説明

遮音乾式二重床及びその施工方法

【課題】限られた仕上げ高さの中でも収まり、剛性や重量を高め、遮音性能を向上させ、更に増加する重量に関しては床構造体に対する負担を軽減可能な遮音乾式二重床及びその施工方法を提供する。
【解決手段】この遮音乾式二重床は、下地板5と、下地板を床構造体Sから離間して直接支持するように配置され防振部2を有する複数の支持脚1と、下地板の下部で支持脚とその隣の支持脚との間に設けられた根太12と、を備え、根太12と下地板5とを一体化させることで下地板の剛性を高めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高遮音性能を有する乾式二重床及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遮音性能を有する乾式二重床とは、図21に示すように、防振ゴム2と支持ボルト3と正方形の受け材4とで構成された支持脚1を複数個、一定ピッチで床構造体Sの上に配置し、支持脚1の上に下地板5を設け、下地板5の上に床仕上材6を設置するものである。図21の乾式二重床(置床)を施工する工法は、一般的に広く使用されており、床上の振動を支持脚1の防振ゴム2で吸収することにより遮音性能を得ることができる。なお、支持ボルト3を上部のネジで回すことによって、支持脚1のレベルを容易に調整することが可能で、施工性もよく、図21の乾式二重床の工法は広く一般的に使用されている。
【0003】
図22の乾式二重床は、図21の構造よりも高遮音仕様としたもので、下地板5の上に密度の高い制振シート7を敷くことで、床構造体S上の置床部の重量を増し、置床部がゆっくり振動するようになるので、床構造体Sに振動が伝わりにくくなる。しかし、制振シート7の重量分、床の固定荷重が増加するため、改修工事で用いる場合には、床構造体の負担荷重が増加してしまう。
【0004】
従来の標準的な根太組工法は、図23のように、床構造体Sの上に根太8を置き、根太8の上に下地板5及び床仕上材6を載せる工法である。図23の根太組工法は、床材のレベル調整が難しく、防振ゴムがないため、床の振動が根太材から直接床構造体に伝わり、一般に置床工法よりも遮音性能が低いとされる。
【0005】
従来の高遮音仕様の根太組工法は、図24のように、図23の標準的な根太組工法の根太8の下に防振支持材9を設置する工法であり、根太材の剛性が高いため、床上の衝撃を分散させることができ、遮音性能を高めることが可能である。ただし、遮音性能向上が期待できる程度の剛性をもつためには、根太材の成をある程度確保する必要がある。更に、根太8だけではなく、防振支持材9の高さも加えた分だけのスペースが、下地板5の下部に必要となるため、仕上げ高さHが高くなる。
【0006】
また、図24の工法に、図22と同様に制振シートを併用するなどによって、重量を増した場合には、制振シートの重量分、床の固定荷重が増加するため、改修工事で用いる場合には、床構造体の負担荷重が増加する。
【0007】
図24と基本的に同様な工法であるが、従来の高遮音仕様の別の根太組工法として図25のように防振支持材9を根太8の両端部だけに配置した工法がある。床上の振動は、ゆれにくい床構造体Sの端部に伝わるので、更に遮音性能を向上させている。しかし、根太自重、根太に載せられた下地板5や床仕上材6等の積載荷重の全てを根太8が負担しなければならないので、許容される変形量の範囲内におさめるためには、根太8の成が非常に大きくなる。
【0008】
特許文献1は、スラブの上方に複数本の大引を平行に配置し、その両端部を防振材を介して梁に支持し、大引の上には、これと直交する方向に多数の根太を平行に配列して固定し、根太上には床板を取り付け、スラブと床板との間には空気層を形成し、スラブの上にはグラスウールからなる吸音材を全面に敷き詰めるようにした遮音床構造を開示する。
【0009】
特許文献2は、建物躯体の床スラブの上に床板を大引および長尺根太からなる軸組で受け、該軸組を防振ゴムを介して防振支持して浮き床を構成した長尺根太高床式防音床において、浮き床周縁における床板と壁または柱との間に間隙を設けて、床下空気を出入り自在とした防音床を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−25918号公報
【特許文献2】特開平6−10494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
改修が必要とされる集合住宅は、一般的に床構造体の厚みが110mm程度と薄く、仕上げ高さが100mm程度のものが多い。したがって、このような構造の建築物では、遮音性能が低いものが多く、特に仕上げ材では改善しにくいといわれている重量床衝撃音に対する対策が問題となる。
【0012】
ところで、重量床衝撃音の遮音性能には、仕上げ材の重量や剛性等が影響を与えるが、仕上げ材の剛性をあげるためには、下地板を厚くしたり根太材の高さを大きくする必要がある。しかし、改修後の仕上げ高さが、既存の床の仕上げ高さよりも高くなると、開口部の扉と干渉したり、改修しなければならない範囲が増え、工事期間や工事費用への影響が大きくなるために、限られた仕上げ高さの範囲で所定の剛性を確保するのは難しい。
【0013】
また、重量の増加についても、改修前の固定荷重よりも荷重が増加した場合には、床構造体の負担が大きくなり、構造的に問題が生じる可能性がある。
【0014】
特許文献1,2の遮音・防音床は、大引と根太とを用いるため仕上げ高さが高くなり、集合住宅等の改修には不向きである。
