説明

道路盛土の補強方法

【課題】低コストで、短工期に行う事が出来る、上面に舗装道路を敷設する盛土の補強方法を提供すること。
【解決手段】盛土の法肩から前記法肩補強部の形成範囲の下方の盛土を掘削する工程と、掘削した範囲に前記法肩補強部を形成する工程と、前記法肩補強部の上に前記路盤補強部を形成する工程と、前記法肩補強部と路盤補強部とを一体に結合する工程と、前記路盤補強部の上に硬質舗装層を形成する工程とを含み、前記した一連の工程を舗装道路の片側を維持したまま施工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面に舗装道路を敷設する盛土の補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上面に舗装道路を敷設する盛土の補強構造は、図7に示すように、舗装道路の下方の盛土1全面に、高さ方向に所定の間隔を持って盛土補強材12を埋設して補強盛土とし、その上部に路盤24及び硬質舗装層22と、を積層して舗装道路2を構成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の盛土上に敷設する舗装道路の補強構造には以下の問題があった。
<1>地震や台風、豪雨等の災害時に、崩壊した舗装道路を復旧する際には、舗装道路の下部の盛土全面を掘削しなければならないため、復旧に時間がかかる。
<2>既設道路を補強するためには、舗装道路の下部の盛土全面を掘削しなければならないため、道路交通が遮断されてしまう。また、施工期間も長く、施工コストも高くなってしまう。
【0004】
本発明の目的は、低コストで、短工期に行う事が出来る、上面に舗装道路を敷設する盛土の補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、舗装道路の路盤部に補強材を敷設して形成する路盤補強部と、前記路盤補強部の下方であって、前記盛土の両側の法肩から所定範囲の下方の盛土を補強して形成する法肩補強部と、前記路盤補強部と、一方の前記法肩補強部と、他方の前記法肩補強部とにより囲まれた前記舗装道路の下方の盛土とを有し、前記路盤補強部の両側に、一方の前記法肩補強部と、他方の前記法肩補強部とを一体に結合し、前記路盤補強部と法肩補強部とにより前記舗装道路下方の盛土を包持して拘束するようにした道路盛土の補強方法であって、盛土の法肩から前記法肩補強部の形成範囲の下方の盛土を掘削する工程と、掘削した範囲に前記法肩補強部を形成する工程と、前記法肩補強部の上に前記路盤補強部を形成する工程と、前記法肩補強部と路盤補強部とを一体に結合する工程と、前記路盤補強部の上に硬質舗装層を形成する工程とを含み、前記した一連の工程を舗装道路の片側を維持したまま施工することを特徴とする、道路盛土の補強方法を提供するものである。
本願の第2発明は、第1発明の道路盛土の補強方法において、前記法肩補強部は、前記盛土内に敷設した前記補強材を法面側で巻き返して盛土を包み込んで形成した法面補強層を複数層積層して形成することを特徴とする、道路盛土の補強方法を提供するものである。
本願の第3発明は、第2発明の道路盛土の補強方法において、積層する前記法面補強層の、下層側の法面補強層の上面の補強材と、上層側の法面補強層の下面の補強材とを、連結材により連結することを特徴とする、道路盛土の補強方法を提供するものである。
本願の第4発明は、第2発明の道路盛土の補強方法において、前記法面補強層を貫通し、前記補強材に接続する縫合体を有することを特徴とする、道路盛土の補強方法を提供するものである。
本願の第5発明は、第1発明の道路盛土の補強方法において、連続する補強材によって盛土を包み込んで前記路盤補強部と前記法肩補強部とを一体に形成し、前記法肩補強部の法面側の補強材と、盛土側の補強材とを、拘束材によって拘束することを特徴とする、道路盛土の補強方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
<1>補強を行うのは、盛土の全面ではなく、路盤部と盛土の法肩から所定範囲の下方の盛土のみであるため、低コストで、短工期に施工を行うことができる。
<2>路盤部と、盛土の法肩の下方のみを掘削して補強するため、既設道路を補強する際にも、低コストで、短工期に施工を行うことができる。
<3>路盤補強部と、法肩補強部とによって内部の盛土を包持して、地震時の盛土の変位を制限することができる。このため、盛土全面を補強した場合と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】上面に舗装道路を敷設する盛土の補強構造の説明図
【図2】法肩補強部の説明図
【図3】両側に法肩部を有する道路盛土の補強構造の説明図
