説明

遠心送風機及びこれを備えた空気調和機

【課題】漏れ流れに起因するファン効率の低下を抑制できる遠心送風機を提供する。
【解決手段】ベルマウス25は、軸方向Aの前方Fから後方Rに向かうにつれて内径及び外径が小さくなる第1フレア部材221と、第1フレア部材221の後端部に接合され、空気吸込口19aの周縁部19eとの間に所定の隙間を設けた状態で前記シュラウド19内に挿入され、軸方向Aの前方Fから後方Rに向かうにつれて内径及び外径が大きくなる第2フレア部材222と、を有している。第1フレア部材221は、その外周面25sの周方向に沿って所定の間隔で配列されて外周面25sから起立する複数の壁部27を有している。各壁部27は、軸方向A及びベルマウス25の半径方向に略平行となるように軸方向Aの前方Fから後方Rに向かって外周面25sに沿って延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心送風機及びこれを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば空気調和機の室内機の送風機として遠心送風機が用いられている。この遠心送風機では、そのファンモータが駆動して羽根車が回転すると、室内機の吸込口から室内機の筐体内に空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、ベルマウスによってシュラウドの空気吸込口に案内される。以下、ベルマウスによって空気吸込口に案内された空気の流れを主流という。
【0003】
この主流の空気は、ハブとシュラウドとの間に周方向に沿って配列された複数の羽根により半径方向の外側に送られ、その大半は室内機の吹出口を通じて室内に吹き出されるが、一部は、室内機内においてシュラウドの外周面と筐体と間の空間を通ってベルマウスに向かって環流し、ベルマウスとシュラウドとの隙間を通じて再び主流と合流する。以下、上記のように環流し、前記隙間を通じて主流と合流する空気の流れを漏れ流れ(循環流れ)という。このように主流の一部が分岐した漏れ流れが生じると、その分だけ室内に吹き出される空気量が減少するので、ファン効率が低下する。
【0004】
例えば特許文献1には、ファン効率の低下を抑制するためにベルマウス(ファンガイド)の外面に多数の溝を設けた遠心送風機が開示されている。この遠心送風機では、シュラウドの外周面と筐体との間の空間を通ってベルマウスに向かって環流する漏れ流れは、前記溝を介してベルマウスとシュラウドとの隙間に導入される(特許文献1の段落番号0024,0052、図5及び図6参照)。特許文献1には、上記のように前記溝によって漏れ流れが案内されて安定した流れとなるので、漏れ流れの変動に起因する送風性能の低下が抑制できる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−3899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の遠心送風機において、漏れ流れが前記溝により案内されて安定した流れとなるには、漏れ流れの空気の一部が前記溝の内部に入り込む必要があると考えられる。
【0007】
しかしながら、前記溝の周辺を高速で流れる空気は、前記溝内に入り込むよりもその溝の近傍を素通りしやすいため、前記溝により空気を案内する効果は必ずしも十分とは言えない。したがって、遠心送風機においては、さらなるファン効率の改善が望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、漏れ流れに起因するファン効率の低下を抑制できる遠心送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の遠心送風機は、羽根車(23)と、ベルマウス(25)とを備えている。前記羽根車(23)は、円形に開口する空気吸込口(19a)を有するシュラウド(19)と、前記空気吸込口(19a)の周方向に沿って前記シュラウド(19)の内面に配列された複数の羽根(21)とを含む。前記羽根車(23)は、ファンモータ(11)の回転軸(13)に固定されている。前記ベルマウス(25)は、前記シュラウド(19)よりも前記回転軸(13)の軸方向の前方(F)に配置されている。
【0010】
前記ベルマウス(25)は、第1フレア部材(221)と、第2フレア部材(222)とを有している。前記第1フレア部材(221)は、前記軸方向の前方(F)から後方(R)に向かうにつれて内径及び外径が小さくなる。前記第2フレア部材(222)は、前記第1フレア部材(221)の後端部に接合され、前記空気吸込口(19a)の周縁部(19e)との間に所定の隙間を設けた状態で前記シュラウド(19)内に挿入され、前記軸方向の前方(F)から後方(R)に向かうにつれて内径及び外径が大きくなる。
【0011】
