説明

遠赤外線放射性衣料・履物用編織布

【課題】所定の遠赤外線放射性組成物を充分に需要者の要望に応えられるものとし、具体的に利用価値の高いものとすることである。
【解決手段】(i)アルミナと、(ii)シリカ及び酸化チタンから選択される1種以上と、(iii)白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウムおよびロジウム化合物から選択される元素またはその化合物の1種以上とを含む遠赤外線放射性組成物を含有する繊維または同組成物を固着した繊維を用いてなる遠赤外線放射性衣料・履物用編織布とする。サンダルなどの履物Aの場合は、中底の表皮1の裏面全面に遠赤外線放射性衣料・履物用編織布2を重ね、これらを底部材3の上面に接着固定し、または適宜に縫い付けて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠赤外線放射性衣料・履物用編織布およびそれを用いた靴下、肌着などの衣料品並びに履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、セラミックスなどの遠赤外線を放射可能な素材は、それが受けた熱量を遠赤外線として放射する性質があり、暖房器具の被加熱部分ばかりでなく、衣料などの分野にも利用されている。
【0003】
また、広い波長域で、遠赤外線を放射し得る高効率な遠赤外線放射材の発明として白金を加えた遠赤外線放射用セラミックス粉末(特許文献1)の発明が知られている。
【0004】
また、このような遠赤外線放射用粉末の用途として、それを合成繊維に分散して混入させたこと(特許文献2)、さらに遠赤外線放射用粉末をナイロン溶液またはポリエステル溶液に混合し、これをノズル噴射で糸状物に成形し、既存の糸材と撚り合わせて織物用撚り糸を形成することも知られている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−184088号公報
【特許文献2】特開平3−190990号公報
【特許文献3】特開平3−241025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来技術では、その形態が未だ充分に利用できるように開発されたものではなく、充分な効果が認められる利用形態のさらなる開発が望まれていた。
【0007】
そこで、この発明の課題は、上記の事情に応える未開発の利用形態を開発し、所定の遠赤外線放射性組成物を充分に需要者の要望に応えられるものとし、具体的に利用価値の高いものとすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明においては、(i)アルミナと、(ii)シリカ及び酸化チタンから選択される1種以上と、(iii)白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウムおよびロジウム化合物から選択される元素またはその化合物の1種以上とを含む遠赤外線放射性組成物を含む繊維を用いた遠赤外線放射性衣料・履物用編織布としたのである。
【0009】
上記したように構成されるこの発明の遠赤外線放射性衣料・履物用編織布は、所定の遠赤外線放射性組成物を含む繊維を編織したものとすることによって極めて効率よく遠赤外線を放射するものになり、これを特定の衣料品または履物として利用した者の装着部付近を短時間に効率よく暖めることができるものになる。それによって、遠赤外線放射性衣料・履物用編織布の利用者は、血色のよい健康的な皮膚になることが期待できると共に、肌理も細かくなって滑りの良いつるつるとした皮膚になることも期待できる。
【0010】
また、上記の遠赤外線放射性組成物に、iv)銀、銀化合物、金および金化合物から選択される1種以上の元素またはその化合物を添加した遠赤外線放射性組成物を含む繊維を用いた衣料・履物用編織布とすれば、帯電防止性も発揮され、放電することなく気持ちよく装着または脱衣できる衣料・履物用編織布になる。
【0011】
特に、上記した衣料・履物用編織布を履物の中底面に沿わせて設けた履物とすれば、これを履いた人の足裏から脚部を充分に暖めることができる履物となる。
【0012】
さらに上記の履物が、女性看護師などが使用するサンダルである場合には、履物の中底面から放射された遠赤外線により着用者の足裏が暖められやすく温感があり、さらに足先から甲部にかけて大部分が覆われない構造により足が冷えやすいサンダルであるにもかかわらず、改善された血行によって脚部全体まで暖かく感じられるサンダルになる。
