説明

遠心分離機

【課題】
ロータ室に発生した結露水を素早く気化させ、定期的な結露水廃棄の作業をほとんど不要にした遠心分離機を提供する。
【解決手段】
着脱可能なロータ3と、ロータ3を回転させるモータと、モータの駆動を制御する制御装置と、ロータを収容するロータ室を冷却する冷却装置(13、14、15)と、機内で発生した排熱を機外へ排出するファン17と、排熱が通る通風孔の空いた排出カバーと、ロータ室の結露水を室外へ排出するドレンホースとを有する遠心分離機において、ドレンホースの排出口下部に位置し排水を溜める受け皿部31bと、排出される熱の通風部を覆い複数の通風孔を有するカバー部31aを有する受け皿カバー31を設け、受け皿カバー31を熱伝導性材料により構成した。受け皿カバー31は、アルミニウム、銅、亜鉛合金等の材料で一体に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ室を冷却した際にロータ室の壁面に付着する結露水やコンプレッサ周囲に発生する結露水を効果的に除去できる遠心分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機において、ロータの回転速度が高くなると風損によってロータの温度が上がり、中のサンプル(試料)が変性する恐れがあるため、ロータ室の温度を低い状態、例えば4℃に冷やした状態で遠心分離を行う遠心分離機が広く用いられている。遠心作業に伴う運転時間は、数分程度の短いものから数時間に及ぶ場合まで多様であるが、遠心分離作業が終了してロータ室のドアを開けるとロータ室に外気が流入する。このとき周囲の外気の温度と湿度によっては、露点以下にまで冷却されているためにロータ室内の水蒸気が結露してロータ室の壁面に付着してしまうことがある。
【0003】
ロータ室の壁面に結露水が付くと、冷却能力が低下して本来の性能を発揮できなくなってしまうため、冷却装置を備える遠心分離機は、ロータ室にドレンホースを貫通して接続し、ドレンホースの排出口にキャップをする、あるいはドレンホースの排出口に受け皿になる容器を用意することで、機外へ結露水を排出できる構造にする。このような従来の遠心分離機は特許文献1で知られているが、そのような従来の構造を図8〜10を用いて説明する。
【0004】
図8は従来の遠心分離機の断面図であり、図9は従来の遠心分離機のドアと本体側面と上面を覆う構造鋼材性の板金でできたキャビネットと排出カバーを取り外した状態で斜め後方から見た斜視図である。遠心分離機101は、筐体2と、ロータ3を収納するロータ室4と、ロータ3を回転駆動するモータ5と、ロータ室4の上面開口部を開閉するドア6等を備える。ロータ室4は、上面が開口するチャンバ7によって構成され、その周囲には銅管から成る冷媒配管8が巻かれ、その周囲は発泡材等の断熱材9によって覆われる。チャンバ7のモータ5が貫通する部位は、ゴム等の弾性材料から成るシールカバー10によって開口部が覆われる。
【0005】
モータ5は、筐体2内に水平に設置された仕切板11の上部に出力軸5aが突出する位置に防振ゴム12を介して弾性支持される。出力軸5aは前記チャンバ7を下方から貫通してロータ室4内に延びる。出力軸5aの上端には、ロータ3が着脱可能に装着される。遠心分離機101の前方にはフロントカバー19が取り付けられ、フロントカバー19の上部にはモータ5の回転速度等を表示する表示装置16が設けられる。また、フロントカバー19の内側には、制御装置27が配置される。制御装置27は、モータ5の回転制御、冷却装置の冷却制御を含む遠心分離機101の全体の制御を行う。
【0006】
ロータ室4の後方側の空間には冷却装置20が収容される。冷却装置20は、コンプレッサ13、凝縮器14、膨張手段としてのキャピラリチューブ15、蒸発器としての冷媒配管8を含んで構成される。この冷却装置20においては、コンプレッサ13によって圧縮された高圧のガス冷媒が凝縮器14によって凝縮されて液化した後、キャピラリチューブ15を通過する際に減圧されて膨張する。その後、チャンバ7の外周に配置された冷媒配管8を流れる過程で蒸発し、この冷媒の蒸発によってチャンバ7内の熱を奪う。この結果、ロータ室4が冷却され、ロータ室4内でのロータ3の高速回転によって発生する発熱が抑えられる。
【0007】
ファン17は、遠心分離機101内で発生した熱を排出させる為のファンある。ファン17の回転により、モータ5の前側から空気が吸引され、モータ5の周囲を通過することによりモータ5を冷やし、ファン17を通過する。ファン17から排出された空気は、コンプレッサ13の周囲(主に左右)を流れ、凝縮器14を通過して、排出カバー131に空けられた穴を通り機外へ排出される。排出カバー131は、遠心分離機101の背面に取り付けられた構造用鋼製の板金部材であり、同一の長穴形状をした通風孔を縦横方向に多数有する。