前記第1フレア部材(221)は、その外周面(25s)の周方向に沿って所定の間隔で配列されて外周面(25s)から起立する複数の壁部(27)を有している。各壁部(27)は、前記軸方向及び前記ベルマウス(25)の半径方向に略平行となるように前記軸方向の前方(F)から後方(R)に向かって前記外周面(25s)に沿って延びている。
【0012】
この構成では、ベルマウス(25)が複数の壁部(27)を有しているので、壁部(27)が漏れ流れの抵抗となり、漏れ流れの量を低減させることができる。しかも、漏れ流れの方向を主流の方向に近づけることができるので、漏れ流れが主流と合流するときに主流が乱されるのを抑制できる。これにより、ファン効率の低下を抑制することができる。また、騒音低減効果も期待できる。
【0013】
また、この構成では、第1フレア部材(221)と第2フレア部材(222)とが別体として作製され、第2フレア部材(222)が第1フレア部材(221)の後端部に接合されることにより、ベルマウス(25)を作製することができる。
【0014】
以下、これらの作用効果について具体的に説明する。まず、ファン効率の改善効果について具体的に説明すると、以下のようになる。すなわち、ベルマウス(25)によりシュラウド(19)の空気吸込口(19a)に案内される主流の空気は、空気吸込口(19a)の近傍においては、主に回転軸(13)の軸方向に沿った方向に流れている。一方で、従来の遠心送風機における漏れ流れは、シュラウド(19)の回転により生じる回転方向への空気の流れに影響されて回転軸(13)の軸方向から前記回転方向に傾斜した方向に向いて流れている。このように主流と漏れ流れが合流する空気吸込口(19a)の近傍においては、主流と漏れ流れの向きが大きく異なっているので、漏れ流れが主流に合流すると、主流は漏れ流れによって流れが乱されることになり、ファン効率の低下につながる。
【0015】
一方、本発明の構成では、壁部(27)が軸方向及び半径方向に略平行となるように軸方向の前方(F)から後方(R)に向かってベルマウス(25)の外周面(25s)に沿って延びている。すなわち、隣り合う壁部(27)に挟まれる空気流路(29)は、軸方向に沿った方向に向いている。この空気流路(29)は、隣り合う壁部(27)とベルマウス(25)の外周面(25s)とによって両サイドと底とが囲まれた空間であり、この空気流路(29)への漏れ流れの入口と出口とは開放されていて遮るものがない。したがって、隣り合う壁部(27)間の空気流路(29)に漏れ流れを確実に導いて流通させることができるので、漏れ流れを案内する優れた効果を得ることができる。
【0016】
そして、前記傾斜した方向に流れる漏れ流れが壁部(27)まで到達し、この漏れ流れが隣り合う壁部(27)間の空気流路(29)を通過する過程においては、この空気流路(29)によって漏れ流れの方向が軸方向に矯正される。したがって、複数の壁部(27)を有していない場合と比べて、空気が流通時に受ける抵抗が増加する。これにより、主流から分岐する漏れ流れの量を減少させることができる。しかも、空気吸込口(19a)の近傍において、空気流路(29)によって整流された漏れ流れの流れ方向は、主流の流れ方向である軸方向に近くなる。したがって、空気吸込口(19a)の近傍において漏れ流れが主流に合流するときに、漏れ流れが主流に対して干渉する度合いが軽減される。よって、漏れ流れに起因するファン効率の低下を抑制することができる。
【0017】
次に、ベルマウス(25)を作製するうえでの利点について説明する。従来のベルマウスは、その半径方向に対向配置された一対の金型を用いて例えば射出成形などの成形手段により作製される。ところが、本発明の遠心送風機の場合、複数の壁部(27)がベルマウス(25)の外周面の周方向に沿って所定の間隔で配列されているので、上記のような成形手段を用いてベルマウス(25)を一体成形することはできない。
【0018】
そこで、本発明の構成では、第1フレア部材(221)と第2フレア部材(222)とは別体として作製された後に互いに接合されるので、複数の壁部(27)を有する第1フレア部材(221)は、例えば前記軸方向に対向配置された一対の金型を用いて例えば射出成形などの成形手段により作製することができる。一方、第2フレア部材(222)は、例えば前記軸方向又は半径方向に対向配置された一対の金型を用いて例えば射出成形などの成形手段により作製することができる。そして、作製された第1フレア部材(221)と第2フレア部材(222)とを接合することにより、ベルマウス(25)が得られる。
【0019】
(2)前記遠心送風機において、各壁部(27)における前記軸方向の後方(R)の端部は、前記シュラウド(19)における前記軸方向の前方(F)の端部よりも前方(F)に位置しているのが好ましい。
【0020】
この構成では、各壁部(27)における前記軸方向の後方(R)の端部は、シュラウド(19)における前記軸方向の前方(F)の端部よりも前方(F)に位置しているので、各壁部(27)がシュラウド(19)に接触するのを防止できる。
