説明

遠心噴霧加湿装置

【課題】 従来の超微粒子噴霧装置は、微粒子化生成部より浮上した微粒子を、加熱手段でドライな超微粒子化させる超微粒子化部を介して、その噴射口より拡散・霧化する構成である。従って、加熱手段という付帯設備を要し、装置の複雑化、加熱手段を装置するに際して安全面の配慮と、噴射した超微粒子の取扱いに注意を要し、少なからず問題点を抱えている。
【構成】 本発明は、底部に膨出部を、壁面に開設した複数の吸気口を、また上部の収れん部位に噴霧口を備えたケーシングに、環状穴と小穴を備えた仕切り板を設け、仕切り板の上方に延設した回転軸に、翼片を備えた回転板を設け、回転板の周辺に間隔をおいてエリミネ―タを設け、このエリミネ―タの上方に間隔をおいて噴霧筒設置し、この回転板の表面に向って給水管の開口を配備する構成とした遠心噴霧加湿装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、農事用(茸の栽培)、又は工場用として利用される遠心噴霧加湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、細霧粒子拡散装置の目的として、例えば、ハウス(温室等)内の温湿度調整、茸の栽培に必要とする加湿状態を確保すること、又は工場において、湿度調整が挙げられる。そして、例えば、この種の細霧粒子拡散装置で、ハウス(温室等)内の温湿度調整を行う場合には、ハウス内に生育する作物に最適な環境の提供できること、又は作物への微粒内への埃、細菌等の侵入を回避し、かつ植物挿し木、植物苗接木等を行なった場合の雑菌の侵入防止に役立つこと等が知られている。ここで、さらに、植物挿し木、植物苗接木(挿し木、接木)等の養生使用の場合を詳細に説明する。この養生においては、適正かつ精緻な湿度管理・維持が不可欠であり、かつ湿度の管理・維持には、細霧粒子拡散装置から発生する粒子径が重要である。例えば、加湿の際、大きい粒子(細粒子)が噴霧されるが、この細粒子が、空中を浮遊中に、細菌を拾い易いので、例えば、この細粒子が、挿し木、接木の茎や葉に付着した場合に、この細粒子中に含まれる細菌が、この挿し木、又は接木箇所に入り、腐りや及び/又はカビが発生し、病気を惹起し、苗の生育に障害を与えること、また苗接木の歩留まりを悪くする等の問題がある。殊に、苗接木の接合部分は手術後の傷と同じであり、特別な配慮が必要であると考えられている。
【0003】
この問題の解決と、病気の撲滅、又は苗接木の歩留まりの向上等を図るには、例えば、細霧粒子拡散装置で、ミクロの細霧粒子(超微粒子)を噴霧すれば、挿し木、接木の養生に最適であること、又は樹木の朽ちれ発生とか、葉面に付着した場合の葉の濡れ、朽ちれ、汚染、薬害発生等の回避等に、極めて、有効である。そして、このミクロの細霧粒子であれば、イオン発生も増殖し、生育環境の一段の向上が期待できる。さらにハウス(温室)内の濡れ、汚染、茸栽培での結露の問題解消等において、極めて、有益である。
【0004】
尚、現状、茸栽培で使用されている細霧粒子拡散装置の中に、超音波加湿器(超音波振動子・超音波素子)がある。しかし、この超音波加湿器は、耐久時間があり、例えば、水質により、超音波振動子等(超音波振動子とする)に異物が付着し、この超音波振動子のスムーズな動きに障害をきたすこと、また破損の原因となること等が考えられる。このような状況では、例えば、茸栽培の如く、昼夜兼行で加湿する状況下では、一部で問題となることがあり得る。また、市販されている自動制御方式の細霧粒子拡散装置では、大きい粒子になり易いことと、この大きい粒子が存在すると、加湿運転終了後も気化するため結露が発生し易く、また、設定値に対して多湿状態(オーバーフロー)になる傾向がある。この大きい粒子は湿度センサーとの相性も非常に悪く、高分子センサーの寿命を極端に短くする。そして、一般的には、市販の湿度センサーの殆どは、結露しない条件下での使用であるので、この湿度センサーを、養生室等(養生室とする)の密閉された空間で使用する場合、一度、結露が発生するとオーバーフロー状態となり、その間は制御が行われなくなるので、問題である。そして、また、この養生室は、環境上で、一般的には、相対湿度90%以上の条件下で養生される。従って、湿度センサーに付着した大きい粒子は蒸発しにくく、復旧するまでにかなりの時間を要する等の改良点がある。また養生室は、最低条件として、結露しにくい構造であるが、湿度センサーが結露することはあり得る。このような場合は、結露した湿度センサーが正確に作動しないことから、室内を換気して湿度を下げることもあり、この苗接木の養生には問題がある。
【0005】