【0015】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、限られた仕上げ高さの中でも収まり、剛性や重量を高め、遮音性能を向上させ、更に増加する重量に関しては床構造体に対する負担を軽減可能な遮音乾式二重床及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための遮音乾式二重床は、床板部と、前記床板部を床構造体から離間して直接支持するように配置され防振部を有する複数の支持脚と、前記床板部の下部で前記支持脚とその隣の支持脚との間に設けられた横部材と、を備え、前記横部材と前記床板部とを一体化させることで前記床板部の剛性を高めたことを特徴とする。
【0017】
この遮音乾式二重床によれば、横部材と床板部とを一体化させて床板部の剛性を高めたことにより、遮音性能の向上及び積載荷重による変形性能の向上を達成できる。床板部を支持する支持脚と横部材とを別々に配置することで、高さ方向に高くならないので、限られた仕上げ高さの中でも収まることができる遮音乾式二重床を実現できる。
【0018】
上記遮音乾式二重床において前記床板部のレベル調整のために前記支持脚がレベル調整機能を有することが好ましい。
【0019】
また、前記横部材を前記床構造体の端部側に配置された横部材支持材によって支持することが好ましい。横部材に伝わった振動は、床構造体の端部に近い位置に配置された横部材支持材から、ゆれにくい床構造体の端部に伝わるので、更に遮音性能を向上させることができる。
【0020】
また、前記横部材が内部に空洞を有し一辺の少なくとも一部が開口した鋼材から構成され、前記鋼材の空洞内に入れた接続片を用いて前記鋼材を前記床板部と一体化することが好ましい。
【0021】
また、レベル調整機能を有する床板部支持材を前記横部材に載せることによって前記横部材の自重を前記床構造体の端部側に配置された前記横部材支持材で支持することが好ましい。横部材によって床板部の重量を増加させても、横部材の重量は、床構造体の中央ではなく、床構造体の端部側に流れ、床構造体に発生する曲げモーメントを小さくし、床構造体の構造的な負担を軽減することができる。
【0022】
また、前記横部材は、横部材重量を増すための重し手段を有することが好ましい。横部材重量を増すことで、床板部の重量をさらに増加させることができる。
【0023】
上記目的を達成するための遮音乾式二重床の施工方法は、端部が横部材支持材で支持された横部材を床構造体の上に配置する工程と、レベル調整機能を有する支持脚を前記床構造体に設置するとともに前記支持脚により前記床構造体から離間して床板部を設置する工程と、前記支持脚のレベル調整機能により前記床板部のレベルを調整する工程と、レベル調整機能を有する床板部支持材の長さを調整し前記床板部支持材を前記横部材に載せる工程と、床仕上げ材を前記床板部の上に設置する工程と、を含むことを特徴とする。
【0024】
この遮音乾式二重床の施工方法によれば、上述のような、床板部と、前記床板部を床構造体から離間して直接支持するように配置され防振部を有する複数の支持脚と、前記床板部の下部で前記支持脚とその隣の支持脚との間に設けられた横部材と、を備え、前記横部材と前記床板部とを一体化させることで前記床板部の剛性を高めた遮音乾式二重床において、前記横部材の自重を前記床構造体の端部側に配置された横部材支持材によって支持する遮音乾式二重床を施工することができる。これにより、遮音性能の向上及び積載荷重による変形性能の向上を達成した遮音乾式二重床を提供できる。
【0025】
上記目的を達成するためのもう一つの遮音乾式二重床は、床板部と、前記床板部を床構造体から離間して直接支持するように配置され防振部を有する複数の支持脚と、前記床板部の下部で前記支持脚とその隣の支持脚との間に設けられた横部材と、を備え、前記横部材を両端で支持し、前記横部材と前記床板部との間に静的荷重を伝達しにくくかつ振動を伝達しやすい振動伝達材を配置したことを特徴とする。
【0026】
この遮音乾式二重床によれば、横部材と床板部との間に静的荷重を伝達しにくくかつ振動を伝達しやすい振動伝達材を配置したことにより、横部材の重量が床板部を通して支持脚に伝わりにくくなり、横部材の両端を通して床構造体の端部側に流れ、床構造体に発生する曲げモーメントを小さくし、床構造体の構造的な負担を軽減することができるとともに、振動は振動伝達材により床板部から横部材に伝わるので、横部材が床板部と一体になって振動し、重量床衝撃音に対する遮音性能が向上する。また、床板部を支持する支持脚と横部材とを別々に配置することで、高さ方向に高くならないので、限られた仕上げ高さの中でも収まることができる遮音乾式二重床を実現できる。
【0027】
上記遮音乾式二重床において前記床板部の下面から突き出るように設けられた接続部を備え、前記接続部と前記横部材との間に前記振動伝達材が位置することが好ましい。なお、上記振動伝達材として、ブチルゴム等の粘弾性体、履歴系ダンパーや摩擦ダンパー等を用いることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、限られた仕上げ高さの中でも収まり、剛性や重量を高め、遮音性能を向上させ、更に増加する重量に関しては床構造体に対する負担を軽減可能な遮音乾式二重床及びその施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態による乾式二重床の構造を説明するための斜視図である。
【図2】図1の乾式二重床を図1の方向IIからみた図である。
