説明

選択的水素化触媒

酸化物担体上の触媒、及びこれら触媒を使用した、不飽和化合物を含む炭化水素流中の不飽和化合物を選択的に水素化するための方法が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体材料上に元素周期表の第VIII族の金属を含む水素化触媒に関し、及びこれら触媒を使用して、不飽和化合物を、これらを含む炭化水素流中で選択的に水素化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精製所及び石油化学プラントでは、大きな規模で炭化水素流が得られ、貯蔵され、そして加工(処理)される。これら炭化水素流中では、不飽和化合物がしばしば存在し、不飽和化合物の存在は、特に、加工及び/又は貯蔵の過程において問題をもたらすことが良く知られており、又は不飽和化合物は、価値のある所望の製造物ではなく、そして従って、対応する炭化水素流の望ましくない化合物である。
【0003】
一般的に、C3流中で水素化されるべき化合物は、プロピン(メチルアセチレン、MA)及びプロパジエン(アレン、PD)である。
【0004】
C4流中では、1,3−ブタジエンが価値のある製造物であり得る。この場合、1,3−ブタジエンが抽出され、そして残っているC4カット、ラフィネートIは、選択的水素化(該選択的水素化でブタジエンがブテンに選択的に水素化される)によって微量のブタジエン(butadiene trace)を除去しなければならない。
【0005】
しかしながら、純粋なブタジエンを取扱うことがなく、ブテンの高い需要がある場合、流れ分解器(streamcracker)の粗製C4流から1,3−ブタジエンが高い割合で選択的にブテンに水素化され得る。更に、この粗製C4カットから、1,2−ブタジエン、ブテニン(butenyne)(ビニルアセチレン)、ブチン(butyne)(エチルアセチレン)、及び蒸留によって除去されなかった微量のプロパジエンが水素化され得る。
【0006】
後のいくつかの所定の工程(例えば、エテンと複分解させてプロペンにする)のために、2−ブテンが高含有量であることが必要とされる。反応温度において、2−ブテンは1−ブテンに対して、熱力学的に明確に優先性を有しているので、水素化において、通常2−ブテンが過剰に得られる。しかしながら、1−ブテンが価値ある製造物の場合、従って、1−ブテンを主として得るために特殊な触媒が必要とされる。
【0007】
従って、通常、炭化水素流からエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1,3−ブタジエン、芳香族化合物又はキャブレター燃料等の所望の製造物を、必要な品質で得るために、三重結合を有する不飽和化合物(アルキレン)、及び/又は二重結合を有する不飽和化合物(ジエン)、及び/又は2重以上の結合を有する不飽和化合物(ポリエン、アレン、アルキネン)及び/又は1種以上の不飽和置換基を有する芳香族化合物(フェニルアルケン及びフェニルアルキン)を除去することが必要とされる。しかしながら、全ての不飽和化合物が、常に対象となっている炭化水素流から除去すべき望ましくない成分であるわけではない。例えば、1,3−ブタジエンは、既に上述したように、適用(処理:application)に応じて望ましくない第2の成分になるか、又は価値ある所望の製造物となる。
【0008】
望ましくない不飽和化合物は、対応する炭化水素流中の望ましくない不飽和化合物を部分的に又は全てを、好ましくは、問題の発生しない、より高度に飽和した化合物へ選択的に水素化することにより、及びより好ましくは、価値ある製造物を構成する炭化水素流の成分へ選択的に水素化することにより、これらを含む炭化水素流からしばしば除去される。例えば、C3流中のプロピン及びプロパジエンはプロペンに水素化され、そして、C4流中のブチンはブテンに、ビニルアセチレンは1,3−ブタジエンに、及び/又は1,3−ブタジエンはブテンに水素化される。
【0009】
一般的に、このような望ましくない化合物は、残留含有量が数質量ppmになるまで除去されなければならない。しかしながら、所望の価値ある製造物よりも高度に飽和した化合物への(「過」)水素化、及び/又は1種以上の複合的な結合を含む価値ある製造物のより高度に又は完全に飽和した対応する化合物への平行水素化(parallel hydrogenation)は、これに関連して価値を損失することになるので、可能な限り回避するべきである。望ましくない不飽和化合物の水素化の選択性は、従って、可能な限り高くなければならない。更に、通常、触媒の充分に高い活性と長い寿命が望まれる。同時に、触媒は、望ましくない如何なる副反応も可能な限り発生させるべきではない。例えば、1−ブテンが価値ある製造物である場合には、1−ブテンの2−ブテンへの二重結合異性体化の触媒が回避されるべきである。
【0010】
一般的に、担持された貴金属触媒(該貴金属触媒は、貴金属が触媒担体上に析出したものである)が水素化のために使用される。貴金属として、パラジウムがしばしば使用され、そして担体は、通常、多孔性無機酸化物、例えば、シリカ含有土類、アルミニウムシリケート、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、亜鉛アルミネート、亜鉛チタネート、及び/又はこのような担体の混合物である。通常、担体材料はアルミナである。
【0011】
特許文献1(EP0992284A2)には、炭化水素流中の不飽和化合物の選択的な水素化のための触媒が記載されており、該触媒は、所定のAl23担体上の貴金属又は貴金属化合物から成り、この触媒は、特定のx線回折パターンによって明確化(define)されている。このx線回折パターンは、主に担体によって決定される。
【0012】
特許文献2(DE3119850A1)には、少なくとも4個の炭素原子を有する(αオレフィンを含む)炭化水素混合物中のジオレフィンを選択的に水素化するための方法が記載されており、該方法では、パラジウム又はパラジウム化合物及び銀又は銀化合物を同時に含む触媒が使用されており、そして、触媒のパラジウム含有量は、0.05−0.5質量%で、及び銀の含有量は0.05−1質量%である。
【0013】
特許文献3(EP780155A1)には、選択的水素化触媒が記載されており、該文献では、α−変性(modification)の状態のアルミナが担体材料として使用されている。担持された触媒は、水素化活性な金属、パラジウム及び銀で被覆されており、パラジウムの含有量は、0.01−0.5質量%、及び銀の含有量は、0.001−0.1質量%である。触媒の金属粒子の少なくとも30%が、パラジウム及び/又は銀である。パラジウムの銀に対する割合は、0.33−2.50である。更に、パラジウムと銀の80%が、断面で0.2r(半径)未満の厚さに存在している。