尚、以上は細霧粒子拡散装置を、農事用として採用した従来例を説明したが、この種の超微粒子拡散装置は、この分野に限定されず、例えば、生活空間となる全ての建屋(人的施設)、海苔・茸等の製造、倉庫、飲食店、乗り物等の分野においても、利用できる。そして、利用の際には、一部の面において、前述の例と、略同じ問題が考えられる。
【0006】
そして、この細霧等粒子拡散装置に関する文献としては、特開平9−10641号の「液体用の超微粒子噴霧装置」がある(文献1)。この発明の概要は、超微粒子化用の液体を充填できるタンク部と、タンクの液体を吸上げて微粒子化し、ケーシングの噴霧口に吹上げる微粒子化生成部と、この微粒子化生成部より浮上した微粒子を、ドライな超微粒子の状態に変換して超微粒子化させる超微粒子化部からなる構成であり、その特徴は、被噴霧物を、煙と略均等な0.2〜0.5μmに微粒子化し、軽量、低コストで火災の危険性のない超微粒子の噴霧を図る。この発明の利用分野は、液体を超微粒子化して噴霧し、病院、レストラン、映画館、劇場、体育館において、消毒・殺菌・殺虫、又は芳香する分野(業種)に使用することを目的とする。また他の文献としては、特開2005−131546の「超微粒子拡散装置」がある(文献2)。この発明の概要は、水槽に誘流部の先端が位置して架承された遠心回転体と、この遠心回転体の下側に送風羽根と、この遠心回転体の回転を司る駆動部を包囲する一方が閉塞し、かつその外周面に設けた複数の羽を備えた閉塞筒体と、この閉塞筒体に適宜間隔をもって囲繞されるとともに、前記水槽にセットされる上下方開口部を有するケーシングと、このケーシングの上方開口部の下側に設けた開口を備えたネットと、前記上方開口部に嵌合される筒部とで構成した超微粒子拡散装置である。この発明は、その粒径の超微粒子化を介して、埃、細菌等の侵入回避と、この侵入回避を介して作物に好影響を与えるとともに、挿し木、接木箇所への雑菌の侵入防止、最適な挿し木、接木を図ること、又は樹木・葉面の朽ちれ回避、また汚染、薬害発生等の弊害回避を図ること、等を意図する。
【0007】
【特許文献1】特開平9−10641号
【特許文献2】特開2005−131546
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
文献1では、微粒子化生成部より浮上した微粒子を、加熱手段を利用してドライな超微粒子の状態で超微粒子化させる構造である。従って、加熱手段という付帯設備を要し、装置の複雑化と、加熱手段を装置するに際して安全面の配慮と、噴射した超微粒子の取扱いにも注意を要し、解決すべき問題を抱えている。またこの加熱手段を装置することで、装置の大型化と、設置(使用)箇所が制限されること、又はランニングコスト・製造等のコストの上昇と、環境破壞に繋がる虞があること等の弊害が考えられる。
【0009】
また文献2では、その粒径の超微粒子化を介して、埃、細菌等の侵入回避等が図れる特徴がある。しかし、この発明では、遠心回転体と、これに装置した送風羽根とを介して、水槽の水を吸上げ、この吸上げた水を、遠心回転板を介して、拡散しつつ、その周辺に設けたエリミネ―タ(環状拡散室の環状壁面)を介して、超微粒子化する構造である。この発明は、構造簡単で、かなりの超微粒子化が図れる。しかし、遠心回転板とエリミネ―タとの構造では、この超微粒子化も限界があると考えられる。
【0010】
上記に鑑み、本発明は、以下、「い」〜「に」に記述する目的を達成する。「い」 樹木、苗における挿し木、接木の養生、又は茸等の作物の栽培において、ミクロの微粒子を、多量かつ効率よく発生するとともに、このミクロの微粒子を瞬時に気化し、樹木、苗及び/又はその葉面、又は茸に細粒子が付着しない遠心噴霧加湿装置を提供する。「ろ」 そして、ミクロの超微粒子化を介して、噴霧と略同時に素早く気化される機構を採用し、ハウス内(栽培室内)の湿度設定値を、瞬時に確保し、この湿度設定値オーバーを回避しつつ、適正かつ精緻な湿度環境の維持を可能にする。「は」 挿し木、接木、葉面又は茸の笠等への細粒子の付着を無くし、細菌の繁殖やカビの発生と、各種の病気の発生を抑え、樹木、苗、茸等の栽培、製品歩留まりの飛躍的な向上を図る。「に」 生育及び/又は栽培環境の確保と、エネルギーの節約化、環境維持の確保と、経済性の向上等を図る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、前述した「い」〜「に」の目的を達成することを意図する。
【0012】
請求項1は、大小径のケーシングと、この大小径のケーシング間に段部を設けた略筒状のケーシングは、その底部にモータ設置用の膨出部を、またこの膨出部の上方に設けた、中心部に環状穴と、その周辺部に小穴を備えた仕切り板を設ける構成とするとともに、その上部の収れん部位には、噴霧口を設ける構成とし、
