説明

選択的水素化方法及び触媒

担体上に0.005〜0.2のPdを用いて促進された3〜15重量%のNiを含む、アセチレン類の選択的水素化のための担持型触媒。本触媒は、パラジウムを用いて促進されたニッケルを担体上に堆積することによって製造され、銅、銀、元素の周期表のIA族(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)並びにIIA族(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)及びB(Zn、Cd)からの1つ以上の随意の元素を含み、表(I)として特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のNiに基づく触媒を使用した、炭化水素流れからのアセチレン型化合物の選択的除去及び触媒の製造方法に関する。本方法は、本Niに基づく触媒の存在下で選択的水素化によって未精製混合オレフィン流れ中のMAPD(メチルアセチレン及びプロパジエン)及びアセチレンまたは未精製スチレン流れ中のフェニルアセチレンを取り除く際に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
アセチレン型不純物の例えばアセチレン、メチルアセチレン、ビニルアセチレン、エチルアセチレン、及び2−メチル−1−ブテン−3−エンは、例えば、オレフィン類の例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン及びイソプレンの製造において、様々な未精製混合C〜C流れ中に見い出される。こうしたアセチレン型不純物を、有用なオレフィン系材料、すなわち、エチレン、プロピレン、ブテン類、ブタジエン、イソプレン及びその他同様なものの最小の損失で除去する必要がある。
【0003】
例えば、1,3−ブタジエンは、様々なポリマーの例えばブタジエン−スチレンコポリマーの製造のために使用される重要な原料である。1,3−ブタジエンの製造方法のうちの1つは、石油フラクションの水蒸気分解による様々なオレフィン類の同時製造である。水蒸気分解装置から生じた未精製混合C流れを選択的に水素化して、Cアセチレン型化合物を部分的に除去する。選択的に水素化された流れは1,3−ブタジエン回収ユニットに送られ、ここで、溶媒抽出蒸留技術を使用して、1,3−ブタジエンを混合流れ中の成分の残りから分離する。溶媒抽出蒸留は稼働させるのに費用がかかり、エネルギー消費は大きい。
【0004】
1,3−ブタジエンの高い回収を伴う、流れ中のCアセチレン型化合物の完全な除去は、1,3−ブタジエンの生産費を低減し、ポリマー製造のための品質が特に優れた生成物を製造するために非常に望ましい。しかしながら、以前は、1,3−ブタジエンの過度の水素化による1,3−ブタジエンの許容不可能な程に高い損失無しに選択的水素化によって未精製混合流れ中のCアセチレン類を完全に除去することは技術的に不可能だった。従って、過度の水素化による1,3−ブタジエンの高い損失に対する代償を支払うこと無く品質が特に優れた1,3−ブタジエンを製造するために、高度に活性がありかつ選択的な触媒による改良された廉価な方法は非常に望ましい。
【0005】
工業的実施において精製のための好ましい技術は、水素化触媒上でのアセチレン型化合物の選択的水素化である。担持型Pd、Ni、Cu及びCo触媒は、アセチレン類の水素化のために有用であることが周知である(Handbook of Commercial Catalysts, pp. 105-138, Howard F. Rase, CRC Press, 2000)。アセチレン類の選択的水素化の以前の工業的利用において最も好ましい触媒は、パラジウムに基づく触媒の例えばアルミナのような担体上のPd、Pd/Pb、Pd/AgまたはPd/Au及びアルミナのような担体上の銅触媒である。Pd触媒は、他の金属触媒と比較して、高い活性及びより高い選択率が理由となって、最も好ましい触媒だった。
【0006】
しかしながら、パラジウムに基づく触媒は、過度の水素化による許容不可能な量の1,3−ブタジエンの損失無しにCアセチレン類を完全に除去するのに十分に選択的ではない。パラジウムに基づく触媒の別の固有の問題は、水素化を液相を用いて実行する場合、触媒表面のPd原子とビニルアセチレンとの反応による可溶のPd錯化合物の形成によるパラジウムの損失及び移動である。銀及び金を使用して、パラジウムの損失を最小にし、アセチレン型化合物の接触重合を低減してきた。
