説明

過重水素化ポリイミド、その調製方法、および2500〜3500cm−1の領域内において透過性のある材料としてのその使用

【課題】たとえばレーザー機器における、2500〜3500cm−1の領域内において透過性のある材料として好適なポリイミドを提供する。
【解決手段】
本発明は、その主鎖として以下のものの間の交互配置を含む、重水素化ポリイミドに関する:
・次式(I)に相当する少なくとも1種の繰り返し単位:
【化1】


(ここで、Yは単結合またはスペーサー基を表す);および
・次式(II)に相当する少なくとも1種の繰り返し単位:
−A−Z− (II)
(ここで、Aは、6〜10個の炭素原子を含む過重水素化芳香族基を表し;Zは、単結合、または−O−C−、−CO−C−および−C−から選択される基を表す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた機械的、熱的、光学的性質を同時に示すと共に、赤外線スペクトルの2500〜3500cm−1の領域内において透過性を示す重水素化芳香族ポリイミドと、それらのポリマーの調製方法と、フィルムの形態におけるそれらのポリマーの使用とに関する。
【0002】
これらのポリイミドは特に、優れた機械的、熱的、光学的性質を有していることから、特に核物理学実験をする際の高出力レーザーのための有機材料を調製する場合に使用される。
【0003】
したがって、一般的な技術分野は、所定の波長範囲の中において透過性を示す有機材料の分野である。
【0004】
本明細書の文脈においては、「所定の波長範囲の中において透過性を示す材料」という用語は、上述の範囲に属する波長を有する光学的信号を、吸収することなく、通過させることを可能とするような材料を意味すると理解することとする。
【0005】
一般に、たとえば有機ポリマーのような有機材料では、それを通過する光学的信号をある程度光学的に減衰させるすなわち、それらの光信号の強度における損失をもたらす可能性がある。有機ポリマーの場合に観察されるこの光学的減衰の原因は、ポリマーを構成している結合により、ある種の波長の吸収(たとえば、C−H結合の原子価振動バンドの倍音の吸収)や、散乱のためであると考えることができる。したがってこの光学的減衰は、ポリマーの化学構造に直接関係している。
【背景技術】
【0006】
このため、吸収に関連した光学的損失を減少させることが可能な化学構造を示す有機ポリマーの探索に焦点をしぼって、多くの研究がなされてきた。
【0007】
そこで、著者カイノウ(Kaino)は、「ポリマーズ・フォア・オプティカル・トランスミッション・アンド・オプティカル・シグナル・プロセシング(Polymers for Optical Transmission and Optical Signal Processing)」(レポーツ・オン・プログレス・イン・ポリマー・フィジックス・イン・ジャパン(Reports on Progress in Polymer Physics in Japan)、2000年、第43巻[1])の論文の中において、重水素化および/またはフルオロ化したポリマー、たとえばポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリスチレン(PS)は、それらの重水素化していないおよび/またはフルオロ化していない対応物に比較して、低い光学的減衰を示すと述べている。しかしながら、これらのポリマーは、熱的に極めて安定とは言えないという欠点を有していて、そのため、80℃を超えるような温度範囲では使用できない。そのためにこれらのポリマーは、これらのポリマーの熱的性質よりは遙かに優れた熱的性質を必要とする、オプトエレクトロニクスや高出力レーザーのような分野では使用することができない。
【0008】
芳香族ポリイミドは、より優れた機械的、熱的性質を示すことが可能なポリマーである。しかしながら、それらのポリマーにはC−H結合が大量に存在するために、極めて高い光学的損失を示す。この欠点を克服する目的で、多くの研究者たちが、これらポリイミドの構造を変性、特にC−H結合を変性することによって、特に赤外線領域においてその光学的損失を可能な限り低く抑えたポリイミドを得ることを試みてきた。
【0009】
文献[1]の著者および、著者サン−クレア(Saint−Clair)らは、「エバリュエーション・オブ・カラーレス・ポリイミド・フィルム・フォア・サーマル・コントロール・コーティング・アプリケーション(Evaluatoin of Colorless Polyimide Film for Thermal Control Coating Application)」(サンペ・ジャーナル(Sampe Journal)、1985年8月号、p.28〜33[2])の中で、次の単位を含む芳香族ポリイミドについて述べている:
【化1】

