説明

道路用標示板

【課題】2つの標示面を異なる方向へ標示し、且つその標示内容が夜に視認されやすくなされた道路用標示板を提供する。
【解決手段】山部と、この山部に隣接する谷部とを交互に並設させた波形形状に表面を形成させ、前記山部の頂部から一方へ隣接する前記谷部の底部へ至る面を光の再帰反射性を有する第一の標示面とし、前記頂部から他方へ隣接する谷部の底部へ至る面を光の再帰反射性を有する第二の標示面として、第一の標示面と第二の標示面とを交互に並設させ、前記各第一の標示面の各々の表示を組み合わされて一の標示が表されるように設け、前記各第二の標示面の各々の表示が組み合わされて前記第一の標示面とは異なる一の標示が表されるように設ける。前記第一の標示面と第二の標示面とがそれぞれ光の再帰反射性を有するので、夜間でも車のヘッドライト光などを再帰反射させて、車両の運転手などから良好に視認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に道路に沿って設置されて、走行する車両の運転手等へ標示を行う道路用標示板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文字や数字、矢印等の図形、等を標示する標示板については種々の発明が開示されている。
【0003】
例えば特許文献1には、第一方向向きの平面状に形成され、第一パターンの絵図柄が描かれると共に所定間隔で並設された複数の第一表示面と、前記第一方向とは異なる第二方向向きの平面状に形成され、前記第一パターンとは異なる第二パターンの絵図柄が描かれると共に前記複数の第一表示面の間に配設された第二表示面とを有する表示面を備え、前記第一表示面と前記第二表示面との境界部分が、山折形状及び谷折形状を交互に繰り返した形態に構成されていることを特徴とする広告表示体、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−86656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の如き広告表示体は、第一表示面と第二表示面とにそれぞれ描かれた絵図柄を異なる方向へ表示可能に構成されているが、周囲の照度が低い、例えば夜間の屋外などにおいてはその絵図柄が視認されにくくなる恐れがあった。
【0006】
そこで本発明は、2つの標示面を異なる方向へ標示し、且つその標示内容が夜に視認されやすくなされた道路用標示板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る道路用標示板は、山部と、該山部に隣接する谷部とが交互に並設された波形形状に表面が形成され、
前記山部の頂部から一方へ隣接する前記谷部の底部へ至る面が光の再帰反射性を有する第一の標示面となされ、前記頂部から他方へ隣接する谷部の底部へ至る面が光の再帰反射性を有する第二の標示面となされて、第一の標示面と第二の標示面とが交互に並設されるようになされており、
前記各第一の標示面の各々の表示が組み合わされて一の標示が表されるようになされ、
前記各第二の標示面の各々の表示が組み合わされて前記第一の標示面とは異なる一の標示が表されるようになされていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る道路用標示板によれば、山部と、この山部に隣接する谷部とを交互に並設させた波形形状に表面を形成させ、前記山部の頂部から一方へ隣接する前記谷部の底部へ至る面を第一の標示面とし、前記頂部から他方へ隣接する谷部の底部へ至る面を第二の標示面として、第一の標示面と第二の標示面とを交互に並設させ、
前記各第一の標示面の各々の表示を組み合わせて一の標示を表し、前記各第二の標示面の各々の表示を組み合わせて前記第一の標示面とは異なる一の標示を表すので、前記第一の標示面により表す一の標示と、前記第二の標示面により表す一の標示とが、それぞれ異なる方向へ向けて標示される。
また、前記第一の標示面と第二の標示面とがそれぞれ光の再帰反射性を有するので、夜間でも車のヘッドライト光などを再帰反射させて、車両の運転手などから良好に視認できるようになされる。
【0009】
また、前記各頂部をそれぞれ曲面形状に形成させれば、各頂部の摩耗や損傷が低減し、前記第一の標示面や第二の標示面の損傷が抑制され好ましい。また、前記各底部をそれぞれ曲面形状に形成させれば、各底部への塵や汚れなどの堆積が低減し、前記第一の標示面や第二の標示面の表示機能の低下が抑制され好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る道路用標示板によれば、2つの標示面を異なる方向へ標示し、且つその標示内容を夜間に視認しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る道路用標示板の実施の一形態を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図である。
【図2】図1の断面を拡大した図である。
【図3】図1の各第一の標示面の表す一の標示を視認した状況を示す斜視図である。
