説明

遠心機

【課題】材料の温度を調整することが可能な遠心機を提供する。
【解決手段】遠心機1は、容器100を公転させながら自転させることによって、容器に収納された収納物Mに遠心力を作用させる自転公転式の遠心機であって、回転軸線(回転軸線L1)を中心に回転可能に構成された回転体30と、回転体の回転軸線から所定の間隔をあけた位置に、回転体に対して回転可能に取り付けられている、容器を保持する容器ホルダ40と、回転体が回転する領域を含む空間を区画する区画体20と、区画体の内面から回転体が回転する領域に向かって突出する、一又は複数の凸状体50と、区画体の温度を調整する温調機80と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料に遠心力を作用させる遠心機、特に、材料を収納した容器を公転させながら自転させることによって、材料に遠心力を作用させる遠心機に関する。
【背景技術】
【0002】
材料を収納した容器を公転させながら自転させることによって、材料に遠心力を作用させる遠心機(自転公転式の遠心機)が知られている。この遠心機は、例えば特許文献1にあるように、材料の撹拌処理と脱泡処理とを同時に行う、撹拌脱泡装置として利用されることがあった。あるいはこの遠心機は、材料を粉砕するボールミル(特許文献2参照)や、材料を乳化する乳化装置(特許文献3参照)として利用されることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4084493号公報
【特許文献2】特開2002-143706号公報
【特許文献3】特開2010-194470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、材料の高機能化に伴って、材料の温度管理の要請が高まっている。自転公転式の遠心機においても、材料の温度を管理することができれば、より適した条件で材料の処理を行うことが可能になる。
【0005】
本発明の一つの態様は、材料の温度を調整することが可能な遠心機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一つの実施態様は、
容器を公転させながら自転させることによって、前記容器に収納された収納物に遠心力を作用させる自転公転式の遠心機であって、
所定の回転軸線を中心に回転可能に構成された回転体と、
前記回転体の前記回転軸線から所定の間隔をあけた位置に、前記回転体に対して回転可能に取り付けられている、前記容器を保持する容器ホルダと、
前記回転体が回転する領域を含む空間を区画する区画体と、
前記区画体の内面から前記領域に向かって突出する、一又は複数の凸状体と、
前記区画体の温度を調整する温調機と、
を有する遠心機を提供する。
【0007】
この実施態様によると、温度を調整しながら、容器に収納された収納物に遠心力を作用させる処理を行うことが可能な遠心機を提供することができる。
【0008】
(2)この遠心機において、
前記回転体は、その回転方向に向かって前記空間内の空気を押圧する押圧部を有してもよい。
【0009】
(3)この遠心機において、
前記凸状体は、前記回転軸線を中心とする円周と交差するように延びる形状となっていてもよい。
【0010】
(4)この遠心機において、
前記凸状体は、前記空間の外周近傍に配置されてもよい。
【0011】
(5)この遠心機において、
前記凸状体は、前記領域に近接していてもよい。
【0012】
(6)この遠心機において、
前記容器ホルダの側面には貫通穴が形成されていてもよい。
【0013】
(7)この遠心機において、
前記容器ホルダは、前記容器の底面が前記容器ホルダの内底面と間隔をあけて配置されるように前記容器を支持する、容器支持部を有し、
前記容器ホルダの前記貫通穴は、前記容器の前記底面と前記容器ホルダの内底面との間の空間を露出させるように構成されていてもよい。
【0014】
(8)この遠心機において、
前記容器支持部は、前記容器ホルダの上端であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態に係る遠心機について説明するための図。
【図2】本実施の形態に係る遠心機について説明するための図。