【0010】
ヘキサフルオロイソプロピリデン基が存在するために、これらのポリイミドは、水素を含む対応物に比較して、赤外線における吸収が弱く、そのため、この領域における光学的損失がより低くなっている。しかしながら、これらのポリマーではまだフェニル基の中にC−H結合を含んでいるために、赤外線スペクトルの2500〜3500cm−1の領域内では顕著な吸収がある。そのために、これらのポリイミドを高出力レーザーの分野で利用するのは不可能である。
【0011】
著者アンドウ(Ando)らは、米国特許第5,233,018号明細書[3]および米国特許第6,048,986号明細書[4]の中で、近赤外、すなわち、5880〜10,000cm−1領域の光透過ウインドウにおける、吸収を減少させることを目的とした、過フッ素化したポリイミドを開示している。しかしながら、それらのポリマーは、2500〜3500cm−1の範囲内、すなわち高出力レーザーで採用される透過領域では、完全に透過性であるとは言えない。
【0012】
最後に、著者ウォーレス(Wallace)らは、論文「ガス・アブソープション・デュアリング・イオン−イラディエーション・オブ・ア・ポリマー・ターゲット(Gas Absorption during ion−irradiation of a polymer target)」(ニュークリア・インストラメンツ・アンド・メソッズ・イン・フィジックス・リサーチ(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research)、1995年、第B103巻、p.435〜439[5])の中で、ピロメリット酸二無水物/オキシジアニリン単位を含む部分重水素化(23%まで)ポリイミドについて述べている。しかしながら、このポリマーは、機械的性質、たとえば引張強さが約110MPaを示し、また、その光学的性質は、高出力レーザーの分野で利用するには不十分なものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、従来技術のポリマーはすべて、以下の難点の1つまたは複数を示す:
・それらが不十分な熱的性質を示す;
・それらが、所定の透過ウインドウの範囲内、特に、2500cm−1〜3500cm
の間の透過ウインドウで、過度に高い強度を有する吸収ピーク(すなわち、過度に高い光学的減衰)を示す;
・それらが、それらのポリマーを非常に良好な機械的性質を必要とする分野で使用するには困難が伴うような、機械的性質を示す。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的の1つは、従来技術のポリマーが持つ上述のような欠点を示すことがなく、また、特に良好な機械的性能(たとえば引張強さが110MPaより大)および2500〜3500cm−1の範囲の透過域で完全な透明性を示す、新規なポリマーを提供することである。
【0015】
本発明の目的の1つは、本発明に従うポリマーを調製するための方法をさらに提供することである。
【0016】
本発明のまた別な目的は、本発明の方法の文脈において使用可能なモノマーを提供することである。
【0017】
本発明の目的の1つは、そのようなモノマーを調製するための方法を提供することである。
【0018】
最後に、本発明の目的の1つは、本発明によるポリマーをベースとしたフィルムを提供することである。
【0019】
本発明は、第1の主題によれば、重水素化ポリイミドに関し、その主鎖には以下のものの間の交互配置を含む:
・次式(I)に相当する少なくとも1種の繰り返し単位:
【化2】


ここで:
・Yは単結合またはスペーサー基を表す;および
・次式(II)に相当する少なくとも1種の繰り返し単位:
【化3】


ここで:
・Aは、6〜10個の炭素原子を含む過重水素化(perdeuterated)芳香族基を表し;
・Zは、単結合、または−O−C−、−CO−C−および−C−から選択される基を表す。
【0020】
このように、本発明のポリイミドは交互ポリマーに相当し、その主鎖には、少なくとも1種の式(I)の単位と、少なくとも1種の式(II)の単位との間の交互配置を含む。別の言い方をすれば、前記の単位は互いに、次のように結合されている:
【化4】

【0021】
少なくとも1種の式(I)の単位と少なくとも1種の式(II)の単位との間の交互配置に加えて、本発明のポリイミドの主鎖には、他の単位、たとえば後に説明する式(III)の単位を含んでいてもよい。
【0022】
本発明のポリイミドに、式(I)の異種の繰り返し単位と、式(II)の異種の繰り返し単位とを含んでいる場合には、主鎖における式(I)の異種の単位と式(II)の異種単位との間の交互配置は、ランダムなものになるであろう。
【0023】
本発明においては、「単結合」という用語は、共有結合を意味するものと理解すべきである。したがって、Zが単結合を表す場合には、式(II)の単位は、式−A−の単位に相当する。
【0024】
「スペーサー基」という用語は、2つのフェニル基の間で橋かけを形成し、共有結合を介して後者と結合している基を意味するものと理解することとする。
【0025】
は、フェニル環が3個の重水素原子で置換されていることを意味するものとする。
【0026】
驚くべきことには、本発明の発明者らは、これらのポリイミドが、たとえば引張強さσが110MPaより大、ヤング率Eが2GPaより大、そして破断時伸びεが10%以上といった、優れた機械的性質を示すことを明らかにすることができた。
【0027】
さらに、本発明のポリイミドは、−253から400℃の間の温度に耐えることが可能であるため、これらのポリイミドを極めて広い温度範囲で利用することが可能となる。
【0028】
最後に、これらのポリイミドが過重水素化芳香族基を含むということによって、2500〜3500cm−1の赤外線領域の間で、これらのポリマーに透過性を付与することが可能となった。
【0029】
先に述べたように、本発明のポリイミドは過重水素化芳香族ポリイミドに相当するが、これはすなわち、芳香族基に付いている水素原子すべてが重水素原子に置換されているということである。
【0030】
「過重水素化芳香族基」という用語は、ここまでおよびこの後も、過重水素化ベンゼン基または過重水素化ナフタレン基を意味するものと理解することとする。
【0031】
これらのフェニル基の間に橋かけを作っている基Yは、単結合であっても、あるいはスペーサー基であってもよい。Yがスペーサー基の場合には、それは、−O−、−CD−、−CO−、−SO−、または−C−から選択することができる。
【0032】
式(I)の単位の繰り返し数が、式(II)の単位の繰り返し数と等しいのが好ましい。
【0033】
本発明に従う具体的なポリイミドは、その主鎖に、先に定義された式(I)の繰り返し単位と式(IIa)の繰り返し単位との間の交互配置を含むものである:
【化5】


ここでZは、先に挙げた定義と同一のものに相当する。
【0034】
具体的なポリイミドをさらに挙げれば、以下のものから選択されるポリイミドがある:・次式(Ia)の繰り返し単位と次式(IIb)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化6】