【0021】
(3)前記遠心送風機において、前記第1フレア部材(221)の後端部は前記第2フレア部材(222)の前端部に超音波溶着により接合されているのが好ましい。
【0022】
この構成のように、ベルマウス(25)は、例えば第1フレア部材(221)の後端部を前記第2フレア部材(222)の前端部に超音波溶着により接合することにより得られる。
【0023】
(4)前記遠心送風機において、前記第1フレア部材(221)の後端部は、半径方向に向いた第1接合面を有し、前記第2フレア部材(222)の前端部は、前記第1接合面に対して半径方向に対向する第2接合面を有し、前記第1接合面と前記第2接合面とが半径方向に対向するように前記第1フレア部材(221)の後端部と前記第2フレア部材(222)の前端部とが当接しており、この当接部分は超音波ホーンと受け治具により半径方向に挟み込まれた状態で超音波溶着されたものであるのが好ましい。
【0024】
この構成では、第1フレア部材(221)の後端部は半径方向に向いた第1接合面を有し、第2フレア部材(222)の前端部は第1接合面に対して半径方向に対向する第2接合面を有している。したがって、第1フレア部材(221)の後端部と第2フレア部材(222)の前端部との当接部分を超音波ホーンと受け治具により半径方向に挟み込み、前記当接部分を半径方向に押圧した状態で第1接合面に第2接合面を超音波溶着することができる。すなわち、接合面同士の対向方向と押圧方向とを一致させることができるので、良好な接合強度を得ることができる。また、接合時の押圧方向である半径方向に第1接合面と第2接合面とが対向する構成であるので、互いに位置が押圧によって半径方向にずれるのが抑制され、第1フレア部材(221)の後端部に対して第2フレア部材(222)の前端部を正確に位置決めできる。
【0025】
(5)前記遠心送風機において、各壁部(27)の前方(F)の端部(27f)における前記第1フレア部材(221)の外周面(25s)からの立設高さは、各壁部(27)の後方(R)の端部(27r)における前記第1フレア部材(221)の外周面(25s)からの立設高さよりも大きい形態であるのが好ましい。
【0026】
この構成では、各壁部(27)は、前記立設高さが大きな後方の端部において多くの漏れ流れをキャッチして空気流路に導くことができる一方で、前記立設高さが小さい前方の端部においてはシュラウドの空気吸込口の周縁部との接触を抑制できる。
【0027】
(6)前記遠心送風機において、各壁部(27)の前記第1フレア部材(221)の外周面(25s)からの立設高さは、後方(R)の端部(27r)から前方(F)の端部(27f)に向かって次第に増加しているのが好ましい。
【0028】
この構成では、各壁部(27)の立設高さが滑らかに変化しているので、空気流路内の空気の流れがより円滑になる。
【0029】
(7)前記遠心送風機において、各壁部(27)における後方(R)の端部(27r)は、前記第1フレア部材(221)の外周面(25s)からの立設高さが前方(F)から後方(R)に向かって次第に減少する傾斜面であり、前記空気吸込口(19a)の前記周縁部(19e)は、前記壁部(27)の前記傾斜面に対面する傾斜面であるのが好ましい。
【0030】
この構成では、各壁部(27)における前記後方(R)の端部(27r)と前記空気吸込口(19a)の前記周縁部(19e)とは、互いに対面する前記傾斜面であるので、各壁部(27)をシュラウド(19)の近傍まで延設でき、しかも回転時に互いが接触するのを抑制できる。
【0031】
(8)前記遠心送風機において、各壁部(27)における前記軸方向の後方(R)の端部(27r)は、前記シュラウド(19)における前記軸方向の前方(F)の端部に対して半径方向に対向する位置又はその近傍に位置しているのが好ましい。
【0032】
この構成では、各壁部(27)における前記軸方向の後方(R)の端部(27r)は、シュラウド(19)における前記軸方向の前方(F)の端部に対して半径方向に対向する位置又はその近傍に位置しているので、シュラウド(19)の空気吸込口(19a)まで、又は空気吸込口(19a)の近傍まで漏れ流れを案内することができる。これにより、漏れ流れに起因するファン効率の低下をさらに抑制できる。
【0033】
(9)本発明の空気調和機は、前記遠心送風機を備えているので、漏れ流れに起因するファン効率の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、漏れ流れに起因するファン効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る遠心送風機を備えた室内機を示す断面図である。
【図2】前記室内機における羽根車、熱交換器及び吹出口の位置関係を示す底面図である。
