説明

適応式慣性粒子分離装置

【課題】ガスタービンエンジンの慣性粒子分離システムを改良し、砂、塵埃の吸い込みを防止し、エンジンの信頼性を向上させる。
【解決手段】ガスタービンエンジンの入口16、入口を通過する流路を定める表面34に結合され、清浄空気がブーツ50から下流側の流路表面に密着することを促進するように構成された複数の流体出口スロットを有する膨張可能ブーツ50、及びブーツ50を展開させる手段を備え、前記手段はパイロットを含み、砂及び塵埃状態を検出して前記ブーツ50を膨張/収縮させるように制御バルブ54を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にガスタービンエンジンに関し、より詳細に適応式慣性粒子分離装置及び利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの砂及び塵埃の吸い込みは、エンジン性能及び信頼性に悪影響を及ぼし、またエンジンに必要とされる補修及び保守の頻度を増加させる恐れがある。飛行準備完了は、少なくとも部分的にはエンジンが確実に且つ適切に動作することによって決定付けられるので、砂及び塵埃吸い込みの発生及び/又は影響を低減することによって、エンジンの信頼性の向上が促進されるはずである。
【0003】
入口空気流によってエンジン圧縮機に運ばれる砂及び塵埃の濃度の低減を促進するために様々な方法が利用される。例えば、既知の慣性粒子分離装置(IPS)はあらゆる気象条件で良好に動作し、高い信頼性があり、エンジンに組み込まれるが、過酷な砂及び塵埃条件の間は十分な分離効率を実現できない恐れがある。慣性粒子分離装置は、砂及び塵埃粒子に対して運動量と軌道を与え、ガスタービンエンジンに入る流動流からこうした粒子を除去して流すことにより動作する。次いで、除去された粒子は収集され、又は船外投棄場に掃気される。しかしながら、入口空気からの砂及び塵埃粒子の分離を容易にする同じ機能はまた、ガスタービンエンジンの性能に悪影響を及ぼし得る入口圧力の損失を招く。既知のIPSシステムの恒久的な性質に起因して、清浄な空気及び砂を含む空気条件においてエンジン性能の損失を被る。
【0004】
動作中、ガスタービンエンジン入口への流体の流れは、入口チャネルに向かって下流側に誘導される。凸状セクションから下流側では、流体の流れは、2つの流体流に分割される。汚濁流体流れとして知られる流れの1つは汚濁流体チャネルに誘導される。鳥などのデブリ、並びに雪及び/又は氷粒子などのデブリの粒子は、汚濁流体チャネルを通ってIPS掃気システム内に流れ、そこでデブリはガスタービンエンジンから排出される。清浄流体流れとして知られる、他の流体流は、清浄流体チャネルに誘導される。清浄流体チャネルへの「清浄な」流れを促進するため、清浄流体流れは、凸状セクションの周りで鋭角に転向するように強制される。ほとんどのデブリは、デブリ粒子の慣性及び運動量がより大きいことに起因して、転向点で方向を変えることができない。その結果、ほとんどのデブリは、汚濁流体チャネル内に誘導され、従って、ガスタービンエンジンへの清浄流体の流れを促進することになる。このタイプのIPSシステムは、大きな砂粒子及びデブリの除去を促進するが、一般的にはこのようなIPSシステムは、より細かな粒子又はデブリの除去には有効ではない。
【0005】
ある既知のヘリコプターは、過酷な砂条件に対処するために大きな障壁フィルターが取り付けられている。このようなフィルターは、砂及び塵埃を空気から十分に除去するが、既知のフィルターは重く、エンジン性能に有害な影響を及ぼし、保守がより多く必要となり、氷結条件では動作することができない。更に、既知のフィルターはまた、ガスタービンエンジンの入口において圧力低下を生じ、これはまたエンジン性能に悪影響を及ぼす。その上、既知のフィルターはまた、砂及び塵埃の詰まりの影響を受けやすい。
【特許文献1】米国特許第6,134,874号公報
【特許文献2】米国特許第4,098,594号公報
【特許文献3】米国特許第4,509,962号公報
【特許文献4】米国特許第3,766,719号公報
【特許文献5】米国特許第5,039,317号公報
【特許文献6】米国特許第3,733,814号公報
【特許文献7】米国特許第6,755,897号公報
【特許文献8】米国特許第6,698,180号公報
【特許文献9】米国特許第6,508,052号公報
【特許文献10】米国特許第6,499,285号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、ガスタービンエンジン用の慣性粒子分離システムが開示される。本システムは、ガスタービンエンジンの入口と、入口を通過する流路を定める表面に結合された膨張可能ブーツとを備える。ブーツは、清浄空気がブーツから下流側の流路表面に密着することを促進するように構成された複数の流体出口スロットを含む。本システムはまた、ブーツを展開させる手段を含む。
