説明

選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニスト

本発明は、選択的にVPAC2受容体を活性化し、糖尿病の治療に有用であるペプチドの提供に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は選択的なVPAC2受容体ペプチドアゴニストに関する。
【0002】
特に、本発明は次のアミノ酸配列:GGPSSGAPPPK(E−C16)を含むC末端伸張部分を含む、選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストに関する。
【背景技術】
【0003】
2型糖尿病又はインスリン非依存性真性糖尿病(NIDDM)は最も一般的な糖尿病であり、糖尿病に罹患する患者の90%に影響を及ぼす。NIDDMにより、患者体内のβ細胞の機能が低下し、不十分なインスリン産生及び/又はインスリン感受性の減少に至る。NIDDMが制御されない場合、血液中グルコース量が過剰となり、高血糖をもたらす。時間の経過によりさらに深刻な合併症に至ることもあり、それにより腎臓機能不全、心血管障害、視覚の損失、下肢潰瘍化、神経障害及び虚血等が生じうる。NIDDMの治療法としては、様々な経口薬の使用のほかに、食事、運動及び体重管理の改善等が挙げられる。NIDDMに罹患する個体はまず、かかる経口薬を服用することにより、血糖値を制御できる。しかしながら、これらの処置では、NIDDM患者において、生じるβ細胞の機能の亢進歩的な損失は抑えられず、ゆえに疾患後の段階における血糖値を十分に制御することができない。また、現在利用可能な薬物治療は、NIDDM患者を、例えば低血糖症、胃腸障害、体液貯留、浮腫及び/又は体重増加等の副作用の危険にさらすこととなる。
【0004】
下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)及び血管作動性腸ペプチド(VIP)は、セクレチン及びグルカゴンと同じペプチドファミリーに属する。PACAP及びVIPは、cAMP媒介及び他のCa2+媒介のシグナル伝達経路を介して活性を示すCGタンパク結合受容体を通じて動作する。これらの受容体は、PACAP嗜好性のタイプ1(PAC1)受容体(Isobe et al.,Regul.Pept.,110:213−217、(2003);Ogi et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,196:1511−1521(1993))及び2つのVIP共有型のタイプ2受容体(VPAC1及びVPAC2)(Sherwood et al.,Endocr.Rev.,21:619−670(2000);Hammar et al.,Pharmacol Rev,50:265−270(1998);Couvineau, et al.,J.Biol.Chem.,278:24759−24766(2003);Sreedharan, et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,193:546−553(1993);Lutz, et al.,EBS Lett.,458:197−203(1999);Adamou, et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,209:385−392(1995))として公知である。一連のPACAPのアナログはUS6,242,563及びWO2000/05260に開示される。
【0005】
PACAPは3つの受容体全てに対する顕著な活性化能を有する一方で、VIPは選択的に2つのVPAC受容体を活性化する(Tsutsumi et al.,Diabetes,51:1453−1460(2002))。両方のVIP及びPACAPは、それらを静脈注射で提供したとき、ヒトのインスリン分泌を刺激するのみならず、グルカゴン分泌及び肝臓からのグルコース放出を増加させることが知られている(Eriksson et al.,Peptides,10: 481−484(1989);Filipsson et al.,JCEM,82:3093−3098(1997))。但し、PACAP又はVIP刺激は結果的には、全体的には血糖症を改善させない。PACAP又はVIPによる多くの受容体の活性化は、神経、内分泌腺、心血管、再生機構、筋肉及び免疫系に幅広い生理的影響を及ぼす(Gozes et al.,Curr.Med.Chem.,6:1019−1034(1999))。さらに、VIPにより誘導されたラットの下痢は、VPAC受容体のうちの1つ(VPAC1)のみにより媒介されることが示唆されている(Ito et al.,Peptides,22:1139−1151(2001);Tsutsumi et al.,Diabetes,51:1453−1460(2002))。加えて、VPAC1及びPAC1受容体はα細胞及び肝細胞において、発現し、すなわち肝臓からのグルコース放出をもたらす効果に関与するものと考えられる。
【0006】
エキセンディン4は、Gila Monster(Heloderma Suspectum)の唾液中に含まれる物質である(Engら、J.Biol.Chem.,267(11):7402−7405(1992))。39のアミノ酸からなるペプチドであり、グルコース依存性のインスリン分泌を促進する活性を有する。具体的なPEG化エキセンディン及びエキセンジンアゴニストペプチドは、WO2000/66629中に記載されている。エキセンディン誘導体(親油性置換基に接着される少なくとも一つのアミノ酸を有する)は、WO99/43708に記載されている。
【0007】
最近の研究では、VPAC2受容体に選択的なペプチドが、胃腸(GI)における副作用をもたらさず、グルカゴン放出及び肝臓グルコース放出を増加させずに、膵臓からのインスリン分泌を促進できることが示されている(Tsutsumi et al.,Diabetes,51:1453−1460(2002))。VPAC2受容体に選択的なペプチドは最初は、VIP及び/又はPACAPの修飾により同定された(例えばXia et al.,J Pharmacol Exp Ther.,281:629−633(1997);Tsutsumi et al.,Diabetes,51:1453−1460(2002)及びWO01/23420;WO2004/006839を参照)。
【0008】
しかしながら、現在までに報告されているVPAC2受容体ペプチドアゴニストの多くは効果、選択性及び安定性プロフィールに関して問題があり、それらの臨床的な使用可能性が限られている。さらに、これらのペプチドの多くは、製剤中における当該ポリペプチドの安定性、並びにin vivoでのこれらのポリペプチドの半減期が短いこと、等の問題から、商業的に利用するための候補としては不適当である。さらに、幾つかのVPAC2受容体ペプチドアゴニストがジペプチジル−ペプチダーゼ(DPP−IV)の作用により不活性となることが確認されている。すなわち短い血清中半減期は、治療薬としてのこれらのアゴニストの使用の妨げとなりうる。したがって、NIDDM薬剤に関連する現在直面する課題を解決する、新規な治療方法に対するニーズが存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、VPAC2受容体に選択的であり、高い血糖値が示される場合には膵臓からのインスリン分泌を誘導する、改良された化合物の提供に関する。本発明の化合物は、β細胞の機能を向上させると考えられるペプチドである。これらのペプチドは、GI副作用又はそれに対応する肝臓からのグルコース放出の増加を伴わずに、インスリン分泌を誘導する生理的効果を有し、さらに公知のVPAC2受容体ペプチドアゴニストと比較して、ペプチドの選択性、効力及び/又はin vivo安定性が全体的に向上している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様においては、VPAC2受容体ペプチドアゴニストであって、式:
【化1】

式1(配列番号:1)
[式中、
XaaはHis、dH又は存在せず;
XaaはdA、Ser、Val、Gly、Thr、Leu、dS、Pro又はAibであり;
XaaはAsp又はGluであり;
XaaはAla、Ile、Tyr、Phe、Val、Thr、Leu、Trp、Gly、dA、Aib又はNMeAであり;
XaaはVal、Leu、Phe、Ile、Thr、Trp、Tyr、dV、Aib又はNMeVであり;
XaaはPhe、Ile、Leu、Thr、Val、Trp又はTyrであり;
XaaはAsp、Glu、Ala、Lys、Leu、Arg又はTyrであり;
XaaはAsn、Gln、Glu、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa10はTyr、Trp又はTyr(OMe)であり;
Xaa12はArg、Lys、hR、Orn、Aib、Ala、Leu、Gln、Phe又はCysであり;
Xaa13はLeu、Phe、Glu、Ala、Aib、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa14はArg、Leu、Lys、Ala、hR、Orn、Phe、Gln、Aib又はCitであり;
Xaa15はLys、Ala、Arg、Glu、Leu、Orn、Phe、Gln、Aib、K(Ac)、Cys、K(W)又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa16はGln、Lys、Ala、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa17はVal、Ala、Leu、Ile、Met、Nle、Lys、Aib、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa18はAla、Ser、Cys又はAbuであり;
Xaa19はAla、Leu、Gly、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はAbuであり;
Xaa20はLys、Gln、hR、Arg、Ser、Orn、Ala、Aib、Trp、Thr、Leu、Ile、Phe、Tyr、Val、K(Ac)、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa21はLys、Arg、Ala、Phe、Aib、Leu、Gln、Orn、hR、K(Ac)、Ser、Cys、K(W)、K(CO(CHSH)又はhCであり;
Xaa22はTyr、Trp、Phe、Thr、Leu、Ile、Val、Tyr(OMe)、Ala、Aib又はSerであり;
Xaa23はLeu、Phe、Ile、Ala、Trp、Thr、Val、Aib又はSerであり;
Xaa24はGln、Asn、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa25はSer、Asp、Phe、Ile、Leu、Thr、Val、Trp、Gln、Asn、Tyr、Aib、Glu、Cys、K(CO(CHSH)又はhCであり;
Xaa26はIle、Leu、Thr、Val、Trp、Tyr、Phe、Aib、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa27はLys、hR、Arg、Gln、Orn又はdKであり;
Xaa28はAsn、Gln、Lys、Arg、Aib、Orn、hR、Pro、dK、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa29はLys、Ser、Arg、Asn、hR、Cys、Orn又は存在せず;
Xaa30はArg、Lys、Ile、hR又は存在せず;
Xaa31はTyr、His、Phe、Gln又は存在せず;
Xaa32はCys又は存在しないが;
但し、Xaa29、Xaa30、Xaa31又はXaa32が存在しない場合、存在する次のアミノ酸の下流はペプチドアゴニスト配列における次のアミノ酸である]
で示される配列;および
アミノ酸配列:
GGPSSGAPPPK(E−C16)(配列番号:8)
[式中、C末端アミノ酸はアミド化されてもよい]
を含むC末端伸張を含む、アゴニストの提供に関する。
【0011】
好ましくは、VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、式:
【化2】

式2(配列番号:2)
[式中、
XaaはAsp又はGluであり;
XaaはAsp、Glu、Ala、Lys、Leu、Arg又はTyrであり;
XaaはAsn、Gln、Glu、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa10はTyr、Trp又はTyr(OMe)であり;
Xaa12はArg、Lys、hR、Orn、Aib、Ala、Leu、Gln、Phe又はCysであり;
Xaa13はLeu、Phe、Glu、Ala、Aib、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa14はArg、Leu、Lys、Ala、hR、Orn、Phe、Gln、Aib又はCitであり;
Xaa15はLys、Ala、Arg、Glu、Leu、Orn、Phe、Gln、Aib、K(Ac)、Cys、K(W)又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa16はGln、Lys、Ala、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa17はVal、Ala、Leu、Ile、Met、Nle、Lys、Aib、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa18はAla、Ser、Cys又はAbuであり;
Xaa19はAla、Leu、Gly、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はAbuであり;
Xaa20はLys、Gln、hR、Arg、Ser、Orn、Ala、Aib、Trp、Thr、Leu、Ile、Phe、Tyr、Val、K(Ac)、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa21はLys、Arg、Ala、Phe、Aib、Leu、Gln、Orn、hR、K(Ac)、Ser、Cys、K(W)、K(CO(CHSH)又はhCであり;
Xaa22はTyr、Trp、Phe、Thr、Leu、Ile、Val、Tyr(OMe)、Ala、Aib又はSerであり;
Xaa23はLeu、Phe、Ile、Ala、Trp、Thr、Val、Aib又はSerであり;
Xaa24はGln、Asn、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa25はSer、Asp、Phe、Ile、Leu、Thr、Val、Trp、Gln、Asn、Tyr、Aib、Glu、Cys、K(CO(CHSH)又はhCであり;
Xaa26はIle、Leu、Thr、Val、Trp、Tyr、Phe、Aib、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa27はLys、hR、Arg、Gln、Orn又はdKであり;
Xaa28はAsn、Gln、Lys、Arg、Aib、Orn、hR、Pro、dK、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa29はLys、Ser、Arg、Asn、hR、Cys、Orn又は存在せず;
Xaa30はArg、Lys、Ile、hR又は存在せず;
Xaa31はTyr、His、Phe、Gln又は存在せず;
Xaa32はCys又は存在しないが;
但し、Xaa29、Xaa30、Xaa31又はXaa32が存在しない場合、存在する次のアミノ酸の下流はペプチドアゴニスト配列における次のアミノ酸である]
で示される配列;および
アミノ酸配列:
GGPSSGAPPPK(E−C16)(配列番号:8)
[式中、C末端アミノ酸はアミド化されてもよい]
を含むC末端伸張を含む。
【0012】