【0007】
銅に基づく触媒は、混合流れからの1,3−ブタジエンの回収率がパラジウムに基づく触媒と比較して非常に高いので非常に選択的である。パラジウムに基づく触媒と比較して銅触媒の活性は非常に低く、大きな体積の触媒及び大型の反応器が必要である。また、触媒上の重質炭素質材料の堆積は急速に起きるので、触媒の頻繁な再生は多数の反応器を必要とする。
【0008】
任意の形態のNi触媒は、アセチレン類及びジエン類の選択的水素化のための非常に活性がある触媒である。R. S. Mann et al. (Can. J. Chem. 46, p. 623, 1968)によれば、Ni及びNi−Cu合金触媒は、メチルアセチレンの水素化にとって有効である。触媒活性は、合金触媒中に最高25重量%まで銅をニッケルに加えるにつれて急速に増大する。プロピレンに対する選択率及び重合の程度は、合金中の銅が増大するにつれて増大する。ニッケルに基づく触媒は、オレフィン類及びジオレフィン類の混合水蒸気中のアセチレン型不純物の選択的水素化のための工業的な方法において使用されてきた。
【0009】
触媒の性能になされた最近の改良にもかかわらず、大量のオレフィン類の例えばプロピレン及びエチレンを製造するために選択率、活性及び触媒サイクル時間を改良するために、CまたはC混合オレフィン流れ中のアセチレン型化合物の選択的水素化に対するなおさらなる改良が希望されている。大量の商品の例えばプロピレンの工業的生産のために、MAPDからプロピレンへの選択率または触媒活性の小さな改良でさえも非常に望ましい。
【発明の開示】
【0010】
簡潔に述べると、本触媒は、スピネル型構造を有するMAl(式中、Mは任意の二価陽イオンである)の混合酸化物を含む酸化アルミニウム担体上に促進量のPdと共に堆積されたNiを含み、担体上に好ましくは0.005〜0.2のPdを用いて促進された3〜15重量%のNiを含む、アセチレン類の選択的水素化のための担持型触媒である。本触媒は、パラジウムを用いて促進されたニッケルを担体上に堆積することによって製造され、銅、銀、元素の周期表のIA族(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)並びにIIA族(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)及びB(Zn、Cd)からの1つ以上の随意の元素を含み、以下のものとして特徴付けられる:
【0011】
【表1】

【0012】
ここで、活性成分の重量%は、活性成分及び担体の総重量を基準としている。
促進量のPdは、存在するNiの10%未満の量を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本触媒は、C〜C12オレフィン類、ジオレフィン類及びスチレンの様々な混合流れ中のアセチレン型不純物を除去するための選択的水素化、及びベンゼンからシクロヘキサンへの水素化のような水素化反応のために有用である。炭化水素供給物流れと水素ガスとの混合物を1つの触媒反応帯域または直列の2つの触媒反応帯域を通過させることで、アセチレン型化合物の選択的水素化のような水素化反応を実行する。触媒反応帯域は、1つの触媒または幾つかの異なる触媒を含んでよい。選択的水素化を直列の2つの触媒反応帯域中で実行する場合、所望により、第2の反応帯域中の触媒は、助触媒及び調整剤としてのCuを含んでよい。第2の触媒反応帯域中のCuを用いて促進されたニッケル触媒に対する有機メルカプタン類及び有機水銀化合物の毒作用効果は、第1の触媒反応帯域中で中和される。第1の触媒反応帯域中の触媒の部分は、有毒な不純物に対する保護床として犠牲にされる。本発明において水素化方法に対して行われる改良は、従来のニッケル触媒または従来のパラジウムに基づく触媒に基づく方法よりも、有用な材料の例えばモノオレフィン類、ジオレフィン類、または両方の高い選択率または高い回収率である。混合未精製ブタジエン流れ中のCアセチレン型不純物を選択的水素化によって完全に除去し、これは従来技術のニッケル触媒よりも本方法において1,3−ブタジエンの高い回収を伴う。従って、本発明は、2つの抽出蒸留塔のうちの1つを無くすことを可能にし、混合流れからの1,3−ブタジエンのより簡易でより廉価な分離をもたらす。
【0014】