【0008】
遠心分離動作においてロータ室4内を冷却装置により冷却し、冷却後にドア6を開放してロータ室4を外気に曝すと、ロータ4の室内の水蒸気が露点以下で結露し、ロータ室4の壁面に結露水が付着することがある。その結露水を室外へ排出するために、ロータ室4の下部には貫通穴が設けられ、ここから透明な塩化ビニール製等のドレンホース121が接続される。ドレンホース121の排出口には、結露水が室外に垂れないようにポリ塩化ビニール製等のキャップ122が取り付けられる。図示していないが、ドレンホース121の排出口付近に、プラスチック製の受け皿になる容器を用意する遠心分離機も知られている。
【0009】
このような遠心分離機101において、作業者は運転前後あるいは保守点検時にドレンホース121の内部に溜まった結露水の廃棄を行う。廃棄作業は定期的に行うことが好ましい。この結露水廃棄の手順を図10を用いて説明する。ドア6を開け、遠心分離機101を少し持ち上げて底面のドレンホース121をクランプ123から取り外し、ドレンホース121を遠心分離機101の側部に引き出す。次にドレンホース121先端のキャップ122を取り外し、ドレンホース121に溜まった水をビーカー等の排水受けに入れる。排水を完全にするために、ドア6を開けた状態で結露水が無くなるまで放置する。結露水の廃棄が終われば、ドレンホース121の先端のキャップ122を取り付け、元の位置にドレンホース121を戻す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−141438公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
定期的な結露水廃棄の作業は手間の掛かる作業であるため、作業者の中には定期的に実施しない人もいる。結露水の廃棄をせずに繰り返し運転したりそのまま放っておいたりすると、最悪の場合、ドレンホース121内に溜まった水がロータ室4の内部に逆流し、モータ5の出力軸5aを伝わってモータ5の内部に浸入してしまうことがあり、錆の発生や故障の原因となる。また図示しない受け皿を用意して、排水を受け皿で受ける場合では、水があふれて周辺にこぼれてしまう恐れがあった。
【0012】
一方、ドレンホースを流れる結露水とは別の現象として、ロータ室4を冷却する冷媒配管(蒸発機)8とコンプレッサ13との間の配管の一部に結露水が付くことがあった。その水滴が落下すると遠心分離機の筐体2の底面内に溜まってしまい、錆の発生の原因となってしまうことがあった。
【0013】
これらの対策として、上述した排水や水滴を受け皿で受けて、ファンの向きや風路を変えて受け皿のある下方向へ向け、受け皿に溜まった排水に直接温風が当たるように構成して、排水を素早く気化することが考えられる。しかしながら、排熱が底部で滞ってしまうため機内が充分に排熱されず、遠心分離機内の温度の上昇が大きく、しいてはロータ室内の冷却不足の問題が生じてしまう恐れがある。さらに、受け皿のある下方向へ流れるファンを追加することは、ファンを挿入するスペースが必要になるだけでなく、ファンによる騒音が増したり、余分な電力を消費してしまうことになる。
【0014】
また、コンプレッサから滴下した結露水は、筐体のベースのコンプレッサ下部に穴を空けることで機外へ排出し、受け皿にて受けることができるが、ロータ室4からのドレンホース121を開放状態にして、受け皿にて受けるようにすると、冷却装置によるロータ室4の冷却中、および、ロータ室4の回転中にロータ室4の内部が外部と連通することになるため好ましくない。即ち、冷却効果が落ちること、内部での結露の発生が大きくなること、ロータ3の回転によってロータ室4が負圧になりドレンホース121を介して外部から空気を吸い込んでしまうという問題が起こるからである。さらに、ロータ室4の内部が外部と連通したままだとロータ3の回転時に大きな音が発生する恐れがある。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明の主な目的は、ロータ室内又はコンプレッサ周りで発生した結露水を素早く除去することができる遠心分離機を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、ロータ室内又はコンプレッサ周りで発生した結露水を蒸発させることができる遠心分離機を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、遠心分離機の基本的な構造を変えずに、簡単な機構を付加するだけで、結露水の排水及び蒸発を効果的に行うことができる遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願において開示される発明のうち代表的なものの特徴を説明すれば次の通りである。