【図3】前記遠心送風機の羽根車を示す斜視図である。
【図4】前記遠心送風機のベルマウスを示す側面図である。
【図5】前記遠心送風機のベルマウスを示す平面図である。
【図6】図4の一部を拡大した側面図である。
【図7】前記遠心送風機の一部を拡大した断面図である。
【図8】前記羽根車のシュラウドと前記ベルマウスとの位置関係を示した断面図である。
【図9】前記ベルマウスの第1フレア部材を成形する方法を示しており、(A)は、成形前又は成形中において成形用金型が閉じた状態を示す側面図であり、(B)は、成形後において成形用金型が開いた状態を示す側面図である。
【図10】前記ベルマウスを作製する方法を示しており、(A)は、第1フレア部材と第2フレア部材とが接合される前の状態を示す断面図であり、(B)は、第1フレア部材と第2フレア部材とが超音波溶着により接合されるときの状態を示す断面図であり、(C)は、第1フレア部材と第2フレア部材とが接合された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態に係る遠心送風機51及びこれを備えた空気調和機31について図面を参照して説明する。
【0037】
<空気調和機の全体構造>
図1に示すように、本実施形態に係る空気調和機31は、天井埋込型のカセット室内機である。この空気調和機31は、天井に設けられた開口に埋め込まれる略直方体の筐体33と、筐体33の下部に取り付けられた化粧パネル47とを備えている。化粧パネル47は、平面視の形状が筐体33よりも一回り大きく、天井の開口を覆った状態で室内に露出している。化粧パネル47は、その中央部に設けられた矩形状の吸込グリル39と、この吸込グリル39の各辺に沿って設けられた細長い矩形状の4つの吹出口37とを有している。
【0038】
空気調和機31は、筐体33内に、遠心送風機(ターボファン)51、ファンモータ11、熱交換器43、ドレンパン45、エアフィルタ41などを備えている。遠心送風機51は、羽根車23と、ベルマウス25とを含む。ファンモータ11は、筐体33の天板の略中央に固定されている。ファンモータ11の回転軸13は下方に延びている。
【0039】
図1及び図2に示すように、熱交換器43は、厚みの小さな扁平な形状を有している。熱交換器43は、その下端部に沿って延設された皿状のドレンパン45から上方に起立した状態で羽根車23の周囲を囲むように配置されている。ドレンパン45は、熱交換器43において生じる水滴を収容する。収容された水は図略の排水経路を通じて排出される。
【0040】
エアフィルタ41は、ベルマウス25の入口を覆う大きさを有し、ベルマウス25と吸込グリル39との間に吸込グリル39に沿って設けられている。エアフィルタ41は、吸込グリル39から筐体33内に吸い込まれた空気がエアフィルタ41を通過する際に空気中の塵埃を捕捉する。
【0041】
図1〜図3に示すように、羽根車23は、ハブ15と、シュラウド19と、複数の羽根21とを含む。ハブ15は、ファンモータ11の回転軸13の下端部に固定されている。ハブ15は、平面視で回転軸13を中心とする円形状を有している。
【0042】
シュラウド19は、ハブ15に対して回転軸13の軸方向Aの前方Fに対向配置されている。シュラウド19は、回転軸13を中心として円形に開口する空気吸込口19aを有している。シュラウド19の外径は、前方Fから後方Rに向かうにつれて大きくなっている。
【0043】
複数の羽根21は、ハブ15とシュラウド19との間に空気吸込口19aの周方向に沿って所定の間隔をあけて配列されている。各羽根21の前方Fの端部はシュラウド19の内面に接合されている。各羽根21の後方Rの端部はハブ15に接合されている。各羽根21は、ハブ15の半径方向に対して回転方向の反対向き(後ろ向き)に傾斜した後ろ向き羽根である。
【0044】
<ベルマウスの構造>
図1に示すように、ベルマウス25は、シュラウド19に対して軸方向Aの前方Fに対向配置されている。図4及び図5に示すように、ベルマウス25は、ベルマウス本体22と、フランジ部24とを含む。フランジ部24は、ベルマウス本体22の前方Fの周縁から半径方向外側に張り出した部位である。
【0045】
ベルマウス本体22は、第1フレア部材221と、第2フレア部材222とを含む。第1フレア部材221は、軸方向Aの前方Fから後方Rに向かうにつれて内径及び外径が小さくなる部位である。第2フレア部材222は、第1フレア部材221よりも軸方向Aの後方Rに位置し、軸方向Aの前方Fから後方Rに向かうにつれて内径及び外径が大きくなる部位である。第2フレア部材222は、第1フレア部材221と一体成形されたものではなく、第1フレア部材221とは別成形された後に第1フレア部材221の後端部に例えば後述する方法により接合されている。
【0046】
