説明

遠心力鉄筋コンクリート杭

【課題】従来の遠心力プレストレストコンクリート杭の問題点を解決した遠心力鉄筋コンクリート杭を提供する。
【解決手段】外径を同一に形成したストレート杭部22の同軸上に、根固め部固着用の節杭部23を一体成形する。この節杭部23は、軸部24と、この軸部24より大径に形成した節部25とを備えている。ストレート杭部22の外径は、節杭部23の軸部24の外径より大径に形成し、ストレート杭部22の内径部26と節杭部23の内径部27との境界部には、異径部成形用のリングプレート28を設ける。ストレート杭部22の内径は、異径部成形用のリングプレート28を介して、節杭部23の内径より大径に形成する。異径部成形用のリングプレート28を介して、ストレート杭部22の鉄筋篭32と節杭部23の鉄筋篭34とを一体に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレート杭部に節杭部が一体成形された遠心力鉄筋コンクリート杭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、外径を同一に形成したストレート杭部11と、このストレート杭部11の同軸上に一体成形された根固め部固着用の節杭部12とを具備したコンクリート杭を示す。節杭部12は、軸部13と、この軸部13より大径に形成された節部14とを備えている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
そして、地中の拡大掘削穴に供給されたセメントミルクと土壌とを混合攪拌したソイルセメントを、図5に示されるように節杭部12の周囲で塊状に固化させて、この節杭部12と一体の根固め部15を形成させることで、高支持力が得られるようにしている。
【0004】
この種のコンクリート杭は、工法上または設計上、図4に(a)、(b)、(c)で示されるように3つのタイプに大別される。
【0005】
図4(a)に示されたコンクリート杭は、節杭部12の軸部13の外径D1より節部14の外径D2が大径に形成され、節杭部12の軸部13の外径D1とストレート杭部11の外径D3とが同径に形成された軸径型である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図4(b)に示されたコンクリート杭は、節杭部12の軸部13の外径D1より節部14の外径D2が大径に形成され、ストレート杭部11の外径D3は節杭部12の軸部13の外径D1より大径であるが節部14の外径D2より小径に形成された中間径型である(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図4(c)に示されたコンクリート杭は、節杭部12の軸部13の外径D1より節部14の外径D2が大径に形成され、ストレート杭部11の外径D3はこの節部14の外径D2と同径に形成された拡大径型である(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
これらのコンクリート杭は、従来は遠心力プレストレストコンクリート杭であり、図6に示されるように、一端の端面金物16と他端の端面金物17との間に配設されたPC鋼材18に遠心成形時にプレストレス(引張力)を作用させ、このPC鋼材18に沿ってストレート杭部11と節杭部12の内径をストレートに遠心成形することが一般的である。
【0009】
このため、図4(b)に示された中間径型および図4(c)に示された拡大径型では、ストレート杭部11の壁厚が厚くなることから、遠心成形時に一度のコントリート注入量ではカバーできず、遠心成形後にコントリート再注入の手間がかかる。また、ストレート杭部11の壁厚が厚いため、重く取扱が困難になるとともに、オートクレーブ養生で、ひび割れが入ることもある。
【0010】
これに対し、図7に示されるように、ストレート杭部11と節杭部12とを別々に遠心成形して、一方の端面金物16と他方の端面金物17とを突き合わせて溶接継手19により接続したコンクリート杭がある。これは、ストレート杭部11の壁厚が厚くなることを防止できるが、別々に遠心成形したストレート杭部11と節杭部12とを溶接するため、製作に手間がかかりコストアップが生じる。
【特許文献1】特開2001−248156号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2003−90036号公報(第1頁)
【特許文献3】特開2004−3324号公報(第9頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、図6に示される遠心力プレストレストコンクリート杭は、遠心成形後のコントリート再注入の手間がかかり、重く、オートクレーブ養生で、ひび割れが入る問題があり、また、図7に示されるコンクリート杭は、ストレート杭部11と節杭部12とを溶接継手19により接続する手間とコストアップが生じる問題がある。
【0012】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、従来の遠心力プレストレストコンクリート杭の問題点を解決した遠心力鉄筋コンクリート杭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された発明は、外径を同一に形成したストレート杭部と、このストレート杭部の同軸上に一体成形され、軸部およびこの軸部より大径の節部を形成した根固め部固着用の節杭部と、ストレート杭部の内径部と節杭部の内径部との境界部に設けられた異径部成形用のリングプレートとを具備し、前記ストレート杭部の外径は、前記節杭部の軸部の外径より大径に形成され、前記ストレート杭部の内径は、前記節杭部の内径より大径に形成された遠心力鉄筋コンクリート杭である。