本触媒は、選択的水素化によって未精製混合C〜Cオレフィン流れ中のMAPDまたはアセチレン及び未精製スチレン流れ中のフェニルアセチレンを除去するために特に有用である。メチルアセチレン/プロパジエン(MAPD)は1種の化合物ではなく、次の通り表すことができる複数の不安定な化合物であるメチルアセチレン及びプロパジエンを包含する:
【0015】
【化1】

【0016】
改良は、担体上に、パラジウム、好ましくは銅を用いて促進されたNiを堆積することによって行われる。本触媒は、I族及びII族、例えばAg、Ca、Mg等からの1つ以上の随意の元素を含んでよい。銀を随意の成分として使用する場合、銀を以下の方法のいずれかにおいて担体上に堆積する;ニッケルの堆積よりも前の堆積または後の堆積、ニッケルとの同時堆積、こうしたもののうちの2つまたは全ての組合せ。活性金属成分Ni、Cu、Pd及びAgの堆積の前に、Ag以外の随意の成分をアルミナ上に堆積する。担体上のNiの堆積は、任意の方法において単一のまたは多数の含浸を実行することによって実行できる。
【0017】
好ましい触媒は、担体上に堆積した3〜15重量%のNi、0.005〜0.2のPd、0.0〜1重量%の銅、0.0〜10重量%のAg、0〜1.5のIA族の少なくとも1つの構成員並びに0.0〜25重量%のIIA及びIIB族の少なくとも1つの構成員からなる群から選択され、より好ましくは担体上に堆積した4〜11重量%のNi、0.01〜0.1のPd、0.01〜0.6重量%の銅、0.0〜5重量%のAg、0.0〜1.5のIA族の少なくとも1つの構成員並びに0.1〜5重量%のIIA及びIIB族の少なくとも1つの構成員からなる群から選択される、アセチレン類の選択的水素化のための担持型触媒である。
【0018】
好ましい担体は、BET表面積約10〜100m/g、好ましくは約12〜75m/gを有しよう。このような担体の例は、アルミナ、シリカ、ベータ−炭化ケイ素、炭素、混合金属酸化物、セラミックス、塔充填のための様々な構造化材料等である。好ましいアルミナは、温度約1000〜1250℃でか焼することによって製造される。好ましい成形済み担体の直径は、0.2mm〜3mm、好ましくは0.4〜2.5mm、最も好ましくは0.7mm〜1.5mmである。好ましいアルミナは、アルファ、シータ、デルタ−アルミナまたはこうしたものの混合物であり、好ましくは10〜約75m/gのBET表面積を有する。追加の随意の元素は、周期表におけるI及びII族からの任意の元素である。
【0019】
好ましい担体は、スピネル型構造を有するMAl(式中、Mは任意の二価陽イオンの例えばMg、Ca、Zn、Ni、Co、Cu、Mn等である)の混合酸化物を含む酸化アルミニウムである。また、混合酸化物中の最高30%までのアルミニウムを、GaまたはInで置き換えることができる。酸化アルミニウム担体中のスピネルの含量は、任意の量とすることができるが、好ましくは0.1%〜50%、最も好ましくは0.2%〜20%である。
【0020】
随意の元素を含む触媒を、アルミナ担体を用いて製造する場合、II族からの1つ以上の元素を好ましくはガンマまたはイータ−アルミナ上に堆積し、次に約900〜1250℃でか焼して、スピネル含有アルミナ担体を製造する。また、他の二価イオンの例えば銅、ニッケルまたは銅−ニッケルスピネル含有アルミナ担体を同様に製造できる。
【0021】
選択的水素化は、本発明の範囲内の様々な組成を有するかまたは本発明における触媒及び他のNiに基づく触媒若しくはパラジウムに基づく触媒の組合せである1つまたは2つの触媒の存在下で、任意の物理的装置中で実行することができる。このような装置の例は、固定床反応器、接触蒸留反応器、沸点反応器、抽出蒸留反応器、分割壁蒸留反応器、移動床反応器、撹拌槽反応器、及び灌液充填塔式反応器である。こうした物理的装置のうちの2つまたは3つの組合せを、多工程選択的水素化のために使用できる。例えば、第1の反応帯域としての接触蒸留塔反応器または抽出蒸留塔反応器中で、未精製供給物流れを部分的に水素化して、アセチレン型化合物を除去してよい。第2の反応帯域としての固定床反応器中で、第1の反応帯域から生じた反応生成物流れをさらに水素化して、残りのアセチレン型化合物を除去してよい。
【0022】