ベルマウス本体22は、前後方向に貫通する貫通口25aを有している。ベルマウス25の外周面25s(ベルマウス本体22の外周面25s)は、第1フレア部材221の領域では外径が前方Fから後方Rに向かうにつれて小さくなる湾曲形状を有しており、第2フレア部材222の領域では外径が前方Fから後方Rに向かうにつれて大きくなる湾曲形状を有している。
【0047】
図1に示すように、第2フレア部材222は、空気吸込口19aの周縁部19eとの間に所定の隙間を設けた状態で空気吸込口19aからシュラウド19内に挿入されている。これにより、ベルマウス25は、貫通口25aを通じて前方Fから後方Rに向かって吸い込まれる空気をシュラウド19の空気吸込口19aに案内することができる。
【0048】
図4〜6に示すように、第1フレア部材221は、その外周面25sの周方向に沿って所定の間隔で配列された複数の壁部27を有している。各壁部27は、第1フレア部材221の外周面25sから起立している(立設されている)。各壁部27は、軸方向A及びベルマウス25の半径方向に略平行となるように軸方向Aの前方Fから後方Rに向かって外周面25sに沿って延びている。
【0049】
第1フレア部材221と第2フレア部材222とを接合する方法としては、これらが合成樹脂により形成されている場合には、超音波溶着などの溶着、接着剤による接着、ねじによる接合、突起と溝(孔)との係合などの方法が例示でき、これらが金属により形成されている場合には、上記の方法の他、例えば溶接、ろう付などの方法が例示できる。複数の壁部27が形成された第1フレア部材221と、第2フレア部材222とがこれらの接合方法により接合される。
【0050】
図6に示すように、ベルマウス25は、隣り合う壁部27,27と外周面25sとにより三方が囲まれた複数の空気流路29を有している。この空気流路29は、軸方向Aに沿った方向に向いている。この空気流路29は、隣り合う壁部27とベルマウス25の外周面25sとによって両サイドと底とが囲まれているが、この空気流路29への漏れ流れの入口と出口とは開放されて遮るものがない。したがって、漏れ流れは、壁部27間の空気流路29の入口に確実に導かれ、空気流路29内を前方Fから後方Rに向かって案内される。
【0051】
各壁部27の後方Rの端部(後端部)27rは、シュラウド19における軸方向Aの前方Fの端部に対して半径方向に対向する位置又はその近傍に位置している。各壁部27の後端部27rは、シュラウド19における軸方向Aの前方Fの端部よりも前方Fに位置していてもよい。
【0052】
図7及び図8に示すように、各壁部27の外周面25sからの立設高さは、後端部27rから前方Fの端部(前端部)27fに向かって次第に増加している。各壁部27は、前端部27fにおける立設高さHfが、後端部27rにおける立設高さHrよりも大きい。立設高さHr及び立設高さHfは、特に限定されるものではないが、例えば、立設高さHrを1mm〜10mm程度とし、立設高さHfを3mm〜20mm程度とすることができる。
【0053】
図6及び図8に示すように、各壁部27の後端部27rは、軸方向Aに対して傾斜した傾斜面である。この傾斜面は、外周面25sからの立設高さが前方Fから後方Rに向かって次第に減少している。
【0054】
一方、図8に示すように、空気吸込口19aの周縁部19eは、軸方向Aに対して傾斜した傾斜面である。この周縁部19eの傾斜面は、各壁部27の後端部27rの傾斜面に対面して設けられている。言い換えると、各壁部27の後端部27rの先端は、シュラウド19の前方Fの端部である周縁部19eの先端と半径方向にほぼ対向する位置(ほぼ同じ高さ)に設けられている。周縁部19eの傾斜面と壁部27の端部27rの傾斜面は、共に、前方Fよりも後方Rの方が半径方向の内側に位置するように傾斜している。このように端部同士が前記傾斜面で構成されているので、各壁部27の後端部27rをシュラウド19の周縁部19eに対向する位置又はその近傍まで延設できる。
【0055】
次に、遠心送風機51における空気の流れについて説明する。図8に示すように、ベルマウス25のベルマウス本体22によりシュラウド19の空気吸込口19aに案内される主流Sの空気は、空気吸込口19aの近傍においては、主にシュラウド19の回転軸13の軸方向Aに沿った方向に流れている。
【0056】
壁部27を有していない従来の遠心送風機では、破線の矢印M1で示すように、漏れ流れM1は、空気吸込口19aの近傍において、シュラウド19が回転方向Kに回転することにより生じる回転方向Kへの空気の流れに影響されて軸方向Aから前記回転方向Kに傾斜した方向に向いて流れている。したがって、この漏れ流れM1が主流Sと合流すると、主流Sは漏れ流れM1によって流れが乱されることになり、送風音が大きくなるとともに、ファン効率の低下につながる。
【0057】