【図4】図1の各第二の標示面の表す一の標示を視認した状況を示す斜視図である。
【図5】図1の道路用標示板をカーブ形状の道路に設置した状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において、1は道路用標示板である。
本実施形態の道路用標示板1は、前方へ突出する上下方向に長い山部11と、これに隣接して後方へ窪む谷部12とが横方向へ交互に並設された波板形状に形成されている。
前記各山部11及び各谷部12は、その最も前方に突出している頂部11aと、最も後方に窪む底部12aとが、それぞれ曲面形状に形成されており、本実施形態の各頂部11aと各底部12aとはそれぞれ同じ曲率のアールに曲げ加工されている。
【0013】
本実施形態の道路用標示板1は、前面が標示面となされている。
具体的には、図1(ロ)に示すように正面視において、前記頂部11aから左側に隣接する底部12aまでの面に第一の標示面3が形成され、この頂部11aから右側に隣接する底部12aまでの面に第二の標示面4が形成されており、前記第一の標示面3と第二の標示面4とが道路用標示板1の全面に亘って交互に並設されて形成されている。
前記各第一の標示面3と、各第二の標示面4とを上記のように設けることで、道路用標示板1を前方左側より目視したときには主に各第一の標示面3が視認され、前方右側から目視したときには主に各第二の標示面4が視認されるようになされる。
【0014】
前記各第一の標示面3には、矢印部31と下地部32とがそれぞれ異なる色に着色されて設けられており、道路用標示板1を前方右側から視認したときに、各第一の標示面3の表示が組み合わされて、全体に右方向を示す逆くの字形状の矢印が標示されるように設けられている。
図3は、図1の各第一の標示面3の表す一の標示を視認した状況を示す斜視図であり、道路用標示板1を前方左側から視認したときに、各第一の標示面3に設けられた矢印部31と下地部32とが組み合わされて、全体的に右方向を示す逆くの字形状の矢印が表されている状況を示している。
【0015】
また、前記第二の標示面には、矢印部41と下地部42とがそれぞれ異なる色に着色されて設けられており、道路用標示板1を前方左側から視認したときに、各第二の標示面4の表示が組み合わされて、全体に左方向を示すくの字形状の矢印が標示されるように設けられている。
図4は、図1の各第二の標示面の表す一の標示を視認した状況を示す斜視図であり、道路用標示板1を前方右側から視認したときに、各第二の標示面4に設けられた矢印部41と下地部42とが組み合わされて、全体に左方向を示すくの字形状の矢印が標示されるように設けられている。
【0016】
本実施形態の道路用標示板1は、前記のように、前方右側より目視したときには左方向への矢印表示が視認され、前方左側より目視したときには右方向への矢印表示が視認されるように設けられている。このため、この道路用標示板1を、道路のカーブの外側に、標示面を道路側に向け且つ道路に沿うように設置することで、カーブに向かう車両に対して道路の線形を示すことができる。
【0017】
図5は図1の道路用標示板をカーブ形状の道路に設置した状況を示す平面図である。
本図において、道路Rはカーブ形状に形成されており、このカーブの外側に本実施形態の道路用標示板1が道路に沿って3個設置されている。
各道路用標示板1は各標示面を道路Rに向けているので、図5において下方向からカーブに進入する車両からは、各道路用標示板1をその前方左側から目視するようになされ、各道路用標示板1の各第一の標示面3の組み合わせによる右向きの矢印表示が視認されるようになされる。
また、図5の上方向からカーブに進入する車両からは、各道路用標示板1をその前方右側から目視するようになされ、各道路用標示板1の各第二の標示面4の組み合わせによる左向きの矢印表示が視認されるようになされる。
このように、各道路用標示板1は、異なる方向から接近する車両の運転手等に対して、その先の道路の形状に応じた矢印表示をそれぞれ標示させて認識させることができる。
【0018】
また、本実施形態の道路用標示板1は、各第一の標示面3と各第二の標示面4とに、道路の線形を示す矢印表示をそれぞれ標示させているが、これに限るものではなく、文字を用いた情報表示や、矢印以外の図形などを表してもよい。
【0019】
図2は図1の断面を拡大した図である。
本実施形態の道路用標示板1は、波板形状に曲げ加工されたアルミ板から形成されており、より詳細には波板形状のアルミ製の基板Pの前面の全面に亘って、光の再帰反射性を有する再帰反射シートSが貼着されて設けられている。再帰反射シートSは、一例として、シート内部にガラスビーズ等の再帰反射成分を封入した構成のものや、シート内部にキューブコーナープリズム等のプリズム素子を形成させた構成のものを好適に用いることができ、本実施形態ではシート内部にガラスビーズが封入された白色のシートを用いている。
【0020】
そして、前記各第一の標示面3に設けられた矢印部31及び下地部32と、前記各第二の標示面4に設けられた矢印部41及び下地部42とは、再帰反射シートSの表面に着色材を付着させてそれぞれ形成されている。
