説明

遭難者捜索システム

【課題】 山岳地帯のように、携帯電話等の既存の通信インフラが使えない場所でも使用可能な遭難者捜索システムを提供する。
【解決手段】 遭難者が持っている発信機1から、全方位一定の強さで特定の電波信号を発信し、捜索隊が持っている受信機2により、その電波信号を受信して、その受信方向と受信レベルとに基づいて、遭難者の現在位置を判定して表示する。発信機1は、所定時間毎に、自動的に前記電波信号を発信するようにして、遭難者が意識を失っても発信できるようにする。その際、アラームを発するようにし、必要がないときは、アラーム及び電波信号の発信を手動で停止できるようにする。また、手動により、必要に応じて随時電波信号を発信させることも可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山や海等で遭難事故が発生した際に、遭難者を捜索するための遭難者捜索システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、山や海等で遭難者を捜索するのに、GPS機能を備えた携帯電話を利用する方法が知られている。すなわち、山や海に出かける際に、GPS機能を備えた携帯電話を携帯し、そのGPS機能を利用して、所定の周期毎、又は、所定のスイッチ操作により現在位置情報を取得し、その位置情報を、携帯電話網を介して、所定の受信装置に送信する。
【0003】
そのようにすれば、遭難事故が発生したとき、遭難者の現在位置が簡単に分かるので、救助機関等による迅速な救出活動が可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、GPS機能を備えた携帯電話を利用する方法には、携帯電話の通信圏外では位置情報を送信できず、使用できないという問題点があった。特に、山岳地帯では通信圏外となる地域が多く、登山の際には使えない場合が多いという問題点があった。
【0005】
本発明は、そのような問題点に鑑み、山岳地帯のように、携帯電話のような既存の通信インフラが使えない場所でも使用可能な遭難者捜索システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本願の請求項1にかかる発明は、全方位一定の強さで特定の電波信号を発信する発信機と、前記電波信号を受信して、その受信方向と受信レベルとに基づいて、前記発信機の現在位置を判定して表示する受信機とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、前記発信機は、所定時間毎に、自動的に前記電波信号を発信することを特徴とする。
【0008】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項2にかかる発明において、前記発信機は、前記電波信号を発信する際に、アラームを発する手段と、該アラーム及び電波信号の発信を手動で停止させる手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項1,2又は3にかかる発明において、前記発信機は、前記電波信号を、随時、手動により発信させる手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の遭難者捜索システムは、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1にかかる発明においては、発信機から、全方位一定の強さで特定の電波信号を発信し、受信機により、その電波信号を受信して、その受信方向と受信レベルとに基づいて、前記発信機の現在位置を判定して表示するようにしたので、山岳地帯のように、既存の通信インフラが使えない場所でも使用可能となる。
【0011】
また、請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる遭難者捜索システムにおいて、前記発信機は、所定時間毎に、自動的に前記電波信号を発信するようにしたので、遭難時に意識がなくなったりしても、電波信号を確実に発信することができる。
【0012】
また、請求項3にかかる発明においては、請求項2にかかる遭難者捜索システムにおいて、前記発信機は、前記電波信号を発信する際に、アラームを発する手段と、該アラーム及び電波信号の発信を手動で停止させる手段を設けたので、電波を発信していることを知らせるとともに、不必要にアラームや電波発信を防止するのを防止できる。
【0013】
また、請求項4にかかる発明においては、請求項1,2又は3にかかる遭難者捜索システムにおいて、前記発信機は、前記電波信号を、随時、手動により発信させるようにしたので、必要な時は、いつでも電波の発信ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の遭難者捜索システムの概略構成を示す図である。図1において、1は、登山者等に持たせておく発信機、2は、登山者等が遭難したとき、発信機1の電波信号を受信して、登山者等の現在位置を探知するための受信機である。
【0016】
図2は、発信機の一例を示す図である。図2において、11は発信ボタン、12は停止ボタン、13はスピーカである。この発信機1は、登山者等のシャツの胸ポケットに入る程度の大きさ、あるいは、腕時計式に手首に固定できる程度の大きさになっており、特定の周波数で特定の信号パターンの電波信号を、電波法令で許される範囲の出力強度で発信する。