またこのケーシングの膨出部に設けたモータの回転軸を、前記仕切り板の上方に延設して回転板を設け、この回転板の下面に設けた翼片は、前記仕切り板に間隔をおいて設置される構造とし、またこの回転板の周辺に間隔をおいて環状のエリミネ―タを設け、このエリミネ―タが、前記ケーシングの段部の下側に位置する構成とし、
前記回転板の表面に、給水管を配備する構成とし、
さらに前記ケーシングの壁面で、かつその仕切り板の下側に複数の吸気口を開設し、またこのケーシングの壁面で、かつ膨出部の下方にオーバーフロー用の排水口を開設する構成とした遠心噴霧加湿装置である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに、最適な噴霧口を備えた噴霧筒の構造を提供することを意図する。
【0014】
従って、請求項2は、請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
前記噴霧口を構成する噴霧筒を、前記回転板の直上に配備する構成とした遠心噴霧加湿装置である。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに、最適なケーシングの構造を提供することを意図する。
【0016】
請求項3は、請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
前記ケーシングの一方の底部に、ポンプを配備し、他方の底部に吸水管と電磁弁を配備する構成とした遠心噴霧加湿装置である。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに、最適なエリミネ―タの構造を提供することを意図する。
【0018】
請求項4は、請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
前記エリミネ―タは、平板状の本体と、この本体の周辺に立設した環状体と、この環状体に開設した多数の溝と、この各溝に隣接して設けられた多数の突条とでなる構成とした遠心噴霧加湿装置である。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成し、かつミクロの超微粒子を、確実かつ瞬時に発生するに役立つ回転板の構造を提供することを意図する。
【0020】
請求項5は、請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
前記回転板の下面に設けた翼片は、中心部と、周辺部との間に設けられており、最適なかつ平面視してクロス形状に配備する構成とした遠心噴霧加湿装置である。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに最適な保守管理・取扱い等が容易で、かつ分割可能なケーシングの構造を提供することを意図する。
【0022】
請求項6は、請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
前記ケーシングは、分割構造であり、その底部に膨出部を備え、かつその壁面に複数の吸気口を備えた第一ケーシングと、この第一ケーシングに積層され、その中心部に環状穴と、またその周辺部に小穴を備えた仕切り板を設けた第二ケーシングと、この第二ケーシングの内周面の一部をカバーする段部を構成する上蓋と、この上蓋の内面側より垂設し、かつ前記第二ケーシングに積層され、その上部に収れん部位を備えた第三ケーシングとで構成する遠心噴霧加湿装置である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明は、大小径のケーシングと、大小径のケーシング間に段部を設けた略筒状のケーシングは、底部にモータ設置用の膨出部を、また膨出部の上方に設けた、中心部に環状穴と、周辺部に小穴を備えた仕切り板を設ける構成とするとともに、上部の収れん部位には、噴霧口を設ける構成とし、またケーシングの膨出部に設けたモータの回転軸を、仕切り板の上方に延設して回転板を設け、回転板の下面に設けた翼片は、仕切り板に間隔をおいて設置される構造とし、また回転板の周辺に間隔をおいて環状のエリミネ―タを設け、エリミネ―タが、ケーシングの段部の下側に位置する構成とし、回転板の表面に、給水管を配備する構成とし、さらにケーシングの壁面で、かつ仕切り板の下側に複数の吸気口を開設し、またケーシングの壁面で、かつ膨出部の下方にオーバーフロー用の排水口を開設する構成とした遠心噴霧加湿装置である。
【0024】