【0019】
本発明の一つの特徴によれば、ロータと、ロータを回転させるモータと、ロータを収容するロータ室と、ロータ室を冷却する冷却装置と、機内で発生した排熱を機外へ排出するファンと、排出口に設けられる通風孔が形成されたカバー部と、ロータ室の結露水を室外へ排出するドレンホースとを有する遠心分離機において、ドレンホースの排出口下部に位置し、排水を溜める受け皿部を設け、受け皿部とカバー部を高熱伝導性材料により構成し、受け皿部とカバー部を接続して配置した。受け皿部とカバーは、アルミニウム、銅、亜鉛合金の材料で一体成型で製造すると好ましい。
【0020】
本発明の他の特徴によれば、冷却装置は、コンプレッサと凝縮器を含み、コンプレッサの下部に配置されるように受け皿部を構成する。凝縮器は鉛直方向に配置され、カバー部は凝縮器と平行に鉛直方向に延びるように形成され、カバー部と受け皿部は略垂直になるように構成される。さらに、ドレンホースに逆止弁を設け、ロータ室から排出される結露水の逆流を防止する。また、逆止弁の代わりに電磁弁を設け、モータが回転する際にドレンホースを閉鎖しても良い。
【0021】
本発明のさらに他の特徴によれば、毛管作用を有する部材を、カバー部の通風孔の周囲に沿って、カバー部から受け皿部に設けた。この毛管作用を有する部材は、透水性を有する不織布又は連続多孔質スポンジを用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、ドレンホースの排出口下部に位置し、排水を溜める受け皿部を設け、受け皿部とカバー部を熱伝導性材料により構成し、受け皿部とカバー部を接続して配置した、熱伝導によりカバー部から受け皿部に熱が伝わり、受け皿で受ける排水の自然気化を促進することができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、受け皿部とカバーをアルミニウム、銅、亜鉛合金の材料で一体成型したので、排出カバーで排熱により上昇した熱が、位置が離れた受け皿部まで伝熱されやすくなり、排熱を効率的に利用できる。
【0024】
請求項3の発明によれば、受け皿部がコンプレッサの下部に配置されるように受け皿部を構成したので、コンプレッサ表面に付着した結露水がコンプレッサ下部の穴を通って受け皿部に排出され、筐体内に水が溜まり錆の発生の原因となることを防止することができる。
【0025】
請求項4の発明によれば、凝縮器は鉛直方向に配置され、カバー部は凝縮器と平行に鉛直方向に延びるように形成され、カバー部と受け皿部は略垂直になるように構成されるので、カバー部に直接温風を当てることができ、カバー部の温度上昇を促進させることができる。
【0026】
請求項5の発明によれば、ドレンホースに逆止弁を設け、ロータ室から排出される結露水の逆流を防止するので、ドレンホースの先端にキャップを設けることなく遠心分離作業中のドレンホースの閉鎖を実現できる。
【0027】
請求項6の発明によれば、ドレンホースに電磁弁を設け、モータが回転する際にドレンホースを閉鎖するので、ドレンホースの先端にキャップを設ける必要がなくなる。
【0028】
請求項7の発明によれば、毛管作用を有する部材を、カバー部の通風孔の周囲に沿って、カバー部から受け皿部に設けたので、受け皿に溜まった排水を毛管現象によって不織布あるいは連続多孔質スポンジが吸収して上方まで行き渡り、温風を直接受けて自然気化を促進することができる。
【0029】
請求項8の発明によれば、毛管作用を有する部材は、透水性を有する不織布又は連続多孔質スポンジであるので、安価な材料を付加するだけで自然気化を促進することができ、遠心分離機の製造コストの上昇を最小に抑えることができる。
【0030】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る遠心分離機を右側面から見た断面図である。
【図2】ドア6と、キャビネット18と、排出カバー31を取り外した状態の遠心分離機1の斜め後方から見た斜視図である。
【図3】図1の排出カバー31の斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る排出カバー41を示す斜視図である
【図5】本発明の第3の実施例に係る遠心分離機1aを示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施例に係る排出カバーを示す斜視図である。
【図7】図6の排出カバーの断面図である。
【図8】従来の遠心分離機を右側面から見た断面図である。
【図9】従来の遠心分離機のドアとキャビネットと排出カバーを取り外した状態で斜め後方から見た斜視図である。