好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、式1の配列(配列番号:1)又は式2の配列(配列番号:2)を含み、式中、XaaはAsp又はGluであり、XaaはAsp又はGluであり、XaaはAsn又はGlnであり、Xaa10はTyr又はTyr(OMe)であり、Xaa12はArg、hR、Lys又はOrnであり、Xaa14はArg、Gln、Aib、hR、Orn、Cit、Lys、Ala又はLeuであり、Xaa15はLys、Aib、Orn又はArgであり、Xaa16はGln又はLysであり、Xaa17はVal、Leu、Ala、Ile、Lys又はNleであり、Xaa19はAla又はAbuであり、Xaa20はLys、Val、Leu、Aib、Ala、Gln又はArgであり、Xaa21はLys、Aib、Orn、Ala、Gln又はArgであり、Xaa23はLeu又はAibであり、Xaa25はSer又はAibであり、Xaa27はLys、Orn、hR又はArgであり、Xaa28はAsn、Gln、Lys、hR、Aib、Orn又はProであり及び/又はXaa29はLys、Orn、hR又は存在しない。
【0013】
好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは式1の配列(配列番号:1)又は式2の配列(配列番号:2)を含み、式中、XaaはGluであり、XaaはGlnであり、Xaa10はTyr(OMe)である。
【0014】
好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、式1(配列番号:1)又は式2(配列番号:2)の配列を含み、式中、Xaa14又はXaa15はAibである。
【0015】
好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、式1(配列番号:1)又は式2(配列番号:2)の配列を含み、式中、Xaa20又はXaa21はAibである。
【0016】
より好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、式1(配列番号:1)又は式2(配列番号:2)の配列を含み、式中、Xaa15はAibであり、及び/又はXaa20はAibである。
【0017】
好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、式1(配列番号:1)又は式2(配列番号:2)の配列を含み、式中、Xaa12、Xaa21、Xaa27及びXaa28は全てOrnである。
【0018】
好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、式1(配列番号:1)又は式2(配列番号:2)の配列を含み、式中、Xaa19はAbuである。
【0019】
好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、式1(配列番号:1)又は式2(配列番号:2)の配列を含み、式中、Xaa23はAibである。
【0020】
好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、式1(配列番号:1)又は式2(配列番号:2)の配列を含み、式中、Xaa25はAibである。
【0021】
好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、式1(配列番号:1)又は式2(配列番号:2)の配列を含み、式中、Xaa30、Xaa31及びXaa32は存在しない。さらにより好ましくは、Xaa29、Xaa30、Xaa1及びXaa32は全て存在しない。
【0022】
好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストはPEG化される。
【0023】
PEG分子は、本発明の第1の態様に従ってVPAC2受容体ペプチドアゴニストの任意の位置において、任意のLys、Cys、K(W)又はK(CO(CHSH)残基に共有結合することができる。
【0024】
VPAC2受容体ペプチドアゴニスト中の任意のLys残基は、K(W)又はK(CO(CHSH)と置換されてもよく、これはPEG化されてもよい。さらに、ペプチドアゴニストのいかなるCys残基も修飾システイン残基(例えばhC)で置換してもよい。修飾Cys残基はPEG分子に共有結合してもよい。
【0025】
複数のPEG分子がある場合、Lys、Cys、K(CO(CHSH)及びK(W)のPEG化の組合せがありうる。2つのPEG分子を存在させる場合、例えば1つをLys残基に結合させ、もう1つをCys残基に結合させてもよい。
【0026】
好ましくは、当該PEG分子は分岐状である。あるいは、当該PEG分子は直鎖状であってもよい。
【0027】
好ましくは、当該PEG分子は1,000Da〜100,000Daの分子量である。好ましくは、当該PEG分子は10,000、20,000、30,000、40,000、50,000及び60,000Daのものから選択される。さらに好ましくは、20,000、30,000、40,000又は60,000Daのものから選択される。本発明のペプチドアゴニストに共有結合するPEG分子が2つ存在する場合、各々1,000〜40,000Daであってもよく、好ましくは20,000及び20,000Da、10,000及び30,000Da、30,000及び30,000Da、又は20,000及び40,000Daの分子量である。
【0028】
好ましくは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは環状である。
【0029】
VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、ラクタム架橋により閉環してもよい。ラクタム架橋は残基側鎖のXaan+4に対して残基側鎖のXaaが共有結合することにより形成されることが好ましく、nは1〜28である。好ましくは、nは12、20又は21である。より好ましくは、nは21である。ラクタム架橋がAsp又はGluの残基側鎖に対してLys又はOrnの残基側鎖が共有結合して形成されることも好ましい。Lys又はOrn残基はDab残基と置換してもよく、この側鎖はAsp又はGluの残基側鎖に共有結合してもよい。
【0030】
あるいは、VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、ジスルフィド架橋により閉環してもよい。ジスルフィド架橋は残基側鎖のXaaが残基側鎖のXaan+4に対して共有結合することにより形成されることが好ましく、nは1〜28である。好ましくは、nは12、20又は21である。より好ましくは、nは21である。ジスルフィド架橋が他のCys又はhC残基側鎖に対してCys又はhC残基側鎖が共有結合することにより形成されることも好ましい。
【0031】
あるいは、ラクタム架橋又はジスルフィド架橋は残基側鎖のXaan+3に対して残基側鎖のXaaが共有結合することにより形成されてもよく、nは1〜28である。ラクタム架橋又はジスルフィド架橋は、また残基側鎖のXaai+7又はXaai+8に対して残基側鎖のXaaが共有結合することにより形成されてもよく、iは1〜24である。
【0032】
VPAC2受容体ペプチドアゴニスト配列はさらに、当該ペプチドのXaaの上流のN末端にヒスチジン残基をさらに含んでもよい。
【0033】
好ましくは、本発明の第1の態様に係るVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、さらにペプチドアゴニストのN末端にてN末端修飾を有し、ここに、該N末端修飾は以下から選択される:
(a)D−ヒスチジン、イソロイシン、メチオニン又はノルロイシンの付加;
(b)配列Ser−Trp−Cys−Glu−Pro−Gly−Trp−Cys−Arg(配列番号:6)を含むペプチドの付加(ここに、ArgはペプチドアゴニストのN末端に連結する);
(c)独立してアリール、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよいC−C16アルキルの付加;
(d)−C(O)R(ここに、RはC−C16アルキル(独立してアリール、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン、−SH及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい);アリール(独立してC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい);アリールC−Cアルキル(独立してC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい)である);
−NR(ここに、R及びRは独立して水素、C−Cアルキル、アリール又はアリールC−Cアルキルである);
−OR(ここに、RはC−C16アルキル(独立してアリール、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい)、アリール(独立してC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい)、アリールC−Cアルキル(独立してC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい)である);又は
5−ピロリジン−2−オンの付加;
(e)−SO(ここに、Rはアリール、アリールC−Cアルキル又はC−C16アルキルである)の付加;
(f)任意にC−Cアルキル又は−SR(ここに、Rは水素又はC−Cアルキルである)で置換されてもよいスクシニミド基の形成;
(g)メチオニンスルホキシドの付加;
(h)ビオチニル−6−アミノヘキサン酸(6−アミノカプロン酸)の付加;及び
(i)−C(=NH)−NHの付加。
【0034】
好ましくは、N末端は次から選ばれる基の付加により修飾される。アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、メチオニン、メチオニンスルホキシド、3−フェニルプロピオニル、フェニルアセチル、ベンゾイル、ノルロイシン、D−ヒスチジン、イソロイシン、3−メルカプトプロピオニル、ビオチニル−6‐アミノヘキサン酸(6−アミノカプロン酸)、及び−C(=NH)−NH
当該N末端修飾がアセチル基又はヘキサノイル基の付加であるのが、特に好適である。
【0035】
当業者であれば、本願明細書に記載したような式1又は式2のペプチド配列、及びN末端修飾を様々な組合せで含むPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストを、上記の開示に基づいて作製できると認識するであろう。
【0036】
本発明の第1の態様に係るPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、以下のアミノ酸配列を含むのが好ましい。
【表1】

【0037】
本発明の第2の態様は、本発明の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニスト及び1つ以上の薬理学的に許容できる希釈剤、担体及び/又は賦形剤を含む、医薬組成物の提供に関する。
【0038】
本発明の第3の態様は、薬剤として使用するための、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストの提供に関する。
【0039】
本発明の第4の態様は、非インスリン依存性糖尿病又はインスリン依存性糖尿病の治療における使用又は摂食の抑制における使用のための、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストの提供に関する。
【0040】
本発明の第5の態様は、非インスリン依存性糖尿病もしくはインスリン依存性糖尿病の治療又は摂食抑制のための薬剤の製造のための、VPAC2受容体ペプチドアゴニストの使用の提供に関する。
【0041】
本発明のさらに別の態様は、有効量の本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストを投与することを含み、必要とする患者における非インスリン依存性糖尿病もしくはインスリン依存性糖尿病を治療し又は摂食を抑制する、方法の提供に関する。
【0042】
本発明のさらなる態様は、非インスリン依存性糖尿病もしくはインスリン依存性糖尿病を治療し又は摂食を抑制するための本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストを含む、医薬組成物の提供に関する。
【0043】
本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、公知のVPAC2受容体ペプチドアゴニストよりも選択性、有効性及び/又は安定性が増強されている。生体内で、C末端のパルミチン酸基は血清アルブミンと結合し、これにより腎ろ過を妨げ、VPAC2受容体ペプチドアゴニストの生物学的作用を延長する。
【0044】
本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、PEG化されてもよい。
【0045】
VPAC2受容体ペプチドアゴニスト上の特定の残基への1分子以上のPEGの共有結合により、非PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストと比較して、半減期が長く、クリアランスの減少した、生物学的に活性を有するPEG化されたVPAC2受容体ペプチドアゴニストが得られる。
【0046】
本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは環状でもよい。
【0047】
環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは小サイズ/中サイズの直鎖VPAC2ペプチド受容体アゴニストと比較してコンホメーションの可動性が低く、この理由から環状ペプチドは直鎖ペプチドに比べて許容されるコンホメーションの数が少なくなる。環化により直鎖ペプチドのコンホメーションの柔軟さを制約することで受容体結合能は強化され、直鎖ペプチドと比較して選択性が増し、タンパク分解安定性及び生物活性が向上する。
【0048】
用語「VPAC2」は、本発明のアゴニストが活性化する特定の受容体を指して用いる(Lutzら、FEBS Lett.、458巻、197−203ページ、1999年;Adamouら、Biochem.Biophys.Rec.Commun.、209巻、385−392ページ、1995年)。
この用語は、本発明のアゴニストを指すためにも用いる。
【0049】
本発明の「選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニスト」又は「VPAC2受容体ペプチドアゴニスト」は、選択的にVPAC2受容体を活性化し、インスリン分泌を誘導するペプチドを指す。好ましくは、本発明に係る選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストの配列は、28〜32の天然発生及び/又は非天然発生のアミノ酸を有し、さらにC末端伸張部分を含み、アミノ酸配列:GGPSSGAPPPK(E−C16)を含む。
【0050】
「選択的PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニスト」又は「PEG化されたVPAC2受容体ペプチドアゴニスト」は、1以上のポリエチレングリコール(PEG)分子に共有結合的に付加した選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニスト又はその誘導体であり、各PEGはシステイン又はリジンアミノ酸、又はK(W)又はK(CO(CHSH)残基に付加する。
【0051】
「選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニスト」又は「環状VPAC2受容体ペプチドアゴニスト」は、ペプチド鎖の2つのアミノ酸の側鎖を連結している共有結合形成によって閉環される選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストである。共有結合形成は、例えば、ラクタム架橋でもよく、ジスルフィド架橋でもよい。
【0052】
本発明の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、C末端伸張を有する。本発明の「C末端伸張」は、配列GGPSSGAPPPK(E−C16)を含み、式1(配列番号:1)又は式2(配列番号:2)のペプチド配列のC末端に対し、ペプチド結合を介してC末端伸張のN末端基で連結する。配列GGPSSGAPPPK(E−C16)は、エキセンディン−4(Exendin−4)のC末端配列変異株である。C末端リジン残基はグルタミン酸残基を有し、これはパルミチン酸でアルファ-アミノ基にてアシル化され、側鎖に付加する。