一般に、触媒は使用中に徐々に失活する。部分的に失活した触媒を、水素の存在下でまたは無い状態で、約170〜600°F、好ましくは200〜400°Fで溶媒を用いて洗浄することによって処理して、触媒活性を回復する。触媒洗浄のための適切な溶媒の例は、エーテル類、炭化水素、有機カーボネート及びケトン類、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、フルフラール、ガンマ−ブチロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、アルキルニトリル類、アミド類、メチルピロリジノン、ホルミルモルホリン、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等である。
【0023】
固定床の稼働の場合、溶媒を反応器に炭化水素供給物流れ及び水素と一緒に供給する。所望により溶媒を時々反応器に炭化水素供給物と同時供給する。溶媒を再循環のために反応器流出液流れから回収する。さらに別の選択肢は、炭化水素供給物を中断させた後、温度約100〜450°F及び雰囲気〜約350psigの圧力下で、洗浄温度及び選択した溶媒の性質に依存して少量の水素の存在下でまたは水素の無い状態で優先的に、触媒を溶媒を用いて洗浄することである。所望により、洗浄した触媒に、温度約170〜約800°Fで、水素ガスの流れ中、雰囲気〜約350psigの圧力下で洗浄後熱処理を施してよい。
【0024】
選択的水素化のための抽出または接触蒸留の稼働の場合、オーバーヘッド生成物流れの還流が無いかまたは最小の還流で、触媒床よりも上の位置でまたは触媒反応帯域の中央の位置で溶媒を塔中に導入する。溶媒を、再循環のために、底部流れから回収するかまた塔の下部区画から生じた側流抜き出しによって回収する。溶媒を用いた触媒洗浄は、連続的または時々とすることができる。
【0025】
触媒性能の評価は、アセチレン型化合物の所定の転化での、または特定の生成物の条件に適合することが必要な転化での、所定の原料の場合の所望の生成物の回収を比較することによって実行される。例えば、未精製混合Cオレフィン供給物流れ中のアセチレン型化合物を選択的に水素化する場合、プロピレンは生成物流れから回収すべき所望の生成物である。以下の数式はプロピレンの回収率を定義する。
【0026】
プロピレンの回収率(%)=N×100/N
=供給物流れ中のプロピレンのモル、N=生成物流れ中のプロピレンのモル
MAPDは選択的水素化によってプロピレンに転化できるので、プロピレンの回収率は100モル%よりも大きくなり得る。
【0027】
MAPDの選択率は以下の式によって定義される。
選択率=(N−N)×100/(M−M
式中、M=生成物流れ中のMAPDのモル、M=供給物流れ中のMAPDのモル。MAPDの選択率は、プロピレンからプロパンへの過度の水素化によってMAPDの転化と共に減少することに注意されたい。
【実施例】
【0028】
対照実施例1(従来のPdに基づく触媒)
アルファ−アルミナ(2.5mmの球)上に担持された市販のエッグシェルタイプPd触媒を使用して、選択的水素化によって混合C流れ中のMAPDを除去した。40グラムの触媒を、垂直設置アップフローステンレス固定床反応器(直径1インチ×長さ20インチ)中に装填した。触媒帯域の各端部に2つの熱電対を取り付けて、反応器温度を制御する。水素を350cc/分で2時間通過させることによって、触媒を220°Fで活性化した。C供給物流れ中のMAPD不純物の選択的水素化を、固定した流量4.5ml/min及び水素流量20〜110sccm/minで380psigの総反応器圧力下で実行した。供給物は、2.01重量%のプロピン、0.57重量%のプロパジエン、95.19重量%のプロピレン等で構成された。水素化の発熱による熱が理由となって、触媒床の端部での温度は触媒床の始めを超えた。水素化の温度は触媒床の端部で120〜135°Fであり、触媒床の始めでは約80°Fだった。試験結果を表1に列記する。最高のMAPD転化での生成物中の平均MAPD含量は、8重量ppmのプロピンであり、MAPDからプロピレンへの43.8モル%の平均選択率を有した。
対照実施例2(従来のPd触媒)