【0014】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の遠心力鉄筋コンクリート杭において、異径部成形用のリングプレートを介して、ストレート杭部の鉄筋篭と節杭部の鉄筋篭とが一体に設けられたものである。
【0015】
請求項3に記載された発明は、請求項2記載の遠心力鉄筋コンクリート杭におけるストレート杭部の鉄筋篭および節杭部の鉄筋篭が、異径位置に配筋された別体の異形棒鋼を有するものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された発明によれば、ストレート杭部の内径部と節杭部の内径部との境界部に設けられた異径部成形用のリングプレートによって、前記ストレート杭部の内径を、前記節杭部の内径より大径に形成できる遠心力鉄筋コンクリート杭であるから、ストレート杭部の外径が、節杭部の軸部の外径より大径に形成される場合であっても、ストレート杭部の壁厚が厚くなることを防止でき、遠心成形後のコントリート再注入、重量オーバによる取扱困難、養生でのひび割れ発生を防止できる。
【0017】
請求項2に記載された発明によれば、異径部成形用のリングプレートを介して一体に設けられたストレート杭部の鉄筋篭と節杭部の鉄筋篭とにより、ストレート杭部と節杭部とを一体に遠心成形できるので、これらを別々に遠心成形して溶接する場合の手間とコストアップを防止できる。
【0018】
請求項3に記載された発明によれば、ストレート杭部の鉄筋篭および節杭部の鉄筋篭が、異径位置に配筋された別体の異形棒鋼を有するので、異径部成形用のリングプレートに対する各異形棒鋼の取付を容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図1および図2に示された一実施の形態、図3に示された他の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、遠心力鉄筋コンクリート杭21を示し、外径を同一に形成したストレート杭部22の同軸上に、根固め部固着用の節杭部23が一体成形されている。この節杭部23は、軸部24と、この軸部24より大径に形成された節部25とを備えている。
【0021】
前記ストレート杭部22の外径は、前記節杭部23の軸部24の外径より大径に形成され、ストレート杭部22の内径部26と節杭部23の内径部27との境界部には、異径部成形用のリングプレート28が設けられ、図2に示されるように前記ストレート杭部22の内径D22は、異径部成形用のリングプレート28を介して、前記節杭部23の内径D23より大径に形成されている。
【0022】
図1に示されるように、一方の端面金具31と異径部成形用のリングプレート28との間には、ストレート杭部用の鉄筋篭32が設置され、他方の端面金具33と異径部成形用のリングプレート28との間には、節杭部用の鉄筋篭34が設置されている。
【0023】
ストレート杭部用の鉄筋篭32は、所定ピッチで大径円筒状に配筋された複数の異形棒鋼32aの外周に螺旋筋32bを巻付けるように装着して溶接したものであり、また、節杭部用の鉄筋篭34は、ストレート杭部22の鉄筋篭32に対して、内径側に別体の異形棒鋼34aを所定ピッチで小径円筒状に配筋し、これらの異形棒鋼34aの外周に上記螺旋筋32bと同様に一連の螺旋筋34bを巻付けるように装着して溶接したものである。
【0024】
ストレート杭部22の鉄筋篭32と節杭部23の鉄筋篭34は、異径位置に配筋された別体の異形棒鋼32a,34aを異径部成形用のリングプレート28により一体化し、さらにこれらの異形棒鋼32a,34aの外周に一連の螺旋筋32b,34bを巻着して溶接することにより、ストレート杭部22の鉄筋篭32と節杭部23の鉄筋篭34とが一体に設けられたものである。
【0025】
異径部成形用のリングプレート28は、遠心成形時に遠心機の回転型枠内に設置されて、ストレート杭部22の内径部26と節杭部23の内径部27との境界部に段差を設けるものであるが、このリングプレート28を遠心機の回転型枠内に位置決めすることで、各鉄筋篭32,34を位置決めする機能も備え、ストレート杭部22および節杭部23の壁厚内に各鉄筋篭32,34が正確に位置決めされる。
【0026】
すなわち、図2に示されるように、異径部成形用のリングプレート28の外径縁と内径縁とに沿って、それぞれ一定ピッチの棒鋼挿入穴35,36が穿設されているので、外径側の各棒鋼挿入穴35にストレート杭部22の各異形棒鋼32aが挿入されて位置決めされ、内径側の各棒鋼挿入穴36に節杭部23の各異形棒鋼34aが挿入されて位置決めされる。
【0027】
次に、この図1および図2に示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0028】
水平方向に回転軸が設置された遠心機の回転型枠(図示せず)内に、一連に接続された一方の端面金具31、ストレート杭部用の鉄筋篭32、異径部成形用のリングプレート28、節杭部用の鉄筋篭34および他方の端面金具33を、これらにプレストレスを与えることなく設置し、遠心機により回転型枠を回転させながら、この回転型枠内にコンクリート注入管(図示せず)によりコンクリートを投入して、遠心力で締め固める。