【図10】従来の遠心分離機の定期的な結露水廃棄をする際の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0032】
以下、本発明の実施例を図1〜7に基づいて説明する。尚、図8〜10で説明した従来技術と同じ構成の部分は、同じ参照符号を付して繰り返しの説明は省略する。また、本体装置の前後、左右、及び上下方向は、図1及び図2の矢印で示す方向を基準として説明する。
【0033】
図1は、発明に係る遠心分離機を右側面から見た断面図であり、図2はドア6と、キャビネット18と、排出カバー31を取り外した状態の遠心分離機1の斜め後方から見た斜視図であり、図3は排出カバー31の斜視図である。図1において、遠心分離機1としての基本的な構造は、図8の従来例の構造とほぼ同一であるが、ここではドレンホース21の排出側の先端部21aにキャップ(図8の122)が設けられない点、ドレンホース21の通路の途中に逆止弁24が設け設けられる点、及び、排出カバー31の構造が異なる点の3点が改良される。排出カバー31は下部に受け皿部が設けられ、カバー部と受け皿部は、高熱伝導性材料により一体に構成される。
【0034】
図2に示すように排出カバー31は、遠心分離機1の後部から4つのネジ34によって筐体2とキャビネット18(図1参照)に固定される。キャビネット18は、本体側面と上面を覆う構造鋼材の板金で構成されるため、筐体2、キャビネット18と排出カバー31の間には、断熱材26が設けられ、排出カバー31の温度が筐体2、キャビネット18によって低下することが防止される。図1に示すように、ドレンホース21の先端21aは、排出カバー31の受け皿部31bに開口する。この開口は常に開放したままであるが、本実施例においては、逆止弁24が設けられるために、ロータ3が回転してロータ室4が負圧になった場合や、結露水が逆流しそうになった際には、逆止弁24により通路が遮断される。逆止弁24を用いたことにより、ドレンホース21の先端にキャップを設けることが不要となり、排出カバー31と一体化された受け皿部の真上にドレンホース21の先端(排出口)を垂らすことが可能となった。
【0035】
この状態で遠心分離機1を運転させると、遠心分離機1の内部で発生した熱は、ファン17により排出カバー31の通風孔を通り機外へ排出される。この時に排出カバー31に直接温風が当たるため排出カバー31の温度が上昇する。本実施例では、排出カバー31は高熱伝導性材料により一体に構成されるため、カバー部31aと一体となった受け皿部31bまで容易に熱が伝わるため、受け皿部31bの温度が上昇し、受け皿で受ける排水の自然気化を促進することができる。
【0036】
図3は、排出カバー31単体の斜視図である。排出カバー31は、主に、鉛直方向に延びるカバー部31aと、水平方向に延びる受け皿部31bの2つの部分から構成される。排出カバー31は、材質を一般的に使われる構造用鋼材と比べて熱伝導率の良いアルミニウム、銅、亜鉛合金製で製造される。カバー部31の形状は、従来の排出カバー131(図8〜10)とほぼ同様で、凝縮器14の放熱部分に対応する位置に長穴形状をした多数の通風孔31cが縦横方向に形成される。カバー部31aの周辺部には、ネジ34を貫通させるための4つのネジ穴31gが形成される。また、外周部には、キャビネット18を凝縮器14に取り付けるためのネジ位置を避けるために形成された4箇所の切り欠き31fが形成される。
【0037】
排出カバー31の受け皿部31bは、前方が上方向に約90度に折り返された折り返し部31dが形成され、左右の両方の側方には上方向に約90度に折り返された折り返し部31eが形成され、受け皿部31bにある程度の水を溜めることができるように構成される。尚、折り返し部31d、31eの角部分の継ぎ手には、すき間を埋める溶接が施してあってもよい。排出カバー31は、例えば、一枚の金属板をプレス加工することにより製造可能であり、比較的安価に製造することができる。また、一体構成で製造することにより、カバー部31aで排熱により上昇した熱が、位置が離れた受け皿部31bにまで良好に伝導され、受け皿部31に溜まった排水の蒸発を促進させることができる。このように、凝縮器14から排出される排熱を効率的に利用して、受け皿部31に溜まった排水を蒸発させるので、結露水の廃棄作業を実質的になくすことが可能となる。
【0038】
受け皿部31bの長さや幅は、コンプレッサ13の直径よりも大きいように形成され、コンプレッサ13の下部に配置する。さらに、筐体2のベース(床板部分)であって、コンプレッサ13の下部付近に、水滴が通る程度の複数の穴を空けるようにする。このように構成することで、ロータ室4を冷却する冷媒配管(蒸発機)8とコンプレッサ13との間の配管の一部に付着した結露水がその穴を通って受け皿部31bに流れる。このように、ロータ室4の結露水の排出だけでなく、ロータ室4を冷却する冷媒配管(蒸発機)8とコンプレッサ13との間の配管の一部に付着する結露水も効果的に受け皿部31bに導くことによって、筐体2内に水が溜まり錆の発生の原因となることを防止することができる。
