説明

遠近両用レーザ光学装置

【課題】本発明の課題は、レンズ中心近傍が平面であるレンズを用いることにより、レンズを単レンズにして調整不良が発生しやすい煩雑な作業を低減すると共に、近距離から遠距離までの中間距離においてのレーザパタンサイズの減少を低減する遠近両用レーザ光学装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、レーザビームを発生するレーザダイオード1と、前記レーザダイオード1から発生したレーザビームが入射されるレンズ中心近傍が平面部201である凸レンズ2とを具備することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ中心近傍が平面であるレンズを用いた一つの光学系により、近距離から遠距離までほぼ一定の大きさに維持したビームパタン形成を可能とする遠近両用レーザ光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は複数枚のレンズの組み合わせ及びレンズに施した反射膜により、近距離用レーザパタン及び遠距離用レーザパタンを形成していた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3981608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、パターンサイズを調整するため、複数枚のレンズ間距離を変更させる場合、レンズ軸が微妙に変動し、調整不良が発生しやすく煩雑な作業であった。また、近距離レーザパタンの減衰が早く、遠距離レーザが増大するまでの中間距離においてレーザパタンが小さくなっていた。
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、レンズ中心近傍が平面であるレンズを用いることにより、レンズを単レンズにして調整不良が発生しやすい煩雑な作業を低減すると共に、近距離から遠距離までの中間距離においてのレーザパタンサイズの減少を低減する遠近両用レーザ光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明の遠近両用レーザ光学装置は、レーザビームを発生するレーザ光源と、前記レーザ光源から発生したレーザビームが入射されるレンズ中心近傍が平面であるレンズとを具備することを特徴とするものである。
【0006】
また本発明は、前記遠近両用レーザ光学装置において、レンズとして、レンズ曲率半径または焦点距離とレンズ開口径、及びレンズ曲率半径または焦点距離とレンズ中心部の平面径が、所定のレーザ強度以上のエリアを示すレーザパタンを近距離から遠距離においてほぼ一定の大きさに維持するような関係を持つレンズを用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の遠近両用レーザ光学装置は、所定のレーザ強度以上のエリアを示すレーザパタンを近距離から遠距離においてほぼ一定の大きさに維持することができ、部品点数等の削減による経済性の改善、構造の単純化による光学系調整の簡素化ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明の実施形態に係る遠近両用レーザ光学装置を示す概略構成説明図である。図1において、1はレーザビームを発生するレーザ光源の一例であるレーザダイオード、2は前面が凸部で、裏面が平坦部である凸レンズ(例えば平凸レンズ)である。201は凸レンズ2の凸部の中心近傍に設けられた平面部、202は凸レンズ2の凸部の外周近傍に設けられた湾曲した面状の外側曲率部、203は凸レンズ2の裏面に設けられた平坦部である。
【0010】
図1に示すように、レーザダイオード1から発生したレーザビームは凸レンズ2に入射する。前記凸レンズ2の平面部201を透過したレーザビームは近距離用のレーザビーム(近距離レーザビーム3)を形成し、前記凸レンズ2の外側曲率部202を透過したレーザビームは遠距離用のレーザビーム(遠距離レーザビーム4)を形成する。
【0011】
図3は本発明の実施形態に係る遠近両用レーザ光学装置を示す原理説明図である。図3において、11は遠近両用レーザ光学装置の筐体で、筐体11内の開口部に凸レンズ2が設けられる。Aは筐体11内に設けられるレーザダイオード1の位置、Rは凸レンズ2の曲率半径、D1は凸レンズ2のレンズ開口直径、D2は凸レンズ2の平面部201の直径、f1は凸レンズ2の焦点距離である。
【0012】
図3に示すように、凸レンズ2の曲率半径Rの値、焦点距離f1の値、レンズ開口直径D1の値により遠距離レーザビーム4の広がり角を決めることができ、遠距離レーザビーム4が形成するレーザパタンの大きさは下記の関係式で表すことができる。
【0013】
f1=4×D1
f1>4×D1の場合、遠距離レーザビーム4が筐体11の開口部エッジに干渉し回折が大きくなり縦横比が増大する。
【0014】
f1<4×D1の場合、レーザダイオード1の縦横比が投影される。
【0015】
また、凸レンズ2の平面部201の直径D2の値と焦点距離f1の値で近距離レーザビーム3の広がり角を決めることができ、近距離レーザビーム3が形成するレーザパタンの大きさは下記の関係式で表すことができる。近距離レーザビーム3はレーザダイオード1の特性をそのまま利用しており、一般的なアパーチャ効果を利用している。遠近両用レーザ光学装置の筐体11の前方5mで直径60cmのレーザパタンの確保が必要となる場合、焦点距離f1の値と平面部201の直径D2の値が一定の比率で維持すれば良い。
【0016】
f1=8×D2
f1>8×D2の場合、遠近両用レーザ光学装置の筐体11の前方5m付近の近距離レーザビーム3のレーザパタンサイズは比例的に減少する。
【0017】
