説明

遠心分離機

【課題】ステップ運転の全容を視覚的に認識することができるとともに、ステップ運転条件の入力ミスを防ぐことができる遠心分離機を提供すること。
【解決手段】モータと、該モータによって回転駆動されるロータと、該ロータに収容された試料を遠心分離するための運転条件を入力するキー入力部と、運転状態を表示する表示部と、読み書き可能な記憶部を備えた制御手段を有する遠心分離機において、複数段の運転条件で連続運転するステップ運転を行う場合、前記キー入力部によってステップ運転条件を入力した後、該ステップ運転条件を前記表示部に、回転速度を縦軸に、運転時間を横軸にした折れ線グラフで表示する。又、前記表示部に表示された折れ線グラフ上の運転が経過した部分の色を変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を収容したロータを所定の速度で所定の時間回転させて試料を遠心分離するための遠心分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、遺伝子等の遠心分離には複雑な処理が必要であるため、遠心分離機は、1つの運転条件で遠心分離を行うだけでなく、複数の運転条件を組み合わせて遠心分離を行う場合がある。従来の遠心分離機においては、複数の運転条件を組み合わせて運転する方法を「ステップ運転」と称し、複数の運転条件を予め遠心分離機に記憶させて運転していた。
【0003】
上記ステップ運転において運転条件を記憶させる方法として、複数の運転条件を記憶する領域(以下、「メモリ領域」と称する)を設け、その1つのメモリ領域に最大9ステップの運転条件を記憶させる方法が採用されている。この方法では、1つのステップ運転条件に回転速度、運転時間、保持温度、加速勾配、減速勾配等が記憶される。
【0004】
そして、従来の遠心分離機においてステップ運転を行う場合、メモリNo.を指定して運転条件をメモリ領域から呼び出し、運転中は呼び出したメモリNo.と現在運転しているステップNo.及び終了ステップNo.を表示している。又、近年、遠心分離機の使い勝手の向上を図るため、入力機能を兼備したタッチパネル機能付きカラー表示器を採用するようになってきた。
【特許文献1】特開2000−301029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の遠心分離機にあっては、運転条件を入力する方法としてステップ運転条件(回転速度、運転時間、保持温度、加速勾配、減速勾配等)を図8に示すように1ステップずつ入力する方法を採用していたため、入力桁(回転速度入力部及び運転時間入力部)の誤りを起こし易いという問題があった。
【0006】
又、ステップ運転にて遠心分離機を運転する場合、運転中は呼び出したメモリNo.と現在運転しているステップNo.しか表示しないため、全ステップ運転のうち、どの程度ステップ運転が進捗しているのかを視覚的に認識することができず、残りの運転時間を視覚的に把握することができなかった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ステップ運転の全容を視覚的に認識することができるとともに、ステップ運転条件の入力ミスを防ぐことができる遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、モータと、該モータによって回転駆動されるロータと、該ロータに収容された試料を遠心分離するための運転条件を入力するキー入力部と、運転状態を表示する表示部と、読み書き可能な記憶部を備えた制御手段を有する遠心分離機において、複数段の運転条件で連続運転するステップ運転を行う場合、前記キー入力部によってステップ運転条件を入力した後、該ステップ運転条件を前記表示部に、回転速度を縦軸に、運転時間を横軸にした折れ線グラフで表示することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記表示部に表示された折れ線グラフ上の運転が経過した部分の色を変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、遠心分離機のステップ運転を行う場合、キー入力部によって入力されたステップ運転条件を表示部に折れ線グラフで表示するようにしたため、オペレータは、この折れ線グラフによってステップ運転の全容を視覚的に認識することができるとともに、ステップ運転条件の入力ミスを防ぐことができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、表示部に表示された折れ線グラフ上の運転が経過した部分の色が変化するため、この色の変化によってステップ運転の進捗状況を視覚的に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明に係る遠心分離機の斜視図、図2は同遠心分離機の基本構成を示すブロック図であり、図示の遠心分離機1は、図1に示す矩形ボックス状の筐体2の内部に図2に示すチャンバ3や駆動源としてのモータ4等を収納して構成されている。
