適正在庫量決定システム及び適正在庫量決定方法
【課題】調達リードタイムを固定値として算出された適正在庫量と現実場面における適正在庫量とのギャップを大幅に低減し、現実場面に対する適正在庫量の精度を向上させることができる適正在庫量決定システムを提供する。
【解決手段】適正在庫量決定システムにおいて、在庫擬似演算部20は、固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータPM1に基づいて求められた第1次案としての適正在庫量に基づく在庫量推移のシミュレーションを行って基準指標値を算出するとともに、可変調達リードタイムパラメータと第1次案としての適正在庫量とを用いた在庫量推移のシミュレーションを行って比較指標値を算出する。在庫基準判定部43は、比較指標値が基準指標値と同等若しくは基準指標値よりも良化していると判定した場合には、そのときの第1案としての適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定する。
【解決手段】適正在庫量決定システムにおいて、在庫擬似演算部20は、固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータPM1に基づいて求められた第1次案としての適正在庫量に基づく在庫量推移のシミュレーションを行って基準指標値を算出するとともに、可変調達リードタイムパラメータと第1次案としての適正在庫量とを用いた在庫量推移のシミュレーションを行って比較指標値を算出する。在庫基準判定部43は、比較指標値が基準指標値と同等若しくは基準指標値よりも良化していると判定した場合には、そのときの第1案としての適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在庫管理の基準値である適正在庫量を決定する適正在庫量決定システム及び適正在庫量決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の入出庫量に応じて当該製品の在庫量を管理する在庫管理では、在庫の製品がなくなる欠品状態が発生せず且つ過剰の在庫を保有しないように適正在庫量を短時間で決定することが要求される。このような適正在庫量を決定する技術としては、例えば特許文献1等に記載されたものがある。
【0003】
具体的には、特許文献1には、調達期間、入出庫の数量、及び時期等の各実績値に基づいて、在庫量推移シミュレーションに用いる複数のパラメータを求め、欠品発生率が所定の閾値と略同等となるまで在庫量推移をシミュレートすることにより、適正在庫量を決定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−39410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1には、在庫量推移シミュレーションにおいて、在庫量が発注点を下回った場合に固定値の調達リードタイムだけ経過して製品が納入される、といった方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、現実的には、同じ製品を調達する場合であっても、在庫の急激な減少による在庫量推移変化があった場合や、月初や月中といった発注タイミングによる在庫量推移変化がある場合等、状況に応じて調達リードタイムが異なるケースが発生する。
【0006】
具体的には、従来では、メーカーが在庫を過剰に保有しない代わりに調達先に在庫を過剰に保有させていたが、近年では、調達先及びメーカーの双方ともに在庫を過剰に保有せず、下流(次工程)の動きに同調して事業運営する傾向がある。
【0007】
このような状況において、急激な製品販売があった場合等、急激な在庫減少が発生したことによって発注がなされた場合を考えると、調達先及びメーカーの双方ともに、販社等の下流の動きに同調しているものの、生産が遅延し、調達リードタイムが長くなるという現象が起こりやすい。逆に、月末に納入予定日がかかるような発注がなされた場合を考える。一般に、在庫の多少の管理指標は、月末棚卸時点での在庫量をもって評価されるため、納入予定日よりも先に在庫の受け渡しを行うのは、遅延するのに比べて受け渡し先の迷惑になりにくいはずという意識から、調達リードタイムが短くなるという現象が起こりやすい。
【0008】
このように、調達リードタイムは、状況に応じて変動するケースがある。そのため、従来の技術は、調達リードタイムを固定値として行ったシミュレーション結果と現実場面とのギャップが生じることが多かった。
【0009】
そこで、本発明は、上述したような問題を解決するために案出されたものであり、調達リードタイムを固定値として算出された適正在庫量と現実場面における適正在庫量とのギャップを大幅に低減し、現実場面に対する適正在庫量の精度を向上させることができる適正在庫量決定システム及び適正在庫量決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、製品の入出庫実績を含む入出庫実績データと、固定値とされた調達リードタイムを示す固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータとに基づいて、第1次案としての適正在庫量を求める第1次案算出部と、第1次案算出部によって求められた第1次案としての適正在庫量に基づく在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した基準指標値を算出する基準指標値算出部と、可変値とされた調達リードタイムを示す可変調達リードタイムパラメータと第1次案としての適正在庫量とを用いた在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した比較指標値を算出する比較指標値算出部とを備え、上述の課題を解決するために、適正在庫量算出部によって、比較指標値算出部によって算出された比較指標値が、基準指標値算出部によって算出された基準指標値よりも悪化していると判定した場合には、第1次案としての適正在庫量を更新して基準指標値算出部による処理及び比較指標値算出部による処理を行わせ、比較指標値が基準指標値と同等若しくは基準指標値よりも良化していると判定した場合には、そのときの第1案としての適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る適正在庫量決定システム及び適正在庫量決定方法によれば、状況によって調達リードタイムを変化させた在庫量推移シミュレーション結果を得ることができ、調達リードタイムを固定値として算出された適正在庫量と現実場面における適正在庫量とのギャップを大幅に低減し、現実場面に対する適正在庫量の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本発明は、在庫管理の基準値である適正在庫量を決定する適正在庫量決定システムに適用される。この適正在庫量決定システムは、調達リードタイムを固定値として算出された適正在庫量に対して、可変的な調達リードタイムを用いた在庫量推移シミュレーションを行い、適正在庫量の妥当性やリスク等を評価することによって適正在庫量を決定することにより、発注タイミングの判断基準や閾値となる適正在庫量についての現実場面に対する精度向上を図るものである。
【0014】
先ず、適正在庫量決定システムの機能的な構成について説明する。本発明を適用した適正在庫量決定システムは、図1に示すように、在庫量推移シミュレーションに用いる各種パラメータPM1を算出する在庫基準パラメータ算出部10と、この在庫基準パラメータ算出部10によって算出された各種パラメータPM1や後述する可変調達リードタイムパラメータVLTに基づいて在庫量推移を擬似的に演算する在庫擬似演算部20と、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する可変調達リードタイムパラメータ算出部30と、在庫擬似演算部20による在庫量推移演算結果に基づいて適正在庫量を決定する適正在庫量決定部40とを備える。この適正在庫量決定システムは、例えばパーソナルコンピュータ等から構成され、そのプロセッサによって所定のプログラムを実行することにより、各機能を実現する。
【0015】
在庫基準パラメータ算出部10は、製品の入出庫実績を含む入出庫実績データSRDと、所定のマスタ管理部によって管理されている製品に関する情報が記述されたマスタ情報MDとに基づいて、在庫量推移シミュレーションに用いる各種パラメータPM1を算出する。入出庫実績データSRDは、ユーザの入力操作に応じて入力される情報であり、例えば、シミュレーション実施期間、調達リードタイム、入出庫の数量、及び入出庫時期等の各実績値を示す情報からなる。ここで、調達リードタイムは、所定の固定値とされる。すなわち、在庫基準パラメータ算出部10は、固定値とされた固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータPM1を算出する。在庫基準パラメータ算出部10は、算出したパラメータPM1を在庫擬似演算部20に供給する。
【0016】
在庫擬似演算部20は、シミュレーション開始時の在庫量(現在の在庫量)、発注サイクル、及び直近の発注日等の情報がユーザの入力操作に応じて入力されると、入出庫実績データSRDと、在庫基準パラメータ算出部10によって算出された各種パラメータPM1とに基づいて、在庫量推移を擬似的に演算する。すなわち、在庫擬似演算部20は、固定調達リードタイムを用いた在庫量推移のシミュレーションを行う。
