説明

遠隔作業道具の撮影装置用アダプタ

【課題】専用機を用いることなく、ヤットコ等の遠隔操作道具により汎用のデジタルカメラなどの撮影装置で遠隔位置を撮影することを可能にする遠隔作業道具の撮影装置用アダプタを提供すること。
【解決手段】ヤットコ100の把持部110にカメラ200を取り付けるとともに該カメラの該把持部による操作を可能に当該ヤットコに着脱自在に取り付けるアダプタ10であって、カメラを取り付けて位置決め固定する固定台11と、固定台に連設されてヤットコの把持部の不動部材111に着脱可能に取り付ける取付部31と、ヤットコの把持部の可動部材112の動作を伝達してカメラのシャッタを連動操作する連動部41と、その固定台に設置されて被写体近傍に突き当てる所望の長さの突当棒21と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔作業道具の撮影装置用アダプタに関し、詳しくは、ヤットコなどの遠隔作業道具に撮影装置を取り付けて所望の被写体を快適かつ容易に撮影可能にするものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔位置の目的物を把持することのできる、所謂、ヤットコが知られており、このヤットコを用いて、例えば、電柱に架設されている電線付近に設置されている設備に対する各種作業が行なわれている。このヤットコは、作業員の操作する操作部から目的物を把持する把持部を離隔した位置に設置するとともにその間の絶縁性を確保することにより、停電させることなく作業する間接活線工法に多用されている。
【0003】
このようなヤットコとしては、例えば、図2に示すように、目的物を把持する把持部110と、作業者が操作する操作部120と、手元側の操作部120および先端側の把持部110を連結支持するとともにその操作部120からの操作力を把持部110に伝達して動作させる支持伝達部130と、を備えている。このヤットコ100の把持部110は、支持伝達部130の支持棒131に固設(連結)されている不動部材(回動部材)111と、支持伝達部130の支持棒131に配設された回動軸113を中心に回動自在に支持(連結)されている可動部材(回動部材)112と、を備えており、この可動部材112が不動部材111に対して相対的に回動することにより、それぞれの先端部111a、112aが接離して、目的物を掴んだり離したりすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
その一方で、電線付近の設備の状態やその設備の銘板を確認するなどの作業が必要な場合もあり、このような場合にも、停電させることなくその確認作業をすることができた方が作業方針を立て易くなる。このために、その設備等の確認の必要な箇所の近傍まで鏡を持って行って目視することも考えられるが、その設備等は遠隔位置にあって現実的でない。また、望遠カメラでその設備等を撮影することも考えられるが、その前面側に撮影箇所がなかったり、邪魔になるものがあるなど可能な箇所の方が少なく、現実的でない。なお、銘板とは、金属やプラスチックなどに型番や製造年月日などの必要な事項を容易に消えない方法で表示したものである。
【0005】
このことから、カメラ(撮影装置)を絶縁棒の先端に取り付けて設備等の確認の必要な箇所の近傍まで持って行くとともに遠隔操作して撮影することを可能にする装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、この文献2に記載のような専用の撮影装置は、現場等に携行するには嵩張ってしまって利用し辛い。また、カメラを遠隔位置まで持って行くため、安定した状態に保持することが難しく、撮影する映像がぶれ易いという課題もある。
【特許文献1】特開平11−191906号公報
【特許文献2】特開2003−9326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、専用機を用いることなく、ヤットコ等の遠隔操作道具により汎用のデジタルカメラなどの撮影装置で遠隔位置を撮影することを可能にする遠隔作業道具の撮影装置用アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する遠隔作業道具の撮影装置用アダプタの第1の発明は、一対の回動部材が回動軸を中心に相対的に回動して先端部が接離することにより目的物を挟むように把持する把持部と、前記把持部の前記回動部材を回動させるように操作する操作部と、前記操作部から離隔する位置に前記把持部を連結して当該操作部に加えられる操作力を前記把持部に伝達する伝達部と、を備える遠隔作業道具の前記把持部に撮影装置を設置するとともに該撮影装置の該把持部による操作を可能に当該遠隔操作道具に着脱自在に取り付けるアダプタであって、前記撮影装置を取り付けて位置決め固定する固定台と、前記固定台に連設されて前記遠隔作業道具の前記把持部の前記回動部材の一方に着脱可能に取り付ける取付部と、前記遠隔作業道具の前記把持部の前記回動部材の他方の動作を伝達して前記撮影装置のスイッチを連動操作する連動部と、を具備することを特徴とするものである。
