説明

遠心分離方法及び遠心分離装置

【課題】 装置によって遠心分離処理を自動化する際に機構や操作が簡便な遠心分離方法及び遠心分離装置を提供する。また、蓋を使わずに遠心分離処理中の試料の蒸発を防止する簡便な遠心分離方法及び遠心分離装置を提供する。
【解決手段】 試料1を遠心管2に分注する分注工程と、試料1の上部に蒸発防止液3を添加して試料1の上部に重層させる添加工程と、遠心分離機21によって遠心管2を回転させて遠心力によって試料1内の物質を分離させる遠心分離工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理化学分野の遠心分離方法において、試料の蒸発を防止する方法に関するものであり、遠心分離方法の処理動作を簡素化することに利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、作業の効率化を図るために遠心分離処理の自動化が進められている。また、医学や理化学分野において、試料を処理する装置が多数存在するが、これらの装置も処理の自動化が進められており、例えば、試料中の微生物の種類を同定し、その微生物の性質を知るために、ハイブリダイゼーションやPCR法といった処理方法があるが、これらの処理装置は、試料をセットするだけ後はすべて自動で設定されたスケジュールどおりに処理や解析を行うことができる。
【0003】
遠心分離処理において、遠心分離機のロータが高速回転することで、遠心分離機内部は空気が流動している状態となり、更に遠心分離機の遠心内室の気圧が減少する。そのため、蓋がない遠心管に試料を入れて遠心分離処理を行うと、試料が減圧状態となってしまい、試料の液体が蒸発して液量が減少してしまう。そのため、従来、遠心分離処理において試料の蒸発を防止する方法として、遠心管に蓋をする方法が行われている。
【0004】
試料の蒸発を防止する方法として、各処理方法の特性を考慮した方法が提案されている。例えば、PCR装置において、過熱した液体サンプルの蒸発を防止する方法として液体試料の上に液体試料より比重の軽いミネラルオイルを積層して、更に蓋をしてPCR処理を行う方法が提案されている。(特許文献1)
【特許文献1】WO06−104213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の遠心分離処理においては蓋の開閉作業が必要であり、遠心分離処理を自動化にするには、機構や構成が煩雑となってしまい莫大なコストが必要となる。また、蓋の開閉作業時に試料が飛散しないような機構も必要となる。そのため、遠心分離処理を自動化にするのはとても困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、装置によって遠心分離処理を自動化する際に機構や操作が簡便な遠心分離方法及び遠心分離装置を提供することを目的とする。また、蓋を使わずに遠心分離処理中の試料の蒸発を防止する簡便な遠心分離方法及び遠心分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の遠心分離方法において、遠心力によって試料内の物質を分離させる遠心分離方法において、前記試料を遠心管に分注する分注工程と、前記分注工程後に前記試料の上部に蒸発防止液を添加して前記試料の上部に重層させる添加工程と、前記添加工程後に遠心分離機によって前記遠心管を回転させて遠心力によって前記試料内の物質を分離させる遠心分離工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
上述の発明によれば、遠心管に分注した試料の上部に蒸発防止液を重層して遠心分離処理を行う。これにより、遠心分離処理で生じる遠心分離機の遠心内室の減圧環境と試料との間に蒸発防止液が介在するため、試料に減圧による影響を与えることが無く、試料が蒸発することを防止することができる。また、蒸発防止液は液体であるので、試料の上部から添加するだけで、試料の上部全体に重層を為すことができるので添加作業及び添加装置は簡便に構成可能である。
【0009】
また、本発明の遠心分離方法において、前記蒸発防止液は、前記試料よりも比重が小さく、前記試料との親和性が低い液体であることを特徴とする。
【0010】
上述の発明によれば、蒸発防止液は、試料よりも比重が小さく、試料との親和性が低い液体であるため、蒸発防止液は試料の上部に層を形成することができる。そのため、蒸発防止液は、試料と空気との接触を遮断するため、遠心分離処理で生じる遠心分離機の遠心内室の減圧による影響を遮断して、試料が蒸発することを防止することができる。また、試料と空気との接触を遮断するため、空気中の雑菌が試料内に侵入することを防止することができる。また、蒸発防止液が試料との親和性が低い液体であるために、蒸発防止液が試料と反応することも無く、安定した遠心分離処理を提供することができる。
【0011】
また、本発明の遠心分離方法において、前記蒸発防止液は、流動パラフィン、油浸オイル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、菜種油、大豆油、コーン油、ゴマ油のいずれかであることを特徴とする。
【0012】
上述の発明によれば、蒸発防止液は、流動パラフィン、油浸オイル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、菜種油、大豆油、コーン油、ゴマ油のいずれかである。そのため、蒸発防止液は試料よりも比重が小さく、試料との親和性が低いため、試料の上部に層を形成することができる。また、蒸発防止液が試料と反応することも無く、安定した遠心分離処理を実行することができる。更に、上記の蒸発防止液群のいずれかを用いることにより、安価で作業性の良い簡便な遠心分離処理を提供することができる。
