説明

適応性のある減圧軽油転化方法

本発明は、炭化水素フィードを基準として、0〜6重量%のコンラドソン残留炭素分を有する炭化水素フィードの選択的転化方法に関する。炭化水素フィードは、2ステッププロセスで処理される。第1ステップは熱転化であり、第2ステップは熱転化の生成物の接触分解である。本発明は、流動接触分解装置用の炭化水素原料油流れからの留出物生成を増加させるための方法をもたらす。本発明から生じる生成物一覧は、分解ステップで触媒を変更することによってだけでなく、熱および接触分解ステップで条件を変更することによって更に変えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素フィードを基準として、0〜6重量%のコンラドソン残留炭素(Conradson Carbon Residue)分を有する炭化水素フィードの選択的転化方法に関する。炭化水素フィードは、2ステッププロセスで処理される。第1ステップは熱転化であり、第2ステップは熱転化の生成物の接触分解である。本発明は、流動接触分解装置用の炭化水素原料油流れからの留出物生成を増加させるための方法をもたらす。本発明から生じる生成物一覧は、分解ステップで触媒を変更することによってだけでなく、熱および接触分解ステップで条件を変更することによって更に変えることができる。
【背景技術】
【0002】
より軽質の、より貴重な生成物への常圧および減圧残油(残油)の品質向上は、ビスブレーキングおよびコーキングなどの熱分解法によって成し遂げられてきた。ビスブレーキングでは、減圧蒸留塔からの減圧残油がビスブレーカーに送られ、そこで、それは熱分解される。工程条件は、所望の生成物を生成し、かつ、コーク形成を最小限にするように制御される。減圧蒸留塔からの減圧軽油は典型的には、流動接触分解(FCC)装置に直接送られる。ビスブレーカーからの生成物は、低下した粘度および流動点を有し、ナフサ、ビスブレーカーガスオイルおよびビスブレーカー残油を含む。ビスブレーカーからの塔底物は、重質燃料油などの重質油である。様々な処理スキームがビスブレーカーで組み込まれてきた。ビスブレーカーでの転化の量は、フィードのアスファルテンおよびコンラドソン残留炭素(「CCR」)分の関数である。一般に、炭化水素フィード中のより低いレベルのアスファルテンおよびCCR分がビスブレーキングに有利である。より高い値のアスファルテンおよびCCR分は、コーキングの増加および軽質液体のより低い収率につながる。
【0003】
石油コーキングは、石油コークとフィードのそれより低い常圧沸点を有する炭化水素生成物とへの残油の転化方法に関する。遅延コーキングなどの、幾つかのコーキング法は、コークが蓄積しその後反応容器から除去される回分式方法である。流動床コーキング、例えばフルイドコーキングおよびFLEXICOKING(登録商標)(ExxonMobil Research and Engineering Co.,Fairfax,Va.から入手可能な)では、より低沸点の生成物が、流動コーク粒子の幾らかを燃焼させることによって供給される熱を使用する、高められた反応温度、典型的には約480〜590℃(896〜1094°F)でのフィードの熱分解によって形成される。
【0004】
コーキングの後に、コーカーガスオイルなどの、より低沸点の炭化水素生成物は分離領域で分離され、その工程から離れて貯蔵または更なる処理のために導かれる。頻繁に、分離された炭化水素生成物は、特に流動床コーキングが用いられるときに、コーク粒子を含有する。かかるコーク粒子は、直径がサブミクロンの上方から数百ミクロンの範囲である可能性があるが、典型的にはサブミクロン〜約50ミクロンの直径範囲にある。直径が約25ミクロンより大きい粒子を除去することが一般に望ましい。分離域の下流に置かれた、フィルターがコークを生成物から除去するために用いられる。分離されたより低沸点の炭化水素生成物中に存在する固体炭化水素質粒子は、互いにおよびフィルターに物理的に結合し、それによってフィルターを汚し、フィルター処理能力を低下させる可能性がある。汚れたフィルターは、汚れを除去するために逆洗され、取り除かれる、および機械的に掃除されるか、または両方でなければならない。
【0005】
これらの炭化水素フィードから製造される留出物沸点範囲生成物の生成を増加させるために減圧軽油などの高沸点範囲の炭化水素フィードの改良された処理方法が当業界では必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,892,644号明細書
【特許文献2】米国特許第4,933,067号明細書
【特許文献3】米国特許第4,016,218号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい実施形態は、炭化水素フィードを基準として、0〜6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)分を有する前記炭化水素フィードを転化するための熱および接触転化方法であって、
a)炭化水素フィードを有効な熱転化条件下に熱転化域で処理して熱分解生成物を生成する工程と;
b)熱分解生成物を、熱分解塔底物留分とナフサおよび留出物の少なくとも1つを含有するより低沸点の留分とに分離する工程と;
c)より低沸点の留分の少なくとも一部を精留塔に導く工程と;
d)熱分解塔底物留分の少なくとも一部を、それが分解触媒と接触する流動接触分解装置のライザー反応器に導く工程と;
e)熱転化塔底物留分を流動接触分解条件下に接触転化して接触分解生成物を生成する工程と;
f)接触分解生成物を精留塔に導く工程と;
g)精留塔からナフサ生成物、留出物生成物、および精留塔塔底生成物を分離する工程と