【0009】
この発明では、遠隔操作道具の把持部の回動部材の一方に取付部により固定台を取り付けて撮影装置を取付固定することができ、その遠隔操作道具の操作部を操作することによりその回動部材の一方に対して回動部材の他方を接離させることによって、その回動部材の他方の動作に連動部を連動させて撮影装置のスイッチを操作することができる。したがって、撮影装置専用の機材を準備することなく、各種作業を行うための遠隔操作道具を利用して、また、汎用の撮影装置を利用して、遠隔位置の被写体の撮影をすることができる。
【0010】
上記課題を解決する遠隔作業道具の撮影装置用アダプタの第2の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記撮影装置により撮影する被写体あるいは該被写体近傍に突き当てる所望の長さの突当部材を有することを特徴とするものである。
【0011】
この発明では、被写体付近に突当部材を突き当てて撮影装置を支持させることができる。したがって、被写体の撮影距離として最適な間隔を確保することができるとともに、その被写体側に対して撮影装置が小刻みに接離したり、左右に移動することを制限することができ、安定した状態を容易に保って被写体をぶれなく撮影することができる。
【0012】
上記課題を解決する遠隔作業道具の撮影装置用アダプタの第3の発明は、上記第1または第2の発明の特定事項に加え、前記連動部は、前記撮影装置の前記スイッチがボタンスイッチであるのに対して、前記遠隔作業道具の前記把持部の前記回動部材の他方の動作に連動して、当該ボタンスイッチに近接離隔する方向に移動する移動部材を有しており、前記ボタンスイッチに対する前記移動部材の位置を調整する機構を備えることを特徴とするものである。
【0013】
この発明では、遠隔操作道具の把持部の回動部材の他方の動作に連動して移動部材が一方向に移動することにより撮影装置のボタンスイッチを押下して操作する場合に、その移動部材の位置を固定台に設置した撮影装置に応じて調整することができる。したがって、撮影装置の機種などに対応する専用のアダプタにすることなく、利用する撮影装置の機種などに応じて連動部が最適に連動操作可能に移動部材の位置を調整することができ、利用可能な撮影装置の範囲を広げることができる。
【0014】
上記課題を解決する遠隔作業道具の撮影装置用アダプタの第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明の特定事項に加え、前記固定台は、前記撮影装置に予め準備されている固定用ネジ穴に螺合させて該撮影装置を位置決め固定するネジ部材を有しており、前記ネジ部材の前記固定用ネジ穴との螺合位置を調整する機構を備えることを特徴とするものである。
【0015】
この発明では、遠隔操作道具の把持部の回動部材の一方に撮影装置を固定台に固定するネジ部材の位置をその撮影装置に応じて調整することができる。したがって、撮影装置の機種などに対応する専用のアダプタにすることなく、利用する撮影装置の機種などに応じて連動部が連動操作可能にその固定位置を調整することができ、利用可能な撮影装置の範囲を広げることができる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、遠隔操作道具の把持部に撮影装置を取り付けて操作部を操作することによりその撮影装置を遠隔位置まで持って行ってスイッチを操作することができ、撮影装置専用の機材を準備することなく、各種作業を行うための遠隔操作道具を共通利用して遠隔位置の被写体を撮影することができる。したがって、汎用のデジタルカメラなどの撮影装置を利用して遠隔位置の設備やその銘板などを撮影することができ、その遠隔操作道具が絶縁性を備えることにより間接活線工法にも利用することができる。
【0017】
