説明

遠心鋳造用中子の造型方法

【課題】遠心鋳造用の中子を金型内で成型した後、金型から中子を取り出す時に、中子が落下して傷が付くことを簡単に防ぐ。
【解決手段】本発明の造型方法は、外枠1と内枠20から成る金型内で中子40を成型した後、外枠1と中子40を一体として、内枠20の上に抜き出し、続いて、外枠1と中子40を反転させる。反転させた状態のまま、外枠1と中子40をローラー台60の上に置き、それから、一対の割型2,2’を割り面10で離間して外枠1を分割し、外枠1を中子40から分離して中子を取り出すこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心鋳造用中子の造型方法に関し、特に、金型で中子を成型してから、金型から中子を取り出すまでの造型方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳鉄管の製造方法として遠心力鋳造法が用いられてきた。これは、図4〜図5に示すように、円筒形のモールドM(鋳型)の一端に中子70を取り付け、そのモールドMを高速で回転させた状態で、モールドの内面に鋳鉄の溶湯aを流し込む鋳造法である。
流し込まれた溶湯aは、遠心力を受けてモールド内面に張り付けられると共に、モールドMと中子70との間に流れ込んで中子70の外面にも接触する。その後、溶湯aが冷えてパイプ状に固まってから、そのパイプ(鋳鉄管P)をモールドMから抜き出す。
この時、モールドから抜き出した鋳鉄管Pの一端の内面は、モールドに取り付けた中子70の外面と同じ形に出来上がっている。
【0003】
中子は、図7に示すように中子用金型を用いて成型される。
中子用金型は、外枠71の内側に内枠72をはめ込む構造であり、外枠の内面と内枠の外面との間には、空間(充填スペース73)が形成されている。その充填スペース73に、樹脂を混ぜた砂を中子用金型の上から投入して充填した後、樹脂を硬化させて、充填スペース73の形状と同一の中子70を成型する。このとき、成型された中子70の上部には、中子の外径方向に突出するツバ部75が形成されている。(図7(イ)参照)
ここで、外枠71は、図8に示すように、2個の割型74を割り面76で合わせてできている。割型74は、外枠71を縦に2分割してできる半割り形状の部材であり、外枠を縦に半割りする分割面を割り面と呼んでいる。
【0004】
成型が完了すると、外枠71を上方へ移動させて内枠72と分離する。その際、中子70は、外枠71の内面の凹凸部分との噛み合いにより支持され、外枠と一緒に一体として内枠の上方に移動する。(図7(ロ)参照)
次に、外枠71を床に置いてから、割り面76で縦に分割して2個の割型74に分け、その2個の割型を互いに離れていくように反対方向に水平移動させていく。そうすると、外枠の内面と中子の外面との噛み合いが徐々に減っていき、最後は中子70と外枠71(割型74)とが完全に分離され、中子が取り出される。(図7(ハ)〜(ニ)参照)
このとき、中子は、外枠(割型)との噛み合いによる支持が無くなるため、他に支持が無ければ落下する。落下を防ぐには、中子の内面をアームhで支えるなど、中子の支持を別途新たに行う必要がある。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−64445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでは、中子と一緒に内枠の上に抜き出した外枠71を、床に置いてから、割り面76で縦に分割して、中子70を取り出していた。この場合、床面と接する外枠71の下端よりも、中子70の下端のほうが上にあるため、外枠71を分割して中子を取り出す時に、中子70が床面まで落下し、中子に傷が付く恐れがあった。
【0007】
傷が付いている中子を使って鋳造を行うことは、その傷が鋳鉄管の一端の内面に表れる恐れがあるため、鋳造品質上好ましくない。
中子に傷を付けないために、中子を外枠から取り出す際は、機械や人が中子を支えて落下の防止を行ってきた。これは、設備の複雑化や作業者の負担増を招いていた。