【0014】
特許文献4(EP0686615A1)は、担持された触媒に関するもので、該担持された触媒は、担体材料としてα−アルミナを含み、そして、水素化活性材料としてパラジウムと銀を含んでいる。パラジウムの含有量は、0.01−0.5質量%で、そして銀の含有量は、0.001−0.02質量%である。パラジウムと銀の80%が、断面で0.2r(半径)未満の厚さに存在しており、パラジウムの銀に対する割合は2.50−20である。
【0015】
特許文献5(US4404124)は、担持された触媒に関するもので、該担持された触媒は、担体材料としてα−アルミナを含み、そして、水素化活性材料としてパラジウムと銀を含んでいる。パラジウムの含有量は、0.01−0.25質量%で、そして銀の含有量は、0.002−0.05質量%である。そして、結果として、パラジウムの銀に対する割合が0.5未満になっている。更に、パラジウムは、触媒材料のシェル(shell)に300μmまで存在しており、一方、銀は、少なくとも90%が触媒ペレットの触媒材料の全断面にわたって存在している。
【0016】
特許文献6(US2002/0165092A1)は、アルミナからなる担持された触媒に関するもので、該担持された触媒は、水素化用金属としてパラジウムと銀を含んでいる。パラジウム含有量は、0.002−1.0質量%である。この結果、パラジウムの銀に対する割合は、1−20になっている。銀とパラジウムは、断面(profile)内で均一に存在しており、断面内への浸入深さは300μm以上である。好ましい実施の形態では、パラジウムと銀の浸入深さは500と1000μmの間である。
【0017】
公知の触媒は、オレフィンの選択性が非常に低く、及びグリーンオイルの生成が著しいという不利な点を有している。ここで、オレフィンの選択性については、Δオレフィン/Δアルキン比が該当する。
【0018】
【特許文献1】EP0992284A2
【特許文献2】DE3119850A1
【特許文献3】EP780155A1
【特許文献4】EP0686615A1
【特許文献5】US4404124
【特許文献6】US2002/0165092A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
触媒の需要、及び(不飽和化合物を含む炭化水素流中の)望ましくない不飽和化合物を選択的に水素化する方法の需要は、水素化の後の望ましくない不飽和化合物の残留含有量の低減と選択性の上昇に関連して、常に増してきている。しかしながら、公知の方法と触媒は、非常に高い技術レベルで作動し、これらは、上昇する需要の観点から、なお不十分なものである。従って、本発明の目的は、不飽和化合物を含む炭化水素流中のこれら炭化水素を選択的に水素化するための改良された触媒及び方法を見出すことにある。焦点は、高い水素化活性、高いオレフィン選択性、特にC4水素化の場合には、高い1−ブテン選択性を有し、そしてグリーンオイルの生成が低く、関連して長い寿命を有する触媒の提供に向けられた。特に、C4流の水素化の場合には、触媒は、なお、二重結合異性体化の傾向が低くあるべきで、従って1−ブテンから2−ブテンへの異性体化の触媒は重要ではない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的の達成は、水素化用金属として元素周期表の第VIII族の金属を少なくとも1種、及び追加的に助触媒(promoter)を酸化物担体上に含む触媒から出発するものである。
【0021】
本発明の触媒では、元素周期表の第VIII族の金属の少なくとも80%が、触媒の表面と浸入深さとの間で実質的に均一な分布で存在し、該浸入深さは、触媒表面から計算して、触媒の半径(radius of the catalyst)の80%以内であり、及び助触媒は、触媒の全断面にわたって実質的に均一に存在している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
好ましい実施の形態では、触媒は、2.5−10mm(2.5〜10mm)の直径を有し、そして元素周期表の第VIII族の金属の少なくとも80%が、触媒の表面と浸入深さとの間で実質的に均一な分布で存在し、前記浸入深さは、触媒表面から計算して1000μm以内であり、及び助触媒は、触媒の全断面にわたって実質的に均一に分散して存在している。
【0023】
本発明に従えば、触媒は従って、元素周期表の第VIII族の金属が、触媒中でシェル構造を形成し、この一方で助触媒がすっかり浸透している。
【0024】
元素周期表の名称付けは、CAS目録(Chemical Abstracts Service)に従うものである。
【0025】
本発明の触媒は、直径が2.5mm−10mmである。本発明の好ましい実施の形態では、直径は、2.5mm−5mm、特に2.5−3.5mmである。
【0026】
本発明の触媒では、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に100%の元素周期表の第VIII族の金属が、触媒の表面と1000μm以下の浸入深さとの間の層に、実質的に均一な分散で存在している。ここで、浸入深さは触媒の表面から計算している。
【0027】
本発明の触媒は、元素周期表の第VIII族の金属(Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt)を含んでいる。本発明の好ましい実施の形態では、この金属は、パラジウムである。
【0028】
本発明の触媒は、更に少なくとも1種の助触媒を含んでいる。助触媒は、例えば、元素周期表の第VIII、IB及びIIB族の更なる金属(Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg)であって良い。好ましい実施の形態では、本発明の触媒は、元素周期表の第VIII族の金属に加えて、元素周期表の第IB族からの金属を少なくとも1種含んでいる。これについては、銀が特に好ましい。
【0029】
特に好ましい実施の形態では、本発明の触媒はパラジウムと銀を含んでいる。
【0030】
本発明の触媒は、如何なる形状、例えば、押出成形状、中空押出成形状、タブレット状、リング状、球形粒子状、又は球状であって良い。本発明の触媒が、押出成形状であることが好ましい。
【0031】