【0053】
C末端伸張部分に関して本願明細書に用いる「に連結」の用語は、式1又は式2のペプチド配列C末端にアミノ酸又は化学基が付加又は結合することを含む。
【0054】
適宜、選択的PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストはN末端修飾を有してもよい。本願明細書に用いる「N端末修飾」の用語は、ペプチドのN末端にアミノ酸若しくは化学基が直接付加若しくは結合して化学基を形成することが包含され、それによりペプチドのN末端に窒素原子が導入される。
【0055】
N末端修飾には、VPAC2受容体ペプチドアゴニストの配列への1つ以上の天然又は非天然アミノ酸の付加が包含されてもよく、好ましくは10アミノ酸以下であり、最も好ましくは1アミノ酸の付加である。N末端に付加させることができる天然アミノ酸としては、メチオニン及びイソロイシンが挙げられる。N末端に付加する修飾アミノ酸としてD−ヒスチジンを用いてもよい。あるいは、以下のアミノ酸をN末端に付加してもよい。配列番号:6:Ser−Trp−Cys−Glu−Pro−Gly−Trp−Cys−Arg(式中、ArgがペプチドアゴニストのN末端と結合する)。好ましくは、当該N末端に付加させるいずれのアミノ酸も、ペプチド結合で当該N末端と結合する。
【0056】
本発明の用語「に連結」には、N末端修飾に関して用いる場合、VPAC2受容体アゴニストのN末端に直接アミノ酸若しくは化学基を付加若しくは結合させることが包含される。上記のN末端修飾の付加は、ペプチド結合を形成させる通常の結合条件下で実施できる。
【0057】
ペプチドアゴニストのN末端基をアルキル基(R)、好適にはC−C16アルキル基の付加により修飾し、(R)NH−を形成してもよい。
【0058】
あるいは、ペプチドアゴニストのN末端基を式−C(O)Rの基の追加により修飾し、式RC(O)NH−のアミドを形成してもよい。式−C(O)Rの基の追加は、式RCOOHの有機酸との反応により遂行されてもよい。アシル化反応を使用したアミノ酸配列のN末端への修飾は、従来技術において、公知である(例えばGozesら、J.Pharmacol Exp Ther、273:161−167(1995)を参照)。式−C(O)R基の付加により、N末端において、尿素基(国際公開第2004/06839号、国際公開第01/23240号パンフレットを参照)又はカルバメート基が形成されてもよい。また、ピログルタミン酸又は6−アミノヘキサン酸を付加することによりN末端を修飾してもよい。
【0059】
ペプチドアゴニストのN末端基は、式−SOの基の追加により修飾してもよく、N末端基においてスルホンアミド基が形成される。
【0060】
ペプチドアゴニストのN末端をコハク無水物と反応させて修飾し、N末端でスクシニミド基を形成させてもよい。スクシニミド基によりペプチドのN末端に窒素原子が組み込まれる。
【0061】
あるいは、メチオニンスルホキシド、ビオチニル−6−アミノヘキサン酸、又は−C(=NH)−NHの付加によりN末端を修飾してもよい。−C(=NH)−NHの付加はグアニジン修飾であり、N末アミノ酸の末端NHは−NHC(=NH)−NHとなる。
【0062】
N末端修飾及びC末端伸張部分を含む本発明の大部分の配列中には、標準的な1文字又は3文字表記で表される20の天然アミノ酸が含まれる。使用する他の表記は、以下の通り定義する。
Ac=アセチル
C6=ヘキサノイル
d=対応するアミノ酸のDアイソフォーム(非自然発生)例えば、dA=D−アラニン、dS=D−セリン、dK=D−リジン
hR=ホモアルギニン
=非占有位置
Aib=アミノイソ酪酸
CH=メチレン
OMe=メトキシ
Nle=ノルロイシン
NMe=アミノ酸のアミノ基α位に付加するNメチル、例えばNMeA=Nメチルアラニン、NMeV=Nメチルバリン
Orn=オルニチン
K(CO(CHSH)=ε−(3’−メルカプトプロピオニル)−リジン
K(W)=ε−(L−トリプトフィル)−リジン
Abu=α−アミノ−n−酪酸又は2−アミノ酪酸
Cit=シトルリン
Dab=ジアミノ酪酸
K(Ac)=ε−アセチルリジン
PEG=ポリエチレングリコール
PEG40K=40,000Da PEG分子
PEG30K=30,000Da PEG分子
PEG20K=20,000Da PEG分子
K(E−C16)=(ε−(γ−L−グルタミル(N−α−パルミトイル))−リジン
式:
【化3】

=ラクタム架橋又はジスルフィド架橋
【0063】
VIPは、28のアミノ酸を有する単一配列として天然に存在する。
しかしながら、PACAPは、アミド化されたカルボキシル基を有する、38アミノ酸のペプチド(PACAP−38)又は27アミノ酸のペプチド(PACAP−27)のいずれかとして存在する(Miyataら、Biochem Biophys Res Commun、170:643−648(1990)。VIP、PACAP−27及びPACAP−38の配列は以下の通りである:
【表2】

【0064】
本願明細書の用語「天然アミノ酸」とは、ヒト遺伝コードによりコード化される20アミノ酸を意味する(すなわち20の標準的なアミノ酸)。これらの20のアミノ酸とは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンである。
【0065】
「非天然アミノ酸」の例としては、合成アミノ酸及び体内で修飾されたものが挙げられる。これらには、D−アミノ酸、アルギニン様アミノ酸(例えばホモアルギニン)、及び側鎖に余分のメチレンを有する他のアミノ酸(「ホモ」アミノ酸)、及び修飾アミノ酸(例えばノルロイシン、リジン(イソプロピル)−ここに、リジンの側鎖アミンはイソプロピル基で修飾されている)が挙げられる。またオルニチン、アミノイソ酪酸及び2−アミノブタン酸等のアミノ酸も包含される。
【0066】
本発明の用語「選択的」とは、VPAC2受容体ペプチドアゴニストが、他の公知の受容体よりもVPAC2受容体との高い選択性を有することを指す。選択性の程度は、VPAC2受容体結合アフィニティ:VPAC1受容体結合アフィニティの比率、及びVPAC2受容体結合アフィニティ:PAC1受容体結合アフィニティの比率により算出される。なお、結合アフィニティは実施例4にて後述するように算出される。
【0067】
「インスリン分泌活性」とは、高いグルコース濃度に応答してインスリン分泌を促進する能力のことを指し、これにより細胞によるグルコース取り込みが開始され、血漿中グルコース濃度が減少する。インスリン分泌性活性は公知の方法で評価することができ、例えばVPAC2受容体結合活性又は受容体活性化(例えばインスリノーマ細胞系又は小島によるインスリン分泌)を測定する試験、静脈グルコース負荷試験(IVGTT)、腹膜内グルコース負荷試験(IPGTT)、並びに経口グルコース負荷試験(OGTT)等が挙げられる。インスリン分泌性活性は、ヒトの場合はインスリン濃度又はC−ペプチド濃度を測定することによって、日常的に測定する。本発明の選択的PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストはインスリン分泌性活性を有する。
【0068】
本発明の「In vitro効果」とは、細胞ベースのアッセイにおいて、VPAC2受容体を活性化するペプチドの能力の基準のことを指す。in vitro効果は「EC50」として表し、それは単一の用量反応実験において、活性上昇の最大に対して50%の結果を生じさせる化合物の有効濃度を意味する。本発明の場合、in vitro効果は、DiscoveRx及びAlpha Screenの2つの異なるアッセイを使用して算出する。これらのアッセイの詳細は実施例3及び5を参照されたい。これらのアッセイは異なる方法で実施されるものの、得られる結果は通常2つのアッセイ間における相関関係を示す。
【0069】
「血漿中半減期」という用語は、循環する当該分子の半分が血漿中でクリアランスされるまでにかかる時間のことを指す。血漿中半減期又は半減時間に関して「延長された」又は「長期化された」というときは、PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストの半減期が、同じ条件下における参照分子(例えば非PEG化形態のペプチド又は天然ペプチド)のそれと比較して統計学的に有意に増加していることを意味する。本願明細書において報告する半減期は除去半減期であり、これは除去の最終相の対数線形率に対応する。当業者であれば、半減期は派生パラメータであり、クリアランス及び分布体積の関数であることを認識する。
【0070】
クリアランスは、生体の薬物除去能の尺度である。例えば薬剤の修飾によりクリアランスが低下した場合、半減期は長期化すると考えられる。しかしながらこの相互関係は、分布量に変化がない場合にのみ正確なものとなる。終末相の対数線形半減期(t1/2)、クリアランス(C)及び体積分布(V)の間の有用な近似関係は、次式により与えられる。
【数1】

クリアランスとはどれくらいの薬剤が除去されたかを指し示すものではなく、むしろ当該除去によって、薬剤から完全に解放されるべき生体液(例えば血液かプラズマ)の量のことを指す。
クリアランスは単位時間あたりの体積として表される。
【0071】
本発明で用いる「パーセント(%)配列相同性」とは、配列のアラインメントを取ったとき、それらが同様の位置又は領域において、同様のアミノ酸である(同一か若しくは保存的に置換されている場合)ことを示す場合に用い、その場合、同一若しくは保存的に置換されているアミノ酸とは、元となるタンパクと比較して、当該タンパクの活性又は機能を変えないそれらのことを指す。例えば、各々少なくとも85%の相同性を有する2つのアミノ酸配列とは、最適なアラインメントで最高3つのギャップを許容した場合、同様の位置において、少なくとも85%同様(同一若しくは保存的に置換された残基)であることを指すが、但しギャップに関しては、合計15以下のアミノ酸残基が影響を受けない。
【0072】
本発明の配列相同性(%)の算出に使用する参照ペプチドを以下に示す。
【表3】

【0073】
パーセント配列相同性は、本発明が想定するペプチドとP603(配列番号:7)等の参照ペプチドとの間で異なる残基数を計測し、その数をとって参照ペプチドのアミノ酸の数(例えばP603では39)で割り、結果に100を乗算して生じる数を100から減算することにより算出できる。例えば、P487と異なる4つのアミノ酸を有し、39アミノ酸を有する配列は、90%の配列相同性を有する(例えば、100−((4/39)×100))。39アミノ酸よりも長い配列の場合は、P487配列と異なる残基の数は、上記の算出に供される39アミノ酸を超える分のアミノ酸を含む。例えば、40アミノ酸を有し、P487配列の39アミノ酸とは4つのアミノ酸が異なり、P487配列に存在しないアミノ酸がカルボキシ末端に1つ添加されている場合、P487と異なるアミノ酸は合計5つとなる。すなわち、この配列は87%の配列相同性(%)を有する(例えば、100−((5/39)×100))。配列相同性の程度は公知の方法を使用して算出してもよい(Wilbur,W.J.及びLipman,D.J.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726−730(1983)及びMyers E.及びMiller W.,Comput.Appl.Biosci.4:11−17(1988)を参照)。相同性の程度を算出する際に使用できる1つのプログラムとしてはMegAlignリップマン−ピアソンの1ペア方法(デフォルトパラメータを使用する)が挙げられ、Lasergene systemの一部としてDNAstar Inc社,1128,Selfpark Street,Madison,Wisconsin,53715,USAから入手できる。使用できる他のプログラムとしてはClustal Wが挙げられる。これは、Thompsonらによって開発された、DNA又はたんぱく質配列用の複数配列整列パッケージである(Nucleic Acids Research、22巻、22号、4673−4680ページ、1994年)。このツールは関連する配列の異種間比較を実行し、配列の保存性を解析するのに有用である。Clustal Wは、DNA又はタンパク用の多目的多数配列整列プログラムである。これは異なる配列における、生物学的に有意義な多数の配列のアラインメントを生じさせる。選択された配列中に存在する、最高にマッチする部分を算出し、相同性、類似性及び相違が視覚可能となるようにそれらを整列させる。進化上の関係は、Cladograms又はPhylogramsを観察することにより解析できる。
【0074】
本発明に係る選択的PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストの配列は、VPAC2受容体に対して選択的であり、好ましくはP603(配列番号:7)と60%〜70%、60%〜65%、65%〜70%、70%〜80%、70%〜75%、75%〜80%、80%〜90%、80%〜85%、85%〜90%、90%〜97%、90%〜95%又は95%〜97%の範囲の配列相同性を有する。好ましくは、当該配列はP603(配列番号:7)と82%超の配列相同性を有する。好ましくは、当該配列はP603(配列番号:7)と90%超の配列相同性を有する。さらに好ましくは、当該配列はP603(配列番号:7)と92%超の配列相同性を有する。よりさらに好ましくは、当該配列はP603(配列番号:7)と95%又は97%超の配列相同性を有する。
【0075】
本願明細書に用いる用語「C−C16アルキル」は、1から16の炭素原子を有する1価の飽和直鎖、分枝又は環状炭化水素ラジカルであり、環状であるときは3から16の炭素原子を有する炭化水素を意味する。このように、用語「C−C16アルキル」は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ヘプチル、n−オクチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを含む。C−C16アルキル基は、例えばアリール、C−Cアルコキシ、−OH、ハロゲン、−CF及び−SHを含む1以上の置換基により適宜置換されてもよい。
【0076】
本発明の用語「C−Cアルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有する1価の飽和した直鎖状、分岐状若しくは環状ラジカルであり、環状であるときは3〜6個の炭素原子を有する炭化水素を意味する。このように、用語「C−Cアルキル」は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを含有する。C−Cアルキル基は、1つ以上の置換基により適宜置換されうる。
【0077】
本発明の用語「C−Cアルケニル」とは、少なくとも1つの二重結合を有し、2〜6個の炭素原子を有する一価の飽和した直鎖状、分岐状若しくは環状ラジカルであり、環状であるときは3〜6個の炭素原子を有する炭化水素を意味する。このように、用語「C−Cアルケニル」は、ビニル、プロパ−2−エニル、3以外のエニル、ペント−4−エニル及びイソプロペニルを含有する。C−Cアルケニル基は、一つ以上の置換基により適宜置換されうる。
【0078】
本願明細書中で使用される用語「C−Cアルキニル」とは、少なくとも一つの三重結合を有し、2から6の炭素原子を有する1価の直鎖又は分枝炭化水素ラジカルを意味する。このように、用語「C−Cアルキニル」は、プロパ−2−イニル、3以外のイニル及びペント−4−イニルを含有する。C−Cアルキニルは、1つ以上の置換基により適宜置換されうる。
【0079】
本発明の用語「C−Cアルコキシ」とは、1〜6個の炭素原子を有し、2価のO基を介して置換部位と結合している、1価の非置換の飽和した直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基を意味する。このように、用語「C−Cアルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ及びtert−ブトキシを含有する。C−Cアルコキシ基は、1つ以上の置換基により適宜置換されうる。
【0080】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素又はヨードを意味する。