【0013】
また、本発明の遠心分離方法において、前記遠心分離工程後に前記蒸発防止液を前記遠心管の上部から除去する除去工程を有し、前記除去工程は、ピペットチップ先端を前記蒸発防止液と前記試料との界面より下に挿入する挿入工程と、前記挿入工程後にピペットで前記蒸発防止液と前記試料の上澄み液を吸引する吸引工程と、前記吸引工程による前記試料の液面降下によって、前記ピペットに空気が吸い込み始めると前記ピペットによる吸引を停止する停止工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上述の発明によれば、蒸発防止液を上部から吸引除去する除去工程において、ピペットチップ先端を蒸発防止液と試料との界面より下に挿入し、ピペットによる吸引を開始する。最初は試料の上澄みを吸引していたピペットは、吸引により試料の液面が降下するので、ピペットの先端が蒸発防止液の層に達して、蒸発防止液を吸引する。更に、ピペットによる吸引を続けると、蒸発防止液の層を殆ど吸引してしまって、ピペットの先端が空気中に出て空気を吸引し始める。ピペットに空気が吸い込み始めるとピペットによる吸引を停止させる。そのため、試料の上部に重層している蒸発防止液を効率的に吸引除去することができるとともに、無駄に試料の上澄み液を吸引することも無いために、試料内のペレットを安定して回収することができる。また、蒸発防止液は遠心分離処理後の除去工程でも試料の上部で重層状態を保持しているので、遠心処理によって遠心管底部で生じたペレットに影響を与えることなく、遠心管の上部から容易に蒸発防止液を吸引除去が可能である。
【0015】
また、本発明の遠心分離方法において、前記除去工程は、前記挿入工程、前記吸引工程、前記停止工程の順に反復実行することを特徴とする。
【0016】
上述の発明によれば、蒸発防止液を上部から吸引除去する除去工程において、前記挿入工程、前記吸引工程、前記停止工程の順に反復実行することで、試料の上部に重層している蒸発防止液を確実に吸引除去することができる。そのため、除去工程後において、回収されるペレット又は試料に蒸発防止液が混入する恐れが無く、容易に回収処理を実行することができる。
【0017】
また、本発明の遠心分離方法において、前記除去工程は、前記遠心処理工程によって前記遠心管の底部に生じたペレットに前記ピペットチップ先端が触れる直前の高さとなることで、前記挿入工程を停止して前記除去工程を終了することを特徴とする。
【0018】
上述の発明によれば、蒸発防止液を上部から吸引除去する除去工程において、ピペットチップ先端を蒸発防止液と試料との界面より下に挿入する挿入工程時に、遠心分離方法によって遠心管の底面に生じたペレットにピペットチップ先端が触れる直前の高さとなった場合は、挿入工程を停止して、蒸発防止液の除去工程を終了する。そのため、遠心処理によって遠心管底部で生じたペレットに影響を与えることなく、遠心管の上部から完全に蒸発防止液を吸引除去することが可能である。
【0019】
また、本発明の遠心分離方法において、前記遠心分離工程によって前記遠心管の底部に生じた分離濃縮された前記試料内のペレットを回収する回収工程を有し、前記回収工程は、前記試料の上部に重層する前記蒸発防止液に接触することなく前記遠心管の下部より前記試料内の前記ペレットを回収することを特徴とする。
【0020】
上述の発明によれば、遠心処理工程後に蒸発防止液を除去せずに、試料の上部に重層する蒸発防止液に接触することなく遠心管の下部から試料内のペレットを回収することができる。そのため、蒸発防止液を除去する手間を省くことができるので、遠心分離処理の時間を短縮することができる。また、蒸発防止液を除去するための機構や装置を設ける必要がないため、装置によって遠心分離処理を自動化する際に機構や操作が簡便な遠心分離方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、装置によって遠心分離処理を自動化する際に機構や操作が簡便な遠心分離方法及び遠心分離装置を提供することができる。また、蓋を使わずに遠心分離処理中の試料の蒸発を防止する簡便な遠心分離方法及び遠心分離装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、菌を含む試料を遠心分離処理し、菌を回収する操作を例に挙げて、添付図面を参照しつつ説明する。尚、この実施例によって本発明を限定するものではない。
【0023】
図1は、本発明における実施形態に係る自動遠心分離処理装置の概要を示した説明図である。
【0024】
図1に示すとおり、自動遠心分離処理装置は、分注室10、遠心室20、搬送室30、及び中央制御部40の4つの部屋で構成されている。搬送室30の右側に分注室10と遠心室20が隣接するように配設されている。搬送室30には、搬送ロボット31が設けられている。搬送ロボット31は、多軸ロボットで先端には、遠心管2(図2参照)を挟めるようにクリップ状の形状をしたハンド部32を備えている。また、搬送ロボット31のアーム部33は、分注室10や遠心室20へハンド部32で挟んだ遠心管2を中の試料1(図2参照)を溢さずに搬送するために複数の軸部と適度な長さを有している。
【0025】