【0013】
また、上記の遠赤外線放射性衣料・履物用編織布を靴下の踵部などに沿わせて設けるなど、靴下の一部または全体が形成されてなる遠赤外線放射性靴下にすることが好ましい。踵部は、靴下の中心部分に配置される部分であるから、この部分に設けた遠赤外線放射性衣料・履物用編織布によって、足裏・足先から踝(くるぶし)および足首までが暖まりやすく、温感があるという遠赤外線の効果を効率よく充分に及ぼすことができる。
【0014】
さらに、遠赤外線放射性衣料・履物用編織布で肌着の一部または全体が形成されてなる肌着とすれば、それが接する肌およびその周辺部分に対して前記の遠赤外線の効果を効率よく充分に発揮する肌着になる。特にその肌着がブラジャーなどである場合には、上半身の胸の部分を効率よく暖めるので、温感効果が上半身全体に効果的に作用するようになって好ましい。
【発明の効果】
【0015】
この発明の遠赤外線放射性衣料・履物用編織布は、所定の遠赤外線放射性組成物を含む繊維を用いた編織布としたことにより、極めて効率よく遠赤外線放射するものになり、充分に需要者の要望に応えられるものとなる利点がある。
【0016】
また、上記の所定組成物に銀や金もしくはこれらの化合物を添加した遠赤外線放射性組成物を含む繊維を用いた編織布としたことにより、遠赤外線放射性と共に放電することなく気持ちよく装着または脱衣できる衣料・履物用編織布になる利点がある。
【0017】
また、上記した衣料・履物用編織布を所定位置に設けたサンダルその他の履物は、足裏から脚部を充分に暖めることができる履物となる利点がある。
【0018】
また、遠赤外線放射性衣料・履物用編織布を靴下の踵部など一部または全体に設けた靴下に係る発明は、比較的小さな面積の編織布によっても遠赤外線の効果を足部全体に効率よく及ぼすことができる利点がある。
【0019】
また、遠赤外線放射性衣料・履物用編織布でもって肌着の一部または全体を形成すると、その肌着は前記の遠赤外線により温感効果を同様にかつ充分に発揮できる肌着となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の遠赤外線放射性衣料・履物用編織布は、(i)アルミナと、(ii)シリカ及び酸化チタンから選択される1種以上と、(iii)白金または白金化合物、パラジウムまたはパラジウム化合物、イリジウムまたはイリジウム化合物及びロジウムまたはロジウム化合物から選択される元素またはその化合物の1種以上とを含む遠赤外線放射性組成物を含む繊維を用いたものである。
【0021】
先ず、この発明に用いる遠赤外線放射性組成物について説明する。
上記の組成物に含有される成分(i)「アルミナ」(Al23)は、焼結性に優れる純度99.9%以上の高純度アルミナ(酸化アルミニウム)を用いるのが好ましい。アルミナとして、上市されている粉末状の高純度アルミナを用いることができる。前記成分(i)の含有量は、20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%である。また、前記成分(i)の粒径は、この発明の組成物を使用する製品及び使用する態様に依存する。組成物を粉体として繊維にバインダー樹脂などで固着させる場合、粒径は、通常の粒径、例えば数μm程度のものを用いることができる。
【0022】
しかし、粉体状にして繊維に混入させる場合は、前記成分(i)の粒径は、その繊維径に依存して、最大2μm以下、好ましくは最大1.5μm以下、より好ましくは最大1.0μm以下の粒径に調整することが好ましい。これは、繊維径に依存して、紡糸工程において紡糸機内部で目詰まりが発生したり、糸の断面形状が不良となったり、粉体を起点として繊維糸が破断するおそれがあるからである。
【0023】
この発明に用いる「シリカ」(二酸化ケイ素:SiO2)は、純度99.8%以上の高純度シリカが好ましく、上市されている、例えば超微粒子状無水シリカを用いることができる。シリカの粒径は、前記成分(i)と同様である。この発明の組成物中におけるシリカの含有量は、40〜80重量%、好ましくは50〜70重量%である。
【0024】
この発明に用いる「酸化チタン」(TiO2)の純度、粒径及び配合量は、上記前記成分(i)と同様である。酸化チタンは、例えば、ルチル型及び/またはアナターゼ型の二酸化チタン若しくはそれらの混合物が好ましく、アナターゼ型の二酸化チタンがより好ましい。上市されている超微粒子状酸化チタンを用いることができる。また、純度80%以上の二酸化チタンの粗粒子から、造粒精製して得られた高純度で微細な二酸化チタンを用いることができる。したがって、シリカまたは酸化チタンから選択される1種以上の成分(ii)は、この発明の組成物中に、40〜80重量%含有されることになる。