さらに、被写体近傍に突き当てる所望の長さの突当部材を備えさせることにより、安定した撮影を実現することができ、また、撮影装置を操作する移動部材の位置を調整可能にし、あるいは、その撮影装置の固定位置を調整可能にすることにより、汎用性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図7は本発明に係る遠隔作業道具の撮影装置用アダプタの一実施形態を示す図である。
【0019】
図1において、アダプタ10は、図2に示すヤットコ(遠隔作業道具)100の把持部110に、図3に示すように、デジタルカメラ(撮影装置)200を設置して操作することができるように着脱自在に取付可能に設計されており、遠隔位置の被写体を専用の道具を用いることなく、汎用のデジタルカメラ200で簡易かつ容易に撮影することを実現する。
【0020】
まず、ヤットコ100は、図2に示すように、各種の部品や材料などの目的物を掴む把持部110と、この把持部110の操作(力)を入力する操作部120と、これら把持部110および操作部120を離隔させる位置に支持棒131により連結支持するとともにその操作部120に入力された作業者による操作を伝達棒132により把持部110に伝達する支持伝達部130と、を備えており、このヤットコ100は、概略全体をプラスチックやゴム材料などの絶縁材料で作製されて絶縁性が確保されている。
【0021】
把持部110は、円弧形状に形成されて支持伝達部130の支持棒131の一端側に固設された不動部材111と、同様に円弧形状に形成されて支持伝達部130の伝達棒132の一端側に連結されるとともに不動部材111(支持棒131)側に配設された回動軸113を中心に回動自在に軸支されている可動部材112と、により構成されている。この把持部110は、不動部材111および可動部材112が回動軸113を中心に相対的に回動して互いの先端部111a、112aを接離させることにより回動軸113との間に画成される空間内やその先端部111a、112aの間に目的物を把持して掴むことができるように構築されている。
【0022】
操作部120は、支持伝達部130の支持棒131の他端側に取り付ける取付具121と、この取付具121に配設された回動軸121aに一端側が回動自在に軸支されているレバーハンドル122と、このレバーハンドル122と同軸となるように取付具121の回動軸121aに一端側が回動自在に軸支されているとともに他端側が回動軸123aを介して相対回動可能に支持伝達部130の伝達棒132に連結されている連結レバー123と、取付具121の回動軸121aに配設されてレバーハンドル122の回動を連結レバー123に伝達するとともに支持伝達部130の伝達棒132を図2の上方(不動部材111および可動部材112の先端部111a、112a同士を離隔させる方向)に押すように付勢する不図示のバネ材料と、により構成されている。
【0023】
これにより、ヤットコ100は、作業者が支持伝達部130の支持棒131を掴んで支持しつつ、操作部120のレバーハンドル122をその支持棒131に接近させる方向に回動させると、その支持伝達部130の伝達棒132が図2の下方に引かれて把持部110の可動部材112が不動部材111に接近する方向に向かって回動されることにより先端部111a、112a同士を接近させることができ、目的物を把持して掴むことができる。一方、このヤットコ100は、レバーハンドル122が放されて伝達棒132を介する操作力から解放されると、前記バネ材料の弾性力により伝達棒132が図2の上方に押されて可動部材112が不動部材111から離隔する方向に向かって回動されることにより先端部111a、112a同士を離隔させた自然状態に戻る。なお、支持伝達部130の伝達棒132には、連結レバー123との連結部の近傍にスプリング133が介装されており、レバーハンドル122を回動させて伝達棒132を引いて可動部材112と不動部材111を接近させて目的物を把持する際には、その操作力に応じてスプリング133が弾性伸長することにより信頼性高く目的物を把持して掴む状態を維持することができる。
【0024】
