冷却され、排出され、そして収集された。
試料2: 試料1と同様であるが、ただし気体混合物は窒素中の2.0容量%の酸素濃度を有していた。
比較試料1: 試料1と同様であるが、ただし重合体は135℃まで加熱され、そして60分間維持された。次いで、気体混合物は窒素によってパージされ、そして重合体はさらに60分間135℃で維持され、次いで冷却され、排出され、そして収集された。
【0037】
試料の特性を表Iに要約する。表Iに示されるように、比較試料1はほとんど変化しないメルトフローレートを有し、このことは、工程2における反応温度が工程1で適用された安定化温度よりも低いときに富化反応は効果的に行われないことを示す。試料1および2は、メルトフローレートによって示されているように、反応条件は得られた重合体材料の特性と関連していることを証明していて、過酸化物の含有量は反応の前と後で変化する。重合体のメルトフローレートと過酸化物含有量は、富化反応における酸素濃度が増大するのに伴って増大する。従って、制御された酸素濃度の下で、あらかじめ決められた過酸化物含有量またはメルトフローレートを有する富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料を製造することができる。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例2
工程1:過酸化物含有オレフィン重合体Bの調製
9.4dg/分のメルトフローレート(MFR)と96.5%のI.I.を有するポリプロピレンの結晶質単独重合体(Basell USA Inc. から商業的に入手できる)から過酸化物含有オレフィン重合体Bが調製された。米国特許5,696,203号で「一般的手順」に記載されているようにして、このポリプロピレンの単独重合体(2000g)が7リットル二領域反応器の中に添加された。反応器の中の全体の気体の流量は28.3標準リットル/時(SLH)に維持された。有機過酸化物であるLupersol PMS(30g)(これは無臭ミネラルスピリット(OMS)中のt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートの50wt%溶液で、Atofina North America, Inc. から入手できる)が、反応器の中に4g/分の供給速度で送り込まれた。次いで、反応器は100℃まで加熱され、そして窒素中の0.8容量%の酸素からなる混合気体が反応器の中に導入された。反応器は100℃で60分間維持され、次いで140℃でさらに60分間維持された。次いで、酸素が除去され、反応器は窒素で全面を覆った状態で140℃においてさらに60分間維持された。最後に、得られた過酸化物含有オレフィン重合体Bは冷却され、排出され、そして収集された。オレフィン重合体Bのメルトフローレートと過酸化物含有量を表IIに要約する。
【0040】
工程2:富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料の調製
試料1: 過酸化物含有オレフィン重合体Bは、機械攪拌器を備えた1ガロンのオートクレーブの中に添加された。窒素中の0.8容量%の酸素濃度を有する気体混合物がこの反応器の中に導入された。重合体は145℃まで加熱され、そして60分間維持された。次いで、気体混合物は窒素によってパージされ、そして重合体はさらに60分間145℃で維持され、次いで冷却され、排出され、そして収集された。
【0041】
試料の特性を表IIに要約する。表IIに示されるように、試料のメルトフローレートは富化反応の後に増大し、このことは、液体過酸化物プロセスを用いて製造される過酸化物含有オレフィン重合体も本発明に開示されるプロセスによって富化させることができることを示す。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例3
工程1:過酸化物含有オレフィン重合体Cの調製
12.0dg/分のMFRと95.0%のI.I.を有するポリプロピレン単独重合体(Basell USA Inc. から商業的に入手できる)が、窒素で全面を覆った状態で4.0Mrad照射された。次いで、この照射された重合体は、周囲温度において60分間大気に晒され、そして窒素パージによって酸素が除去された後、気密バッグの中に収集された。得られた過酸化物含有オレフィン重合体CのMFRは、190℃で測定して259dg/分であった。過酸化物の濃度は重合体の50.9meq/kgであった。
【0044】
工程2:富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料の調製