金属は、純粋な金属の状態で存在して良く、しかし、化合物の状態で存在しても良く、例えば、酸化金属の状態で存在しても良い。水素化法の操作条件下において、これらは通常、金属の状態である。如何なる酸化物も金属に転換し得るが、これは、この技術分野の当業者によって、触媒が水素化法で使用される前に、水素化反応器の内部又は外部で、例えば予備還元によって行なわれ得る。そして、必要な場合には、予備還元された触媒を取り扱うために、後に表面の不動態化が行なわれ、又はこのことが有利である。
【0032】
元素周期表の第VIII族の金属(複数種類の場合を含む)特にパラジウムの、触媒中の含有量は、好ましくは、少なくとも0.01質量%、より好ましくは少なくとも0.1質量%、特に少なくとも0.15質量%である。この含有量は、好ましくは最大で5質量%、より好ましくは最大で1質量%、特に最大で0.6質量%である。含有量がこれよりも少ない場合、及び多い場合も可能であるが、しかしながら、活性が非常に低くなり、そして原材料コストが過剰に高くなるので、通常、経済的に満足なものではない。特に好ましい実施の形態では、1種のみの水素化用金属、特にパラジウムが使用される。
【0033】
元素周期表の第VIII族の水素化用金属及び添加剤、又はドープ剤の量の割合は、個々のケースで最適化されるべきパラメータである。元素周期表の第VIII族の金属、より好ましくはパラジウムの、助触媒(より好ましくは銀)に対する原子割合は、好ましくは、0.1−10、より好ましくは2−7、特に2.5−6である。
【0034】
本発明の水素化触媒の酸化物担体は、好ましくはアルミナであり、より好ましくは、δ−、θ−、及びα−アルミナの混合物である。この担体は、回避することができない不純物に加え、他の添加剤をある程度含んでも良い。例えば、元素周期表の第IIA、IIIB、IVB、IIIA及びIVAの金属の酸化物等の無機酸化物が存在して良く、特に二酸化シリコン、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、及び酸化カルシウムが存在して良い。この担体中の、アルミナ以外のこのような酸化物の最大含有量は、実際に存在する酸化物の量に依存するが、しかし、水素化触媒のx線回折プログラムに関連して、個々の場合に決定されるべきである。この理由は、構造の変化は、x線回折ダイアグラムの重要な変化に関連するからである。通常、アルミナ以外のこのような酸化物の含有量は、50質量%未満、好ましくは30質量%未満、より好ましくは10質量%未満である。アルミナの純度の程度は、99%以上であることが好ましい。
【0035】
担体を製造するために、適切なアルミニウム含有原料、好ましくはベーマイトが、水、希釈酸、希釈塩基等のかいこう剤でかいこう(peptize)される。使用される酸は、例えば、無機酸、例えば、硝酸、又は有機酸、例えば、蟻酸である。使用される塩基は、好ましくは無機塩基、例えば、アンモニアである。酸又は塩基は通常、水に溶解される。使用されるかいこう剤は、好ましくは水、又は希釈水性硝酸である。かいこう剤中の非水性部分の濃度は、通常、0−10質量%、好ましくは0−7質量%、より好ましくは0−5質量%である。かいこうの後、担体は成形され、乾燥され、そしてか焼される。
【0036】
ベーマイト(γ−AlO(OH))は、広く市販されている製造物であるが、しかし、アルミニウム塩、例えばアルミニウムニトレートの溶液から塩基と共に沈殿させ、除去し、洗浄し、乾燥させ、そして沈殿した固体をか焼することによって、実際に担体を製造する直前に公知の方法で製造することも可能である。ベーマイトは、粉末の状態で使用することが有利である。市販されている適切なベーマイト粉末は、例えば、UOPから得られるVersal(登録商標)250である。ベーマイトは、湿らせて、そしてベーマイトとかいこう剤とを、例えばニーダー、ミキサー又はエッジランナーミル内で強く攪拌させることにより、かいこう剤で処理される。かいこうは、組成物が容易に成形可能になるまで続けられる。次に、組成物は、通常の方法、例えば、押出成形、タブレット化、又は塊状化により所望の成形担体物に成形される。成形のために、如何なる方法でも適切である。所望により、通常の添加剤を使用して良く、また、このことが有利であって良い。このような添加剤の例は、ポリグリコール又はグラファイト等の押出成形助剤、又はタブレット化助剤である。
【0037】
か焼の後、多孔構造に影響を及ぼす成形添加剤の前に、担体原料をバーンアウト材料として、公知の方法で加えることも可能である。バーンアウト材料は、例えば、ポリマー、繊維性材料、堅果の肉等の天然のバーンアウト材料、又は通常の添加剤である。ベーマイトを粒子サイズの分布で使用することが好ましく、そしてバーンアウト材料を、仕上げられた担体の孔の径分布について、合計孔体積の50−90体積%が0.01−0.1μmの範囲に平均径を有し、そして合計孔体積の10−50体積%が0.1−1μmの範囲に平均径を有するように加えることが好ましい。この目的に必要な測定は、この技術分野の当業者にとって公知である。
【0038】
成形の後、成形体は、通常、60℃以上の温度、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に、120−300℃の範囲の温度で、通常の方法で乾燥される。乾燥は、成形体内に存在する水分が成形体から本質的に全て除去されるまで続けられ、通常、数時間後にこのようになる。一般的な乾燥時間は、1−30時間(1〜30時間)の範囲であり、そして、設定された乾燥温度に依存し、温度が高くなると乾燥時間が短くなる。乾燥は、減圧することにより更に加速されて良い。
【0039】
乾燥の後、成形体は、か焼によって仕上げられた担体に転換される。か焼温度は、通常、900−1150℃の範囲、好ましくは1000−1120℃の範囲、より好ましくは1050−1100℃の範囲である。か焼時間は、通常、0.5時間と5時間の間、好ましくは、1時間と4時間の間、より好ましくは1.5時間と3時間の間である。か焼は、通常の炉内、例えば、ロータリー式炉、トンネル式炉、ベルトか焼器、又はチャンバー式炉内で行われる。か焼は、成形体を中間冷却することなしに、乾燥の次に直接的に行われて良い。
【0040】
このようにして得られた本発明の触媒は、比表面積(specific surface area)(BET、Brunauer−Emmet−Teller、77Kで窒素吸着によりDIN66131で測定)が、250m2/g、好ましくは50−150m2/g、特に60−90m2/gである。表面積は、公知の方法、特に、微細に粉砕された、又はより粗い出発材料の使用、か約時間、及びか焼温度によって変動する。BET表面積と同様、孔体積も、公知の方法で変動しても良い。通常、孔体積は、水銀ポロシメトリーによって測定され、その範囲は、0.3−1.0ml/g、好ましくは0.4−0.9ml/g、より好ましくは0.5−0.8ml/gである。