・次式(Ia)の繰り返し単位と次式(IIc)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化7】


・次式(Ia)の繰り返し単位と次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化8】


・次式(Ib)の繰り返し単位と次式(IIb)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化9】


・次式(Ib)の繰り返し単位と次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化10】


・次式(Ic)の繰り返し単位と次式(IIb)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化11】


・次式(Ic)の繰り返し単位と次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化12】


・次式(Id)の繰り返し単位と次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化13】


・次式(Ia)の繰り返し単位と、次式(IIb)の繰り返し単位と、次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化14】


・次式(Ic)の繰り返し単位と、次式(IIb)の繰り返し単位と、次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化15】

【0035】
本発明においては、これら具体的なポリイミドには、式(I)の単位の定義に入る具体
的な単位と式(II)の単位の定義に入る具体的な単位との間の交互配置からなる主鎖を含むことが理解されよう。
【0036】
これらの具体的なポリマーは特に、2500〜3500cm−1の間の範囲内における完全な透過性や、優れた機械的性質、たとえば110MPaを超える引張強さを示す。
【0037】
本発明においては、重水素化ポリイミドにはさらに、他のイミド単位、特に次式(III)に相当するイミド単位を含んでいてもよい:
【化16】

【0038】
この場合においては、ポリイミドには、式(I)の単位と式(II)の単位との間の交互配置と、式(II)の単位と式(III)の単位との間の交互配置から形成される主鎖が含まれることになろう。
【0039】
別の言い方をすれば、この主鎖には以下の単位を含むことになる:
【化17】


および
【化18】


これらの単位が結合される順序はランダムである。
【0040】
先行するパラグラフに相当する具体的なポリイミドは、次式(Ia)の繰り返し単位と、次式(IIb)の繰り返し単位と、次式(III)の繰り返し単位とを含むポリイミドである:
【化19】

【0041】
この場合、主鎖における交互配置は、式(Ia)の単位と式(IIb)の単位との間、および式(III)の単位と式(IIb)の単位との間で起こり、それらの交互配置はランダムに並ぶ。
【0042】
本発明に従うポリイミドは、どのようなタイプの方法で調製してもよい。
【0043】
具体的には、本発明のポリイミドは、適切な温度で、ポリ(アミド−酸)の溶液を加熱
して処理することからなる工程を含む方法により調製することができるが、そのポリ(アミド−酸)の主鎖には、少なくとも1種の式(IV)の繰り返し単位:
【化20】


(ここでYは、前述のものと同じ定義に相当する)
と;
少なくとも1種の式(II)の繰り返し単位:
【化21】


(ここでAとZは、先に挙げた定義と同一のものに相当する)との間の交互配置を含み、ここでその適切な加熱温度は、前記ポリ(アミド−酸)のイミド化が完全に進行するような温度とする。
【0044】
本発明のポリイミドにさらに、先に定義した式(III)の単位を含む場合には、そのようなポリイミドは、ポリ(アミド−酸)の溶液から調製するが、その主鎖には以下のものを同時に含む:
・少なくとも1種の式(IV)の繰り返し単位と式(II)の単位との間の交互配置であって、次式の繰り返し単位を含むポリ(アミド−酸)で表されるもの:
【化22】


および
・式(IVa)の単位:
【化23】


と少なくとも1種の式(II)の単位との間の交互配置であって、次式の繰り返し単位を含むポリ(アミド−酸)で表されるもの:
【化24】

【0045】
適切な温度での加熱は、空気中または不活性ガス雰囲気、たとえばアルゴンまたは窒素雰囲気下で、温度範囲たとえば80〜400℃、時間たとえば1〜8時間で実施することができる。
【0046】
本発明の方法によれば、上述のポリ(アミド−酸)溶液は、溶液中で次のモノマーを重縮合させることによって調製することができるが、それらは次式(V)の少なくとも1種のモノマー:
【化25】


(ここでYは、先に挙げた定義と同一のものに相当する)、および
次式(VI)の少なくとも1種のモノマー:
ND−A−Z−ND (VI)
(ここでAおよびZは、先に挙げた定義と同一のものに相当する)であり、これら式(V)および(VI)のモノマーは、化学量論比で反応させるのが好ましい。
【0047】
ポリ(アミド−酸)溶液にさらに式(IVa)の単位を含む場合には、重縮合は、次式のモノマーを存在させて実施する:
【化26】

【0048】
このポリ(アミド−酸)溶液の調製は、双極性非プロトン性溶媒、たとえばN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAC)の中で、周囲温度で、不活性ガス雰囲気下で実施するのが好ましく、その溶液の濃度は、たとえば5〜15%の範囲で変化させることができる。
【0049】
高分子量のポリ(アミド−酸)前駆体を得るためには、上述のモノマー類を好ましくは、化学量論比で反応させるべきである。さらに、これらのモノマーは使用前に精製して、酸二無水物モノマーを加水分解するおそれがある微量の水分と、化学量論比を乱す可能性のある微量不純物を除去しておくのが好ましい。それらのモノマーは、たとえば昇華によって精製することができる。
【0050】
本発明のもう1つの主題は、本発明の方法の文脈において使用することが可能な酸二無水物モノマーであって、それは、次式(V)に相当する:
【化27】


(ここでYは、先に挙げた定義と同一のものに相当する)。
【0051】
式(V)に従う具体的なモノマーとしては、以下の式で表されるモノマーが挙げられる:
【化28】

【0052】
本発明の方法の文脈において使用することが可能な重水素化ジアミンモノマーは、次の一般式(VI)に相当するモノマーである:
ND−A−Z−ND (VI)
ここでAおよびZは、先に挙げた定義と同一のものに相当する。
【0053】
式(VI)に従う具体的なジアミンモノマーとしては、以下の式で表されるモノマーが挙げられる:
【化29】