一方、本実施形態の遠心送風機51では、一点鎖線の矢印Mで示すように、漏れ流れMは、隣り合う壁部27とベルマウス本体22の外周面25sとに囲まれる空気流路29に沿って前方Fから後方Rに案内され、ベルマウス本体22の後方Rの端部とシュラウド19の前方Fの端部との間の隙間を通過する。この隙間を通過した漏れ流れMは、空気吸込口19aの近傍において、従来と比べて流れ方向が軸方向Aに近づくように矯正されている。したがって、漏れ流れMが主流Sに合流するときの干渉が抑制される。
【0058】
次に、ベルマウス25が合成樹脂製である場合を例に挙げてベルマウス25の作製方法について説明する。本実施形態における第1フレア部材221と第2フレア部材222とは一体成形ではなく互いに別成形される。
【0059】
図9(A),(B)に示すように、第1フレア部材221及びフランジ部24は、上部金型61及び下部金型62を用いて射出成形される。上部金型61は、第1フレア部材221の内周面及びフランジ部24の上面の形状に沿った形状を有している。下部金型62は、第1フレア部材221の外周面25s、複数の壁部27及びフランジ部24の下面の形状に沿った形状を有している。上部金型61と下部金型62は、互いに離接する方向(上下方向)にスライド移動可能である。
【0060】
図9(A)に示すように、金型61と金型62が互いに最も接近した状態のときに、第1フレア部材221及びフランジ部24と同形状の空間が内部に形成され、この空間に溶融した樹脂が射出される。その後、図9(B)に示すように、これらの金型61,62が互いに離れる方向にスライド移動し、成形体が取り出される。この成形体は、第1フレア部材221及びフランジ部24が一体成形されたものである。この第1フレア部材221の外周面25sには複数の壁部27が形成されている。
【0061】
第2フレア部材222は、上記と同様にして図略の上部金型と下部金型を用いて射出成形される。そして、成形された第1フレア部材221及びフランジ部24と、第2フレア部材222とが超音波溶着による接合方法により接合される。
【0062】
図10(A)は、第1フレア部材221と第2フレア部材222とが接合される前の状態を示す断面図であり、図10(B)は、第1フレア部材221の後端部と第2フレア部材222の前端部とが超音波溶着により接合されるときの状態を示す断面図であり、図10(C)は、第1フレア部材221と第2フレア部材とが接合された状態を示す断面図である。
【0063】
図10(A)に示すように、第1フレア部材221の後端部と第2フレア部材222の前端部とは、互いに嵌合する形状を有している。第1フレア部材221の後端部には、外周面から半径方向内側に凹む段差部が形成されている。この段差部は、半径方向外側に向いた第1接合面S1を有している。第2フレア部材222の前端部には、内周面から半径方向外側に凹む段差部が形成されている。この段差部は、半径方向内側に向いた第2接合面S2を有している。
【0064】
図10(B)に示すように、第1フレア部材221の後端部に第2フレア部材222の前端部を当接させ、第1フレア部材221の前記段差部と第2フレア部材222の前記段差部とが嵌合した状態では、第1接合面S1と第2接合面S2とは半径方向に対向する。この状態では、第1接合面S1と第2接合面S2とは近接又は当接している。また、この状態では、第1フレア部材221の内周面と第2フレア部材222の内周面はほぼ連続しており、第1フレア部材221の外周面と第2フレア部材222の外周面はほぼ連続している。
【0065】
図10(B)に示す超音波溶着装置は、超音波ホーン71と受け治具(当て板)72とを備えている。超音波ホーン71及び受け治具72は、一方又は両方が互いに離接する方向(図10(B)では左右方向)にスライド移動可能である。このスライド移動により第1フレア部材221と第2フレア部材222の当接部分を半径方向に加圧することができる。超音波ホーン71は、超音波の振動エネルギーを前記当接部分に付与することができる。この振動エネルギーによって第1フレア部材221と第2フレア部材222が振動して摩擦熱が生じる。この摩擦熱によって第1接合面S1及び第2接合面S2の一方又は両方が溶融し、これらの接合面S1,S2が接合される。この接合動作を前記当接部分の全周にわたって行うことにより、図10(C)に示すベルマウス25が得られる。得られたベルマウス25は、段差状の接合面が内部に形成されている。
【0066】
<実施形態の概要>
本実施形態をまとめると以下のようになる。
【0067】
本実施形態では、ベルマウス25が複数の壁部27を有しているので、壁部27が漏れ流れの抵抗となり、漏れ流れの量を低減させることができる。しかも、漏れ流れの方向を主流の方向に近づけることができるので、漏れ流れが主流と合流するときに主流が乱されるのを抑制できる。これにより、ファン効率の低下を抑制することができ、また、騒音低減効果も期待できる。
【0068】