【図3】図1,図2の乾式二重床の平面図(a)、b−b’線方向から見た断面図(b)及びc−c’線方向から見た断面図(c)である。
【図4】図1〜図3の乾式二重床に適用可能なレベル調整機能を有する防振支持脚の側面図である。
【図5】図1〜図3の下地板と根太との接続手段を説明するための図3(b)の紙面垂直方向に切断してみた断面図である。
【図6】図1〜図3の乾式二重床の効果を説明するための図である。
【図7】図1〜図3の乾式二重床の効果を説明するために図24の従来例を前面からみた図である。
【図8】第2の実施形態による乾式二重床の平面図(a)、b−b’線方向から見た断面図(b)及びc−c’線方向から見た断面図(c)である。
【図9】図8の根太に設けた下地板支持材を説明するための図8(b)の紙面垂直方向に切断してみた断面図である。
【図10】図8,図9の乾式二重床の根太を重くする重し手段を説明するための図である。
【図11】第2の実施形態による効果を説明するための図8(b)と対応する断面図である。
【図12】第2の実施形態による効果を説明するために図22の従来例を示す断面図である。
【図13】第3の実施形態において根太を床構造体に配置する工程を説明するための図8(b)に対応する断面図である。
【図14】第3の実施形態において支持脚と下地板とを設置する工程を説明するための図8(b)に対応する断面図(a)及び図8(c)に対応する断面図(b)である。
【図15】第3の実施形態において下地支持材を長さ調整して根太に載せる工程を説明するための図8(b)に対応する断面図(a)及び図8(c)に対応する断面図(b)である。
【図16】第2,第3の実施形態において下地板と根太とを接続し一体化するための構成例を示すための、図8(b)に対応する断面図である。
【図17】図16の下地板と根太との接続部を説明するための図16の紙面垂直方向に切断してみた断面図である。
【図18】第2,第3の実施形態において下地板と根太とを接続し一体化するための別の構成例を示すための図17と同様の断面図である。
【図19】第2,第3の実施形態における根太端部の構成例について説明するための図8(b)の紙面垂直方向に切断してみた断面図である。
【図20】第2,第3の実施形態における根太端部の構成例について説明するための図19と同様の断面図(a)及び図20(a)のリップ溝形鋼材の上面図(b)である。
【図21】遮音乾式二重床の従来例を示す部分斜視図である。
【図22】遮音乾式二重床の別の従来例を示す部分斜視図である。
【図23】従来の標準的な根太組工法を説明するための部分斜視図である。
【図24】従来の高遮音仕様の根太組工法を説明するための部分斜視図である。
【図25】従来の高遮音仕様の別の根太組工法を説明するための部分斜視図である。
【図26】第4の実施形態による乾式二重床の平面図(a)、b−b’線方向から見た断面図(b)及びc−c’線方向から見た断面図(c)である。
【図27】図26の根太側面に設けた振動伝達材を示すために図26(a)の矢印dからみた図である。
【図28】第4の実施形態において床に静的荷重が加わったときの振動伝達材の作用を説明するための図27と同様の図である。
【図29】第4の実施形態において床に振動が加わったときの振動伝達材の作用を説明するための図27と同様の図である。
【図30】第4の実施形態の振動伝達材の別の例を説明するための図27と同様の図である。
【図31】図26(a)〜(c)、図27の乾式二重床51の施工工程(a)(b)(c)を説明するための図である。
【図32】図31(b)のビス止め工程(a)(b)を説明するために図31(b)を側面からみた図である。
【図33】図31の接続部53の木片の配置工程の別の例を説明するための図32と同様の図である。
【図34】図27の根太と振動伝達材と接続部との別の配置例(a)〜(d)を説明するための図である。
【図35】図30の振動伝達材の別の例を説明するための図27と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0031】
本実施形態の高遮音仕様の乾式二重床は、建物の改修において限られた仕上げスペースであっても、下地板等の床部材の剛性を高めたり重量を大きくすることによって重量床衝撃音の遮音性能を向上させることができ、床構造体の構造耐力が低い場合にも対応可能である。
【0032】
〈第1の実施形態〉
【0033】
図1は第1の実施形態による乾式二重床の構造を説明するための斜視図である。図2は図1の乾式二重床を図1の方向IIからみた図である。図3は図1,図2の乾式二重床の平面図(a)、b−b’線方向から見た断面図(b)及びc−c’線方向から見た断面図(c)である。
【0034】
図4は図1〜図3の乾式二重床に適用可能なレベル調整機能を有する防振支持脚の側面図である。図5は図1〜図3の下地板と根太との接続手段を説明するための図3(b)の紙面垂直方向に切断してみた断面図である。図6は図1〜図3の乾式二重床の効果を説明するための図である。図7は図1〜図3の乾式二重床の効果を説明するために図24の従来例を前面からみた図である。
【0035】
図1,図2のように、第1の実施形態の乾式二重床11は、下地板5と、下地板5の上に設置される床仕上材6と、下地板5を床構造体Sから離して直接支持するように一定ピッチで床構造体Sの上に配置された複数の支持脚1と、下地板5の下部で、支持脚1と隣の支持脚1との間に図1の奥行き方向に複数設けられた剛性の高い横部材である根太12と、を備える。下地板5から床板部が構成され、または、下地板5と床仕上材6とから床板部が構成される。
【0036】