ここで、把持部110は、不動部材111も回動軸113を中心にして回動自在に支持伝達部130の支持棒131の一端側に軸支されており、その不動部材111は、先端部111aの反対側に配設されているその回動軸113を中心にする円弧上の複数箇所(ここでは3箇所)に係合穴111cが開口する一方、その支持伝達部130の支持棒131の一端側には、図5に示す後述の取付部31と略同様な構造(所謂、スナップフィット)に設計されて、その係合穴111cのいずれかに係合ピン138を差込・係合させてその不動部材111を回動不能に係止するようになっている。これにより、このヤットコ100は、後述するように把持部110に取り付けるデジタルカメラ200の撮影方向の仰角を調整して、遠隔位置の被写体に対する姿勢を最適にすることができ、高品質な撮影を可能することができる。なお、このデジタルカメラ200の仰角の調整機能は、アダプタ10側にも配設してもよく、この機能を備えていないヤットコなどでも快適に利用することができるようにしてもよい。
【0025】
また、このヤットコ100は、把持部110側からの水分を滴下させる傘カバー134と、作業対象の電線などからの絶縁性を考慮して安全に作業を行い得る限界位置を示す傘カバー135とが支持伝達部130の支持棒131および伝達棒132に設けられており、これにより、ヤットコ100は、把持部110と操作部120の間の絶縁性を確保することができ、停電させることなく配電設備に対する各種作業を行う間接活線工法を採用することができる。
【0026】
そして、アダプタ10は、デジタルカメラ200を設置して位置決め固定する固定台11と、この固定台11に固定されて先端部を突出させる突当棒(突当部材)21と、この固定台11をヤットコ100の把持部110に着脱可能に取り付ける取付部31(図3、図4を参照)と、そのヤットコ100の把持部110の操作により固定台11上のデジタルカメラ200の不図示のシャッタボタン(シャッタスイッチ)を押下する連動部41と、を備えている。
【0027】
固定台11は、デジタルカメラ200を取付固定可能なカメラ領域12と、ヤットコ100の把持部110により把持可能な把持領域13と、を並列させることができる程度の面積に設定されており、概略四角形状のアルミ板の一辺側(図1中の紙面裏面側)を折り曲げた折曲部14(図4を参照)を形成することにより、平面方向の強度が向上されている。
【0028】
このカメラ領域12の上面側には、デジタルカメラ200の底面の三脚に固定するための不図示のネジ穴に捻じ込んで固定する取付ネジ15が突出して回転自在かつ脱落不能に配設されているとともに、その周囲には、デジタルカメラ200の底面に密接して姿勢を安定させるゴム板16が設置されている。
【0029】
また、把持領域13は、ヤットコ100の把持部110の不動部材111と可動部材112の先端部111a、112aにより掴むことのできる面積がカメラ領域12の隣接位置に確保されており、図4に示すように、その裏面側に、その把持部110の不動部材111の先端部111aを着脱可能に取り付けることのできる取付部31が設置されている。
【0030】
これにより、固定台11は、カメラ領域12の取付ネジ15を裏面側のツマミ15aを摘まんで回転させることによりデジタルカメラ200の底部のネジ穴に螺合させて位置決め固定することができ、また、隣接する把持領域13には、取付部31によりヤットコ100の把持部110の不動部材111の先端部111aに取り付けて可動部材112の先端部112aを近接させることができる状態に(実際には、ヤットコ100の把持部110で掴むことなく)取り付けることができる。なお、折曲部14の反対側には、先端側にフック18の取り付けられている紐状材料17がネジ止めされて連設されており、図3に示すように、デジタルカメラ200のストラップ201にその紐状材料17を通してヤットコ100の把持部110に巻き掛けた後にフック18を紐状材料17に引っ掛けることにより不注意でヤットコ100の把持部110からデジタルカメラ200やアダプタ10が脱落してしまうことを防止している。
【0031】
突当棒21は、棒材料により作製されており、その先端部には絶縁性および滑り止め機能を備えるようにゴム材料よりなるキャップ22が取り付けられている。この突当棒21は、図4に示すように、固定台11の折曲部14の裏面側に屈曲させた板材23をボルト24でネジ止めして締め付けることにより前後方向にスライド不能に固定されており、その後端側には、図4中に破線で示す中間部21aよりも太い大径部21bを形成することにより不用意に抜けてしまうことを防止している。
【0032】