【0054】
これらの重水素化ジアミンモノマーは、具体的には、アルドリッチ(Aldrich)およびCDN−アイソトープス(CDN−Isotopes)から入手可能である。
【0055】
本発明のまた別な主題は、次式(V)のモノマーを調製するための方法である:
【化30】


(ここでYは、先に挙げた定義と同一のものに相当する)、前記方法には、以下の工程を順に実施することが含まれる:
・次式(VII)の化合物:
【化31】


を重水素化して、次式(VIII)の化合物を得る工程:
【化32】


・上で得られた化合物を酸化させて、次式(IX)の化合物を得る工程:
【化33】


・上で得られた化合物を環化脱水反応させて、式(V)の化合物を得る工程。
【0056】
出発物質である式(VII)で表されるテトラメチル化合物は、ランカスター(Lancaster)から商品として購入できる化合物ではあるが、場合によっては、当業者の技術範囲に属する適切な合成方法を用いて、調製することも可能である。本発明の方法に関連するこれらの出発化合物は、メチル基を重水素化することはなく、しかも芳香族環は完全に重水素化できる工程にかけて、式(VIII)で表される化合物を得る。この重水素化工程は、出発物質のテトラメチル化合物を、重水素化酸性媒体(たとえばDCl溶液)中、重水の存在下で、適切な温度、たとえば250℃で、中程度の圧力下、すなわち最高40〜45バール程度の範囲の圧力下で、加熱することによって、有利に実施することができる。この重水素化工程は、パール装置(Parr apparatus)の中で実施するのが好都合であるが、これは、中程度の圧力で反応を実施するための装置である。上述の重水素化工程については、より詳細な記述が次の論文の中にある。ウェルスチュック(Werstiuk)ら、「ザ・ハイ・テンペラチャー・アンド・ダイリュート・アシッド(HTDA)・プロシージャー・アズ・ア・ジェネラル・メソッド・オブ・レプレーシング・アロマティック・ハイドロジェン・バイ・ジューテリウム(The High Temperature and Dilute Acid(HTDA)Procedure as a General Method of Replacing Aromatic Hydrogen by Deuterium)」(カナディアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー(Can.J.Chem.)1973年、第52巻、p.2169〜2171、[6])。
【0057】
次いで、式(VIII)の重水素化化合物を酸化工程にかけて、メチル基を−COOH基に転換させる。この酸化工程は、式(VIII)の化合物を過マンガン酸カリウムと、2相媒体(水相/有機相)中、相間移動剤の存在下で反応させることによって、都合よく実施される。その有機相は、たとえばハロゲン化溶媒、たとえばジクロロエタンで構成することができ、また相間移動剤は、アンモニウム塩、たとえばテトラブチルアンモニウムブロミドまたはセチルトリメチルアンモニウムブロミドなどでよい。反応機構も含めて、この酸化工程についてのさらなる教示は、次の文献に見ることができる。アルタムキーナ(Artamkina)ら、「オキシデーション・オブ・アルキル・アロマティック・コンパウンズ・ウィズ・ポタシウム・パーマンガネート・アンダー・ザ・コンディションズ・オブ・インターフェース・キャタリシス(Oxidation of Alkyl Aromatic Compounds With Potassium Permanganate Under The Conditions of Interphase Catalysis)」(ズルナル・オルガニチェスコイ・キミー(Zhurnal Organicheskoi Chimii)からの翻訳、1980年4月号、第16巻、第4号、p.99、p.698〜702、[7]。
【0058】
最後に、式(IX)のテトラカルボキシル化合物を環化脱水反応工程にかける。この工程は、化合物(IX)を昇華させるか、または無水酢酸の存在下に加熱するか、のいずれかの方法によって実施することができ、この工程が完結すると、目的とする過重水素化した酸二無水物モノマーが得られる。
【0059】
別な方法として、式(V)のモノマーを調製するための方法として、式(X)の化合物:
【化34】