従って、請求項1は、下記の特徴を有する。
「い」 樹木、苗における挿し木、接木の養生、又は茸等の作物の栽培において、ミクロの微粒子を、多量かつ効率よく発生するとともに、このミクロの微粒子を瞬時に気化され、樹木、苗及び/又はその葉面、又は茸に細粒子が付着しない遠心噴霧加湿装置の提供できる。
「ろ」 そして、ミクロの超微粒子化を介して、噴霧と略同時に素早く気化される機構を採用し、ハウス内(栽培室内)の湿度設定値を、瞬時に確保し、この湿度設定値オーバーを回避しつつ、適正かつ精緻な湿度環境の維持が可能となる。
「は」 挿し木、接木、葉面又は茸の笠等への細粒子の付着を無くし、細菌の繁殖やカビの発生と、各種の病気の発生を抑え、樹木、苗、茸等の栽培、製品歩留まりの飛躍的な向上が図れる。
「に」 生育及び/又は栽培環境の確保と、エネルギーの節約化、環境維持の確保と、経済性の向上等が図れる。
【0025】
請求項2の発明は、請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
噴霧口を構成する噴霧筒を、回転板の直上に配備する構成とした遠心噴霧加湿装置である。
【0026】
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するに、最適な噴霧口を備えた噴霧筒の構造を提供できること等の特徴を有する。
【0027】
請求項3の発明は、請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
ケーシングの一方の底部に、ポンプを配備し、他方の底部に吸水管と電磁弁を配備する構成とした遠心噴霧加湿装置である。
【0028】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するに、最適なケーシングの構造を提供できること等の特徴を有する。
【0029】
請求項4の発明は、請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
エリミネ―タは、平板状の本体と、本体の周辺に立設した環状体と、環状体に開設した多数の溝と、各溝に隣接して設けられた多数の突条とでなる構成とした遠心噴霧加湿装置である。
【0030】
従って、請求項4は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するに、最適なエリミネ―タの構造を提供できること等の特徴を有する。
【0031】
請求項5の発明は、請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
回転板の下面に設けた翼片は、中心部と、周辺部との間に設けられており、かつ平面視してクロス形状に配備する構成とした遠心噴霧加湿装置である。
【0032】
従って、請求項5は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成し、最適で、かつミクロの超微粒子を、確実かつ瞬時に発生するに役立つ回転板の構造を提供できること等の特徴を有する。
【0033】
請求項6の発明は、請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、ケーシングは、分割構造であり、底部に膨出部を備え、かつ壁面に複数の吸気口を備えた第一ケーシングと、第一ケーシングに積層され、中心部に環状穴と、また周辺部に小穴を備えた仕切り板を設けた第二ケーシングと、第二ケーシングの内周面の一部をカバーする段部を構成する上蓋と、上蓋の内面側より垂設し、かつ第二ケーシングに積層され、上部に収れん部位を備えた第三ケーシングとで構成する遠心噴霧加湿装置である。
【0034】
従って、請求項6は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するに最適で、保守管理・取扱い等が容易で、かつ分割可能なケーシングの構造を提供できること等の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の一例を説明する。
【0036】