を含む方法である。
【0008】
本発明のより好ましい実施形態では、炭化水素フィードの少なくとも一部は、熱転化域で処理する前に水素化処理される。
【0009】
本発明の別のより好ましい実施形態では、精留塔塔底生成物の少なくとも一部は、リサイクルされてライザー反応器に戻される。本発明の更に別のより好ましい実施形態では、ナフサ生成物の少なくとも一部は、リサイクルされてライザー反応器に戻される。
【0010】
更に別のより好ましい実施形態では、熱転化域は、468℃で25〜450等価秒の範囲の苛酷度で運転される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】炭化水素フィードが、改善された留出物収率を生み出すために熱転化、引き続く接触分解にかけられる、本発明の実施形態を示すフローダイアグラムである。
【図2】炭化水素フィードが熱分解され、熱分解塔底物生成物が熱分解生成物から分離される蒸留塔に送られ、次に改善された留出物収率を生み出すために流動接触分解装置で更に処理される、本発明の実施形態を示すフローダイアグラムである。
【図3】蒸留塔オーバーヘッド留分が熱分解生成物から分離され、次にC−留分とナフサ生成物留分とへ更に分離される、本発明の実施形態を示すフローダイアグラムである。
【図4】接触分解されただけのパラフィン系VGOフィード対本発明の熱分解および接触分解されたパラフィン系VGOフィードからのナフサおよび留出物収率の比較を示すグラフである。
【図5】接触分解されただけのナフテン系VGOフィード対本発明の熱分解および接触分解されたナフテン系VGOフィードからのナフサおよび留出物収率の比較を示すグラフである。
【図6】接触分解されただけの水素化処理ナフテン系VGOフィード対本発明の熱分解および接触分解された水素化処理ナフテン系VGOフィードからのナフサおよび留出物収率の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
原料
本発明の熱および接触転化方法への原料は、炭化水素フィードを基準として、0〜6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)分を有する炭化水素フィードである。流れのコンラドソン残留炭素(「CCR」)分は、試験方法ASTM D4530,Standard Test Method for Determination of Carbon Residue(残留炭素の測定のための標準試験方法)(Micro Method)によって測定されるような値に等しいと本明細書では定義される。好ましい炭化水素フィードの例には、減圧軽油および水素化処理減圧軽油が挙げられる。減圧軽油(VGO)とは、炭化水素留分の少なくとも90重量%が、ASTM D 2887によって測定されるように約343℃〜約566℃(650°F〜1050°F)の範囲で沸騰する炭化水素留分を意味する。本明細書では特に記載のない限り、全ての沸点温度は、大気圧で言及される。減圧軽油の通常の源は減圧蒸留塔であるが、本明細書で定義されるようなVGOの正確な源は重要ではない。炭化水素フィードはFCC装置へのフィードとして好適であることが好ましい。1重量%超のCCRを有する炭化水素フィードは、約566℃(1050°F)より上で沸騰する炭化水素留分と本明細書では定義される残油成分を含んでもよい。VGOは典型的には、CCR分が低く、金属含有率が低い。本明細書で定義されるようなCCRは、標準試験方法ASTM D189によって測定される。熱転化域への原料は、独立した炉によってかまたはFCC装置それ自体へのフィード炉によって必要な反応温度に加熱されてもよい。
【0013】
熱転化
約0〜6重量%のCCRを有する炭化水素フィードは熱転化域で先ず熱転化される。VGO留分は、CCRおよび金属が低い傾向があり、炭化水素フィードがかなりの量のVGO留分炭化水素を含有するとき、熱転化域は、熱分解される典型的な減圧残油フィードと比べて過大のコーク、ガス発生、トルエン不溶性物質、または反応器壁沈着物の生成を制限しながら、より苛酷な条件で運転することができる。最大留出物生成を達成するための熱転化域の条件は、所望の生成物の本質に依存して変わるであろう。一般に、熱転化域は、熱転化域での望ましくない量のコーク、コーク前駆体または他の望まれない炭素質沈着物を作成するおよび沈着することなしに所望の生成物を最大にするための温度および圧力で運転することができる。これらの条件は実験で決定され、熱転化域における炭化水素フィードの温度および滞留時間の両方に依存する苛酷度として一般に表される。
【0014】
苛酷度は、それらの全体を本明細書に参照により援用される特許文献1および特許文献2では等価反応時間(ERT)として記載されてきた。特許文献1に記載されているように、ERTは、427℃の固定温度での滞留時間の秒単位での時間として表され、一次反応速度論を用いて計算される。特許文献1でのERT範囲は、427℃で250〜1500ERT秒、より好ましくは500〜800ERT秒である。特許権所有者によって指摘されているように、温度の上昇は、運転をより苛酷にならせる。実際に、温度を427℃から456℃に上げると、苛酷度の5倍増加につながる。
【0015】
本発明では、類似の方法論が(特許文献1で使用されている427℃と比べて)468℃での等価秒単位で表される苛酷度を測定するために用いられる。出願人らの方法では、苛酷度は、468℃で25〜450等価秒の範囲にある。出願人らは、CCRが低いフィードを使用するので、本方法は、減圧残油のビスブレーキングについて記載されているものより高い苛酷度で運転することができる。本明細書で利用される低いCCR炭化水素フィードは、壁沈着物およびコークを形成するより低い傾向を有し、熱転化で生成する不十分な品質のナフサの収率を最小限にする。