本発明は、設備の複雑化や作業の負担が少なく、中子が傷付くことを防ぐ造型方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の造型方法は、円弧面を有する割型を割り面で合わせて円孔状の内向き造型面を備えた外枠を形成し、その外枠の内側に、外向き造型面を備えた内枠を下から嵌め込み、外枠の内向き造型面下部に設けた受け部と内枠の外向き造型面下部に設けた突部を合わせ、円周方向に伸びる溝または突条を備えた内向き造型面と成型した中子を上に抜き出すための抜き勾配を備えた外向き造型面との間に充填スペースを形成し、充填スペースに上から砂を投入し充填して中子を成型し、成型完了後に、溝または突条で外枠と噛み合う中子と外枠を一体として、内枠の上に抜き出してから、外枠を反転し、外枠の上面を下に向けた状態で、割型を中子の径方向に割り面で離間して、中子から外枠を分離して中子を取り出すこととしたのである。
【0009】
この方法によれば、中子の砂投入面(ツバ部75側の端面)側を下にした状態で外枠を分割するから、中子の砂投入面が既に接地していて、外枠と中子の分離時に中子の落下が無いか、または、仮に中子が落下したとしても、中子の砂投入面(ツバ部75側の端面)が接地面となり、接地面積が広くなるため、破損しにくく傷も付きにくい。また、接地面となる砂投入面(ツバ部75側の端面)に傷が付いても、この部分は鋳造時に溶湯と接触するところではないため、鋳鉄管にはその傷が表れず、鋳造品質に悪影響を与えない。
【0010】
中子を成型完了後に、溝または突条で外枠と噛み合う中子と外枠を一体として、内枠の上に抜き出して外枠を反転させるに際し、外枠の外周に突出する一対の回転軸で外枠を支持すれば、外枠の反転をスムーズに行うことができる。
【0011】
前記回転軸が円筒又は円柱形であり、その軸心線が外枠の重心を通るようにすれば、回転軸を中心として、外枠をより軽い力で反転させることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、以上のように、中子造型時に外枠を反転することとし、さらに、その反転時に支持する回転軸を外枠に設けたから、中子の損傷を容易に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における中子成型中の状態を表す縦断面図である。
【図2】同、外枠の平面図である。
【図3】同、中子成型完了後の造型操作を表す縦断面図である。
【図4】遠心力鋳造の説明図である。
【図5】遠心力鋳造時の受口部の断面詳細図である。
【図6】中子と保持具の斜視図である。
【図7】従来の中子造型方法の説明図である。
【図8】同、従来の外枠の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の一実施形態について図1〜図6を使って説明する。
中子は、鋳鉄管Pの一端(受口部)の内面形状を形成する物であり、図4〜図6に示すように、金属製の保持具80と共にモールドと軸心を合わせた状態で、モールドMの一端に取り付けられ、鋳鉄管の鋳造に使用される。
一端に中子をセットしたモールドを回転させ、他端からモールド内面に溶湯aを流し込むと、溶湯aはモールド内面と中子外面の間にも流れ込み、鋳鉄管の一端(受口部)を形成する。(図5参照)
【0015】
中子40の成型は、外枠1と内枠20から成る中子用金型を用いて行う。
図1は、中子の成型中の状態を示す縦断面図であり、円筒形状の外枠1の内側に、同じく円筒形の内枠20を入れて、両枠の下側で嵌合した状態を表している。嵌合した状態で内枠外面と外枠内面との間に出来る空間(充填スペース41)に砂を投入し、充填している。この砂には予め、樹脂がコーティングされており、その樹脂の硬化反応が進むことにより、充填した砂が固まり、中子40が成型される。
【0016】
充填スペース41の上側は開口しており、砂はこの開口部に上から投入される。