【0041】
か焼の後、活性組成物及び更なる添加剤が、このように製造された担体上に沈殿される。
【0042】
本発明の触媒の担体(support)は、以下のx線回折ダイアグラムで特徴づけられることが好ましい。
【0043】
【表1】

【0044】
このx線ディフラクトグラムは、EP00992284A2の9頁6−9行目に記載されているように決定されることが好ましい。
【0045】
x線ディフラクトグラムは、解析される材料の特定の構造に特有のものである。本発明の触媒の構造は、上述した反射の発生によって充分に明確化される。上述した特長的な反射に加え、x線回折ダイアグラムにおいて、インタープランナースペーシング3.48;2.55;2.38;2.09;1.78;1.74;1.62;1.60;1.57;1.42;1.40及び/又は1.37(全て[Å])のために、何らかの強度で、1種以上の反射が発生しても良い。
【0046】
更に、本発明の触媒のx線回折ダイヤグラムに、他の反射が発生しても良い。
【0047】
活性成分と場合により添加剤が、このようにして得られた本発明の触媒の担体に沈殿(析出)して良い。
【0048】
担体に沈殿する金属、添加剤、及び/又はドープ剤は、如何なる公知の方法ででも担体に施すことができる。ここで、該公知の方法は、例えば、気相からの被覆(化学的又は物理的蒸気沈殿)又は、沈殿させるべき物質及び/又は化合物を含んだ溶液中に担体材料を浸すことである。
【0049】
好ましい方法は、沈殿させるべき物質及び/又は化合物の溶液を含浸(浸漬)させることで、この化合物は、更なる触媒製造の過程で、沈殿されるべき物質に変換されるものである。沈殿させるべき物質(複数種類)は、個々に及び/又は部分的に沈殿させて良く、該沈殿は、複数の工程段階で、又は結合させて全くの1工程段階で行って良い。沈殿をひとつの含浸工程に結合させることが好ましい。含浸の後、又は個々の含浸工程の後、担持された触媒は乾燥され、そしてか焼と他の公知の後処理方法、例えば活性化及び次の表面不動態化により直ちに使用可能な触媒に変換される。
【0050】
活性化合物、添加剤及び/又はドープ剤を担体に沈殿させるための含浸方法は公知である。通常、担体は、沈殿させるべき成分の塩の溶液で含浸される。ここで溶液の容積は、担体の孔体積によって、溶液が実質的に十分に吸収される程度である(初期湿り法)。溶液中の塩の濃度は、含浸及び担持された触媒が仕上げられた触媒に変換された後、沈殿されるべき成分が、触媒上に所望の濃度で存在する程度である。塩は、触媒の製造の過程、又はその後の使用において、問題となる残留物を残すことがないように選択される。通常、硝酸塩又はアンモニウム塩が使用される。
【0051】
原則として、この技術分野の当業者に公知である含浸法の全てが、本発明の触媒を製造するのに適切である。
【0052】
しかしながら、沈殿させるべき金属の硝酸塩の硝酸溶液の初期湿り法(incipient wetness method)により、本発明の触媒を1段階の含浸で製造することが好ましい。
【0053】
特に好ましい実施の形態では、パラジウム硝酸塩と亜硝酸塩とを共に含む含浸溶液が使用される。
【0054】
更に、元素周期表の第IB族の金属、好ましくは硝酸銀も含浸溶液中に存在する。
【0055】
通常、含浸溶液のpHは、最大で5、好ましくは最大で2、より好ましくは最大で1、特に0.5である。pHの最下限は、通常0.2、好ましくは0.3、より好ましくは0.5である。特に好ましいpH範囲は、0.3−0.5である。
【0056】
含浸の後、含浸された担体は、通常60℃以上の温度、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に、120−300℃の範囲の温度で、通常の方法で乾燥される。乾燥は、含浸された触媒中に存在する水分が実質的に全て除去されるまで続けられ、通常では数時間でこのような状態になる。一般的な乾燥時間は、1−30時間の範囲であり、そして、設定される乾燥温度に依存し、乾燥温度が高いと乾燥時間が短くなる。乾燥は、減圧することにより加速されて良い。
【0057】
本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、含浸された触媒は、含浸された担体材料を同時に動作させて、例えばロータリーチューブ式炉内で乾燥される。
【0058】
本発明の特定の実施の形態では、乾燥に使用される空気流は、ロータリーチューブを通して、向流状態で搬入される。
【0059】
乾燥の後、触媒は、か焼により通常の方法で製造される。このか焼は、本質的に含浸された塩を、沈殿されるべき成分、又はこのような成分の前駆体に変換するように作用し、そして、この点において、上述した担体材料及び担体構造を製造するように作用するか焼とは異なる。金属硝酸塩の含浸の場合、硝酸塩は、このか焼の過程で触媒中に残る金属及び/又は酸化金属、及び窒素を含む(排出される)気体に分解される。
【0060】
か焼温度は、通常200−900℃、好ましくは280−800℃、より好ましくは300−700℃である。か焼温度は、通常0.5時間と20時間との間、好ましくは0.5時間と10時間との間、より好ましくは0.5時間と5時間の間である。か焼は、通常の炉内、例えば、ロータリーチューブ式炉、ベルトか焼器、又はチャンバー式炉内で行われる。か焼は、担持され及び乾燥された担体を中間冷却することなしに、乾燥の次に直接的に行って良い。
【0061】
本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、触媒の乾燥とか焼は1基のロータリーチューブ式炉内で結合(併用)される。
【0062】
か焼の後、触媒は、原則として、直ちに使用できる。必要な場合には、水素化反応器内に導入する前に、予備還元によって活性化され、及び、必要な場合には、再度表面不動態化されるが、又はこれらのことが有利である。
【0063】
しかしながら、通常、水素化触媒の還元は、少なくとも水素化反応器内に配置されるまでは行なわれない。水素化触媒の還元は、窒素又は他の不活性気体で最初に不活性化させて、この技術分野の当業者にとって公知の方法で行われる。還元は、純粋な気体相としての水素含有気体で行なわれ、又は不活性循環(inert circulation)下で行なわれる。この予備還元が行なわれる温度は、通常、5−200℃、好ましくは20−150℃である。
【0064】
本発明の触媒の再生は、15−500℃の温度で、水素化反応器の外部、又は内部で行うことも可能である。