【0014】
上記チャンバ3内には、遠心分離すべき不図示の試料が保持されるロータ5が収容されており、このロータ5は、前記モータ4の上方へ延びる出力軸6の先端に着脱可能に装着されている。又、チャンバ3の上部は開口しており、その上部開口部はドア7によって開閉され、ドア7を開けてロータ5をチャンバ3内に収納セットした後、ドア7を閉じてチャンバ3を密閉した上で運転が開始されてロータ5が回転駆動され、該ロータ5に収容された不図示の試料が遠心分離される。
【0015】
又、図1に示すように、筐体2の上部には操作パネル8が設けられており、この操作パネル8にはタッチパネル機能付きカラー液晶表示部9とテンキー入力部10が設けられている。
【0016】
更に、筐体2には図2に示す制御手段としてのCPU11が内蔵されている。このCPU11は、オペレータによって操作パネル8の前記テンキー入力部10から入力される運転条件に基づく制御信号をモータ4に送信して該モータ4の駆動、つまりロータ5の回転を制御するためのものであって、これには操作パネル8のタッチパネル機能付きカラー液晶表示部9とテンキー入力部10の他、制御プログラムを記憶するための読み取り専用のROM12と運転時間を記憶するための読み書き可能なRAM13が接続されており、RAM13にはバックアップ用のバッテリ14が接続されている。
【0017】
次に、以上の構成を有する遠心分離機1の運転制御方法を図3〜図9に基づいて説明する。
【0018】
図3及び図4は運転条件を表示画面に折れ線グラフでグラフィック表示した一例を示す図、図5〜図9はステップ運転設定手順を表示する画面を示す図である。
【0019】
オペレータは、遠心分離機1のドア7を開け、遠心分離すべき試料を収容したロータ5をチャンバ3内に収納してモータ4の出力軸6に装着し、操作パネル8のテンキー入力部10から運転条件を入力し、その内容をタッチパネル機能付きカラー液晶表示部9に表示する。ここで、運転条件には、図5及び図6に示すように、回転速度(SPEED)、運転時間(TIME)、保持温度(TEMP)、加速勾配(ACCEL)、減速勾配(DECEL)等があり、これらはCPU11によってRAM13に記憶される。
【0020】
ここで、ステップ運転の運転条件の入力方法を図5〜図8に基づいて説明する。
【0021】
図5に示すRUN SCREEN画面上のFUNCTION部の「PROG」を選択すると、FUNCTION部が図6に示すように「PROGRAM」となる。そして、「PROGRAM」にカーソルを移動して選択すると、図7に示すように、画面には「Program Map」が表示される。
【0022】
「Program Map」は、メモリ登録エリアの登録状況を示すものであって、この「Program Map」中の「No.」の01〜07は7個のステップ運転設定を格納するエリアを示し、「Step」はステップ運転のステップ数を示す。又、「Parameter」にはステップ運転の最初のステップの設定回転速度が表示される。
【0023】
そして、画面上の「●Enter the desired number.」にてメモリNo.を選択すると、ステップ運転設定を行う画面が表示される。例えば、メモリNo.7のエリアを選択すると、図8に示すように、「MEMORY No.7」に記憶されているステップの設定条件が全て表示される。この画面で「2:Creating or Changing」を選択すると、図9に示すように、ステップ運転の設定条件として回転速度(SPEED)、運転時間(TIME)、保持温度(TEMP)、加速勾配(ACCEL)、減速勾配(DECEL)を各STEP1〜7毎に入力することが可能となる。
【0024】
そして、ステップ条件を入力した後、「●Do you save all these run conditions?」で「1.Yes」を入力して確定すると、入力したステップ運転設定値のうち、最大の設定回転速度が縦軸の最大値となり、入力したステップ運転の全ステップのTIME(設定時間)のトータル値が横軸の最大値となるように、ステップ運転設定条件が図3に示すように折れ線グラフで表示され、オペレータは、この折れ線グラフによってステップ運転設定条件を視覚的に確認することができる。
【0025】
尚、図3に示すように画面に折れ線グラフを表示したとき、グラフの空きスペースを利用して各ステップの回転速度と運転時間を表示しても良い。又、運転条件を折れ線グラフで表示しているときに回転速度又は運転時間の設定をタッチパネル機能付きカラー液晶表示部9のタッチパネルを触ることによって変更するようにしても良い(例えば、回転速度を5000rpmから4000rpmに変更する)。この場合、変更することができる単位は、回転速度については縦軸に指定した最大回転速度に対するタッチパネル機能付きカラー液晶表示部9の縦軸のドットで決定し、運転時間についても入力したステップ運転設定値のTIME(設定時間)のトータル値に対するタッチパネル機能付きカラー液晶表示部9の横軸のドットで決定する。