図2のように、根太12は床構造体Sの表面から離れて下地板5の下部に固定されている。このように、根太12を下地板5に一体化させることで下地板5の剛性を高めている。
【0037】
図2,図4のように、支持脚1は、床構造体Sの表面に載る防振ゴム2と支持ボルト3と正方形の受け材4とを有し、受け材4の上から支持ボルト3の上面3aをドライバ等で回すことで、支持ボルト3の長さを調整することができ、防振ゴム2の下端から受け材4の上面までの全体高さを調整できる。これにより、支持脚1はレベル調整機能を有する防振支持脚になっている。このような支持脚1は、例えば、株式会社桐井製作所から商品名「バリアレスフロアー」として販売されている。
【0038】
図3(a)(c)のように、本実施形態の乾式二重床11では、複数の支持脚1を図3(a)の横方向に直列に一定ピッチで床構造体S上に配置し、支持脚1の各列間に複数の根太12を支持脚1の列と平行に配置する。各根太12は、図3(a)(b)のように、一定ピッチで後述の図5のネジ15を用いて下地板5と一体化されている。
【0039】
なお、図3(a)の破線で示すように外壁周囲には根太材18が配置され、図3(b)(c)のように根太材18に下地板5が載ることができるようになっている。また、支持脚1の各列の外壁近傍には根太材18の下部に脚19が配置されている。
【0040】
図1,図2の下地板5と根太12との接続手段・方法について図5を参照して説明する。図5のように、根太12はC形断面を有するリップ溝形鋼材13から構成され、リップ溝形鋼材13内に接続のための接続片として木片14を入れ、下地板5側からネジ15を差し込んで回して木片14に突き刺してねじ込むことで下地板5と根太12とを接続して一体化する。
【0041】
ネジ15は、ねじの頭から下地板5の厚み程度の範囲はネジ山がないタイプのネジを用いることが好ましい。これにより、ネジ15をドライバ等で回すことで木片14を下地板5側に引き寄せ、リップ溝形鋼材13のリップ部13aを下地板5と木片14の間に挟み込むことができ、下地板5と根太12とを確実に一体化させることができる。
【0042】
なお、鋼材は木材の30倍程度のヤング率を有し、剛性を向上させるには鋼材が最も適している。ちなみに、幅(100mm)、高さ(50mm)の木材と、幅(100mm)、高さ(50mm)、厚み(3.2mm)のC形断面を有するリップ溝形鋼材とを比べると、リップ溝形鋼材の方が、曲げ剛性が7倍程度もある。しかし、鋼材と木材を一体化させるために、直接鋼材にビスを打ち付けるのは難しいが、上述のように、リップ溝形鋼材の内側に木片14を入れ、ネジ15で止めることにより根太12を下地板5と一体化することができる。
【0043】
図1〜図5のような乾式二重床11において、床構造体Sの上の下地板5と床仕上材6等との置床部の剛性を高めることによる効果は以下のとおりである。
【0044】
(1)遮音性能の向上
床上の衝撃を分散することができ、広い面積で力を受けることができる。そのため、ゆれやすい床構造体Sの中央部への衝撃があっても、ゆれにくい床構造体Sの端部へも振動が伝わり、床構造体Sの振動をやわらげることができる。また、図6に示すように、床上の衝撃Aは、下地板5と床構造体Sとの間の空気バネを伝わっても伝達されるが、下地板5の剛性を高めることにより、下地板5の振動をおさえることができ、空気バネを介して伝達される振動を低減することができる。
【0045】
(2)積載荷重による変形性能の向上
ピアノや家具などによって床に部分的に大きな力が加わった場合、部分的に大きな変形を生じることがあるが、上述のように下地板5等の剛性を高めることによって力を分散させることができるので、その変形量を小さくすることができる。また、床の剛性が低いことによる歩行感低下の改善も望むことができる。
【0046】
下地板5等の置床部の剛性を上げるために根太を用いる場合、図7,図24の従来例のように、標準的な根太組工法の根太8の下に防振支持材9を設置すると次の問題が生じる。すなわち、古い共同住宅では仕上げ高さHが100mm程度のものも多いが、仕上げ高さHを100mmとするためには、下地板5の下面から床構造体Sまでの高さH1が70mm程度以下しかなく、防振性能を有する根太支持材と剛性の高い根太とを配置することは困難である。これに対し、本実施形態では、図1,図2,図3(a)〜(c)のように、根太12と支持脚1とを分けて配置しているため、限られた仕上げ高さの範囲Hで、最大限剛性を高めることができる。また、支持脚1,1の間に1本から複数本の根太12を配置することができるため、必要に応じて剛性の調整を行うことが容易であり、遮音性能や変形性能を向上させたい部分にだけ根太12を配置することもできる。
【0047】
また、図7の従来例の場合には、根太8のレベルがそのまま仕上げ高さHに影響するため、根太8の寸法精度が悪い場合にはレベルを調整するのが困難となる。これに対し、本実施形態では、床のレベル調整をレベル調整機能を有する防振支持脚1によって行うことができるため、下地板5の設置後に容易にレベル調整を行うことができ、精度良く施工することが可能である。
【0048】
〈第2の実施形態〉
【0049】
図8は第2の実施形態による乾式二重床の平面図(a)、b−b’線方向から見た断面図(b)及びc−c’線方向から見た断面図(c)である。図9は図8の根太に設けた下地板支持材を説明するための図8(b)の紙面垂直方向に切断してみた断面図である。図10は図8,図9の乾式二重床の根太を重くする手段を説明するための図である。図11は本実施形態による効果を説明するための図8(b)と対応する断面図である。図12は本実施形態による効果を説明するために図22の従来例を示す断面図である。
