説明

遠赤外線を放射するひざ掛け

【課題】本発明は、ブラックシリカを含有する遠赤外線放射シートをひざ掛けに装着し、従来にない暖かさと保温性のあるひざ掛けを得ることを目的とする。
【解決手段】 繊維布帛からなるひざ掛けにおいて、少なくとも一箇所にポケットを設け、該ポケット内に金属シートとブラックシリカを含有する遠赤外線放射シートと発熱層を積層した発熱体を挿入することによって、従来にない暖かさと保温性のあるひざ掛けを得えられることを見出し本発明に到達した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シートと遠赤外線放射シートと発熱層とを積層した発熱体が挿入されたひざ掛けに関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠赤外線を放射するシートをひざ掛けに取り付け、人体の熱により暖められて遠赤外線を放射させるひざ掛けや、防寒着などはよく知られている。
【0003】
特許文献1のひざ掛けにおいては、特に脚部を覆う部分に、遠赤外線放射シートに熱反射材を付加して、脚部の保温に効果を発揮するひざ掛けを開示している。しかしながら遠赤外線を放射するシートが人体の熱により暖められて遠赤外線を放射するまでには、かなりの時間を要し、またその効果を直ぐに実感できるものではなかった。
【0004】
また、出願人は、特許文献2において、ブラックシリカを用いた遠赤外線放射シートを提案しており、本発明は、その遠赤外線放射シートを使って、短時間で体の内部から暖かくなり、保温性に優れたひざ掛けとしたものである。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3059643号
【特許文献2】特願2007−174194
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ブラックシリカを含有する遠赤外線放射シートをひざ掛けに装着し、従来にない暖かさと保温性のあるひざ掛けを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]繊維布帛からなるひざ掛けにおいて、少なくとも一箇所にポケットを設け、該ポケット内に金属シートとブラックシリカを含有する遠赤外線放射シートと発熱層を積層した発熱体が挿入されたことを特徴とするひざ掛け。
【0009】
[2]前記ブラックシリカを含有する遠赤外線放射シートが、基布層の上面側に、樹脂及びブラックシリカを含有してなる遠赤外線放射層が積層一体化されると共に、前記基布層の下面側に、樹脂を含有してなる裏面層が積層一体化された遠赤外線放射シートであることを特徴とする前項1に記載のひざ掛け。
【0010】
[3]前記基布層が、ポリエステル製織布からなり、前記遠赤外線放射層を構成する樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられ、前記裏面層を構成する樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられている前項2に記載のひざ掛け。
【0011】
[4]前記遠赤外線放射層におけるブラックシリカの含有率が4〜30質量%であることを特徴とする前項2または3に記載のひざ掛け。
【0012】
[5]前記発熱体は、USB電源に接続可能なUSBプラグを備えていることを特徴とする前項1に記載のひざ掛け。
【発明の効果】
【0013】
[1]の発明では、繊維布帛からなるひざ掛けにおいて、少なくとも一箇所にポケットを設け、該ポケット内に金属シートとブラックシリカを含有する遠赤外線放射シートと発熱層を積層した発熱体が挿入されるので、遠赤外線放射シートが発熱層によって暖められて遠赤外線を放射し、金属シート側に放射した遠赤外線は、金属シートに反射して反金属シート側にだけ遠赤外線が放射され、効率的に人体を暖めることができる。また、ブラックシリカを含有する遠赤外線放射シートであるので、遠赤外線が十分放射され、加温状態(例えば40度程度)では、より多くの遠赤外線を放射するので、本発明のひざ掛けにおいては、遠赤外線が多量に放出されるものとすることができる。また、ひざ掛けと発熱体は、発熱体をポケットから取り出すことで簡単に分離でき、ひざ掛けが汚れても直ぐに洗濯することができる。
【0014】
[2]の発明では、ブラックシリカを含有する遠赤外線放射シートが、基布層の上面側に、樹脂及びブラックシリカを含有してなる遠赤外線放射層が積層一体化されると共に、前記基布層の下面側に、樹脂を含有してなる裏面層が積層一体化された遠赤外線放射シートであるので、遠赤外線放射シートの強度が確保され、層間剥離が生じ難く、耐久性も向上した遠赤外線放射シートとすることができる。
【0015】
[3]の発明では、前記基布層が、ポリエステル製織布からなるので、遠赤外線放射シートの強度がさらに向上し、前記遠赤外線放射層を構成する樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられ、前記裏面層を構成する樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられているので、遠赤外線放射シートは柔軟性に富んだものとなり、ひざ等の使用される場所に合わせて曲がりやすく、人体の形状に馴染みやすく、巻きつきやすいひざかけとすることができる。
【0016】
[4]の発明では、前記遠赤外線放射層におけるブラックシリカの含有率が4〜30質量%であるので、遠赤外線が十分に放射されると共に遠赤外線放射層の強度を十分に確保することができる。
【0017】