搬送室30の下方には中央制御部40が配設されている。中央制御部40は、分注室10、遠心室20、搬送室30の各制御部と接続していて、各制御部に対して統合して制御を行っている。また、中央制御部40は、入力装置41と接続していて、操作者が入力装置41によって遠心分離処理の諸設定を行うことができる。例えば、入力装置41では、遠心分離機21(図3参照)の回転数や処理時間、試料1を分注する数量や分注量、及び蒸発防止液3を除去するステップの回数などを設定することができる。設定された入力情報を各制御部へ送信して、中央制御部40が有するスケジュールプログラムにしたがって、各制御部の処理を実行する。尚、このスケジュールプログラムをメイン制御処理として、フローを後述する。
【0026】
図2は、本発明における実施形態に係る分注室10における遠心管2に試料1と蒸発防止液3を分注する装置の概要を示した説明図である。
【0027】
図2で示すように、搬送ロボット31のハンド部32によって、遠心管2をホルダ13にセットする。ホルダ13の左方には上下方向に伸縮自在の伸縮スタンド11が設けられていて、伸縮スタンド11の上方に設けられたピペットホルダ12によって、ピペット5がちょうどホルダ13にセットされた遠心管2の直上に来るように配設されている。ピペット5の先端には、試料や薬品を遠心管2内に注入又は吸引するためのピペットチップ4が取り付けられている。このピペットチップ4の取り付けは、搬送ロボット31のハンド部32によって実行される。また、ピペットチップ4を外すときは、ピペッドホルダ12に設けられたチップイジェクタスイッチ7が押されて、チップイジェクタ6によって、ピペットチップ4が取り外される。ピペット5の上方には、エア吸引口8とエア排出口9が設けられている。ピペット5によってピペットチップ4内へ液体を吸引する際には、エア排出口9からピペット5内の空気を吸引する量に応じてピペットチップ4内へ液体を吸引する量を制御することができる。また、ピペット5によってピペットチップ4内の液体を押し出す際には、エア吸引口8からのエア圧に応じて押し出すスピードを制御することができる。
【0028】
また、伸縮スタンド11は、前後方向へ平行移動することができるスライド部を備えている。スライド部によって、試薬や蒸発防止剤が入っている薬瓶の位置、ピペットチップ4をピペットに取り付ける位置、使用済みのピペットチップ4を廃棄する位置へ伸縮スタンド11が移動できるため、スムーズに遠心管内に試薬を準備することができる。更に、複数の遠心管2を一つの伸縮スタンド11で試薬を準備することも可能である。分注室制御部14は、伸縮スタンド11、コンプレッサ、及び中央制御装置40と接続しており、主に遠心管2に試薬を準備、遠心分離処理後の試薬を抽出、及び蒸発防止液の添加と除去を制御している。具体的には、伸縮スタンド11のスライド部の位置移動や伸縮スタンドの高さ位置の制御、ピペット5へ空気を供給・吸引するコンプレッサの駆動制御を実行している。
【0029】
滅菌処理した空の遠心管2を搬送ロボット31のハンド部32によってホルダ13にセットする。ここでは、遠心管2としてマイクロチューブ(Fisher Scientific社製 2.0mL Microcentrifuge Tubes Capless Graduated Tube、型番No.02−681−453)をオートクレーブ滅菌処理したものを使用する。次に、搬送ロボット31のハンド部32によって、ピペット5の先端に未使用のピペットチップ4を取り付ける。伸縮スタンド11は試薬1が入った薬瓶の位置まで平行移動し、試料1が入った薬瓶からピペッド5のエア吸引によって1mLを量りとる。次に、伸縮スタンド11は滅菌処理した空の遠心管2の位置まで平行移動し、量りとった試料1をピペッド5のエア押出によって遠心管2へ注入する。その後、使用済みのピペットチップ4を廃棄する位置へ伸縮スタンド11が平行移動して、チップイジェクタスイッチ7が押されて、チップイジェクタ6によって、使用済みピペットチップ4が取り外される。このように、伸縮スタンド11及びピペッド5は、試料1を遠心管2に分注する分注手段を構成する構成物である。
【0030】
再度、搬送ロボット31のハンド部32によって、ピペット5の先端に未使用のピペットチップ4を取り付けた後、伸縮スタンド11は蒸発防止液3が入った薬瓶の位置まで平行移動し、蒸発防止液3が入った薬瓶からピペッド5のエア吸引によって0.2mLを量りとる。ここでは、蒸発防止液3として、予め孔径0.2μmのナイロンフィルタで濾過した流動パラフィンを使用する。次に、伸縮スタンド11は試料1が注入された遠心管2の位置まで平行移動し、量りとった蒸発防止液3をピペッド5のエア押出によって遠心管2へ注入する。蒸発防止液3は試料1より比重が小さいため、また試料1に混じりあうことないため、試料1の上部に重層する。このため、試料1と空気との界面が無くなるため、空気中の雑菌による混入を防止することができる。その後、使用済みのピペットチップ4を廃棄する位置へ伸縮スタンド11が平行移動して、チップイジェクタスイッチ7が押されて、チップイジェクタ6によって、使用済みピペットチップ4が取り外される。試料1と蒸発防止液3が入った遠心管2は搬送ロボット31のハンド部32によって挟んで固定され、遠心室20へ搬送される。このように、伸縮スタンド11及びピペッド5は、試料1の上部に蒸発防止液3を添加して試料1の上部に重層させる添加手段を構成する構成物である。
【0031】
図3は、本発明における実施形態に係る遠心室20における遠心分離機21の概要を示した説明図である。
【0032】
図3に示すように、遠心室20には、遠心分離機21(トミー精工製、型番MC−150)が設けられている。遠心分離機21は、遠心管2を複数配置できるロータ23と、ロータ23を高速回転させる遠心モータ24と、ロータ23の上部を遮蔽するリッド26と、ロータの前後左右を遮蔽するケース25と、リッド26とケース25に囲まれた遠心分離機21内部でロータ23を有する遠心内室22と、リッド26を開閉するリッドオープナー27と、遠心モータ24やリッドオープナー27を制御する遠心分離機制御部28と、これらの構成品を内側に配設した遠心分離機ハウジング29とで構成されている。
