説明

遠心圧縮機の高温再始動を制御する方法及び装置

【課題】ガスタービンの低速シャフトによって駆動される圧縮機の高温再始動を制御する方法、装置、及びシステムを提供する。
【解決手段】タービン110は、高速シャフト130と圧縮機120に接続された低速シャフト140とを有する。低速シャフトの速度がスローロール範囲内にあるベーススローロール速度が、所定時間の間高速シャフトにおいて維持される。その結果、圧縮機120の振動振幅が振動限界よりも大きいときには、維持段階が繰り返される。そうでない場合、低速シャフト140の現在速度が最小作動速度に達するまで、高速シャフト130の設定速度が増大される。設定速度が増大している間、振動振幅が振動限界よりも大きくなった場合には、維持段階が繰り返される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題の実施形態は、全体的に、ガスタービンの低速シャフトにより駆動される遠心圧縮機の高温再始動を制御するのに使用される方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス処理システムにおいて、ガスタービン10は遠心圧縮機20を駆動することが多い。突然のシャットダウンが発生したときには、遠心圧縮機20のシャフト(又はロータ)は、通常、非対称冷却(例えば、遠心圧縮機20の上側側部と下側側部とが異なる冷却速度を有する)に起因して熱湾曲を生じる。冷却プロセスを完了することが許容された場合、最終的には熱湾曲は消失する。しかしながら、熱湾曲が依然として存在している間に冷却の終了よりも早く遠心圧縮機20を再始動することが必要となる場合が多い。冷却完了前の遠心圧縮機20の再始動は、高温再始動と名付けられる。
【0003】
熱湾曲が依然として存在している間に遠心圧縮機20が再始動した場合、振動が発生する可能性がある。振動は通常、作動速度よりも低い速度で最大振幅を有する。強い振動により圧縮機20の摩擦及び恒久的損傷が生じる可能性がある。
【0004】
冷却の完了(圧縮機のサイズ及び幾何形状に応じて、数時間から数十時間持続する場合がある)を待機することなく熱湾曲を抑制する方法は、低速度で少しの間圧縮機20を稼働させることである。この方法はスローロール法として知られている。
【0005】
従来、スローロール法は、ターニングギア60を挿入することによって実施され、該ターニングギア60は、圧縮機20(図1に示す)又はギアボックス(存在する場合)に取り付けることができる。ターニングギア60を用いて、湾曲が抑制されるまで低速度で圧縮機20のシャフト50を回転させる。
【0006】
しかしながら、ターニングギアの付加によりシステムのコストが増大する。場合によっては、構造上の制約から、ターニングギアをシステムに取り付けることができない場合がある。加えて、ターニングギアは故障する可能性があり、従って、依然として湾曲している間に損傷速度で稼働させることによって、意図せずに圧縮機が損傷を受ける可能性がある。
【0007】
従って、前述の問題及び欠点を回避するシステム及び方法を提供することが望ましいことになる。
【発明の概要】
【0008】
1つの例示的な実施形態によれば、システムは、圧縮機、タービン、及びコントローラを含む。タービンは、高速シャフト及び低速シャフトを有し、該低速シャフトは圧縮機を駆動するよう構成される。コントローラは、圧縮機及びタービンに接続される。コントローラは、振動振幅が振動限界よりも小さいままである場合、低速シャフトの現在の速度がスローロール速度範囲内にある値に高速シャフトの速度を所定時間の間維持すること、次いで、低速シャフトの現在速度が最小作動速度を超えるまで高速シャフトの速度を増大させることを実施するよう構成される。
【0009】
1つの例示的な実施形態によれば、高速シャフト及び低速シャフトを有するタービンによって駆動され且つ低速シャフトが接続された圧縮機の高温再始動を制御する方法が提供される。本方法は、低速シャフトの現在速度がスローロール範囲内にある高速シャフトのベース速度を所定時間の間維持する段階を含む。本方法は更に、圧縮機の振動の振動振幅を振動限界と比較し、振動振幅が振動限界よりも大きいときには維持段階を繰り返す段階を含む。本方法はまた、振動振幅が振動限界よりも小さいままである場合、低速シャフトの現在速度が最小作動速度を超えるまで高速シャフトの設定速度を増大させる段階を含む。増大中に振動の振幅が振動限界よりも大きくなったときには、維持段階を繰り返す。
【0010】