[5]の発明では、前記発熱体は、USB電源に接続可能なUSBプラグを備えているので、パーソナルコンピューターから簡単に電源をとることができ、パーソナルコンピューター等を使った事務作業でひざかけが必要なときに、直ぐに使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明では、図1、2に示すように、繊維布帛2からなるひざ掛け1に、ポケット3を設け、該ポケット内に発熱体4を挿入し、USBプラグ5から電源をとって発熱層6を加温し、遠赤外線放射シート7から遠赤外線を放射させるひざ掛け1である。また、図2に示すように、発熱体4は、基布層9の上面側に、樹脂及びブラックシリカを含有してなる遠赤外線放射層10が積層一体化されると共に、前記基布層9の下面側に、樹脂を含有してなる裏面層11が積層一体化された遠赤外線放射シート7と、発熱層6と金属シート8とを積層一体化している。
【0019】
本発明において、ひざ掛けの生地は、繊維布帛が好ましい。繊維布帛は、人体にやさしく接し、保温性やタッチ感が良好である。繊維の種類に付いては、特に限定されず、布帛の種類についても、織、編、刺し布等特に限定されない。
【0020】
次にひざ掛けに設けるポケットは、発熱体が挿入でき使用時に落下しないものであればよい。例えば、図1にあるように、発熱体の大きさに少し余裕を持たせた大きさで、ひざ掛けに縫い付けたものでよい。本発明では発熱体4と繊維布帛2は分離できるので、ひざ掛けが汚れたりした場合には、簡単に発熱体4を取り外して洗濯することができる。
【0021】
金属シート8としては、例えばアルミニウム蒸着した樹脂シート等を挙げられ、ブラックシリカから放射した遠赤外線を反射して、人体の方向に仕向けるものである。金属シート8を積層した発熱体4を、ひざ掛けに設けられたポケットに挿入する時は、遠赤外線放射シート7を内側(人体側)に、金属シート8を外側にして、遠赤外線を全て人体の方向に仕向けるように挿入すればよい。
【0022】
遠赤外線放射シート7は、ブラックシリカを含有する。ブラックシリカ(黒鉛珪石)は遠赤外線を放射する鉱物で、加温状態(例えば40度程度)では、より多くの遠赤外線を放射するので、本発明に好適な遠赤外線を放射する鉱物である。北海道の上ノ国で産出されるブラックシリカは有名であるが、特にこの産地に限定されるものではない。
【0023】
前記ブラックシリカの粒子径は、2〜20μmであるのが好ましい。2μm以上であることで製造時の作業性を向上でき、20μm以下であることで遠赤外線放射層10の強度をより向上させることができる。中でも、ブラックシリカの粒子径は、5〜10μmであるのが特に好ましい。
【0024】
発熱層6は、例えば図3のように、ニードルパンチフェルトからなる断熱材13の上に発熱線14を配線し、その上に熱接着シート15と表面材16を重ね、熱プレスによって熱接着シートを溶融圧着して断熱材13と表面材16で発熱線14を固定し、図1に示すコントローラー17に発熱線14を接続し、発熱温度を制御するものを挙げることができる。
【0025】
発熱体4は、例えば図2のように、金属シート8に前記発熱層6を重ね、さらにその上に前記遠赤外線放射シート7を積層し、接着剤で固定して指定形状に裁断して発熱体4を得る。また、発熱体4がUSB電源に接続可能なUSBプラグを備えていれば、事務作業をするときに、パーソナルコンピューターから簡単に電源をとることができ好ましい。
【0026】
また、遠赤外線放射シート7の一実施形態を図2に示すように、遠赤外線放射シート7は、遠赤外線放射層10と、基布層9と、裏面層11とで形成される。基布層9の上面に樹脂及びブラックシリカを含有してなる遠赤外線放射層10が積層一体化されると共に、前記基布層9の下面に、樹脂を含有してなる裏面層11が積層一体化されている。
【0027】
遠赤外線放射層10は、ブラックシリカを含有する樹脂層からなる。前記遠赤外線放射層10におけるブラックシリカの含有率は4〜30質量%であるのが好ましい。4質量%を下回ると遠赤外線が十分に放出されないし、30質量%を超えても遠赤外線放射層10の強度が低下し好ましくない。中でも、ブラックシリカの含有率は10〜25質量%であるのが好ましい。また、遠赤外線放射層10を構成する樹脂としては、特に限定されるものできないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂、ゴム等が挙げられる。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を用いるのが好ましく、この場合には、遠赤外線放射シート7は柔軟性に富んだものになる。
【0028】
前記基布層9は、前記遠赤外線放射層10単独では強度が不足することから、遠赤外線放射シート7としての十分な強度を確保するために必要なものである。前記基布層9としては、特に限定されるものではないが、例えば織物、編物、不織布等を挙げられる。また、基布層9の素材としても、特に限定されるものではないが、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の合成繊維、木綿、麻等の天然繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維等の無機繊維などが挙げられる。中でも、ポリエステル製の織布が好ましく、この場合には遠赤外線放射シート7の強度をさらに向上することができる。
【0029】
前記裏面層11は、樹脂を含有してなる層であり、このような裏面樹脂層を基布層9の下面に積層することで、裏面層11の樹脂が前記基布層9内に侵入することで、遠赤外線放射シート7としての耐久性をより向上させることができる。前記裏面層11を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、遠赤外線放射層10を構成する樹脂と同様で、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂、ゴム等が挙げられる。中でも、遠赤外線放射層10と裏面層11ともにエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を用いるのが好ましく、この場合には、遠赤外線放射シート7は柔軟性に富んだものになる。