試料1: 過酸化物含有オレフィン重合体Cは、機械攪拌器を備えた1ガロンのオートクレーブの中に添加された。窒素中の2.0容量%の酸素濃度を有する気体混合物がこの反応器の中に導入された。重合体は140℃まで加熱され、そして60分間維持された。次いで、気体混合物は窒素パージによって除去され、そして重合体はさらに60分間140℃で維持され、次いで冷却され、排出され、そして収集された。
【0045】
試料の特性を表IIIに要約する。この実施例のメルトフローレートは190℃で測定された。表IIIに示されるように、富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料は、反応後に増大したメルトフローレートを有していた。
【0046】
【表3】

【0047】
実施例4
工程1:過酸化物含有オレフィン重合体Dの調製
3.8dg/分のメルトフローレート(MFR)と88.6%のI.I.および9.4%のエチレン含有量を有するプロピレン共重合体(Basell USA Inc. から商業的に入手できる)が、窒素で全面を覆った状態で2.0Mrad照射された。次いで、この照射された重合体は、周囲温度において60分間大気に晒され、そして窒素パージによって酸素が除去された後、気密バッグの中に収集された。得られた過酸化物含有オレフィン重合体CのMFRは、190℃で測定して44dg/分であった。過酸化物の濃度は重合体の22.2meq/kgであった。
【0048】
工程2:富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料の調製
試料1: 過酸化物含有オレフィン重合体Cは、機械攪拌器を備えた1ガロンのオートクレーブの中に添加された。窒素中の2.0容量%の酸素濃度を有する気体混合物がこの反応器の中に導入された。重合体は120℃まで加熱され、そして60分間維持された。次いで、気体混合物は窒素パージによって除去され、そして重合体はさらに60分間120℃で維持され、次いで冷却され、排出され、そして収集された。
【0049】
試料の特性を表IVに要約する。この実施例のメルトフローレートは190℃で測定された。富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料は、反応後に増大したメルトフローレートを有していた。
【0050】
【表4】

【0051】
実施例5
工程1:過酸化物含有オレフィン重合体Eの調製
9.0dg/分のMFRと96.5%のI.I.を有するポリプロピレン単独重合体(Basell USA Inc. から商業的に入手できる)が、窒素で全面を覆った状態で4.0Mrad照射された。次いで、この照射された重合体は、周囲温度において60分間大気に晒され、そして窒素パージによって酸素が除去された後、気密バッグの中に収集された。得られた過酸化物含有オレフィン重合体CのMFRは、190℃で測定して703dg/分であった。過酸化物の濃度は重合体の63.3meq/kgであった。
【0052】
工程2:富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料の調製
試料1: 過酸化物含有オレフィン重合体Eは、機械攪拌器を備えた1ガロンのオートクレーブの中に添加された。窒素中の2.0容量%の酸素濃度を有する気体混合物がこの反応器の中に導入された。重合体は140℃まで加熱され、そして60分間維持された。次いで、気体混合物は窒素パージによって除去され、そして重合体はさらに60分間140℃で維持され、次いで冷却され、排出され、そして収集された。
【0053】
試料の特性を表Vに要約する。この実施例のメルトフローレートは190℃で測定された。富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料は、反応後に増大したメルトフローレートを有していた。
【0054】
【表5】

【0055】
ここに開示された本発明のその他の特徴、利点および態様は、以上の開示を読むことによって、当業者には容易にわかるであろう。この点について、本発明の特定の態様をかなり詳しく記載したが、これらの態様の変形と修正を、記載された本発明の精神と範囲および特許請求の範囲から離れることなく実行することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物含有オレフィン重合体(A)の過酸化物含有量を高めるための方法であって:
a)過酸化物含有オレフィン重合体(A)を第一の酸素濃度を有する第一の気体混合物と反応器中で接触させ;