別の例示的な実施形態によれば、高速シャフト及び低速シャフトを有するタービンによって駆動され且つ低速シャフトが接続された圧縮機の高温再始動を制御するよう構成されたコントローラが提供される。コントローラは、インタフェース及び処理ユニットを含む。インタフェースは、低速シャフトの現在速度及び圧縮機の振動の振動振幅に関する情報を受け取り、高速シャフトの速度の設定に関連するコマンドを送信するよう構成される。処理ユニットは、インタフェースに接続され、情報に基づいてコマンドを生成するよう構成される。コマンドは、高速シャフトのベーススローロール速度を所定時間の間維持するための第1のコマンドシーケンスと、低速シャフトの現在速度が最小作動速度を超えるまで高速シャフトの設定速度を増大させるための第2のコマンドシーケンスとを含む。高速シャフトがベーススローロール速度を有するときに、低速シャフトの速度はスローロール範囲内にある。処理ユニットは、情報に従って振動振幅が振動限界よりも大きいときに第1のコマンドシーケンスをインタフェースに送信することを繰り返すよう構成される。
【0011】
本明細書に組み込まれ且つその一部を構成する添付図面は、1つ又はそれ以上の実施形態を例証しており、本明細書と共にこれらの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来のガス処理システムの概略図。
【図2】1つの実施形態によるガス処理システムの概略図。
【図3】1つの実施形態による、遠心圧縮機の高温再始動を制御する方法のフロー図。
【図4】1つの実施形態による、遠心圧縮機の高温再始動を制御する方法のフロー図。
【図5】1つの実施形態による、遠心圧縮機の高温再始動を制御する方法のフロー図。
【図6】1つの実施形態による、コントローラの概略図。
【図7】1つの実施形態による、遠心圧縮機の高温再始動を制御する方法のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、本発明の特定の実施形態を示す添付図面を参照する。異なる図面における同じ参照符号は、同じ又は類似の要素を示している。以下の詳細な説明は本発明を限定するものではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ定義される。以下の実施形態では、簡単にするために、ガスタービンが遠心圧縮機を駆動するガス処理システムの用語及び構造について検討される。しかしながら、ここで検討されることになる実施形態は、これらのシステムに限定されず、軸流圧縮機又は他のタービンが使用される他のシステムにも適用することができる。
【0014】
本明細書を通して「一実施形態」又は「実施形態」として言及することは、実施形態に関連して説明される具体的な特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体を通じて様々な箇所で表現「1つの実施形態では」又は「ある実施形態では」が出現するが、必ずしも同じ実施形態について言及している訳ではない。更に、具体的な特徴、構造、又は特性は、1つ又はそれ以上の実施形態においてあらゆる好適な様態で組み合わせてもよい。
【0015】
図2は、1つの実施形態によるガス処理システム100の概略図である。ガス処理システム100は、遠心圧縮機120を駆動するガスタービン110を含む。ガスタービン110は、高速シャフト130及び低速シャフト140を有する。低速シャフト140は、遠心圧縮機120のシャフト150に接続される。ギアボックスは、ガスタービン低速シャフトと圧縮機との間に存在することができる。低速シャフト140は、ギアボックスが存在するか否かに応じて、遠心圧縮機120のシャフト150と同じ速度を有する場合がある。
【0016】
高速シャフト130の速度は、コントローラ160により制御される。低速シャフト140の速度は、高速シャフト130の速度に関連している。高速シャフト130の速度が増大すると、低速シャフト140の速度も増大する。しかしながら、高速シャフト130の速度と低速シャフト140の速度との間の関係は複雑であり、とりわけ遠心圧縮機120による負荷に依存する。
【0017】
コントローラ160は、高速シャフト130の速度(HSSS)を設定し、例えば、センサ170から低速シャフト140の現在速度(LSSS)に関する情報を受け取ることができる。コントローラ160はまた、例えば、振動センサ180から圧縮機120の振動を特徴付ける振動振幅(VA)に関する情報を受け取ることができる。
【0018】
遠心圧縮機120の高温再始動中に、コントローラ160は、第1の速度値(SV1)と第2の速度値(SV2)との間の速度範囲で高速シャフト130の速度を設定することができる。例えば、第1の速度値は約6000rpmとすることができ、第2の速度値は約7100rpmとすることができる。
【0019】
スローロール中の低速シャフトの速度は、低スローロール速度値(LLL)と高スローロール速度値(HHH)との間のスローロール速度範囲にあるのが好ましい。例えば、LLLは約2000rpmとすることができ、HHHは約3000rpmとすることができる。これらの値はシステム100のサイズに応じて変わる可能性がある点は当業者には理解されるであろう。スローロール速度範囲は、遠心圧縮機が最大振動を有する速度値を下回る速度値を含む。例えば、遠心圧縮機が最大振動を有する速度値が、最大作動速度の30〜40%である場合、スローロール速度範囲は、最大作動速度の20〜30%の間である。