以下、本発明の図面の説明をすると、図1は一例を示した全体の断面図、図2は一例を示した全体の分解図、図3は一例を示した全体の超微粒子の流れを説明する要部の斜視図、図3−1は一例を示した回転板とエリミネ―タとの関係を説明する要部の拡大平面図、図4−1は回転板とエリミネ―タとの関係を説明する要部の拡大平面図、図4−2は一例を示した回転板とエリミネ―タとの関係を説明しつつ、超微粒子の流れを説明する要部の拡大模式図、図4−3は図4−2の全体を示し、超微粒子の流れを説明する要部の斜視図、図5−1は一例を示した基本的な遠心噴霧加湿装置における大小径の粒子(風)の流れを、抽出して説明した模式図、図5−2は一例を示した基本的な遠心噴霧加湿装置における粒子の流れを、装置全体で説明した模式図、図5−3は一例を示した基本的な遠心噴霧加湿装置における粒子の流れを、装置全体で矢印を介して示した模式図、図6−1は一例を示した噴霧筒を設けない遠心噴霧加湿装置の噴霧量と粒子径との関係を説明した模式図、図6−2は一例を示した噴霧筒を設けた遠心噴霧加湿装置の噴霧量と粒子径との関係を説明した模式図、図6−3は一例を示した噴霧筒を設けた遠心噴霧加湿装置の超微粒子の流れを説明した模式図である。
【0037】
最初に、本発明の好ましい一例を説明すると、1は筒状のケーシングで、このケーシング1は、この例では、分割構造であり、底部1aに膨出部2を備え、かつ壁面1bに複数の吸気口3を備えた筒形の第一ケーシング100と、第一ケーシング100に積層され、中心部に環状穴5と、また周辺部1cに小穴6を備えた仕切り板4を設けた筒形の第二ケーシング101と、この第二ケーシング101の内周面101aを環状帯部にカバーする上蓋102(第二ケーシング101の段部となる)と、この上蓋102に積層され、上部に収れん部位7を備え、この収れん部位7先端に開口8を備えた筒形の第三ケーシング103と、この第三ケーシング103の開口8に取付けられ、その一方端が第三ケーシング103の中間部に達し、その他方端が噴霧口9に第三ケーシング103より突出する噴霧筒10とで構成される。図中104は第一ケーシング100に設けた排水口ある。
【0038】
そして、この底部1a(膨出部2の周辺に形成された底部1a)の一方には、ポンプ12を配備し、その他方の底部1aの他方には吸水管13と電磁弁14を配備する。従って、このケーシング1は、第一ケーシング100〜第三ケーシング103を組付け構成することで、後述する各部品の設置を可能としつつ、組付け及び/又は修理の容易化を図り、また交換による利便性の確保等を意図する。そして、この第三ケーシング103に、収れん部位7を形成するとともに、この第三ケーシング103に、噴霧口9及び開口8を備えた噴霧筒10を設けることで、超微粒子と、細粒子を分別し、中心部に浮遊する超微粒子のみを、噴霧口9に導き、また細粒子は、壁面1bに導く構造とする。これにより、超微粒子のみを、噴霧口9を介して、装置外に拡散、放出できる特徴がある。
【0039】
また、前記膨出部2には、モータ15を設ける。この取付け方法を採用することで、例えば、モータ15を開放した状態で設置できる。またこの設置を介して、モータ15が周囲との温度差による結露や、多湿雰囲気において、暴露されることがなくなるため、モータ15及び/又は図示しないベアリングの寿命の飛躍的な向上が図れる。さらに、モータ15を、密閉型のケースに納める必要が無くなり、経費の削減と、組付け及び/又は修理の容易化が図れ、また交換による利便性の確保等が図れる特徴が考えられる。尚、16はフロートスイッチを示す。
【0040】
前記第二ケーシング101の仕切り板4の上方には、僅かな間隔をおいて、皿状(内側180a(軸芯部側)が凹み、端180bが競り上がる形状)の回転板18(霧化板)が設けられており、この回転板18の下面には、仕切り板4の上方に近接して、少なくとも四枚の翼片19(送風羽根)がクロス形状(十文字形状)に設けられている。そして、この回転板18は、仕切り板4の環状穴5に至っているモータ15の出力軸150に設けたボス部1500に固止されている。従って、この回転板18は、モータ15の回転により、同時かつ等速等で回転する構造となっている。この翼片19を介して、この回転板18及び/又は第二ケーシング101(ケーシング1)内に、旋回空気の流れを生成する。
【0041】
また20は環状のエリミネ―タで、このエリミネ―タ20は、回転板18の周辺に、数mm、望ましくは、略1〜2mmの近接した間隔をおいて設けられている。これにより、例えば、回転板18とエリミネータ20を極限まで(略1〜2mm)近付けることで、回転板18から分離された細粒子は最も速度が出ている状態で、かつ瞬時に、エリミネータ20の突条(後述する)に衝突させることで、非常に粒子径の小さい霧(超微粒子)が発生するとともに、イオンの発生を増大する特徴がある。尚、このエリミネ―タ20は、環状底板200と、環状底板200の周辺に立設した環状体201と、環状体201の本体201aに開設した多数の溝202(孔、隙間)と、各溝202に隣接し、かつ中心に向かって(環状体201の内側に向かってに開く)突出するように設けられた多数の突条203(フィン)とで構成する。図中204は本体200及び/又は環状体201の下面に設けた脚で、この例では仕切り板4の上に設けられる。この脚204は必要により設けられる。また脚204を省略し、上蓋102にエリミネ―タ20を吊下する構造もあり得る。尚、本体201aへの細粒子の衝突を介して、超微粒子の発生し、この超微粒子を、本体201aより上昇した、風とともに第三ケーシング103の噴霧口9に誘導することもできる。