【0016】
所望の生成物に依存して、熟練オペレータは、所望の生成物分布を達成するために温度、圧力、滞留時間および供給速度を含む条件を制御するであろう。熱分解装置のタイプは変わってもよい。装置は連続モードでランされることが好ましい。
【0017】
熱転化生成物
一実施形態では、熱転化からの生成物は分離器に導かれ、そこで、生成物は熱分解塔底物留分と、ナフサおよび留出物から選択される炭化水素留分からなるより低沸点の留分とに分離されてもよい。より低い沸点の留分はまた熱分解したC−留分を含有してもよく、それは別々に単離され、ナフサおよび/または留出物留分ありまたはなしで精留塔に送られてもよい。
【0018】
用語「ナフサ」または「ナフサ留分」は、本明細書で用いるところでは、ナフサ留分の少なくとも90重量%がASTM D 86によって測定されるように約15℃〜約210℃(59°F〜430°F)の範囲で沸騰する炭化水素留分と定義されることが本明細書で指摘されるべきである。用語「留出物」または「留出物留分」は、本明細書で用いるところでは、留出物留分の少なくとも90重量%がASTM D 86によって測定されるように約200℃〜約343℃(392°F〜649°F)の範囲で沸騰する炭化水素留分と定義される。用語「C−留分」は、本明細書で用いるところでは、C−留分の少なくとも90重量%がASTM D 86によって測定されるように0℃(32°F)より下の温度で沸騰する炭化水素留分と定義される。
【0019】
分離は、フラッシュ塔または蒸留塔などの従来型分離器を用いて成し遂げられてもよい。熱分解塔底物留分は、より高沸点の物質、例えば、約343℃(650°F)を超える沸点を有するそれらの留分を含有する。より低沸点の留分は、所望の生成物一覧への更なる分離のために精留塔に送ることができる。より低沸点の留分は、ナフサおよび留出物から選択される炭化水素留分からなり、これらの生成物に相応の沸点を有するであろう。熱分解塔底物留分は、接触分解のためにFCC装置に送られる。更なる実施形態では、熱分解塔底物留分は、FCC装置の前に他のFCCフィードと組み合わせられてもよい。
【0020】
熱分解塔底物留分が望ましくない量のSおよびN含有汚染物質を含有する場合、本発明の更なる実施形態では、熱分解塔底物留分の少なくとも一部は、FCC装置に送られる前に任意選択的に水素化処理されてもよい。前に述べられたように、出発フィードが本プロセスに入る前に硫黄および窒素汚染物質の少なくとも幾らかを除去するために水素化処理装置に送られてもよいこともまた選択肢である。この実施形態を続けると、熱分解塔底物留分は、硫黄および/または窒素汚染物質の少なくとも一部を除去して水素化処理留分を生成するのに有効な条件下に水素および水素化処理触媒と接触させられる。水素化処理の後に、水素化処理留分の少なくとも一部は、本発明のこの実施形態に従って更に処理するためにFCC装置に送られる。
【0021】
本明細書での使用に好適な水素化処理触媒は、少なくとも1つの6族(1〜18族を有するIUPAC周期表に基づいて)金属と、それらの混合物を含む、少なくとも1つの8〜10族金属とを含有するものである。好ましい金属には、Ni、W、Mo、Coおよびそれらの混合物が含まれる。これらの金属または金属の混合物は典型的には、耐火性金属酸化物担体上に酸化物または硫化物として存在する。金属の混合物はまた、金属の量が、触媒を基準として、30重量%以上であるバルク金属触媒として存在してもよい。
【0022】
好適な金属酸化物担体には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナまたはチタニアなどの酸化物、好ましくはアルミナが含まれる。好ましいアルミナは、ガンマまたはエータなどの多孔性アルミナである。金属酸化物担体の酸性度は、促進剤および/またはドーパントを添加することによってか、または金属酸化物担体の本質をコントロールすることによって、例えば、シリカ−アルミナ担体中へ組み込まれるシリカの量をコントロールすることによって制御することができる。促進剤および/またはドーパントの例には、ハロゲン、特にフッ素、リン、ホウ素、イットリア、希土類酸化物およびマグネシアが挙げられる。ハロゲンなどの促進剤は一般に、金属酸化物担体の酸性度を上げるが、イットリアまたはマグネシアなどの弱塩基性のドーパントはかかる担体の酸性度を低下させる傾向がある。
【0023】
バルク触媒は典型的には担体材料を含まず、金属は酸化物または硫化物として存在せず、金属それ自体として存在することが指摘されるべきである。これらの触媒は典型的には、バルク触媒に対して上に記載された範囲内で金属と少なくとも1つの押出剤とを含む。担持水素化処理触媒用の金属の量は、個々にまたは混合物でのどちらかで、触媒を基準として、0.5〜35重量%の範囲である。6族金属と8〜10族金属との好ましい混合物の場合には、8〜10族金属は、触媒を基準として、0.5〜5重量%の量で存在し、6族金属は、触媒を基準として5〜30重量%の量で存在する。金属の量は、原子吸光分光法、誘導結合プラズマ原子発光分光法または個々の金属に対してASTMで明記されている他の方法によって測定されてもよい。好適な商業的に入手可能な水素化処理触媒の非限定的な例には、RT−721、KF−840、KF−848、およびSentinelTMが挙げられる。好ましい触媒は、KF−848およびRT−721を含む、低酸性度、高金属含有率触媒である。
【0024】