【0020】
高速シャフト130の速度が設定されると、コントローラ160は、低速シャフト140の現在速度に関する情報を受け取ることができる。コントローラは、低速シャフト140の現在速度がある範囲内(すなわち、低スローロール速度値LLLよりも大きく、高スローロール速度値HHHよりも小さい)になるまで高速シャフト130の速度を調整することができる。
【0021】
コントローラ160は、スローロールカウンター190を含むことができる。コントローラ160はまた、タイマー195を含むことができる。しかしながら、スローロールカウンター及びタイマーは、コントローラ160と通信する、ガス処理システムの別個の構成要素とすることができる。
【0022】
図3、4、及び5は、1つの実施形態による、遠心圧縮機(例えば、図2の120)の高温再始動を制御する方法200のフロー図を示す。本方法は、図2に示すガス処理システム100において実施することができる。
【0023】
図3のS210において、高速シャフト(例えば、図2の130)の速度(HSSS)が第1の速度値(SV1)に設定される。S220において、スローロールカウンター(例えば、図2の190)は1に設定される。S230において、低速シャフト(例えば、図2の140)の速度(LSSS)の現在値が高スローロール速度値(HHH)と比較される。
【0024】
低速シャフトの速度(LSSS)の現在値が高スローロール速度値(HHH)よりも大きいことを、S230における比較が示す場合(すなわち、S230からの分岐が「はい」である)には、S240において緊急シャットダウン手順が実施され、圧縮機を含むシステムの稼働を停止させる。
【0025】
低速シャフトの速度(LSSS)の現在値が高スローロール速度値(HHH)よりも小さいことを、S230における比較が示す場合(すなわち、S230からの分岐が「いいえ」である)には、S250において、低速シャフトの速度(LSSS)の現在値が低スローロール速度値(LLL)と比較される。
【0026】
低速シャフトの速度(LSSS)の現在値が低スローロール速度値(LLL)よりも大きいことを、S250における比較が示す場合(すなわち、S250からの分岐が「いいえ」である)には、S260において、高速シャフトの速度(HSSS)がベースHSS速度として保存される。図4に示すステップ300は、ステップS260の後に続く。
【0027】
低速シャフトの速度(LSSS)の現在値が低スローロール速度値(LLL)よりも小さいことを、S250における比較が示す場合(すなわち、S250からの分岐が「はい」である)には、S280において、高速シャフトの速度(HSSS)が第2の速度値(SV2)と比較される。
【0028】
高速シャフトの速度(HSSS)が第2の速度値(SV2)よりも大きいことを、S280における比較が示す場合(すなわち、S280からの分岐が「いいえ」である)には、S270において緊急シャットダウン手順が実施される。
【0029】
高速シャフトの速度(HSSS)が第2の速度値(SV2)よりも小さいことを、S280における比較が示す場合(すなわち、S280からの分岐が「はい」である)には、S290において、高速シャフトの速度(HSSS)を増大させる。高速シャフトの速度(HSSS)の増大率は、所定値(例えば10rpm/s)に限定することができる。ステップS290の後に、ステップS230及びS230の後に続くそれぞれのステップが再度実施される。HSS速度は連続して増大し、S230、S250、及びS280における比較も連続して実施される。S230又はS280で実施される比較がESD手順の起動をもたらす場合、或いは、HSS速度をベースHSSS値として保管するS260が実施されることになることを、S250における比較が示す場合には、HSSの増大が終了する。
【0030】
図4において、S300では、スローロールカウンターが、予め定められた数である最大繰り返し数(MAXREP)と比較される。例えば、最大繰り返し数は6とすることができる。
【0031】
スローロールカウンターが最大繰り返し数よりも大きいことを、S300における比較が示す場合(すなわち、S300からの分岐が「はい」である)には、S305において、緊急シャットダウン手順が実施される。
【0032】
スローロールカウンターが最大繰り返し数よりも小さいことを、S300での比較が示す場合(すなわち、S300からの分岐が「いいえ」である)、S310において、タイマー(例えば、図2の195)がスローロール持続値(SRD)、例えば5分に設定される。
【0033】