【0025】
この発明の成分(iii)「白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウムおよびロジウム化合物から選択される元素またはその化合物の1種以上」は、コロイドの形態で、酸素と水素とを吸着するいわゆるコロイド活性化を期待して含有させているものであり、特に白金または白金化合物が好ましいものである。
【0026】
このような成分(iii)は、この発明の組成物中、金属として0.0005〜0.010重量%、好ましくは0.001〜0.004重量%含まれていることが望ましい。また、成分(iii)は、粒径約0.7〜4nm(7〜40Å)の成分(iii)を、例えば塩酸溶液中にコロイド分散させた、成分(iii)分散コロイド(以下、成分(iii)コロイドという)を用いることが好ましい。成分(iii)はコロイド中に、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜2重量%、より好ましくは0.8〜1.2重量%含有されるものが用いられ、コロイド中の成分(iii)濃度を考慮して、組成物中に0.0005〜0.010重量%含有されるように加えられる。なお、成分(iii)コロイドの調製方法は、慣用の方法を用いることができ、例えば、商業的に上市されている白金1重量%含有の白金コロイド溶液を用いることができる。
【0027】
この発明における成分(iv)「銀または銀化合物」は、粉末の形態で用いることが好ましく、上市されている銀粉末を用いることができる。この発明では遠赤外線放射性組成物中に、銀として、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは0.7〜2.0重量%含まれることが望ましい。
【0028】
また、この発明の遠赤外線放射性組成物は、窒化ケイ素を含ませることもできる。窒化ケイ素は、水素の働きをよくし、水素イオンの移動方向を特定の方向に規制する役割をするものと考えられている。ただし、窒化ケイ素を含有させる場合は、3重量%以下が好ましい。また、この発明の銀または銀化合物の一部または全部を、金または金化合物に代えることもできる。
【0029】
また、この発明の遠赤外線放射性組成物は、(i)アルミナ、(ii)シリカ及び酸化チタンから選択される1種以上、(iii)白金または白金化合物、パラジウムまたはパラジウム化合物、イリジウムまたはイリジウム化合物及びロジウムまたはロジウム化合物から選択される元素または化合物の1種以上、さらに好ましくは(iv)銀及び銀化合物から選択される1種以上、及び任意に窒化ケイ素を含有するが、それ以外に不可避的に含有される組成物、不純物を含んでもよい。
【0030】
さらに、遠赤外線放射性組成物を安定させる添加剤、例えば結合剤や新たな機能を付与するための添加剤を含んでいてもよい。更に、この発明の必須組成物が含有される範囲は、上記範囲であるが、これらの総量は当然に100重量%以下である。
【0031】
この発明における遠赤外線放射性組成物は、所定の粒度を有する前記成分(i)と、前記成分(ii)とを、それぞれ、例えば、白金コロイドまたは白金化合物と混合することにより、粒径0.7〜4nm(7〜40Å)の白金コロイドを他の粒子に担持させることができる。
【0032】
このとき白金コロイドの添加量は、組成物中の前記成分(i)等の配合比とコロイド溶液中の白金量を考慮し、所要白金量を満たすように前記成分(i)等の粒子に白金を担持する。次に、白金を担持した粒子を各所定の配合比にしたがって撹拌混合し、そして、所定量の銀または銀化合物の粉末を混合する。
【0033】
また、所定量のアルミナ粒子にのみ、所定量の白金コロイドを加え、つぎに白金を担持したアルミナに、シリカ、酸化チタンを加えて撹拌混合し、銀粉末を加えて、再度撹拌混合して、生成することもできる。
【0034】
また、この発明の遠赤外線放射性組成物は、白金コロイドを、成分(i)、成分(ii)、及び成分(iv)の1種以上の粉末原料と混合し、任意に噴霧可能な流動性を有するまで溶媒などで希釈し、噴霧して均一に分散させた後、混合物を約50〜150℃で約10分〜1時間加熱し、形成することができる。
【0035】
最初に添加しなかった粉末原料は、任意の段階で添加することができる。希釈する溶媒は、この発明の組成物の効果を阻害しない溶媒であれば用いることができ、例えば、純水、アルコールなどが挙げられる。分散性を向上させるため、公知の分散剤を添加することができる。
