説明

遮水シートの固定方法

【課題】面状の遮水シートAを、コンクリート構造物Bの表面に確実に固定する方法を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物Bの表面に固定盤1の溶着面11が露出する状態で埋設する。この固定盤1の表面に被加熱金属を取り付ける。その外側に遮水シートAを敷設する。被加熱金属を遮水シートAの外側から電磁誘導装置4によって誘電して発熱させ、固定盤1と遮水シートAとを熱用溶着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の表面に遮水シートを固定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート構造物の表面に遮水シートを固定する方法には次のような方法があった。
<1> 接着剤をコンクリート表面に塗布し、コンクリートと遮水シートを接着させて遮水シートをコンクリート構造物に固定する方法。
<2> 型枠の裏側に、背面に凹凸を付けた遮水シートを取り付け、コンクリートを打設する方法。
<3> 表裏に凹凸のあるシートを型枠に貼り付け、型枠を取り外したのちに表面の凹凸に樹脂を吹き付けて遮水層を形成するような方法。
<4> 遮水シートの敷設後に遮水シートの上に多数の帯状のプレートを設置し、プレートをアンカーで固定することによって遮水シートを構造物に固定する方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−42497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の遮水シートの固定方法にあっては、次のような問題点が存在する。
<1> 接着剤をコンクリート表面に塗布し、コンクリートと遮水シートを接着させて遮水シートをコンクリート構造物に固定する方法では異種材料同士の接合となるため耐久性を維持するには問題があり、一般には10年程度で剥離などが発生している。
<2> 型枠の裏側に、背面に凹凸を付けた遮水シートを取り付け、コンクリートを打設する方法では、遮水シートの型枠への固定方法に問題がある。すなわち遮水シートを型枠に釘で打ち付ける方法であるために、型枠を取り外したのち、遮水シートに開いた釘穴を補修する作業が必要となる。
<3> 上記の方法ではさらに、型枠自体を固定するためのボルトが遮水シートを貫通するために、釘穴の補修と同様に、型枠を取り外したのちにボルト穴を補修する作業も必要となる。そのためにもし補修が不完全であれば、遮水シートの機能を果たすことができない、という信頼性の低下にもつながる。
<4> 表裏に凹凸のあるシートを型枠に貼り付け、型枠を取り外したのちに表面の凹凸に樹脂を吹き付けて遮水層を形成するような方法では、型枠の解体後に前面にわたって遮水層を形成する材料を吹き付ける作業が必要となり、作業性の良くない方法である。
<5> 遮水シートの敷設後に遮水シートの上に多数の帯状のプレートを設置し、プレートをアンカーで固定することによって遮水シートを構造物に固定する方法はアンカーが遮水シートを貫通するからそのままでは漏水の原因になってしまう。そこでプレートを覆う状態でその上を被覆用の遮水シートを覆い、被覆用の遮水シートの一部を、すでに固定してある遮水シートに溶着する、という余分な作業が必要となる。
<6> 上記の方法ではさらに、遮水シートの下にプレートとアンカーが位置しているから、その部分に凹凸が発生して弱点となりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために本発明の遮水シートの固定方法は、遮水シートをコンクリート表面に固定する方法であって、固定盤を、コンクリートの表面にその溶着面が露出する状態で埋設し、この固定盤の表面に被加熱金属を取り付け、その外側に遮水シートを敷設し、被加熱金属を遮水シートの外側から電磁誘導装置によって誘電して発熱させ、固定盤と遮水シートとを熱用溶着させる方法を特徴としたものである。
上記の記載の方法において、固定盤の溶着面が、コンクリート表面と同一平面を形成する方法を特徴としたものである。
上記に記載の方法において、固定盤の表面はポリエチレン製で構成したものである。
上記に記載の方法において遮水シートはポリエチレン系樹脂製の遮水シートで構成したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の遮水シートの固定方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> コンクリート構造物の表面に凹凸を形成することなく遮水シートを固定することができる。