【0017】
また、在庫擬似演算部20は、入出庫実績データSRDと、可変調達リードタイムパラメータ算出部30によって算出された可変調達リードタイムパラメータVLTとに基づいて、在庫量推移を擬似的に算出する。すなわち、在庫擬似演算部20は、可変調達リードタイムを用いた在庫量推移のシミュレーションも行う。
【0018】
在庫擬似演算部20は、シミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づいて、欠品発生回数(欠品発生率)や在庫回転率等の指標値を算出し、この指標値を適正在庫量決定部40に供給する。この指標値は、シミュレーションの結果として得られた在庫量推移の良否を数値化したものとなる。このとき、在庫擬似演算部20は、固定調達リードタイムを用いたシミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づく指標値については、適正在庫量決定部40における第1の指標値記憶部41に基準指標値として記憶させる。また、在庫擬似演算部20は、可変調達リードタイムを用いたシミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づく指標値については、適正在庫量決定部40における第2の指標値記憶部42に比較指標値として記憶させる。
【0019】
可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、入出庫実績データSRDと、ユーザの入力操作に応じて入力された製品の発注実績を含む発注実績データORDとに基づいて、固定値ではなく可変値とされる可変調達リードタイムを示す可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、算出した可変調達リードタイムパラメータVLTを在庫擬似演算部20に供給する。
【0020】
適正在庫量決定部40は、在庫擬似演算部20から供給された基準指標値を記憶する第1の指標値記憶部41と、在庫擬似演算部20から供給された比較指標値を記憶する第2の指標値記憶部42と、第1の指標値記憶部41に記憶された基準指標値と第2の指標値記憶部42に記憶された比較指標値とに基づいて在庫管理の基準値である適正在庫量を判定する在庫基準判定部43とを有する。このような適正在庫量決定部40は、在庫基準判定部43によって適正と判定された適正在庫量に基づいて各種パラメータPM2を算出する。この各種パラメータPM2は、次回の在庫量推移シミュレーション時に入力されるパラメータとして利用される。
【0021】
このような各部を備える適正在庫量決定システムは、固定調達リードタイムを用いた在庫量推移シミュレーションを行って適正在庫量を算出するとともに、可変調達リードタイムを用いた在庫量推移シミュレーションを行って適正在庫量を算出し、適正在庫量の妥当性やリスク等を評価することによって最終案としての適正在庫量を決定する。
【0022】
このような適正在庫量決定システムは、例えば図2に示すような一連の手順にしたがって、最終案としての適正在庫量を決定する。
【0023】
まず、適正在庫量決定システムは、図2に示すように、ステップS1において、入力された入出庫実績データSRDを所定の記憶部に記憶させると、ステップS2において、マスタ情報MDに基づいて在庫基準パラメータ算出部10によって各種パラメータPM1を算出する。このとき、在庫基準パラメータ算出部10は、上述したように、固定値とされた固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータPM1を算出する。
【0024】
続いて、在庫擬似演算部20は、ステップS3において、在庫基準パラメータ算出部10によって算出された各種パラメータPM1に基づいて、第1次案としての適正在庫量を求め、この適正在庫量に基づく在庫量推移を擬似的に演算する。すなわち、在庫擬似演算部20は、上述したように、固定調達リードタイムを用いた在庫量推移のシミュレーションを行う。
【0025】
そして、在庫擬似演算部20は、ステップS4において、シミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づいて、欠品発生回数(欠品発生率)や在庫回転率等の所定の基準指標値を算出し、この基準指標値を第1の指標値記憶部41に記憶させる。
【0026】
続いて、適正在庫量決定システムは、ステップS5において、入力された発注実績データORDを所定の記憶部に記憶させると、ステップS6において、入出庫実績データSRDと発注実績データORDとに基づいて可変調達リードタイムパラメータ算出部30によって可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。なお、この可変調達リードタイムパラメータVLTの算出処理については、後に詳述するものとする。
【0027】
続いて、在庫擬似演算部20は、ステップS7において、第1次案としての適正在庫量と可変調達リードタイムパラメータ算出部30によって算出された可変調達リードタイムパラメータVLTとに基づいて在庫量推移を擬似的に演算する。すなわち、在庫擬似演算部20は、上述したように、可変調達リードタイムを用いた在庫量推移のシミュレーションを行う。
【0028】
そして、在庫擬似演算部20は、ステップS8において、シミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づいて、欠品発生回数(欠品発生率)や在庫回転率等の所定の比較指標値を算出し、この比較指標値を第2の指標値記憶部42に記憶させる。
【0029】
これに応じて、適正在庫量決定部40における在庫基準判定部43は、ステップS9において、第1の指標値記憶部41に記憶された基準指標値と、第2の指標値記憶部42に記憶された比較指標値とを比較し、ステップS10において、比較指標値が基準指標値と同等若しくは基準指標値よりも良化しているか否かを判定する。
【0030】
ここで、在庫基準判定部43は、比較指標値が基準指標値よりも悪化していると判定した場合には、ステップS11へと処理を移行し、各種パラメータ(第1次案として求めた適正在庫量)を更新し、ステップS7からの処理を繰り返す。
【0031】
そして、在庫基準判定部43は、ステップS10において、比較指標値が基準指標値と同等若しくは基準指標値よりも良化していると判定した場合には、ステップS12において、そのときの第1案の適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定し、一連の処理を終了する。
【0032】
これらステップS9乃至ステップS11の処理を具体的に説明するために、在庫擬似演算部20によって欠品発生数と欠品発生日数とを指標値として算出する場合について、図3を用いて説明する。在庫基準判定部43は、第1の指標値記憶部41に記憶された基準指標値が、図3(a)に示すように、欠品発生数=300個、欠品発生日数=1日であり、第2の指標値記憶部42に記憶された比較指標値が、図3(b)に示すように、欠品発生数=1571個、欠品発生日数=2日であった場合には、比較指標値が基準指標値よりも悪化しているので、ステップS11へと処理を移行する。そして、在庫基準判定部43は、第1次案として求められている適正在庫量(2400個)を最小発注ロッド分(200個)だけ引き上げて新たな第1次案の適正在庫量(2600個)とし、ステップS7からの処理を繰り返す。なお、最小発注ロッドは、各種パラメータPM1にて設定される。
【0033】
続いて、在庫基準判定部43は、新たな第1次案の適正在庫量(2600個)として在庫擬似演算部20によるシミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づいて算出されて第2の指標値記憶部42に記憶された比較指標値が、図3(c)に示すように、欠品発生数=1571個、欠品発生日数=2日と変わらなかった場合には、再度ステップS11へと処理を移行する。そして、在庫基準判定部43は、第1次案として求められている適正在庫量(2600個)を再度最小発注ロッド分(200個)だけ引き上げて新たな第1次案の適正在庫量(2800個)とし、ステップS7からの処理を繰り返す。
【0034】
そして、在庫基準判定部43は、新たな第1次案の適正在庫量(2800個)として在庫擬似演算部20によるシミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づいて算出されて第2の指標値記憶部42に記憶された比較指標値が、図3(d)に示すように、欠品発生数=300個、欠品発生日数=1日となった場合には、比較指標値が基準指標値と同等であるので、ステップS12へと処理を移行し、そのときの第1案の適正在庫量(2800個)を最終案の適正在庫量として決定する。
【0035】
適正在庫量決定システムによれば、このような一連の手順にしたがって、最終案としての適正在庫量を決定することができる。
【0036】
従来の技術のように、固定調達リードタイムのみを用いた在庫量推移シミュレーション結果は、同じ製品を調達する限り、例えば図4に示すように、在庫量が適正在庫量を下回った場合に発注がなされ、固定された調達リードタイムの時間だけ経過して製品が納入される、といった結果となる。
【0037】