これにより、突当棒21は、固定台11から所望の長さで突出するように固定することにより、停電させることなく配電設備に対する各種作業を行う間接活線工法のまま、先端部のキャップ22を遠隔位置の被写体自体やその被写体近傍に突き当ててデジタルカメラ200の撮影作業を行うことができ、そのデジタルカメラ200までの間隔を確保することができるとともに、ヤットコ100の操作部120から離れている先端側の把持部110に取り付けられているためにデジタルカメラ200がぶれてしまうことを防止して安定させることができる。
【0033】
取付部31は、図5に示すように、ヤットコ100の把持部110の不動部材111の先端部111a(以下、単に先端部111aともいう)を差し込んで覆う箱型筐体部32と、この箱型筐体部32をその先端部111aに着脱可能に固定して取り付け状態を維持する着脱部33と、により構成されており、その箱型筐体部32が固定台11の把持領域13の裏面側に位置するように六角ボルト32aにより固定されている。なお、取付部31は、ヤットコ100の把持部110の可動部材112の先端部112aにも取付可能なことは言うまでもない。
【0034】
箱型筐体部32は、ヤットコ100の先端部111aを差し込んで内装状態にするように開口する差込口35が形成されているとともに、その差込口35の上面側(図5(a)の上方)に、その先端部111aの両側面に形成されている不図示のリブを収装するスリット36が形成されており、そのスリット36の間に着脱部33が配設されている。
【0035】
着脱部33は、箱型筐体部32の上面に一体形成された円柱形状内を上下方向に貫通する貫通孔37が穿孔されており、この貫通孔37内に、箱型筐体部32の内部に先端38aを突出させる係合ピン38と、この係合ピン38および貫通孔37内面に両端部をそれぞれ固設されてその係合ピン38の先端38aを箱型筐体部32内に突出させるように付勢するスプリング(付勢手段)39と、が収装されている。このため、この着脱部33は、係合ピン38の後端側の大径部38bを摘まんでスプリング39の弾性力に抗して引き上げることにより、ヤットコ100の先端部111aを箱型筐体部32の差込口35から差し込むことができ、その係合ピン38の大径部38bを離したときにはその先端部111aの外面に形成されている不図示の窪みに係合ピン38の先端38aを進入(係合)させて箱型筐体部32内から離脱してしまうことを制限して固定することができる。
【0036】
この着脱部33は、係合ピン38の軸部側面に係止ピン38cが立設される一方、貫通孔37には、その係止ピン38cを上下方向に移動可能に収装するスリット37aが形成されている。このため、この係合ピン38は、大径部38bを摘まんでスリット37aから係止ピン38cが外れるほど引き上げた後に回転させることにより、その係止ピン38cを着脱部33(円柱形状)の上面(スリット37aの脇)に係止させることができ、作業者が手を離しても箱型筐体部32内にその先端38aが突出しない状態に保持することができる。この状態で、ヤットコ100の先端部111aを箱型筐体部32の差込口35から容易に差し込むことができ、この後にその大径部38bを逆方向に回転させて係合ピン38の係止ピン38cをスリット37a内に進入させることによりその係合ピン38の先端38aをヤットコ100の先端部111aの外面の窪みに係合させて固定することができる。
【0037】
連動部41は、固定台11の平面に対して直立する姿勢になるように立設されている支柱部材42と、この支柱部材42の上下に回動自在に取り付けられている回動アーム43、45と、この回動アーム43、45の一端部に連結されている連結棒44と、上側の回動アーム45の他端部に配設されている押下部材46と、により構築されている。
【0038】
支柱部材42は、固定台11の把持領域13に隣接する折曲部14の側面に固設されており、回動アーム43、45の中間部43a、45aをベアリング47(回動アーム45側は図6を参照)を介して軸支することによりスムーズに回動させることができるように取り付けられている。
【0039】
回動アーム43は、固定台11の把持領域13の折曲部14側から内方に向って横断する姿勢になるように支柱部材42に中間部43aを回動自在に軸支されており、図4に示すように、その他端部43bがその把持領域13の裏面側に設置されている取付部31の表面(上面)側に位置するように設置されている。このため、回動アーム43は、固定台11の把持領域13の裏面側にヤットコ100の把持部110の先端部111aを取付部31により取り付けた状態にして、そのヤットコ100の把持部110を操作部120により操作してその把持部110の可動部材112の先端部112aを回動させることによって、把持部110により他端部43bを摘まむようにして押下する力を付与することができる。