S320において、経過時間(例えば、図2のタイマー195により測定した)がスローロール持続値と等しいか又は大きくなったことを示すまで、該経過時間をスローロール持続値と比較する。換言すると、高速シャフトがベースHSS速度(第1の速度値と第2の速度値の間にある)を有するステータス、及び低速シャフトがスローロール速度範囲(LLLとHHHの間)の速度を有するステータスが、スローロール持続時間の間維持される。
【0034】
S330において、振動振幅(例えば、振動センサ180により測定される)が所定の振動限界(VL)と比較される。振動限界は、例えば50μmとすることができる。
【0035】
振動振幅が所定振動限界よりも大きいことを、S330における比較が示す場合(すなわち、S330からの分岐が「はい」である)には、S340において、スローロールカウンターが増大される。次いで、ステップS300並びにS300の後に続くそれぞれのステップが再度実施される。
【0036】
振動振幅が所定振動限界よりも小さいことを、S330における比較が示す場合(すなわち、S330からの分岐が「いいえ」である)には、高速シャフトの速度が増大する(図5の)ステップS350が実施される。高速シャフトの速度(HSSS)の増大により、低速シャフトの速度(LSSS)の増大が決定付けられ、遠心圧縮機は最小作動速度に向かう。
【0037】
速度が増大する間、S360において振動振幅が所定振動限界と比較される。振動振幅が振動限界よりも大きくなったことを、S360における比較が示す場合(すなわち、S360からの分岐が「はい」である)には、S370において、高速シャフトの速度(HSSS)がベースHSS速度(S260で保存されている)に設定され、ステップS340(図4)並びにS340の後に続くステップが実施される。
【0038】
振動振幅が依然として振動限界よりも小さいことを、S360における比較が示す場合(すなわち、S360からの分岐が「いいえ」である)には、S380において、低速シャフトの現在速度(LSSS)が最小作動速度(MOS)と比較される。最小作動速度は、最大作動速度の約70%とすることができる。
【0039】
低速シャフトの現在速度(LSSS)が最小作動速度よりも大きくなったことを、S380における比較が示す場合(すなわち、S380からの分岐が「はい」である)には、圧縮機の高温再始動が成功裏に完了している(すなわち、湾曲が消失し、振動が正常範囲内にあり、振動限界よりも低い)。
【0040】
低速シャフトの現在速度(LSSS)が最小作動速度よりも小さいことを、S380における比較が示す場合(すなわち、S380からの分岐が「いいえ」である)には、S360及びS380が再度実施される。HSSS増大がMOSを超えるLSSSをもたらすまで、S360及びS380における比較は連続して実施される。S360における比較によりS370の実行が起動された場合、又はLSS速度がMOSを超えたことをS380における比較が示した場合、HSSの増大が終了する。
【0041】
図6は、高速シャフトと遠心圧縮機に接続された低速シャフトとを有するガスタービンにより駆動される遠心圧縮機の高温再始動を制御するよう構成されたコントローラ400の概略図である。コントローラ400は、ガスタービン(例えば、図2の110)及び遠心圧縮機(例えば、図2の120)と通信することができる。以下で説明するコントローラ400の構成要素全ては、ソフトウェア、回路、又はこれらの組み合わせとして実施することができる。
【0042】
コントローラ400は、インタフェース420を含み、該インタフェースは、低速シャフトの現在速度及び遠心圧縮機の振動の振動振幅に関する情報を受け取り、高速シャフトの速度の設定に関連するコマンドを送信するよう構成することができる。
【0043】
コントローラ400は、インタフェース420に接続された処理ユニット440を含み、情報に基づいてコマンドを生成するよう構成することができる。処理ユニット440により生成されるコマンドは、所定時間の間高速シャフトのベーススローロール速度を維持する第1のコマンドシーケンスを含むことができる。高速シャフトがベーススローロール速度を有するときに、低速シャフトの速度はスローロール範囲内にある。
【0044】
処理ユニット440により生成されるコマンドはまた、低速シャフトの速度が最小作動速度を超えるまで高速シャフトの設定速度を増大させるよう第2のコマンドシーケンスを含むことができる。
【0045】
情報に基づいて、(i)第1のコマンドシーケンスを実施した後、又は(ii)第2のコマンドシーケンスを実施している間、振動振幅が振動限界よりも大きい場合には、処理ユニット440は、インタフェース420に第1のコマンドシーケンスを繰り返し送信することができる。
【0046】
処理ユニット440によって生成されるコマンドは更に、高速シャフトのベーススローロール速度を求めるコマンドシーケンスを含むことができる。
【0047】