<2> 熱溶着固定を採用したために、接着材のような遮水シートと異なる材質の材料が介在することがない。そのために長期にわたり信頼性を確保することができる。
<3> 固定盤の表面と遮水シートの間にはアルミ製網などの被加熱金属が介在することになるが、これは発熱のためのものであり、溶着自体は固定盤と遮水シートとが直接に溶解して一体となって行われるものであるから高い信頼性を期待できる。
<4> 特に固定盤の表面をポリエチレンで製造し、遮水シートをポリエチレン系樹脂で製造することによって電磁誘導装置によって容易に発熱させることができ、完全な溶着を期待することができる。
<5> コンクリート表面に埋め込んだ固定盤の上下左右の間隔を調整することによって、遮水シートの剥離に対する抵抗を自由に設定することができ、高い信頼性のもとに遮水シートを固定することができる。
<6> 広い面体である遮水シートを、多数の固定盤の点で支持する方法であるが、上下左右方向の間隔を適宜設定することにより全体的には面で支持するように機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の遮水シートの固定方法に使用する部材の説明図。
【図2】各部材をコンクリート型枠に取り付けた状態の説明図。
【図3】コンクリートを打設した状態の説明図。
【図4】型枠を解体した状態の説明図。
【図5】本設ボルトで固定した状態の説明図。
【図6】電磁誘導装置で発熱させる状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>使用する部品、機器
本発明の方法で使用する部品は、固定盤1と固定用アンカー2と仮止めボルト3と電磁誘導装置4である。
【0010】
<2>固定盤
固定盤1は、遮水シートAを溶着する溶着面11を備えた板体である。
固定盤1は、少なくともその表面はポリエチレンで構成し、これが溶着面11となる。
固定盤1の中央にはボルト穴12を開口してある。
この固定盤1の溶着面11がコンクリート構造物Bの表面と同一面で露出するように設置する。
固定盤1の中央部は溶着面11とは反対側へ茶碗状に突出させ、その底面にボルト穴12を開口する。
ボルト穴12の周囲には、後述する本設ボルト6の頭部が位置できるだけの平面部を形成しておく。
【0011】
<3>固定用アンカー
固定用アンカー2はコンクリート構造物B内に埋設する抵抗体であり、ナット筒21と、それと直交方向に一体化した抵抗板22とで構成する。
ナット筒21は内部にネジ穴を設置した筒体である。
抵抗板22はナット筒21よりも広い面積を備えた板体であり、ナット筒21の底面にこの抵抗板22を一体で形成する。
固定盤1と固定用アンカー2は、固定盤1のボルト穴12を貫通させた仮止めボルト3、あるいは本設ボルト6を、固定用アンカー2のナット筒21のナットにねじ込むことで、両者を一体化することができる。
【0012】
<4>構築方法
次に遮水シートAの固定方法について説明する。
【0013】
<5>型枠への取り付け(図2)
コンクリート構造物Bを構築するために、コンクリートの形状を維持する型枠5を設置する。
この型枠5のコンクリート打設側の面に固定盤1と固定用アンカー2を取り付ける。
そのために型枠5に仮止めボルト3が貫通できる穴51を開口し、この貫通穴51に仮止めボルト3を貫通させる。
この仮止めボルト3の頭部の外径を、貫通穴51の内径よりも十分に大きくしておき、このボルト3によって型枠5の裏面に配置した固定盤1と固定用アンカー2を一体化して型枠5に取り付ける。
その際に、固定盤1の溶着面11を型枠5の裏面に一致させて固定する。
この固定盤1の上下左右の配置間隔を調整することによって、後述するように遮水シートAを固定した場合に、その剥離に対する抵抗を自由に設定することができ、高い信頼性のもとに遮水シートAを固定することができる。
【0014】
<6>コンクリートの打設(図3)
型枠5の裏面にコンクリートを打設する。
その結果、固定用アンカー2はコンクリート内に埋設し、固定盤1の溶着面11が型枠5の裏面に密着した状態でコンクリートが固化する。
【0015】
<7>型枠の解体(図4)
仮止めボルト3を外側に抜き出し、型枠5を解体する。
するとコンクリート構造物Bの表面と同一面に、固定盤1の溶着面11が露出した状態となる。
【0016】
<8>本設ボルトでの一体化(図5)
仮止めボルト3を抜き出すと、コンクリート構造物B内で、固定盤1と固定用アンカー2の一体化が失われる。
そのために本設ボルト6を固定用アンカー2のナット筒21に改めてネジ込んで、両者を強固に一体化する。
本設ボルト6はステンレスで製造し、そのボルト6頭が、茶碗状に形成した突出部の底部に位置するまで固定用アンカー2のナット筒21にねじ込む。
その後、茶碗状の突出部の中には石膏などの充填剤13を充填して、凹凸のない平面を形成する。