【0007】
他の態様では、ガスタービンエンジン用デュアルモード慣性粒子分離装置が提供される。本装置は、入口チャネル及び流路を含む慣性粒子分割器を含み、慣性粒子分割器は、慣性粒子分割器の第1の動作モード中、入口チャネルの流体からの砂粒子及びデブリの効果的な除去を容易にする。本装置はまた、慣性粒子分割器の表面に結合され、流路を定める膨張可能ブーツを含む。本ブーツは、慣性粒子分割器の第2の運転モード中に膨張して、入口チャネル中の流体からの砂粒子及びデブリの効率的な除去を高めることを容易にする。
【0008】
またここでは、圧縮機を含むガスタービンエンジンを動作させる方法が開示される。この方法は、予め設定された濃度を定義する段階と、少なくとも1つのセンサをガスタービンエンジンの入口に配置する段階と、少なくとも1つのセンサを使用して砂及び塵埃濃度値を検出する段階と、砂及び塵埃の濃度値が予め設定された濃度以上である場合に、粒子の圧縮機への流入阻止を促進するためにブーツを展開する段階とを含む。ブーツは、清浄空気がブーツから下流側の流路表面に密着されるのが促進されるように複数の流体出口スロットを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、2基のガスタービンエンジン組立体12を含む例示的なヘリコプター10の一部の平面図である。各ガスタービンエンジン組立体12は、一対のガスタービンエンジン14を含み、その各々は入口16と排気口18とを含む。ガスタービンエンジン14は、ガスタービンエンジン14間を軸方向に延びる対称軸20に対して対称に配向される。更に、ガスタービンエンジンは、ヘリコプター胴体部24によって定められるエンジン区画22内に搭載される。後部駆動シャフト26は、各ガスタービンエンジン14から主変速機28に延びる。他の設計においては、駆動シャフト26は、各エンジン14の前面の外側に延びることができる。
【0010】
図2は、ガスタービンエンジン入口16の一部の拡大断面図である。入口16は、エンジンと一体化することができ、或いはエンジンと分離してもよい。例示的な実施形態において、入口16は、慣性粒子分割器(IPS)として機能し、外表面32及び内表面34により定められる入口チャネル30を含む。内表面34は凸状セクション36を含む。分割器38は、入口チャネル30を清浄流体チャネル40と汚濁流体チャネル42とに二分することができる。清浄流体チャネル40は、分割器38の下側表面と内表面34とによって定められる。清浄流体チャネルは、内表面の凸状セクション36からガスタービンエンジン14内に含まれる圧縮機44まで延びる。汚濁流体チャネル42は、分割器38の上側表面37と外表面32とによって定められ、凸状セクション36からIPS清浄システム(図示せず)まで延びる。本IPS清浄システムは、ブロア又は排気エジェクタによって作動される。本明細書で使用される用語「流体」とは、限定ではないが、気体、空気及び液体を含む流動するあらゆる物質又は媒体を含むことを理解されたい。
【0011】
図3は、例示的なガスタービンエンジン入口16の一部の拡大断面図である。例示的な実施形態では、ガスタービンエンジン14と共に使用することができる可膨張性流路ブーツ50は、内表面34の凸状セクション36に結合され、センサ48は外表面32に結合される。可膨張性流路ブーツ50は、入口16が本明細書で記載されるように機能することが可能なあらゆる幾何学的形状を取ることができる。更に、流路ブーツ50は、ガスタービンエンジン入口16の厳しい動作環境に耐えることができるあらゆる材料から形成することができる。
【0012】
例示的な実施形態では、可膨張性流路ブーツ50は、ガスタービンエンジン14から誘導される抽気を用いて配備される。具体的には、ダクト52は、ブーツ50と、限定ではないが低圧圧縮機44などの低圧流対源との間に延びる。制御弁54は、低圧源から流路ブーツ50への流体流れの制御を促進する。
【0013】
例示的な実施形態では、可膨張性流路ブーツ50は、内表面34に固定され、非膨張動作状態から膨張動作状態に展開可能である。ガスタービンエンジンの動作中、砂及び塵埃が、例えば入口16に引き寄せられない場合、流路ブーツ50は、収縮して非膨張状態のままである。非膨張状態において、流路ブーツ50は、凸状セクション36内の内表面にほぼ密着している。しかしながら、許容可能でない濃度の砂及び塵埃が入口16に進入することに直面し又は感知された場合には、流路ブーツ50は膨張し、入口流チャネル30及び清浄流体チャネル40の幾何形状が変化するようにする。具体的には、膨張流路ブーツ50は、内表面34の凸状セクション36の形状を効果的に変えて、入口外表面32に向けてブーツ50の上部表面51を押し付けることによって咽喉域を狭くする。このようにすることで、ブーツ50の上部表面は、流入チャネル30の幅を低減し、鋭角の流路転向を凸状セクション36の後縁35の位置で形成させるようにする。更に、膨張したブーツ50は、流体側における鋭角の転向を生じさせ、砂及び塵埃粒子のほとんどは、こうした粒子の慣性が原因となってこの転向を生じることはできない。従って、砂及び塵埃のより高い割合が、汚濁流体チャネル42へ流れ、砂及び塵埃の分離効率を高めることが促進される。