b)オレフィン重合体を、予備温度に少なくとも等しいがしかしオレフィン重合体の軟化点よりも低い第一の温度に、第二の酸素濃度を有する第二の気体混合物の存在下で加熱し、
このとき、予備温度は過酸化物含有オレフィン重合体(A)を製造するときの最終の熱処理温度であり;そして
c)オレフィン重合体の温度を少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い第二の温度に、最大で0.004容量%の酸素濃度を有する雰囲気中で維持し、それによって富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料(B)を形成させる;
以上の工程a)、b)およびc)を含み、
このとき、オレフィン重合体(A)の過酸化物含有量に対するポリオレフィン材料(B)の過酸化物含有量の比率は、モルで約1.05〜約100である、前記重合体(A)の過酸化物含有量を富化するための方法。
【請求項2】
過酸化物含有オレフィン重合体(A)のための出発材料が、プロピレン重合体材料、エチレン重合体材料およびブテン-1重合体材料から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロピレン重合体材料が次の(a)〜(e):
(a)約80%よりも大きいアイソタクチック指数を有するプロピレンの結晶性単独重合体;
(b)プロピレンとエチレンおよびC4−C10α-オレフィンから選択されるオレフィンとの結晶性ランダム共重合体、このとき、重合化したオレフィンの含有量は、エチレンが用いられるときは約1〜10重量%であり、C4−C10α-オレフィンが用いられるときは約1〜約20重量%であり、共重合体は約60%よりも大きいアイソタクチック指数を有する;
(c)プロピレンとエチレンおよびC4−C8α-オレフィンから選択される二つのオレフィンとの結晶性ランダム三元共重合体、このとき、重合化したオレフィンの含有量は、エチレンが用いられるときは約1〜約5重量%であり、C4−C10α-オレフィンが用いられるときは約1〜約20重量%であり、三元共重合体は約85%よりも大きいアイソタクチック指数を有する;
(d)次の(i)、(ii)および(iii)のものを含むオレフィン重合体組成物:
(i)約10〜約60重量%の、約80%よりも大きいアイソタクチック指数を有する結晶性プロピレン単独重合体、または(a)プロピレンとエチレン、(b)プロピレン、エチレンおよびC4−C8α-オレフィン、および(c)プロピレンとC4−C8α-オレフィンから選択される単量体の結晶性共重合体、この共重合体は約85重量%よりも大きい重合化したプロピレンの含有量および約60%よりも大きいアイソタクチック指数を有する;
(ii)約3〜約25重量%の、エチレンとプロピレンまたはC4−C8α-オレフィンとの共重合体であって、周囲温度においてキシレンに不溶性の共重合体;および
(iii)約10〜約85重量%の、(a)エチレンとプロピレン、(b)エチレン、プロピレンおよびC4−C8α-オレフィン、および(c)エチレンとC4−C8α-オレフィンから選択される単量体の弾性共重合体、この共重合体は場合により約0.5〜約10重量%の重合化したジエンを含み、また約70重量%未満の重合化したエチレンを含み、また周囲温度においてキシレンに可溶性であり、そして約1.5〜約6.0dl/gの固有粘度を有する;
このとき、(ii)と(iii)の合計は、全体のオレフィン重合体組成物に基づいて約50〜約90重量%であり、また(ii)/(iii)の重量比は約0.4未満であり、そしてその組成物は少なくとも二つの段階において重合によって調製される;および
(e)これらの混合物;
から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
プロピレン重合体材料は80%よりも大きいアイソタクチック指数を有するプロピレンの結晶性単独重合体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
エチレン重合体材料が次の(a)〜(d):
(a)エチレンの単独重合体;
(b)エチレンと、約1〜約20重量%の重合化したα-オレフィンの含有量を有するC3−C10α-オレフィンから選択されるα-オレフィンとのランダム共重合体;
(c)エチレンと、約1〜約20重量%の重合化したα-オレフィンの含有量を有する二つのC3−C10α-オレフィンとのランダム三元共重合体;および
(d)これらの混合物;