【0065】
本発明は、更にこの方法で得ることができる水素化触媒を提供する。
【0066】
本発明は、更に、不飽和化合物を水素化するために本発明の触媒を使用する方法に関し、及び対応する水素化法に関する。
【0067】
選択的な水素化のための本発明に従う方法は、本発明の触媒を使用することに特徴を有している。本発明の水素化方法は、通常、同一の目的に作用する不均一触媒による公知の水素化方法と同様に行われる。これらは、不均一触媒反応した気相工程として行われ、該工程では、炭化水素流と水素化水素の両方が気体相に存在する。又は、これらは、不均一触媒反応した気相/液相工程として行われ、該工程では、炭化水素流の少なくとも一部が液相に存在し、そして水素が気相に存在、及び/又は溶解した状態で液相に存在する。単位が[m3/m3(cat)・h]の空間速度(space-velocity)又は質量速度[t/m3(cat)・h]で表される炭化水素流の処理量(throughput)等の設定されるべきパラメーターは、触媒体積、温度及び圧力に基づいて、公知の方法に類似して選択される。入口温度は一般的には0−100℃の範囲であり、そして、圧力は2−50バールの範囲である。水素化は、1反応段階以上で行なって良く、この場合、本発明にかかる触媒が、少なくとも1反応段階で使用される。
【0068】
使用される水素の量は、供給される炭化水素流の量をベースとして、炭化水素流中の望ましくない不飽和化合物の含有量とその種類に依存する。通常、反応器を通過する過程で、水素が加えられ、その量は、完全な水素転換(水素化)に化学量論的に必要とされる量の0.4−5倍の量である。三重結合の水素化は、通常、共役二重結合のものよりも迅速に進行し、共役二重結合のものは、共役していない(unconjugated)二重結合のものよりも迅速に進行する。このことは、加えられる水素の量による、対応する工程の制御を可能にする。特定の場合、例えば、1−ブテンのシス−又はトランス−2−ブテンへの高異性体化が望まれる場合には、より過剰の水素、例えば、10倍の過剰の水素を使用することができる。
【0069】
水素は、不活性気体、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、窒素、二酸化炭素、及び/又はメタン、エタン、プロパン、及び/又はブタン等の低級アルカンを含むことができる。このような不活性気体は、30体積%未満の濃度で水素中に存在することが好ましい。一酸化炭素が実質的に除去された水素が特に好ましい。
【0070】
本方法は、1基(台)の反応器内で行なって良く、又並行状に又は直列状に連結された複数基の反応器内で行なって良く、各場合において、単一通過(シングルパス:single pass)方式又は循環方式として良い。本方法が、気/液相で行なわれる場合、水素流は、一般的には、水素流が反応器を通過した後に分離器内で気体が除去され、そして、結果として得られた液体部分が反応器に再循環される。再循環した炭化水素流と反応器内に最初に供給したものとの割合(還流割合として知られている)は、次のような方法で調節される、すなわち、断熱温度の上昇が、圧力、入口温度、処理量、及び水素の量等の他の反応条件下で大きくなり過ぎないように調整される。
【0071】
本発明に従う方法の使用は、例えば、C2流中のエチレンの水素化、特にC3流中のプロピン及び/又はプロパジエンのプロペンへの水素化、特にC4流中の1,3−ブタジエンのブテンへの水素化、及び/又はC5+流(ピロリシスベンジン)中のアルキレン、ジエン及びスチレンの水素化である。
【0072】
このように、本発明の触媒は、例えば、その主たる成分が分子内に3個の炭素原子を含むアルケン−及び/又はアルカジエン−含有液体炭化水素混合物から、不飽和炭化水素を選択的に水素化するための方法であって、本発明の触媒が例えば、上述の条件下に炭化水素流と接触する方法での使用に適切である。
【0073】
このようなC3流のための水素化方法は、従来技術から既に公知になっている。例えば、DE3709328A1には、不飽和の程度が大きい炭化水素の選択的な水素化のための流下相法(trickle phase process)が記載されている。この方法は、その主たる成分が分子内に3個の炭素原子を含むアルケン−、アルカジエン−、及び/又は芳香族化合物含有液体混合物から不飽和の程度が大きい炭化水素を充分に、そして非常に選択的に除去する。この場合、水素化は、固定床担持パラジウム触媒又は2−4個の担持されたパラジウム触媒からなる固定床触媒システム上で行われる。
【0074】
純粋なパラジウム触媒を使用した、この方法の不利な点は、純粋なパラジウム触媒の使用は、容易に過水素化をもたらし、そしてグリーンオイルの形成をもたらすことである。この結果、炭化が急速になり、そして従って、使用する触媒が短寿命になる。
【0075】
このことを防止するために、本発明の触媒(該触媒は銀を含むことが好ましい)が、C3流を水素化するために、水素化法に使用される。この水素化法は、過水素化とグリーンオイルの形成を低減する。更に、C3流を水素化するための適切な活性を持たせるために、使用するパラジウムを、触媒の特定のエッジ領域に集中させなければならない。このことは、パラジウムの浸入深さが1000μm以内である本発明の触媒によって満足させる。
【0076】
使用する銀は、触媒の全断面にわたって実質的に均一に分散される。このことは、触媒によるグリーンオイルの生成を減少させるか又は防止する。このことは、銀が押出物全断面(extrudate cross section)にわたって実質的に均一に分散された本発明の触媒によっても満足される。
【0077】
C3流を水素化するための本発明に従う方法は、プロピン及び/又はプロパジエンをプロペンに(これら炭化水素混合物中で)選択的に、且つ最小限のプロパン生成下で水素化するように実質的に作用する。
【0078】
特に好ましい実施の形態では、水素化は1段階(工程)で行われる。
【0079】
この代わりに、水素化を2工程段階で行うことも可能である。この場合、このようにして得られたC3流は、各水素化段階の前に、例えば、以下の内容(成分)を有している。
【0080】
【表2】

【0081】
C3水素化は、好ましくは大部分は、液体C3と水素気体相とで行われる。
【0082】