【0014】
図4は、凸状セクション36の拡大図であり、該セクションから延びる膨張流路ブーツ50を含む。流路ブーツ50は、複数の流体出口スロット56を含む。流体出口スロット56は、ブーツ50を通過して流れる流体境界層にエネルギを戻すことを可能にする。従って、清浄流体流れは、流路ブーツ50の上部表面51により密着し、上部表面51によって定められた凸状セクションの後縁53において清浄流体チャネル40へ鋭く転向することがより可能となる。
【0015】
この特徴によって、清浄流体流れが上部表面51及び内表面34から離れることなく鋭角の転向部の周りを進むことが可能となり、コンプレッサー44までの高い圧力低下及び流れの歪みを引き起こすことがない。流体出口スロット56は、限定ではないが、ブーツ50中の切り込み、矩形開口、及び/又は一連の円形開口など、本明細書で記載されるようにブーツ50が機能することができるあらゆる幾何形状を有することができる点は理解されるべきである。更に、本発明で記載されるようにブーツ50が機能することができるあらゆる数のスロット56を設けることができる。
【0016】
センサ48は、入口チャネル30中の砂及び塵埃の濃度を感知する。センサ48は、限定ではないが、粒子分析器と組み合わされた側部光学デバイス及び/又は「砂探知器」とすることができる。センサ48は、ガスタービンエンジン入口16中の砂及び塵埃の濃度の測定を促進するあらゆるデバイスとすることができる点は理解されるべきである。また、この例示的な実施形態は、外表面32上の入口16の前方領域に配置された単一のセンサ48を使用することを記載しているが、他の種々の例示的な実施形態においては、センサ48は、入口16内の流体流れを本明細書で記載されるように解析することが可能なあらゆる表面又は他のあらゆる場所に取り付けることができる点は理解されるべきである。
【0017】
更に、この例示的な実施形態では、単一センサ48のみを含むように記載されているが、複数のセンサ48を用いて、入口チャネル30中の砂及び塵埃の濃度を測定することができる点は理解されるべきである。センサ48は、砂及び塵埃濃度を表す電気信号を入出力回路110に送ることにより制御装置100と通信する。
【0018】
図5は、ブーツ50が展開されるべきときを求める際に使用するための例示的な制御論理及びシステム制御装置100を示すブロック図である。例示的な実施形態では、制御装置100は、入出力回路110、メモリ120、及び処理回路130を含む。制御装置100は、センサ48及び制御弁54と通信する。
【0019】
図5に示される回路の各々は、適切にプログラムされた汎用プロセッサの一部として実施することができることは理解されるべきである。本明細書で使用される用語「プロセッサ」は、マイクロコントローラを使用したシステム、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、及び本明細書で記載された機能を実行可能なあらゆる他の回路又はプロセッサを含む、あらゆるプログラム可能なシステムを含むことができる。上記の実施例は例証に過ぎず、従って、用語「プロセッサ」の定義及び又は意味をどのようにも限定されるものではない。
【0020】
入出力インタフェース回路110は、センサ48などの砂監視源から制御装置100に伝送される信号を受け取る。この例示的な実施形態では、制御装置100は、流体中の砂及び塵埃の濃度を示すセンサ48からの電気信号を受け取る。更に、入力/出力インタフェース回路110は、制御装置100により生成された信号を送信する。
【0021】
メモリ120は、予め設定された濃度部分122、砂及び塵埃濃度読み取り部124、及び/又は制御弁調整命令部126のうちの1つ又はそれ以上を含むことができる。予め設定された濃度部122は、流体中の砂及び塵埃の濃度についての予め設定された値を記憶する。部分124は、ガスタービンエンジン14の動作中に取られたセンサ48読み取り値を記憶し、部分126は、制御弁54の開閉用の命令を記憶する。
【0022】