好ましい実施形態では、熱分解塔底物留分は、約280℃〜約400℃(536〜752°F)、より好ましくは約300℃〜約380℃(572〜716°F)の温度、および約1,480〜約20,786kPa(200〜3,000psig)、より好ましくは約2,859〜約13,891kPa(400〜2,000psig)の圧力で水素化処理条件にかけられる。他の好ましい実施形態では、水素化処理域での空間速度は、約0.1〜約10LHSV、より好ましくは約0.1〜約5LHSVである。約89〜約1,780m/m(500〜10,000scf/B)、より好ましくは178〜890m/m(1,000〜5,000scf/B)の水素処理ガス速度が水素化処理域で利用されてもよい。
【0025】
FCC法
従来型FCC法はライザー反応器および再生器を含み、ここで、石油フィードは、流動分解触媒粒子の床を含有するライザー中の反応域へ注入される。触媒粒子は典型的にはゼオライトを含有し、新鮮な触媒粒子、触媒再生器からの触媒粒子またはそれらのある組み合わせであってもよい。不活性ガスであってもよいガス、炭化水素蒸気、水蒸気またはそれらのある組み合わせが、熱い触媒粒子を流動化させるのに役立つ浮揚ガスとして通常用いられる。
【0026】
フィードと接触した触媒粒子は、生成物蒸気およびストリップ可能な炭化水素を含有する触媒粒子並びにコークを生成する。触媒は、使用済み触媒粒子として反応域を出て、分離域で反応器の流出物から分離される。使用済み触媒粒子を反応器流出物から分離するための分離域は、サイクロンなどの分離装置を用いてもよい。使用済み触媒粒子は、水蒸気などのストリッピング剤を使用してストリップ可能な炭化水素をストリップされる。ストリップされた触媒粒子は次に再生域に送られ、そこで、いかなる残留炭化水素もストリップされ、コークが除去される。再生域では、コーク化触媒粒子は、酸化媒体、通常は空気と接触させられ、コークは、典型的には約650〜760℃(1202〜1400°F)の範囲の温度で酸化される(燃焼される)。再生された触媒粒子は次に、ライザー反応器にパスバックされる。
【0027】
FCC触媒は、非晶質、例えば、シリカ−アルミナ、結晶性、例えば、ゼオライトを含むモレキュラーシーブ、またはそれらの混合物であってもよい。好ましい触媒粒子は(a)アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ−希土類などの、非晶質、多孔性の固体酸マトリックス;および(b)フォージャサイトなどのゼオライトを含む。マトリックスは、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、マグネシアおよびシリカ−マグネシア−ジルコニアなどの、三元組成物を含むことができる。マトリックスはまた、共ゲルの形態にあってもよい。シリカ−アルミナがマトリックス用に特に好ましく、約10〜40重量%のアルミナを含有することができる。議論されたように、促進剤を添加することができる。
【0028】
触媒ゼオライト成分は、ゼオライトYと等構造(iso−structural)であるゼオライトを含む。これらには、希土類水素などのイオン交換形態および超安定な(USY)形態が含まれる。ゼオライトは、約0.1〜10ミクロン、好ましくは約0.3〜3ミクロンの微結晶サイズの範囲であってもよい。触媒粒子中のゼオライト成分の量は、触媒の総重量を基準として、一般に約1〜約60重量%、好ましくは約5〜約60重量%、より好ましくは約10〜約50重量%の範囲であろう。議論されたように、触媒は典型的には複合物中に含有される触媒粒子の形態にある。粒子の形態にあるとき、触媒粒径は典型的には、約60ミクロンの平均粒径で、直径が約10〜300ミクロンの範囲であろう。水蒸気中での人為的な不活性化後のマトリックス材料の表面積は、典型的には350m/g以下、より典型的には約50〜200m/g、最も典型的には約50〜100m/gであろう。触媒の表面積は、使用されるゼオライトおよびマトリックス成分の種類および量のようなものに依存するであろうが、それは通常約500m/g未満、より典型的には約50〜300m/g、最も典型的には約100〜250m/gであろう。
【0029】
分解触媒はまた、約1〜約12の(特許文献3に定義されている)制限指数(Constraint Index)を有する中間細孔ゼオライトの形態での添加触媒を含んでもよい。好適な中間細孔ゼオライドには、単独でまたは組み合わせてのどちらかの、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、SH−3およびMCM−22が含まれる。好ましくは、中間細孔ゼオライトはZSM−5である。
【0030】
反応域でのFCC工程条件には、約482℃〜約740℃(900〜1364°F)の温度;約10〜約40psig(69〜276kPa)、好ましくは約20〜約35psig(138〜241kPa)の炭化水素分圧;および触媒重量が触媒複合物の総重量である、約3〜約10の触媒対フィード(wt/wt)比が含まれる。反応域での全圧は好ましくは、約大気圧〜約50psig(446kPa)である。要求されないが、水蒸気が約50重量%以下、好ましくは約0.5〜約5重量%の主フィードを含む状態で、水蒸気が反応域へ原料と一緒に同時に導入されることが好ましい。また、反応域での蒸気滞留時間は約20秒未満、好ましくは約0.1〜約20秒、より好ましくは約1〜約5秒であることが好ましい。好ましい条件は、482〜621℃(900〜1150°F)のライザー出口温度、約0〜約50psig(101〜446kPa)の圧力、および1〜5秒のライザー反応器滞留時間を含む短い接触時間条件である。
【0031】