【0039】
さらには、上記穴を介して、排出カバーで遮断され通風孔を通過しなかった一部の排熱が下側に流れて受け皿にまで至り、受け皿に溜まった排水に直接温風が当たることで自然気化を促進することができる。
【実施例2】
【0040】
図4は、本発明の第2の実施例に係る排出カバー41を示す斜視図である。図1〜3で示した第1の実施例と異なるのは、排出カバー41の内面に不織布43を設けたことにある。図4に示すように、排出カバー41の排熱を受ける側の面(内面)に、通風孔41cに沿って受け皿部41bから縦方向に連なる毛管作用を有する部材、例えば透水性を有する不織布43あるいは連続多孔質スポンジを貼り付ける。不織布43は、受け皿部41bにおいては互いに交差せず複数折れ曲がった曲線であるジグザグ部43bを形成することで、受け皿で排水を吸収する表面積が増し、カバー部41aにおいては、鉛直に形成した直線部43aを形成する。このように構成することで、受け皿部41bに溜まった排水を毛管現象によって不織布あるいは連続多孔質スポンジが吸収して上方まで行き渡り、温風を直接受けて自然気化を促進することができる。さらに、運転を終えた後も、受け皿の余熱により自然気化がしばらくの間続くので、排熱を利用することで、ファンなどの追加投資無しで、自然気化を促進させることができ、定期的な結露水廃棄の手間がほぼ不要な遠心分離機を実現できる。
【実施例3】
【0041】
図5は、本発明の第3の実施例に係る遠心分離機1aを示す断面図である。第1の実施例と異なる点はドレンホース21の途中に配置された電磁弁25である。電磁弁25を設けることにより、遠心分離機1aの稼働中にだけ電磁弁25を閉じるようにし、遠心分離運転が終了した際に電磁弁25を開放するように構成した。このように構成することにより、遠心分離中にドレンホース21を逆流する排水や、音の発生を防止することができる。
【実施例4】
【0042】
図6は、第4の実施例に係る排出カバー51の形状を示す斜視図であり、図7は、排出カバー51の断面図である。排出カバー51の基本的な形状は、第1及び第2の実施例の排出カバー31、41と同じである。しかしながら、本実施例においては、排出カバー51の受け皿部51bの上側に蓋55が設けられる。蓋55は、例えばプラスチック等の合成樹脂で構成することが好ましく、図7に示すように中央部にはドレンホース21を貫通させるための貫通穴55aが形成され、前方側及び側方側で受け皿部51bの周縁部と嵌合する嵌合部55bが形成される。このような構造とすることで、受け皿部51bに溜まった水が外部に漏れないように構成される。
【0043】
排出カバー51の受け皿部51bには、図4の不織布43とほぼ同様の不織布53が形成され、不織布53は上方に延びて、カバー部51aの最上部の通風孔51cの位置まで延びるように構成される。一方、受け皿部51b内の不織布53は、受け皿部51bの前後方向中央部付近からカバー部51aの方向に配置される。尚、不織布53をどの程度の長さ、どの程度の厚さにして、どのように配置するかは、遠心分離機1から排出される排水の量や、使用される場所での温度、湿度などを考慮して任意に設定すれば良く、実施例で示した構造に限られるものではない。
【0044】
実施例4は、ロータ室4を冷却する冷媒配管(蒸発機)8とコンプレッサ13との間の配管の一部に付着する結露水の集水を考慮しなくて良い構造の遠心分離機1に好適なものであり、このように構成することにより排出カバー51の受け皿部51bに溜まった排水の影響で遠心分離機1の底部の湿度が高くなることを防止できる。尚、コンプレッサ13に付着する結露水の集水を考慮する場合は、蓋55の形状を工夫して集水トレイのような形状にし、蓋55の上面で集水された水が受け皿部51bに導かれるように構成してもよい。
【0045】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、排出カバーとドレンホースからの排水を溜める受け皿を高熱伝導性材料で一体成形することにより、熱伝導により受け皿部まで熱が伝わり、受け皿で受ける排水の自然気化を促進することができる。
【0046】
また、本発明によれば、排出カバーで遮断され通風孔を通過しなかった一部の排熱が受け皿にまで流れ、受け皿に溜まった排水に直接温風が当たることで自然気化を促進することができる。これらの自然気化は、いままで捨てられていた廃熱を有効利用したものであり、故障の心配がなくエコロジーの観点からも好ましいものである。
【0047】