メモリ120は、可変の揮発性又は不揮発性メモリ、又は変更不能もしくは固定のメモリのあらゆる適切な組合せを使用して実施することができる。可変メモリは、揮発性であれ不揮発性であれ、スタティック又はダイナミックRAM(ランダムアクセスメモリ)、フロッピー(登録商標)ディスク及びディスクドライブ、書き込み可能又は書き換え可能な光学ディスク及びディスクドライブ、ハードドライブ、フラッシュメモリ、又は同様のもののうちのあらゆる1つ又はそれ以上を用いて実施することができる。同様に、は変更不能もしくは固定のメモリは、ROM(リードオンリーメモリ)、PROM(プログラム可能リードオンリーメモリ)、EPROM(消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ)、EEPROM(電気的に消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ)、CD−ROM又はDVD−ROMなどの光学ROMディスク、及びディスクドライブ又は同様のもののうちのあらゆる1つ又はそれ以上を用いて実施することができる。
【0023】
この例示的な実施形態では、処理回路130は、各砂及び塵埃濃度読み取り値124を予め設定された濃度部122内に記憶されている砂及び塵埃の予め設定された濃度と比較する。予め設定された濃度は、砂及び塵埃濃度がそれ未満となる閾値を表す。
【0024】
図6は、可膨張性流路ブーツ50(図3及び図4)を展開すべきときを決定する例示的方法を示すフローチャートである。最初に72で、予め設定される濃度を定義する。次いで、ステップ74において、センサ48は、入口チャネル30(図3に示す)内に流入する流体中の砂及び塵埃の量に対応する濃度読み取り値を発生する。ステップ74からの濃度読み取り値は、ステップ76で予め設定された濃度と比較され、濃度読み取り値が予め設定された濃度よりも小さいか否かを判断する。濃度読み取り値が予め設定された濃度よりも小さい場合、動作はステップ78に進む。予め設定された濃度よりも小さくない場合、動作はステップ86に進む。以下の考察では、ステップ78に進む動作を説明し、その後ステップ86に進む動作を説明する。
【0025】
ステップ78において、流路ブーツ50が膨張しているか否かに関して判断される。ブーツ50が膨張していない場合、動作はステップ80に進み、そこで追加の砂及び塵埃濃度読み取り値が必要であるか否かに関して判断される。追加の読み取り値が必要である場合、動作はステップ74に続く。追加の読み取り値が必要でない場合、動作はステップ88に進み、そこで動作は終了する。ステップ78において、ブーツ50が膨張している場合、動作はステップ82に進む。
【0026】
ステップ82において、信号が入出力回路110から制御弁54に送られる。本信号は、制御弁54を閉じるように指示する。これに応じて、流路ブーツ50への流体の流れが停止し、ブーツ50を収縮させるようになる。次に動作はステップ84に進む。ステップ84において、追加の砂及び塵埃濃度読み取り値が必要であるか否かに関して判断される。追加の読み取り値が必要である場合、動作はステップ74に続く。追加の読み取り値が必要でない場合、動作はステップ88に進み、そこで動作は終了する。
【0027】
ステップ76において、濃度読み取り値が、予め設定された濃度よりも小さくない場合、動作はステップ86に進む。ステップ86において、信号が入出力回路110から制御弁54に送信される。本信号は、制御弁54を開くように指示時する。これに応じて、流体が流路ブーツ50に流れ、ブーツ50を膨張させるようにする。次に動作はステップ84に進む。ステップ84において、追加の砂及び塵埃濃度読み取り値が必要であるか否かに関して判断される。追加の読み取り値が必要である場合、動作はステップ74に続く。追加の読み取り値が必要でない場合、動作はステップ88に続き、そこで動作は終了する。従って、この例示的な実施形態により、ブーツ50が常に展開されている状態で動作するのに比べ、砂及び塵埃が無い場合には航空機がより効率的に動作することが可能となる。
【0028】
図7は、可膨張性流路ブーツ50(図3及び図4に示す)が展開されるべきときを決定する他の例示的な方法を示すフローチャートである。最初にステップ90において、航空機運転者又はパイロットが砂及び塵埃状態を検出する。次にステップ92において、運転者は、アクチベータ(図示せず)を使用して制御弁54を開き、流体が流路ブーツ50に流れてブーツ50を膨張させるようにする。アクチベータは、制御弁が本明細書に記載したように機能することが可能なあらゆる種類のアクチベータとすることができる点を理解すべきである。ステップ93において、航空機運転者が砂及び塵埃状態を検出しない場合、動作はステップ94に進む。ステップ94において、航空機運転者は、アクチベータ(図示せず)を使用して制御弁54を閉め、流体が流路ブーツ50を制御するように流れるのを停止し、ブーツ50を収縮させるようにする。従って、この例示的な実施形態はまた、ブーツ50を常に展開させた状態で動作させるのに比べ、砂及び塵埃が無い場合には航空機がより効率的に動作することが可能となる。
【0029】