【0050】
本実施形態の乾式二重床21は、図8(a)(c)からわかるように図1〜図3と基本的に同様の構造であるが、図8(a)(b)のように、根太12を床構造体Sの端部側に配置した根太支持材22によって両端で支持するようにしたものである。根太支持材22は、ゴム、木、モルタル、鋼製バネなどから構成できる。
【0051】
また、乾式二重床21は、図8(a)(b)のように、根太12に下地板支持材23を根太12の長手方向に一定ピッチで設けることで下地板5を支持するようになっている。
【0052】
下地板支持材23は根太12と下地板5とを連結させる。また、後述の図16〜図18のように下地板5と根太12とを接続し一体化させるようにしてもよい。
【0053】
図9のように、下地板支持材23は、支持ボルト23aと、台座23bとを有し、根太12を構成するリップ溝形鋼材13の底部に台座23bが載り、支持ボルト23aのネジが下地板5に設けたナット部5aに螺合するようになっている。下地板支持材23は、支持ボルト23aの上端23cをドライバ等で回すことで支持ボルト23aの長さを調整することでレベル調整機能を有する。台座23bは防振ゴム2から構成してもよい。
【0054】
図8(a)〜(c)の乾式二重床21によれば、根太12の自重は、床構造体Sの中央ではなく、床構造体Sの端部側に配置された根太支持材22によって支持される。したがって、根太12に伝わった振動は、床構造体Sの端部に近い位置に配置された根太支持材22から、ゆれにくい床構造体Sの端部に伝わるので、更に遮音性能を向上させることができる。
【0055】
図25に示す従来の根太組工法では、根太自重、根太に載せられた下地板や床仕上げ材、積載荷重の全てを根太が負担しなければならないので、許容される変形量の範囲内におさめるためには、根太の成が非常に大きくなる。また、床構造体のスパンが大きくなると、根太中央がたわみ、床のレベル調整が難しい。これに対し、本実施形態では、床を組んだ後に床上に乗る積載荷重については、根太12と支持脚1の両方で支持するため、荷重の全てを根太で受ける必要がなく、根太の成を小さくすることができる。
【0056】
また、図10のように、根太12のリップ溝形鋼材13内に重し手段として重り25を詰めることで根太12を重くすることが好ましい。これにより、下地板5に対し鉛直下方向z(図2)へ加わる重量を増やすことで下地板5の重量をさらに増加させることができる。重り25として溝形鋼材13内に挿入可能な形状のコンクリートブロック小片、鉄片、砂袋等があるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
上述のように、下地板5の置床部の重量を増すことにより、下地板5の部分がゆっくりと振動することになり、重量床衝撃音に対する遮音性能をさらに向上させることができる。
【0058】
また、改修工事の場合には、図22,図24に示すような従来の工法で仕上げ材の重量を増加させると既存の床構造体への負担が大きくなり、構造上支障をきたす。これに対し、第1及び第2の実施形態では、根太12に比重の高い鋼材を用いたり、更に図10のように、リップ溝形鋼材13の中に重り25を詰めることによって、下地板5の重量を増すことができ、遮音性能を向上させることができる。
【0059】
この場合、根太12を床構造体Sの端部に近い位置に配置された根太支持材22によって支持し、下地板支持材23を根太12に載せることによって、根太12の自重に関して床構造体Sの端部側に配置された根太支持材22により支持することができる。したがって、図11に示すように、根太12によって増加した重量は、床構造体Sの端部側に流れ、床構造体Sに発生する曲げモーメントを小さくし、床構造体Sの構造的な負担を軽減することができる。なお、図24の従来例では、下地板5の上に密度の高い制振シート7を敷くことで床構造体S上の置床部の重量を増しているが、図12のように、重量増加により曲げモーメントが大きくなり、床構造体Sへの構造的な負担が大きくなる。
【0060】
〈第3の実施形態〉
【0061】
第3の実施形態は、図8(a)〜(c)の乾式二重床の施工方法に関し、図13〜図15を参照して説明する。
【0062】
図13は第3の実施形態において根太を床構造体に配置する工程を説明するための図8(b)に対応する断面図である。図14は同じく支持脚と下地板とを設置する工程を説明するための図8(b)に対応する断面図(a)及び図8(c)に対応する断面図(b)である。図15は同じく下地支持材を長さ調整して根太に載せる工程を説明するための図8(b)に対応する断面図(a)及び図8(c)に対応する断面図(b)である。
【0063】
まず、図13のように、端部が根太支持材22で支持された鋼材からなる根太12を床構造体Sの上に配置する。
【0064】
次に、図14(b)のように、レベル調整機能を有する支持脚1と下地板5とを設置する。下地板5が支持脚1により床構造体Sから離れて位置する。
【0065】
図4の支持脚1の支持ボルト3の上面3aをドライバ等で回すことで下地板5のレベルを調整する。なお、このとき、図14(a)のように、下地板5には図9の下地板支持材23の支持ボルト23aがねじ込まれているが、下地板支持材23の台座23bは根太12のリップ溝形鋼材13の底部から離れている。
【0066】