【0040】
回動アーム45は、固定台11の折曲部14と平行に把持領域13からカメラ領域12に向って延在する姿勢になるように支柱部材42に中間部45aを回動自在に軸支されており、図6に示すように、その他端部45bがそのカメラ領域12の上面側に設置されているデジタルカメラ200の不図示のシャッタボタンの上部に位置するように配設されている。このため、回動アーム45は、連結棒44を介して回動アーム43の回動を伝達されることにより他端部45bをデジタルカメラ200のシャッタボタンに近接・離隔させることができる。
【0041】
ここで、これら回動アーム43、45は、中間部43a、45aから他端部43b、45bまでの間隔を一端部43c、45c側よりも長く設定することにより、その他端部43b、45b側が自然に降下するように設計されている。
【0042】
連結棒44は、回動アーム43、45の一端部43c、45cのそれぞれに両端部44a、44bが相対回動可能に連結されており、回動アーム43の他端部43bが降下する方向に回動すると、その一端部43cが上昇するので、回動アーム45の一端部45cも上昇することになり、その他端部45bをデジタルカメラ200のシャッタボタンに接近させる方向に降下させる。この連結棒44は、固定台11の把持領域13を横断する姿勢になるように支柱部材42に軸支されている回動アーム43の一端部43cと、その固定台11の把持領域13からカメラ領域12に向って延在する姿勢になるように回動自在に軸支されている回動アーム45の一端部45cと、を連結しており、互いに直交する姿勢の回動アーム43、45をスムーズに連動させる必要があることから、その一端部43c、45cを連結棒44の両端部44a、44bにボールジョイント(自在継手)により連結している。
【0043】
この連結棒44は、両端部44a、44bに逆ネジの刻設されている棒材料44cが螺合されており、この棒材料44cを正逆回転させることにより両端部44a、44bの間隔を調整することができ、回動アーム43、45の一端部43c、45cを近接・離隔させることができる。このため、連結棒44は、回動アーム43、45が他端部43b、45b側を自然に降下することから、両端部44a、44bの間隔を調整してその回動アーム43、45の一端部43c、45c同士を近接・離隔させることにより、回動アーム45の他端部45bを上下させてデジタルカメラ200のシャッタボタンに対する相対位置(シャッタボタンに対して近接・離隔する位置)を調整することができる。
【0044】
押下部材46は、図6に示すように、回動アーム45の他端部45bに取り付けられており、その回動アーム45の他端部45bにネジ止めする取付部材46bに中空のゴムキャップ46aが下方に向くように固設されている。この取付部材46bは、図7に示すように、L字形状に作製されており、回動アーム43の他端部43bがゴムキャップ46aの真上に位置するように取り付けることができる。このため、この押下部材46は、回動アーム43がヤットコ100により操作されることにより、連結棒44を介して回動アーム45が回動してその他端部45bが降下する際には、そのゴムキャップ46aが変形することにより、デジタルカメラ200のシャッタボタンを損傷させてしまうことなく押下することができる。なお、この押下部材46のゴムキャップ46aは、取付部材46bの下面の突起46cに被せるようにして接着されており、デジタルカメラ200のシャッタボタンを繰り返し押下しても外れたりすることがないように固設されている。
【0045】
そして、固定台11は、回動アーム43、45が他端部43b、45b側を降下させている姿勢を取るように設定されているとともに、図4に示すように、その回動アーム43の他端部43bとの間に所定の厚さに設定されている硬質樹脂からなるスペーサ49が貼付されている。具体的には、回動アーム45が他端部45bに取り付けた押下部材46をデジタルカメラ200のシャッタボタンに軽く接触させる位置(シャッターを切らない程度に接触する状態)に保持されつつ、降下しようとする回動アーム43の他端部43bをスペーサ49から浮いた状態に支持するように調整されており、回動アーム43の他端部43bがそのスペーサ49に押し付けられるときに、その回動アーム43の他端部43bを多少降下させて回動アーム45の他端部45bの押下部材46によるデジタルカメラ200のシャッタボタンの押下がなされるように設定されている。