これに対して、適正在庫量決定システムは、可変調達リードタイムを用いることにより、同じ製品を調達する場合であっても、例えば図5に示すように、状況によって調達リードタイムを変化させた在庫量推移シミュレーション結果を得ることができる。したがって、適正在庫量決定システムは、調達リードタイムを固定値として算出された適正在庫量と現実場面における適正在庫量とのギャップを大幅に低減し、現実場面に対する適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0038】
つぎに、上述したステップS5における可変調達リードタイムパラメータVLTの算出処理について説明する。
【0039】
まず、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、出荷量変化率に基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することができる。この場合、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、調達リードタイムの実測値を収集し、この実測した調達リードタイム値に基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。
【0040】
この処理を具体的に説明するために、例えば図6(a)に示すような入出庫実績データSRDと発注実績データORDとが可変調達リードタイムパラメータ算出部30に入力された場合を考える。
【0041】
この場合、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、注文番号をキーとして、発注と入庫とを関連付け、調達リードタイムの実測値を抽出し、さらに、注文日付の直近N日に対して出荷データに基づいて出荷量変化率を算出し、例えば図6(b)に示すように、注文毎の出荷量変化率と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けた調達リードタイム明細データを作成する。
【0042】
なお、出荷量変化率は、固定期間(N日)における出荷量をAとし、全体期間における出荷量をBとし、全体期間をM日とすると、
出荷量変化率=(A/B)×(M/N)
として求めることができる。
【0043】
そして、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、作成した調達リードタイム明細データに基づいて、例えば図6(c)に示すように、出荷量変化率毎に実測した調達リードタイム値を割り当て、これに基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。例えば、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、図7に示すように、ある製品について実測した複数の調達リードタイム値が所定の範囲内にあるような場合には、それら調達リードタイム値の平均値を可変調達リードタイムパラメータVLTとして算出する。
【0044】
また、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、図8に示すように、ある製品についての既存の調達リードタイム値がある場合には、その既存の調達リードタイム値に実績を反映させた値を可変調達リードタイムパラメータVLTとして算出してもよい。
【0045】
このように、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、発注をかける直前の出荷量変化率と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することができる。そして、在庫擬似演算部20は、このようにして算出された可変調達リードタイムパラメータVLTを、在庫量推移シミュレーション時の出荷量変化率に応じて設定することになる。
【0046】
適正在庫量決定システムによれば、このようにして算出した可変調達リードタイムパラメータVLTを用いることにより、急激な製品販売等による調達リードタイムの影響を考慮した在庫量推移シミュレーションを行うことができ、適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0047】
また、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、稼働日何日目等、発注時期に基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することもできる。この場合にも、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、調達リードタイムの実測値を収集し、この実測した調達リードタイム値に基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。
【0048】
この処理を具体的に説明するために、例えば図9(a)に示すような調達リードタイム明細データが作成されている場合を考える。なお、この調達リードタイム明細データは、上述したように、入出庫実績データSRDと発注実績データORDとに基づいて、注文番号をキーとして、発注と入庫とを関連付け、調達リードタイムの実測値を抽出し、さらに、注文日付の直近N日に対して出荷データに基づいて出荷量変化率を算出することによって作成される。
【0049】
この場合、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、作成した調達リードタイム明細データに基づいて、例えば図9(b)に示すように、発注時期毎に実測した調達リードタイム値を割り当て、これに基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。なお、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、例えば図10に示すように、月内を第1期間乃至第6期間に6分割して各期間を1つの発注時期とし、各期間毎に実測した調達リードタイム値を割り当てる。このとき、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、第6期間とそれ以前の稼働日とが重複するような場合には、第6期間を優先するものとする。
【0050】
このように、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、発注時期と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することができる。そして、在庫擬似演算部20は、このようにして算出された可変調達リードタイムパラメータVLTを、在庫量推移シミュレーション時の発注時期に応じて設定することになる。
【0051】
適正在庫量決定システムによれば、このようにして算出した可変調達リードタイムパラメータVLTを用いることにより、調達先の早期在庫出荷等による調達リードタイムの影響を考慮した在庫量推移シミュレーションを行うことができ、適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0052】
さらに、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、発注実績や入出庫実績がない場合には、以下のようにして可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することができる。
【0053】
すなわち、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、可変調達リードタイムパラメータVLTを、例えば図11(a)に示すように、基準値、上限値、下限値、及び刻み値といった変数として設定可能なように、これら変数を格納した調達リードタイム設定テーブルをメモリ等に格納しておく。そして、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、基準値を中心とした例えば80%〜120%といった所定範囲内で、刻み値ずつ加算又は減算した値を調達リードタイム値とし、図11(b)に示すように、その調達リードタイム値を出荷量変化率又は発注時期毎に割り当て、これに基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。
【0054】
このように、適正在庫量決定システムによれば、可変調達リードタイムパラメータVLTを変数として設定可能とすることにより、実績値による可変調達リードタイムパラメータVLTが整備されていないような状況であっても、想定するリスクを取り込んだ上での適正在庫量の設定を行うことが可能となる。
【0055】
以上詳細に説明したように、本発明の実施形態に係る適正在庫量決定システムによれば、在庫擬似演算部20により、固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータPM1に基づいて求められた第1次案としての適正在庫量に基づく在庫量推移のシミュレーションを行い、その在庫量推移演算結果に基づいて所定の基準指標値を算出するとともに、可変調達リードタイムパラメータと第1次案としての適正在庫量とを用いた在庫量推移のシミュレーションを行い、その在庫量推移演算結果に基づいて所定の比較指標値を算出する。そして、本発明に係る適正在庫量決定システムは、適正在庫量決定部40における在庫基準判定部43により、比較指標値が基準指標値よりも悪化していると判定した場合には、第1次案としての適正在庫量を更新して指標値の算出処理を繰り返し行うとともに、比較指標値が基準指標値と同等若しくは基準指標値よりも良化していると判定した場合には、そのときの第1案としての適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定する。