を、超臨界圧力で芳香族環の重水素化をさせて、上述の式(V)の化合物を得ることもできる。
【0060】
ここでの超臨界圧力とは、実質的には220バールに等しい圧力に相当するものとする。式(X)の化合物は、インターキム(Interchim)から商品として購入することもできるし、あるいは、当業者の技術範囲に属する通常の合成方法を用いて、調製することも可能である。この重水素化工程は、先に述べたものと同様である。
【0061】
本発明はさらに、式(VI)のモノマーを調製するための方法にも関し:
ND−A−Z−ND (VI)
(ここでAとZは、先に挙げた定義と同一のものに相当する)、前記方法には、以下の工程を順に実施することが含まれる:
・次式(XI)の化合物:
NH−A−Z−NH (XI)
を無機酸HXと反応させ、次式(XII)のアンモニウム塩を得る工程:
NH−A−Z−NH (XII)
(ここでXはハライド、たとえばクロリドまたはブロミドを表す);
・前記アンモニウム塩を適切な圧力下で重水と反応させ、次いで塩基と反応させて式(VI)のモノマーを得る工程。
【0062】
別な方法として、式(VI)のモノマーを調製する方法として、次式(XI)の化合物:
NH−A−Z−NH (XI)
を塩基性媒体中、適切な圧力下で重水と反応させて、式(VI)のモノマーのモノマーを得る方法を用いてもよい。
【0063】
式(XI)の塩基性化合物は、アルドリッチ(Aldrich)やインターキム(Interchim)から商品として入手できる。アンモニウム塩を調製するには、酸、たとえば塩化水素酸を式(XI)のジアミン化合物と反応させる。得られるアンモニウム塩を次いで、重水素化工程にかけて、重水を作用させることによって、単一または複数の芳香族基とアミン基にある水素を、重水素と交換させ、それに続けて最後の工程で塩基、たとえばNaOHまたはNaODで処理して、目的とする重水素化ジアミンモノマーを得る。好ましくはこの重水素化工程は、温度範囲100〜375℃で、中程度の圧力、たとえば15〜50バール、実際にはさらに高く220バールまでの圧力下に、好ましくはパール装置中で実施する。
【0064】
本発明は、上で定義した重水素化ポリイミドをベースとしたフィルム(または膜)に関する。
【0065】
本発明においては、「フィルム」(または「膜」)という用語は、支持体の上のポリイミドの均一な層を意味すると理解するものとするが、この層は、先に定義したポリ(アミド−酸)溶液を前記支持体の上に析出させることにより得られるものであり、前記溶液は完全なイミド化処理にかけておいたものである。この層は、支持体上に保持されていてもよいし(「支持フィルム」)、あるいはそのような支持体から剥がしたもの(「自立性フィルム」)であってもよいこととする。
【0066】
このフィルムは、当業者には公知の各種の方法を用いて調製することができる。
【0067】
具体的には、これらのフィルムは、手塗り(hand−coating)方法によって調製することもできる。その方法では、先に定義したようなポリ(アミド−酸)溶液を支持体の上に析出させるが、その支持体は、たとえばガラスのような材料から作ったものであってよい。次いでその溶液を、たとえば温度65〜80℃で乾燥させ、次いで、たとえば温度100から400℃まで、プログラムに従った加熱をして、ポリ(アミド−酸)をイミド化させてポリイミドとする。それに続けて、その支持体を水中に浸漬させて、その過重水素化フィルムを剥がすことも可能である。
【0068】
このフィルムは、赤外分光光度法によって特性を調べることが可能であるが、赤外分光光度法では、特に、1790cm−1に位置する吸収帯によってイミド基の存在が、また、2000〜2500cm−1の間の領域内に現れるC−D結合に関する吸収帯が検出できる。
【0069】
これらのフィルムは、優れた機械的性質、優れた耐熱性、そして2500〜3500cm−1の領域内における透過性を示す。
【0070】
最後に、本発明は、本発明による重水素化ポリイミドの、2500〜3500cm−1の領域内における透過性材料としての使用に関する。
【0071】
ここで本発明について、以下の実施例を参照しながら記述するが、それらは説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【0072】
(実施例)
実施例1〜11により、本発明によるポリイミドの調製について説明する。
【0073】
それらの実施例では、それぞれポリ(アミド−酸)中間体の調製を示し、それに続けて、その中間体をポリイミドに転換させている。
【0074】
これらの実施例で調製したポリイミドは、それぞれ、機械的試験、熱的試験および赤外分光光度法によって、特性を調べた。
【0075】
さらに詳しくは、調製したポリイミドを、穴開けパンチで切り出した標準試験片について、引張試験を行って、機械的な特性を調べた:
・ヤング率E(GPaで表す);
・引張強さ(MPaで表す);
・破断時伸び(%で表す)。
【0076】
加熱試験では、熱膨張係数(TECと表記、単位は10−5K)を測定したが、この係数を測定するには、2通りの方法が可能である:
・支持体の上にフィルムの形態で析出させたポリイミドを使用する方法(以後、「支持法」と呼ぶ)か;
・または、支持体の無いフィルムの形態のポリイミドを使用(以後「非支持法」と呼ぶ)のいずれかの方法である。
【0077】
最後に、得られたポリイミドをIR分光光度法により特性測定し、それらのポリイミドが、2500〜3500cm−1にわたる領域内では完全に透過性であることを示した。
【実施例1】
【0078】
この実施例では、式(Ia)の繰り返し単位と式(IIb)繰り返し単位との間の交互配置で形成される主鎖を含むポリイミドの調製法について説明する:
【化35】

【0079】
基本的な反応剤は以下のものである:
・次式のd−3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(略称d−BPDA):
【化36】


・次式のd−p−フェニレンジアミン(略称d−p−PDA):
【化37】

【0080】
過重水素化した酸二無水物であるd−BPDAをアルゴン気流下で、予め昇華により精製し、無水のN−メチルピロリドン(NMP)に溶解させた、過重水素化したジアミンであるd−p−PDAの入った250mLの3口フラスコの中に、化学量論量になるよう、徐々に添加して、目的の濃度とした。次いでこの反応媒体を、周囲温度で20〜24時間、撹拌させておいた。
【0081】
この工程が済むと、得られた淡黄色で粘稠なポリ(アミド−酸)溶液(30℃、5g/L−1溶液における固有粘度値が、230〜280mL/g−1)を、所定のガラスフラスコに移す。
【0082】
次いで、得られたポリ(アミド−酸)溶液のフィルムをガラス板の上に析出させるが、前記のガラス板の上には、所望のフィルムの厚みに相当する、厚み20〜30μmの間隙調製板を用いる。次いでそのガラス板を温度調節したプレートの上に置いて、乾燥工程を実施する。この加熱乾燥サイクルは、50〜80℃で、固定相で実施する。乾燥して得られるフィルムを加熱器に入れて、アニリーング工程を実施する。この工程において、環化脱水反応によりポリ(アミド−酸)フィルムをポリイミドに転換させることが可能となる。この加熱アニリーングサイクルは、100〜300℃の間で実施し、昇温速度は1〜5℃/分とする。次いでそのガラス板を水浴の中に浸漬し、ガラス板からポリイミドフィルムを剥がす。
【0083】
得られるd−BPDA/d−p−PDAフィルムを、以下の測定にかける:
・透過IRスペクトル;
・ヤング率、引張強さおよび破断時伸びの値を得るための機械的試験;
・非支持法、支持法の2つの方法による、熱膨張係数測定。
【0084】
上記の試験の結果を、以下の表1にまとめる。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例1の生成物のIRスペクトルは、芳香族炭素−重水素結合に相当する2247cm−1に吸収ピークを示し、芳香族C−H結合に相当する3080cm−1には吸収ピークを示さない。この生成物は、2500〜3500cm−1の領域内において、完全な透過性がある(すなわち、光学的減衰を示さない)。
【0087】
さらにこの生成物は、従来技術による生成物に比較して、優れた機械的性質(引張強さ、335MPa)を示す。
【実施例2】
【0088】
この実施例では、その主鎖が、式(Ia)の繰り返し単位と式(IIc)繰り返し単位との間の交互配置で形成される、ポリイミドの調製法について説明する:
【化38】