【0042】
図中21は給水管で、この給水管21の基端2100は、前記ポンプ10に接続され、その自由端2101は、回転板18の表面180に近接して設けられている。そして、この給水管21は、回転板18等の動きを邪魔しない構造(例えば、第三ケーシング103の外側より配備される)となっていることは勿論である。この給水管21から吐出された水(給水)は、回転板18の表面180に給水される構造である。尚、回転板18の上に、図示しないが、遮蔽板を設けることもあり得る。
【0043】
そして、この一例の作用を、風と水及び/又は超微粒子の流れを、実験の結果を踏まえて説明する。
【0044】
最初に、風の流れを説明すると、図3に示すように、複数の吸気口3から導入された空気は、回転板18の内側180aに向う。この風は、この回転板18の翼片19の遠心力と、回転板18の下面及び/又はエリミネータ20の環状底板200に遮られて、この回転板18の外側20Aに向かった後、第二ケーシング101の内壁面101aに至り、かつ第二ケーシング101の内壁面101aを沿うように上昇する(旋回流となって上昇する)。その後、この風は、回転板18の誘導を介して、エリミネ―タ20下の隙間Sから抵抗無く溝202を介して(矢印「Y」)、噴霧筒10の下端の開口8に導かれた後、この噴霧口9より装置外に放出かつ拡散される(矢印「Y1」)。
【0045】
次に、水及び/又は超微粒子は、図4−1〜図4−3に示すように、このエリミネータ20の外側20Aより、内側20Bの方に多く存在する。従って、回転板18の表面180の略中心に、供給された水は、遠心力により、薄い膜状になりながら、この回転板18の表面180の端180bから外側20Aに飛び出し、エリミネータ20の内方20−1に向かって突出した突条203に衝突する。この内方20−1に向かって突出した突条203に、近接位置で、衝突することで、水は細かく粒子化(最も細かい粒子で超微粒子となる)されるとともに、この超微粒子は、エリミネータ20への衝突で撥ね返って、当該エリミネ―タ20の内側20Bに多く存在する。この内側20Bに存在する超微粒子は、風の流れに誘導されて、溝202を通過し外側20Aに至り、その後は、前述の風の流れ(矢印「Y」)から(矢印「Y1」)に沿って運ばれる。
【0046】
そして、この状況を、目視観察した結果で、次のように考えられる。即ち、衝突で微粒子化されるが、質量のある大きい粒子はエリミネータ20の外側20Aに向って飛び出し、質量の小さい微粒子(超微粒子)は外側20Aへ飛び出すことができず、(矢印「Y1」)で示した風の流れによりエリミネータ20の内側20Bへ導かれる。尚、前記衝突で、分別(比重及び/又は遠心分離)されて超微粒子以外の粒子(細粒子)が生成されるが、この細粒子は、噴霧筒10内には導かれず、第二ケーシング101の内壁面101aに至り、この内壁面101aから、回転板18の表面180に流下し、この回転板18の表面180の水に吸収される。
【0047】
尚、回転板18の表面180の水と、エリミネータ20との関係を説明すると、この回転板18の表面180の水は、その遠心力で、エリミネータ20の突条203に衝突し、超微粒子が発生するとともに、超微粒子のみが放出されることで、その拡散効果が大きくなる。この際、同時に、イオンの発生が増大する特徴がある。そして、このケーシング1内で発生した細粒子、又は回転板18の表面180の水は、この遠心力により、回転板18の外側(放射方向)に追いやることで(矢印「Z」)、第二ケーシング101の内壁に当り、第一ケーシング100に設けた小穴6より底部1a(タンク内)に戻される。
【0048】