【0056】
したがって、この適正在庫量決定システムによれば、状況によって調達リードタイムを変化させた在庫量推移シミュレーション結果を得ることができ、調達リードタイムを固定値として算出された適正在庫量と現実場面における適正在庫量とのギャップを大幅に低減し、現実場面に対する適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0057】
また、この適正在庫量決定システムにおいて、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、発注をかける直前の出荷量変化率と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて可変調達リードタイムパラメータVLTを算出し、この可変調達リードタイムパラメータVLTを、在庫擬似演算部20によるシミュレーション時の出荷量変化率に応じて設定させる。
【0058】
これにより、この適正在庫量決定システムによれば、急激な製品販売等による調達リードタイムの影響を考慮した在庫量推移シミュレーションを行うことができ、適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0059】
さらに、この適正在庫量決定システムにおいて、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、発注時期と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて可変調達リードタイムパラメータVLTを算出し、この可変調達リードタイムパラメータVLTを、在庫擬似演算部20によるシミュレーション時の発注時期に応じて設定させる。
【0060】
これにより、この適正在庫量決定システムによれば、調達先の早期在庫出荷等による調達リードタイムの影響を考慮した在庫量推移シミュレーションを行うことができ、適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0061】
さらにまた、この適正在庫量決定システムによれば、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、所定の調達リードタイム設定テーブルから読み出した調達リードタイムの基準値、上限値、下限値、及び刻み値からなる変数に基づいて可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することにより、実績値による可変調達リードタイムパラメータVLTが整備されていないような状況であっても、想定するリスクを取り込んだ上での適正在庫量の設定を行うことができる。
【0062】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明を適用した適正在庫量決定システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて最終案としての適正在庫量を決定する際の一連の処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、在庫擬似演算部によって欠品発生数と欠品発生日数とを指標値として算出した場合に、最終案としての適正在庫量を決定する様子を説明するための図である。
【図4】従来の技術において、固定調達リードタイムのみを用いた在庫量推移シミュレーションによる結果の具体例を示す図である。
【図5】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、可変調達リードタイムを用いた在庫量推移シミュレーションによる結果の具体例を示す図である。
【図6】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、出荷量変化率に基づいて、可変調達リードタイムパラメータを算出する様子を説明するための図である。
【図7】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、実測した複数の調達リードタイム値の平均値を可変調達リードタイムパラメータとして算出する様子を説明するための図である。
【図8】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、既存の調達リードタイム値に実績を反映させた値を可変調達リードタイムパラメータとして算出する様子を説明するための図である。
【図9】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、発注時期に基づいて、可変調達リードタイムパラメータを算出する様子を説明するための図である。
【図10】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、月内を第1期間乃至第6期間に6分割して各期間を1つの発注時期とし、各期間毎に実測した調達リードタイム値を割り当てる様子を説明するための図である。
【図11】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、可変調達リードタイムパラメータを変数として設定可能とした場合に、当該可変調達リードタイムパラメータを算出する様子を説明するための図である。
【符号の説明】
【0064】
10 在庫基準パラメータ算出部
11 特開平
20 在庫擬似演算部
30 可変調達リードタイムパラメータ算出部
40 適正在庫量決定部
41 第1の指標値記憶部
42 第2の指標値記憶部
43 在庫基準判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、在庫管理の基準値である適正在庫量を決定する適正在庫量決定システム及び適正在庫量決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の入出庫量に応じて当該製品の在庫量を管理する在庫管理では、在庫の製品がなくなる欠品状態が発生せず且つ過剰の在庫を保有しないように適正在庫量を短時間で決定することが要求される。このような適正在庫量を決定する技術としては、例えば特許文献1等に記載されたものがある。
【0003】
具体的には、特許文献1には、調達期間、入出庫の数量、及び時期等の各実績値に基づいて、在庫量推移シミュレーションに用いる複数のパラメータを求め、欠品発生率が所定の閾値と略同等となるまで在庫量推移をシミュレートすることにより、適正在庫量を決定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−39410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1には、在庫量推移シミュレーションにおいて、在庫量が発注点を下回った場合に固定値の調達リードタイムだけ経過して製品が納入される、といった方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、現実的には、同じ製品を調達する場合であっても、在庫の急激な減少による在庫量推移変化があった場合や、月初や月中といった発注タイミングによる在庫量推移変化がある場合等、状況に応じて調達リードタイムが異なるケースが発生する。
【0006】
具体的には、従来では、メーカーが在庫を過剰に保有しない代わりに調達先に在庫を過剰に保有させていたが、近年では、調達先及びメーカーの双方ともに在庫を過剰に保有せず、下流(次工程)の動きに同調して事業運営する傾向がある。
【0007】
このような状況において、急激な製品販売があった場合等、急激な在庫減少が発生したことによって発注がなされた場合を考えると、調達先及びメーカーの双方ともに、販社等の下流の動きに同調しているものの、生産が遅延し、調達リードタイムが長くなるという現象が起こりやすい。逆に、月末に納入予定日がかかるような発注がなされた場合を考える。一般に、在庫の多少の管理指標は、月末棚卸時点での在庫量をもって評価されるため、納入予定日よりも先に在庫の受け渡しを行うのは、遅延するのに比べて受け渡し先の迷惑になりにくいはずという意識から、調達リードタイムが短くなるという現象が起こりやすい。
【0008】
このように、調達リードタイムは、状況に応じて変動するケースがある。そのため、従来の技術は、調達リードタイムを固定値として行ったシミュレーション結果と現実場面とのギャップが生じることが多かった。
【0009】