アルファ−アルミナ(3×3mmのペレット)上に担持された別の市販のエッグシェルタイプ触媒(0.3重量%)を使用して、選択的水素化によって、対照実施例1において使用したのと同じ供給物中のMAPDを除去した。40グラムの触媒を、対照実施例1において使用したのと同じ反応器中に装填した。触媒を、対照実施例1と同一の仕方で活性化した。対照実施例1において使用したのと同じ供給物中のMAPD不純物の選択的水素化を、一定流量4.5ml/min及び水素流量60〜111sccm/minで380psigの総反応器圧力下で実行した。水素化の温度は触媒床の端部で約135°Fであり、触媒床の始めでは68〜70°Fだった。試験結果を表1に列記する。触媒の性能は、対照実施例1におけるパラジウム触媒より劣った。最高のMAPD転化での生成物中の平均MAPD含量は、57重量ppmのMAPDであり、MAPDからプロピレンへの34.7モル%の平均選択率を有した。
対照実施例3(非発明のNiに基づく触媒)
遷移アルミナ上に担持されたNi触媒を製造した。ガンマアルミナトリロープ(trilope)押出物(直径1.3mm)を、約1000℃で3時間、空気中でか焼した。300gの水中に183.6gのNi(NO.6HOを溶解させることで、硝酸ニッケルの溶液を作製した。300グラムのか焼したアルミナ担体を回転式含浸装置中に置き、次に、硝酸ニッケル溶液を、回転式含浸装置中の転がるアルミナ押出物担体上に注いだ。15分の低温ローリングの後、高温の空気を回転乾燥機中に吹き込むことによって、回転式含浸装置中の内容物を約200℃で乾燥した。乾燥した生成物を380℃で2時間か焼した。この触媒を製造するのに使用した硝酸ニッケルの量に基づいて、完成した触媒は、アルミナ担体上に11重量%のNiを有すると思われる。完成した触媒の物理的性質の測定は、133m/gのBET表面積、総窒素吸着細孔容積0.669cc/g及び平均細孔直径18.6nmを示した。
【0029】
40グラムの触媒を、対照実施例1において使用したのと同じ反応器中に装填した。250°Fで窒素中の33体積%の水素のガス混合物の300sccm/minの流れ中で1.5時間、次に350cc/分の純水素ガスを通過させることによって各々670°F及び770°Fで3時間、触媒を活性化した。対照実施例1において使用したのと同じ供給物中のMAPD不純物の選択的水素化を、一定流量4.5ml/min及び水素流量20〜95sccm/minで380psigの総反応器圧力下で実行した。水素化の温度は触媒床の端部で120〜123°Fであり、触媒床の始めでは75°〜85°Fだった。試験結果を表1に列記する。このニッケル触媒は、対照実施例1及び2における触媒と比較して注目すべき性能を示す。MAPDの転化は100%だった。MAPDからプロピレンへの選択率は48.3m%だった。
実施例4(発明)
この実施例は、ニッケルスピネル含有アルミナ担体上に担持され銅及びパラジウムを用いて促進されたニッケルに基づく触媒の製造手法を証明する。二重含浸手法を使用した。
【0030】
対照実施例3において使用したガンマ−アルミナ(直径1.3mmのトリロープ押出物)担体を、1100℃、空気中で3時間か焼した。か焼したアルミナは、96.6m/gのBET表面積、総窒素吸着細孔容積0.622cc/g及び平均細孔直径27.7nmを有した。しかしながら、このか焼したアルミナは、ニッケル触媒を製造するために使用しなかった。ニッケルスピネル含有アルミナ担体を製造するために、1重量%のニッケルをガンマ−アルミナ上に堆積し、次に1100℃で3時間、空気中でか焼した。スピネル含有のか焼したアルミナは、26m/gのBET、総窒素細孔容積0.167cc/g及び平均細孔直径25.2nmを有した。この材料を使用して、ニッケルに基づく触媒を次の通り製造した。
【0031】
300gの水中に106gのNi(NO.6HO及び4.5gのCu(NO.2.5HOを溶解させることで、硝酸ニッケル及び硝酸銅の混合溶液を作製した。300グラムのか焼したニッケルスピネル含有アルミナ担体を回転式含浸装置中に置き、次に、混合溶液を、回転式含浸装置中の転がる押出物担体上に注いだ。15分の低温ローリングの後、高温の空気を回転式含浸装置中に吹き込むことによって、回転式含浸装置中の内容物を約200℃で乾燥した。乾燥した生成物を350℃で2時間か焼した。300グラムの水中に60gのNi(NO.6HO、2.54gのCu(NO.2.5HO及び0.74gのPd(NO.xHO(42.8%のPd)を溶解させることで、硝酸ニッケル、硝酸銅及び硝酸パラジウムの別の混合溶液を作製した。第2の含浸を、この混合溶液を用いて第1の含浸生成物上に第1の含浸と同様に実行した。含浸生成物を380℃で2時間か焼した。この触媒を製造するために2つの含浸において使用した材料の量に基づいて、完成した触媒は、9.98重量%のNi、0.57重量%のCu及び0.094重量%のPdを有すると思われる。
