説明

遠心脱水機、および遠心脱水方法

【課題】連続洗濯設備に設置される遠心脱水機を改良し、回転円筒11の中で洗濯物が均一に分散され、自動的に剥がされ、かつ自動的に排出されるようにする。
【解決手段】回転円筒11の中に、これと同心にスクリューコンベヤ12を配置し、上記回転円筒11とスクリューコンベヤ12とを相互に独立に回転駆動し得るように構成する。スクリューコンベヤ12を正,逆転させて洗濯物を矢印c,矢印dのように往復送りすると、回転円筒内の洗濯物が均一に分散され、回転円筒の内周面に張り付いた洗濯物が剥がされる。スクリューコンベヤ12を正転させると洗濯物が矢印bのように排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯設備において洗濯を終えて多量の水分を含んでいる洗濯物を脱水処理して、乾燥機またはプレス仕上機に供給し得る状態ならしめる脱水機、および、同じく脱水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は従来例の脱水機を描いた斜視図である。
多孔板で構成された内胴1が、外胴2の中に配置されている。
該内胴1は内胴軸3と内胴軸受4とによって片持ち形に、回転自在に支承され、かつ、駆動モータ5によりプーリ6a、同6bおよびベルト7を介して回転駆動される。
洗濯物は洗濯物投入口8から投入される。
内胴1が回転すると洗濯物が一緒に回転して、遠心脱水される。脱水された洗濯物は洗濯物投入口8から取り出される。
【0003】
洗濯設備用の遠心脱水機に関する最近の改良進歩については、特許文献1として挙げた特開2003−135892号公報「遠心脱水機」、および特許文献2として挙げた特開平8−38794号公報「遠心脱水機の剥離装置」が提案されている。
上記の特開2003−135892号公報「遠心脱水機」は、洗濯物の取り残しを防止するため、脱水槽の内面を鏡面仕上げしたものである。
前記の特開平8−38794号公報「遠心脱水機の剥離装置」は、脱水された洗濯物を排出するため、エアシリンダで駆動される突き棒を設けたものである。
【特許文献1】特開2003−135892号公報
【特許文献2】特開平8−38794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の図3に示した従来例の脱水機においては、次のような問題が有った。
イ.洗濯物の偏在
洗濯物が内胴1の中で均一に配分されないので、洗濯物を含めた内胴の総合重心が回転中心線に対して偏心し、振動を発生する。
振動によって騒音を生じる上に、内胴軸3や内胴軸受4に掛かる荷重が増大するので、内胴の支承部材が大形大重量になる。その上、内胴軸受4を防振支持しなければならないので、製造コストが増加する。
内胴1内に洗濯物を均一に分散させようとすると、
ロ.洗濯物の張り付き
洗濯物が遠心力によって内胴の内周面に張り付いてしまうので、これを剥がすのに手数を要する。
ハ.洗濯物の間欠的な排出
脱水を済ませると、内胴1を傾けて洗濯物を一挙に排出する。これを受け取るコンベア(図示せず)は大形でなければならず、非効率的である。
ニ.力学的な不利
内胴1が内胴軸3によって片持ち形に支承されているので、該内胴軸3や内胴軸受4等の支持構造部分に大きい応力を生じる。このため、内胴の支持構造が大形大重量になり、製造コストが増加する。
【0005】
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、
イ.洗濯物が内胴1の中で自動的に均一に配分され、
ロ.内胴の内周面に張り付いた洗濯物が自動的に剥がされ、
ハ.脱水を済ませた洗濯物が、時間当たり均一量で連続的に排出され、内胴などの高速回転部材を両持ち形に支承できる遠心脱水技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のもくてきを達成するために創作した本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図1を参照して略述するとつぎのとおりである。
この[課題を解決するための手段]の欄においては、図面との対照を容易ならしめるため、符号を括弧書きで付記してあるが、この符号は本発明の技術的範囲を図面どおりに限定するものではない。
回転円筒(11)は回転自在に支承されており、高速で回転駆動され、内部の洗濯物を遠心脱水する。
上記回転円筒(11)の中に、これと同心にスクリューコンベヤ(12)が配置されている。
上記回転円筒(11)とスクリューコンベヤ(12)とは、それぞれ独立に回転駆動され、かつ回転速度を制御される。
【0007】