次に、図15(a)のように、図9の下地板支持材23の支持ボルト23aの上端23cをドライバ等で回すことで支持ボルト23aの長さを調整することで、下地板支持材23の台座23bを根太12のリップ溝形鋼材13の底部に接触させて載せる。このとき、図15(b)のように、下地板5と支持脚1との位置関係は図14(b)と同様である。
【0067】
次に、フローリング等の床仕上材6を下地板5の上に設置することで、図8(b)(c)のように仕上げる。
【0068】
なお、図15(a)で下地板支持材23を根太12に載せたが、根太12に載せるだけではなく、根太12を配置した後、自重による変形を保持したまま下地板5と根太12とを接続し一体化することによって、根太12の自重を床構造体Sの端部側に流すように構成してもよい。図16〜図18にその構成例を示す。
【0069】
図16,図17の例は、下地板5の上からネジ27によって、根太12のリップ溝形鋼材13内に配置した木片等からなるネジ受け材26を引き寄せることで、根太12と下地板5とを接続し一体化させるものである。
【0070】
図18の例は、図9のように下地板支持材23の台座23bを根太12のリップ溝形鋼材13の底部に接触させたとき、台座23bをリップ溝形鋼材13の底部に接着剤28により固定し、下地板5と根太12とを接続し一体化するものである。接着剤を予め台座23bの下面やリップ溝形鋼材13の底部に塗布しておいてもよい。
【0071】
また、根太端部の構成例について図19,図20(a)(b)を参照して説明する。
【0072】
図19の例は、根太端部においてレベル調整機能が不要な場合、図8(a)(b)のようにゴムシートやコンクリートや木材などを根太支持材22として根太12の端部に配置するものである。
【0073】
図20(a)(b)の例は、根太12の端部においてレベル調整機能が必要な場合、下地板5にレベル調整用孔5bを設け、リップ溝形鋼材13の底部に孔13bを設け、図4と同様の構成の支持脚31を用いて、正方形の受け材34をリップ溝形鋼材13のリップ部13aに接触させ、支持ボルト33を孔13bに通して防振ゴム32を床構造体Sに載せるものである。下地板5からレベル調整用孔5bを通して、受け材34の上から支持ボルト33の上面33aをドライバ等で回すことで、支持ボルト33の長さを調整することで、根太12の高さレベルを調整する。
【0074】
〈第4の実施形態〉
【0075】
図26は第4の実施形態による乾式二重床の平面図(a)、b−b’線方向から見た断面図(b)及びc−c’線方向から見た断面図(c)である。図27は図26の根太側面に設けた振動伝達材を示すために図26(a)の矢印dからみた図である。図28は本実施形態において床に静的荷重が加わったときの振動伝達材の作用を説明するための図27と同様の図である。図29は本実施形態において床に振動が加わったときの振動伝達材の作用を説明するための図27と同様の図である。
【0076】
第4の実施形態の乾式二重床51は、図26(a)(c)からわかるように図8と基本的に同様の構造であるが、図8の根太12に設けた下地板支持材23を省略し、図26(a)(b),図27のように、根太12の側面12aと下地板5の下面に突き出るように設けられた接続部53との間に振動伝達材52を根太12の側面に配置したものである。以下、図8と異なる点を主に説明する。
【0077】
振動伝達材52は根太12の側面に沿って所定のピッチで複数箇所に配置されている。図26(a)では、振動伝達材52は支持脚1の横方向の配置位置に対し同じ横方向位置に同じピッチで配置されている。
【0078】
各根太12は、床構造体Sの端部側に配置された根太支持材22によって両端で支持される。根太支持材22は、ゴム、木、モルタル、鋼製バネなどから構成できる。
【0079】
図26(a)(b),図27のように、接続部53は、所定長さの矩方体状の木片等からなり、根太12とその隣の根太12との間で下地板5の下面から突き出ている。接続部53の各側面53aと根太12の側面12aとの間に振動伝達材52が位置している。接続部53の木片等は、例えば、下地板5の上面からビスを打ち込むことで固定することができる。
【0080】
振動伝達材52は、静的な荷重に対しては容易に変形しかつ振動を伝達する材料からなり、例えば、ブチルゴム等の粘弾性体からなる。ブチルゴム等の粘弾性体は、静的な荷重に対してはすぐに変形するが、粘性が大きく、速度に対して抵抗力を発揮するため、振動を伝達する。
【0081】
なお、振動伝達材52として、静的な荷重に対しては容易に変形しかつ振動を伝達する材料であれば、ブチルゴム以外を使用してもよく、例えば、樹脂系、ゴム系、アスファルト系等の粘弾性体がある。
【0082】
また、振動伝達材52としてブチルゴムを用いる場合、ブチルゴムは粘着力のある材料であるので、振動伝達材52を接続部53の側面53aと根太12の側面12aとの間に配置する際に接着材等は不要である。粘着力のない材料の場合は適宜接着材等を用いることが好ましい。
【0083】
また、根太12の材料として、図8と同様に、内部に空洞を有し一辺の一部が開口した鋼材を使用できるが、必ずしも一辺の一部が開口していなくともよく、例えば、角筒状の鋼製パイプや鉄筋などを使用することができる。
【0084】
本実施形態における振動伝達材52の作用について図28,図29を参照して説明する。
【0085】
図28のように、床の下地板5に静的な荷重fが加わったとき、下地板5とともに接続部53が下向きFに変形しても、振動伝達材52がクリープ変形などにより容易に変形することで、一定以上の荷重を根太12に伝達せず、静的な荷重が伝達されにくくなる。また、逆に、根太12の重量も下地板5に一定以上伝達されないことになる。