そこで、本発明は、上述したような問題を解決するために案出されたものであり、調達リードタイムを固定値として算出された適正在庫量と現実場面における適正在庫量とのギャップを大幅に低減し、現実場面に対する適正在庫量の精度を向上させることができる適正在庫量決定システム及び適正在庫量決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、製品の入出庫実績を含む入出庫実績データと、固定値とされた調達リードタイムを示す固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータとに基づいて、第1次案としての適正在庫量を求める第1次案算出部と、第1次案算出部によって求められた第1次案としての適正在庫量に基づく在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した基準指標値を算出する基準指標値算出部と、可変値とされた調達リードタイムを示す可変調達リードタイムパラメータと第1次案としての適正在庫量とを用いた在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した比較指標値を算出する比較指標値算出部とを備え、上述の課題を解決するために、適正在庫量算出部によって、比較指標値算出部によって算出された比較指標値が、基準指標値算出部によって算出された基準指標値よりも悪化していると判定した場合には、第1次案としての適正在庫量を更新して基準指標値算出部による処理及び比較指標値算出部による処理を行わせ、比較指標値が基準指標値と同等若しくは基準指標値よりも良化していると判定した場合には、そのときの第1案としての適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る適正在庫量決定システム及び適正在庫量決定方法によれば、状況によって調達リードタイムを変化させた在庫量推移シミュレーション結果を得ることができ、調達リードタイムを固定値として算出された適正在庫量と現実場面における適正在庫量とのギャップを大幅に低減し、現実場面に対する適正在庫量の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本発明は、在庫管理の基準値である適正在庫量を決定する適正在庫量決定システムに適用される。この適正在庫量決定システムは、調達リードタイムを固定値として算出された適正在庫量に対して、可変的な調達リードタイムを用いた在庫量推移シミュレーションを行い、適正在庫量の妥当性やリスク等を評価することによって適正在庫量を決定することにより、発注タイミングの判断基準や閾値となる適正在庫量についての現実場面に対する精度向上を図るものである。
【0014】
先ず、適正在庫量決定システムの機能的な構成について説明する。本発明を適用した適正在庫量決定システムは、図1に示すように、在庫量推移シミュレーションに用いる各種パラメータPM1を算出する在庫基準パラメータ算出部10と、この在庫基準パラメータ算出部10によって算出された各種パラメータPM1や後述する可変調達リードタイムパラメータVLTに基づいて在庫量推移を擬似的に演算する在庫擬似演算部20と、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する可変調達リードタイムパラメータ算出部30と、在庫擬似演算部20による在庫量推移演算結果に基づいて適正在庫量を決定する適正在庫量決定部40とを備える。この適正在庫量決定システムは、例えばパーソナルコンピュータ等から構成され、そのプロセッサによって所定のプログラムを実行することにより、各機能を実現する。
【0015】
在庫基準パラメータ算出部10は、製品の入出庫実績を含む入出庫実績データSRDと、所定のマスタ管理部によって管理されている製品に関する情報が記述されたマスタ情報MDとに基づいて、在庫量推移シミュレーションに用いる各種パラメータPM1を算出する。入出庫実績データSRDは、ユーザの入力操作に応じて入力される情報であり、例えば、シミュレーション実施期間、調達リードタイム、入出庫の数量、及び入出庫時期等の各実績値を示す情報からなる。ここで、調達リードタイムは、所定の固定値とされる。すなわち、在庫基準パラメータ算出部10は、固定値とされた固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータPM1を算出する。在庫基準パラメータ算出部10は、算出したパラメータPM1を在庫擬似演算部20に供給する。
【0016】
在庫擬似演算部20は、シミュレーション開始時の在庫量(現在の在庫量)、発注サイクル、及び直近の発注日等の情報がユーザの入力操作に応じて入力されると、入出庫実績データSRDと、在庫基準パラメータ算出部10によって算出された各種パラメータPM1とに基づいて、在庫量推移を擬似的に演算する。すなわち、在庫擬似演算部20は、固定調達リードタイムを用いた在庫量推移のシミュレーションを行う。
【0017】
また、在庫擬似演算部20は、入出庫実績データSRDと、可変調達リードタイムパラメータ算出部30によって算出された可変調達リードタイムパラメータVLTとに基づいて、在庫量推移を擬似的に算出する。すなわち、在庫擬似演算部20は、可変調達リードタイムを用いた在庫量推移のシミュレーションも行う。
【0018】
在庫擬似演算部20は、シミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づいて、欠品発生回数(欠品発生率)や在庫回転率等の指標値を算出し、この指標値を適正在庫量決定部40に供給する。この指標値は、シミュレーションの結果として得られた在庫量推移の良否を数値化したものとなる。このとき、在庫擬似演算部20は、固定調達リードタイムを用いたシミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づく指標値については、適正在庫量決定部40における第1の指標値記憶部41に基準指標値として記憶させる。また、在庫擬似演算部20は、可変調達リードタイムを用いたシミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づく指標値については、適正在庫量決定部40における第2の指標値記憶部42に比較指標値として記憶させる。
【0019】
可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、入出庫実績データSRDと、ユーザの入力操作に応じて入力された製品の発注実績を含む発注実績データORDとに基づいて、固定値ではなく可変値とされる可変調達リードタイムを示す可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、算出した可変調達リードタイムパラメータVLTを在庫擬似演算部20に供給する。
【0020】
適正在庫量決定部40は、在庫擬似演算部20から供給された基準指標値を記憶する第1の指標値記憶部41と、在庫擬似演算部20から供給された比較指標値を記憶する第2の指標値記憶部42と、第1の指標値記憶部41に記憶された基準指標値と第2の指標値記憶部42に記憶された比較指標値とに基づいて在庫管理の基準値である適正在庫量を判定する在庫基準判定部43とを有する。このような適正在庫量決定部40は、在庫基準判定部43によって適正と判定された適正在庫量に基づいて各種パラメータPM2を算出する。この各種パラメータPM2は、次回の在庫量推移シミュレーション時に入力されるパラメータとして利用される。
【0021】
このような各部を備える適正在庫量決定システムは、固定調達リードタイムを用いた在庫量推移シミュレーションを行って適正在庫量を算出するとともに、可変調達リードタイムを用いた在庫量推移シミュレーションを行って適正在庫量を算出し、適正在庫量の妥当性やリスク等を評価することによって最終案としての適正在庫量を決定する。
【0022】
このような適正在庫量決定システムは、例えば図2に示すような一連の手順にしたがって、最終案としての適正在庫量を決定する。
【0023】
まず、適正在庫量決定システムは、図2に示すように、ステップS1において、入力された入出庫実績データSRDを所定の記憶部に記憶させると、ステップS2において、マスタ情報MDに基づいて在庫基準パラメータ算出部10によって各種パラメータPM1を算出する。このとき、在庫基準パラメータ算出部10は、上述したように、固定値とされた固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータPM1を算出する。
【0024】
続いて、在庫擬似演算部20は、ステップS3において、在庫基準パラメータ算出部10によって算出された各種パラメータPM1に基づいて、第1次案としての適正在庫量を求め、この適正在庫量に基づく在庫量推移を擬似的に演算する。すなわち、在庫擬似演算部20は、上述したように、固定調達リードタイムを用いた在庫量推移のシミュレーションを行う。
【0025】
そして、在庫擬似演算部20は、ステップS4において、シミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づいて、欠品発生回数(欠品発生率)や在庫回転率等の所定の基準指標値を算出し、この基準指標値を第1の指標値記憶部41に記憶させる。
【0026】
続いて、適正在庫量決定システムは、ステップS5において、入力された発注実績データORDを所定の記憶部に記憶させると、ステップS6において、入出庫実績データSRDと発注実績データORDとに基づいて可変調達リードタイムパラメータ算出部30によって可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。なお、この可変調達リードタイムパラメータVLTの算出処理については、後に詳述するものとする。
【0027】
続いて、在庫擬似演算部20は、ステップS7において、第1次案としての適正在庫量と可変調達リードタイムパラメータ算出部30によって算出された可変調達リードタイムパラメータVLTとに基づいて在庫量推移を擬似的に演算する。すなわち、在庫擬似演算部20は、上述したように、可変調達リードタイムを用いた在庫量推移のシミュレーションを行う。