【0033】
リッド26は、遠心分離機ハウジング29の上端の軸支部にて軸支されていて、この軸支部に滑車を設けている。リッドオープナー27は、電磁モータとベルトで構成されていて、ベルトの一端を電磁モータの回転軸に、他端をリッド26の軸支部の滑車に掛けている。そのため、リッドオープナー27の電磁モータが時計回りに回動すると、ベルトを介してリッド26の軸支部の滑車が時計回りに回転して、リッドが上方へ開放する。また、リッドオープナー27の電磁モータが反時計回りに回動すると、ベルトを介してリッド26の軸支部の滑車が反時計回りに回転して、リッドが下方へ回動して遠心内室22を密閉する。
【0034】
ロータ22には複数の遠心管2を配置するホルダを有している。このホルダは、ロータ22が高速回転する際に効率よく遠心管内の試料に遠心がかかるように遠心管の下端が外側へ傾くように設けられている。遠心分離機制御部28は、中央制御部40からの信号に基づいて、遠心分離処理の時間やロータの回転スピードを制御する。また、遠心分離機の開始や終了時のリッドオープナー26の駆動処理や、遠心内室22内の温度監視、遠心モータ24のモータ過負荷監視、中央制御部との進捗処理なども行っている。このように、遠心分離機21は、前記遠心管2を高速回転させて遠心力によって試料1内の物質を分離させる遠心分離処理手段を構成する構成品である。
【0035】
搬送ロボット31により分注室10から搬送された遠心管2が遠心分離機21に近づくと、リッドオープナー27によってリッドが上方へ開放される。搬送ロボット31は、ロータ22内のホルダに遠心管2を対角線上となるように複数配置して、ロータ22内の前後左右のバランスを保つように遠心管2をホルダにセットする。すべての遠心管2をセット完了すると、搬送ロボット31のハンド部32及びアーム部33は遠心分離機21から離れ、リッドオープナー27によってリッドが下方へ回動して遠心内室22を密閉する。
【0036】
中央制御部40によって設定されたロータの回転速度と遠心処理時間を遠心分離機制御部28が受信して、遠心モータ24を駆動制御して遠心管2内の試料1を遠心分離処理(10,000rpm、3分間)させる。遠心分離処理が終了すると、再びリッドオープナー27によってリッド26が上方へ開放される。搬送ロボット31のハンド部32によって遠心管2を挟んでロータから回収し、アーム部33によって分注室10へ遠心管2を搬送する。すべての遠心管2をロータから回収すると、リッドオープナー27によってリッドが下方へ回動して遠心内室22を密閉する。
【0037】
図4は、本発明における実施形態に係る分注室10において、蒸発防止液を吸引除去する方法を示した説明図である。
【0038】
図4(a)に示すように、遠心分離処理が完了した遠心管2を搬送ロボット31のハンド部32によってホルダ13にセットする。ピペット5の先端に未使用のピペットチップ4を取り付けた後、伸縮スタンド11は遠心分離処理が完了した遠心管2の位置まで平行移動する。次に、伸縮スタンド11は、ピペットチップ4の先端を空気と蒸発防止剤を含めた液体との界面より下5mmとなる位置へ高さ方向の移動を行う。このように、伸縮スタンド11は、ピペットチップ4の先端を蒸発防止液3と試料1との界面より下に挿入する挿入手段を構成する構成品である。
【0039】
図4(b)に示すように、分注室制御部14によりコンプレッサを駆動させてエア吸引口9からの吸引が開始されると、ピペット5は吸引を開始して吸引された液体がピペットチップ4内に移動する。そのため、遠心管2内の液面は降下して、ピペットチップ4の先端が液面から空気中へ顕出され、ピペットチップ4内に空気が吸引され始める。ピペットチップ4内に空気が吸引され始めると、ピペット内の負圧にバラツキが生じるため、そのバラツキをピペット内部5に設けられた圧力センサ(図示せず)が検知すると、分注室制御部14によりコンプレッサの駆動を停止させ、エア吸引口9からの吸引を停止してピペット5の吸引を停止する。これにより、ピペットチップ4への液体及び空気の吸引が停止する。このように、ピペット5及びコンプレッサは、蒸発防止液3と試料1の上澄み液を吸引する吸引手段を構成する構成品である。また、ピペット5、コンプレッサ、及び圧力センサは、吸引手段(ピペット5)による試料1の液面降下によって、ピペット5に空気が吸い込み始めるとピペット5による吸引を停止する停止手段を構成する構成品である。
【0040】
次に、伸縮スタンド11は廃液位置へ移動して、ピペットチップ4内の液体をピペット5によって押出して排出する。この作業が終了したら、再度図4(a)のように、伸縮スタンド11は、ピペットチップ4の先端を空気と蒸発防止剤を含めた液体との界面より下5mmとなる位置へ高さ方向の移動を行う。この図4(a)と図4(b)で示した処理を3回繰り返す。
【0041】
図4(c)に示すように、図4(a)と図4(b)で示した処理を3回繰り返した遠心管2の状態を示す。3回目のピペットチューブ内へ吸引された液体には蒸発防止液3は無いため、残った遠心管2内の液体にも蒸発防止液3は存在しない。2回のピペットチューブ内へ吸引によって、蒸発防止液3を遠心管2から取り除くことができている。この3回目のピペット5による吸引が終了後、遠心管2内の液体を抽出して、遠心管底部のペレットを回収することができる。このように、ピペット5、伸縮スタンド11及びコンプレッサは、蒸発防止液3を遠心管2の上部から除去する除去手段を構成する構成品である。