また、このスペーサ49は、ヤットコ100の把持部110の先端部112aが先端部111aとの間に摘まむように動作して回動アーム43の他端部43bを押し付けられてその降下を制限することから、その他端部43bが中間部43aとの間のアーム部分以上の高さに位置してスムーズに押し下げ動作が行い得るように設定されている。ここで、本実施形態では、ヤットコ100により回動アーム43の他端部43bをスペーサ49に押し付けてデジタルカメラ200のシャッタボタンを押下する構造を採用することから、そのヤットコ100で押下力やストローク(移動距離)の調整をすることは難しいので、このように回動アーム43の他端部43bをスペーサ49に押し付けるまでの距離を調整するようにしているが、これに限ることなく、押下力やストロークを正確に調整できる機構・道具を用いる場合には、接触しない位置から降下させて最下の位置でシャッターを切るようにしてもよいことは言うまでもない。
【0046】
したがって、このアダプタ10は、固定台11のカメラ領域12の上面側にデジタルカメラ200を取付ネジ15により位置決め固定するとともに、その固定台11の把持領域13の裏面側の取付部31にヤットコ100の把持部110の先端部111aを差し込んで取り付けた状態にするだけで、間接活線工法によりデジタルカメラ200で被写体の撮影を行う準備を完了することができる。この後には、固定台11を被写体の近傍に持って行って突当棒21をその被写体の近傍に突き当てることにより、ぶれのない撮影と最適な間隔とを容易に確保することができる。この状態を保持した後に、回動アーム43の他端部43bを固定台11側に回動させて接近させるように、そのヤットコ100の把持部110で摘まむよう操作部120を操作するだけで、連結棒44を介して回動アーム45を回動させて押下部材46によりデジタルカメラ200のシャッターを押下することができ、高品質に被写体を撮影することができる。
【0047】
このように本実施形態においては、汎用のデジタルカメラ200とアダプタ10を準備して携行するだけで、他の作業でも使用するために携行するヤットコ100を利用して、遠隔位置の被写体を間接活線工法により撮影することができ、例えば、開閉器の銘板内の表示を撮影して型番や製造年月日などの必要な事項を容易に確認することができる。また、デジタルカメラ200とアダプタ10のみではコンパクトに収容することができることから負担なく常に携行することもできる。
【0048】
ここで、本実施形態では、連結棒44の棒材料44cを回転させてその両端部44a、44bの間隔を変更することにより、回動アーム45の他端部45bに取り付けられている押下部材46がデジタルカメラ200の機種などに応じてそのシャッタボタンを無理なく押下することができるように調整することができるが、これに加えて、例えば、図8に示すように、デジタルカメラ200の底面のネジ穴に螺合させる取付ネジ15を水平方向にスライド可能に長穴51内に差し込んで回転自在に保持するとともに、その長穴51の形成されている円盤部材52を回転可能に固定台11のカメラ領域12に設置してもよい。この場合には、固定台11に取り付けるデジタルカメラ200のシャッタボタンの位置に応じて回動アーム45の他端部45bに取り付けられている押下部材46がそのシャッタボタンの真上に来るように調整することができ、利用可能なデジタルカメラ200の範囲を拡大して汎用性を向上させることができる。なお、特に図示することは省略するが、固定台11は、この長穴51の形成されている円盤部材52を所望の回転角度で固定する固定手段を備えることは言うまでもない。
【0049】
さらに、本実施形態では、突当棒21をヤットコ100の先端に設置する場合を一例に説明するが、これに限るものではなく、例えば、絶縁性を備える単なる棒状の絶縁操作棒の先端にデジタルカメラを取り付けてリモートコントロールによりシャッタの操作を遠隔位置で行い得るようにする場合にも、その突当棒をデジタルカメラの前面側に設置することにより、ぶれのない撮影と被写体までの最適な間隔を確保することができるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。例えば、上述実施形態では、コンパクトなデジタルカメラの場合を一例に説明するが、これに限るものではなく、上級機種の一眼レフカメラでも、また、簡易なフィルムカメラでも利用可能なことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る遠隔作業道具の撮影装置用アダプタの一実施形態を示す図であり、その概略全体構成を示す斜視図である。