f1<8×D2の場合、遠近両用レーザ光学装置の筐体11の前方5m付近の近距離レーザビーム3のレーザパタンサイズは比例的に増加する。
【0018】
この場合、近距離レーザビーム3の到達距離はレーザダイオード1の出力によるため、遠くまで到達させる場合はレーザダイオード1の出力を増加させる必要がある。
【0019】
また、遠近両用レーザ光学装置の光学系の外形形状は上記関係を維持すれば、おおよそ似たパターンを取得することが可能となる。但し、小型化した場合、部品の寸法精度及び調整精度の影響を受けやすくなる。
【0020】
尚、凸レンズ2の焦点距離f1の値と曲率半径Rの値は互いに対応して変化する。
【0021】
図4は本発明の実施形態に係るレーザパタンを従来のレーザパタンと比較して示す説明図である。図4において、21は本発明の実施形態に係るレーザパタン(実線)、22は従来のレーザパタン(点線)、23はレーザビームの発射点、24はレーザビームの近射距離、25はレーザビームの標準射距離、26はレーザビームの最大射距離である。
【0022】
図4に示すように、本発明の実施形態に係るレーザパタン21は、レンズ曲率半径Rまたは焦点距離f1(レーザダイオード1と凸レンズ2との距離)とレンズ開口直径D1、及びレンズ曲率半径Rまたは焦点距離f1とレンズ中心平面部201の直径D2に、所定の関係(f1=4×D1、f1=8×D2)を持つ凸レンズ2を用いることにより、所定のレーザ強度以上のエリアを示すレーザパタンを、近距離から遠距離においてほぼ一定の大きさに維持することができる。すなわち、レーザパタン211に示すように、より近傍からのレーザパタンを形成することができると共に、レーザパタン212に示すように、中距離レーザパタン形成により近傍から標準射距離25まで所望のレーザパタンサイズを確保することができる。
【0023】
尚、従来のレーザパタン22は、近距離レーザパタンの減衰が早く、遠距離レーザパタンが増大するまでの中間距離においてレーザパタンが小さくなっていた。
【0024】
図2は本発明の実施形態に係る遠近両用レーザ光学装置を示す断面図である。
【0025】
図2において、図1と同一部分は同一符号を付してその説明を省略する。111は円筒状よりなる遠近両用レーザ光学装置の筐体本体、112は光源部筐体、113はレンズ部筐体である。
【0026】
図2に示すように、レーザダイオード1が中心軸部に設けられた光源部筐体112は筐体本体111の一端に取付けられ、前記筐体本体111の他端には凸レンズ2が設けられたレンズ部筐体113が取付けられる。
【0027】
すなわち、レーザダイオード1から発生したレーザビームは凸レンズ2に入射する。前記凸レンズ2の平面部201を透過したレーザビームは近距離用のレーザビーム(近距離レーザビーム3)を形成し、前記凸レンズ2の外側曲率部202を透過したレーザビームは遠距離用のレーザビーム(遠距離レーザビーム4)を形成する。
【0028】
図5は本発明の実施形態に係る試作器によるレーザパタン例を示す特性図であり、縦方向の平面パターンを示す。すなわち、レーザ照射距離とレーザパタンサイズの関係(2A)を示す。
【0029】
図6は本発明の実施形態に係る試作器によるレーザパタン例を示す特性図であり、横方向の平面パターンを示す。すなわち、レーザ照射距離とレーザパタンサイズの関係(2A)を示す。
【0030】
尚、本発明の実施形態に係る遠近両用レーザ光学装置は、近距離戦闘訓練のため、近距離でも広いレーザパタンを必要とする例えば交戦訓練装置、射撃訓練装置のプロジェクタに使用される。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る遠近両用レーザ光学装置を示す概略構成説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る遠近両用レーザ光学装置を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る遠近両用レーザ光学装置を示す原理説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係るレーザパタンを従来のレーザパタンと比較して示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る試作器によるレーザパタン例を示す特性図である。
【図6】本発明の実施形態に係る試作器によるレーザパタン例を示す特性図である。
【符号の説明】
【0033】
1…レーザダイオード、2…凸レンズ、3…近距離レーザビーム、4…遠距離レーザビーム、201…平面部、202…外側曲率部、203…平坦部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを発生するレーザ光源と、
前記レーザ光源から発生したレーザビームが入射されるレンズ中心近傍が平面であるレンズと
を具備することを特徴とする遠近両用レーザ光学装置。
【請求項2】
レンズとして、レンズ曲率半径または焦点距離とレンズ開口径、及びレンズ曲率半径または焦点距離とレンズ中心部の平面径が、所定のレーザ強度以上のエリアを示すレーザパタンを近距離から遠距離においてほぼ一定の大きさに維持するような関係を持つレンズを用いることを特徴とする請求項1に記載の遠近両用レーザ光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−169095(P2009−169095A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7008(P2008−7008)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000221155)東芝電波プロダクツ株式会社 (62)
【Fターム(参考)】