本実施形態では、第1フレア部材221と第2フレア部材222とが別体として作製され、第2フレア部材222が第1フレア部材221の後端部に接合されることにより、ベルマウス25を作製することができる。
【0069】
本実施形態では、各壁部27の後端部27rは、シュラウド19における前記軸方向の前方Fの端部よりも前方Fに位置しているので、各壁部27がシュラウド19に接触するのを防止できる。
【0070】
本実施形態では、ベルマウス25は、例えば第1フレア部材221の後端部を前記第2フレア部材222の前端部に超音波溶着により接合することにより得られる。
【0071】
本実施形態では、第1フレア部材221の後端部は半径方向に向いた第1接合面を有し、第2フレア部材222の前端部は第1接合面に対して半径方向に対向する第2接合面を有している。したがって、第1フレア部材221の後端部と第2フレア部材222の前端部との当接部分を超音波ホーンと受け治具により半径方向に挟み込み、前記当接部分を半径方向に押圧した状態で第1接合面に第2接合面を超音波溶着することができる。すなわち、接合面同士の対向方向と押圧方向とを一致させることができるので、良好な接合強度を得ることができる。また、接合時の押圧方向である半径方向に第1接合面と第2接合面とが対向する構成であるので、互いに位置が押圧によって半径方向にずれるのが抑制され、第1フレア部材221の後端部に対して第2フレア部材222の前端部を正確に位置決めできる。
【0072】
本実施形態では、各壁部27の前端部27fにおける前記第1フレア部材221の外周面25sからの立設高さは、各壁部27の後端部27rにおける前記第1フレア部材221の外周面25sからの立設高さよりも大きいので、各壁部27は、前記立設高さが大きな後方の端部において多くの漏れ流れをキャッチして空気流路に導くことができる一方で、前記立設高さが小さい前方の端部においてはシュラウドの空気吸込口の周縁部との接触を抑制できる。
【0073】
本実施形態では、各壁部27の前記第1フレア部材221の外周面25sからの立設高さは、後端部27rから前端部27fに向かって次第に増加している。このように各壁部27の立設高さが滑らかに変化しているので、空気流路内の空気の流れがより円滑になる。
【0074】
本実施形態では、各壁部27における前記後端部27rと前記空気吸込口19aの前記周縁部19eとは、互いに対面する前記傾斜面であるので、各壁部27をシュラウド19の近傍まで延設でき、しかも回転時に互いが接触するのを抑制できる。
【0075】
本実施形態では、各壁部27の後端部27rは、シュラウド19における前記軸方向の前方Fの端部に対して半径方向に対向する位置又はその近傍に位置しているので、シュラウド19の空気吸込口19aまで、又は空気吸込口19aの近傍まで漏れ流れを案内することができる。これにより、漏れ流れに起因するファン効率の低下をさらに抑制できる。
【0076】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0077】
例えば、前記実施形態では、第1フレア部材221と第2フレア部材222とを超音波溶着により接合する場合を例示したが、これに限定されない。これらは、他の方法で接合されてもよい。
【0078】
また、前記実施形態では、第1フレア部材221と第2フレア部材222との接合面が段差状である場合を例示したが、これに限定されず、接合方法によっては段差状でなくてもよい。また、段差状の接合面は、図10(C)に示す形態とは内外が逆の段差であってもよい。
【0079】
また、前記実施形態では、各壁部の前記立設高さを後方から前方に向かって次第に増加させた形態を例示したが、前記立設高さを後方から前方に向かって段階的に増加させてもよい。また、各壁部の前記立設高さは後方から前方まで一定であってもよく、後方から前方に向かって減少していてもよい。
【0080】
また、前記実施形態では、各壁部の後端部は、前記立設高さが前記前方から後方に向かって次第に減少する傾斜面であり、前記空気吸込口の前記周縁部は、前記壁部の前記傾斜面に対面する傾斜面である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。各壁部の後端部は、傾斜面ではなく、前記軸方向に垂直な面などであってもよい。同様に、前記空気吸込口の前記周縁部は、前記軸方向に垂直な面などであってもよい。
【0081】
また、前記実施形態では、各壁部の後端部の先端は、シュラウドの前方の端部である周縁部の先端と半径方向にほぼ対向する位置(ほぼ同じ高さ)に設けられている場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。各壁部の後端部は、シュラウドの前方の端部よりも前方又は後方に設けられていてもよい。
【0082】
また、前記実施形態では、遠心送風機を天井埋込型のカセット室内機に用いた場合を例示したが、他のタイプの室内機に用いることもでき、また、空気調和装置以外の他の用途に用いることもできる。