【図4】道路盛土の補強構造の説明図
【図5】既設の道路盛土の補強方法の説明図
【図6】上面に舗装道路を敷設する盛土の補強構造の説明図
【図7】従来の舗装道路を敷設する盛土の補強構造の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例】
【0009】
[1]補強構造の概要
道路盛土の補強構造は、上面に舗装道路2を敷設する盛土1の補強構造である。
補強構造は、盛土1の法肩Aの下方の所定範囲を補強して形成する法肩補強部11と、舗装道路2の下部の路盤補強部21と、により構成する。(図1)
以下、各構成について詳述する。
【0010】
<1>盛土
舗装道路2の下方の盛土1は、流用土や採取土を台形状に転圧して形成する。
盛土1の法肩Aから所定範囲の下方に、盛土1の法面に沿って、法肩補強部11を形成する。
盛土1の法面は、コンクリート等により形成した擁壁ブロック等により構成する。
【0011】
<2>法肩補強部
法肩補強部11は、盛土1内の高さ方向に所定の間隔で盛土補強材12を埋設して形成する。
盛土補強材12には、ジオグリッドやジオテキスタイルなどの可撓性を有する公知の部材が利用できる。
盛土補強材12は法面側で巻き返して盛土1を包み込み、法面補強層111を形成する。
法面補強層111を複数層積層して、法肩補強部11を形成する。
積層する法面補強層111a、111bの、下側の法面補強層111aの上面の盛土補強材12aと、上側の法面補強層111bの下面の盛土補強材12bを、樹脂、繊維、鋼線等からなるロープ材やテープ材である連結材13によって連結する。このように、上下に接する盛土補強材12を連結材13で結合して、積層する複数の法面補強層111が一体となって、法肩補強部11を形成する。(図2)
連結材13は、樹脂、繊維、鋼線等からなるロープ材やテープ材により構成する。
【0012】
また、法面補強層111の複数箇所を貫通するように、縫合体14により上面と下面の盛土補強材12を縫合してもよい。
縫合体14は、樹脂、繊維、鋼線等の可撓性と非伸縮性を有する素材からなるロープ材又はテープ材により構成する。
縫合体14は、積層する法面補強層111の複数層に亘って貫通し、上下を盛土補強材12と接続してもよい。
【0013】
<3>舗装道路
舗装道路2は、盛土1上に敷設するものである。
舗装道路2は、路盤補強部21と、路盤補強部21の上部に位置する硬質舗装層22と、により構成する。
硬質舗装層22は、アスファルトやコンクリートからなる。
【0014】
<4>路盤補強部
路盤補強部21は、舗装道路2の路盤部に、補強材23を埋設して形成したものである。
路盤部は、砕石を転圧して形成する。
補強材23は盛土補強材12と同様に、ジオグリッドやジオテキスタイルなどの可撓性を有する公知の部材が利用できる。補強材23は、高さ方向に所定の間隔で複数枚埋設したり、連続する補強材23によって路盤部を巻き込むように包持したりすることによって、路盤補強部21を形成する。
法肩付近の補強材23は、法肩補強部11の盛土補強材12と連続一体となるように配置したり、重合させて連結材13で結合したりすることにより、路盤補強部21と法肩補強部11を一体とする。
【0015】
<5>道路盛土の補強構造
上記のように形成することにより、路盤補強部21と、法肩補強部11とが一体となり、内部の盛土1を包持して拘束するため、地震時の舗装道路2のすべり破壊を防止し、変位が制限される。
このため、舗装道路2の下部全面に補強盛土を形成した場合と同様の効果を得ることができる。
【0016】
両側に法肩Aを有する盛土の場合には、両側に法肩補強部11を形成する。
このように構成することにより、内部の盛土1は両側の法肩補強部11と、上部の路盤補強部21によって包持(抱持)されることとなるため、より強固な構造とすることができる。(図3)
また、例えば斜面に面して盛土を構築した場合のように、片側の法肩Aに形成した法肩補強部11と路盤補強部21とによって、内部の盛土1を包持するようにしてもよい。(図1)
【0017】
この補強構造は、盛土1の法肩から下方の所定範囲に形成する法肩補強部11と、盛土1上部に形成する路盤補強部21とにより構成するため、低コストで構築することができる。
また、地震や台風、豪雨等の災害時に崩落するのは専ら盛土1の法面側であるが、本発明においては法肩から下方の所定範囲に法肩補強部11を形成するため、地震や降雨などの際の盛土1のすべり線(B)が盛土1内部(C)に移動する。これによって、盛土1のすべり変形を抑止することができるため、舗装道路2の下部全面の盛土1を補強した場合と同等の補強効果を得ることができる。(図4)
【0018】
[2]道路盛土の補強方法