【0029】
このとき、ストレート杭部22の外径、節杭部23の外径および両外径間で漸次変化するテーパ部37の形状は、回転型枠により決定されるが、この回転型枠内へのコンクリート投入量を、異径部成形用のリングプレート28よりストレート杭部22側と、節杭部23側とでそれぞれ調整することで、ストレート杭部22の壁厚および節杭部23の壁厚をそれぞれ最適な壁厚に成形し、外径に合せて、ストレート杭部22の内径部26を、節杭部23の内径部27より大径に形成する。
【0030】
このように、ストレート杭部22の内径部26と節杭部23の内径部27との境界部に設けられた異径部成形用のリングプレート28によって、前記ストレート杭部22の内径D22を、前記節杭部23の内径D23より大径に形成できる遠心力鉄筋コンクリート杭であるから、ストレート杭部22の外径が、節杭部23の軸部24の外径より大径に形成される場合であっても、ストレート杭部22の壁厚が厚くなることを防止でき、遠心成形後のコントリート再注入、重量オーバによる取扱困難、養生でのひび割れ発生を防止できる。
【0031】
また、異径部成形用のリングプレート28を介して一体に設けられたストレート杭部22の鉄筋篭32と節杭部23の鉄筋篭34とにより、ストレート杭部22と節杭部23とを一体に遠心成形できるので、これらを図7のように別々に遠心成形して溶接する場合の手間とコストアップを防止できる。
【0032】
加えて、異径部成形用のリングプレート28を遠心機の回転型枠内に位置決めすることによって、ストレート杭部22および節杭部23の鉄筋篭32,34をそれぞれの壁厚内に正確に設置できる。
【0033】
さらに、ストレート杭部22の鉄筋篭32および節杭部23の鉄筋篭34が、異径位置に配筋された別体の異形棒鋼32a,34aを有するので、異径部成形用のリングプレート28に対する各異形棒鋼32a,34aの取付を容易にできる。
【0034】
次に、図3は、本発明の他の実施の形態を示し、前記遠心力鉄筋コンクリート杭21におけるストレート杭部22の異形棒鋼32aと、節杭部23の異形棒鋼34aとを、同一の異形棒鋼により連続的に形成したもので、ストレート杭部22の異形棒鋼32aに対して節杭部23の異形棒鋼34aは折曲部38を介して内径側に折曲形成されている。異形棒鋼32aは、異径部成形用のリングプレート28の外周部に溶接などにより固定されている。この図3に示される実施の形態において、図1および図2に示された実施の形態と同様の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0035】
なお、本発明は、図4(b)に示された中間径型と、図4(c)に示された拡大径型とに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る遠心力鉄筋コンクリート杭の一実施の形態を示す半断面図である。
【図2】同上コンクリート杭の要部断面図である。
【図3】同上コンクリート杭の他の実施の形態を示す要部断面図である。
【図4】(a)は軸径型コンクリート杭、(b)は中間径型コンクリート杭、(c)は拡大径型コンクリート杭を示す説明図である。
【図5】従来のコンクリート杭における根固め部を示す斜視断面図である。
【図6】従来の遠心力プレストレストコンクリート杭を示す半断面図である。
【図7】従来のストレート杭部と節杭部を溶接したコンクリート杭の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
22 ストレート杭部
23 節杭部
24 軸部
25 節部
26 内径部
27 内径部
28 リングプレート
32,34 鉄筋篭
32a,34a 異形棒鋼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径を同一に形成したストレート杭部と、
このストレート杭部の同軸上に一体成形され、軸部およびこの軸部より大径の節部を形成した根固め部固着用の節杭部と、
ストレート杭部の内径部と節杭部の内径部との境界部に設けられた異径部成形用のリングプレートとを具備し、
前記ストレート杭部の外径は、前記節杭部の軸部の外径より大径に形成され、
前記ストレート杭部の内径は、前記節杭部の内径より大径に形成された
ことを特徴とする遠心力鉄筋コンクリート杭。
【請求項2】
異径部成形用のリングプレートを介して、ストレート杭部の鉄筋篭と節杭部の鉄筋篭とが一体に設けられた
ことを特徴とする請求項1記載の遠心力鉄筋コンクリート杭。
【請求項3】
ストレート杭部の鉄筋篭および節杭部の鉄筋篭は、異径位置に配筋された別体の異形棒鋼を有する
ことを特徴とする請求項2記載の遠心力鉄筋コンクリート杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−106508(P2008−106508A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289983(P2006−289983)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000228660)日本コンクリート工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】