【符号の説明】
【0083】
11 ファンモータ
13 回転軸
15 ハブ
17 空気吸込口
19 シュラウド
19a 空気吸込口
19e 空気吸込口の周縁部
21 羽根
22 ベルマウス本体
221 第1フレア部材
222 第2フレア部材
23 羽根車
24 フランジ部
25 ベルマウス
25a 貫通口
25s ベルマウスの外周面
26 ベルト部
27 壁部
27f 壁部の前端部
27r 壁部の後端部
29 空気流路
31 室内機
A ファンモータの回転軸の軸方向
F 前方
R 後方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形に開口する空気吸込口(19a)を有するシュラウド(19)と、前記空気吸込口(19a)の周方向に沿って前記シュラウド(19)の内面に配列された複数の羽根(21)とを含み、ファンモータ(11)の回転軸(13)に固定される羽根車(23)と、
前記シュラウド(19)よりも前記回転軸(13)の軸方向の前方(F)に配置されたベルマウス(25)と、を備え、
前記ベルマウス(25)は、
前記軸方向の前方(F)から後方(R)に向かうにつれて内径及び外径が小さくなる第1フレア部材(221)と、
前記第1フレア部材(221)の後端部に接合され、前記空気吸込口(19a)の周縁部(19e)との間に所定の隙間を設けた状態で前記シュラウド(19)内に挿入され、前記軸方向の前方(F)から後方(R)に向かうにつれて内径及び外径が大きくなる第2フレア部材(222)と、を有し、
前記第1フレア部材(221)は、その外周面(25s)の周方向に沿って所定の間隔で配列されて外周面(25s)から起立する複数の壁部(27)を有し、
各壁部(27)は、前記軸方向及び前記ベルマウス(25)の半径方向に略平行となるように前記軸方向の前方(F)から後方(R)に向かって前記外周面(25s)に沿って延びている、遠心送風機。
【請求項2】
各壁部(27)における前記軸方向の後方(R)の端部は、前記シュラウド(19)における前記軸方向の前方(F)の端部よりも前方(F)に位置している、請求項1に記載の遠心送風機。
【請求項3】
前記第1フレア部材(221)の後端部は前記第2フレア部材(222)の前端部に超音波溶着により接合されている、請求項1又は2に記載の遠心送風機。
【請求項4】
前記第1フレア部材(221)の後端部は、半径方向に向いた第1接合面を有し、
前記第2フレア部材(222)の前端部は、前記第1接合面に対して半径方向に対向する第2接合面を有し、
前記第1接合面と前記第2接合面とが半径方向に対向するように前記第1フレア部材(221)の後端部と前記第2フレア部材(222)の前端部とが当接しており、この当接部分は超音波ホーンと受け治具により半径方向に挟み込まれた状態で超音波溶着されたものである、請求項3に記載の遠心送風機。
【請求項5】
各壁部(27)の前方(F)の端部(27f)における前記第1フレア部材(221)の外周面(25s)からの立設高さは、各壁部(27)の後方(R)の端部(27r)における前記第1フレア部材(221)の外周面(25s)からの立設高さよりも大きい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の遠心送風機。
【請求項6】
各壁部(27)の前記第1フレア部材(221)の外周面(25s)からの立設高さは、後方(R)の端部(27r)から前方(F)の端部(27f)に向かって次第に増加している、請求項5に記載の遠心送風機。
【請求項7】
各壁部(27)における後方(R)の端部(27r)は、前記第1フレア部材(221)の外周面(25s)からの立設高さが前方(F)から後方(R)に向かって次第に減少する傾斜面であり、
前記空気吸込口(19a)の前記周縁部(19e)は、前記壁部(27)の前記傾斜面に対面する傾斜面である、請求項1〜6のいずれかに記載の遠心送風機。
【請求項8】
各壁部(27)における前記軸方向の後方(R)の端部は、前記シュラウド(19)における前記軸方向の前方(F)の端部に対して半径方向に対向する位置又はその近傍に位置している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の遠心送風機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の遠心送風機を備えた空気調和機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−211574(P2012−211574A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78668(P2011−78668)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】