【図3】本実施の形態に係る遠心機について説明するための図。
【図4】本実施の形態に係る遠心機について説明するための図。
【図5】本実施の形態に適用可能な容器について説明するための図。
【図6】本実施の形態に適用可能な容器について説明するための図。
【図7】本実施の形態に係る収納物の処理方法を説明するための図。
【図8】本実施の形態に係る収納物の処理状態を説明するための図。
【図9】本実施の形態の作用効果を説明するための図。
【図10】本実施の形態の作用効果を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。すなわち、以下の実施の形態で説明するすべての構成が本発明にとって必須であるとは限らない。また、本発明は、以下の内容を自由に組み合わせたものを含む。
【0017】
(1)遠心機1の構成
以下、本実施の形態に係る遠心機1の構成について、図1〜図4を参照して説明する。なお、遠心機1は、容器100を公転させながら自転させることによって、容器100に収納された収納物M(材料)に遠心力を作用させる装置であって、例えば収納物Mを、撹拌・脱泡、粉砕、乳化する装置として実現される。
【0018】
(a)筐体10
遠心機1は、図1に示すように、筐体10を有する。筐体10は遠心機1の外形を形作る部材であって、その内部に、後述する種々の機構が収納される。筐体10は、第1の支持基板12及び第2の支持基板14を有する。第1の支持基板12は、後述する区画体20を支持する役割を果たす。また、第1の支持基板12には、後述する回転体30の回転軸32を保持するための保持部材16が固定されている。そして、第2の支持基板14は、第1の支持基板12及びモータ62(詳細は後述)を支持する役割を果たす。なお、本実施の形態では、第1の支持基板12は、支持体13を介して、第2の支持基板14に支持されている。また、第2の支持基板14は、支持体15を介して、筐体10(その底面)に支持されている。
【0019】
(b)区画体20
遠心機1は、図1に示すように、区画体20を有する。区画体20は、回転体30が回転する領域を含む空間を区画する部材である。区画体20は、開閉可能に構成された蓋22を有し、蓋22をあけると容器ホルダ40が露出して、容器ホルダ40に容器100を着脱することが可能になる。なお、区画体20は、後述する温調機によって温度が調整される。そのため、熱伝導率の高い材料で構成することが好ましい。
【0020】
(c)回転体30
遠心機1は、図1に示すように、回転体30を有する。回転体30は、回転軸線L1を中心に、筐体10(第1及び第2の支持基板12,14)に対して回転可能に構成されている。具体的には、遠心機1では、回転体30には回転軸32が固定されており、回転軸32がベアリングを介して保持部材16に保持されている。これにより、回転体30を、筐体10に対して回転可能とすることができる。
【0021】
回転体30は、図2及び図3に示すように、回転体30の回転方向に向かって区画体20内の空気を押圧する押圧部35を有する。本実施の形態では、回転体30は、図2及び図3に示すように、回転軸線L1及び自転軸線L2(後述)を含む仮想平面(あるいは、自転軸線L2を含み、回転軸線L1と平行に延びる仮想平面)と平行に延びる板状部材34を有する。そして、この板状部材34のうち、回転体30の回転方向を向く面によって、押圧部35が実現されている。すなわち、図3において、回転体30の回転方向は時計方向となる。本実施の形態では、押圧部35は、後述する容器ホルダ40の直前に配置される。
【0022】
回転体30には、図1に示すように、錘体37及び調整錘38が取り付けられている。錘体37の重量、及び、調整錘38の位置を調整することにより、回転体30を安定して回転させることが可能になる。
【0023】
(d)容器ホルダ40
遠心機1は、図1〜図3に示すように、容器ホルダ40を含む。容器ホルダ40は、後述する容器100を保持する役割を果たす。容器ホルダ40は、回転体30の、回転軸線L1から所定間隔離れた位置に取り付けられている。これにより、容器ホルダ40は、回転体30の回転に伴って、回転軸線L1を中心に公転することとなる。
【0024】