【0017】
発信機1は、転落事故等による衝撃に対して充分耐えうる堅牢な構造とし、雨に濡れても機能を維持するように防水性も付与する。また、乾電池を電源として動作し、電池の残量が少なくなった場合は、LEDランプ等よりなるバッテリモニタ14により、残量低下を知らせるようにしている。
【0018】
発信ボタン11は、電波信号を発信させるためのもので、この発信ボタン11を押すと、予め決められた特定の周波数で特定の信号パターンの電波信号を、全方位に対して一定の強度で発信する。そして、停止ボタン12を押すと発信が停止する。
【0019】
さらに、遭難時にけがのために操作不能になったり、意識がなくなったりしたときのために、所定の時間間隔毎に、電波信号を一定時間自動発信する機能も備えている。その際、スピーカ13からアラーム音を鳴らして、電波を発信していることを知らせる。ただ、平常時に電波信号を発信したり、アラーム音を鳴らしたりすると、電池を無駄に消費してしまうし、ほかに遭難者がいて同様なシステムを使って捜索している場合には、捜索を妨害してしまう。そこで、アラーム音が鳴ったときに停止ボタン12を押すことにより、電波信号とアラーム音を停止させることができるようにしている。
【0020】
図3は、受信機の一例を示す図である。図3において、21は電源スイッチ、22はレベルゲージ表示ボタン、23はアンテナ、24は表示器、25は周波数選択ボタンである。この受信機2は、発信機1が発信する電波信号を受信して、発信機1からの受信方向とおおよその距離を探知するためのものであって、電池を電源として動作し、携帯可能なサイズ・重量を有し、遭難者捜索機関の遭難者捜索隊が手に持って操作できるようにしている。 また、図示はしないが、当該受信機2の現在位置を検知するためのGPS装置と、当該受信機2が向いている方向を検知するための方向検知器とを備えている。
【0021】
遭難者を捜索する際には、電源スイッチ21をオンにすると、表示器24に、現場周辺の地図を表示し、その中に、GPS装置で検知した現在位置Pも表示する。さらに、必要に応じてレベルゲージ表示ボタン22をオンにすると、表示器24に電波の受信レベルをレベルゲージGとして表示する。
【0022】
アンテナ23は、高い指向性を有しており、それにより発信機1から送られる電波信号を受信する。そして、アンテナ23の方向を様々な方向に向けて、発信機1からの電波を最も強く受信できる方向を探り、遭難者が居る方向を探知する。また、その時の受信レベルに基づいて、その地点から遭難者が居る場所までのおおよその距離を計算し、その結果に基づいて、表示器24の地図中に遭難者の位置Qを表示する。
【0023】
このような遭難者捜索システムを活用する上で、発信機1と受信機2の両方の普及が必要になる。そこで、遭難者捜索システムの運営方法としては、例えば、所定の会費を徴収して会員を募り、会員になった人に発信機1を貸与し、受信機2は、各地の捜索機関等に無料で貸与する方法が考えられる。そのようにすれば、運営費の確保と同時に発信機1と受信機2の普及を図ることができる。
【0024】
なお、上記実施例では、発信機1の電源として乾電池を用いたが、乾電池の代わりに太陽電池を用いてもよい。また、上記実施例では、受信機2に地図上に遭難者の位置を表示するようにしたが、方向と距離だけを文字表示するようにしてもよい。そのようにすれば、表示が簡単になってコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の遭難者捜索システムの概略構成を示す図である。
【図2】発信機の一例を示す図である。
【図3】受信機の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1…発信機
11…発信ボタン
12…停止ボタン
13…スピーカ
14…バッテリモニタ
2…受信機
21…電源スイッチ
22…レベルゲージ表示ボタン
23…アンテナ
24…表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全方位一定の強さで特定の電波信号を発信する発信機と、
前記電波信号を受信して、その受信方向と受信レベルとに基づいて、前記発信機の現在位置を判定して表示する受信機
とを備えたことを特徴とする遭難者捜索システム。
【請求項2】
前記発信機は、所定時間毎に、自動的に前記電波信号を発信することを特徴とする請求項1に記載の遭難者捜索システム。
【請求項3】
前記発信機は、前記電波信号を発信する際に、アラームを発する手段と、該アラーム及び電波信号の発信を手動で停止させる手段とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の遭難者捜索システム。
【請求項4】
前記発信機は、前記電波信号を、随時、手動により発信させる手段を備えたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の遭難者捜索システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−281957(P2009−281957A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136379(P2008−136379)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(508155893)
【Fターム(参考)】