【0081】
用語「アリール」とは、それのみ又は基の一部として使用する場合、フェニル基等の5〜10員からなる芳香族化合物若しくは複素環式芳香族化合物基、5又は6員からなる単環の複素環式芳香族化合物基(その各員は利用できる置換部位の数によって、1、2、3、4又は5個の置換基で任意に置換されてもよい)、ナフチル基、又は8−、9−又は10員からなる二環式複素環式芳香族化合物基(によって、任意に置換されてもよいことがありえる)(その各員は利用できる置換部位の数によって、1、2、3、4、5又は6個の置換基で任意に置換されてもよい)のことを指す。アリールのこの定義の中で、適切な代替は、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲン、−SH及びCFを含む。
【0082】
本願明細書中で使用される用語「アリールC−Cアルキル」とは、アリールによって置換されるC−Cアルキル基を意味する。このように、「アリールC−Cアルキル」は、ベンジル、1−フェニルエチル(−メチルベンジル)、2−フェニルエチル、1−ナフタレンメチル又は2−ナフタレンメチルを含む。
【0083】
用語「ナフチル」は、1−ナフチル及び2−ナフチルを含む。1−ナフチルが好ましい。
【0084】
本発明の用語「ベンジル」とは、−CH−基を介して置換部位と結合する一価の非置換フェニル基を意味する。
【0085】
本願明細書の用語「5又は6員の単環式複素環式芳香族基」とは、環中に合計5又は6個の原子を有する単環式芳香族基であって、それらの1〜4個の原子がN、O及びSから各々独立に選択されるものを意味する。好ましい基は、N、O及びSから各々独立に選択される1又は2個の原子を環中に有してなる。5員の単環式複素環式芳香族化合物基の例としては、ピロリル(またアゾリル基とも呼ばれる)基、フラニル基、チエニル基、ピラゾリル(また1H−ピラゾリル基及び1,2−ジアゾリル基と呼ばれる)基、イミダゾリル基、オキサゾリル(また1,3−オキサゾリル基と呼ばれる)基、イソキサゾリル(また1,2−オキサゾリル基と呼ばれる)基、チアゾリル(また1,3−チアゾリル基と呼ばれる)基、イソチアゾリル(また1,2−チアゾリル基と呼ばれる)基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基、オキサトリアゾリル基及びチアトリアゾリル基が挙げられる。6員の単環式複素環式芳香族化合物基の例としては、ピリジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基及びトリアジニル基が挙げられる。
【0086】
本願明細書中で用いる用語「8、9又は10員の二環式複素芳香族基」とは、環中に合計8、9又は10個の原子を有する二環式芳香族基であって、それらの1〜4個の原子がN、O及びSから各々独立に選択されるものを意味する。好ましい基は、環中に1〜3個の、N、O及びSから各々独立に選択される原子を有する。好適な8員の二環式複素環式芳香族化合物基としては、イミダゾ[2,1−b][1,3]チアゾリル基、チエノ[3,2−b]チエニル基、チエノ[2,3−d][1,3]チアゾリル基及びチエノ[2,3−d]イミダゾリル基が挙げられる。適切な9員の二環式複素芳香族基は、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル(また、ベンゾ[b]フラニルと呼ばれる)イソベンゾフラニル(また、ベンゾ[c]フラニルと呼ばれる)ベンゾチエニル(また、ベンゾ[b]チエニルと呼ばれる)イソベンゾチエニル(また、ベンゾ[c]チエニルと呼ばれる)インダゾリル、ベンズイミダゾリル、1,3−ベンゾオキサゾールイル、1,2−ベンズイソキサゾリル、2,1−ベンズイソキサゾリル、1,3−ベンゾチアゾリル、1,2−ベンゾイソチアゾリル、2,1−ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾールイル、1,2,3−ベンゾオキジアゾールイル、2,1,3−ベンゾオキジアゾールイル、1,2,3−ベンゾチアジアゾールイル、2,1,3−ベンゾチアジアゾールイル、チエノピリジニル、プリニル及びイミダゾ[1,2−a]ピリジンを含む。好適な10員の二環式複素環式芳香族化合物基としては、キノリニル基、イソキノリニル基、シノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、1,5−ナフチリジル基、1,6−ナフチリジル基、1,7−ナフチリジル基及び1,8−ナフチリジル基が挙げられる。
【0087】
本願明細書に用いる用語「PEG」はポリエチレングリコール分子を意味する。典型的な形態において、PEGは末端ヒドロキシル基を有する直鎖ポリマーであり、式HO−CHCH−(CHCHO)−CHCH−OHを有し、nは約8から約4000である。末端の水素原子は保護基(例えばアルキル基又はアルカノール基)で置換されてもよい。好ましくは、PEGは少なくとも1つのヒドロキシ基、好ましくは末端ヒドロキシ基を有する。好ましくはこのヒドロキシ基を活性化し、ペプチドと反応させる。本発明に有用な多くの形態のPEGが存在する。従来技術には多数のPEG誘導体が存在し、本発明の使用に適している。(米国特許第5445090号、第5900461号、第5932462号、第6436386号、第6448369号、第6437025号、第6448369号、第6495659号、第6515100号、及び第6514491号、並びにZalipsky,S.Bioconjugate Chem.6:150−165,1995)を参照されたい。)本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストに共有結合するPEG分子は、特定のタイプに限定されない。PEG分子は好ましくは500〜100000Daの分子量である。PEGは直鎖でも分枝でもよく、PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは1、2又は3つのPEG分子をペプチドに付加している。1、2個のPEG分子がPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニスト1分子当たりに存在するのがより好ましいが、複数のPEG分子がペプチド1分子に存在する場合は、3個以下で存在するのが好ましい。さらに、PEG分子の両端をホモ又はヘテロ官能化し、2つ以上のVPAC2受容体ペプチドアゴニストが架橋されうることを想定する。2つのPEG分子が存在する場合、当該PEG分子は好ましくは各々20000DaのPEG分子であるか、又は各々30000DaのPEG分子である。しかしながら、異なる分子量を有するPEG分子を用いてもよく、例えば1つが10000DaのPEG分子でもう1つが30000DaのPEG分子であってもよく、又は1つが20000DaのPEG分子でもう1つが40000DaのPEG分子であってもよい。
【0088】
PEG分子は、Cys又はLys残基に共有結合的に付加してもよい。PEG分子はLys残基側鎖(K(W))に結合するTrp残基に共有結合してもよい。あるいは、K(CO(CHSH)基がPEG化され、K(CO(CHS−PEGを形成してもよい。ペプチドアゴニストの任意のLys残基はK(W)又はK(CO(CHSH)と置換してもよく、次いでPEG化されてもよい。さらに、ペプチドアゴニストの任意のCys残基は修飾システイン残基(例えばhC)で置換されてもよい。修飾Cys残基はPEG分子に共有結合してもよい。
【0089】
本願明細書の用語「PEG化」とは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストに上記のように1つ以上のPEG分子が共有結合することを意味する。
【0090】
本願明細書に用いる用語「ラクタム架橋」とは、共有結合、特に、ペプチドアゴニストの1つのアミノ酸の側鎖アミノ末端をペプチドアゴニストの他のアミノ酸の側鎖カルボキシ末端に連結するアミド結合を意味する。好ましくは、ラクタム架橋は、残基側鎖のXaaを、残基側鎖のXaan+4に共有結合的に付加することにより形成され、nは1〜28である。また好ましくは、ラクタム架橋は、Lys又はOrn残基の側鎖アミノ末端を、Asp又はGlu残基の側鎖カルボキシ末端に共有結合的に付加することにより形成される。
【0091】
本願明細書に用いる用語「ジスルフィド架橋」とは、ペプチドアゴニストの1つのアミノ酸の側鎖終端で硫黄原子を、ペプチドアゴニストの他のアミノ酸の側鎖終端で硫黄原子に連結する共有結合形成を意味する。好ましくは、ジスルフィド架橋は、残基側鎖のXaaを、残基側鎖のXaan+4に共有結合的に付加することにより形成され、nは1〜28である。また好ましくは、ジスルフィド架橋は、Cys又はhC残基の側鎖を、他のCys又はhC残基の側鎖に共有結合的に付加することにより形成される。
【0092】
本発明の好ましい実施例によれば、式1(配列番号:1)又は式2(配列番号:2)のアミノ酸配列(式中、XaaはAsp又はGluであり、XaaはAsp又はGluであり、XaaはAsn又はGlnであり、Xaa10はTyr又はTyr(OMe)であり、Xaa12はArg、hR、Lys又はOrnであり、Xaa14はArg、Gln、Aib、hR、Orn、Cit、Lys、Ala又はLeuであり、Xaa15はLys、Aib、Orn又はArgであり、Xaa16はGln又はLysであり、Xaa17はVal、Leu、Ala、Ile、Lys又はNleであり、Xaa19はAla又はAbuであり、Xaa20はLys、Val、Leu、Aib、Ala、Gln又はArgであり、Xaa21はLys、Aib、Orn、Ala、Gln又はArgであり、Xaa23はLeu又はAibであり、Xaa25はSer又はAibであり、Xaa27はLys、Orn、hR又はArgであり、Xaa28はAsn、Gln、Lys、hR、Aib、Orn又はProであり、及び/又はXaa29はLys、Orn、hR又は存在しない)と、C末端伸張部分(配列:GGPSSGAPPPK(E−C16)を含む)と、N末端修飾(ヘキサノイル又はアセチルの付加である)を含むVPAC2受容体ペプチドアゴニストの提供に関する。
【0093】
他の本発明の好ましい実施例によれば、式1(配列番号:1)又は式2(配列番号:2)のアミノ酸配列(式中、XaaはGluであり、XaaはGlnであり、Xaa10はTyr(OMe)であり、Xaa12はOrnであり、Xaa15はAibであり、Xaa19はAbuであり、Xaa20はAibであり、Xaa21はOrnであり、Xaa23はAibであり、Xaa25はAibであり、Xaa27はOrnであり、及び/又はXaa28はOrnである)と、C末端伸張部分(配列:GGPSSGAPPPK(E−C16)を含む)と、N末端修飾(当該修飾はヘキサノイル又はアセチルの付加である)を含むVPAC2受容体ペプチドアゴニストの提供に関する。
【0094】
さらに別の本発明の好ましい実施例によれば、式2(配列番号:2)のアミノ酸配列と、C末端伸張部分(配列:GGPSSGAPPPK(E−C16)を含む)と、N末端修飾部分(当該修飾はヘキサノイル又はアセチルの付加である)を含むVPAC2受容体ペプチドアゴニストが提供に関する。
【0095】
本発明は、配列:GGPSSGAPPPK(E−C16)を含むC末端伸張が式1又は式2によるペプチド配列に付加することにより、このペプチドを保護し、並びに活性、選択性及び/又は効力を強化する特徴を提供することを見出すことに基づく。例えば、C末端伸張部分はペプチドの螺旋構造を安定させ、酵素の裂開を受けやすいC末端付近の部位を安定化する場合がある。さらにまた、本願明細書に開示のC末端伸張ペプチドは、VPAC2受容体に対してより選択的であり、VIP、PACAP及び他の公知のVPAC2受容体ペプチドアゴニストよりも強力である。
【0096】
タンパクのPEG化により、治療用にペプチド又はタンパクを使用することに付随する、多くの薬理学的、及び毒物的/免疫学的な課題が解決できる。しかしながら、個々のペプチドによっては、PEG化されたペプチドの形態が、非PEG化されたペプチドの形態と比較して生物活性が顕著に損なわれる場合もありうる。
【0097】
PEG化タンパクの生物活性は、例えば以下のような要因の影響を受ける。
i)PEG分子のサイズ、
ii)特定の付加部位、
iii)修飾の程度、
iv)好ましくない結合条件、
v)付加にリンカーを用いるか否か、又はポリマーは直接付加するか否か、
vi)有害副産物の発生、
vii)活性ポリマーにより与えられるダメージ、又は
viii)電荷の保持。
例えば、サイトカインのPEG化により、PEG化が有しうる効果が示される。使用する結合反応によっては、サイトカインのポリマー修飾により生理活性が劇的に低下する結果となった。
[Francis,G.E.ら、「サイトカイン及び他の治療タンパク及びペプチドのPEG化:結合技術の生物学的最適化の重要性」、Intl.J.Hem.、68巻、1−18ページ、1998年]
PEG化ペプチドの生物活性を維持することは、タンパクの場合よりも多くの課題を含む。ペプチドはタンパクよりも低分子であるため、PEG化による修飾は生物活性により大きな影響を及ぼすことが考えられる。
【0098】
本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、1つ以上のPEG分子の共有結合的付加により修飾されうる。PEG化ペプチドは、タンパク分解及び腎クリアランスがより低速になるため、一般に薬物動態学的なプロフィールが改善される。PEG化によりVPAC2受容体ペプチドアゴニストの見かけのサイズは増加し、そのため腎臓濾過が減少し、生体内分布が変化する。PEG化により、VPAC2受容体ペプチドアゴニスト中の抗原性エピトープは遮蔽され、これにより再網内皮性クリアランス及び免疫系による認識が低下し、さらにDPP−IV等のタンパク分解酵素による分解が低下する。
【0099】
低分子の生物活性VPAC2受容体ペプチドアゴニストに1以上のPEG分子が共有結合的に付加すると、例えば、固有の2次構造及び生理活性コンホメーションを不安定化することにより、このアゴニストが好ましくない影響を発揮する危険性が問題提起され、これによりこのアゴニストは治療薬としての使用に不適切となる。VPAC2受容体ペプチドアゴニスト上の特定の残基に1以上のPEG分子が共有結合的に付加すると、非PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストと比較して、半減期が長く、クリアランスの低下した、生物活性を有するPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストが得られる。
【0100】
VPAC2受容体ペプチドアゴニスト内のPEG化可能部位を決定するため、セリンのスキャニングを実施した。Ser残基をペプチドの特定の部位で置換し、Ser修飾されたペプチドに関し、それによる効果及び選択性を試験する。あるSer置換による薬剤の効果に対する影響が最小であり、当該Ser修飾ペプチドがVPAC2受容体に選択的である場合、そのSer残基をさらにCys又はLys残基で置換し、その部分を直接的又は間接的なPEG化部位として用いる。間接的な残基のPEG化とは、PEG化部位の残基と結合する化学基又は残基をPEG化することを指す。Lysの間接的PEG化は、K(W)及びK(CO(CHSH)のPEG化を含有する。
【0101】
本願明細書に記載の本発明は、VPAC2に1以上のPEG分子を共有結合的に付加しうる受容体ペプチドアゴニスト又はその誘導体を提供し、各PEGはペプチドアゴニスト内のCys又はLysアミノ酸、K(W)又はK(CO(CHSH)に付加してもよい。PEG化により、選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストの半減期は長期化され、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3、5、7、10、15、20又は24時間、最も好ましくは少なくとも48時間の除去半減期を有するPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストが得られる。PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストのクリアランス値は、好ましくは200ml/h/kg以下、より好ましくは、180、150、120、100、80、60ml/h/kg以下、最も好ましくは50、40又は20ml/h/kg未満である。