【0028】
そして、在庫擬似演算部20は、ステップS8において、シミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づいて、欠品発生回数(欠品発生率)や在庫回転率等の所定の比較指標値を算出し、この比較指標値を第2の指標値記憶部42に記憶させる。
【0029】
これに応じて、適正在庫量決定部40における在庫基準判定部43は、ステップS9において、第1の指標値記憶部41に記憶された基準指標値と、第2の指標値記憶部42に記憶された比較指標値とを比較し、ステップS10において、比較指標値が基準指標値と同等若しくは基準指標値よりも良化しているか否かを判定する。
【0030】
ここで、在庫基準判定部43は、比較指標値が基準指標値よりも悪化していると判定した場合には、ステップS11へと処理を移行し、各種パラメータ(第1次案として求めた適正在庫量)を更新し、ステップS7からの処理を繰り返す。
【0031】
そして、在庫基準判定部43は、ステップS10において、比較指標値が基準指標値と同等若しくは基準指標値よりも良化していると判定した場合には、ステップS12において、そのときの第1案の適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定し、一連の処理を終了する。
【0032】
これらステップS9乃至ステップS11の処理を具体的に説明するために、在庫擬似演算部20によって欠品発生数と欠品発生日数とを指標値として算出する場合について、図3を用いて説明する。在庫基準判定部43は、第1の指標値記憶部41に記憶された基準指標値が、図3(a)に示すように、欠品発生数=300個、欠品発生日数=1日であり、第2の指標値記憶部42に記憶された比較指標値が、図3(b)に示すように、欠品発生数=1571個、欠品発生日数=2日であった場合には、比較指標値が基準指標値よりも悪化しているので、ステップS11へと処理を移行する。そして、在庫基準判定部43は、第1次案として求められている適正在庫量(2400個)を最小発注ロッド分(200個)だけ引き上げて新たな第1次案の適正在庫量(2600個)とし、ステップS7からの処理を繰り返す。なお、最小発注ロッドは、各種パラメータPM1にて設定される。
【0033】
続いて、在庫基準判定部43は、新たな第1次案の適正在庫量(2600個)として在庫擬似演算部20によるシミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づいて算出されて第2の指標値記憶部42に記憶された比較指標値が、図3(c)に示すように、欠品発生数=1571個、欠品発生日数=2日と変わらなかった場合には、再度ステップS11へと処理を移行する。そして、在庫基準判定部43は、第1次案として求められている適正在庫量(2600個)を再度最小発注ロッド分(200個)だけ引き上げて新たな第1次案の適正在庫量(2800個)とし、ステップS7からの処理を繰り返す。
【0034】
そして、在庫基準判定部43は、新たな第1次案の適正在庫量(2800個)として在庫擬似演算部20によるシミュレーションの結果得られた在庫量推移演算結果に基づいて算出されて第2の指標値記憶部42に記憶された比較指標値が、図3(d)に示すように、欠品発生数=300個、欠品発生日数=1日となった場合には、比較指標値が基準指標値と同等であるので、ステップS12へと処理を移行し、そのときの第1案の適正在庫量(2800個)を最終案の適正在庫量として決定する。
【0035】
適正在庫量決定システムによれば、このような一連の手順にしたがって、最終案としての適正在庫量を決定することができる。
【0036】
従来の技術のように、固定調達リードタイムのみを用いた在庫量推移シミュレーション結果は、同じ製品を調達する限り、例えば図4に示すように、在庫量が適正在庫量を下回った場合に発注がなされ、固定された調達リードタイムの時間だけ経過して製品が納入される、といった結果となる。
【0037】
これに対して、適正在庫量決定システムは、可変調達リードタイムを用いることにより、同じ製品を調達する場合であっても、例えば図5に示すように、状況によって調達リードタイムを変化させた在庫量推移シミュレーション結果を得ることができる。したがって、適正在庫量決定システムは、調達リードタイムを固定値として算出された適正在庫量と現実場面における適正在庫量とのギャップを大幅に低減し、現実場面に対する適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0038】
つぎに、上述したステップS5における可変調達リードタイムパラメータVLTの算出処理について説明する。
【0039】
まず、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、出荷量変化率に基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することができる。この場合、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、調達リードタイムの実測値を収集し、この実測した調達リードタイム値に基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。
【0040】
この処理を具体的に説明するために、例えば図6(a)に示すような入出庫実績データSRDと発注実績データORDとが可変調達リードタイムパラメータ算出部30に入力された場合を考える。
【0041】
この場合、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、注文番号をキーとして、発注と入庫とを関連付け、調達リードタイムの実測値を抽出し、さらに、注文日付の直近N日に対して出荷データに基づいて出荷量変化率を算出し、例えば図6(b)に示すように、注文毎の出荷量変化率と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けた調達リードタイム明細データを作成する。
【0042】
なお、出荷量変化率は、固定期間(N日)における出荷量をAとし、全体期間における出荷量をBとし、全体期間をM日とすると、
出荷量変化率=(A/B)×(M/N)
として求めることができる。
【0043】
そして、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、作成した調達リードタイム明細データに基づいて、例えば図6(c)に示すように、出荷量変化率毎に実測した調達リードタイム値を割り当て、これに基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。例えば、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、図7に示すように、ある製品について実測した複数の調達リードタイム値が所定の範囲内にあるような場合には、それら調達リードタイム値の平均値を可変調達リードタイムパラメータVLTとして算出する。
【0044】
また、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、図8に示すように、ある製品についての既存の調達リードタイム値がある場合には、その既存の調達リードタイム値に実績を反映させた値を可変調達リードタイムパラメータVLTとして算出してもよい。
【0045】
このように、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、発注をかける直前の出荷量変化率と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することができる。そして、在庫擬似演算部20は、このようにして算出された可変調達リードタイムパラメータVLTを、在庫量推移シミュレーション時の出荷量変化率に応じて設定することになる。
【0046】
適正在庫量決定システムによれば、このようにして算出した可変調達リードタイムパラメータVLTを用いることにより、急激な製品販売等による調達リードタイムの影響を考慮した在庫量推移シミュレーションを行うことができ、適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0047】
また、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、稼働日何日目等、発注時期に基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することもできる。この場合にも、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、調達リードタイムの実測値を収集し、この実測した調達リードタイム値に基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。
【0048】
この処理を具体的に説明するために、例えば図9(a)に示すような調達リードタイム明細データが作成されている場合を考える。なお、この調達リードタイム明細データは、上述したように、入出庫実績データSRDと発注実績データORDとに基づいて、注文番号をキーとして、発注と入庫とを関連付け、調達リードタイムの実測値を抽出し、さらに、注文日付の直近N日に対して出荷データに基づいて出荷量変化率を算出することによって作成される。