この水素化において、圧力は、好ましくは9−30バールg(barg)、より好ましくは、10−25バールg、特に、10−16バールgである。入口温度は、好ましくは0−50℃、より好ましくは0−40℃、特に20−30℃である。温度上昇は、好ましくは0−60℃、より好ましくは0−40℃、特に0−5℃である。積載力(時間あたりの質量空間速度)(whsv)は、好ましくは3−30kg/lh、より好ましくは5−25kg/lh、特に8−15kg/lhである。みかけ速度(superficial velocity)は、好ましくは0.2−20cm/s、より好ましくは0.5−10cm/s、特に1−5cm/sである。水素のメチルアセチレン及びプロパジエンに対する割合は、好ましくは0.9−2、より好ましくは1.01−2である。
【0083】
好ましい実施の形態では、C3水素化は1段階で行なわれる。この代わりに、2段階での水素化も可能である。
【0084】
反応は、この技術分野の当業者にとって公知の方法で行われ、例えば、断熱的に、蒸発性冷却を使用し、又は等温的に行なわれ、好ましくは等温的に行われ、及び特に好ましくは、等温反応で冷却剤、例えばアンモニアを使用することである。
【0085】
本発明は、更に、本発明の水素化触媒をC4流の水素化のための工程に使用する方法を提供する。
【0086】
C4流を水素化する方法は、従来技術から公知である。例えば、EP0523482B1には、固定床担持貴金属触媒を使用して液相又は流下(滴下)相で、ブタジエンをブテンに選択的に水素化する方法が記載されている。この方法では、ブタジエン含有量が、C4流に対して20−80質量%である、ブタジエン−リッチなC4流が直列状に連結された2個の反応領域内で水素化されている。該水素化は、第1の反応領域の水素化製造物が、(C4流に対して)0.1−20質量%の残留ブタジエンを含み、及び第2の反応領域の水素化製造物が0.005−1質量%の残留ブタジエンを含むように行なわれている。
【0087】
本発明にかかる水素化に使用されるC4水素化混合物は、鉱油から誘導される炭化水素、例えば、ナフサの熱分解(ストリームクラッキング)の過程で主に形成される。主要な1,3−ブタジエン成分に加え、これら炭化水素混合物は、積層状二重結合及び/又はアセチレン性三重結合を有する化合物も少量含んで良い。流れ−分解器からの粗製C4カットの組成は、広い範囲で種々に変動する(テーブル1、参照)。
【0088】
【表3】

【0089】
組成は、供給原料と流れ−分解器の分解条件に実質的に依存する。一般的に、粗製C4カットは、35−50質量%のブタジエンを含む。
【0090】
原則として、本発明に従う方法ないし本発明に従う触媒は、ブタジエン成分が80質量%まで選択的に水素化されたC4カットを得ることが可能である。ブタジエンを30−60質量%まで含むC4流を使用することが好ましい。ビニルアセチレン及びブチンは、同様にブテンに選択的に水素化される。本発明に従う方法から、n−ブテン及びイソブテンが変化することなく現れる(出てくる)。工程の条件に依存して、イソブテンは、より高い精度でイソブタンに水素化可能であるが、このことは所望するものではない。
【0091】
本発明に従う方法は、液相又は流下相内で適切に行なうことができ、そして、水素が液体C4流内に、公知の方法で微細に分散される。固定床水素化触媒を使用して、頂部から下方にかけての流下相内で、ブタジエンの選択的な水素化を行なうことが好ましい。水素化を下方から上方へと行なうことも可能である。
【0092】
好ましい実施の形態では、C4流を水素化するための本発明に従う方法は、2又は3段階で行われる。
【0093】
2個の反応領域は、水素を計量し、そして水素をこれらの間に微細に分散できるように分離しなければならない。反応領域を、分離した水素化反応器とすることが好ましい。水素は、転換のための計算上、化学量論的に必要とされる量の1−2倍の量で加えられる(全工程(全段階)に基づく)。化学両論的に必要とされる量の最大1.2倍の水素を加えることが好ましい。
【0094】
水素化に使用される水素は、30体積%以下の不活性気体、例えばメタンを含んで良く、このことが水素化を大きく損なうことはない。本発明に従う方法に使用される水素は、COが除去されていることが好ましいが、CO(<5ppm)の少量は問題がない。
【0095】
各反応器の反応条件は、広い範囲で種々に変動する。例えば、本発明に従う方法は、反応器の入口温度が20−100℃、好ましくは30−90℃、温度上昇が好ましくは10−60℃で進行する。圧力は、好ましくは5−50バールg、より好ましくは5−30バールである。C4供給に基づく、液体の時間あたりの空間速度(Ihsv)は、好ましくは、1−30h-1、好ましくは2−15h-1である。新しい供給物の時間当たりの質量空間速度(whsv)は、好ましくは0.5−15kg/Ihである。循環流の新しい供給物に対する割合は、好ましくは2−20である。水素のブタジエンに対する割合は、好ましくは1−1.5である。
【0096】
これらの条件下に、1,3−ブタジエンの出口濃度(exit content)を低くして(好ましくは、10−1000ppm)1−ブテンの最大含有量が達成され、そして1−ブテンの高い選択性が達成される。従って、水素化C4流中の1−ブテン含有量は、好ましくは30%、より好ましくは40%、特に50%(イソブテンの除去の後、イソブテンの残留物:好ましくは0.5−4%、より好ましくは1−3%)であり、一方、1−ブテンの2−ブテンに対する割合は、好ましくは1.2−2.0、より好ましくは1.3−1.6である。
【0097】
C4流の水素化が2段階で行われる場合、本発明の触媒を第1の反応段階で使用することが好ましく、この場合、好ましくは60%を超える1−ブテン選択性が達成される。
【0098】
本発明に従う方法は、一連の有利な点を有している。供給原料中に存在しているブタジエンは、実質的に量的(大量)に、非常に高い選択性で水素化される。ブタジエンの転換が非常に高いにもかかわらず、この方法で、少なくとも96%のブテン選択性Sが達成される。
【0099】
水素化は、ブタジエンの非常に高い転換に至るまで、非常に広い範囲で選択的である。第1の段階での本発明の触媒の選択の効果により、ブテン−1からブテン−2への異性体化は、標準的な方法のものよりも明らかに少なく、そして、イソブテンは、実質的にイソブタンに転換されない。鉛又はヒ素等の不可逆的な触媒毒性物が存在しない限り、水素に特別な純度は要求されない。水素の計量は、自動的解析方法で制御されて良い。
【0100】
比較的高い温度ででも選択性は維持されるので、複雑な冷却装置又は冷却のための設備が必要とされない。水素化された製造物の充分な量の液体循環を介して、熱の除去が容易な方法で制御される。熱交換器が循環流中に配置される。
【0101】
更に、本発明に従う方法において、形成されるオリゴマー化製造物の量は著しいものとはならない。