【0032】
40グラムのこの触媒を、対照実施例1において使用したのと同じ反応器中に装填した。触媒を、実施例4と同一の仕方で活性化した。対照実施例1において使用したのと同じ供給物中のMAPD不純物の選択的水素化を、与えられた一定炭化水素供給物流量4.5ml/min及び水素流量20〜95sccm/minで380psigの総反応器圧力下で実行した。水素化の温度は触媒床の端部で119〜121°Fであり、触媒床の始めでは75°〜83°Fだった。試験結果を表1に列記する。MAPDの転化は100%であり、MAPDからプロピレンへの76.4m%の選択率を有した。
実施例5(発明)
この実施例は、ニッケルスピネル含有アルミナ担体上に担持され銅及びパラジウムを用いて促進されたニッケルに基づく触媒の製造手法を証明する。二重含浸手法を使用した。
【0033】
ニッケルスピネル含有アルミナ担体を製造するために、1重量%のニッケルを、対照実施例3において使用したガンマ−アルミナ上に堆積し、次に1125℃で3時間、空気中でか焼した。スピネル含有のか焼したアルミナの物理的性質は、24.4m/gのBET、総窒素吸着細孔容積0.145cc/g及び平均細孔直径23.7nmだった。この材料を使用して、ニッケルに基づく触媒を製造した。300グラムの水中に127.2gのNi(NO.6HO及び5.41gのCu(NO)2.2.5HOを溶解させることで、硝酸ニッケル及び硝酸銅の混合溶液を作製した。300グラムのか焼したニッケルスピネル含有アルミナ担体を回転式含浸装置中に置き、次に、混合溶液を、回転式含浸装置中の転がる押出物担体上に注いだ。15分の低温ローリングの後、高温の空気を回転式含浸装置中に吹き込むことによって、回転式含浸装置中の内容物を約200℃で乾燥した。乾燥した生成物を350℃で2時間か焼した。300gの水中に38.8gのNi(NO.6HO、1.63gのCu(NO.2.5HO及び0.44gのPd(NO.xHO(42.8%のPd)を溶解させることで、硝酸ニッケル、硝酸銅及び硝酸パラジウムの別の混合溶液を作製した。第2の含浸を、この混合溶液を用いて第1の含浸生成物上に第1の含浸と同様に実行した。含浸生成物を380℃で2時間か焼した。この触媒を製造するために2つの含浸において使用した材料の量に基づいて、完成した触媒は、9.99重量%のNi、0.57重量%のCu及び0.056重量%のPdを有すると思われる。
【0034】
50グラムのこの触媒を、対照実施例1において使用したのと同じ反応器中に装填した。触媒を、実施例4と同一の仕方で活性化した。対照実施例1において使用したのと同じ供給物中のMAPD不純物の選択的水素化を、与えられた一定炭化水素供給物流量4.5ml/min及び水素流量30〜105sccm/minで380psigの総反応器圧力下で実行した。水素化の温度は触媒床の端部で約119〜約129°Fであり、触媒床の始めでは約77〜約81°Fだった。試験結果を表1に列記する。この触媒の性能は、対照実施例1、2及び3における触媒より優れていた。MAPDの転化は100%であり、MAPDからプロピレンへの64.8m%の選択率を有した。
実施例6(発明)
この実施例は、ニッケルスピネル含有アルミナ担体上に担持され銅及びパラジウムを用いて促進されたニッケルに基づく触媒の製造手法を証明する。単一含浸を実行した。
【0035】
ニッケルスピネル含有アルミナ担体を製造するために、1重量%のニッケルを、対照実施例3において使用したガンマ−アルミナ上に堆積し、次に1150℃で3時間、空気中でか焼した。スピネル含有のか焼したアルミナは、16.8m/gのBET、総窒素吸着細孔容積0.09cc/g及び平均細孔直径21.1nmを有した。XRDは、約95%のアルファ−アルミナ、約5%のデルタ及び微量のシータを示す。この材料を使用して、ニッケル触媒を次の通り製造した。305gの水中に166gのNi(NO.6HO、7.04gのCu(NO.2.5HO及び0.74gのPd(NO.xHO(42.8%のPd)を溶解させることで、硝酸ニッケル、硝酸銅及び硝酸パラジウムの混合溶液を作製した。300グラムのか焼したニッケルスピネル含有アルミナ担体を回転式含浸装置中に置き、次に、混合溶液を、回転式含浸装置中の転がるアルミナ押出物担体上に注いだ。15分の低温ローリングの後、高温の空気を回転式含浸装置中に吹き込むことによって、回転式含浸装置中の内容物を約200℃で乾燥した。乾燥した生成物を370℃で2時間か焼した。この触媒を製造するために2つの含浸において使用した材料の量に基づいて、完成した触媒は、9.98重量%のNi、0.57重量%のCu及び0.094重量%のPdを有すると思われる。完成した触媒は、9.4m/gのBET、総窒素吸着細孔容積0.035cc/g及び平均細孔直径14.8nmを有した。触媒の分析は、以下の組成;10.4重量%のNi、0.55重量%のCu及び0.074重量%のPdを示す。