容器ホルダ40は、回転体30に対して自転(回転)可能に取り付けられている。具体的には、遠心機1では、図1に示すように、容器ホルダ40は、ベアリングを介して回転体30に保持された構成となっている。これにより、容器ホルダ40が、回転体30に対して自転可能となる。
【0025】
なお、本実施の形態では、容器ホルダ40は、その自転軸線L2が、回転軸線L1(公転軸線)と斜めに交差するように構成されている。具体的には、遠心機1は、自転軸線L2が回転軸線L1と45度の角度で交差するように構成されている。ただし、回転軸線L1と自転軸線L2との交差角は45度に限定されるものではなく、収納物Mの性質に合わせて適宜設定することができる。
【0026】
容器ホルダ40は、容器支持部44を有する。容器支持部44は、容器100を支持する役割を果たす。本実施の形態では、容器支持部44は、容器ホルダ40の上端によって実現されている(図6(A)及び図8参照)。なお、本実施の形態では、容器支持部44は、容器100の底面が容器ホルダ40の内底面と間隔をあけて配置されるように、容器100を支持する(図8参照)。言い換えると、容器ホルダ40は、上端(容器支持部44)から内底面までの距離が、容器100の凸部130(凸部130の下面)から容器100の底面までの距離よりも長くなるように構成されていると言える。
【0027】
本実施の形態では、図1〜図3に示すように、容器ホルダ40は、3個の凸部46が取り付けられた構成となっている。凸部46によって、容器ホルダ40の内部で容器100が空回りすることを防止することができる。ただし、容器ホルダ40は、凸部46を有しない構成とすることも可能である(図示せず)。
【0028】
本実施の形態では、図1〜図3に示すように、容器ホルダ40は、側面に貫通穴48があいた構成となっている。貫通穴48は、容器ホルダ40の側面の下端部近傍に配置される。これによって、貫通穴48から、容器100の底面と容器ホルダ40の内底面との間の空間を露出させることができる(図8参照)。ただし変形例として、容器ホルダ40を、貫通穴48を有しない形状とすることも可能である(図示せず)。
【0029】
(e)凸状体50
遠心機1は、凸状体50を有する。凸状体50は、区画体20の内面から回転体30(回転体30が回転する領域)に向かって突出する部材である。凸状体50は、回転体30(回転体30が回転する領域)に近接するように設けられている。凸状体50は、回転軸線L1を中心とする円周と交差するように延びる形状となっている。本実施の形態では、凸状体50は、回転軸線L1を中心とする円周と直交するように延びる形状となっている。また、本実施の形態では、凸状体50は、区画体20の底面に沿って延びる底面部52と、区画体20の側面に沿って延びる側面部54とを含む。すなわち、凸状体50は、正面から見てL字状の板状体によって実現されている(図3参照)。また、本実施の形態では、凸状体50は、上視図において、区画体20(区画体20が区画する空間)の外周近傍を含む領域に配置されているといえる。また、本実施の形態では、四個の凸状体50が、区画体20内に等間隔に配置されている。
【0030】
ただし、凸状体50の形状、配置、数量はこれに限られるものではない。凸状体50は、区画体20内に一つのみ配置されていてもよく、二個以上の複数個配置されていてもよい。また、凸状体50は、区画体20の底面に沿って延びる底面部のみで構成することや、区画体20の側面に沿って延びる側面部のみで構成することも可能である。あるいは、凸状体50は、区画体20の上面(例えば蓋22)に設けることも可能である。また、凸状体50は、回転軸線L1を中心とする円周と斜めに交差するように延びる形状とすることも可能である。
【0031】
(f)駆動機構
遠心機1は、容器ホルダ40(容器100)を公転させながら自転させる駆動機構を含む。以下、駆動機構の構成について説明する。
【0032】
駆動機構は、モータ62を有する。モータ62は、回転体30(回転軸32)を回転させる役割を果たす。モータ62は、プーリ64及びプーリ66、並びに、ベルト68を介して、回転軸32(回転体30)を回転させるように構成されている。本実施の形態では、回転体30が回転すると、容器ホルダ40(容器100)が公転することになる。そのため、モータ62を、容器ホルダ40(容器100)を公転させるための公転駆動機構と称することができる。なお、モータ62は、インダクションモータやサーボモータ、あるいはPMモータなど、既に公知となっているいずれかのモータを利用することが可能である。