【0036】
更に、この発明の組成物を、高分子化合物等のような合成高分子材料に混合させ、いわゆるマスターバッチとすることができる。混合方法は、この発明の遠赤外線放射性組成物を、粉体状にして合成高分子材料に練り込む方法、または分散液の状態にして合成高分子材料に混合する方法等が挙げられる。このとき、混合物中のこの発明の組成物は0.1〜25重量%、合成高分子材料は75〜99.9重量%とすることができる。
【0037】
この発明の組成物を含有する1つのマスターバッチからそのまま紡糸して合成繊維を得る場合、またはこの発明の組成物を含む2種以上の合成高分子材料のマスターバッチを準備し、それぞれのバッチから紡糸した繊維を混紡して合成繊維を得る場合は、マスターバッチにおけるこの発明の組成物量は0.1〜3重量%、好ましくは0.3〜1.5重量%の比較的少量でその優れた効果を発揮できる。
【0038】
この発明の遠赤外線放射性組成物を含有するマスターバッチには、追加分の合成高分子材料を添加して希釈することができる。このマスターバッチから製造した合成繊維とこの発明の組成物を含有しない同種または他の繊維とを混紡して、得られる繊維中の組成物濃度を希釈することもできる。このように希釈する場合、マスターバッチにおけるこの発明の組成物量は、3〜25重量%に増加させておくことが好ましい。すなわち、この発明における好ましい組成物量は、混紡繊維中の繊維の混紡比率及び用いる合成高分子材料、例えばポリエステル、ポリエチレンに依存して変化する。
【0039】
合成高分子材料には、合成繊維を形成し得るナイロン、ビニロン、エステル、アクリル、ウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、アセテート等が含まれる。
【0040】
また、マスターバッチには、必要に応じて、例えば、酸化マグネシウム、マイカ、炭酸カルシウム、ゼオライト等の触媒、可塑材、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤、着色防止剤、難燃剤、ブリードアウト防止剤、安定剤、耐熱剤、蛍光増白剤等の各種の添加剤を配合することができる。
【0041】
繊維は、慣用の紡糸法、例えば溶融法を用いて、マスターバッチからフィラメントや中空糸等に紡糸することができる。この発明では、紡糸の前にこの発明の組成物を繊維原料である合成高分子材料と予め混合する。このとき、この発明の組成物、例えば粉体は紡糸した繊維に強固に固着しているため、この発明の組成物が剥がれ落ちるのを防止することができる。また、このような方法により、この発明の組成物の含有量を、従来法と比較して増加させることができる。また、こうして紡糸したこの発明の組成物を含む合成繊維は、この発明の組成物を含まない他の繊維、例えば木綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維や合成繊維と混紡することもできる。
【0042】
次に、この発明の遠赤外線放射性組成物を含む繊維を用いた遠赤外線放射性衣料・履物用編織布は、上記の所定の繊維をいわゆるニットとして「編む」か、または平織りその他の周知の織り方で「織る」ことによって形成された布であり、各種の繊維製品の生地の全部または一部に重ねて縫製し、または生地と同じ面を形成するように、生地と継ぎ合わせて利用することができるものである。
【0043】
遠赤外線放射性衣料・履物用編織布を用いた繊維製品としては、サンダルや靴の中底など、またはシャツ、肌着、靴下、ブラジャー、パンティストッキング等の衣料(医療用に用いられる衣料も含む)またはその一部に用いられるパットや補正部、補強部などが挙げられ、いずれも遠赤外線の効果を充分に、かつ効率よく発揮するものになる。
【0044】
遠赤外線放射性組成物を含む繊維が、銀もしくは銀化合物または金もしくは金化合物から選択される1種以上を添加した遠赤外線放射性組成物を含むようにすると、除電性と遠赤外線効果が共に発揮でき、温熱効果に優れて血行が促進できると共に、人体への帯電が防止できるので、金属に触れた場合の放電に伴う不快感や、衣類を脱衣する際の不快感がない衣料を提供することができる。
【0045】
また、この発明の遠赤外線放射性組成物を含む繊維から作られた衣料・履物用編織布を用いた布団、毛布、枕等の寝具類、及びサポーターや包帯、ソファーや椅子の被覆生地の包装製品は、遠赤外線効果と除電効果により、保温性がよく、また、静電気の発生に伴う埃の付着が抑えられるので、非常に衛生的な繊維製品を得ることができる。