【図2】そのアダプタを取り付けるヤットコの全体構成を示す平面図である。
【図3】そのアダプタをヤットコに取り付けた状態を示す側方から見た立面図である。
【図4】そのアダプタのヤットコへの取付箇所とその動作に連動する箇所を示す一部拡大背面図である
【図5】そのアダプタにヤットコを取り付ける取付部の構成を示す図であり、(a)はその外観を示す斜視図、(b)はその内部構成を示す縦断面図、(c)はその要部構成を示す横断面図である。
【図6】そのアダプタのヤットコの動作に連動する箇所を示す一部拡大側面図である
【図7】そのアダプタのカメラのシャッタを押下する部材を示す立面図である。
【図8】そのアダプタの他の態様の要部構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0052】
10……アダプタ 11……固定台 12……カメラ領域 13……把持領域 14……折曲部 15……取付ネジ 16……ゴム板 17……紐状材料 18……フック 21……突当棒 22……キャップ 31……取付部 32……箱型筐体部 33……着脱部 35……差込口 38……係合ピン 41……連動部 42……支柱部材 43、45……回動アーム 43b、45b……他端部 43c、45c……一端部 44……連結棒 44a、44b……端部 44c……棒材料 46……押下部材 46a……ゴムキャップ 47……ベアリング 49……スペーサ 51……長穴 52……円盤部材 100……ヤットコ 110……把持部 111……不動部材 112……可動部材 113……回動軸 120……操作部 122……レバーハンドル 130……支持伝達部 131……支持棒 132……伝達棒 134、135……傘カバー 138……係合ピン 200……デジタルカメラ 201……ストラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の回動部材が回動軸を中心に相対的に回動して先端部が接離することにより目的物を挟むように把持する把持部と、前記把持部の前記回動部材を回動させるように操作する操作部と、前記操作部から離隔する位置に前記把持部を連結して当該操作部に加えられる操作力を前記把持部に伝達する伝達部と、を備える遠隔作業道具の前記把持部に撮影装置を設置するとともに該撮影装置の該把持部による操作を可能に当該遠隔操作道具に着脱自在に取り付けるアダプタであって、
前記撮影装置を取り付けて位置決め固定する固定台と、前記固定台に連設されて前記遠隔作業道具の前記把持部の前記回動部材の一方に着脱可能に取り付ける取付部と、前記遠隔作業道具の前記把持部の前記回動部材の他方の動作を伝達して前記撮影装置のスイッチを連動操作する連動部と、を具備することを特徴とする遠隔作業道具の撮影装置用アダプタ。
【請求項2】
前記撮影装置により撮影する被写体あるいは該被写体近傍に突き当てる所望の長さの突当部材を有することを特徴とする請求項1に記載の遠隔作業道具の撮影装置用アダプタ。
【請求項3】
前記連動部は、前記撮影装置の前記スイッチがボタンスイッチであるのに対して、前記遠隔作業道具の前記把持部の前記回動部材の他方の動作に連動して、当該ボタンスイッチに近接離隔する方向に移動する移動部材を有しており、
前記ボタンスイッチに対する前記移動部材の位置を調整する機構を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遠隔作業道具の撮影装置用アダプタ。
【請求項4】
前記固定台は、前記撮影装置に予め準備されている固定用ネジ穴に螺合させて該撮影装置を位置決め固定するネジ部材を有しており、
前記ネジ部材の前記固定用ネジ穴との螺合位置を調整する機構を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の遠隔作業道具の撮影装置用アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−157321(P2009−157321A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338812(P2007−338812)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】