そして、回転板18の表面180の水及び/又はエリミネータ20で生成される超微粒子・細粒子の流れを、図4−1〜図4−3を基に説明すると、回転板18から分離された粒子は、その表面180の端180bから分離された瞬間が最も速い状態なので、初速の状態でエリミネータ20の突条203に衝突させることができれば、超微粒子を多量に発生させることができる。従って、回転板18の表面180の端180bと、エリミネータ20の突条203との距離「X」は近いほど効率が良い。このような実験結果に鑑み、水の供給量によっては水膜の状態で繋がってしまうので、この距離「X」の維持と、この距離「X」と水の供給量のバランス、並びに回転板18の回転する(表面180の表面処理等)が重要と考えられる。そして、また、前記超微粒子の粒径、量と、効率化等のコントロールは、前述電磁弁14、ポンプ12及び/又は図示しない制御部を介して、自動化する。さらに、前述した如く、超微粒子化は、エリミネータ20の内側20Bに多く存在するので、風は従来のようにエリミネータ20内側20B→外側20Aではなく、外側20A→内側20B(矢印「Y」)から(矢印「Y1」)に導いたほうが、超微粒子を、多量で、かつ効率的に噴霧筒10の先端の開口8から噴霧口9に導くことが可能となる。
【0049】
尚、水の供給は、電磁弁14とフロートスイッチ16により水位が制御される。そして、ポンプ12からの吸込みはポンプ底部から行われるため、水位は必要最小限を保つことと、安全対策として排水口104が設けてある。また、必要最小限の水量は水の入れ替わりが頻繁になることで停滞することがなくなり、長時間使用しないときの雑菌やカビの繁殖を抑える。また、寒冷地での凍結による破損を防止と、凍結防止ヒータ等に使用することで、エネルギー量を抑える効果も考えられる。尚、ケーシング1内の抗菌(抗菌処理・抗菌塗料)を行なうこともあり得る。
【0050】
図中Aは、回転板18の表面180の近傍に生成される負圧領域を示しており、前述の如く、分別され、回転板18の外側で、エリミネータ20の外側20Aに存在する超微粒子を、風の流れとともに、回転板18の内側で、エリミネータ20の内側20B(回転板18の表面180側)に導くことと、また前述の如く、風を(矢印「Y」)から(矢印「Y1」)に沿って導く構造である。さらには、給水管21からの水を、この回転板18の周面方向(放射方向)の端180bに誘導すること等を意図する構造である。なお、この給水管21は、回転板18の表面180に水を噴霧するために、下方から上方に突設されているが、この構造は、回転板18に接触等しない位置に設けられる。
【0051】
続いて、図5−1〜図5−3は、本発明の基本的な原理を示した。そこで、超微粒子、細粒子と、風の旋回流、並びに遠心力との関係、また濡れの程度を検証すると、前述の如く、超微粒子は内側20Bであって、その中央付近に存在する。そして、ガラス等をかざしても、その表面が濡れることがない。その一方で、細粒子は外側20Aに存在する。さらにこの超微粒子の密度は、外側20Aほど濃く、中央付近ほど薄いことが、図5−2で理解できる。また、噴霧筒10及び噴霧口9に近い上部ほど濃く(超微粒子及び/又は細微粒子が混在する)、回転板18に近い中央下部付近ほど薄いことを説明するために、図5−3において矢印で示してある。以上のことから、ケーシング1内に、噴霧筒10を設置することが、超微粒子を、確実に噴霧口9へ導くことが可能となる。また大量の超微粒子を噴霧、かつ拡散できる特徴がある。
【0052】
尚、図6−1〜図6−3は、本発明の基本的な原理である図5−1〜図5−3を踏まえて、実験の結果を説明する図面である。この実験は、それぞれ略1時間の運転を行ない、噴霧量と粒子の状態を比較した。この図6−1は、エリミネータ20内側20Bの微粒子を全て噴霧口9へ誘導する方法で噴霧量は1、680ccであり、粒子径は大小が混在しており、明らかに粒子と確認できる大きさのものも噴霧されている。また図6−2は、図9−1の噴霧口9に噴霧筒10を嵌挿し、目的とする超微粒子のみを、取り出せるように加工した。その噴霧量は1、150cc、粒子径は目視で確認できる大きさの粒子は無く、肌(手のひら)での感触もドライな感じがした。即ち、超微粒子のみが、取り出されていることが確認できる。そして、図6−3は、矢印「Z」のようにケーシング1の内部の壁面側1dにドーナッツ状の濃い超微粒子が回転している様子が確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は一例を示した全体の断面図
【図2】図2は一例を示した全体の分解図
【図3】図3は一例を示した全体の超微粒子の流れを説明する要部の斜視図
【図4−1】図4−1は回転板とエリミネ―タとの関係を説明する要部の拡大平面図
【図4−2】図4−2は一例を示した回転板とエリミネ―タとの関係を説明しつつ、超微粒子の流れを説明する要部の拡大模式図
【図4−3】図4−3は図4−2の全体を示し、超微粒子の流れを説明する要部の斜視図
【図5−1】図5−1は一例を示した基本的な遠心噴霧加湿装置における大小径の粒子(風)の流れを、抽出して説明した模式図
【図5−2】図5−2は一例を示した基本的な遠心噴霧加湿装置における粒子の流れを、装置全体で説明した模式図