【0017】
<9>被加熱金属の取り付け(図6)
コンクリートの打設によって固定盤1の溶着面11にセメントミルクなどが回っていたらそれを除去して異物がないように処理をする。
その後、被加熱金属7として例えばアルミ製網などを、固定盤1の溶着面11に取り付ける。
アルミ製網として、例えば直径0.1mmの線材を1mm間隔で配置したような網を採用する。
このように、固定盤1の表面と遮水シートAの間にはアルミ製網などの被加熱金属7が介在することになる。
しかしこれは発熱のためのものであり、溶着自体は後述するように固定盤1と遮水シートAとが直接に溶解して一体となって行われるものであるから高い信頼性を期待できる。
【0018】
<10>遮水シートの敷設(図6)
コンクリート構造物Bの表面に遮水シートAを敷設する。
この遮水シートAとしては、例えばポリエチレン系樹脂製の遮水シートAを採用することができる。
さらに長繊維不織布を遮水シートAに接着して使用することができる。
なお図6では遮水シートAを鉛直に取り付けた例を示しているが、遮水シートAを水平面に、あるいは傾斜面に取り付ける場合も同様である。
【0019】
<11>加熱(図6)
コンクリート構造物Bの表面は遮水シートAによって被覆されるので、外部からは固定盤1の位置は見えない状態であるが、その配置位置は事前に間隔を測定しておくことで知ることができる。
あるいは金属探知機で、アルミ製網や固定盤1をコンクリート構造物Bに固定するためのボルトを検知する方法で、後から位置を特定することもできる。
そこで、遮水シートAの裏側に位置する固定盤1の被加熱金属7を遮水シートAの外側から電磁誘導装置4によって誘電して発熱させる。
この電磁誘導装置4は市販のものを使用することができる。
すると被加熱金属7の熱によって、ポリエチレン製の板である固定盤1の溶着面11と、遮水シートAの固定盤1側の表面が溶け出し、遮水シートAを熱溶着することができる。
この作業は、通常は3秒程度で熱融着が完了する。
しかしその条件は遮水シートAの材質や厚さと外気温で微妙に変わるので、事前に遮水シートAごとの検量線、すなわち外気温対最適時間の関係を求めておいて融着作業を行う。
この管理は毎日、作業前に作業とまったく同じ条件で、別に用意した固定盤1に熱融着を行い、所定の強度で融着していることを試験、確認してから作業を開始すれば確実である。
【0020】
<12>遮水シートの固定の完了
こうして複数の固定盤1において、遮水シートAをコンクリート構造物B表面に固定する作業が完了する。
上記のように、本発明の方法では熱溶着固定方法を採用した。
そのために、接着材のような遮水シートAと異なる材質の材料が介在することがなく、長期にわたり信頼性を確保することができる。
さらに広い面体である遮水シートAを、多数の固定盤1の点で支持する方法であるが、固定盤1の上下左右方向の配置間隔を適宜設定することにより全体的には面で支持するように機能させることができる。
【符号の説明】
【0021】
1:固定盤
2:固定用アンカー
3:仮止めボルト
4:電磁誘導装置
5:コンクリート型枠
6:本設ボルト
7:被加熱金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮水シートをコンクリート表面に固定する方法であって、
固定盤を、コンクリートの表面にその溶着面が露出する状態で埋設し、
この固定盤の表面に被加熱金属を取り付け、
その外側に遮水シートを敷設し、
被加熱金属を遮水シートの外側から電磁誘導装置によって誘電して発熱させ、
固定盤と遮水シートとを熱用溶着させる方法を特徴とする、
遮水シートの固定方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
固定盤の溶着面が、コンクリート表面と同一平面を形成する、
遮水シートの固定方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、
固定盤は、少なくともその表面をポリエチレン製の面で構成した、
遮水シートの固定方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、
遮水シートはポリエチレン系樹脂製の遮水シートである、
遮水シートの固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87470(P2013−87470A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227852(P2011−227852)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】