【0102】
野生型VIP領域は位置8のアスパラギン酸から位置26のイソロイシンまでαヘリックス構造を有する。ペプチドの螺旋構造が増加すると効力及び選択性が強化され、同時に酵素的分解への防御が増す。C末端伸張を用いて、ペプチドの螺旋構造を強化することができる。加えて、螺旋表面の2つのアミノ酸側鎖を連結する、例えばラクタム架橋のような共有結合を導入することも、ペプチドの螺旋構造を強化する。
【0103】
さらに、VPAC2受容体ペプチドアゴニストのN末端修飾により、薬効の強化及び/又はDPP−IV裂開に対する安定化が得られることを見出した。
【0104】
VIP及び幾つかの公知のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは様々な酵素による分解を受けやすいため、インビボでは短い半減期を有する。VPAC2受容体ペプチドアゴニストの様々な酵素切断部位は後述する。切断部位は、VIPのアミノ酸位と関連して述べ(配列番号:3)、本願明細書において強調される配列に適用できる。
【0105】
酵素ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)によるペプチドアゴニストの切断は、位置2(VIPのセリン)と位置3(VIPのアスパラギン酸)の間に生じる。本発明のアゴニストは、N末端修飾の付加により、この領域におけるDPP−IVによる切断に対してより安定になる。DPP−IVによる切断に対する安定性を改善できるN末端修飾の例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、メチオニン、メチオニンスルホキシド、3−フェニルプロピオニル基、フェニルアセチル基、ベンゾイル基、ノルロイシン、D−ヒスチジン、イソロイシン、3−メルカプトプロピオニル基、ビオチニル−6−アミノヘキサン酸(6−アミノカプロン酸)及び−C(=NH)−NHの付加が挙げられる。N末端修飾がアセチル基又はヘキサノイル基の付加であるのがより好ましい。
【0106】
野生型VIP中のキモトリプシン切断部位は、アミノ酸10と11(チロシン及びトレオニン)の間、及びアミノ酸22と23(チロシン及びロイシン)の間に存在する。位置10及び/又は11及び位置22及び/又は23における置換により、これらの部位でのペプチドの安定性が改善されうる。例えば、位置10及び/又は22チロシンをTyr(OMe)に置換することにより安定性が向上しうる。例えば、位置21及び25でアミノ酸側鎖を連結するラクタム架橋により、22−23部位を切断から保護しうる。
【0107】
野生型VIP中のトリプシン切断部位は、位置12と13のアミノ酸の間に存在する。特定のアミノ酸置換(例えば位置12におけるオルニチン、及び位置13におけるアミノイソ酪酸)によっては、この部位でのペプチド切断に対する感受性が減少する。
【0108】
野生型VIP、及び公知の多数のVPAC2受容体ペプチドアゴニストにおいては、塩基性アミノ酸である位置14と15の間、及び位置20と21の間に切断部位が存在する。本発明の選択的なPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、これらの部位が置換されているため、in vivoでのタンパク分解に対する安定性が改善されている。これらの部位の好ましい置換により、トリプシン様酵素(トリプシンを含む)によるペプチド切断に対する感受性が減少する。例えば、位置15のアミノイソ酪酸、位置20のアミノイソ酪酸及び位置21のオルニチンによる置換は、安定性の向上につながりうるため全て好ましい。
【0109】
切断部位はまた、野生型VIPのアミノ酸位置25と26の間にも存在する。この切断部位は、位置26で位置25及び/又はアミノ酸でアミノ酸の代替で、完全に、又は部分的に脱離されることができる。
【0110】
VPAC2受容体ペプチドアゴニスト中の、アミノ酸位置27、28、29、30及び31を含む領域もまた酵素分解を受けやすい。C末端伸張部分の付加により、ペプチドアゴニストが神経エンドペプチターゼ(NEP)に対してより安定になる場合があり、VPAC2受容体に対する選択性が向上する場合もある。この領域はまたトリプシン様の酵素による攻撃を受けやすい。それが生じる場合には、ペプチドアゴニストは更なるカルボキシプチダーゼ活性によりそのC末端伸張部分を喪失し、当該ペプチドが不活性な形態となりうる。この部位の分割に対する抵抗は、オルニチンを有する位置27、28及び/又は29でアミノ酸を置換することによって増加することができる。
【0111】
選択的なPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは様々なペプチダーゼによる分解抵抗性を有するが、それ以外にも、本発明の選択的なPEG化VPAC2ペプチド受容体アゴニストは、公知の幾つかのペプチドと比較して、VPAC2受容体に対する選択性を有し、薬理効果が強化され、及び/又は安定性が向上したペプチドであるという側面を有する。
【0112】
好ましくは、選択的非PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、2nM未満の半有効濃度値EC50値を有する。より好ましくは、EC50値は1nM未満である。さらにより好ましくは、EC50は0.5nM未満である。なおより好ましくは、EC50は0.1nM未満である。好ましくは、選択的PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは200nM未満のEC50値を有する。より好ましくは、EC50値は50nM未満である。さらにより好ましくは、EC50値は30nM未満である。なおより好ましくは、EC50値は10nM未満である。
【0113】
実施例4において、VPAC1受容体結合親和性に対するVPAC2受容体結合親和性の比として、及び、PAC1受容体結合親和性に対するVPAC2受容体結合親和性の比として、選択性を計測するアッセイを記載する。好ましくは、本発明のアゴニストは、VPAC1及び/又はPAC1受容体の場合と比較して、VPAC2受容体に対する親和性が少なくとも50倍高い選択性比率を有する。より好ましくは、このVPAC2に対する親和性は、VPAC1及び/又はPAC1に対するよりも少なくとも100倍高い。さらに好ましくは、このVPAC2に対する親和性は、VPAC1及び/又はPAC1に対するより少なくとも200倍高い。よりさらに好ましくは、このVPAC2に対する親和性は、VPAC1及び/又はPAC1に対するより少なくとも500倍高い。よりさらに好ましくは、このVPAC2に対する親和性は、VPAC1及び/又はPAC1に対するより少なくとも1000倍高い。
【0114】
本発明で用いる「選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニスト」には、本願明細書に記載の当該アゴニストの薬理学的に許容できる塩も包含される。本発明の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、多くの酸性基、塩基性基及びそれらの両方の官能基を有するため、多くの無機塩基、並びに無機及び有機酸のいずれとも反応して塩を形成する。酸性付加塩の形成に通常使用される酸としては、塩酸、臭化水素、ヨウ素化水素、硫酸、リン酸等の無機酸、並びにp−トルエンスルホン酸、メタン硫酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸が挙げられる。かかる塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、モノリン酸水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸、フマル酸エステル、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオン酸塩、ヘキシン−1,6−ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩、キシレンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0115】
塩基付加塩としては、無機塩基(例えばアンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等)に由来するものが挙げられる。本発明の塩の調製に有用なかかる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0116】
本発明の選択的PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、好ましくは医薬組成物として製剤化される。標準的な製剤技術として、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAに記載の方法を採用してもよい。本発明の選択的PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、舌下、局所、経口、経真皮、鼻腔内、肺内投与用に処方してもよく、又は非経口投与用に処方してもよい。
【0117】
非経口投与としては、例えば筋肉内、静脈内、皮下、皮内、腹膜内投与等の全身投与が挙げられる。選択的PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストを、医薬組成物の一部として、薬理学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて患者に投与し、NIDDM又は以下に記載するような障害を治療できる。当該医薬組成物は溶液状であってもよく、又は非経口投与する場合には、PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストの懸濁液、又は二価の金属陽イオン(例えば亜鉛)と錯体を形成したPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストの懸濁液としてもよい。適切な薬剤担体は、ペプチド又はペプチド誘導体と相互作用しない不活性成分を含有してもよい。非経口投与用の適切な薬剤担体としては、例えば滅菌した水、生理食塩水、静菌食塩水(約0.9%mg/mLでベンジルアルコールを含有する食塩水)、リン酸緩衝食塩水(ハンクス溶液)、乳酸リンガー液等が挙げられる。適切な賦形剤の若干の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、トレハロース、ソルビトール及びマンニトールが挙げられる。
【0118】
本発明のPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、その血漿中濃度が長期間有効な濃度範囲内に維持されるように製剤化してもよい。ペプチド薬の有効な経口輸送を妨げる主な障害としては、酸及び酵素によるペプチドの分解による弱い生物学的利用能、上皮膜による弱い吸収、及び消化管の酸性pH環境への暴露後のペプチドの不溶性化が挙げられる。本発明が想定する当該ペプチドを経口輸送する様々なシステムは当業に公知である。例えば、PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストをマイクロカプセル中に封入し、さらに経口輸送することが可能である。例えば、PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、充填材として市販されている、生物学的適合性を有する、生物分解性ポリマー、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)−COOH及びオリーブ油から構成されるマイクロカプセルに封入できる(Josephら、Diabetologia 43:1319−1328(2000)を参照)。Alkermes社製Medisorb(登録商標)及びProlease(登録商標)等の市販生分解性ポリマー等の他のタイプのマイクロカプセル技術も用いうる。Medisorb(登録商標)ポリマーは任意のラクチド異性体から調製しうる。ラクチド:グリコリド比率は0:100〜100:0の間で変化させることができ、幅広い範囲のポリマー特性となりうる。これにより、数週から数か月にわたる再吸収時間を有する輸送システム及びインプラント可能手段の設計が可能となる。またEmisphereが、ペプチド及びタンパクの経口輸送技術に関する記事として多数報告されている。例えば、Leone−bayらの国際公開第95/28838号が挙げられ、そこでは修飾アミノ酸を含有する特異的な担体により吸収を促進する技術に関して開示している。
【0119】
本願明細書に記載の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、多種の疾患及び症状を有する患者の治療に使用できる。本発明に包含されるアゴニストは、VPAC2受容体と呼ばれる受容体において、それらの生物学的効果を及ぼす。ゆえに、VPAC2受容体刺激、又はVPAC2受容体ペプチドアゴニストの投与に有利に反応する疾患及び/又は症状を有する患者は、本発明のPEG化VPAC2アゴニストにより治療されうる。これらの患者は「VPAC2アゴニストでの治療を必要とする」、又は「VPAC2受容体刺激を必要とする」と称される。
【0120】
本発明の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、1型及び2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病又はNIDDM)を含む糖尿病治療に使用してもよい。このアゴニストは、NIDDMが進行する危険性を有する患者に対して、VPAC2受容体アゴニストを用いて予防的処置を行ってもよい。当該治療は、糖尿病及び糖尿病合併症の発症を遅延させうる。本発明のアゴニストで処置することができる更なる患者としては、耐糖能の異常(IGT)(Expert Committee on Classification of Diabetes Mellitus,Diabetes Care 22(Supp.1):S5,1999)、又は空腹時血糖異常(IFG)(Charlesら、Diabetes 40:796,1991)を有する患者であって、体重が、患者の身長及び体格における標準体重より約25%高い患者、NIDDMに罹患する親を1人でも有する患者、妊娠糖尿病に罹患した患者及び例えば内因性インスリン分泌の減少から生じる代謝性障害を有する患者が挙げられる。選択的なVPAC2受容体ペプチドアゴニストを用いて、耐糖能異常を有する患者の症状のNIDDMへの発展の防止、膵臓β−細胞の悪化の防止、β−細胞増殖の誘導、β−細胞機能の改善、休止中のβ−細胞の活性化、β−細胞への細胞分化、β−細胞複製の刺激及びβ−細胞アポトーシスの阻害等が可能となる。本発明の方法において、本発明のアゴニストを使用して治療若しくは予防できる疾患及び症状としては:若年性糖尿病(MODY)(Hermanら、Diabetes 43:40,1994)、成人の潜在性自己免疫疾患(LADA)(Zimmetら、Diabetes Med.11:299,1994)、妊娠糖尿病(Metzger,Diabetes,40:197,1991)、代謝性エックス症候群、異脂肪血症、高血糖、高インスリン血症、高トリグリセリド血症及びインスリン抵抗等が挙げられる。
【0121】
本発明の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、糖尿病の第2の原因の治療にも使用できる(Expert Committee on Classification of Diabetes Mellitus,Diabetes Care 22(Supp.l):S5,1999)。かかる第2の原因としては、グルココルチコイド過剰、成長ホルモン過剰、クロム親和性細胞腫及び薬物性糖尿病が挙げられる。糖尿病を誘導しうる薬剤としては、限定されないがピリミニル、ニコチン酸、グルココルチコイド、フェニトイン、甲状腺ホルモン、β−アドレナリン作動薬、α−インターフェロン及びHIV感染治療薬等が挙げられる。
【0122】
本発明の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、食物摂取の抑制及び肥満の治療に効果的である。
【0123】