充填スペース41の下側は、外枠1と内枠20の嵌合により閉じられており、充填時に砂がここから漏れることはない。
充填スペース41を形成する外枠1の内面には、径方向に突出したり窪んだりする凹凸が多数あり、これらは、円周方向に伸びて一周し、内側に突出する突条8や外側に窪む溝7を形成している。このように、外枠の内面(内向き造型面9)は、径方向には入り組んだ複雑な形状となっている。
これらの突条8や溝7の部分にも、砂が流入し隙間無く充填されるので、成型される中子40は、充填スペース41の形状と同じ形に成型される。このため、中子40の外面が外枠1の内面(内向き造型面9)と隙間無く噛み合うことになる。
【0017】
図2は外枠の平面図である。
外枠1は、一対の割型2,2’を、割り面10で合わせたものである。外枠1の内面は、2個の割型2,2’の円弧面90,90’を合わせた円孔形状となっており、前述の通り、その表面には円周方向に伸びる突条8や溝7が形成されている。
割型2,2’は、円筒をその軸心方向に半割りにしてできる円弧状のものであり、割型2,2’同士の固定は、着脱可能な固定具(図示せず)で割り面同士を合わせて行う。
【0018】
割型2,2’の外周円弧91,91’の中央部には、それぞれ外側に向けて突出する1本の回転軸4,4’が強固に取り付けられている。
2個の割型2,2’を割り面10で合わせて外枠1をつくると、各割型に取り付けられた回転軸4,4’の軸心11,11’は一致する。また、そのとき、軸心11,11’の延長線は外枠1の重心を通っている。
回転軸4,4’の一端は、割型2,2’の外周に強固に取り付けられ、他端には回転軸4,4’よりも径の大きな円板5が溶接されている。この円板5は、ワイヤー50等の吊り具を回転軸4,4’に掛けたときに、吊り具が回転軸から外れるのを防ぐ。
【0019】
外枠1(割型2,2’)の内面下端には、径方向の外側に凹んだ窪みがあり、この窪みは円周方向に一周していて、内枠20と嵌合する受け部6を形成している。この受け部6は、外枠1の内側に内枠20を下から挿入した際に、内枠20の外面下端に設けた突部21と当たる。(図3(a)参照)
外枠1と内枠20の嵌合時には、この受け部6と突部21とは隙間が狭く嵌合されるため、嵌合部分には砂が入り込まない。
割り面10は、2個の割型2,2’を合わせて金属製の固定具(図示せず)で締めたときに、砂が漏れ出る隙間が生じないように平滑に仕上げられている。
【0020】
内枠20の外面下端にある突部21は、径方向の外側に突出した段差で、この段差は円周方向に一周している。外枠1を内枠20に上からはめたときに、外枠内面の受け部6と、この突部21がはまり合う。(図3(a)参照)
内枠20の外面は、その下部を除き、平坦な外向き造型面22となっている。また、内枠20の外形は、成型後の中子の抜き勾配をとるために、内枠上端の外径が内枠下部の外径よりも少し小さい、緩やかなテーパ形状を成している。
また、内枠20の下端は、円形板状の台座30の上面にボルト(図示せず)で固定されている。
【0021】
図3は、中子成型完了後の中子の取り出し方を説明する図である。
充填スペース41に砂を投入・充填し、その後、砂に混ぜた樹脂の硬化が終了したら、中子40の取り出し作業を始める。
【0022】
まず、図3(a)に示すように、一対の回転軸4,4’のそれぞれにワイヤー50を掛けて、クレーン等により各ワイヤーを同時に引き上げる。そうすると、内枠20と台座30を下に残したまま、外枠1と中子40が一体として上に吊り上げられる。
これで、外枠1と中子40を内枠20から取り外す作業は、完了する。
【0023】
次に、吊り上げた状態のままで、中子40と一体の外枠1を、ほぼ水平になっている回転軸4,4’を中心として、人の手で半回転させる。これで、外枠1の上面が下に向き、外枠1の反転が完了する。
この時、中子40と外枠1は突条8や溝7で嵌まり合っているため、中子40が外枠1から外れたり抜け落ちたりすることはない。