異なるフィードが異なる分解条件を必要としてもよいことはよく知られている。本方法では、炭化水素フィードから最大量の留出物を製造することが望まれる場合、熱分解装置は、製造される過大なコークまたはコーク前駆体生成の回避に合致する最高温度でランされるであろう。ある実施形態では、熱分解生成物から分離された熱分解塔底物留分の少なくとも一部はFCC装置に送られるであろう。留出物生成を最大にすることが望まれる場合、FCC触媒処方はこのために最適化されるであろう。FCC装置内の注入器の場所、特にFCCライザー反応器での場所がまた生成物一覧に影響を及ぼすこともまた知られている。更なる因子は、FCCライザー反応器への異なる種類のフィードのブレンディングがあるかどうかである。
【0032】
FCC反応器からの生成物は次に触媒精留塔に送られ、そこで、それらとより低沸点の留分とは、ナフサ、留出物および塔底物を含む生成物一覧へ分離される。C4−留分からなる生成物の一部は、精留塔の塔頂から取り出され、要望に応じて更なる処理のために送られる。ある実施形態では、ナフサ生成物流れの少なくとも一部は任意選択的にリサイクルされてFCC反応器に戻されてもよい。別の実施形態では、精留塔からの塔底物は、更なる処理のためにリサイクルしてFCC反応器に戻すことができる。
【0033】
本発明による方法の一実施形態は図1に更に例示される。ここで、約0〜約6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)の炭化水素フィード(8)が熱転化域(12)に供給される。熱転化生成物(14)が熱転化域(12)から得られ、分離塔(16)に導かれる。分離塔(16)は、フラッシュ塔または蒸留塔のどちらかであってもよい。ナフサおよび留出物から選択される留分からなる分離塔オーバーヘッド生成物(18)が精留塔(20)に送られる。熱分解塔底物生成物の少なくとも一部(22)がFCC反応器(26)のライザー反応器(24)に導かれ、そこで、それは流動触媒と接触し、より低沸点の生成物へ分解される。FCC分解生成物は、サイクロン(示されていない)で触媒から分離され、分解生成物(30)は精留塔(20)に導かれる。使用済み触媒(34)は再生器(32)に送られ、そこで、それは再生条件下に再生される。再生触媒は、触媒戻り配管(36)を通ってライザー反応器(24)に戻される。精留塔(20)は、分離塔(16)からのナフサおよび/または留出物を含有するより低沸点の生成物だけでなくFCC反応器からの生成物を、コミングル熱およびFCC精留塔ナフサ生成物(38)と、コミングル熱およびFCC留出物精留塔生成物(46)と、精留塔塔底生成物(50)とへ分離する。この実施形態では、コミングル熱およびFCC精留塔ナフサ生成物(38)は、好ましくは精留塔のオーバーヘッドから抜き出され、その場合に、この流れはまた、ナフサ範囲炭化水素から更に分離することができるC/Cオレフィンを含む、C−炭化水素を含んでもよい。図1に示されていないが、ある実施形態では、精留塔塔底生成物(50)の少なくとも一部はまたリサイクルされてFCCライザー反応器(24)に戻されてもよい。追加の実施形態では、ライザー反応器(24)への原料油流れは、追加のFCC炭化水素原料油流れ(50)で補完されてもよい。
【0034】
図2は、炭化水素フィードが熱分解され、蒸留塔に送られる本発明の別の実施形態を示すフローダイアグラムである。この実施形態では、約0〜約6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)の炭化水素フィード(100)が熱転化域(104)に供給される。熱分解生成物(106)が熱転化域(104)から得られ、蒸留塔(108)に送られる。C−留分を含む蒸留塔オーバーヘッド生成物(122)が精留塔(124)に導かれる。熱分解塔底物生成物の少なくとも一部(126)は、FCC反応器(130)のライザー反応器(128)に導かれ、そこで、それはより低沸点の生成物へ分解される。FCC分解生成物は、サイクロン(示されていない)で触媒から分離され、分離された分解生成物(134)は精留塔(124)に導かれる。使用済み触媒(138)は再生器(136)に送られ、そこで、それは再生条件下に再生される。再生触媒は、触媒戻り配管(140)を通ってライザー反応器(128)に戻される。精留塔(124)は、蒸留塔(108)からの生成物だけでなくFCC反応器からの生成物を、FCCナフサ生成物(142)、FCC留出物生成物(152)、およびFCC塔底物生成物(154)へ分離する。この実施形態では、FCCナフサ生成物(142)は、好ましくは精留塔のオーバーヘッドから抜き出され、その場合に、この流れはまた、ナフサ範囲炭化水素から更に分離することができるC/Cオレフィンを含む、C−炭化水素を含んでもよい。ある実施形態では、FCC塔底物生成物(154)の少なくとも一部はリサイクルされてFCCライザー反応器(128)に戻されてもよい。
【0035】
更なる実施形態では、ナフサ沸点範囲留分からなる蒸留塔ナフサ生成物流れ(116)が蒸留塔(108)から抜き出されてもよい。更なる実施形態では、蒸留塔ナフサ生成物流れ(116)の少なくとも一部は、更なる接触分解のためにFCCライザー反応器(128)にリサイクルされる。更に別の実施形態では、留出物沸点範囲留分からなる蒸留塔留出物生成物流れ(110)が蒸留塔(108)から抜き出されてもよい。他の実施形態では、蒸留塔ナフサ生成物流れ(116)の少なくとも一部は、ガソリン燃料成分へ更に処理するためにFCCナフサ生成物流れ(142)の少なくとも一部と組み合わせることができる。同様に、他の実施形態では、蒸留塔留出物生成物流れ(110)の少なくとも一部は、ディーゼル燃料成分へ更に処理するためにFCC留出物生成物(152)の少なくとも一部と組み合わせることができる。追加の実施形態では、ライザー反応器(128)への原料油流れは、追加のFCC炭化水素原料油流れ(150)で補完されてもよい。