具体的には、これらは再帰反射シートSの表面に施された静電印刷により付着されたトナーによって着色されて形成されている。
前記トナーは不透明で微細なドットを縦横に並設させたドットパターンを形成するように印刷されて付着しており、前記各ドットの間に隙間が形成されるように設けられている。
そして、各ドットのドット形状や大きさ、各ドット間の隙間の大きさや再帰反射シートSの色調とのバランス、等によって前記矢印部31、下地部32、矢印部41、下地部42の色調を調整している。
【0021】
本実施形態の道路用標示板1へ前方から光が照射されたとき、この光は前記ドット間の隙間を通って再帰反射シートSに入射され、これに再帰反射された反射光は再び前記の隙間を通り、光源方向へ放射されるようになされている。
本実施形態の前記矢印部31、下地部32、矢印部41、下地部42は、微細なドットを縦横に並設させたドットパターンに設けているが、光を再帰反射させる隙間を備えるものであればこれに限るものではなく、線を並設させるように印刷させたストライプパターンに設けてもよく、その他のパターンに設けても良い。
また、前記のドットを半透明な着色材で設けてもよく、半透明な着色材と不透明な着色材とを選択又は組み合わせて再帰反射シートSに付着させても良い。
また、前記矢印部31、下地部32、矢印部41、下地部42を静電印刷によるドットパターンではなく、インクジェット印刷によって塗着、乾燥させた半透明な塗膜により着色させて形成させてもよく、道路用標示板1の前方から入射した光がこの塗膜を透過し、再帰反射シートSに反射されて再度この塗膜を透過し光源方向へ再帰反射されるように設けても良い。
【0022】
また、本実施形態の道路用標示板1において、前記矢印部31、下地部32、矢印部41、下地部42を形成する着色材の離脱や汚損の抑制、耐候性の向上などを目的として、再帰反射シートSの表面に、透明な塗膜やシートなどによる透明な保護層を設けるのが好ましい。
【0023】
本実施形態の道路用標示板1の形成方法は、再帰反射シートSを貼着させた平板形状の基板Pを波板形状に曲げ加工し、その後、各第一の標示面3と各第二の標示面4の標示を形成させてもよく、再帰反射シートSを貼着させた平板形状の基板Pに各第一の標示面3と各第二の標示面4の標示を形成させた後に、これらの標示にあわせて曲げ加工を施し基板Pを波板形状に形成させてもよい。
これらの方法を用いる場合には、表面に貼着させる再帰反射シートSが基板Pの曲げ加工の際に破断しないような柔軟性に富むものを用いるのが好ましい。
【0024】
本実施形態の道路用標示板1は、標示面側の全面に亘って再帰反射シートSが貼着されて光の再帰反射性を備えるので、光源方向側から前記各第一の標示面に表される一の標示や、前記各第二の標示面に表される一の標示を目視するとき、前記第一の標示面や第二の標示面から再帰反射光が再帰反射されて視認されるので、各第一の標示面や各第二の標示面に表された一の表示がよく視認されるようになされる。
また、本実施形態の道路用標示板は、前方左側より目視したときには各第一の標示面に表された一の標示が視認されるようになされているが、このとき光の再帰反射性を有する各第一の標示面の板面が観者に向けられるので、観者側より照射されたヘッドライト光などの光が効率よく再帰反射されるようになされ、これに表された一の標示の視認性が高められる。
また、同様に、前方右側より目視したときには、光の再帰反射性を有する各第二の標示面の板面が観者に向けられるので、観者側より照射されたヘッドライト光などの光が効率よく再帰反射されて、これに表された一の標示の視認性が高められる。
【符号の説明】
【0025】
1 道路用標示板
11 山部
11a 頂部
12 谷部
12a 底部
3 第一の標示面
31 矢印部
32 下地部
4 第二の標示面
41 矢印部
42 下地部
P 基板
S 再帰反射シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と、該山部に隣接する谷部とが交互に並設された波形形状に表面が形成され、
前記山部の頂部から一方へ隣接する前記谷部の底部へ至る面が光の再帰反射性を有する第一の標示面となされ、前記頂部から他方へ隣接する谷部の底部へ至る面が光の再帰反射性を有する第二の標示面となされて、第一の標示面と第二の標示面とが交互に並設されるようになされており、
前記各第一の標示面の各々の表示が組み合わされて一の標示が表されるようになされ、
前記各第二の標示面の各々の表示が組み合わされて前記第一の標示面とは異なる一の標示が表されるようになされていることを特徴とする道路用標示板。
【請求項2】
前記各頂部及び各底部はそれぞれ曲面形状に形成されていることを特徴とする道路用標示板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132151(P2012−132151A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282797(P2010−282797)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】