本明細書で記載される例示的な実施形態は、ガスタービンエンジン14の前輪ギアボックスの周りの利用可能な空間を使用して、入口に入る流体が、ガスタービンエンジン14自体に移行する前に2次元の慣性粒子分割器を通して急峻に転向するようにさせる。例えば、CH53航空機に適用される場合、本システムは、航空機入口ダクト及びEAPシステムを置き換えることができ、実質的により小型で軽量になる。また本システムの一部として本明細書で開示されるものは、低圧エンジン抽気流体によって動作される可膨張性流路ブーツ50である。抽気流体は、制御装置100を使用して自動的に制御することができ、或いは、航空機運転者の操作によって制御することができる。抽気流体の使用により、流路ブーツ50は、より鋭角の流体転向をもたらし、砂分離効率を高度に改善させることが可能となる。空気力学的に設計された流体出口スロット56は、上部表面51によって定められる凸状セクションの後縁53位置での流体の鋭角の転向角度にも関わらず、内表面34からの流路ブーツ50における流体の流れ分離を遅延又は妨げるのを容易にするためにブーツ50内に設けられる。
【0030】
流路ブーツ50及び流体出口スロット56の組合せは、従来の慣性粒子分割器よりも優れた有意な信頼性上の利点をもたらす。流体流路は、ブーツ50を膨張させ、且つ境界層制御流体を吹き出すのに利用可能な流体が存在する場合、上部表面51によって定められる凸状セクションの後縁53において強い転向構成のみに従う。更に、ブーツ50に流体を供給する制御弁54が機能不全になった場合に、入口の分離及びエンジンの運転上の問題を引き起こす恐れがない。
【0031】
各実施形態において、吹き出しスロットを備えた上記の膨張可能ブーツは、エンジンに流入する清浄流体からの砂及び塵埃の除去を促進する。より具体的には、各実施形態において、膨張ブーツは、ほとんどの砂及び塵埃粒子が、これらの粒子の慣性に起因して生じることができない鋭角の転向をもたらす。その結果、エンジン動作中、砂及び塵埃粒子のエンジンへの流入が僅かになる。これに応じて、エンジン性能及び構成要素の有効寿命は、各々費用対効果があり且つ信頼性のある方法で容易に高められる。更に、本発明は、既存の慣性粒子分離を修正してタービンエンジンの性能を高めることを容易にすることができる手段を提供する。
【0032】
慣性粒子分割器の例示的な実施形態が上記で詳細に説明された。膨張可能ブーツは、本明細書で記載された特定の慣性粒子分割器での使用に限定されず、本明細書で記載された他の慣性粒子分割器構成要素とは独立して且つ別個に利用することができる。例えば、本明細書で記載された膨張可能ブーツは、ほとんどのヘリコプターエンジンにおいて後付することができ、航空機制御面を含む幅広い流れ制御事象において使用することができる。更に、本発明は、上記で詳細に説明された膨張可能ブーツの実施形態に限定されるものではない。むしろ、請求項の精神及び範囲内で他の種々の膨張可能ブーツ実施形態を利用することができる。
【0033】
本発明を様々な特定の実施形態に関して説明してきたが、本発明は請求項の精神及び範囲内で修正を実施することができる点は当業者であれば理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】2基のガスタービンエンジン組立体を含む例示的なヘリコプターの一部の平面図。
【図2】図1に示すエンジン組立体と共に使用することができる既知のガスタービンエンジン入口の一部の拡大断面図。
【図3】図2に示すエンジン組立体と共に使用することができ、可膨張性流路ブーツを含むガスタービンエンジン入口の一部の拡大断面図。
【図4】図2に示され、展開された可膨張性流路ブーツを含む入口の一部の拡大断面図。
【図5】図2及び図3に示す入口と共に使用される例示的な制御論理を示すブロック図。
【図6】図3及び図4に示す可膨張性流路ブーツ50を展開するときを決定するための例示的方法を示すフローチャート。
【図7】図3及び図4に示す可膨張性流路ブーツ50を展開するときを決定するための他の例示的な方法を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0035】
10 例示的なヘリコプター
12 ガスタービンエンジン組立体
14 ガスタービンエンジン
16 入口
18 排気
20 対称軸
22 エンジン区画
24 ヘリコプター胴体
26 駆動シャフト
28 主変速機
30 入口チャネル
32 外表面
34 内表面
35 後縁
36 内表面凸状セクション
37 上部表面
38 分割機
39 下部表面
40 清浄流体チャネル
42 汚濁流体チャネル
44 低圧圧縮機
48 センサ
50 流路ブーツ
51 上部表面
52 ダクト
53 後縁
54 制御弁
56 スロット
72 所定濃度を定める
74 砂及び塵埃濃度のセンサ読み取り
76 感知した砂及び塵埃濃度は予め設定された濃度より小さいか?