コントローラ400は更に、ベーススローロール速度の値が所定速度範囲内にないことを処理ユニット440が示したときに、緊急シャットダウン手順を開始するため、処理ユニット440に接続された緊急シャットダウンユニット(ESU)460を含むことができる。
【0048】
コントローラ400はまた、処理ユニットに接続され、処理ユニットが第1のコマンドシーケンスを送信した回数をカウントするよう構成されたスローロールカウンター(SLC)480を含むことができる。この回数が予め定められた反復回数を超えた場合、処理ユニットは、シャットダウン手順を開始することができる。
【0049】
コントローラ400は更に、処理ユニットに接続され、所定時間が経過したときに表示するよう構成されたタイマー500を含むことができる。
【0050】
コントローラ400はまた、処理ユニットに接続され、スローロールパラメータの1つ又はそれ以上を保存するよう構成されたメモリー520を含むことができる。スローロールパラメータは、スローロール速度、スローロール範囲、所定時間、最小作動速度、予め定められた繰り返し数、及び振動限界を含む。
【0051】
インタフェース420は更に、スローロールパラメータの1つ又はそれ以上の値に関連する入力を受け取るよう構成することができる。
【0052】
別の実施形態によれば、図7は、高速シャフト(例えば、図2の130)と遠心圧縮機に接続された低速シャフト(例えば、図2の140)とを有するガスタービン(例えば、図2の110)により駆動される遠心圧縮機(例えば、図2の120)の高温再始動を制御する方法の概略図を示す。
【0053】
S600において、HSS速度がベース速度に到達させる。S610において、本方法は、所定時間の間高速シャフトのベース速度を維持する段階を含む。
【0054】
S620において、本方法は、遠心圧縮機(CC)の振動を特徴付ける振動振幅が振動限界よりも大きいか否かを判定する段階を含む。振動振幅が振動限界よりも大きい場合(S620からの分岐が「はい」である)、S630において、ステップS610を再度実施する。
【0055】
振動振幅が振動限界よりも大きくない場合(S620からの分岐が「いいえ」である)には、S630において、高速シャフトの速度HSSが増大する。振動振幅が振動限界よりも大きくなった場合(S640からの分岐が「はい」である)には、ステップS610及びS610の後に続くステップを再度実施する。
【0056】
振動振幅が依然として振動限界よりも小さい場合(S640からの分岐が「いいえ」である)、S650において、低速シャフトの現在速度を最小差動速度(MOS)と比較する。
【0057】
低速シャフトが最小作動速度を超えないことを、S650における比較が示す場合(S650からの分岐が「はい」である)には、ステップS630及びステップS630の次に続くステップを再度実施する。
【0058】
1つの実施形態によれば、本方法はまた、高速シャフトのベーススローロール速度を決定する段階を含む。決定工程は、(i)高速シャフトの速度を第1の速度値に設定する段階、(ii)高速シャフトの速度が第1の速度値を有するときに、低速シャフトの速度がスローロール範囲の上限よりも大きい場合に緊急シャットダウンを実施する段階、(iii)第2の速度値まで、又はスローロール速度が決定されるまで高速シャフトの速度を増大させる段階、及び(iv)高速シャフトの速度が第2の速度値を有するときに、低速シャフトの速度がスローロール範囲の下限を下回る場合に緊急シャットダウンを実施する段階を含むことができる。
【0059】
1つの実施形態によれば、S630における高速シャフトの速度の増大は、予め定められた割合で実施することができる。
【0060】
別の実施形態によれば、本方法は更に、S610を実施する回数をカウントする段階を含むことができる。別の実施形態において、カウント段階に加えて、本法は更に、この回数が予め定められた繰り返し数を超えた場合に緊急シャットダウンを実施する段階を含むことができる。
【0061】
別の実施形態によれば、本法はまた、高速シャフトのベース速度を決定する段階を含むことができる。
【0062】
別の実施形態によれば、本方法はまた、振動限界、スローロール速度範囲、最小作動速度、予め定められた回数、及び所定時間を含む、スローロールパラメータの1つ又はそれ以上を入力する段階を含むことができる。
【0063】
上述の方法と類似した方法は、複数段を有するガス処理システムの高温再始動に用いることができる。
【0064】
開示された例示的な実施形態は、遠心圧縮機の高温再始動を制御するための方法及び装置を提供する。本明細書は本発明を限定するものではない点を理解されたい。逆に、例示的な実施形態は、添付の請求項によって定義される本発明の技術的思想及び範囲に含まれる、代替形態、修正形態、及び均等形態を保護するものとする。更に、例示的な実施形態の詳細な説明において、請求項に記載された本発明を包括的に理解するために多数の具体的な詳細事項が記載されている。しかしながら、種々の実施形態はこのような具体的な詳細事項がなくとも実施できる点は当業者であれば理解されるであろう。