【0042】
図5は、本発明における実施形態に係る遠心分離処理のメイン制御処理を示したフォローチャートである。
【0043】
ステップS10において、試料分注処理を実行する。この処理において、中央制御部40は、分注室制御部14へ試料分注処理に関する設定情報を送信する。また、中央制御部40は、搬送ロボット31のアーム部32によって、滅菌済みの空の遠心管2をホルダ13にセットさせる。分注室制御部14は、伸縮スタンド11を移動させて、ピペット5にエアを供給及び排出しているコンプレッサを制御して、菌が入った試料1を遠心管2に所定量(1mL)を分注する。この処理が完了したら、ステップS20へ移行する。
【0044】
ステップS20において、蒸発防止液添加処理を実行する。この処理において、中央制御部40は、分注室制御部14へ蒸発防止液添加処理に関する設定情報を送信する。分注室制御部14は、伸縮スタンド11を移動させて、ピペット5にエアを供給及び排出しているコンプレッサを制御して、試料1が分注された遠心管2に、蒸発防止液を試料1の上部から所定量(0.2mL)添加する。この処理が完了したら、ステップS30へ移行する。
【0045】
ステップS30において、搬送処理を実行する。この処理において、中央制御部40は、蒸発防止液を添加した遠心管2を搬送ロボット31のアーム部32で挟んで、遠心室20へ搬送する。遠心分離機21は、搬送ロボット31のアーム部32が近づくとリッドオープナー27によってリッド26を上方へ回動させて遠心内室22を開放する。搬送ロボット31のアーム部32によって、遠心内室22のホルダへ遠心管2をセットすると、搬送ロボット31のアーム部32が離れて、リッドオープナー27によってリッド26を下方へ回動させて遠心内室22を密閉する。この処理が完了したら、ステップS40へ移行する。
【0046】
ステップS40において、遠心分離処理を実行する。この処理において、中央制御部40は、遠心分離機制御部28へ遠心分離機21に関する設定情報を送信する。遠心分離機制御部28は、受信した回転数や処理時間等の情報を基に、遠心分離処理を実行する。この処理が完了したら、ステップS50へ移行する。
【0047】
ステップS50において、搬送処理を実行する。この処理において、中央制御部40は、遠心分離処理が完了した遠心管2を搬送ロボット31のアーム部32で挟んで、分注室10へ搬送しホルダ13にセットする。このとき、遠心分離機21は、搬送ロボット31のアーム部32が近づくとリッドオープナー27によってリッド26を上方へ回動させて遠心内室22を開放する。搬送ロボット31のアーム部32によって、遠心内室22のホルダから遠心管2を取り出す。搬送ロボット31のアーム部32が離れると、リッドオープナー27によってリッド26を下方へ回動させて遠心内室22を密閉する。この処理が完了したら、ステップS60へ移行する。
【0048】
ステップS60において、蒸発防止液除去処理を実行する。この処理において、中央制御部40は、分注室制御部14へ蒸発防止液除去処理に関する設定情報を送信する。分注室制御部14は、蒸発防止液除去処理の情報を基に、蒸発防止液除去処理を実行する。詳しくは、後述する。この処理が完了したら、ステップS70へ移行する。
【0049】
ステップS70において、ペレット回収処理を実行する。この処理において、中央制御部40は、蒸発防止液が除去された試料1から遠心管2の底部に遠心処理によって生じたペレットを回収する。この処理が完了したら、本ルーチンは終了する。
【0050】
図6は、本発明における実施形態に係る遠心分離処理の蒸発防止液除去制御処理を示したフォローチャートである。
【0051】
ステップS110において、ピペット5に新しいピペットチップ4を装着する処理を実行する。この処理において、中央制御部40は、搬送ロボット31のアーム部32を用いて、ピペット5に新しいピペットチップ4を装着させる。この処理が完了したら、ステップS120へ移行する。
【0052】
ステップS120において、ピペットチップ4の先端を空気と液体の界面より下5mmの位置に挿入する処理を実行する。この処理において、分注室制御部14は、中央制御部40から入力された所定の挿入距離(空気と液体の界面より下5mmの位置)を受信して、伸縮スタンド11を所定の挿入位置まで動作させる。この処理が完了したら、ステップS130へ移行する。
【0053】
ステップS130において、ピペット5で蒸発防止液と上澄み液を吸引する処理を実行する。この処理において、分注室制御部14は、コンプレッサを駆動させてピペット5のエア排出口9からピペット5内部の空気を吸引する。そのため、減圧されたピペットチップ4内に、蒸発防止液と上澄み液が吸引される。この処理が完了したら、ステップS140へ移行する。
【0054】
ステップS140において、ピペット5がピペットチップ4から空気を吸い込み始めたか否かを判断する。この処理において、分注室制御部14は、ステップS130によって、ピペット5によって蒸発防止液と上澄み液が吸引されることで液面が下がり、ピペットチップ4の先端が空気中に出て、空気を吸い込み始めたか否かを判断する。ピペット5内には、ピペット内の圧力を検知する圧力センサが設けられていて、ピペットチップ4の先端から空気を吸い込み始めると、ピペット5内の内圧が急変する。その急変を条件として圧力センサが分注室制御部14へ信号を送信する。つまり、分注室制御部14はピペット5内の圧力センサが検知したか否かを判断する。ピペット5がピペットチップ4から空気を吸い込み始めたと判断した場合はステップS150へ移行する。ピペット5がピペットチップ4から空気を吸い込み始めたと判断しない場合はステップS130へ移行する。