78 流路ブーツは膨張しているか?
80 他のセンサ読み取りがあるか?
82 流路ブーツを収縮
84 他のセンサ読み取りがあるか?
86 流路ブーツを膨張
88 終了
90 パイロットが砂及び塵埃状態を検出する
92 パイロットが駆動流路ブーツを膨張させるように制御バルブを作動させる
93 パイロットが砂及び塵埃状態が無いことを検出
94 パイロットが流路ブーツを収縮させるように非作動にする
100 論理及びシステム制御装置
110 入力/出力回路
120 メモリ
122 予め設定された濃度部
124 砂及び塵埃濃度読み取り値部
126 制御バルブ調整指示部
130 処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(14)の慣性粒子分離システムであって、
前記ガスタービンエンジンの入口(16)と、
前記入口を通過する流路を定める表面に結合された膨張可能ブーツであって、前記ブーツ(50)から下流側の流路表面に清浄空気を密着させることを可能にするように構成された複数の流体出口スロット(56)を含む膨張可能ブーツと、
前記ブーツを展開させる手段と、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記手段が更にパイロットを含み、前記パイロットが、砂及び塵埃状態を検出して前記ブーツ(50)を膨張させるように制御バルブ(54)を作動させることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記パイロットが、砂及び塵埃の無い状態を検出して、前記ブーツ(50)を収縮させるように前記制御弁(54)を作動させることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記入口(16)に結合され、前記入口を通って流れる流体中の粒子の濃度を検出するように構成された少なくとも1つのセンサ(48)を更に備え、
前記手段がシステム制御装置(100)を含み、前記システム制御装置は、前記少なくとも1つのセンサに結合されて、感知された濃度値を前記制御装置内に記憶された予め設定された濃度と比較し、前記制御装置は、前記感知された濃度値が前記予め設定された濃度値以上である場合に前記ブーツ(50)を展開させるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記入口(16)が入口チャネル(30)を含み、前記少なくとも1つのセンサ(48)が、前記入口チャネルを通る流路を定める表面(32)に結合されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記膨張可能ブーツが、抽気流体を使用して展開される、
ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記ブーツが、清浄流体チャネルに流入する流体に対して鋭角の転向をもたらすように構成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の流体出口スロット(56)の各々が、前記ブーツ(50)から下流側の境界層にエネルギを注入するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ブーツ(50)が、前記ガスタービンエンジン(14)に流入する流体中の粒子の濃度に基づいて、選択的に膨張及び収縮する、
ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
ガスタービンエンジン(14)用のデュアルモード慣性粒子分離システムであって、
入口チャネル(30)及び流路を含む慣性粒子分割器であって、前記慣性粒子分割器の第1の動作モード中、前記入口チャネル中の流体からの砂粒子及びデブリの効果的な除去を容易にする慣性粒子分割器と、
前記慣性粒子分割器の表面(34)に結合され、前記流路を定める膨張可能ブーツであって、前記慣性粒子分割器の第2の運転モード中に膨張して、前記入口チャネル中の流体からの砂粒子及びデブリの効率的な除去を高めることを容易にする膨張可能ブーツ(50)と、
を備えるデュアルモード慣性粒子分離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−88977(P2008−88977A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249207(P2007−249207)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】