【0036】
図3は、蒸留塔オーバーヘッド生成物がC−生成物留分とナフサおよび/または留出物留分からなる留分とに分離され、C−生成物留分が精留塔に送られる本発明の別の実施形態を示すフローダイアグラムである。この実施形態では、約0〜約6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)の炭化水素フィード(200)が熱転化域(204)に供給される。熱分解生成物(206)が熱転化域(204)から得られ、蒸留塔(208)に送られる。蒸留塔留出物生成物(212)が蒸留塔(208)から取り出される。熱分解ナフサとC−留分炭化水素を含む軽質ガスとを含む蒸留オーバーヘッド生成物(214)が凝縮器(216)に、次に分離器(218)に導かれる。分離器(218)で、蒸留オーバーヘッド生成物(214)は分離器ナフサ生成物(222)と分離器C−生成物(224)とへ分離される。分離器C−生成物(224)は精留塔(226)に導かれる。ある実施形態では、分離器ナフサ生成物(222)の少なくとも一部は、更なる接触分解のためにFCCライザー反応器(230)にリサイクルされる。
【0037】
図3を続けると、熱分解塔底物生成物の少なくとも一部(228)は、FCC反応器(232)のライザー反応器(230)に導かれ、そこで、それは流動触媒と接触し、より低沸点の生成物へ分解される。FCC分解生成物は、サイクロン(示されていない)で触媒から分離され、分離された分解生成物(236)は精留塔(226)に導かれる。使用済み触媒(240)は再生器(238)に送られ、そこで、それは再生条件下に再生される。再生触媒は、触媒戻り配管(242)を通ってライザー反応器(230)に戻される。精留塔(226)は、蒸留塔(208)からの生成物だけでなくFCC反応器からの生成物を分離する。これらの生成物には、精留塔ナフサ生成物(252)および精留塔留出物生成物(250)が含まれる。この実施形態では、FCCナフサ生成物(252)は好ましくは、精留塔のオーバーヘッドから抜き出され、その場合に、この流れはまた、ナフサ範囲炭化水素から更に分離することができるC/Cオレフィンを含む、C−炭化水素を含んでもよい。精留塔塔底生成物(256)はまた、精留塔(226)からも導かれる。ある実施形態では、精留塔塔底生成物(256)の少なくとも一部は、リサイクルしてFCCライザー反応器(230)に戻すことができる。追加の実施形態では、ライザー反応器(230)への原料油流れは、追加のFCC炭化水素原料油流れ(260)で補完されてもよい。
【0038】
以下の実施例は、炭化水素フィードを熱分解し、引き続き熱分解生成物の少なくとも一部を接触分解することによる改善された留出物生成のための本発明を例示するが、決して本発明を限定することを意図されない。
【実施例】
【0039】
FCCだけと熱分解プラスFCCとの比較を、熱分解収率を採取することおよびそれらをFCC収率と組み合わせることによって行った。これは、熱塔底物のFCC収率を、それらに熱分解からの重量分率収率を乗じることによる標準化することによって行う。標準化した塔底物留出物、ガソリンおよびガスを次に熱分解からの収率に加えて組み合わせた熱およびFCC収率を得た。これらの組み合わせた収率対熱分解収率を、同じ塔底物転化率で図4〜6に示す。試験されるVGOフィードは、標準バージンパラフィン系VGO、ナフテン系VGOおよび水素化処理したナフテン系VGOであった。実施例におけるデータは全て、本発明の方法でのナフサから留出物への明白なシフトを示す。質量分光相関は、より高品質の留出物生成物が接触分解からよりも熱分解から得られることを示す。熱分解留出物が、接触分解ステップ前に分離され、取り出される場合、それは、高品質ディーゼル燃料に混ぜ込むことができる。しかしながら、本発明の熱分解および熱分解/接触分解留出物生成物が組み合わせられる場合、生じたディーゼル製品は、同じ塔底物転化率で典型的なFCCライトサイクルオイルより高い品質を依然として有する。
【0040】
実施例1(熱分解実験のための一般的な手順)
熱分解のための一般的な手順をこの実施例に記述する。300mlオートクレーブにVGOフィードを装入し、オートクレーブを窒素でフラッシュし、100℃(212°F)に加熱する。容器を窒素で約670psig(4,619kPa)に加圧し、圧力を、mitey−mite圧力調整器を使用して維持した。この機器構成では、オートクレーブを通ってのガスフローは全くないが、圧力が設定圧力を超えた場合、幾らかの蒸気がオートクレーブを出て、冷却されるノックアウト容器下流に集められるであろう。温度を目標レベルに上げ、フィードを目標時間撹拌しながら当該温度に保持する。容器を冷却し、圧力を下げ、次に窒素で30分間パージして形成したいかなる343℃−(650°F−)生成物も取り出す。これらの軽質液体を、オートクレーブの下流に置かれた0℃(32°F)に冷却されたノックアウト容器に集める。オートクレーブに残った油を約150℃(302°F)に冷却し、#42濾紙を通して濾過して形成した可能性があるいかなる固形分も集め、定量化する。フィルター上に集められたいかなる固形分も、濾液が無色になるまでトルエンで洗浄した。
【0041】
実施例2