【0033】
駆動機構は、また、自転力付与機構を有する。本実施の形態では、自転力付与機構は、容器ホルダ40の公転に伴って(回転体30の回転に伴って)、容器ホルダ40に自転力を付与するように構成されている。以下、自転力付与機構について説明する。
【0034】
自転力付与機構は、自転歯車72を有する。自転歯車72は、容器ホルダ40に固定されており、容器ホルダ40と一体的に挙動する。また、自転力付与機構は、自転力付与歯車74を有する。自転力付与歯車74は、回転軸32と同心に設けられている。なお、本実施の形態では、自転力付与歯車74は、筐体10に対して固定されている。そして、自転力付与機構は、自転歯車72と自転力付与歯車74との間で動力を伝達する自転動力伝達機構76を有する。本実施の形態では、自転動力伝達機構76は、回転体30に回転可能に取り付けられた、第1中継歯車及び第2中継歯車によって実現されている。なお、第1中継歯車及び第2中継歯車は固定されており、同じ回転数で回転することになる。
【0035】
この自転力付与機構によると、自転動力伝達機構76によって、自転歯車72の挙動と、自転力付与歯車74の挙動とが関連付けられ、自転歯車72と自転力付与歯車74とが、遊星歯車機構と同様の挙動を示すことになる。そして、本実施の形態では、自転歯車72が筐体10に対して固定されていることから、回転体30を回転させると、自転歯車72は、回転軸線L1を中心に公転しながら、自転軸線L2を中心に自転することになる。すなわち遠心機1では、モータ62で回転体30を回転させると、自転歯車72は公転しながら自転し、自転歯車72に固定された容器ホルダ40が、公転しながら自転することになる。
【0036】
なお、変形例として、駆動機構を、自転力付与歯車74を筐体10に対して回転可能に構成し、自転力付与歯車74を所望の回転数で回転させるための調整機構をさらに備えた構成とすることも可能である(図示せず)。先に説明したとおり、駆動機構では、自転歯車72の回転数と自転力付与歯車74の回転数とが、自転動力伝達機構76によって関連付けられる。そのため、自転歯車72を公転させながら(回転体30を回転させながら)、自転力付与歯車74の回転数を調整することにより、自転歯車72の自転数を制御することが可能になる。なお、この調整機構は、例えばモータやブレーキなど、既に公知となっているいずれかの機構によって実現することができる。
【0037】
また、他の変形例として、動力伝達要素に、プーリ及びベルトを利用することも可能である(図示せず)。
【0038】
(g)温調機80
遠心機1は、図1及び図3に示すように、温調機80を有する。温調機80は、区画体20の温度を調整する役割を果たす。
【0039】
本実施の形態では、温調機80は、管82を有する。管82は、熱媒体(加熱用熱媒体・冷却用熱媒体)の流路を構成する部材であり、区画体20の外周に巻き回された熱交換部84を有する。温調機80は、また、熱媒体の温度を調整する温調部86と、熱媒体を流動(循環)させるポンプ88とを有する。温調機80では、温調部86で温調された熱媒体がポンプ88によって熱交換部84に送られる。熱媒体は、熱交換部84内を流れながら区画体20と熱交換し、区画体20の温度を調整する。熱交換を終えた熱媒体は、再度温調部86で温調され、ポンプ88によって熱交換部84に送られて区画体20と熱交換を行う。これを繰り返すことによって、区画体20を所望の温度に調整することが可能になる。なお、本実施の形態では、温調機80として、冷却機及び加熱機のいずれを利用することも可能である。
【0040】
(h)制御手段90
遠心機1は、図4に示すように、制御手段90を有する。制御手段90は、遠心機1の動作を統括制御する役割を果たす。以下、制御手段90について説明する。
【0041】
制御手段90は、マイクロプロセッサ(CPU92)と、駆動機構(モータ62)の動作を制御する駆動制御部94と、温調機80の動作を制御する温調機制御部95とを含む。そして、CPU92は、運転データ(例えば、収納物Mの処理条件に合わせてユーザが入力したデータ)に基づいて駆動制御部94及び温調機制御部95に各種の信号を出力することにより、遠心機1の動作を制御する。