回転円筒(11)内に洗濯物を入れ、高速回転させるに先立って、洗濯物が約1Gの遠心力を受けるように低速回転させる。
洗濯物は見かけ上、浮遊に似た状態となる。この状態で、スクリューコンベヤ(12)を回転円筒(11)に対して相対的に正,逆転させると、該洗濯物は図の左右に往復移動せしめられ、回転円筒内において均一に分散する。
【0008】
洗濯物が回転円筒(11)内で均一に分散すると、該回転円筒を高速回転させて遠心脱水を行なう。このとき、スクリューコンベヤ(12)を回転円筒と一緒に(同じ回転速度で)回転させれば、スクリューコンベヤの存在は遠心脱水作用の邪魔にはならない。
【0009】
遠心脱水により、洗濯物は回転円筒(11)の内周面に張り付く。そこで、遠心脱水を終えて回転円筒の回転を停止させた後、スクリューコンベヤ(12)を正,逆転させると、張り付いている洗濯物がスクリューコンベヤによって剥がし落とされる。
【0010】
洗濯物が剥がし落とされた後、スクリューコンベヤ(12)を一定方向に回転させて、洗濯物を図の右方へ送る。回転円筒内の洗濯物はスクリューコンベヤで右方へ圧し動かされ、排出口18cから排出される。
【0011】
上述した原理に基づく具体的な構成として、請求項1の発明に係る発明遠心脱水機は、
(図1参照)回転する円筒(11)の中にスクリューコンベヤ(12)が設けられていることを特徴とする。
遠心脱水用の回転円筒内にスクリューコンベヤを配設したことが本発明の基本であり、
新規性、進歩性の核心である。
【0012】
請求項2の発明に係る遠心脱水機の構成は、前記請求項1の発明機器の構成要件に加えて(図1参照)、
前記の回転する円筒(11)が、フレーム(16)に対して回転可能に支持されるとともに、
前記のスクリューコンベヤが上記の円筒に対して同心に、かつ相対的回転可能に支持されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明に係る遠心脱水機の構成は、前記請求項2の発明機器の構成要件に加えて(図1参照)、
回転する円筒(11)の両端それぞれに固着された回転軸の少なくとも片方が筒状(13)をなし(本発明において、筒状と管状とは同意である)。
前記スクリューコンベヤの回転軸の少なくとも片方が、上記筒状の軸(13)の中を貫通して突出しており、
前記回転する円筒の回転軸、および、前記スクリューコンベヤの回転軸が、それぞれ互いに独立した回転駆動手段(外管プーリ21及び内軸プーリ22)を備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明に係る遠心脱水方法は(図1参照)、
洗濯を終えた洗濯物を脱水する方法において、
遠心力によって脱水作用を発揮する回転円筒(11)の中に、スクリューコンベヤ(12)を設けておき、
遠心脱水工程に先立って、前記回転円筒内に投入された洗濯物が約1Gの遠心力を受ける回転速度で、該回転円筒を回転させながら、
前記スクリューコンベヤを、回転円筒に対して相対的に正,逆転させ、洗濯物を軸心方向に送ったり戻したりすることにより、該洗濯物を回転円筒内で均一に配分することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明に係る遠心脱水方法は、前記請求項4の発明方法の構成要件に加えて(図1参照)、
遠心脱水工程においては、回転円筒(11)の加速中も、高速回転中も、減速中もスクリューコンベヤ(12)の回転駆動を休止し、該スクリューコンベヤを回転円筒と一緒に回転させることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明に係る遠心脱水方法は、前記請求項4または請求項5の発明方法の構成要件に加えて(図1参照)
遠心脱水を終えて回転円筒(11)を停止させた後、スクリューコンベヤ(12)を繰り返し正,逆転させて、該回転円筒の内周面に張り付いている洗濯物を剥がすことを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明に係る遠心脱水方法は、前記請求項6の発明方法の構成要件に加えて、
(図1参照)、
回転円筒(11)の内周面に張り付いている洗濯物を剥がした後、スクリューコンベヤ(12)を一定方向に回転させて、剥がした洗濯物を排出口(18c)に向けて送り、該排出口から押し出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
洗濯設備で洗濯を終えて多量の水分を含んでいる洗濯物を脱水処理して、乾燥機またはプレス仕上機に供給し得る状態ならしめる脱水機に、本発明の請求項1に係る発明を適用して、回転円筒の中にスクリューコンベヤを設けると、該スクリューコンベヤを用いて、