【0086】
また、図29のように、床の下地板5に振動vが加わったとき、下地板5とともに接続部53が上下方向Bに振動すると、振動伝達材52が力を伝達したり、エネルギーを吸収したりするため、根太12も上下方向B’に振動する。
【0087】
重量床衝撃音対策としては、床の重量を重くする方法が一般的にとられるが、重量を付加すると、床構造体(スラブ)の負担が増え、特に改修工事においては問題がある。これに対し、本実施形態のように、下地板5と根太12とを静的な荷重を一定以上伝達しない振動伝達材52によって繋ぐことで、静的な荷重については、根太12と下地板5との間で一定以上の力が伝達されない。つまり、根太12の重量が下地板5を通して支持脚1に伝わらないため、根太12の重量は、根太12を支持している端部の根太支持材22から床構造体Sの端部に流れる。このため、図11と同様に、床構造体Sに発生する曲げモーメントを小さくし、床構造体Sの構造的な負担を軽減することができる。
【0088】
また、振動のような速い動きに対しては、この力が振動伝達材52により下地板5から根太12へと伝達されるので、重量のある鋼材からなる根太12が下地板5と一体になって振動し、重量床衝撃音に対する遮音性能が向上する。
【0089】
次に、図27の振動伝達材52の別の例について図30を参照して説明する。図30は本実施形態の振動伝達材の別の例を説明するための図27と同様の図である。
【0090】
図30のように、振動伝達材54は、静的な荷重を一定以上伝達しないが、振動を伝達する履歴系ダンパーからなる。例えば、鉛や低降伏点鋼を用いた履歴系ダンパーを使用できる。図30の例は、履歴系ダンパーの中で鉛シートを用いたもので、振動伝達材(鉛シート)54は、一端部54aが下地板5の下面に接着等により接続され、他端部54bが根太12の内面底部に接着等により接続されている。
【0091】
鉛は、降伏点が低く、小さな荷重で塑性変形を生じ、静的な荷重に対しては、一定以上の力を伝達しないため、静的な荷重が伝達されにくく、また、振動を伝達する。
【0092】
図30の振動伝達材54によれば、図27と同様の作用効果を図28,図29のように得ることができ、床構造体Sの構造的な負担を軽減することができ、また重量床衝撃音に対する遮音性能が向上する。
【0093】
なお、図30では、説明の便宜上、支持脚1,1の間に根太12が単数配置された例を示したが、図27のように根太12が複数本配置された場合にも図30と同様の構成とすることができる。
【0094】
また、図30の履歴系ダンパーの代わりに、振動伝達材として摩擦ダンパーを配置してもよい。摩擦ダンパーは、摩擦係数により、伝達できる力が決まり、それ以上の力を伝達しないので、一定以上の静的な荷重が伝達されず、また、振動が伝達される。
【0095】
図35に摩擦ダンパーを下地板5の下面と根太12との間に配置した例を示す。図35のように、下地板5の下面から突き出るように摩擦部59を設け、その側面59aに根太12の側面12aが所定の面圧で接するように根太12を配置する。摩擦部59の側面59a及び根太12の側面12aの各摩擦面を適切に選ぶことで、一定以上の静的な荷重が伝達されずかつ振動が伝達されるようにできる。
【0096】
図35の摩擦ダンパーによれば、図27と同様の作用効果を図28,図29のように得ることができ、床構造体Sの構造的な負担を軽減することができ、また重量床衝撃音に対する遮音性能が向上する。
【0097】
次に、図26(a)〜(c)、図27の乾式二重床51の施工工程について図31,図32を参照して説明する。
【0098】
図31は、図26(a)〜(c)、図27の乾式二重床51の施工工程(a)(b)(c)を説明するための図である。図32は図31(b)のビス止め工程(a)(b)を説明するために図31(b)を側面からみた(図26(b)と同様の)図である。
【0099】
まず、図31(a)のように、両端部を根太支持材22で支持されるように鋼材からなる根太12,12を設置し、根太12の側面12aに、振動伝達材52であるブチルゴムを介して接続部53の木片を設置する。
【0100】
次に、図31(b)のように、支持脚1及び下地板5を設置し、下地板5と接続部53の木片とを、ビス止め位置Rで下向きにビスを差し込むことでビス止めする。このビス止め工程が終了したら、支持脚1によってレベル調整を行う。次に、図31(c)のように、床仕上材6を設置することで、本実施形態の乾式二重床51が完成する。
【0101】
また、図31(b)のビス止め工程は、下地板5をすべて設置してから行うのではなく、図32(a)のように、下地板5を部分的に設置した部分のビス止め位置Rで順次ビス止めすることにより、接続部53の木片の位置がわかるので、ビス止めの施工性が向上する。また、図32(b)のように、下地板5をさらに設置しても、図32(a)のビス止め位置Rを参考にしてビス止めを容易に行うことができるので、ビス止めの施工性が向上する。
【0102】
また、接続部53の木片の配置工程に関し、木片が短い場合、図33のように、下地板5を部分的に設置してから、接続部53の木片を根太12の側面に沿うようにして差し込んでもよい。
【0103】
次に、図27の根太と振動伝達材と接続部との別の配置例について図34(a)〜(d)を参照して説明する。図34は、図27の根太と振動伝達材と接続部との別の配置例(a)〜(d)を説明するための図27と同様の図である。
【0104】
図34(a)の配置例は、根太12内に固定された木片等からなる根太内部材56と、下地板5から根太12内に突き出た接続部53の木片との間にブチルゴム等からなる振動伝達材52を配置したものである。