【0102】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
1.C3水素化
触媒を、この技術分野の当業者にとって公知の初期湿り法で製造した。
【0103】
含浸溶液のパラジウム含有量を、硝酸パラジウム含有ストック溶液を希釈することにより、特定の数値に調節した。この希釈において、出発溶液は、実質的に硝酸塩として存在する約11%のパラジウムを有するストック溶液であり、ストック溶液中2−6質量%の亜硝酸を有していた。
【0104】
実施例では、直径が3mmの担体押出成形機を使用した。
【0105】
1.1 比較触媒Iの製造
表面積が60−90m2/gのAl23押出成形物を、硝酸を使用して0.2−2のpHまで酸性化した、パラジウム硝酸塩及びパラジウム亜硝酸塩を含む含浸溶液で含浸させた。水分を含む押出成形物を200℃で乾燥させ、そして600℃でか焼した。これにより、0.3質量%のパラジウムを含む比較触媒Iが得られた。
【0106】
含浸溶液中の亜硝酸塩イオンは、0.1%であった。硝酸塩は、アニオンの大部分を供給した。
【0107】
1.2 比較触媒IIの製造
pHを0.2未満とし、そして含浸溶液中にパラジウムをより少なく、そして銀をより多く使用したこと以外は、比較触媒Iの製造のための実施例に類似した方法で比較触媒IIを製造し、その結果、0.2質量%のパラジウム及び0.1質量%の銀を有する触媒が得られた。
【0108】
この触媒中、パラジウムは、1000μm以内のシェル中に存在するものではなく、しかし、銀と同様、触媒の全断面にわたり実質的に均一に分散していた。
【0109】
1.3 本発明の触媒IIIの製造
本発明の触媒IIIを比較触媒IIの製造と類似した方法で製造した(pH0.2−2)。これにより、0.2質量%のパラジウム及び0.1質量%の銀を有する触媒を得た。
【0110】
1.4 本発明の触媒IVの製造
より多くのパラジウム硝酸塩及び亜硝酸塩を使用し、0.5質量%のパラジウム及び0.1質量%の銀を有する触媒が得られたこと以外は、本発明の比較触媒IIIに類似した方法で本発明の触媒IVを製造した。
【0111】
このように製造した触媒を、C3流の水素化に使用した。水素化は1基の反応器内で行った。反応器は以下のものを備えていた。すなわち:
− 量的に制御した反応物供給、
− 量的に制御した水素供給、
− チューブ状反応器(長さ2m、内径17.6mm)、但し、内部の中心に合わせた温度要素(スリーブ径4mm)及び予熱ゾーン(V2A領域)を有し、フリークロスセクション:2.31×10-42である、
− 気体及び液体分離用の製造物分離器、
− 凝縮器(condenser)を有する気体出口装置、
− 液体循環、及び、
− 液体出口装置、
である。
【0112】
オンラインGCクロマログラフを使用し、収支解析を行った。
【0113】
反応を進行させる前に、以下の条件下に現場(in situ)進行の還元を行った:120℃、H2が40l(STP)/h、5バールで12時間。
【0114】
【表4】

【0115】
水素化を以下の条件下に行った。
【0116】
70mlの触媒
in=20℃
whsv=19kg/lcat
循環:反応物量=2
圧力=10−20バールg
2の純度=100%(限定するものではない)
99%のMAPD転換率で、以下のものが得られた。
【0117】
【表5】

【0118】
プロペン選択性:Δプロペン/ΔMAPD(但し、MAPD=メチルアセチレン+プロパジエン)
2.C4流の水素化
触媒を、この技術分野の当業者にとって公知の初期湿り法で製造した。
【0119】
硝酸パラジウム含有ストック溶液を特定の値に希釈することにより、触媒I、III、IV、及びVのための含浸溶液のパラジウム含有量を特定の数値に調節した。この希釈において、出発溶液は、実質的に硝酸塩として存在するパラジウムを約11%有するストック溶液であり、そして、ストック溶液中の亜硝酸塩の含有量は、2−6質量%である。
【0120】
実施例において、直径3mmの触媒担体押出成形物を使用した。
【0121】
2.1 本発明の触媒Iの製造
表面積が60−90m2/gのAl23押出成形物を含浸溶液で含浸させた。該含浸溶液は、硝酸パラジウム、亜硝酸パラジウム及び硝酸銀を有するもので、硝酸で0.2−2のpHにまで酸化されたものである。この水分を有する(濡れた)押出成形物を200℃で乾燥させ、そして600℃でか焼した。パラジウムを0.3質量%含み、そして、銀を0.1質量%含む触媒が得られ、パラジウムの銀に対する質量割合は3であった。
【0122】
2.2 比較触媒IIの製造
2−6質量%のNO2-の代わりに、0.06質量%のNO2-の、異なるパラジウム硝酸塩ストック溶液を使用したこと以外は、触媒IIを触媒Iと同様に製造した。完成した含浸溶液は、結果として、0.0024質量%のNO2-を含んでいた。
【0123】
2.3 比較触媒IIIの製造
銀を使用しなかったこと以外は、本発明の水素化触媒Iに相当する方法で比較触媒IIIを製造した。
【0124】
2.4 本発明の触媒IVの製造
結果として得られた触媒が、パラジウムの銀に対する割合が6であり、銀が0.05%であること以外は、本発明の水素化触媒Iに相当する方法で本発明の水素化触媒IVを製造した。
【0125】
2.5 本発明の水素化触媒Vの製造
本発明の触媒Vを本発明の水素化触媒Iに相当する方法で製造し、パラジウムの銀に対する質量割合は3.5で、そして、銀の割合は0.085質量%であった。
【0126】
このようにして得られた触媒を粗製C4カットの選択的水素化の試験に使用した。
【0127】
実験を、直径が16mm及び長さが2mの電気加熱式固定床反応器、予備加熱領域、分離器、反応器流出物用凝縮器、及び液体循環装置を備えた実験設備内で行った。使用した触媒の量は、200mlであった。粗製C4カットを、搬送ポンプを使用して計量導入し、そして、混合箇所で、量的に制御して供給した水素と混合した。分離器内で、反応流出物が気体と液体に分離される。液相の大部分は、循環システム内の反応器内へと戻される。反応器に供給された粗製C4カットの量に対応する、より少量の部分が、製造物として、分離器から連続的に除去される。ガスクロマトグラフィーを使用して解析を行った。
【0128】
炭化水素を反応器に最初に供給する前に、触媒を120℃、及び5バールの圧力で12時間にわたり、水素で処理した。次に、既に選択的に水素化したC4カットを設備に充填し、50℃に加熱し、そして操作(作動)した。操作条件(圧力、温度、処理量)が達成された後、粗製C4カット及び水素を供給(補給)した。水素化は以下の条件下に50℃で行われた:
whsv=5kg/Icat
循環物:反応物=8