【0065】
本発明の例示的な実施形態の特徴及び要素は、特定の組み合わせで実施形態において説明したが、各特徴又は要素は、実施形態の他の特徴及び要素を伴わず単独で、或いは本明細書で開示される他の特徴及び要素の有無に関わりなく種々の組み合わせで用いることができる。
【0066】
本明細書は、開示される主題の実施例を用いて、あらゆる当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること及びあらゆる包含の方法を実施することを含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の文言と差違のない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を含む場合には、本発明の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0067】
100 ガス処理システム
110 ガスタービン
120 遠心圧縮機
130 高速シャフト
140 低速シャフト
150 シャフト
160 コントローラ
170 センサ
180 振動センサ
190 スローロールカウンター
195 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス処理システム(100)において、
圧縮機(120)と、
高速シャフト(130)と、前記圧縮機(120)を駆動するよう構成された低速シャフト(140)とを有するタービン(110)と、
前記圧縮機(120)及び前記タービン(110)に接続され、前記高速シャフト(130)の速度を制御し且つ前記低速シャフト(140)の現在の速度及び前記圧縮機(120)の振動振幅を受け取るよう構成されたコントローラ(160)と、
を備え、
前記コントローラ(160)は、前記振動振幅が振動限界よりも小さいままである場合、前記低速シャフト(140)の現在の速度がスローロール速度範囲内にある値に前記高速シャフト(130)の速度を所定時間の間維持すること、次いで、前記低速シャフト(140)の現在速度が最小作動速度を超えるまで前記高速シャフト(130)の速度を増大させることを実施するよう構成される、
ガス処理システム(100)。
【請求項2】
前記コントローラに接続され、スローロール速度範囲、所定時間、及び振動限界を含むスローロールパラメータの何れか1つをオペレータが設定可能であるように構成されたオペレータインタフェースを更に備える、請求項1に記載のガス処理システム(100)。
【請求項3】
前記コントローラに接続され、前記高速シャフトの速度値が所定速度範囲内にないことを前記コントローラが示したときにシャットダウン手順を実施するよう構成された緊急シャットダウンユニットを更に備える、請求項1に記載のガス処理システム(100)。
【請求項4】
前記コントローラに接続され、前記コントローラが所定時間の間前記高速シャフトの速度を前記値に維持するのを実施する回数をカウントするよう構成されたスローロールカウンターを更に備え、
前記コントローラは、前記振動振幅が振動限界を超えたときに所定時間の間前記高速シャフトの速度を前記値に維持することを繰り返す、請求項1に記載のガス処理システム(100)。
【請求項5】
前記タービンの低速シャフトと前記圧縮機との間に位置付けられるギアボックスと、前記低速シャフトの現在の速度を測定するよう構成された速度センサと、前記圧縮機の振動の振動振幅を測定するよう構成された振動センサと、前記低速シャフトのスローロール速度がスローロール速度範囲内にある値に前記高速シャフトの速度を前記コントローラが維持する時間を測定するよう構成されたタイマーと、のうちの少なくとも1つを更に備え、
前記速度センサ、前記振動センサ、及び前記タイマーのうちの少なくとも1つが前記コントローラに接続される、請求項1に記載のガス処理システム(100)。
【請求項6】
高速シャフト(130)及び低速シャフト(140)を有するタービン(110)によって駆動され且つ前記低速シャフトが接続された圧縮機(120)の高温再始動を制御する方法であって、
前記低速シャフト(140)の速度がスローロール範囲内にある前記高速シャフト(130)のベース速度を所定時間の間維持する段階(S600)と、
前記圧縮機(120)の振動の振動振幅を振動限界と比較(S620)し、前記振動振幅が前記振動限界よりも大きいときには前記維持段階(S600)を繰り返す段階と、
前記振動振幅が前記振動限界よりも小さいままである場合、前記低速シャフト(140)の現在速度が最小作動速度を超える(S660)まで前記高速シャフト(130)の設定速度を増大させる段階(S640)と、