本発明の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストはまた、アテローム硬化型疾患、高脂血症、高コレステロール血症、低HDL濃度、高血圧、原発性肺高血圧症、心血管疾患(アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病及び冠状動脈疾患を含む)、脳血管疾患及び末梢性血管疾患等の障害の予防若しくは治療、並びに、狼瘡、多嚢胞性卵巣症候群、発癌及び過形成の治療、男性及び女性の生殖障害、性的障害、潰瘍、睡眠障害、脂質及び炭水化物の代謝障害、体内時計の機能不全、成長障害、エネルギーホメオスタシスの障害、自己免疫疾患等の免疫疾患(例えば全身エリテマトーデス)、並びに急性及び慢性炎症性疾患、慢性関節リウマチ及び感染性ショック等の治療に効果的である。
【0124】
本発明の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストはまた、例えば脂質蓄積細胞への細胞分化、インスリン感受性及び血糖値の調節に関連する生理的障害の治療に有用である。それらは例えば膵臓β細胞の不全、インスリン分泌腫瘍の形成及び/又は自己免疫低血糖症(インスリンに対する自己抗体、インスリン受容体に対する自己抗体若しくは膵臓β細胞を活性化する自己抗体による)、アテローム動脈硬化性斑、炎症性反応、発癌、過形成、脂肪細胞遺伝子発現、脂肪細胞分化、膵臓β細胞質量の減少、インスリン分泌、インスリンに対する組織感度、脂肪肉腫細胞増殖、多嚢胞性卵巣の疾患、慢性無排卵、高アンドロゲン症、プロゲステロン産生、ステロイド合成、細胞内の酸化還元ポテンシャル及び酸化ストレスの形成をもたらすマクロファージの分化、一酸化窒素シンターゼ(NOS)産生、γグルタミルペプチド転移酵素、カタラーゼ、血漿中トリグリセリド、HDL及びLDLコレステロール濃度の上昇等が関与する。
【0125】
さらに、本発明の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストは喘息の治療(Bolinら、Biopolymer 37:57−66(1995)、米国特許第5677419号、ポリペプチドR3POがモルモット気管平滑筋を弛緩させる活性を有することを示す)、低血圧誘導(VIPは喘息の患者における低血圧、心搏急速及びほてりを誘導する(Moriceら、Peptides 7:279−280(1986)、Moriceら、Lancet 2:1225−1227(1983))、男性の生殖器障害の治療(Siowら、Arch.Androl.43(1):67−71(1999))、抗アポトーシス/神経保護薬としての使用(Brennemanら、Ann.N.Y.Acad.Sci.865:207−12(1998))、虚血の間の心臓保護(Kalfinら、J.Pharmacol.Exp.Ther.1268(2):952−8(1994)、Das,ら、Ann.N.Y.Acad.Sci.865:297−308(1998))、体内時計及びそれに関連する障害の調節(Hamarら、Cell 109:497−508(2002)、Shenら、Proc.Natl.Acad.Sci.97:11575−80,(2000))、及び抗潰瘍薬としての使用(Tuncelら、Ann.N.Y.Acad.Sci.865:309−22,(1998))に供することができる。
【0126】
選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストの「有効量」とは、VPAC2受容体刺激を必要とする患者に投与したときの、許容できない副作用を引き起こすことなく、所望の治療的及び/又は予防的効果をもたらす量のことを指す。「所望の治療的効果」には、以下の1つ以上が含まれる:1)疾患又は症状に関連する徴候の改善、2)疾患又は症状を伴う症状発現の遅延、3)治療を行わない場合と比較した寿命の長期化、及び4)治療を行わない場合と比較した生活の質の改善。例えば、NIDDMの治療用のVPAC2アゴニストの「有効量」とは、治療を行わない場合よりも血液グルコース濃度がより顕著に制御される量のことを指し、それにより、結果的に糖尿病による合併症(例えば網膜症、神経障害又は腎臓病)の発症が遅延される。NIDDMの予防用の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストの「有効量」とは、処置を行わない場合と比較して、抗血糖剤(例えばスルホニル尿素、チアゾリジンジオン、インスリン及び/又はビスグアニジン)による治療が必要となる高血糖の発症を遅延させる量のことを指す。
【0127】
患者に投与される選択的なVPAC2受容体ペプチドアゴニストの「有効量」は、疾患のタイプ及び重症度、並びに患者の特徴(例えば健康状態、年齢、性別、体重及び薬剤に対する許容度)にも依存する。患者の血液グルコースの正常化に効果的な選択的VPAC2ペプチド受容体アゴニストの投与量は、限定されないが、患者の性別、体重及び年齢、血糖値の制御不能の重症度、投与経路及び生物学的利用能、ペプチドの薬物動態プロフィール、薬効及び製剤化のタイプ等の多くの要因に依存する。
【0128】
本発明の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストの典型的な投与量範囲は、約1μg/日〜約5000μg/日にわたる。好ましくは、投与量は約1μg/日〜約2500μg/日、より好ましくは約1μg/日〜約1000μg/日にわたる。さらに好ましくは、投与量は約5μg/日〜約100μg/日にわたる。さらに好ましい投与量範囲は、約10μg/日〜約50μg/日である。最も好ましくは、投与量は約20μg/日である。
【0129】
「患者」とは哺乳類であり、好ましくはヒトであるが、それ以外の動物、例えばコンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコ等)、家畜(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)及び実験動物(例えばラット、マウス、モルモット等)であってもよい。
【0130】
本発明の選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、固相ペプチド合成等の標準的な方法を用いて調製できる。例えば、ペプチド合成装置としてRainin−PTI Symphony Peptide Synthesizer(Tucson社製、米国アリゾナ州)等が市販されている。固相合成用の試薬は、例えばGlycopep社(シカゴ、米国イリノイ州)から市販されている。固相ペプチド合成装置を製造業者の指示に従って使用し、干渉基を保護し、反応させるアミノ酸を保護し、カップリングさせ、デカップリングさせ、未反応アミノ酸をキャッピングすることができる。
【0131】
典型的には、α−N保護されたアミノ酸と、樹脂上で伸長するペプチド鎖上のN末端アミノ酸を、室温で、不活性溶媒(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン又はメチレンクロライド)中で、カップリング剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び塩基、例えばジイソプロピルエチルアミンの存在下でカップリングさせる。α−N保護基を、トリフルオロ酢酸又はピペリジン等の試薬を使用して、得られるペプチド樹脂から除去し、さらにペプチド鎖に付加させる次の所望のN保護アミノ酸を用いてカップリング反応を反復する。適切なアミン保護基は公知であり、例えばGreen及びWuts、“Protecting Groups in Organic Synthesis”、John Wiley and Sons、1991に記載されている。例えばt−ブチルオキシカルボニル(tBoc)基及びフルオロエニルメトキシカルボニル(Fmoc)基が挙げられる。
【0132】
選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、適切な側鎖保護基を有するt−ブトキシカルボニル−又はフロロエニルメトキシカルボニル−α−アミノ酸を使用する標準的な自動固相合成プロトコルを使用して合成できる。合成終了後、例えばα−アミノ基を以下のものと反応させることによりN末端修飾を行ってもよい:(i)活性エステル(α−N保護アミノ酸の導入に関する上記と同様のプロトコルを使用)、(ii)アルデヒド(還元剤の存在下(還元的アミノ化方法))、及び(iii)グアニド化(guanidation)試薬。さらに、標準的なフッ化水素又はトリフルオロ酢酸(TFA)を用いた側鎖の同時脱保護方法を用いて固相担体からペプチドを分離させる。さらに粗ペプチドを、VYDAC C18カラムによる逆相クロマトグラフィを使用して、0.1% TFA中のアセトニトリル勾配により精製する。アセトニトリルを除去するため、0.1%のTFA、アセトニトリル及び水を含有する溶液からペプチドを凍結乾燥させる。分析用逆相クロマトグラフィにより純度を検定できる。質量分析によりペプチドのアイデンティティを解析できる。中性pHの水性バッファ中にペプチドを溶解させることができる。
【0133】
また本発明のペプチドアゴニストは、真核生物及び原核細胞宿主を使用し、公知の組換え方法により調製してもよい。
【0134】
ペプチドを調製、精製した後、少なくとも1分子のPEGを、Cys若しくはLys残基、K(W)若しくはK(CO(CHSH)、又はカルボキシ末端アミノ酸に共有結合させて修飾する。PEGと共有結合したペプチドの調製方法として、多様な手法が従来技術において公知であり、本発明に使用する方法は特に限定されない(RobertsM.ら、Advanced Drug Delivery Reviews,54:459−476,2002)の報告等を参照)。
【0135】
使用可能なPEG分子の例としては、メトキシ−PEG2−MAL−40K(2つに分かれたPEGマレイミド(Nektar社製、ハンツヴィル、アラバマ)が挙げられる。他の例としては、バルクmPEG−SBA−20K(Nektar社製)、mPEG2−ALD−40K(Nektar社製)及びメトキシ−PEG−MAL−30K(Dow社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
本発明のPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストを調製するための1つの方法として、PEG−マレイミドを使用してPEGを直接ペプチドのチオール基に結合させる方法が挙げられる。チオール官能基の導入は、上記の位置でペプチド上若しくはペプチド内にCys又はhC残基を付加若しくは挿入することにより実施できる。また、例えばメルカプトプロピオン酸等のチオール含有酸を用いるリジン−アミノ基のアシル化により、ペプチド側鎖上にチオール官能基を導入することもできる。本発明に係るPEG化方法では、マイケル付加を利用して安定なチオエーテルリンカーを形成させる。反応は非常に特異的であり、他の官能基の存在下、穏やかな条件下で生じる。PEGマレイミドが、良く知られた、生理活性なPEG−タンパクコンジュゲートの調製用の反応性ポリマーとして用いられている。好ましくは、当該方法では、チオール含有VPAC2受容体ペプチドアゴニストの過剰量(好ましくはPEGマレイミドに対して1〜10モルの過剰)を用いて反応を完了させる。好ましくは10分〜40時間、室温で、pH4.0〜9.0において、反応を実施する。過剰の非PEG化チオール含有ペプチドは、従来技術の分離方法によって、PEG化生成物から容易に分離できる。PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは好ましくは逆相HPLC又は限外除外クロマトグラフィを使用して単離された状態である。VPAC2受容体ペプチドアゴニストのPEG化に必要な特異的な条件を実施例8に示す。システインのPEG化は、PEGマレイミド又は二分枝のPEGマレイミドを用いて実施できる。
【0137】
VPAC2受容体ペプチドアゴニストをPEG化する代替法には、PEG−スクシンイミジル誘導体を用いてリジン残基をPEG化することが挙げられる。部位特異的PEG化のため、PEG化に用いないLys残基をArg残基で置換する。
【0138】
他のPEG化方法は、Pictet−Spengler反応を経由する方法である。この方法では、VPAC2受容体に選択的なペプチド上にPEG分子を導入するために、遊離アミン基を有するTrp残基が必要となる。これを実施するための1つのアプローチとしては、固相合成の間に、Lys側鎖のアミン基に対してアミド結合を介して部位特異的にTrp残基を導入する方法が挙げられる(実施例10を参照)。
【0139】
VPAC2受容体ペプチドアゴニストの環化は、溶液中、又は固体担体上で実施しうる。固体担体上の環化は、ペプチドの固相合成に引き続いて直ちに実行されうる。これは、環化において共有結合的に連結されるアミノ酸の選択性又は直交的保護を含む。
【0140】
以下、本発明のさまざまな好適な特徴及び実施形態を、次の非限定的な実施例に関して記載する。
【実施例】
【0141】
<実施例1>固相化t−Bocによる選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストの調製:
約0.5〜0.6g(0.38〜0.45mmole)のBocSer(Bzl)−PAM樹脂を、標準的な60mL反応容器中に添加した。Applied Biosystems社製のABI430Aペプチド合成装置を用いてダブルカップリングを実施した。以下の側鎖被保護アミノ酸(Bocアミノ酸の2mmoleカートリッジ)をMidwest Biotech社(Fishers、米国インディアナ州)から購入し、合成に用いた。
【0142】
Arg−トシル(Tos)Asp−シクロヘキシルエステル(OcHx)Asp−9−フルオレニルメチル(Fm)Cys−p−メチルベンジル(p−MeBzl)Glu−シクロヘキシルエステル(OcHx)ヒスチジン−ベンジルオキシメチル(Bom)Lys−2−クロロベンジルオキシカルボニル(2Cl−Z)Lys−9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)Orn−2−クロロベンジルオキシカルボニル(2Cl−Z)Ser−O−ベンジルエーテル(OBzl)トレオニン−O−ベンジルエーテル(OBzl)Trp−ホルミル(CHO)Tyr−2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2Br−Z)Boc−Ser(OBzl)PAM樹脂及びMBHA樹脂。
トリフルオロ酢酸(TFA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、DMF中の0.5Mのヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)及びジクロロメタン中の0.5Mのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)をPE−Applied Biosystems社(Foster City、米国カリフォルニア州)から購入した。
ジメチルホルムアミド(DMF−Burdick and Jackson)及びジクロロメタン(DCM−Mallinkrodt)をMays Chemical社(インディアナポリス、米国インディアナ州)から購入した。
ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフロロホスファート(BOP)は、NovaBiochem(サンディエゴ、米国カリフォルニア州)から得た。
【0143】
対称な無水物又はHOBtエステルを使用して標準的なダブルカップリングを実施し、両方ともDCCを使用して形成させた。合成終了後、N末端Boc基を除去し、Trpが配列中に存在する場合にはペプチジル樹脂を、DMF中の20%ピペリジンで処理し、Trp側鎖を脱ホルミル化した。N末端アシル化のため、4倍過剰の対応する酸の対称無水物をペプチド樹脂に添加した。DCM中でジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を活性化させ、対称無水物を調製した。4時間反応させ、ニンヒドリン試験によりモニターした。DCMで洗浄した後、樹脂をTEFLON製の反応容器へ移し、真空乾燥させた。
【0144】