【0046】
この発明の組成物は、微粒子粉末として形成し、これを繊維に結着剤(樹脂)と共に付着させることができ、そのような微粒子の粒径は0.1〜2.0μmが好ましく、0.2〜1.0μmがより好ましい。
【0047】
この発明の実施形態を、さらに添付図面に基づいて説明する。
図1に示す第1実施形態の履物Aは、女性看護師(ナース)用のサンダルであり、中底の表皮1の裏面全面に遠赤外線放射性衣料・履物用編織布2を重ね、これらを底部材3の上面に接着固定し、または適宜に縫い付けて固定したものである。
この場合に用いた遠赤外線放射性衣料・履物用編織布2は、後述する実施例1おいて得られた繊維からなるニットである。
【0048】
図2に示す第2実施形態の靴下Bは、後述する実施例1において得られた遠赤外線放射性衣料・履物用編織布2を靴下の踵部の生地4の裏面に重ねて縫製したものである。
【0049】
図3に示す第3実施形態のブラジャーCは、後述する実施例1において得られた遠赤外線放射性衣料・履物用編織布2を左右のカップ裏面に重ねて縫製するか、またはパットなどの表面を覆うなど、肌に沿わせて好ましくは肌に接する部分に縫製したものである。
【実施例】
【0050】
[実施例1]
(a)市販のアルミナ、シリカ及び酸化チタンを、いずれも粒度1μm以下の粉体になるように粒度調整した後、それぞれの粉体200重量部ずつに対し、白金1%含有の白金コロイド溶液(田中貴金属株式会社製)0.5重量部ずつ(すなわち白金として0.005重量部)を別々に混合し、コロイド混合物を調製した。このように調製された混合物601.5重量部に、銀粉末(田中貴金属株式会社製、粒径0.2〜1.0μm、平均粒径0.7μm)6.0重量部を添加した。このとき、各物質の配合比は、アルミナ:33.0025重量%、シリカ:33.0025重量%、酸化チタン:33.0025重量%、白金:0.0025重量%、銀:0.99重量%であった。
(b)上記(a)で得られた遠赤外線放射性組成物607.5重量部に対して、ポリエステル5400重量部を混合して、樹脂チップ(マスターバッチ)を作製した。
(c)上記(b)で得られたマスターバッチを用いて、溶融法により、3デニールの糸に紡糸した。
【0051】
[実施例2]
実施例1で作製したマスターバッチを用いて、溶融法により、6デニールの中空糸に紡糸した。
【0052】
[比較例1]
市販のアルミナ、シリカ及び酸化チタンを、いずれも粒度1μm以下になるように粒度調整し、次いで、それぞれ200重量部ずつに対し、白金1%含有の白金コロイド溶液(田中貴金属株式会社製)0.5重量部ずつ(すなわち白金として0.005重量部)を別々に混合し、コロイド混合物を作製した。したがって、比較例の組成物における各物質の配合比は、アルミナ:33.3325重量%、シリカ:33.3325重量%、酸化チタン:33.3325重量%、白金:0.0025重量%である。この比較例の組成物とポリエステルが約1対9になるように、ポリエステル5400重量部を混合して、樹脂チップ(マスターバッチ)を作製した。このマスターバッチを用いて、溶融法により、3デニールの糸に紡糸した。
【0053】
この発明の遠赤外線放射性衣料・履物用編織布を、以下の赤外線放射率測定試験および除電性試験に供し、その結果を表1、2に示した。
【0054】
(1)赤外線放射率
実施例1、2及び比較例1で得た繊維を用いて、赤外線放射率を測定した。ここで、赤外線放射率は、均一加熱炉、表面反射鏡及び検出器(MCT/InSb)を備えた分光放射計測装置(SR5000型、アイ・アール・システム社製)を用いて、スペクトルを測定した。測定の手順は、均一加熱炉上に測定試料を乗せ、仕切で分け、加熱して、各試料から放射される赤外線を、反射鏡により水平方向に偏向させて、測定した。なお、赤外基準熱源には、同温度の黒体炉からの放射スペクトルを用いた。
【0055】
図4に示した実施例及び比較例の分光放射強度スペクトルの結果からも明らかなように、この発明の銀粉末を含有する組成物を含む繊維を用いたもの(実施例1及び2)は、従来の銀粉末を含まない組成物の繊維を用いたもの(比較例1)に比較して、2.62〜13.2μmの波長域において、放射強度に優れていることが判る。
【0056】