【0026】
次に、ステップ運転方法について説明する。
【0027】
図5に示すRUN SCREEN画面のFUNCTION部の「PROG」を選択すると、FUNCTION部が図6に示すように「PROGRAM」となる。そして、MEMORY部に運転したいメモリのNo.を入力すると、最初のステップの設定条件がRUN SCREEN画面に表示され、PROGRAM部のSTEP表示部に最初のステップと終了ステップのNo.が表示される。メモリ内容を確認したい場合は、「PROGRAM」を選択し、図7に示すProgram Map等で確認する。
【0028】
図6に示すように運転したいメモリ内容を呼び出した後、FUNCTION部の「PROGRAM」中の「GRAFIC」を選択すると、図4に示すように、ステップ運転設定条件を折れ線グラフで表示し、運転が開始されると、運転が経過した部分の折れ線グラフの色が変化し(図4では色の変化を太線で示す)、この色の変化によってステップ運転の進捗状況を視覚的に認識することができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態では、遠心分離機1のステップ運転を行う場合、操作パネル8のテンキー入力部10によって入力されたステップ運転条件を図3に示すように操作パネル8のタッチパネル機能付きカラー液晶表示部9に折れ線グラフで表示するようにしたため、オペレータは、この折れ線グラフによってステップ運転の全容を視覚的に認識することができるとともに、ステップ運転条件の入力ミスを防ぐことができる。
【0030】
又、本実施の形態によれば、図4に示すように、タッチパネル機能付きカラー液晶表示部9に表示された折れ線グラフ上の運転が経過した部分の色を変化させるようにしたため、この色の変化によってステップ運転の進捗状況を視覚的に認識することができる。
【0031】
尚、本実施の形態では、表示部としてカラー液晶表示部を用いたが、単色の表示部であっても良く、進行状況を表す場合は、線の太さを変えたり、丸印等の記号を用いて対応しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る遠心分離機の斜視図である。
【図2】本発明に係る遠心分離機の基本構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る遠心分離機の運転条件を表示画面に折れ線グラフでグラフィック表示した一例を示す図である。
【図4】本発明に係る遠心分離機のステップ運転の進捗状況を折れ線グラフの色を変えて示す図である。
【図5】本発明に係る遠心分離機のステップ運転設定手順を表示する画面を示す図である。
【図6】本発明に係る遠心分離機のステップ運転設定手順を表示する画面を示す図である。
【図7】本発明に係る遠心分離機のステップ運転設定手順を表示する画面を示す図である。
【図8】本発明に係る遠心分離機のステップ運転設定手順を表示する画面を示す図である。
【図9】本発明に係る遠心分離機のステップ運転設定手順を表示する画面を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 遠心分離機
2 筐体
3 チャンバ
4 モータ
5 ロータ
6 モータ出力軸
7 ドア
8 操作パネル
9 タッチパネル機能付きカラー液晶表示部
10 テンキー入力部(キー入力部)
11 CPU
12 ROM
13 RAM(読み書き可能な記憶部)
14 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、該モータによって回転駆動されるロータと、該ロータに収容された試料を遠心分離するための運転条件を入力するキー入力部と、運転状態を表示する表示部と、読み書き可能な記憶部を備えた制御手段を有する遠心分離機において、
複数段の運転条件で連続運転するステップ運転を行う場合、前記キー入力部によってステップ運転条件を入力した後、該ステップ運転条件を前記表示部に、回転速度を縦軸に、運転時間を横軸にした折れ線グラフで表示することを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記表示部に表示された折れ線グラフ上の運転が経過した部分の色を変えることを特徴とする請求項1記載の遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−100124(P2008−100124A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282086(P2006−282086)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】