から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ブテン-1重合体材料が次の(a)〜(c):
(a)ブテン-1の単独重合体;
(b)ブテン-1と、エチレン、プロピレンまたはC5−C10アルファ-オレフィンとの共重合体または三元共重合体、このとき、これらコモノマーの含有量は約1モル%〜約15モル%の範囲である;および
(c)これらの混合物;
から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
富化した過酸化物含有ポリオレフィン混合物を製造するための方法であって:
a)オレフィン重合体混合物(D)を反応器中で調製する工程であって、
I.約10.0〜約95.0wt%の過酸化物含有オレフィン重合体(A)を、第一の酸 素濃度を有する第一の気体混合物の存在下で反応器の中に添加し、そして
II. 約5.0〜約90.0wt%の非酸化オレフィン重合体を反応器の中に添加する工程、
このとき、成分I+IIの合計は100wt%に等しい;
b)反応器の中のオレフィン重合体混合物(D)を、予備温度に少なくとも等しいがしかしオレフィン重合体混合物の軟化点よりも低い第一の温度に、第二の酸素濃度を有する第二の気体混合物の存在下で加熱する工程、
このとき、予備温度は過酸化物含有オレフィン重合体(A)を製造するときの最終の熱処理温度である;および
c)オレフィン重合体の温度を少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い第二の温度に、最大で0.004容量%の酸素濃度を有する雰囲気中で維持し、それによって富化した過酸化物含有ポリオレフィン混合物(C)を形成させる工程;
以上の工程a)、b)およびc)を含み、
このとき、オレフィン重合体混合物(D)の過酸化物含有量に対するポリオレフィン混合物(C)の過酸化物含有量の比率は、モルで約1.05〜約100である、前記富化した過酸化物含有ポリオレフィン混合物を製造するための方法。
【請求項8】
過酸化物含有オレフィン重合体(A)のための出発材料と非酸化オレフィン重合体が、プロピレン重合体材料、エチレン重合体材料およびブテン-1重合体材料から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
プロピレン重合体材料が次の(a)〜(e):
(a)約80%よりも大きいアイソタクチック指数を有するプロピレンの結晶性単独重合体;
(b)プロピレンと、エチレンおよびC4−C10α-オレフィンから選択されるオレフィンとの結晶性ランダム共重合体、このとき、重合化したオレフィンの含有量は、エチレンが用いられるときは約1〜10重量%であり、C4−C10α-オレフィンが用いられるときは約1〜約20重量%であり、共重合体は約60%よりも大きいアイソタクチック指数を有する;
(c)プロピレンと、エチレンおよびC4−C8α-オレフィンから選択される二つのオレフィンとの結晶性ランダム三元共重合体、このとき、重合化したオレフィンの含有量は、エチレンが用いられるときは約1〜約5重量%であり、C4−C10α-オレフィンが用いられるときは約1〜約20重量%であり、三元共重合体は約85%よりも大きいアイソタクチック指数を有する;
(d)次の(i)、(ii)および(iii)のものを含むオレフィン重合体組成物:
(i)約10〜約60重量%の、約80%よりも大きいアイソタクチック指数を有する結晶性プロピレン単独重合体、または(a)プロピレンとエチレン、(b)プロピレン、エチレンおよびC4−C8α-オレフィン、および(c)プロピレンとC4−C8α-オレフィンから選択される単量体の結晶性共重合体、この共重合体は約85重量%よりも大きい重合化したプロピレンの含有量および約60%よりも大きいアイソタクチック指数を有する;
(ii)約3〜約25重量%の、エチレンとプロピレンまたはC4−C8α-オレフィンとの共重合体であって、周囲温度においてキシレンに不溶性の共重合体;および
(iii)約10〜約85重量%の、(a)エチレンとプロピレン、(b)エチレン、プロピレンおよびC4−C8α-オレフィン、および(c)エチレンとC4−C8α-オレフィンから選択される単量体の弾性共重合体、この共重合体は場合により約0.5〜約10重量%の重合化したジエンを含み、また約70重量%未満の重合化したエチレンを含み、また周囲温度においてキシレンに可溶性であり、そして約1.5〜約6.0dl/gの固有粘度を有する;
このとき、(ii)と(iii)の合計は、全体のオレフィン重合体組成物に基づいて約50〜約90重量%であり、また(ii)/(iii)の重量比は約0.4未満であり、そしてその組成物は少なくとも二つの段階において重合によって調製される;および