を含み、前記増大中に前記振動の振幅が前記振動限界よりも大きくなったときには、前記維持段階(S600)を繰り返すようにする、方法。
【請求項7】
振動限界、スローロール速度範囲、最小作動速度、及び所定時間を含むスローロールパラメータのセットの1つ又はそれ以上を入力する段階を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
高速シャフトの速度を第1の速度値に設定すること、前記低速シャフトの速度が前記スローロール範囲の上限よりも大きいときに緊急シャットダウンを実施すること、前記高速シャフトの速度を第2の速度値まで又は前記ベーススロー速度が決定されるまで増大させること、及び前記高速シャフトの速度が第2の速度値を有する間前記スローロール範囲の下限未満になったときに、緊急シャットダウンを実施することによって、前記スローロール速度を決定し保存する段階を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記高速シャフトの速度の増大が予め定められた割合で実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記維持を実施する回数をカウントする段階と、
前記回数が予め定められた繰り返し数を超えたときに緊急シャットダウンを実施する段階と、
更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
高速シャフト(130)及び低速シャフト(140)を有するタービン(110)によって駆動され且つ前記低速シャフトが接続された圧縮機(120)の高温再始動を制御するよう構成されたコントローラ(400)であって、
前記低速シャフト(140)の現在速度及び前記圧縮機(120)の振動の振動振幅に関する情報を受け取り、前記高速シャフト(130)の速度の設定に関連するコマンドを送信するよう構成されたインタフェース(420)と、
前記インタフェース(420)に接続され、前記情報に基づいて前記コマンドを生成するよう構成された処理ユニット(440)と、
を備え、
前記コマンドが、前記高速シャフト(130)のベーススローロール速度を所定時間の間維持するための第1のコマンドシーケンス(S310、S320)と、前記低速シャフト(130)の現在速度が最小作動速度を超えるまで前記高速シャフト(130)の設定速度を増大させるための第2のコマンドシーケンス(S350、S360、S380)とを含み、
前記高速シャフト(130)がベーススローロール速度を有するときに前記低速シャフト(130)の速度がスローロール範囲内にあり、
前記処理ユニット(440)は、前記情報に従って前記振動振幅が振動限界よりも大きいときに前記第1のコマンドシーケンスを前記インタフェース(420)に送信することを繰り返すよう構成される、
コントローラ(400)。
【請求項12】
前記処理ユニットが更に、前記高速シャフトのスローロール速度を決定する第3のコマンドシーケンスを生成するよう構成される、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項13】
前記インタフェースが更に、スローロール範囲、所定時間、最小作動速度、及び振動限界を含むスローロールパラメータの少なくとも1つに関連する入力を受け取るよう構成される、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項14】
前記処理ユニットに接続され、前記第3のコマンドシーケンス実行時に高速シャフトのスローロール速度が所定速度範囲内にないことを前記処理ユニットが示した場合に、緊急シャットダウン手順を開始する緊急シャットダウンユニットを更に備える、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項15】
前記処理ユニットに接続され且つ該処理ユニットが前記第1のコマンドシーケンスを送信した回数をカウントするよう構成され、前記回数が予め定められた反復回数を超えた場合に前記処理ユニットがシャットダウン手順を開始するスローロールカウンターと、前記処理ユニットに接続され、前記所定時間が経過したことを表示するよう構成されたタイマーと、のうちの少なくとも1つを更に備える、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項16】
前記処理ユニットに接続され、スローロール速度、スローロール範囲、所定時間、最小作動速度、及び振動限界を含むスローロールパラメータの何れか1つを保存するよう構成されたメモリーを更に備える、請求項11に記載のコントローラ。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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