【図5−3】図5−3は一例を示した基本的な遠心噴霧加湿装置における粒子の流れを、装置全体で矢印を介して示した模式図
【図6−1】図6−1は一例を示した噴霧筒を設けない遠心噴霧加湿装置の噴霧量と粒子径との関係を説明した模式図
【図6−2】図6−2は一例を示した噴霧筒を設けた遠心噴霧加湿装置の噴霧量と粒子径との関係を説明した模式図
【図6−3】図6−3は一例を示した噴霧筒を設けた遠心噴霧加湿装置の超微粒子の流れを説明した模式図
【符号の説明】
【0054】
1 ケーシング
1a 底部
1b 壁面
1c 周辺部
1d 壁面側
100 第一ケーシング
101 第二ケーシング
101a 内壁面
102 上蓋
103 第三ケーシング
103a 内壁面
104 排水口
2 膨出部
3 吸気口
4 仕切り板
5 環状穴
6 小穴
7 収れん部位
8 開口
9 噴霧口
10 噴霧筒
12 ポンプ
13 給水管
14 電磁弁
15 モータ
150 出力軸
1500 ボス部
16 フロートスイッチ
18 回転板
180 表面
180a 内側
180b 端
19 翼片
20 エリミネ―タ
20−1 内方
20A 外側
20B 内側
200 環状底板
201 環状体
201a 本体
202 溝
203 突条
204 脚
21 給水管
2100 基端
2101 自由端
A 負圧領域
S 隙間
X 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大小径のケーシングと、この大小径のケーシング間に段部を設けた略筒状のケーシングは、その底部にモータ設置用の膨出部を、またこの膨出部の上方に設けた、中心部に環状穴と、その周辺部に小穴を備えた仕切り板を設ける構成とするとともに、その上部の収れん部位には、噴霧口を設ける構成とし、
またこのケーシングの膨出部に設けたモータの回転軸を、前記仕切り板の上方に延設して回転板を設け、この回転板の下面に設けた翼片は、前記仕切り板に間隔をおいて設置される構造とし、またこの回転板の周辺に間隔をおいて環状のエリミネ―タを設け、このエリミネ―タが、前記ケーシングの段部の下側に位置する構成とし、
前記回転板の表面に、給水管を配備する構成とし、
さらに前記ケーシングの壁面で、かつその仕切り板の下側に複数の吸気口を開設し、またこのケーシングの壁面で、かつ膨出部の下方にオーバーフロー用の排水口を開設する構成とした遠心噴霧加湿装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
前記噴霧口を構成する噴霧筒を、前記回転板の直上に配備する構成とした遠心噴霧加湿装置。
【請求項3】
請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
前記ケーシングの一方の底部に、ポンプを配備し、他方の底部に吸水管と電磁弁を配備する構成とした遠心噴霧加湿装置。
【請求項4】
請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
前記エリミネ―タは、平板状の本体と、この本体の周辺に立設した環状体と、この環状体に開設した多数の溝と、この各溝に隣接して設けられた多数の突条とでなる構成とした遠心噴霧加湿装置。
【請求項5】
請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
前記回転板の下面に設けた翼片は、中心部と、周辺部との間に設けられており、かつ平面視してクロス形状に配備する構成とした遠心噴霧加湿装置。
【請求項6】
請求項1に記載の遠心噴霧加湿装置であって、
前記ケーシングは、分割構造であり、その底部に膨出部を備え、かつその壁面に複数の吸気口を備えた第一ケーシングと、この第一ケーシングに積層され、その中心部に環状穴と、またその周辺部に小穴を備えた仕切り板を設けた第二ケーシングと、この第二ケーシングの内周面の一部をカバーする段部を構成する上蓋と、この上蓋の内面側より垂設し、かつ前記第二ケーシングに積層され、その上部に収れん部位を備えた第三ケーシングとで構成する遠心噴霧加湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【公開番号】特開2009−119357(P2009−119357A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295586(P2007−295586)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(391008294)フルタ電機株式会社 (176)
【Fターム(参考)】