【0049】
この場合、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、作成した調達リードタイム明細データに基づいて、例えば図9(b)に示すように、発注時期毎に実測した調達リードタイム値を割り当て、これに基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。なお、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、例えば図10に示すように、月内を第1期間乃至第6期間に6分割して各期間を1つの発注時期とし、各期間毎に実測した調達リードタイム値を割り当てる。このとき、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、第6期間とそれ以前の稼働日とが重複するような場合には、第6期間を優先するものとする。
【0050】
このように、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、発注時期と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することができる。そして、在庫擬似演算部20は、このようにして算出された可変調達リードタイムパラメータVLTを、在庫量推移シミュレーション時の発注時期に応じて設定することになる。
【0051】
適正在庫量決定システムによれば、このようにして算出した可変調達リードタイムパラメータVLTを用いることにより、調達先の早期在庫出荷等による調達リードタイムの影響を考慮した在庫量推移シミュレーションを行うことができ、適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0052】
さらに、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、発注実績や入出庫実績がない場合には、以下のようにして可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することができる。
【0053】
すなわち、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、可変調達リードタイムパラメータVLTを、例えば図11(a)に示すように、基準値、上限値、下限値、及び刻み値といった変数として設定可能なように、これら変数を格納した調達リードタイム設定テーブルをメモリ等に格納しておく。そして、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、基準値を中心とした例えば80%〜120%といった所定範囲内で、刻み値ずつ加算又は減算した値を調達リードタイム値とし、図11(b)に示すように、その調達リードタイム値を出荷量変化率又は発注時期毎に割り当て、これに基づいて、可変調達リードタイムパラメータVLTを算出する。
【0054】
このように、適正在庫量決定システムによれば、可変調達リードタイムパラメータVLTを変数として設定可能とすることにより、実績値による可変調達リードタイムパラメータVLTが整備されていないような状況であっても、想定するリスクを取り込んだ上での適正在庫量の設定を行うことが可能となる。
【0055】
以上詳細に説明したように、本発明の実施形態に係る適正在庫量決定システムによれば、在庫擬似演算部20により、固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータPM1に基づいて求められた第1次案としての適正在庫量に基づく在庫量推移のシミュレーションを行い、その在庫量推移演算結果に基づいて所定の基準指標値を算出するとともに、可変調達リードタイムパラメータと第1次案としての適正在庫量とを用いた在庫量推移のシミュレーションを行い、その在庫量推移演算結果に基づいて所定の比較指標値を算出する。そして、本発明に係る適正在庫量決定システムは、適正在庫量決定部40における在庫基準判定部43により、比較指標値が基準指標値よりも悪化していると判定した場合には、第1次案としての適正在庫量を更新して指標値の算出処理を繰り返し行うとともに、比較指標値が基準指標値と同等若しくは基準指標値よりも良化していると判定した場合には、そのときの第1案としての適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定する。
【0056】
したがって、この適正在庫量決定システムによれば、状況によって調達リードタイムを変化させた在庫量推移シミュレーション結果を得ることができ、調達リードタイムを固定値として算出された適正在庫量と現実場面における適正在庫量とのギャップを大幅に低減し、現実場面に対する適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0057】
また、この適正在庫量決定システムにおいて、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、発注をかける直前の出荷量変化率と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて可変調達リードタイムパラメータVLTを算出し、この可変調達リードタイムパラメータVLTを、在庫擬似演算部20によるシミュレーション時の出荷量変化率に応じて設定させる。
【0058】
これにより、この適正在庫量決定システムによれば、急激な製品販売等による調達リードタイムの影響を考慮した在庫量推移シミュレーションを行うことができ、適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0059】
さらに、この適正在庫量決定システムにおいて、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、発注時期と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて可変調達リードタイムパラメータVLTを算出し、この可変調達リードタイムパラメータVLTを、在庫擬似演算部20によるシミュレーション時の発注時期に応じて設定させる。
【0060】
これにより、この適正在庫量決定システムによれば、調達先の早期在庫出荷等による調達リードタイムの影響を考慮した在庫量推移シミュレーションを行うことができ、適正在庫量の精度を向上させることができる。
【0061】
さらにまた、この適正在庫量決定システムによれば、可変調達リードタイムパラメータ算出部30は、所定の調達リードタイム設定テーブルから読み出した調達リードタイムの基準値、上限値、下限値、及び刻み値からなる変数に基づいて可変調達リードタイムパラメータVLTを算出することにより、実績値による可変調達リードタイムパラメータVLTが整備されていないような状況であっても、想定するリスクを取り込んだ上での適正在庫量の設定を行うことができる。
【0062】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明を適用した適正在庫量決定システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて最終案としての適正在庫量を決定する際の一連の処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、在庫擬似演算部によって欠品発生数と欠品発生日数とを指標値として算出した場合に、最終案としての適正在庫量を決定する様子を説明するための図である。
【図4】従来の技術において、固定調達リードタイムのみを用いた在庫量推移シミュレーションによる結果の具体例を示す図である。
【図5】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、可変調達リードタイムを用いた在庫量推移シミュレーションによる結果の具体例を示す図である。
【図6】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、出荷量変化率に基づいて、可変調達リードタイムパラメータを算出する様子を説明するための図である。
【図7】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、実測した複数の調達リードタイム値の平均値を可変調達リードタイムパラメータとして算出する様子を説明するための図である。
【図8】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、既存の調達リードタイム値に実績を反映させた値を可変調達リードタイムパラメータとして算出する様子を説明するための図である。
【図9】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、発注時期に基づいて、可変調達リードタイムパラメータを算出する様子を説明するための図である。
【図10】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、月内を第1期間乃至第6期間に6分割して各期間を1つの発注時期とし、各期間毎に実測した調達リードタイム値を割り当てる様子を説明するための図である。
【図11】本発明を適用した適正在庫量決定システムにおいて、可変調達リードタイムパラメータを変数として設定可能とした場合に、当該可変調達リードタイムパラメータを算出する様子を説明するための図である。