【0042】
先述したように、遠心機1では、容器ホルダ40は回転体30の回転に伴って公転することから、モータ62の出力を制御することによって、容器ホルダ40の公転数が制御される。すなわち、モータ62の出力を制御することにより、容器ホルダ40を所望の公転数で公転させることが可能になる。
【0043】
例えばモータ62としてインダクションモータを採用する場合には、駆動制御部94は、インバータの動作を制御し、モータ62に供給される交流電力の周波数を所定値とするためのインバータ制御部によって実現することができる。あるいは、モータ62としてサーボモータを採用する場合には、駆動制御部94は、専用のドライバ及びハードウェアによって実現され、モータ62を所望の回転数で動作させるための各種処理を行う。また、駆動制御部94を、回転センサ96で検出された容器ホルダ40の回転数情報を取得し(例えばCPU92を介して取得し)、当該回転数情報に基づいて、回転体30の回転数を調整するための種々の処理を行うように構成することも可能である。
【0044】
また、遠心機1では、温調機80は、温調部86、及び、ポンプ88の動作を制御することにより、その動作が決定される。すなわち、温調部86の設定温度及びポンプの動作を制御することにより、温調機80に所望の動作をさせることが可能になる。このことから本実施の形態では、温調機制御部95を、温調部86の動作を制御して設定温度を調整する温度制御部と、ポンプの動作を制御するポンプ制御部とを有する構成とすることができる。
【0045】
そして、CPU92は、所定のタイミングで、駆動制御部94及び温調機制御部95に各種の信号(容器ホルダ40の目標回転数データ・区画体20の目標温度データ等)を送信する処理を行う。これにより、容器ホルダ40を所望の回転数で回転させつつ、区画体20を所望の温度に調整することができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、CPU92は、回転センサ96を介して、回転体30の回転数情報(容器ホルダ40の回転数情報)を取得することが可能に構成されている。そして、CPU92は、この回転数情報を、経過時間と関連付けて図示しない記憶部に格納する処理を行うことも可能である。また、CPU92を、回転体30の回転数情報に基づいて容器ホルダ40の自転数情報を演算処理するように構成することも可能である。すなわち、遠心機1では、自転力付与歯車74は回転不能に構成されているため、回転体30の回転数が明らかになれば、動力伝達機構の各要素(動力伝達要素)のサイズデータから導出される係数を利用して、容器ホルダ40の自転数を演算することが可能になる。
【0047】
また、CPU92は、温度センサ97を介して、区画体20の温度情報を取得することが可能に構成されている。そして、CPU92は、この温度情報を、経過時間と関連付けて図示しない記憶部に格納する処理を行うことも可能である。また、CPU92は、区画体20の温度情報と、設定温度情報とに基づいて、温調機制御部95に送信するデータを導出する演算処理を行うように構成することも可能である。なお、温度センサ97は、区画体20の温度情報ではなく、容器ホルダ40又は収納物Mの温度情報を取得するように構成することも可能である。
【0048】
さらに、CPU92は、操作部98から入力された動作データを受け付けて、図示しない記憶部に格納する処理や、表示部99に各種情報(操作部98から入力された動作データや、遠心機1の運転状況等)を表示させるための処理を行う。
【0049】
(2)容器100
次に、本実施の形態に適用可能な容器100について、図5(A)〜図6(B)を参照して説明する。ここで、図5(A)は容器100の側面図であり、図5(B)は図5(A)のVB−VB線断面図であり、図5(C)は図5(A)のVC−VC線断面図である。また、図6(A)は容器100が容器ホルダ40に保持された状態の側面の一部拡大図であり、図6(B)は図6(A)のVIB−VIB線断面図である。
【0050】