VGOの熱処理のために実施例1で概要を述べられた手順に従った。300mlオートクレーブに、130.0gのVGOフィードを加え、オートクレーブを密封し、窒素でフラッシュし、100℃(212°F)に加熱した。窒素を加えて670psig(4,619kPa)の圧力を維持した。オートクレーブを410℃(770°F)に加熱し、当該温度で95分間保持した。これは、468℃(875°F)で250等価秒の苛酷度である。これは、427℃(800°F)で2190等価秒の苛酷度に相当する。
【0042】
実施例1の手順に従って、33.5gの軽質343℃−(650°F−)液体をノックアウト容器に集め、90.0gの343℃+(650°F+)液体を濾過後に集め、6.5gのガスを(差によって)求めた。おおよそ61wppmのトルエン不溶性物質を集めた。液体は、表1に示される次の特性を有した。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例3(流動接触分解実験のための一般的な手順)
FCC試験のための一般的な方法をこの実施例に記述する。基本事例FCCシミュレーションを、固定床反応器を備えたKayser Associates製のP−ACE反応器で行った。ACE試験の開始前に、ACEフィードシステムを、システムの汚染を最小限にするためにトルエンでフラッシュする。フィードを2オンス瓶に注ぎ込み、ACEフィード予熱器に入れてフィードを指定の予熱温度になるに任せる。温度になるとすぐに、適切な量のフィードが計画されたフィード注入速度に従って反応器へ注入されることを確実にするためにフィードポンプを較正する。選択されたFCC触媒を、確立された手順に従って装置へ装入する。触媒が装入されてしまったらすぐに、ACE装置ランを開始する。各触媒装入物は、その日のうちに順次行われる6つの別個の実験をもたらす。ランの間ずっと、フィードを、選択された触媒/油比および供給速度に依存して指定の反応時間流動床に注入する。液体生成物のそれぞれを、−5°F(−20.5℃)に維持される6つのノックアウトフラスコの1つに集める。ガス状(C6−)生成物をガスクロマトグラフィーによって直接分析し、液体生成物を別々に秤量し、模擬蒸留によって分析した。触媒上のコークをその場で燃焼させ、オンラインCO分析計で定量化する。液体およびガス分析結果を次にまとめ、最終ラン報告書を作成するために解析する。
【0045】
実施例4
実施例2で調製され、記載された343℃+(650°F+)液体をACE試験にかけて出発VGOフィードと比べてFCCへのその反応性を比較した。ラン条件は次の通りであった:供給速度=1.33g/分(150°
F/66℃で)、並びに3.0、5.0、および7.0の触媒/油比。2つの温度、524℃(975°F)および554℃(1030°F)を研究した。使用された触媒は、平衡FCC触媒を代表するe−触媒であった。代表的なデータ(計4ラン)のまとめを次表に提供する。データは、接触分解単独で得られた結果対組み合わせた熱および接触分解方法で得られたものの比較を強調するために対で示す。組み合わせた熱処理ランは、熱処理中に生成した液体およびガス生成物を含めるために再標準化した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
図4は、接触処理されただけのパラフィン系VGOおよび本発明の熱処理+接触分解されたパラフィン系VGOからの結果の比較を例示する。図4で、黒っぽい曲線(実線および中空でないデータ点)は、本発明の方法から生じるナフサおよび留出物収率を示す。より薄い曲線(点線および中空データ点)は、接触分解処理のみから生じるナフサおよび留出物収率を示す。図4で理解できるように、本発明からのナフサ収率はかなり低下し、本発明からの留出物収率はかなり増加して本発明の方法によってかなり改善された留出物生成をもたらす。また、図4には示されていないが、コーク塔底物およびC−収率は、2つの方法の間で有意に違わなかった。
【0048】
実施例5
ナフテン系VGOを実施例1〜4に記載されたように処理した。
【0049】
図5は、接触処理されただけのナフテン系VGOおよび本発明の熱処理+接触分解されたナフテン系VGOからの結果の比較を例示する。図5で、黒っぽい曲線(実線および中空でないデータ点)は、本発明の方法から生じるナフサおよび留出物収率を示す。より薄い曲線(点線および中空データ点)は、接触分解処理のみから生じるナフサおよび留出物収率を示す。図5で理解できるように、本発明からのナフサ収率はかなり低下し、本発明からの留出物収率はかなり増加して本発明の方法によってかなり改善された留出物生成をもたらす。また、図5には示されていないが、コーク塔底物およびC−収率は、2つの方法の間で有意に違わなかった。
【0050】
実施例6
この実施例では、実施例5のナフテン系VGOを、標準水素化脱硫条件下に水素化処理し、水素化処理からの生成物VGOを実施例1〜4におけるように処理した。
【0051】
図6は、接触処理されただけの水素化処理ナフテン系VGOおよび本発明の熱処理+接触分解された水素化処理ナフテン系VGOからの結果の比較を例示する。図6で、黒っぽい曲線(実線および中空でないデータ点)は、本発明の方法から生じるナフサおよび留出物収率を示す。より薄い曲線(点線および中空データ点)は、接触分解処理(先行の水素化処理を伴う)のみから生じるナフサおよび留出物収率を示す。図6で理解できるように、本発明からのナフサ収率はかなり低下し、本発明からの留出物収率はかなり増加し、本発明の方法によってかなり改善された留出物生成をもたらす。また、図6には示されていないが、コーク塔底物およびC−収率は、2つの方法の間で有意に違わなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素フィードを転化するための熱および接触転化方法であって、前記炭化水素フィードは、前記炭化水素フィードを基準として0〜6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)分を有し、