【実施例】
【0030】
次に、この発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
<実施例1>
ひざ掛け1の生地として、起毛織物を用意し、図1のように90cm×60cmの大きさに裁断し、ほつれ止めをしてからポケット3(60cm×40cm)を縫い付けた。また、別の工程で、以下のように遠赤外線放射シートを作成した。エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂80質量部および粒径5〜10μmのブラックシリカ20質量部からなる樹脂組成物をカレンダー成形によって厚さ0.25mmにシート化して遠赤外線放射層10を形成せしめ、該シートが予熱を有している間に該シートに厚さ0.30mmのポリエステル製織布(平織り、繊維太さ830dtex)からなる基布層9を重ね合わせ一対の圧着ロール間で圧着した後、さらに該基布層9の非積層面にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる厚さ0.32mmの裏面層11を重ね、一対の圧着ロール間で圧着することによって厚0.75mmの遠赤外線放射シート7を得た。次に別の工程で図3に示す発熱層6(大きさ58cm×38cmでUSBプラグとコントローラー付き)を作成し、アルミニウム蒸着層を積層した厚さ2mmのポリエチレン発泡樹脂シートからなる金属シート8と前記遠赤外線放射シート7を図2に示すように積層し、アクリル系接着剤で固定し、周囲にほつれ止め加工を施して発熱体4を作成した。
【0032】
このようにして作成したひざ掛け1のポケット3に発熱体4を挿入し、ひざに巻き、パーソナルコンピューターのUSB端子から電源(5V 0.5A)をとったところ、暖かさが直ぐに感じられ、従来にない心地よいひざ掛けを得ることができた。
【0033】
<実施例2>
実施例1において、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂90質量部および粒径5〜10μmのブラックシリカ10質量部からなる樹脂組成物をカレンダー成形によって厚さ0.25mmにシート化して遠赤外線放射層10を形成せしめた以外は、実施例1と同様にしてひざ掛けとした。実施例1と比較してややポカポカとした暖かさが少ないように感じるものの、実施例1同様従来にない心地よいひざ掛けを得ることができた。
【0034】
<比較例1>
実施例1の、発熱体4の作成において、金属シート8を積層しなかった以外は、実施例1と同様にしてひざ掛けとした。 暖かさが直ぐに感じられたものの、実施例1のような従来にない心地よさは感じられなかった。
【0035】
<比較例2>
実施例1の、発熱体4の作成において、発熱層6を積層しなかった以外は、実施例1と同様にしてひざ掛けとした。
暖かさが直ぐに感じられず、暖かく感じるまでに時間を要し、実施例1のような従来にない心地よさには到らなかった。
【0036】
<比較例3>
実施例1の、発熱体4の作成において、遠赤外線放射シート7を積層しなかった以外は、実施例1と同様にしてひざ掛けとした。 暖かさが直ぐに感じられたものの、実施例1のような従来にない心地よさは感じられなかった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明に係るひざ掛けの概略図である。
【図2】この発明の係る発熱体の概略図である。
【図3】この発明の係る発熱層の概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1・・・ひざ掛け
2・・・繊維布帛
3・・・ポケット
4・・・発熱体
5・・・USBプラグ
6・・・発熱層
7・・・赤外線放射シート
8・・・金属シー
9・・・基布層
10・・・遠赤外線放射層
11・・・裏面層
13・・・断熱材
14・・・発熱線
15・・・熱接着シート
16・・・表面材
17・・・コントローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維布帛からなるひざ掛けにおいて、少なくとも一箇所にポケットを設け、該ポケット内に金属シートとブラックシリカを含有する遠赤外線放射シートと発熱層を積層した発熱体が挿入されたことを特徴とするひざ掛け。
【請求項2】
前記ブラックシリカを含有する遠赤外線放射シートが、基布層の上面側に、樹脂及びブラックシリカを含有してなる遠赤外線放射層が積層一体化されると共に、前記基布層の下面側に、樹脂を含有してなる裏面層が積層一体化された遠赤外線放射シートであることを特徴とする請求項1に記載のひざ掛け。
【請求項3】
前記基布層が、ポリエステル製織布からなり、前記遠赤外線放射層を構成する樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられ、前記裏面層を構成する樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられている請求項2に記載のひざ掛け。
【請求項4】
前記遠赤外線放射層におけるブラックシリカの含有率が4〜30質量%であることを特徴とする請求項2または3に記載のひざ掛け。
【請求項5】
前記発熱体は、USB電源に接続可能なUSBプラグを備えていることを特徴とする請求項1に記載のひざ掛け。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−59576(P2010−59576A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226594(P2008−226594)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【出願人】(000177014)三木理研工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】