圧力=10−15バールg
2の純度=100%(限定されるものではない)
全ブテン選択性=1−(Δ(n−ブテン)/Δ1,3−ブタジエン))
1−ブテン選択性=Δ(1−ブテン)/Δ(1,3−ブタジエン)
99%のブタジエン転換で、結果は、
【0129】
【表6】

であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化用金属として、少なくとも1種の元素周期表の第VIII族の金属、及び追加的に助触媒を酸化物担体上に含む触媒であって、
元素周期表の第VIII族の金属の少なくとも80%が、触媒の表面と、触媒表面から計算して触媒の半径の80%以内に相当する浸入深さとの間で実質的に均一な分布で存在し、及び前記助触媒は、触媒の全断面にわたって実質的に均一に分布して存在することを特徴とする触媒。
【請求項2】
直径が2.5−10mmであり、及び元素周期表の第VIII族の金属の少なくとも80%が、触媒の表面と、触媒表面から計算して1000μm以内に相当する浸入深さとの間で実質的に均一な分布で存在し、及び前記助触媒は、触媒の全断面にわたって実質的に均一に分布して存在することを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
酸化物担体がアルミナであることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の触媒。
【請求項4】
酸化物担体が、δ−、θ−、及びα−アルミナの混合物の状態のアルミナであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の触媒。
【請求項5】
元素周期表の第VIII族の金属が、パラジウムであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の触媒。
【請求項6】
元素周期表の第VIII族の金属の含有量が、触媒の合計量に対して0.05−5質量%であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の触媒。
【請求項7】
助触媒が、元素周期表の第IB族の金属であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の触媒。
【請求項8】
元素周期表の第IB族の金属が、銀であることを特徴とする請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
元素周期表の第VIII族の金属の元素周期表の第IB族の金属に対する原子割合が、0.1−10であることを特徴とする請求項7又は8に記載の触媒。
【請求項10】
酸化物担体を、元素周期表の第VIII族の金属の硝酸塩及び亜硝酸塩を含み、且つ硝酸で酸性化させた溶液で含浸させ、乾燥及びか焼することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の触媒を製造する方法。
【請求項11】
触媒を、ロータリーチューブ内において動作下に乾燥させることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
乾燥を向流として空気流を使用して行うことを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
乾燥とか焼を1基のロータリーチューブ内で併合して行うことを特徴とする請求項10〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
触媒を、水素化反応器の外側又は内側で、0−200℃の温度で還元することを特徴とする請求項10〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
触媒を、水素化反応器の外側又は内側で、15−500℃の温度で再生することを特徴とする請求項10〜14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項10〜15の何れか1項に記載の方法で得られる触媒。
【請求項17】
不飽和化合物を水素化するために、請求項1〜9又は16の何れか1項に記載の触媒を使用する方法。
【請求項18】
C3流中のプロピン及び/又はプロパジエンを、プロペンに水素化することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
C4流中の1,3−ブタジエンをブテンに水素化することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
気相又は混合気/液相内で、入口温度が0−100℃で、圧力が5−50バールの範囲で、不飽和化合物を選択的に水素化する方法であって、
1段階以上の反応段階で選択的な水素化を行い、及び少なくとも1段階の反応段階で請求項1〜9又は16の何れか1項に記載の触媒を使用することを特徴とする方法。
【請求項21】
C3流中のプロピン及び/又はプロパジエンを、プロペンに水素化することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
C2流中のエテンを水素化することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
C5+流中のアルキン、ジエン、及び/又はスチレンを水素化することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
C4流中の1,3−ブタジエンをブテンに水素化することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
水素化を、2反応段階で行い、及び請求項1〜9又は16の何れか1項に記載の触媒を最初の段階で使用することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
最初の反応段階で、60%を超える1−ブテン選択性を達成することを特徴とする請求項24又は25に記載の方法。

【公表番号】特表2008−515631(P2008−515631A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536095(P2007−536095)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011026
【国際公開番号】WO2006/040159
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】