a)前記炭化水素フィードを有効な熱転化条件下に熱転化域で処理して、熱分解生成物を生成する工程;
b)前記熱分解生成物を、熱分解塔底物留分とより低沸点の留分に分離する工程であって、前記低沸点の留分は、ナフサおよび留出物の少なくとも1つを含有する工程;
c)前記より低沸点の留分の少なくとも一部を、精留塔に導く工程;
d)前記熱分解塔底物留分の少なくとも一部を、流動接触分解装置のライザー反応器に導く工程であって、前記ライザー反応器内で、前記熱分解塔底物留分が分解触媒と接触する工程;
e)前記熱転化塔底物留分を流動接触分解条件下に接触転化して、接触分解生成物を生成する工程;
f)前記接触分解生成物を前記精留塔に導く工程;および
g)前記精留塔から、ナフサ生成物、留出物生成物および精留塔塔底生成物を分離する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記熱分解生成物をフラッシュ塔で分離することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱分解生成物を蒸留塔で分離することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素フィードの少なくとも一部を、前記熱転化域で処理する前に水素化処理することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱分解塔底物留分を、前記ライザー反応器に導く前に水素化処理することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素フィードを、280℃〜400℃(536〜752°F)の温度および1,480〜20,786kPa(200〜3,000psig)の圧力で、水素並びに6族金属および8〜10族金属からなる水素化処理触媒の存在下に水素化処理することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記熱分解塔底物を、280℃〜400℃(536〜752°F)の温度および1,480〜20,786kPa(200〜3,000psig)の圧力で、水素並びに6族金属および8〜10族金属からなる水素化処理触媒の存在下に水素化処理することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記炭化水素フィードが減圧軽油からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記熱分解塔底物留分が留出物留分からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記より低沸点の留分がナフサ留分からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記精留塔塔底生成物の少なくとも一部をリサイクルして、前記ライザー反応器に戻すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ナフサ生成物の少なくとも一部をリサイクルして、前記ライザー反応器に戻すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記分解触媒がZSM−5を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記熱分解塔底物留分を、482℃〜740℃(900〜1364°F)の反応温度、10〜40psig(69〜276kPa)の炭化水素分圧および3〜10の触媒対フィード(wt/wt)比で、前記分解触媒と接触させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ナフサ沸点範囲留分からなる蒸留塔ナフサ生成物流れを、前記蒸留塔から取り出すことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項16】
留出物沸点範囲留分からなる蒸留塔留出物生成物流れを、前記蒸留塔から取り出すことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項17】
前記蒸留塔オーバーヘッド生成物流れの少なくとも一部を、前記精留塔に送ることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
蒸留塔オーバーヘッド生成物を前記蒸留塔から取り出し、前記蒸留塔オーバーヘッド生成物の少なくとも一部を、分離器ナフサ留分生成物と分離器C4−留分生成物に分離し、前記分離器C4−留分生成物の少なくとも一部を、前記精留塔に送ることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項19】
前記熱転化域を、468℃で25〜450等価秒の範囲の苛酷度で運転することを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−509943(P2012−509943A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520045(P2011−520045)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/004306
【国際公開番号】WO2010/011339
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】