さらに、本発明によれば、排出カバーの材質を一般的に使われる構造用鋼材と比べて熱伝導率の良いアルミニウム、銅、亜鉛合金製にすることで、排出カバーで排熱により上昇した熱が、位置が離れた受け皿部まで伝熱されやすくなり、排熱を効率的に利用できる。
【0048】
以上、本発明を示す実施例に基づき説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施例においては、作業者が受け皿部の水を廃棄する必要がないため、受け皿部にどの程度の水が溜まっているか目視できない構造にしてあるが、貯まっている水の量が確認できるように、公知の覗き窓やなんらかの水位表示手段を設けても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 遠心分離機 2 筐体 3 ロータ 4 ロータ室
5 モータ 5a (モータの)出力軸 6ドア 7 チャンバ
8 冷媒配管 9 断熱材 10 シールカバー 11 仕切り板
12 防振ゴム 13 コンプレッサ 14 凝縮器
15 キャピラリチューブ 16 表示装置 17 ファン
18 キャビネット 19 フロントカバー 20 冷却装置
21 ドレンホース 21a (ドレンホースの)先端部
22 キャップ 24 逆止弁 25 電磁弁 26 断熱材
27 制御装置 31 排出カバー 31a (排出カバーの)カバー部
31b (排出カバーの)受け皿部 31c (排出カバーの)通風孔
31d、31e (排出カバーの) 31f (排出カバーの)切り欠き
31g (排出カバーの)ネジ穴 33 不織布 34 ネジ
41 排出カバー 41a (排出カバーの)カバー部
41b (排出カバーの)受け皿部 41c (排出カバーの)通風孔
43 不織布 43a (不織布の)直線部
43b(不織布の)ジグザグ部 51 排出カバー
51a (排出カバーの)カバー部
51b (排出カバーの)受け皿部 53 不織布
55 蓋 55a (蓋の)貫通穴 55b (蓋の)嵌合部
101 遠心分離機 121 ドレンホース 122 キャップ
123 クランプ 131 排出カバー 134 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、前記ロータを回転させるモータと、前記ロータを収容するロータ室と、前記ロータ室を冷却する冷却装置と、機内で発生した排熱を機外へ排出するファンと、排出口に設けられる通風孔が形成されたカバー部と、ロータ室の結露水を室外へ排出するドレンホースとを有する遠心分離機において、
前記ドレンホースの排出口下部に位置し、排水を溜める受け皿部を設け、
前記受け皿部と前記カバー部を熱伝導性材料により構成し、前記受け皿部と前記カバー部を接続して配置したことを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記受け皿部と前記カバーをアルミニウム、銅、亜鉛合金の材料で一体成型したことを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項3】
前記冷却装置は、コンプレッサと凝縮器を含み、
前記受け皿部が前記コンプレッサの下部に配置されるように受け皿部を構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記凝縮器は鉛直方向に配置され、前記カバー部は前記凝縮器と平行に鉛直方向に延びるように形成され、前記カバー部と前記受け皿部は略垂直になるように構成されることを特徴とする請求項3の遠心分離機。
【請求項5】
前記ドレンホースに逆止弁を設け、前記ロータ室から排出される結露水の逆流を防止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項6】
前記ドレンホースに電磁弁を設け、前記モータが回転する際に前記ドレンホースを閉鎖することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項7】
毛管作用を有する部材を、前記カバー部の通風孔の周囲に沿って、前記カバー部から前記受け皿部に設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項8】
前記毛管作用を有する部材は、透水性を有する不織布又は連続多孔質スポンジであることを特徴とする請求項7に記載の遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−274230(P2010−274230A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131597(P2009−131597)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】