イ.回転円筒内の洗濯物を均一に分散させ、
ロ.回転円筒内に張り付いた洗濯物を剥がし、
ハ.剥がした洗濯物を自動的に、均等な量で連続的に排出し、
洗濯設備における省力化、能率向上に貢献する。
【0019】
請求項2の発明に係る遠心脱水機を適用すると、回転円筒とスクリューコンベヤとが同心に配置されているので、両者の間の隙間が均一であり、洗濯物を剥がす作用や送り出す作用が円滑に行なわれる。
【0020】
請求項3の発明に係る遠心脱水機を適用すると、回転円筒とスクリューコンベヤとが2重管状の軸で支持されているので、両者の同心性の保持が容易であり、かつ、両者が相互に独立に駆動されるので、スクリューコンベヤによる洗濯物の配分操作や洗濯物の送り操作を任意に制御することができる。
【0021】
請求項4の発明方法によると、回転円筒内の洗濯物を浮遊に準ずる状態ならしめて、スクリューコンベヤによって該洗濯物を均一に分散させることができる。
これにより、洗濯物を含めた回転円筒の重心が回転中心線上に位置し、偏心しないので、静粛な回転が可能になり、支承構造が簡単、軽量、低コストで足りる。
【0022】
請求項5の発明方法によると、本発明を適用して設けたスクリューコンベヤが遠心脱水作用を妨げず、かつスクリューコンベヤの回転駆動や制御が簡単である。
【0023】
請求項6の発明方法によると、洗濯物の均一配分に用いたスクリューコンベヤを利用して、張り付いた洗濯物を剥がすことができ、作業員の労力を軽減するのみでなく、洗濯作業の能率を向上させる。
【0024】
請求項7の発明方法によると、洗濯物の均一配分および洗濯物の剥がし操作に用いたスクリューコンベヤを利用して、該洗濯物を自動的に遠心脱水機から均等な量で連続的に排出することがでる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明に係る遠心脱水機の1実施形態における模式的な正面断面図、図2は同じく側面外観図である。
(図1参照)符号11を付して示したのは遠心脱水作用を果たす回転円筒であり、その中に、スクリューコンベヤ12が同心に配置されている。
前記回転円筒11の片方の端(本例では右端)は、フランジ付き軸18のフランジ部18a似固着されている。該フランジ付き軸18の軸部18bは、回転円筒軸受19を介してフレーム16で支持されている。
【0026】
前記回転円筒11の多方の端(本例では左端)は、筒形の軸である外管13により、外管ベアリング15介してフレーム16に支持されている。
前記外管13に対応する内軸14はスクリューコンベヤの中心軸であり、その片方の端(本例では左端)は、前記外管13を貫通して突出し、突出部に内軸プーリ22が装着されている。符号17aを付して示したのは、スクリューコンベヤ12を回転円筒11に対して回転自在に支承する内軸ベアリングである。
【0027】
上記のようにして、回転円筒11とスクリューコンベヤ12とは、違いに独立に回転駆動し得るようになっている。
前記内軸14、すなわちスクリューコンベヤ軸の他方の端(本例では右端)は、内軸ベアリング17bを介して前記フランジ部18aで支承されている。
符号18cを付して示したのは、前記フランジ付き軸18のフランジ部18aに設けられた排出口である。この排出口18cを図の右方から見たところは図2に描かれているとおりであって、フレーム16に邪魔されることなく洗濯物が排出(矢印b)されるようになっている。
【0028】
図外の連続洗濯機で洗濯・水洗を終えて濡れたままの洗濯物が、矢印aのように回転円筒11の中へ投入される。
該回転円筒11を高速回転させて遠心脱水する前に、スクリューコンベヤ12を比較的低速で回転させ、投入された洗濯物を矢印cのように図の右方へ送る。
説明の便宜上、洗濯物を右方へ送る回転を正転と呼び、左方へ送る回転を逆転と呼ぶことにする。
【0029】
洗濯物がフランジ付き軸18のフランジ部18aに到達すると直ちにスクリューコンベヤ12を逆転させて、洗濯物を矢印d方向に戻す。
上記の送り・戻し操作を数回繰り返すと、洗濯物が回転円筒11の中で均一に分散せしめられる。
本実施形態によると、回転円筒11内の洗濯物が、図の左右方向についても、円筒の周囲方向についても、均一に分散される。
上記の均一な分散状態は、振動や騒音を発生させないで静粛な運転を行なうためにも、回転円筒支持構造の負荷を軽減させて該支持構造を軽量化するためにも、きわめて有効かつ重要である。
【0030】
洗濯物が回転円筒11内で均一に分散すると、該回転円筒の回転を開始し、次第に加速して高速遠心脱水速度に到達させる。