また、測定条件をスキャンスピード4秒及び積算回数3回と設定して、試料の放射スペクトルを測定した。波長毎の放射スペクトルデータから、波長域4〜12μm、及び8〜12μmにおける平均放射率を算出し、表1に結果を示した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の結果からも明らかなように、同一の繊維径で比較すると、実施例1は、比較例1に対し、波長域4〜12μm及び8〜12μmの平均放射率の両方において、いずれも10%以上優れていることが判る。
【0059】
(2)帯電・除電性
実施例1及び比較例1の繊維を用いて、ポリエステル糸75デニール/36フィラメントを2本組で、ベア−天竺編みしたニットを作製し、「織物及び編物の帯電試験方法」(JIS L1094−1997)の、5.1A法(半減期測定法)に準拠して、帯電性を調査し、繊維の電圧半減期を比較し、結果を表2に示した。
【0060】
【表2】

【0061】
表2の結果からも明らかなように、実施例1のニットは、比較例1のニットに比べて、半減期、すなわち帯電圧が初期電圧の1/2に減衰するまでの時間が1/10以下に小さくなっている。すなわち、この発明の繊維を含むニットは、除電性が非常に優れていることが判る。
【0062】
また、実施例1の繊維を用いたニットからなる第1実施形態の女性看護師(ナース)用のサンダルについて、実際に被験者に履いた場合の足部および脚部の皮膚表面温度の経時変化をサーモグラフィーによって調べ、その結果を図5に示した。
【0063】
図5の結果からも明らかなように、サンダル着用後20分の図5(a)、同40分の図5(b)、同60分の図5(c)、同80分の図5(d)を比較すると、体温付近の帯域36〜38℃を示すX表示の部分が、足から脚部の上部にまで広がっており、着用後の温感が非常に広い部位まで広がって温まっていることがわかる。
また、肌着についても同様にテストした結果、例えば女性用ブラジャーのカップ裏面に実施例1の繊維からなるニットを添わせて設けると、胸の部分を効率よく暖めることができ、温感効果は着用後20分後には上半身全体にまで効果的に作用した。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1実施形態の女性看護師用のサンダルの要部を剥離して示す斜視図
【図2】第2実施形態の靴下の踵部生地を切り欠いて示す斜視図
【図3】第3実施形態のブラジャーを示す斜視図
【図4】実施例および比較例の赤外線放射強度と波長の関係を示す図表
【図5】足部および脚部の皮膚表面温度の経時変化をサーモグラフィーで示す説明図
【符号の説明】
【0065】
1 表皮
2 遠赤外線放射性衣料・履物用編織布
3 底部材
4 生地
A 履物
B 靴下
C ブラジャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アルミナと、(ii)シリカ及び酸化チタンから選択される1種以上と、(iii)白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウムおよびロジウム化合物から選択される元素またはその化合物の1種以上とを含む遠赤外線放射性組成物を含有する繊維または同組成物を固着した繊維を用いてなる遠赤外線放射性衣料・履物用編織布。
【請求項2】
請求項1に記載の遠赤外線放射性組成物に、iv)銀、銀化合物、金および金化合物から選択される1種以上の元素またはその化合物を添加した遠赤外線放射性組成物を含む繊維を用いてなる遠赤外線放射性衣料・履物用編織布。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遠赤外線放射性衣料・履物用編織布を履物の中底面に沿わせて設けた遠赤外線放射性履物。
【請求項4】
履物が、サンダルである請求項3に記載の遠赤外線放射性履物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の遠赤外線放射性衣料・履物用編織布で靴下の一部または全体が形成されてなる遠赤外線放射性靴下。
【請求項6】
請求項1または2に記載の遠赤外線放射性衣料・履物用編織布で肌着の一部または全体が形成されてなる遠赤外線放射性肌着。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−121252(P2010−121252A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298070(P2008−298070)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(398074625)株式会社レモール (1)
【Fターム(参考)】