反応容器をHF(フッ化水素)装置(Penninsula Laboratories社製)に取り付け、開裂反応を実施させた。g/樹脂当たり1mLのm−クレゾールを添加し、10mLのHF(AGA社製、インディアナポリス、IN)を予め冷却された容器中で凝縮させた。メチオニンが存在する場合は、樹脂g当たり1mLのDMSを添加した。アイスバス中で1時間反応液を撹拌した。真空内でHFを除去した。エチルエーテル中に残余物を懸濁させた。固体を濾過し、エーテルで洗浄した。各ペプチドを酢酸水溶液で抽出し、凍結乾燥又は逆相カラム上へ直接ロードした。
【0145】
バッファA(水の0.1%のTFA)を用い、2.2×25cmのVYDAC C18カラムで精製した。HPLC(水)で、10mL/分で120分、Aの20%〜90%のB(アセトニトリル中0.1%のTFA)の勾配とし、280nm(4.0A)でUVをモニターしながら、1分間ずつに分けてフラクションを回収した。適当なフラクションを混合し、凍結乾燥した。HPLC(0.46×15cmのMETASIL AQ C18)及びMALDI質量分析により、乾燥生成物を分析した。
【0146】
リジン残基及びアスパラギン酸残基を連結するラクタム架橋を有する環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、Fmoc及びFmでリジン及びアスパラギン酸の側鎖を選択的に保護することにより調製した。合成に用いた他の全てのアミノ酸は、標準的なベンジル側鎖保護したBoc‐アミノ酸である。次いで、ペプチド固相合成に続き、直ちに固体担体上にて環化を実施してもよい。Fmoc及びFm保護基は選択的に取り除かれ、DIEA存在下においてBOPでアスパラギン酸カルボキシル基を活性化することにより、環化を実施した。反応は24時間進行させ、ニンヒドリン試験によりモニターした。
【0147】
<実施例2>固相FMocを用いた選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストの調製:
約114mg(50mmole)のFMOCSer(tBu)WANG樹脂(GlycoPep社製、シカゴ、米国イリノイ州)を各反応容器に添加した。Rainin Symphony Peptide Synthesizerを用いて合成を実施した。75mg(50μmole)のRink Amide AM樹脂(Rapp Polymere.Tuebingen、ドイツ)を使用してC末端アミドを有するアナログを調製した。
【0148】
以下のFMOCアミノ酸を、GlycoPep社(シカゴ、米国イリノイ州)及びNovaBiochem社(La Jolla、米国カリフォルニア州)から購入した。
Arg−2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)、Asn−トリチル(Trt)、Asp−β−t−ブチルエステル(tBu)、Glu−δ−t−ブチルエステル(tBu)、Gln−トリチル(Trt)、His−トリチル(Trt)、Lys−t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、Sert−ブチルエーテル(OtBu)、Thr−t−ブチルエーテル(OtBu)、Trp−t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、Tyr−t−ブチルエーテル(OtBu)。
【0149】
溶媒のジメチルホルムアミド(DMF−Burdick and Jackson)、Nメチルピロリドン(NMP−Burdick and Jackson)、ジクロロメタン(DCM−Mallinkrodt)は、Mays Chemical社(インディアナポリス、米国イリノイ州)から購入した。
【0150】
ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)及びピペリジン(Pip)は、Aldrich Chemical社(ミルウォーキー、米国ウィスコンシン州)から購入した。ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフロロホスファート(BOP)は、NovaBiochem(サンディエゴ、CA)から得た。
【0151】
全てのアミノ酸を、DMFで0.3Mとなるように溶解させた。20%のPip/DMFを使用して20分間脱保護した後、DIC/HOBtで活性化させてカップリングを3時間実施した。脱保護及びカップリングの後、各樹脂をDMFで洗浄した。最後のカップリング及び脱保護の後、ペプチジル樹脂をDCMで洗浄し、反応容器中で真空乾燥させた。N末端アシル化のため、4倍過剰の対応する酸の対称無水物をペプチド樹脂に添加した。DCM中でジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を活性化させ、対称無水物を調製した。4時間反応させ、ニンヒドリン試験によりモニターした。ペプチド樹脂をDCMで洗浄した後、真空乾燥させた。
【0152】
開裂反応液を、10mLのTFA中に0.2mLのチオアニソール、0.2mLのメタノール、0.4mLのトリイソプロピルシランを含有する開裂カクテル(全てAldrich Chemical社、ミルウォーキー、WIから購入)と2時間混合させた。Cysが配列中に存在する場合、2%のエタンジチオールを添加した。TFA濾過液を40mLのエチルエーテルに添加した。沈殿物を2000回転/分で2分遠心分離した。上澄みをデカントした。ペレットを40mLのエーテル中に再懸濁し、再度遠心分離し、再度デカントし、窒素下さらに真空下において、乾燥させた。
【0153】
各生成物0.3〜0.6mgを、1mLの0.1%のTFA/アセトニトリル(ACN)に溶解させ、20μLをHPLC[0.46×15cmのMETASIL AQ C18、1mL/分、45℃、214nM(0.2A)、A=0.1%TFA、B=0.1%TFA/50%ACN、勾配=50% B〜90% B、30分]により分析した。
【0154】
バッファA(水の0.1%のTFA)を用い、2.2×25cmのVYDAC C18カラムで精製した。HPLC(水)で、10mL/分で120分、Aの20%〜90%のB(アセトニトリル中0.1%のTFA)の勾配とし、280nm(4.0A)でUVをモニターしながら、1分間ずつに分けてフラクションを回収した。適当なフラクションを混合し、凍結乾燥した。HPLC(0.46×15cmのMETASIL AQ C18)及びMALDI質量分析により、乾燥生成物を分析した。
【0155】
リジン残基及びアスパラギン酸残基を連結するラクタム架橋を有する環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、それぞれ、Aloc及びAllylでリジン残基及びアスパラギン酸残基の側鎖を選択的に保護することにより調製した。合成に用いた他の全てのアミノ酸は、標準的なt−ブチル側鎖保護されたFmoc−アミノ酸である。
【0156】
次いで、ペプチド固相合成に続き、直ちに固体担体上にて環化を実施してもよい。Aloc及びAllyl保護基は選択的に取り除かれ、DIEA存在下においてBOPでアスパラギン酸カルボキシル基を活性化することにより、環化を実施した。
【0157】
(固相FmocによるP603の調製)
ポリスチレンRink Amide AM樹脂(Rapp Polymere社、Tubingen、ドイツ)約75mg(50mol)を反応器に入れた。RaininSymphony Peptide Synthesizerを用い、自動合成の第1サイクルにFmoc−Lys−アリルオキシカルボニル(Aloc)を使用した。ペプチド樹脂の伸長は、前述の実施例2のように実施した。C−N末端基アシル化を含むペプチド−樹脂の自動伸長の完了後に、25℃で20分間、DCM−酢酸−ピペリジン(92:5:3(v/v/v))(Aldrich Chemical Co、Milwaukee、米国ウィスコンシン州)中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)[100mol]を使用して、手操作でAloc保護基を除去した。このステッを2回繰り返した。次いで、Aloc保護基を外した樹脂をDCM中5%DIEA及びDMF中0.03Mジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物(Aldrich Chemical Co、Milwaukee、米国ウィスコンシン州)で洗浄した。Fmoc−Glu−−OtBuエステル(500mol、NovaBiochem、ラホーヤ、米国カリフォルニア州から購入)は、25℃で2時間、DMF中DIC(500mol)及びHOBt(500mol)を用いて、手操作で取り込んだ。次いでFmocを除去した後、パルミチン酸(500mol; Aldrich Chemical Co、Milwaukee、米国ウィスコンシン州から購入)をFmoc−Glu−α−OtBuエステルと同じ方法を用いて取り込んだ。樹脂からのペプチド切断及び精製は、実施例2に記載のように実施した。
【0158】
<実施例3>ヒトVPAC2受容体のin vitroにおける効果:AiphaScreen:
細胞(ヒトVPAC2受容体を安定に発現するCHO−Sセル)を、培養フラスコ中、PBSを用いて1回洗浄した。次に酵素フリーの分散バッファを用いて細胞をリンスした。分散させた細胞を回収した。次に細胞をスピンダウンし、刺激バッファで洗浄した。データポイントごとに、刺激バッファ中に懸濁させた50,000細胞を用いた。このバッファに、Alphaスクリーンアクセプタビーズを、当該刺激と共に添加した。この混合物を60分間インキュベートした。溶解バッファ及びAlphaScreenドナービーズを添加し、60〜120分間インキュベートした。AlphaScreenのシグナル(細胞内cAMP濃度を表す)を、適切な計測装置(例えばPerkin−Elmer社製AlphaQuest)で測定した。AlphaScreenのドナー及びアクセプタビーズを扱う処理は減光下で実施した。cAMP生成におけるEC50は、シグナルから直接算出したか、又は各プレートで作成した標準曲線により定義される絶対的なcAMP濃度に基づいて算出した。各アゴニストの結果は、1度のランにおいて、行った最低限2つの分析値から算出した。若干のアゴニストの場合、1つ以上のランにおける結果の平均として算出した。テストされたペプチド濃度は、以下の通りである:試験したペプチド濃度は、10000、1000、100、10、3、1、0.1、0.01、0.003、0.001、0.0001及び0.00001nMである。
【0159】
(DiscoveRx)
96ウェルマイクロタイタープレート中で安定にヒトVPAC2受容体を発現するCHO−S細胞系を、アッセイ前日に50,000細胞/ウェルで播種した。200μLの培地中で24時間細胞をインキュベートした。実験日に培地を除去した。さらに細胞を2度洗浄した。室温で、15分間、アッセイバッファ+IBMX中で細胞をインキュベートした。その後、刺激を添加し、アッセイバッファ中に溶解させた。30分間にわたり刺激した。次にアッセイバッファを穏やかに除去した。DiscoveRx cAMPキット中の細胞溶解試薬を添加した。その後、製造業者の指示に従い、cAMPシグナルの検出に関する標準的なプロトコルを実施した(DiscoveRx社、米国)。cAMP生成におけるEC50は、シグナルから直接算出したか、又は各プレートで作成した標準曲線により定義される絶対的なcAMP濃度に基づいて算出した。典型的な試験ペプチド濃度は、10000、300、100、10、1、0.3、0.1、0.01、0.001、0.0001及び0nMである。
【0160】
第1表に、様々なアッセイフォーマットによる、ヒトVPAC2受容体の活性(EC50(nM))を示す。
第1表.ヒトVPAC2受容体におけるペプチド効力
【表4】

【0161】
<実施例4>選択性:
結合アッセイ:安定なVPAC2細胞系(実施例3を参照)、又はヒトVPAC1又はPAC1で一時的にトランスフェクションした細胞から調製した細胞膜を用いた。トレーサーとしてVPAC1、VPAC2及びPAC1について125I標識PACAP−27を使用して、フィルタ結合アッセイを実施した。
【0162】
このアッセイに用いる溶液及び装置は以下の通りである。
事前浸漬溶液:Aqua dest中の0.5%のポリエチレンアミン
フィルタプレートのフラッシュのためのバッファ:25mMのHEPES pH 7.4
ブロッキングバッファ:25mMのHEPES(pH7.4);0.2%プロテアーゼフリーBSA
アッセイバッファ:25mMのHEPES(pH7.4);0.5%プロテアーゼフリーBSA
希釈及びアッセイプレート:PS−Microplate、U型
濾過プレート:Multiscreen FB Opaque Plate;1.0μM タイプBグラスファイバーフィルタ。
【0163】
フィルタプレートの調製のため、減圧濾過によって、事前浸漬溶液を吸引除去した。200μLのフラッシュバッファを用いてプレートを2度洗浄した。200μLのブロッキングバッファをフィルタプレートに添加した。次にフィルタプレートを、室温で1時間、200μLの事前浸漬溶液でインキュベートした。
【0164】
アッセイプレートを、25μLアッセイバッファ、アッセイバッファの中に懸濁した25μL(2.5μg)の膜、アッセイバッファ中のアゴニスト25μL、及びアッセイバッファ中のトレーサー(約40000cpm)25μLで満たした。満たされたプレートを振とうしながら1時間インキュベートした。
【0165】
アッセイプレートからフィルタプレートへの移動を行わせた。ブロッキングバッファを減圧濾過により吸引除去し、フラッシュバッファで2回洗浄した。アッセイプレートからフィルタプレートへ90μLを移した。アッセイプレートから移した90μLを吸引し、200μLのフラッシュバッファで3回洗浄した。プラスチック製の支持体を除去した。60℃で1時間乾燥させた。30μLのMicroscintを添加した。カウントを実施した。
【0166】
<実施例5>ラットVPAC1及びVPAC2受容体におけるin vitro効果:
(DiscoveRx)
市販のトランスフェクション試薬(Invitrogen社製、Lipofectamine)を使用して、ラットVPAC1又はVPAC2受容体DNAにより、CHO−PO細胞をトランジェントにトランスフェクションした。96ウェルプレートに10,000/ウェルの密度で細胞を播種し、200mLの培地で3日間成長させた。3日目にアッセイを実施した。
【0167】
実験日に培地を除去した。さらに細胞を2度洗浄した。室温で、15分間、アッセイバッファ+IBMX中で細胞をインキュベートした。その後、刺激を添加し、アッセイバッファ中に溶解させた。30分間にわたり刺激した。次にアッセイバッファを穏やかに除去した。DiscoveRx cAMPキット中の細胞溶解試薬を添加した。その後、製造業者の指示に従い、cAMPシグナルの検出に関する標準的なプロトコルを実施した(DiscoveRx社、米国)。cAMP生成におけるEC50は、シグナルから直接算出したか、又は各プレートで作成した標準曲線により定義される絶対的なcAMP濃度に基づいて算出した。典型的な試験ペプチド濃度は、10000、300、100、10、1、0.3、0.1、0.01、0.001、0.0001及び0nMである。
【0168】
<実施例6>in vivoアッセイ:静脈ブドウ糖負荷試験(IVGTT)
通常のウィスターラットを一晩絶食させ、実験前に麻酔した。血液サンプリング用カテーテルをラットに挿入した。アゴニストを皮下投与し、通常グルコース投与の24時間前に曝露した。血液サンプルを頸動脈から採取した。血液サンプルは、アゴニスト投与後のグルコース注入の直前に採血した。第一の採血の後、グルコース混合液を静脈内(i.v.)に注射した。kg体重当たりグルコース+アゴニストを有する担体を合計1.5mL注入した(0.5g/kg体重によるグルコース投与となる)。望ましい投与量を決定するため、ペプチド濃度をμg/kg単位で変化させた。グルコース投与の2、4、6及び10分後に血液サンプルを採血した。アゴニストを含まない、グルコースのみを含む同じ担体を投与する群を対照動物群とした。幾つかの場合、グルコース投与後20及び30分における血液サンプルを採血した。アプロチニンを血液サンプルに添加(250〜500kIU/mL血液)した。次に標準的な方法を使用して血漿中のグルコース及びインスリンレベルを分析した。
【0169】
アッセイでは、PBS中の調製及び補正されたペプチドストックを使用した。通常、このストックは100μMストックとして希釈する。しかしながら、約1mg/mLでアゴニストを含有する、さらに濃縮されたストックを用いた。それぞれの濃度を常時測定した。最大応答の変動性は、担体投与量の変動性に大部分起因する。プロトコルの詳細を以下に示す。