【0036】
40グラムのこの触媒を、対照実施例1において使用したのと同じ反応器中に装填した。触媒を、実施例4と同一の仕方で活性化した。対照実施例1において使用したのと同じ供給物中のMAPD不純物の選択的水素化を、与えられた一定炭化水素供給物流量4.5ml/min及び水素流量20〜105sccm/minで380psigの総反応器圧力下で実行した。水素化の温度は触媒床の端部で約118〜133°Fであり、触媒床の始めでは70°〜80°Fだった。試験結果を表1に列記する。この触媒の性能は、対照実施例1、2及び3における触媒より優れていた。最高のMAPD転化での生成物中の平均MAPD含量は、5重量ppmのプロピレンであり、MAPDからプロピレンへの53.6モル%の平均選択率を有した。
実施例7(発明)
この実施例は、マグネシウム−スピネルアルミナ上に担持され銅及びパラジウムを用いて促進されたニッケルに基づく触媒の製造手法を証明する。
【0037】
物理的性質が145m/gのBET表面積、0.925cc/gの総窒素細孔容積及び21.6nmの平均細孔直径である球状ガンマ−アルミナ(1.64mmの球)を使用して、マグネシウム−スピネルアルミナを製造した。320グラムの水中に6グラムのMg(NO3)2.6H2Oを溶解させることで、硝酸マグネシウム溶液を作製した。300グラムのガンマ−アルミナに、この硝酸マグネシウム溶液を含浸させた。含浸したアルミナを約200℃で2時間乾燥した後、乾燥した生成物を1100℃で3時間、次に1150℃で2時間空気中でか焼して、マグネシウム−スピネル/アルミナ担体を製造した。担体は、60.4m/gのBET表面積、総窒素細孔容積0.548cc/g及び平均細孔直径37.3nmを有した。
【0038】
300グラムの水中に9681グラムのNi(NO3)2.6H2O及び4.11グラムのCu(NO3)2.2.5H2Oを溶解させることで、硝酸ニッケル及び硝酸銅の混合溶液を作製した。274グラムのマグネシウム−スピネル/アルミナを回転式含浸装置中に置き、次に、混合溶液を担体上に注いだ。10分の低温ローリングの後、高温の空気を回転式含浸装置中に吹き込むことによって、含浸装置中の内容物を約200℃で乾燥した。乾燥した生成物を350℃で2時間か焼した。300グラムの水中に54.8グラムのNi(NO.6HO、2.32グラムのCu(NO.2.5HO及び0.66グラムのPd(NO.xHO(42.8重量%のPd)を溶解させることで、硝酸ニッケル、硝酸銅及び硝酸パラジウムの別の混合溶液を作製した。第2の混合溶液を用いた第1の含浸生成物の第2の含浸を同様に実行した。乾燥した含浸生成物を380℃で2時間か焼した。この触媒を製造するために使用した材料に基づいて、担体上の活性金属組成は、9.96重量%のNi、0.57重量%のCu及び0.09重量%のPdだった。完成した触媒は、59.3M/gのBET表面積、総窒素細孔容積0.457cc/g及び平均細孔直径31.8nmを有した。
【0039】
40グラムのこの触媒を、対照実施例1において使用したのと同じ反応器中に装填した。触媒を、対照実施例3と同一の仕方で活性化した。対照実施例1において使用したのと同じ供給物中のMAPD不純物の選択的水素化を、与えられた一定炭化水素供給物流量4.5ml/min及び水素流量50〜80sccm/minで380psigの総反応器圧力下で実行した。水素化の温度は触媒床の端部で120〜125°Fであり、触媒床の始めでは88〜92°Fだった。試験結果を表1に列記する。この触媒の性能は、対照実施例1、2及び3における触媒より優れていた。MAPDの転化は100%であり、MAPDからプロピレンへの62.8in%の選択率を有した。