【0089】
基本的な反応剤は以下のものである:
・次式のd−3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(略称d−BPDA):
【化39】


・次式のd−m−フェニレンジアミン(略称d−m−PDA):
【化40】

【0090】
上述のポリイミドは、d−BPDA/d−m−PDAと名付けるが、実施例1の場合と同一の手順で調製し、同一の試験にかける。
【0091】
上記の試験の結果を、以下の表2にまとめる。
【0092】
【表2】

【0093】
この生成物は、2500〜3500cm−1の領域内において、透過性である。
【0094】
さらにこの生成物は、従来技術による生成物に比較して、優れた機械的性質(たとえば
引張強さ、340MPa)を示す。
【実施例3】
【0095】
この実施例では、その主鎖が、式(Ia)の繰り返し単位と式(IId)繰り返し単位との間の交互配置で形成される、ポリイミドの調製法について説明する:
【化41】

【0096】
基本的な反応剤は以下のものである:
・次式のd−3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(略称d−BPDA):
【化42】


・次式のd12−オキシジアニリン(略称d12−ODA):
【化43】

【0097】
上述のポリイミドは、d−BPDA/d12−ODAと名付けるが、実施例1の場合と同一の手順で調製し、同一の試験にかける。
【0098】
上記の試験の結果を、以下の表3にまとめる。
【0099】
【表3】

【0100】
この生成物は、2500〜3500cm−1の領域内において、透過性である。
【0101】
この生成物は、従来技術による生成物に比較して、良好な機械的性質(引張強さ、120MPa)を示す。
【実施例4】
【0102】
この実施例では、その主鎖が、式(Ib)の繰り返し単位と式(IIb)繰り返し単位との間の交互配置で形成される、ポリイミドの調製法について説明する:
【化44】

【0103】
基本的な反応剤は以下のものである:
・次式のd−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル酸二無水物(略称d−ODPA):
【化45】


・次式のd−p−フェニレンジアミン(略称d−p−PDA):
【化46】

【0104】
上述のポリイミドは、d−ODPA/d−PDAと名付けるが、実施例1の場合と同一の手順で調製し、同一の試験にかける。
【0105】
上記の試験の結果を、以下の表4にまとめる。
【0106】
【表4】

【0107】
この生成物は、2500〜3500cm−1の領域内において、透過性である。
【0108】
さらにこの生成物は、従来技術による生成物に比較して、極めて良好な機械的性質(引張強さ、180MPa)を示す。
【実施例5】
【0109】
この実施例では、その主鎖が、式(Ib)の繰り返し単位と式(IId)繰り返し単位との間の交互配置で形成される、ポリイミドの調製法について説明する:
【化47】

【0110】
基本的な反応剤は以下のものである:
・次式のd−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル酸二無水物(略称d−ODPA):
【化48】


・次式のd12−オキシジアニリン(略称d12−ODA):
【化49】

【0111】
上述のポリイミドは、d−ODPA/d−ODAと名付けるが、実施例1の場合と同一の手順で調製し、同一の試験にかける。
【0112】
上記の試験の結果を、以下の表5にまとめる。
【0113】
【表5】

【0114】
この生成物は、2500〜3500cm−1の領域内において、透過性である。
【0115】
この生成物は、従来技術による生成物に比較して、良好な機械的性質(引張強さ、140MPa)を示す。
【実施例6】
【0116】
この実施例では、その主鎖が、式(Ic)の繰り返し単位と式(IIb)繰り返し単位との間の交互配置で形成される、ポリイミドの調製法について説明する:
【化50】

【0117】
基本的な反応剤は以下のものである:
・次式のd−3,3',4,4'−ベンゾフェノン酸二無水物(略称d−BTDA):
【化51】


・次式のd−p−フェニレンジアミン(略称d−p−PDA):
【化52】

【0118】
上述のポリイミドは、d−BTDA/d−p−PDAと名付けるが、実施例1の場合と同一の手順で調製し、同一の試験にかける。
【0119】
上記の試験の結果を、以下の表6にまとめる。
【0120】
【表6】

【0121】
この生成物は、2500〜3500cm−1の領域内において、透過性である。
【0122】
さらにこの生成物は、従来技術による生成物に比較して、極めて良好な機械的性質(引張強さ、175MPa)を示す。
【実施例7】
【0123】
この実施例では、その主鎖が、式(Ic)の繰り返し単位と式(IId)繰り返し単位との間の交互配置で形成される、ポリイミドの調製法について説明する:
【化53】