容器100は、容器本体110と、蓋体120とを有する。容器本体110は、内部に収納物Mを収納する役割を果たす。容器本体110の材質は特に限定されるものではなく、用途に合わせて適宜選択することができる。容器本体110は、例えば樹脂や、金属、ガラス、ジルコニア等、既に公知となっているいずれかの容器を適用することができる。また、蓋体120は、容器本体110の開口をふさぐ役割を果たし、本実施の形態では、内蓋122及び外蓋124を含んで構成されている。なお変形例として、蓋体120を利用しないで、収納物Mの処理を行うことも可能である(図示せず)。
【0051】
容器100は、凸部130を有する。凸部130は、容器本体110の外側面から突出するように構成されている。凸部130は、図6(A)に示すように、容器100が容器ホルダ40に保持されたときに、容器ホルダ40の容器支持部44と接触する。すなわち、容器100は、凸部130によって、容器ホルダ40に支持される構成となっている。
【0052】
容器100は、空回り防止機構を有する。空回り防止機構は、容器100が、容器ホルダ40内で空回りすることを防止する役割を果たす。すなわち、空回り防止機構によって、容器100は、容器ホルダ40に保持されて、容器ホルダ40と一体的に挙動することが可能になる。本実施の形態では、空回り防止機構は、図5(A)及び図5(C)に示すように、凸部130の外周に設けられた凹部132によって実現されている。すなわち本実施の形態では、図6(A)及び図6(B)に示すように、凹部132に、容器ホルダ40の凸部46をはめ合わせることで、容器ホルダ40内で容器100が空回りすることを防止することが可能になる。
【0053】
(3)収納物M
本実施の形態に適用可能な収納物Mは、流体として挙動するものであればよく、その組成や用途は特に限定されるものではない。収納物Mとして、流体成分(樹脂等)のみを含む材料や、流体成分のほかに粒状成分(粉状成分)を含む材料などを適用することができる。収納物Mとして、例えば、接着剤、シーラント剤、液晶材料、LEDの蛍光体と樹脂とを含む混合材料、半田ペースト、歯科用印象材料、歯科用セメント(穴埋め剤等)、液状の薬剤等の種々の材料を適用することができる。また、収納物Mとして、粒状(粉状)材料と、これを粉砕するためのメディア(例えばジルコニアボール)を適用することも可能である。あるいは、収納物Mとして、乳化処理の対象となる流体を適用することも可能である。
【0054】
(4)収納物Mの処理方法
次に、本実施の形態に係る収納物Mの処理方法について、図7を参照して説明する。なお、図7は、収納物Mの処理方法を説明するためのフローチャートである。
【0055】
本実施の形態に係る収納物Mの処理方法は、図7に示すように、収納物Mが収納された容器100を容器ホルダ40に保持させる工程(ステップS110)と、区画体20を所望の温度に調整する工程(ステップS120)と、容器ホルダ40(容器100)を公転させながら自転させて収納物Mに遠心力を作用させる工程(ステップS130)とを含む。これにより、容器100に収納された収納物Mに遠心力が作用し、収納物Mが処理(撹拌、脱泡、粉砕、乳化等)される。図8に、収納物Mを処理している状況を、模式的に示す。
【0056】
本実施の形態では、区画体20を所望の温度に調整する工程(ステップS120)は、回転体30を停止した状態で行ってもよく、回転体30を回転させながら行ってもよい。区画体20の設定温度は、収納物Mの処理条件や目的に合わせて適宜設定するが、その具体的な値は、例えば実験によって導出することができる。
【0057】
また、収納物Mに遠心力を作用させる工程(ステップS130)では、容器100の回転数(回転体30の回転数)、及び、運転時間は、収納物Mの処理条件や目的に合わせて適宜設定する。具体的な値は実験によって導出することができるが、例えば回転体30の回転数を2000rpm程度に、運転時間を数分〜数十分程度に設定することができる。
【0058】
(5)作用効果
以下、本実施の形態に係る遠心機1が奏する作用効果について説明する。
【0059】
遠心機1によると、区画体20を温調することにより、回転体30の回転時に、収納物Mの温度を効率よく調整することが可能になる。以下、この作用について詳述する。なお、図9及び図10は、この作用効果を説明するための図である。
【0060】