次に、盛土1上に敷設する舗装道路2の補強方法について説明する。
【0019】
両側に法肩を有する既設の舗装道路2の盛土1を補強する場合には、一方の法肩側の、法肩補強部11を形成する範囲のみを掘削して、法肩補強部11を形成する。その後、構築する舗装道路2の下部に路盤補強部21を構築し、その上部に硬質舗装層22を構築する。(図5A)
そして、片側の施工が終了した後に、もう一方の法肩側の、盛土補強部11を形成する範囲のみを掘削して、盛土補強部11を形成し、その上部に路盤補強部21、硬質舗装層22を構築することによって、舗装道路2が構築する。(図5B)
舗装道路2全面を掘削するのではなく、補強する側の法肩部から所定範囲のみを掘削するため、既設の舗装道路2の片側は維持したまま施工でき、施工期間中であっても片側通行を確保することができる。
【0020】
[その他実施例]
上記実施例は盛土1中に補強部11及び路盤補強部21に盛土補強材12や補強材23を埋設して法肩補強部11及び路盤補強部21を形成したが、法肩補強部11と路盤補強部21とが一体となるように、連続する補強材23によって両補強部の外周を包み込むように埋設して形成することもできる。(図6)
この際、法肩補強部11の外周に位置する補強材23のうち、法面側の補強材23aと盛土側の補強材23bとを、拘束材15によって拘束する。拘束材15には、樹脂、繊維、鋼線等の可撓性と非伸縮性を有する素材からなるロープ材又はテープ材が利用できる。
拘束材15によって法肩補強部11の補強材23を内部から拘束することによって、法肩補強部11の下方で崩落が起こった際にも、法肩補強部11の変形が抑止され、上面に敷設された舗装道路2の交通を維持することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 盛土
11 法肩補強部
111 法面補強層
12 盛土補強材
13 連結材
14 縫合体
15 拘束材
2 舗装道路
21 路盤補強部
22 硬質舗装層
23 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装道路の路盤部に補強材を敷設して形成する路盤補強部と、前記路盤補強部の下方であって、前記盛土の両側の法肩から所定範囲の下方の盛土を補強して形成する法肩補強部と、前記路盤補強部と、一方の前記法肩補強部と、他方の前記法肩補強部とにより囲まれた前記舗装道路の下方の盛土とを有し、前記路盤補強部の両側に、一方の前記法肩補強部と、他方の前記法肩補強部とを一体に結合し、前記路盤補強部と法肩補強部とにより前記舗装道路下方の盛土を包持して拘束するようにした道路盛土の補強方法であって、
盛土の法肩から前記法肩補強部の形成範囲の下方の盛土を掘削する工程と、
掘削した範囲に前記法肩補強部を形成する工程と、
前記法肩補強部の上に前記路盤補強部を形成する工程と、
前記法肩補強部と路盤補強部とを一体に結合する工程と、
前記路盤補強部の上に硬質舗装層を形成する工程とを含み、
前記した一連の工程を舗装道路の片側を維持したまま施工することを特徴とする、
道路盛土の補強方法。
【請求項2】
請求項1に記載の道路盛土の補強方法において、前記法肩補強部は、前記盛土内に敷設した前記補強材を法面側で巻き返して盛土を包み込んで形成した法面補強層を複数層積層して形成することを特徴とする、道路盛土の補強方法。
【請求項3】
請求項2に記載の道路盛土の補強方法において、積層する前記法面補強層の、下層側の法面補強層の上面の補強材と、上層側の法面補強層の下面の補強材とを、連結材により連結することを特徴とする、道路盛土の補強方法。
【請求項4】
請求項2に記載の道路盛土の補強方法において、前記法面補強層を貫通し、前記補強材に接続する縫合体を有することを特徴とする、道路盛土の補強方法。
【請求項5】
請求項1に記載の道路盛土の補強方法において、連続する補強材によって盛土を包み込んで前記路盤補強部と前記法肩補強部とを一体に形成し、前記法肩補強部の法面側の補強材と、盛土側の補強材とを、拘束材によって拘束することを特徴とする、道路盛土の補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−177298(P2012−177298A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137963(P2012−137963)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【分割の表示】特願2008−26434(P2008−26434)の分割
【原出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】