【0124】
基本的な反応剤は以下のものである:
・次式のd−3,3',4,4'−ベンゾフェノン酸二無水物(略称d−BTDA):
【化54】


・次式のd12−オキシジアニリン(略称d12−ODA):
【化55】

【0125】
上述のポリイミドは、d−BTDA/d12−ODAと名付けるが、実施例1の場合と同一の手順で調製し、同一の試験にかける。
【0126】
上記の試験の結果を、以下の表7にまとめる。
【0127】
【表7】

【0128】
この生成物は、2500〜3500cm−1の領域内において、透過性である。
【0129】
この生成物も、従来技術による生成物よりも、良好な機械的性質を示す。
【実施例8】
【0130】
この実施例では、その主鎖が、式(Id)の繰り返し単位と式(IId)繰り返し単位との間の交互配置で形成される、ポリイミドの調製法について説明する:
【化56】

【0131】
基本的な反応剤は以下のものである:
・次式のd10−3,3",4,4"−m−ターフェニル酸二無水物(略称d10−MTPDA):
【化57】


・次式のd12−オキシジアニリン(略称d12−ODA):
【化58】

【0132】
上述のポリイミドは、d10−MTPDA/d−ODAと名付けるが、実施例1の場合と同一の手順で調製し、同一の試験にかける。
【0133】
上記の試験の結果を、以下の表8にまとめる。
【0134】
【表8】

【0135】
この生成物は、2500〜3500cm−1の領域内において、透過性である。
【0136】
この生成物は、従来技術による生成物に比較して、良好な機械的性質(引張強さ、130MPa)を示す。
【実施例9】
【0137】
この実施例では、その主鎖が、式(Ia)の繰り返し単位と式(IIb)繰り返し単位と式(III)の繰り返し単位とを有するポリイミドの調製法について説明する:
【化59】

【0138】
基本的な反応剤は以下のものである:
・次式のd−3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(略称d−BPDA):
【化60】


・次式のd−p−フェニレンジアミン(略称d−p−PDA):
【化61】


・次式のd−重水素化ピロメリット酸二無水物(d−PMDA):
【化62】

【0139】
上述のポリイミドは、d−BPDA−d−PMDA−d−p−PDAと名付けるが、実施例1の場合と同一の手順で調製し、同一の試験にかける。
【0140】
上記の試験の結果を、以下の表9にまとめる。
【0141】
【表9】

【0142】
この生成物は、2500〜3500cm−1の領域内において、透過性である。
【0143】
さらにこの生成物は、従来技術による生成物に比較して、優れた機械的性質(引張強さ、300MPa)を示す。
【実施例10】
【0144】
この実施例では、その主鎖が、式(Ia)の繰り返し単位と式(IIb)繰り返し単位と式(IId)の繰り返し単位とを有するポリイミドの調製法について説明する:
【化63】

【0145】
基本的な反応剤は以下のものである:
・次式のd−3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(略称d−BPDA):
【化64】


・次式のd−p−フェニレンジアミン(略称d−p−PDA):
【化65】


・次式のd12−オキシジアニリン(略称d12−ODA):
【化66】

【0146】
上述のポリイミドは、d−BPDA−d−p−PDA−d12−ODAと名付けるが、実施例1の場合と同一の手順で調製し、同一の試験にかける。
【0147】
上記の試験の結果を、以下の表10にまとめる。
【0148】
【表10】

【0149】
この生成物は、2500〜3500cm−1の領域内において、透過性である。
【0150】
さらにこの生成物は、従来技術による生成物に比較して、極めて良好な機械的性質(引張強さ、210MPa)を示す。
【実施例11】
【0151】
この実施例では、その主鎖が、式(Ic)の繰り返し単位と式(IIb)繰り返し単位と式(IId)の繰り返し単位とを有するポリイミドの調製法について説明する:
【化67】

【0152】
基本的な反応剤は以下のものである:
・次式のd−3,3',4,4'−ベンゾフェノン酸二無水物(略称d−BTDA):
【化68】


・次式のd−p−フェニレンジアミン(略称d−p−PDA):
【化69】


・次式のd12−オキシジアニリン(略称d12−ODA):
【化70】


上述のポリイミドは、d−BTDA−d−p−PDA−d12−ODAと名付けるが、実施例1の場合と同一の手順で調製し、同一の試験にかける。
【0153】
上記の試験の結果を、以下の表11にまとめる。
【0154】
【表11】

【0155】
この生成物は、2500〜3500cm−1の領域内において、透過性である。
【0156】
この生成物も、従来技術による生成物よりも、良好な機械的性質を示す。
【0157】
引用文献
[1]キタノ(Kitano)、レポーツ・オン・プログレス・イン・ポリマー・フィジ
ックス・イン・ジャパン(Reports on Progress in Polymer Physics in Japan)、2000年、第43巻;
[2]サン−クレア(Saint−Clair)ら、サンペ・ジャーナル(Sampe Journal)、1985年8月号、p.28〜33;
[3]米国特許第5,233,018号明細書;
[4]米国特許第6,048,986号明細書;
[5]ウォーレス(Wallace)ら、ニュークリア・インストラメンツ・アンド・メソッズ・イン・フィジックス・リサーチ(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research)、1995年、第B103巻、p.435〜439;
[6]ウェルスチュック(Werstiuk)ら、カナディアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー(Can.J.Chem.)1973年、第52巻、p.2169〜2171;
[7]アルタムキーナ(Artamkina)ら、ズルナル・オルガニチェスコイ・キミー(Zhurnal Organicheskoi Chimii)、1980年4月号、第16巻、第4号、p.99.698〜702、からの翻訳。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重水素化ポリイミドであって、その主鎖が:
・次式(I)に相当する少なくとも1種の繰り返し単位:
【化1】