区画体20内で回転体30が回転すると、区画体20内の空気は、回転体30の回転に伴って、回転軸線L1を中心に回転する。回転する空気には遠心力が作用するため、区画体20内の空気は、回転軸線L1を中心とする円の円周方向に移動しながら、回転軸線L1から区画体20の外周に向かう方向(図9における矢印Y1が示す方向)に移動することになる。すなわち、遠心機1が凸状体50を有しない場合には、区画体20の内部における区画体20の径方向(詳しくは、回転軸線L1を中心とする円の径方向)への空気の移動は、回転軸線L1から離れる方向への移動のみとなる。
【0061】
ところで、本実施の形態では、温調機80は区画体20の温度を調整するため、区画体20内の空気のうち、区画体20の近傍に存在する空気のみが温調される。区画体80内の空気の径方向への移動が回転軸線L1から離れる方向のみとなっている場合(図9における矢印Y1の流れしかない場合)、区画体20の近傍で温調された空気は、区画体20の内側(回転軸線L1)に向かって移動することができずに区画体20の外周近傍に留まるため、容器100内の収納物Mの温度を効率よく調整することは難しかった。
【0062】
これに対して本実施の形態では、遠心機1は凸状体50を有しており、これにより、容器100内の収納物Mの温度を効率よく調整することが可能になる。
【0063】
すなわち、本実施の形態では、区画体20内の空気は、回転体30の回転に伴って流動し、凸状体50に衝突する。凸状体50に衝突した空気は、回転体30の回転方向への移動が阻害されるため、図10に示すように、凸状体50に沿って区画体20の内側(回転軸線L1)に向かって移動することになる。すなわち、凸状体50の近傍(特に、凸状体50の回転体30の回転方向とは反対方向を向く面の近傍)では、回転軸線L1に向かって移動する空気の流れが発生する(図9の矢印Y2)。そして、回転軸線L1の近傍まで移動してきた空気は、回転体30の回転に伴う流動を開始し、区画体20の外周に向かう移動を開始する。また、区画体20の外周近傍では、凸状体50の近傍の圧力が小さくなる(負圧になる)ことから、区画体20の内側面に沿って凸状体50に向かって移動する空気の流れが発生する。これらの現象が連続的に発生する結果、図9に模式的に示すように、区画体20の内部には、回転軸線L1から区画体20の外周に向かう流れ(矢印Y1)と、区画体20の外周から回転軸線L1に向かう流れ(矢印Y2)が併存した対流が発生する。すなわち、遠心機1によると、回転体30を回転させることによって、区画体20内の空気が、区画体20の径方向に移動することになる。これにより、区画体20の温度を、空気を介して区画体20が区画する空間の内部(容器100)に伝えることができるようになり、そのため、容器100内の収納物Mの温度を、効率よく調整することが可能になる。
【0064】
特に、本実施の形態では、遠心機1の容器ホルダ40は、容器100の底面が容器ホルダ40の内底面と間隔をあけて配置されるように容器100を支持し、かつ、容器ホルダ40の側面には容器100の底面と容器ホルダ40の内底面との間の空間を露出させる貫通穴48が形成されている(図8参照)。これにより、区画体20内の空気(区画体20によって温調された空気)と、容器100との接触頻度を高めることができ、容器100(収納物M)の温度を、効率よく調整することが可能になる。
【0065】
また、本実施の形態では、遠心機1の回転体30は、区画体20内で空気を押圧する押圧部35を有する構成となっている。そのため、区画体20内で、空気を、効率よく回転体30の回転方向に流動させることができ、区画体20内の空気の温調効率を高めることができる。
【0066】
(6)効果の確認
本発明の効果を確認するため、株式会社シンキー社製NP-100を利用して、凸状体50を備えている場合と、凸状体50を備えていない場合について、材料処理の前後の材料及び区画体20の温度を測定した。なお、本実験では、図1及び図3に示すように、四個の凸状体50を、等間隔に配列した。また、本実験では、温調機80として冷却機を利用した。測定結果を、表1に示す。
【表1】

【0067】