【0055】
ステップS150において、ピペット5による吸引を停止する処理を行う。この処理において、分注室制御部14は、ピペット5内の圧力センサからの信号を受信すると、直ちにコンプレッサを停止させて、ピペット5のエア排出口9からピペット5内部の吸引を停止する。そのため、ピペットチップ4内への蒸発防止液及び上澄み液の吸引が停止される。この処理が完了したら、ステップS160へ移行する。
【0056】
ステップS160において、ピペット5による吸引処理を3回完了したか否かを判断する。この処理において、分注室制御部14は、ステップS120からステップS150までの一連の蒸発防止液の吸引処理が3回実行されたか否かを判断する。この蒸発防止液の吸引処理回数は、中央制御部40の入力装置41にて設定することができる。ピペット5による吸引処理を3回完了したと判断した場合は本サブルーチンを終了する。また、ピペット5による吸引処理を3回完了したと判断しない場合はステップS120へ移行する。
【0057】
このように、中央制御部40に接続された入力装置41に、操作者によって設定された設定情報や遠心分離処理のメイン制御処理(スケジュールプログラム)を中央制御部40が記憶しており、このメイン制御処理に沿って各制御部と情報を送受信して、各制御部が処理を実行している。これにより、遠心分離処理の一連の作業を自動化することが可能である。
【0058】
図7は、本発明における実施形態に係る蒸発防止液を重層した遠心分離方法と従来の遠心管に蓋をして遠心させる遠心分離方法と、遠心管に蓋をせずに遠心させる遠心分離方法を比較したグラフである。
【0059】
図7に示すように、横軸を遠心分離機で処理した時間(分)を示し、縦軸を遠心管に注入した液体の総重量を示している。また、遠心分離処理を実行する前の遠心管内の総重量を100%としている。蓋をせずに遠心管を遠心させた場合、遠心分離処置を0.5分(30秒)間実行したとき、遠心管内の総重量は約98%となり、遠心分離処置を10分間実行したとき、遠心管内の総重量は約87%となり、遠心分離処置を20分間実行したとき、遠心管内の総重量は約73%となっている。そのため、遠心分離処理時間が長くなるほどに、遠心管内の総重量が減少している。これは、遠心分離機21のロータ23が高速回転することで、遠心内室22内の空気が激しく流動するため気圧が減少する。そのため、遠心管内の試料を蒸発しやすい状態となっている。また、遠心モータ24の熱や遠心内室22内の空気との接触によりロータ23自体も熱くなり遠心内室22内の温度が上昇するため、蓋がない遠心管では遠心管内の試料の水分が蒸発してしまい遠心管内の総重量を失うことになる。したがって、遠心分離処理時間が長くなるほどに、遠心管内の試料の水分が蒸発してしまい総重量が減少する。
【0060】
蓋をした遠心管を遠心させた場合と蒸発防止剤を試料の上部に重層した場合は、遠心分離処理を長時間実行しても、遠心管内の総重量は常に約100%となっており、遠心処理によって生じる遠心内室22内の気圧の低下と温度上昇による遠心管内の試料の蒸発を防ぐことができる。つまり、蒸発防止材を試料の上部に重層する遠心分離法は、遠心管に蓋をする遠心分離法とほぼ同様な効果をもたらし、ほぼ完全に遠心管内の試料の蒸発を防ぐことができる。
【0061】
遠心分離処理を完了した遠心管2から蒸発防止剤3を除去するのではなく、試料1を抽出してもよい。図8は、本発明における別の実施形態において、試料1を注射器50にて抽出する3つの方法を示した説明図である。
【0062】
図8(a)に示すように、遠心分離処理を完了した遠心管2の上方から注射器50の注射針51を液中に挿入して、注射針51の先端が試料1である位置で注射器50によって吸引して、試料1を抽出する。この際、蒸発防止液3が注射器50に吸引されないように注意する必要がある。
【0063】
図8(b)に示すように、遠心分離処理を完了した遠心管2の試料1がある側面又は下部に注射器50の注射針51を貫通させて、注射針51の先端が試料1である位置で注射器50によって吸引して、試料1を抽出する。この遠心管2は、ポリプロピレンやポリエチレンなどの使い捨ての遠心管であるため、注射器50を遠心管2に貫通させても構わない。
【0064】
図8(c)に示すように、遠心管2には、下部付近の側面に孔部である試料液抽出口52と、遠心管2の内部から試料液抽出口52を密閉するゴム栓53とが備えられている。遠心分離処理を完了した遠心管2のゴム栓53に注射器50の注射針51を貫通させて、注射針51の先端が試料1である位置で注射器50によって吸引して、試料1を抽出する。ゴム栓53に注射するので、遠心管2を再利用する際には、ゴム栓53のみを交換すればよいため、環境を配慮した遠心分離処理が可能となる。また、遠心管2のゴム栓53は、遠心分離処理による遠心力でゴム栓53が抜けないように、遠心管2の内側から外側に向けて取り付ける。
【0065】
以上のことから、本実施形態によれば、遠心管に分注した試料の上部に蒸発防止液を重層して遠心分離処理を行う。これにより、遠心分離処理で生じる遠心分離機の遠心内室の減圧環境と試料との間に蒸発防止液が介在するため、試料に減圧による影響を与えることが無く、試料が蒸発することを防止することができる。また、蒸発防止液は液体であるので、試料の上部から添加するだけで、試料の上部全体に重層を為すことができるので添加作業及び添加装置は簡便に構成可能である。
【0066】