このまま、図3(b)に示すように、外枠1の上面が下を向いた状態(反転状態)で、クレーン等の操作により、中子40と一体の外枠1を外枠分割用ローラー台60の上に降ろす。この時、割型2,2’の分割方向とローラーの回転方向を合わせておく。
これで、中子の砂投入側(ツバ部42側)の端面が、ローラー台60に接触するか、または少しの隙間を空けてローラー台60に臨んでいる状態となっている。
【0024】
次に、割型2,2’同士を固定していた固定具(図示せず)を取り外して、固定を解除し、割り面10で割型2,2’を分割可能にしてから、割型2,2’を、それぞれ、反対方向(割り面10同士が離れる方向)にローラー台60上で水平移動させる。
【0025】
割型同士を離していくと、中子の外面と割型(外枠)の内面との噛み合いが少しずつ減っていき、最後は噛み合いが無くなり、割型2,2’による中子40の支えが無くなる。
割型2,2’による中子40の支えが無くなった時に、中子40のツバ部42側の端面がローラー台60の上面と接している場合は、割型2,2’に代わり、ローラー台60が中子を支える。(図3(c)参照)
また、割型2,2’による中子40の支えが無くなった時に、中子のツバ部42側の端面とローラー台60の上面との間に隙間がある場合は、ローラー台上面に中子のツバ部42側の端面が接触するまで、中子40は落下し、その後、ローラー台60の上面が中子40を支える。
【0026】
最後に、中子40の搬出の邪魔にならない位置まで、各割型2,2’を移動させる。これで外枠1からの中子40の取り出しを終え、中子の造型作業を完了し、取り出した中子を次工程へと搬送する。
【符号の説明】
【0027】
1,71 外枠
2,2’,74, 割型
4,4’ 回転軸
5 円板
6 受け部
7 溝
8 突条
9 内向き造型面
10,76 割り面
11,11’ 軸心
20,72 内枠
21 突部
22 外向き造型面
30 台座
40,70 中子
41,73 充填スペース
42,75 ツバ部
50 ワイヤー
60 ローラー台
80 保持具
90,90’ 円弧面
91,91’ 外周円弧
P 鋳鉄管
M モールド
a 溶湯
h アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧面を有する割型を割り面で合わせて円孔状の内向き造型面を備えた外枠を形成し、その外枠の内側に、外向き造型面を備えた内枠を下から嵌め込み、外枠の内向き造型面下部に設けた受け部と内枠の外向き造型面下部に設けた突部を合わせ、円周方向に伸びる溝または突条を備えた内向き造型面と成型した中子を上に抜き出すための抜き勾配を備えた外向き造型面との間に充填スペースを形成し、その充填スペースに上から砂を投入し充填して中子を成型し、成型完了後に、溝または突条で外枠と噛み合う中子と外枠を一体として、内枠の上に抜き出してから、割型を中子の径方向に割り面で離間して、中子から外枠を分離して中子を取り出す遠心鋳造用中子の造型方法であって、
中子を成型完了後に、溝または突条で外枠と噛み合う中子と外枠を一体として、内枠の上に抜き出してから、外枠を反転し、外枠の上面を下に向けた後、割型を中子の径方向に割り面で離間して、中子から外枠を分離して中子を取り出すことを特徴とする遠心鋳造用中子の造型方法。
【請求項2】
中子を成型完了後に、溝または突条で外枠と噛み合う中子と外枠を一体として、内枠の上に抜き出して外枠を反転させるに際し、外枠の外周に突出する一対の回転軸で外枠を支持することを特徴とする請求項1に記載の遠心鋳造用中子の造型方法。
【請求項3】
前記回転軸が円筒又は円柱形であり、その軸心線が外枠の重心を通ることを特徴とする請求項2に記載の遠心鋳造用中子の造型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−147971(P2011−147971A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11552(P2010−11552)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】