二つの測定結果を見ると、凸状体50を備えていない場合には、処理前後で材料温度が3.1度低下しているのに対して、凸状体50を備えている場合には材料温度が7.4度低下していることがわかる。このことから、凸状体50を備えている場合の方が、材料温度を低下させる効果に優れていることがわかる。また、二つの測定結果を見ると、凸状体50を備えていない場合には、処理前後で区画体20の温度が0.1度上昇しているのに対して、凸状体50を備えている場合には区画体20の温度が2.1度上昇していることがわかる。このことから、凸状体50を備えている場合の方が、区画体20と空気との間で熱交換が効率よく行われていることがわかる。
【符号の説明】
【0068】
1…遠心機、 10…筐体、 12…第1の支持基板、 13…支持体、 14…第2の支持基板、 15…支持体、 16…保持部材、 20…区画体、 30…回転体、 32…回転軸、 34…板状部材、 35…押圧部、 37…錘体、 38…調整錘、 40…容器ホルダ、 44…容器支持部、 46…凸部、 48…貫通穴、 50…凸状体、 52…底面部、 54…側面部、 62…モータ、 64…プーリ、 66…プーリ、 68…ベルト、 72…自転歯車、 74…自転力付与歯車、 76…自転動力伝達機構、 80…温調機、 82…管、 84…熱交換部、 86…温調部、 88…ポンプ、 90…制御手段、 92…CPU、 94…駆動制御部、 95…温調機制御部、 96…回転センサ、 97…温度センサ、 98…操作部、 99…表示部、 100…容器、 110…容器本体、 120…蓋体、 122…内蓋、 124…外蓋、 130…凸部、 132…凹部、 L1…回転軸線、 L2…自転軸線、 M…収納物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を公転させながら自転させることによって、前記容器に収納された収納物に遠心力を作用させる自転公転式の遠心機であって、
所定の回転軸線を中心に回転可能に構成された回転体と、
前記回転体の前記回転軸線から所定の間隔をあけた位置に、前記回転体に対して回転可能に取り付けられている、前記容器を保持する容器ホルダと、
前記回転体が回転する領域を含む空間を区画する区画体と、
前記区画体の内面から前記領域に向かって突出する、一又は複数の凸状体と、
前記区画体の温度を調整する温調機と、
を有する遠心機。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心機において、
前記回転体は、その回転方向に向かって前記空間内の空気を押圧する押圧部を有する遠心機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の遠心機において、
前記凸状体は、前記回転軸線を中心とする円周と交差するように延びる形状となっている遠心機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の遠心機において、
前記凸状体は、前記空間の外周近傍に配置される遠心機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の遠心機において、
前記凸状体は、前記領域に近接している遠心機。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の遠心機において、
前記容器ホルダの側面には貫通穴が形成されている遠心機。
【請求項7】
請求項6に記載の遠心機において、
前記容器ホルダは、前記容器の底面が前記容器ホルダの内底面と間隔をあけて配置されるように前記容器を支持する、容器支持部を有し、
前記容器ホルダの前記貫通穴は、前記容器の前記底面と前記容器ホルダの内底面との間の空間を露出させるように構成されている遠心機。
【請求項8】
請求項7に記載の遠心機において、
前記容器支持部は、前記容器ホルダの上端である遠心機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−115757(P2012−115757A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267269(P2010−267269)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(393030408)株式会社シンキー (34)
【Fターム(参考)】