また、本実施形態によれば、蒸発防止液は、試料よりも比重が小さく、試料との親和性が低い液体であるため、蒸発防止液は試料の上部に層を形成することができる。そのため、蒸発防止液は、試料と空気との接触を遮断するため、遠心分離処理で生じる遠心分離機の遠心内室の減圧による影響を遮断して、試料が蒸発することを防止することができる。また、試料と空気との接触を遮断するため、空気中の雑菌が試料内に侵入することを防止することができる。また、蒸発防止液が試料との親和性が低い液体であるために、蒸発防止液が試料と反応することも無く、安定した遠心分離処理を提供することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、蒸発防止液は、流動パラフィン、油浸オイル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、菜種油、大豆油、コーン油、ゴマ油のいずれかである。そのため、蒸発防止液は試料よりも比重が小さく、試料との親和性が低いため、試料の上部に層を形成することができる。また、蒸発防止液が試料と反応することも無く、安定した遠心分離処理を実行することができる。更に、液体安価で作業性の良い簡便な遠心分離処理を提供することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、蒸発防止液を上部から吸引除去する除去工程において、ピペットチップ先端を蒸発防止液と試料との界面より下に挿入し、ピペットによる吸引を開始する。最初は試料の上澄みを吸引していたピペットは、吸引により試料の液面が降下するので、ピペットの先端が蒸発防止液の層に達して、蒸発防止液を吸引する。更に、ピペットによる吸引を続けると、蒸発防止液の層を殆ど吸引してしまって、ピペットの先端が空気中に出て空気を吸引し始める。ピペットに空気が吸い込み始めるとピペットによる吸引を停止させる。そのため、試料の上部に重層している蒸発防止液を効率的に吸引除去することができるとともに、無駄に試料の上澄み液を吸引することも無いために、試料内のペレットを安定して回収することができる。また、蒸発防止液は遠心分離処理後の除去工程でも試料の上部で重層状態を保持しているので、遠心処理によって遠心管底部で生じたペレットに影響を与えることなく、遠心管の上部から容易に蒸発防止液を吸引除去が可能である。
【0069】
また、本実施形態によれば、蒸発防止液を上部から吸引除去する除去工程において、前記挿入工程、前記吸引工程、前記停止工程の順に反復実行することで、試料の上部に重層している蒸発防止液を確実に吸引除去することができる。そのため、除去工程後において、回収されるペレット又は試料に蒸発防止液が混入する恐れが無く、容易に回収処理を実行することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、蒸発防止液を上部から吸引除去する除去工程において、ピペットチップ先端を蒸発防止液と試料との界面より下に挿入する挿入工程時に、遠心分離方法によって遠心管の底面に生じたペレットにピペットチップ先端が触れる直前の高さとなった場合は、挿入工程を停止して、蒸発防止液の除去工程を終了する。そのため、遠心処理によって遠心管底部で生じたペレットに影響を与えることなく、遠心管の上部から完全に蒸発防止液を吸引除去することが可能である。
【0071】
また、本実施形態によれば、前記遠心分離工程によって前記遠心管の底部に生じた分離濃縮された前記試料内のペレットを回収する回収工程を有し、前記回収工程は、前記試料の上部に重層する前記蒸発防止液に接触することなく前記遠心管の下部より前記試料内の前記ペレットを回収することを特徴とする。
【0072】
このように、本発明によれば、装置によって遠心分離処理を自動化する際に機構や操作が簡便な遠心分離方法及び遠心分離装置を提供することができる。また、蓋を使わずに遠心分離処理中の試料の蒸発を防止する簡便な遠心分離方法及び遠心分離装置を提供することができる。
【0073】
本実施形態において、中央制御部40に接続された入力装置41に、操作者によって設定された設定情報や遠心分離処理のメイン制御処理(スケジュールプログラム)を中央制御部40が記憶しており、このメイン制御処理に沿って各制御部と情報を送受信して、各制御部が処理を実行している。これにより、蓋を用いずに蒸発防止液の添加処理工程と除去処理工程を自動化することで、遠心分離処理の一連の作業を自動化することができる。
【0074】
また、本実施形態において、遠心管2を搬送する装置として搬送ロボット31を設けているが、特にこれに限定しない。例えば、コンベアやリフトを用いても構わない。また、ピペットチップ4をピペット5に装着する際に搬送ロボット31を使用しているが、特にこれに限定しない。例えば、下向きにセットされたピペットチップを上方から伸縮スライド11を降下させて、ピペット5に装着させてもよい。
【0075】
また、本実施形態において、分注室10において蒸発防止液の除去処理やペレットの回収処理を行っているが、特にこれに限定しない。例えば、遠心室20の奥に回収室を設けて、分注室10と同様な構成品によって蒸発防止液の除去処理やペレットの回収処理を行っても構わない。また、分注室10、遠心室20、搬送室30、及び中央制御部40の配置についても特に限定していないし、小部屋で分ける構造をしてなくてもよい。
【0076】
また、本実施形態において、一連の遠心分離処理を自動化するために、伸縮スタンド11や搬送ロボット31等といった構成品を例に挙げているが、上述した蒸発防止液を試料の上部に重層する遠心分離処理や上述した蒸発防止液を上部から吸引除去する処理を手動で実行しても構わない。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明における実施形態に係る自動遠心分離処理装置の概要を示した説明図である。