【符号の説明】
【0064】
10 在庫基準パラメータ算出部
11 特開平
20 在庫擬似演算部
30 可変調達リードタイムパラメータ算出部
40 適正在庫量決定部
41 第1の指標値記憶部
42 第2の指標値記憶部
43 在庫基準判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の入出庫実績を含む入出庫実績データと、固定値とされた調達リードタイムを示す固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータとに基づいて、第1次案としての適正在庫量を求める第1次案算出部と、
前記第1次案算出部によって求められた前記第1次案としての適正在庫量に基づく在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した基準指標値を算出する基準指標値算出部と、
可変値とされた調達リードタイムを示す可変調達リードタイムパラメータと前記第1次案としての適正在庫量とを用いた在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した比較指標値を算出する比較指標値算出部と、
前記比較指標値算出部によって算出された比較指標値が、前記基準指標値算出部によって算出された基準指標値よりも悪化していると判定した場合には、前記第1次案としての適正在庫量を更新して前記基準指標値算出部による処理及び前記比較指標値算出部による処理を行わせ、前記比較指標値が前記基準指標値と同等若しくは前記基準指標値よりも良化していると判定した場合には、そのときの前記第1案としての適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定する適正在庫量算出部と
を備えることを特徴とする適正在庫量決定システム。
【請求項2】
前記可変調達リードタイムパラメータを算出する可変調達リードタイムパラメータ算出部を備え、
前記可変調達リードタイムパラメータ算出部は、発注をかける直前の出荷量変化率と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて前記可変調達リードタイムパラメータを算出し、前記可変調達リードタイムパラメータを前記シミュレーション時の出荷量変化率に応じて設定させることを特徴とする請求項1に記載の適正在庫量決定システム。
【請求項3】
前記可変調達リードタイムパラメータを算出する可変調達リードタイムパラメータ算出部を備え、
前記可変調達リードタイムパラメータ算出部は、発注時期と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて前記可変調達リードタイムパラメータを算出し、前記可変調達リードタイムパラメータを前記シミュレーション時の発注時期に応じて設定させることを特徴とする請求項1に記載の適正在庫量決定システム。
【請求項4】
前記可変調達リードタイムパラメータ算出部は、所定の設定テーブルから読み出した調達リードタイムの基準値、上限値、下限値、及び刻み値からなる変数に基づいて前記可変調達リードタイムパラメータを算出することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の適正在庫量決定システム。
【請求項5】
製品の入出庫実績を含む入出庫実績データと、固定値とされた調達リードタイムを示す固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータとに基づいて、第1次案としての適正在庫量を求める第1の工程と、
前記第1の工程にて求められた前記第1次案としての適正在庫量に基づく在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した基準指標値を算出する第2の工程と、
可変値とされた調達リードタイムを示す可変調達リードタイムパラメータと前記第1次案としての適正在庫量とを用いた在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した比較指標値を算出する第3の工程とを備え、
前記第3の工程にて算出された比較指標値が、前記第2の工程にて算出された基準指標値よりも悪化していると判定した場合には、前記第1の工程にて求められた前記第1次案としての適正在庫量を更新し、前記第2の工程及び前記第3の工程を繰り返し行い、
前記比較指標値が前記基準指標値と同等若しくは前記基準指標値よりも良化していると判定した場合には、そのときの前記第1案としての適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定すること
を特徴とする適正在庫量決定方法。
【請求項1】
製品の入出庫実績を含む入出庫実績データと、固定値とされた調達リードタイムを示す固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータとに基づいて、第1次案としての適正在庫量を求める第1次案算出部と、
前記第1次案算出部によって求められた前記第1次案としての適正在庫量に基づく在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した基準指標値を算出する基準指標値算出部と、
可変値とされた調達リードタイムを示す可変調達リードタイムパラメータと前記第1次案としての適正在庫量とを用いた在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した比較指標値を算出する比較指標値算出部と、
前記比較指標値算出部によって算出された比較指標値が、前記基準指標値算出部によって算出された基準指標値よりも悪化していると判定した場合には、前記第1次案としての適正在庫量を更新して前記基準指標値算出部による処理及び前記比較指標値算出部による処理を行わせ、前記比較指標値が前記基準指標値と同等若しくは前記基準指標値よりも良化していると判定した場合には、そのときの前記第1案としての適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定する適正在庫量算出部と
を備えることを特徴とする適正在庫量決定システム。
【請求項2】
前記可変調達リードタイムパラメータを算出する可変調達リードタイムパラメータ算出部を備え、
前記可変調達リードタイムパラメータ算出部は、発注をかける直前の出荷量変化率と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて前記可変調達リードタイムパラメータを算出し、前記可変調達リードタイムパラメータを前記シミュレーション時の出荷量変化率に応じて設定させることを特徴とする請求項1に記載の適正在庫量決定システム。
【請求項3】
前記可変調達リードタイムパラメータを算出する可変調達リードタイムパラメータ算出部を備え、
前記可変調達リードタイムパラメータ算出部は、発注時期と、そのときの調達リードタイムの実測値とを関連付けたデータを収集し、このデータに基づいて前記可変調達リードタイムパラメータを算出し、前記可変調達リードタイムパラメータを前記シミュレーション時の発注時期に応じて設定させることを特徴とする請求項1に記載の適正在庫量決定システム。
【請求項4】
前記可変調達リードタイムパラメータ算出部は、所定の設定テーブルから読み出した調達リードタイムの基準値、上限値、下限値、及び刻み値からなる変数に基づいて前記可変調達リードタイムパラメータを算出することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の適正在庫量決定システム。
【請求項5】
製品の入出庫実績を含む入出庫実績データと、固定値とされた調達リードタイムを示す固定調達リードタイムパラメータを含む各種パラメータとに基づいて、第1次案としての適正在庫量を求める第1の工程と、
前記第1の工程にて求められた前記第1次案としての適正在庫量に基づく在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した基準指標値を算出する第2の工程と、
可変値とされた調達リードタイムを示す可変調達リードタイムパラメータと前記第1次案としての適正在庫量とを用いた在庫量推移のシミュレーションを行って得られた在庫量推移演算結果に基づいて、当該在庫量推移の良否を数値化した比較指標値を算出する第3の工程とを備え、
前記第3の工程にて算出された比較指標値が、前記第2の工程にて算出された基準指標値よりも悪化していると判定した場合には、前記第1の工程にて求められた前記第1次案としての適正在庫量を更新し、前記第2の工程及び前記第3の工程を繰り返し行い、
前記比較指標値が前記基準指標値と同等若しくは前記基準指標値よりも良化していると判定した場合には、そのときの前記第1案としての適正在庫量を最終案の適正在庫量として決定すること
を特徴とする適正在庫量決定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−126621(P2009−126621A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301827(P2007−301827)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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