(e)これらの混合物;
から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プロピレン重合体材料は80%よりも大きいアイソタクチック指数を有するプロピレンの結晶性単独重合体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エチレン重合体材料が次の(a)〜(d):
(a)エチレンの単独重合体;
(b)エチレンと、約1〜約20重量%の重合化したα-オレフィンの含有量を有するC3−C10α-オレフィンから選択されるα-オレフィンとのランダム共重合体;
(c)エチレンと、約1〜約20重量%の重合化したα-オレフィンの含有量を有する二つのC3−C10α-オレフィンとのランダム三元共重合体;および
(d)これらの混合物;
から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ブテン-1重合体材料が次の(a)〜(c):
(a)ブテン-1の単独重合体;
(b)ブテン-1と、エチレン、プロピレンまたはC5−C10アルファ-オレフィンとの共重合体または三元共重合体、このとき、これらコモノマーの含有量は約1モル%〜約15モル%の範囲である;および
(c)これらの混合物;
から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
富化した過酸化物含有量を有するオレフィン重合体であって:
a)過酸化物含有オレフィン重合体(A)を、第一の酸素濃度を有する第一の気体混合物と反応器中で接触させ;
b)オレフィン重合体を、予備温度に少なくとも等しいがしかしオレフィン重合体の軟化点よりも低い第一の温度に、第二の酸素濃度を有する第二の気体混合物の存在下で加熱し、
このとき、予備温度は過酸化物含有オレフィン重合体(A)を製造するときの最終の熱処理温度であり;そして
c)オレフィン重合体の温度を少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い第二の温度に、最大で0.004容量%の酸素濃度を有する雰囲気中で維持し、それによって富化した過酸化物含有ポリオレフィン材料(B)を形成させる;
以上の工程a)、b)およびc)を含む方法によって製造され、
このとき、オレフィン重合体(A)の過酸化物含有量に対するポリオレフィン材料(B)の過酸化物含有量の比率は、モルで約1.05〜約100である、前記富化した過酸化物含有量を有するオレフィン重合体。
【請求項14】
富化した過酸化物含有量を有するオレフィン重合体混合物であって:
a)オレフィン重合体混合物(D)を反応器中で調製する工程であって、
I.約10.0〜約95.0wt%の過酸化物含有オレフィン重合体(A)を、第一の酸素濃度を有する第一の気体混合物の存在下で反応器の中に添加し、そして
II.約5.0〜約90.0wt%の非酸化オレフィン重合体を反応器の中に添加する工程、
このとき、成分I+IIの合計は100wt%に等しい;
b)反応器の中のオレフィン重合体混合物(D)を、予備温度に少なくとも等しいがしかしオレフィン重合体混合物の軟化点よりも低い第一の温度に、第二の酸素濃度を有する第二の気体混合物の存在下で加熱する工程、
このとき、予備温度は過酸化物含有オレフィン重合体(A)を製造するときの最終の熱処理温度である;および
c)オレフィン重合体の温度を少なくとも80℃であるがしかし重合体の軟化点よりも低い第二の温度に、最大で0.004容量%の酸素濃度を有する雰囲気中で維持し、それによって富化した過酸化物含有ポリオレフィン混合物(C)を形成させる工程;
以上の工程a)、b)およびc)を含む方法によって製造され、
このとき、オレフィン重合体混合物(D)の過酸化物含有量に対するポリオレフィン混合物(C)の過酸化物含有量の比率は、モルで約1.05〜約100である、前記富化した過酸化物含有量を有するオレフィン重合体混合物。

【公表番号】特表2008−501059(P2008−501059A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514249(P2007−514249)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051639
【国際公開番号】WO2005/116091
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】