この加速工程において、別段の手段を要しないで洗濯物は回転円筒と一緒に回転し、一緒に加速する。
同様に、スクリューコンベヤ12についても、その回転駆動を解放してフリーにしておけば、洗濯物と一緒に回転し加速する。
【0031】
回転円筒11の回転速度が高速遠心脱水速度に到達すると、スクリューコンベヤ12の存在と関係無く、洗濯物の遠心脱水作用が果たされる。この場合もスクリューコンベヤの回転駆動は解放しておけば足りる。
脱水操作が終わると回転円筒11の回転を減速させ、停止させる。この減速・停止工程においても、スクリューコンベヤの回転駆動は解放しておけば足りる。
【0032】
回転円筒11の回転が停止したとき、洗濯物は遠心力によって回転円筒11の内周面に張り付いている。
そこでスクリューコンベヤ12を正,逆転させ、洗濯物を矢印c方向へ送ったり矢印d方向へ戻したりする操作を数回繰り返す。この操作により、張り付いていた洗濯物が剥がされる。
【0033】
洗濯物が剥がされると、スクリューコンベヤ12を正転させて、洗濯物を矢印c方向に送る。
送られた洗濯物は排出口18cから矢印bのように自動的に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る遠心脱水機の1実施形態を示し、模式的に描いた正面段断面図である。
【図2】上記実施形態の遠心脱水機を、図1の右側から見て描いた模式的な側面外観図である。
【図3】洗濯設備に設けられる遠心脱水機の従来例を示し、部分的に破断して描いた斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…内胴1
2…外胴
3…内胴3
4…内胴軸受
5…駆動モータ
6a,6b…プーリ
7…ベルト
8…洗濯物投入口
11…回転円筒
12…スクリューコンベヤ
13…外管
14…内軸
15…外管ベアリング
16…フレーム
17…内軸ベアリング
18…フランジ付き軸
18a…フランジ部
18b…軸部
18c…排出口
19…回転円筒軸受
20…ケーシング
21…外管プーリ
22…内軸プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速で回転して遠心脱水作用を果たす円筒の中にスクリューコンベヤが設けられていることを特徴とする遠心脱水機。
【請求項2】
前記の高速回転する円筒が、フレームに対して回転可能に支持されるとともに、
前記のスクリューコンベヤが上記の円筒に対して同心に、かつ相対的回転可能に支持されていることを特徴とする遠心脱水機。
【請求項3】
高速回転する円筒の両端それぞれに固着された回転軸の少なくとも片方が筒状をなし、
前記スクリューコンベヤの回転軸の少なくとも片方が、上記筒状の軸の中を貫通して突出しており、
前記回転する円筒の回転軸、および、前記スクリューコンベヤの回転軸が、それぞれ互いに独立した回転駆動手段を備えていることを特徴とする遠心脱水機。
【請求項4】
洗濯を終えた洗濯物を脱水する方法において、
遠心力によって脱水作用を発揮する回転円筒の中に、予めスクリューコンベヤを設けておき、
遠心脱水工程に先立って、前記回転円筒内に投入された洗濯物が約1Gの遠心力を受ける回転速度で、該回転円筒を回転させながら、
前記スクリューコンベヤを、回転円筒に対して相対的に正,逆転させ、洗濯物を軸心方向に送ったり戻したりすることにより、該洗濯物を回転円筒内で均一に配分することを特徴とする遠心脱水方法。
【請求項5】
遠心脱水工程においては、回転円筒の加速中も、高速回転中も、減速中もスクリューコンベヤの回転駆動を休止し、該スクリューコンベヤを回転円筒と一緒に回転させることを特徴とする、請求項4に記載した遠心脱水方法。
【請求項6】
遠心脱水を終えて回転円筒を停止させた後に、スクリューコンベヤを正,逆転させて、
該回転円筒の内周面に張り付いている洗濯物を剥がすことを特徴とする、請求項4または請求項5に記載した遠心脱水方法。
【請求項7】
回転円筒の内周面に張り付いている洗濯物を剥がした後、スクリューコンベヤを一定方向に回転させて、剥がした洗濯物を排出口に向けて送り、該排出口から押し出すことを特徴とする、請求項6に記載した遠心脱水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−154837(P2008−154837A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347810(P2006−347810)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)
【Fターム(参考)】