【0040】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピネル型構造を有するMAl(式中、Mは任意の二価陽イオンである)の混合酸化物を含む酸化アルミニウム担体上に促進量のPdと共に堆積され、Pdによって促進されたNiを含む、アセチレン類の選択的水素化のための触媒。
【請求項2】
前記担体は、BET表面積約10〜100m/gを有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記担体は、BET表面積約12〜75m/gを有する、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記担体は、温度約900〜1250℃でか焼することによって製造されたアルミナを含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記担体は、ガンマまたはイータ−アルミナを含む、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
0.005〜0.2重量%のPdを用いて促進された3〜15重量%のNiを含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
前記担体は、BET表面積約10〜100m/gを有する、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記担体は、BET表面積約12〜75m/gを有する、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
前記担体は、温度約900〜1250℃でか焼することによって製造されたアルミナを含む、請求項6に記載の触媒。
【請求項10】
前記担体は、ガンマまたはイータ−アルミナを含む、請求項9に記載の触媒。
【請求項11】
3〜15重量%のNi、0.005〜0.2重量%のPd、0.0〜1重量%の銅、0.0〜10重量%のAg、0〜1.5重量%のIA族の少なくとも1つの構成員並びに0.0〜25重量%のIIA及びIIB族の少なくとも1つの構成員からなる群から選択される、請求項1に記載の触媒。
【請求項12】
前記担体は、BET表面積約10〜100m/gを有する、請求項11に記載の触媒。
【請求項13】
前記担体は、BET表面積約12〜75m/gを有する、請求項12に記載の触媒。
【請求項14】
前記担体は、温度約900〜1250℃でか焼することによって製造されたアルミナを含む、請求項11に記載の触媒。
【請求項15】
前記担体は、ガンマまたはイータ−アルミナを含む、請求項14に記載の触媒。
【請求項16】
担体上に堆積した4〜11重量%のNi、0.01〜0.1重量%のPd、0.01〜0.6重量%の銅、0.0〜5重量%のAg、0.0〜1.5重量%のIA族の少なくとも1つの構成員並びに0.1〜5重量%のIIA及びIIB族の少なくとも1つの構成員からなる群から選択される、請求項11に記載の触媒。
【請求項17】
前記担体は、BET表面積約10〜100m/gを有する、請求項16に記載の触媒。
【請求項18】
前記担体は、BET表面積約12〜75m/gを有する、請求項17に記載の触媒。
【請求項19】
前記担体は、温度約900〜1250℃でか焼することによって製造されたアルミナを含む、請求項16に記載の触媒。
【請求項20】
前記担体は、ガンマまたはイータ−アルミナを含む、請求項19に記載の触媒。
【請求項21】
アセチレン型化合物を選択的に水素化する方法であって、水素の存在下で、前記アセチレン型化合物を、前記アセチレン型化合物よりも少ない不飽和を有する対応する化合物に少なくとも部分的に水素化する温度及び圧力の条件下で、前記アセチレン型化合物を、請求項1、6、11または16に記載の触媒と接触させることを含む、方法。

【公表番号】特表2008−516765(P2008−516765A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537874(P2007−537874)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/025606
【国際公開番号】WO2006/044005
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(599003073)キャタリティック・ディスティレイション・テクノロジーズ (28)
【Fターム(参考)】