【0105】
図34(b)の配置例は、根太12の内側面12bと、下地板5から根太12内に突き出た接続部53の木片との間にブチルゴム等からなる振動伝達材52を配置したものである。
【0106】
図34(c)の配置例は、図27の配置から一方の根太12を省略したもので、一本の根太12の側面12aと下地板5から突き出た接続部53の木片との間にブチルゴム等からなる振動伝達材52を配置したものである。
【0107】
図34(d)の配置例は、支持脚1,1の間に三本の根太12,12,12を配置し、中央の根太12に図34(a)と同様の構成で振動伝達材52を配置するとともに、中央の根太12と両脇の根太12とを各側面で接着したものである。これにより、根太の剛性と重量とを増すことができる。
【0108】
なお、図34(d)において、中央の根太12に図34(b)と同様の構成で振動伝達材52を配置するようにしてもよい。また、両脇の根太12のいずれか一方を省略した配置(二本の根太12を配置)としてもよい。
【0109】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、本実施形態では主に建物の改修の場合について本発明による遮音乾式二重床及びその施工方法を説明したが、これに限定されず、本発明は新築の建物にも適用できることはもちろんである。
【0110】
また、第1及び第2の実施形態では、横部材である根太12にC形断面を有するリップ溝形鋼材13を用いたが、これに限定されず、内部に空洞を有し一辺の少なくとも一部が開口した他の鋼材であってもよく、例えば、C形断面を有し軽量間仕切り等に使用される薄い鋼材や軽溝型鋼・溝型鋼などのような溝形断面を有する鋼材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 支持脚、防振支持脚
2 防振ゴム(防振部)
3 支持ボルト
5 下地板(床板部)
6 床仕上材
11 乾式二重床
12 根太(横部材)
13 リップ溝形鋼材
13a リップ部
14 木片
21 乾式二重床
22 根太支持材
23 下地板支持材
51 乾式二重床
52,54 振動伝達材
53 接続部
S 床構造体
H 仕上げ高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板部と、
前記床板部を床構造体から離間して直接支持するように配置され防振部を有する複数の支持脚と、
前記床板部の下部で前記支持脚とその隣の支持脚との間に設けられた横部材と、を備え、
前記横部材と前記床板部とを一体化させることで前記床板部の剛性を高めたことを特徴とする遮音乾式二重床。
【請求項2】
前記床板部のレベル調整のために前記支持脚がレベル調整機能を有することを特徴とする請求項1に記載の遮音乾式二重床。
【請求項3】
前記横部材を前記床構造体の端部側に配置された横部材支持材によって支持することを特徴とする請求項1または2に記載の遮音乾式二重床。
【請求項4】
前記横部材が内部に空洞を有し一辺の少なくとも一部が開口した鋼材から構成され、前記鋼材の空洞内に入れた接続片を用いて前記鋼材を前記床板部と一体化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の遮音乾式二重床。
【請求項5】
レベル調整機能を有する床板部支持材を前記横部材に載せることによって前記横部材の自重を前記床構造体の端部側に配置された前記横部材支持材で支持することを特徴とする請求項3に記載の遮音乾式二重床。
【請求項6】
前記横部材は、横部材重量を増すための重し手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の遮音乾式二重床。
【請求項7】
端部が横部材支持材で支持された横部材を床構造体の上に配置する工程と、
レベル調整機能を有する支持脚を前記床構造体に設置するとともに前記支持脚により前記床構造体から離間して床板部を設置する工程と、
前記支持脚のレベル調整機能により前記床板部のレベルを調整する工程と、
レベル調整機能を有する床板部支持材の長さを調整し前記床板部支持材を前記横部材に載せる工程と、
床仕上げ材を前記床板部の上に設置する工程と、を含むことを特徴とする遮音乾式二重床の施工方法。
【請求項8】
床板部と、
前記床板部を床構造体から離間して直接支持するように配置され防振部を有する複数の支持脚と、
前記床板部の下部で前記支持脚とその隣の支持脚との間に設けられた横部材と、を備え、
前記横部材を両端で支持し、前記横部材と前記床板部との間に静的荷重を伝達しにくくかつ振動を伝達しやすい振動伝達材を配置したことを特徴とする遮音乾式二重床。
【請求項9】
前記床板部の下面から突き出るように設けられた接続部を備え、
前記接続部と前記横部材との間に前記振動伝達材が位置することを特徴とする請求項8に記載の遮音乾式二重床。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate


【公開番号】特開2011−214385(P2011−214385A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199476(P2010−199476)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(390035208)株式会社東京興業貿易商会 (11)
【出願人】(393016837)株式会社桐井製作所 (29)
【Fターム(参考)】