【図2】本発明における実施形態に係る分注室10における遠心管に試料と蒸発防止液を分注する装置の概要を示した説明図である。
【図3】本発明における実施形態に係る遠心室20における遠心分離機21の概要を示した説明図である。
【図4】本発明における実施形態に係る分注室10において、蒸発防止液を吸引除去する方法を示した説明図である。
【図5】本発明における実施形態に係る遠心分離処理のメイン制御処理を示したフォローチャートである。
【図6】本発明における実施形態に係る遠心分離処理の蒸発防止液除去制御処理を示したフォローチャートである。
【図7】本発明における実施形態に係る蒸発防止液を重層した遠心分離方法と従来の遠心管に蓋をして遠心させる遠心分離方法とを比較したグラフである。
【図8】本発明における別の実施形態において、試料1を注射器50にて抽出する方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0079】
1 試料
2 遠心管
3 蒸発防止液
4 ピペットチップ
5 ピペット
6 チップイジェクタ
7 チップイジェクタスイッチ
8 エア吸引口
9 エア排出口
10 分注室
11 伸縮スタンド
12 ピペッドホルダ
13 ホルダ
14 分注室制御部
20 遠心室
21 遠心分離機
22 遠心内室
23 ロータ
24 遠心モータ
25 ケース
26 リッド
27 リッドオープナー
28 遠心分離機制御部
29 遠心分離機ハウジング
30 搬送室
31 搬送ロボット
32 ハンド部
33 アーム部
40 中央制御部
41 入力装置
50 注射器
51 注射針
52 試料液抽出口
53 ゴム栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心力によって試料内の物質を分離させる遠心分離方法において、
前記試料を遠心管に分注する分注工程と、
前記分注工程後に前記試料の上部に蒸発防止液を添加して前記試料の上部に重層させる添加工程と、
前記添加工程後に遠心分離機によって前記遠心管を回転させて遠心力によって前記試料内の物質を分離させる遠心分離工程と、を有することを特徴とする遠心分離方法。
【請求項2】
前記蒸発防止液は、前記試料よりも比重が小さく、前記試料との親和性が低い液体であることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離方法。
【請求項3】
前記蒸発防止液は、流動パラフィン、油浸オイル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、菜種油、大豆油、コーン油、ゴマ油のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の遠心分離方法。
【請求項4】
前記遠心分離工程後に前記蒸発防止液を前記遠心管の上部から除去する除去工程を有し、
前記除去工程は、ピペットチップ先端を前記蒸発防止液と前記試料との界面より下に挿入する挿入工程と、
前記挿入工程後にピペットで前記蒸発防止液と前記試料の上澄み液を吸引する吸引工程と、
前記吸引工程による前記試料の液面降下によって、前記ピペットに空気が吸い込み始めると前記ピペットによる吸引を停止する停止工程と、を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の遠心分離方法。
【請求項5】
前記除去工程は、前記挿入工程、前記吸引工程、前記停止工程の順に反復実行することを特徴とする請求項4に記載の遠心分離方法。
【請求項6】
前記除去工程は、前記遠心処理工程によって前記遠心管の底部に生じたペレットに前記ピペットチップ先端が触れる直前の高さとなることで、前記挿入工程を停止して前記除去工程を終了することを特徴とする請求項4又は5に記載の遠心分離方法。
【請求項7】
前記遠心分離工程によって前記遠心管の底部に生じた分離濃縮された前記試料内のペレットを回収する回収工程を有し、
前記回収工程は、前記試料の上部に重層する前記蒸発防止液に接触することなく前記遠心管の下部より前記試料内の前記ペレットを回収することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の遠心分離方法。
【請求項8】
遠心力によって試料内の物質を分離させる遠心分離装置において、
前記試料を遠心管に分注する分注手段と、
前記試料の上部に蒸発防止液を添加して前記試料の上部に重層させる添加手段と、
遠心分離機によって前記遠心管を回転させて遠心力によって前記試料内の物質を分離させる遠心分離処理手段と、を有することを特徴とする遠心分離装置。
【請求項9】
前記蒸発防止液を前記遠心管の上部から除去する除去手段を有し、
前記除去手段は、ピペットチップ先端を前記蒸発防止液と前記試料との界面より下に挿入する挿入手段と、
ピペットで前記蒸発防止液と前記試料の上澄み液を吸引する吸引手段と、
前記吸引手段による前記試料の液面降下によって、前記ピペットに空気が吸い込み始めると前記ピペットによる吸引を停止する停止手段と、を備えることを特徴とする請求項8に記載の遠心分離装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−145260(P2009−145260A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324538(P2007−324538)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】