(ここで、Yは単結合またはスペーサー基を表す)と、
・次式(II)に相当する少なくとも1種の繰り返し単位:
【化2】


(ここで、Aは、6〜10個の炭素原子を含む過重水素化芳香族基を表し;そしてZは、単結合、または−O−C−、−CO−C−および−C−から選択される基を表す)
との間の交互配置を含む、重水素化ポリイミド。
【請求項2】
Yがスペーサー基である場合には、Yが−O−、−CD−、−CO−、−SO−、または−C−から選択される基である、請求項1に記載の重水素化ポリイミド。
【請求項3】
式(II)に従う前記繰り返し単位が、次式(IIa)の繰り返し単位:
【化3】


(ここでZは、請求項1において与えた定義と同一のものに相当する)
である、請求項1または2に記載の重水素化ポリイミド。
【請求項4】
下記の、
・次式(Ia)の繰り返し単位と次式(IIb)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化4】


・次式(Ia)の繰り返し単位と次式(IIc)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化5】


・次式(Ia)の繰り返し単位と次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化6】


・次式(Ib)の繰り返し単位と次式(IIb)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化7】


・次式(Ib)の繰り返し単位と次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化8】


・次式(Ic)の繰り返し単位と次式(IIb)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化9】


・次式(Ic)の繰り返し単位と次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化10】


・次式(Id)の繰り返し単位と次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化11】


・次式(Ia)の繰り返し単位と、次式(IIb)の繰り返し単位と、次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化12】


・次式(Ic)の繰り返し単位と、次式(IIb)の繰り返し単位と、次式(IId)の繰り返し単位とを含むポリイミド:
【化13】

【請求項5】
さらに次式(III)に相当する単位を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の重水
素化ポリイミド。
【化14】


【請求項6】
・次式(Ia)の繰り返し単位と、次式(IIb)の繰り返し単位と、次式(III)の繰り返し単位とを含む、請求項5に記載の重水素化ポリイミド。
【化15】

【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に定義される重水素化ポリイミドを調製するための方法であって、
前記方法が、適切な温度に加熱することによって、ポリ(アミド−酸)の溶液を処理することからなる工程を含み、前記ポリ(アミド−酸)の主鎖が、少なくとも1種の次式(IV)の繰り返し単位:
【化16】


(ここでYは、請求項1において与えた定義と同一のものに相当する)と、
少なくとも1種の式(II)の繰り返し単位:
【化17】

(ここでAおよびZは、請求項1において与えた定義と同一のものに相当する)との間の交互配置を含み、
前記適切な加熱温度が、前記ポリ(アミド−酸)の完全なイミド化をもたらすように決定される、調製方法。
【請求項8】
前記適切な加熱温度が80〜400℃の範囲の温度である、請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記ポリ(アミド−酸)溶液が、溶媒中で、次式(V)の少なくとも1種のモノマー:
【化18】


(ここでYは、請求項1において与えた定義と同一のものに相当する)と、
次式(VI)の少なくとも1種のモノマー:
ND−A−Z−ND (VI)
(ここでAおよびZは、請求項1において与えた定義と同一のものに相当する)とを重縮合させることによって調製される、請求項7または8に記載の調製方法。
【請求項10】
前記溶媒が、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAC)からなる群より選択される、双極性の非プロトン性溶媒である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項11】
次式(V)に相当する重水素化酸二無水物モノマー:
【化19】


(ここでYは、請求項1において与えた定義と同一のものに相当する)。
【請求項12】
以下の式の1つに相当する重水素化酸二無水物モノマー:
【化20】

【請求項13】
式(V)のモノマーを調製するための方法であって:
【化21】


(ここでYは、請求項1において与えた定義と同一のものに相当する)、
前記方法が、以下の:
・式(VII)の化合物:
【化22】


を重水素化して、式(VIII)の化合物を得る工程:
【化23】


・上で得られた化合物を酸化させて、式(IX)の化合物を得る工程、
【化24】


・上で得られた化合物を環化脱水反応させて、式(V)の化合物を得る工程、
を順に実施することを含む、方法。
【請求項14】
式(VI)の重水素化ジアミンモノマーを調製するための方法であって:
ND−A−Z−ND (VI)
(ここでAとZは、請求項1において与えた定義と同一のものに相当する)、
前記方法が:
・式(XI)の化合物:
NH−A−Z−NH (XI)
を式HXの無機酸と反応させ、式(XII)のアンモニウム塩を得る工程:
NH−A−Z−NH (XII)
(ここでXはハライドを表す);
・前記アンモニウム塩を適切な圧力下で重水と反応させ、次いで塩基と反応させて式(VI)のモノマーを得る工程、を順に実施することを含む、方法。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1項において定義される重水素化ポリイミドをベースとするフィルム。
【請求項16】
2500〜3500cm−1の領域内における透過性の材料としての、請求項1〜6のいずれか1項において定義される重水素化ポリイミドの使用。

【公表番号】特表2006−522854(P2006−522854A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505868(P2006−505868)
【出願日】平成16年4月6日(2004.4.6)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050145
【国際公開番号】WO2004/092249
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】