【表5】

【0170】
<実施例7>ラット血清における安定性試験:
ラット血清中におけるVPAC2受容体ペプチドアゴニストペプチドの安定性を解析するため、CHO−VPAC2細胞クローン#6(96ウェルプレート/50,000細胞/ウェル、1日インキュベート)、PBS 1×(Gibco社製)、100μMの分析用ストック液(上記)、と殺した通常のウィスターラットから採取したラット血清、アプロチニン及びDiscoveRxアッセイキットを準備した。
ラット血清は使用前まで4℃で保存し、2週以内に用いた。
【0171】
0日目に、90μLのラット血清及び10μLのペプチドストック液を混合し、10μMペプチド/ラット血清の100μLアリコートを2本調製した。250kIU アプロチニン/mLを、これらのアリコートのうちの1つに添加した。アプロチニンを含有するアリコートを4℃で保存した。アプロチニンを含有しないアリコートを37℃で保存した。アリコートは24時間インキュベートした。
【0172】
1日目に、0日目に調製したアリコートの24又は72時間のインキュベーション後、インキュベートバッファ(PBS+1.3mMのCaCl、1.2mMのMgCl、2mMのグルコース及び0.25mMのIBMXを含有)を調製した。4℃及び37℃アリコートにおいて、ペプチドを11回の5倍連続希釈のプレートを作製し、ペプチドごとに試験した。4000nMを最大濃度として用いた。セルを有するプレートをインキュベートバッファで2回洗浄し、ウェル当たり50μLのインキュベーション培地でセルを15分間インキュベートした。最初のスクリーニングにより示された最大濃度を用いて、試験されるペプチドごとの4℃及び37℃アリコートにおける、ペプチドの11回の5倍連続希釈により調製したプレートの細胞へ、ウェル当たり50μLで溶液を移した(2回試験を実施)。この処理によりペプチド濃度が2倍に希釈される。室温で30分間細胞をインキュベートした。上澄みを除去した。DiscoveRx抗体/抽出バッファを40μL/ウェルで添加した。シェーカ(300回転/分)で1時間、細胞をインキュベートした。DiscoveRxキットを用いて通常の操作を行った。cAMPスタンダードをカラム12に添加した。cAMPアッセイデータからEC50値を測定した。残留している活性化ペプチドの量を、各条件ごとに式EC50,4℃/EC50,37℃により推定した。
第5表:37℃のラット血清中における、24時間後の推定ペプチド安定性
【表6】

値>100%は、PEGコンジュゲートからの完全なペプチドの遊離とする。
【0173】
<実施例8>チオールベースによる、選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストのPEG化:
PEG化反応は通常、チオエーテル結合が形成されうる条件下で実施する。具体的には、溶液のpHは約4〜9、チオール含有ペプチド濃度はPEGマレイミド濃度の0.7〜10モル過剰である。PEG化反応は通常室温で行う。次にPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストを逆相HPLC又は限外除外クロマトグラフィ(SEC)を使用して単離する。分析用RP−HPLC、HPLC−SEC、SDS−PAGE及び/又はMALDI Mass Spectrometryを使用して、PEG化ペプチドアゴニストを解析する。
【0174】
通常、チオール官能基を選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニスト中又は上に導入する場合、片方又は両方の末端に、システイン若しくはホモシステイン若しくはチオール含有部分を添加することにより、又はシステイン若しくはホモシステイン若しくはチオール含有部分を配列中に挿入することによって実施する。チオール含有VPAC2受容体ペプチドアゴニストを40kDa、30kDa又は20kDaのPEG−マレイミドと反応させ、チオエーテル結合により共有結合したPEG含有誘導体を調製する。
【0175】
<実施例9>リジンの側鎖上へのアシル化を経たPEG化:
選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストの部位特異的なPEG化を実施するため、PEG化しようとするLys残基以外の全てのLys残基をArg残基に置換する。使用できるPEG分子はmPEG−SBA−20K(Nektar社製、Lot#:PT−04E−11)である。好ましくは室温で2〜3時間PEG化反応を実施する。調製用HPLCによりペプチドを精製する。
【0176】
<実施例10>ピクテ−シュペングラー反応を経たPEG化:
ピクテ−シュペングラー反応を経たPEG化を実施するには、遊離アミン基を有するTrpを用いて、残基選択的にVPAC2受容体ペプチドアゴニスト上にPEG分子を導入する必要がある。これを達成する1つのアプローチとしては、Trp残基をLys残基の側鎖上へカップリングさせる。広いSARは、この修飾によっても、in vitro効果及び選択性に関して親ペプチドの特性を変化させないことを示す。
【0177】
官能性アルデヒド(例えばmPEG2−BUTYRALD−40K(Nektar、米国)を有するPEGを反応に使用した。部位特異的なPEG化により、PEGとペプチドとの間のテトラカルボリン環の形成がなされた。室温で1〜48時間、氷酢酸中でPEG化を実施した。1〜10モル過剰のPEGアルデヒドを反応に用いた。酢酸の除去後、PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストを調製用RP−HPLCにより単離した。
【0178】
当業者であれば、本発明の範囲内における本発明の様々な修飾を容易に想起できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VPAC2受容体ペプチドアゴニストであって、式:
【化1】

式1(配列番号:1)
[式中、
XaaはHis、dH又は存在せず;
XaaはdA、Ser、Val、Gly、Thr、Leu、dS、Pro又はAibであり;
XaaはAsp又はGluであり;
XaaはAla、Ile、Tyr、Phe、Val、Thr、Leu、Trp、Gly、dA、Aib又はNMeAであり;
XaaはVal、Leu、Phe、Ile、Thr、Trp、Tyr、dV、Aib又はNMeVであり;
XaaはPhe、Ile、Leu、Thr、Val、Trp又はTyrであり;
XaaはAsp、Glu、Ala、Lys、Leu、Arg又はTyrであり;
XaaはAsn、Gln、Glu、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa10はTyr、Trp又はTyr(OMe)であり;
Xaa12はArg、Lys、hR、Orn、Aib、Ala、Leu、Gln、Phe又はCysであり;
Xaa13はLeu、Phe、Glu、Ala、Aib、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa14はArg、Leu、Lys、Ala、hR、Orn、Phe、Gln、Aib又はCitであり;
Xaa15はLys、Ala、Arg、Glu、Leu、Orn、Phe、Gln、Aib、K(Ac)、Cys、K(W)又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa16はGln、Lys、Ala、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa17はVal、Ala、Leu、Ile、Met、Nle、Lys、Aib、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa18はAla、Ser、Cys又はAbuであり;
Xaa19はAla、Leu、Gly、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はAbuであり;
Xaa20はLys、Gln、hR、Arg、Ser、Orn、Ala、Aib、Trp、Thr、Leu、Ile、Phe、Tyr、Val、K(Ac)、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa21はLys、Arg、Ala、Phe、Aib、Leu、Gln、Orn、hR、K(Ac)、Ser、Cys、K(W)、K(CO(CHSH)又はhCであり;
Xaa22はTyr、Trp、Phe、Thr、Leu、Ile、Val、Tyr(OMe)、Ala、Aib又はSerであり;
Xaa23はLeu、Phe、Ile、Ala、Trp、Thr、Val、Aib又はSerであり;
Xaa24はGln、Asn、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa25はSer、Asp、Phe、Ile、Leu、Thr、Val、Trp、Gln、Asn、Tyr、Aib、Glu、Cys、K(CO(CHSH)又はhCであり;
Xaa26はIle、Leu、Thr、Val、Trp、Tyr、Phe、Aib、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa27はLys、hR、Arg、Gln、Orn又はdKであり;
Xaa28はAsn、Gln、Lys、Arg、Aib、Orn、hR、Pro、dK、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa29はLys、Ser、Arg、Asn、hR、Cys、Orn又は存在せず;
Xaa30はArg、Lys、Ile、hR又は存在せず;
Xaa31はTyr、His、Phe、Gln又は存在せず;
Xaa32はCys又は存在しないが;
但し、Xaa29、Xaa30、Xaa31又はXaa32が存在しない場合、存在する次のアミノ酸の下流はペプチドアゴニスト配列における次のアミノ酸である]
で示される配列;および
アミノ酸配列:
GGPSSGAPPPK(E−C16
[式中、C末端アミノ酸はアミド化されてもよい]
を含むC末端伸張を含む、アゴニスト。
【請求項2】
式:
【化2】

式2(配列番号:2)
[式中、
XaaはAsp又はGluであり;
XaaはAsp、Glu、Ala、Lys、Leu、Arg又はTyrであり;
XaaはAsn、Gln、Glu、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa10はTyr、Trp又はTyr(OMe)であり;
Xaa12はArg、Lys、hR、Orn、Aib、Ala、Leu、Gln、Phe又はCysであり;
Xaa13はLeu、Phe、Glu、Ala、Aib、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa14はArg、Leu、Lys、Ala、hR、Orn、Phe、Gln、Aib又はCitであり;
Xaa15はLys、Ala、Arg、Glu、Leu、Orn、Phe、Gln、Aib、K(Ac)、Cys、K(W)又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa16はGln、Lys、Ala、Ser、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa17はVal、Ala、Leu、Ile、Met、Nle、Lys、Aib、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa18はAla、Ser、Cys又はAbuであり;
Xaa19はAla、Leu、Gly、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はAbuであり;
Xaa20はLys、Gln、hR、Arg、Ser、Orn、Ala、Aib、Trp、Thr、Leu、Ile、Phe、Tyr、Val、K(Ac)、Cys又はK(CO(CHSH)であり;
Xaa21はLys、Arg、Ala、Phe、Aib、Leu、Gln、Orn、hR、K(Ac)、Ser、Cys、K(W)、K(CO(CHSH)又はhCであり;
Xaa22はTyr、Trp、Phe、Thr、Leu、Ile、Val、Tyr(OMe)、Ala、Aib又はSerであり;
Xaa23はLeu、Phe、Ile、Ala、Trp、Thr、Val、Aib又はSerであり;
Xaa24はGln、Asn、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa25はSer、Asp、Phe、Ile、Leu、Thr、Val、Trp、Gln、Asn、Tyr、Aib、Glu、Cys、K(CO(CHSH)又はhCであり;
Xaa26はIle、Leu、Thr、Val、Trp、Tyr、Phe、Aib、Ser、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa27はLys、hR、Arg、Gln、Orn又はdKであり;
Xaa28はAsn、Gln、Lys、Arg、Aib、Orn、hR、Pro、dK、Cys、K(CO(CHSH)又はK(W)であり;
Xaa29はLys、Ser、Arg、Asn、hR、Cys、Orn又は存在せず;
Xaa30はArg、Lys、Ile、hR又は存在せず;
Xaa31はTyr、His、Phe、Gln又は存在せず;
Xaa32はCys又は存在しないが;
但し、Xaa29、Xaa30、Xaa31又はXaa32が存在しない場合、存在する次のアミノ酸の下流はペプチドアゴニスト配列における次のアミノ酸である]
で示される配列;および
アミノ酸配列:
GGPSSGAPPPK(E−C16
[式中、C末端アミノ酸はアミド化されてもよい]
を含むC末端伸張を含む、請求項1記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項3】
XaaがGluであり、XaaがGlnであり、Xaa10がTyr(OMe)である、先の請求項のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項4】
Xaa15がAibである、先の請求項のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項5】
Xaa20がAibである、先の請求項のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項6】
Xaa12、Xaa21、Xaa27及びXaa28が全てOrnである、先の請求項のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項7】
Xaa19がAbuである、先の請求項のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項8】
Xaa23がAibである、先の請求項のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項9】
Xaa25がAibである、先の請求項のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項10】
Xaa29、Xaa30、Xaa31及びXaa32が全て存在しない、先の請求項のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項11】
アゴニストがPEG化されている、先の請求項のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項12】
アゴニストが環状である、先の請求項のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項13】
さらにペプチドアゴニストのN末端にてN末端修飾を有する、先の請求項のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニストであって、該N末端修飾が以下から選択される、アゴニスト:
(a)D−ヒスチジン、イソロイシン、メチオニン又はノルロイシンの付加;
(b)配列Ser−Trp−Cys−Glu−Pro−Gly−Trp−Cys−Arg(配列番号:6)を含むペプチドの付加(ここに、ArgはペプチドアゴニストのN末端に連結する);
(c)独立してアリール、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよいC−C16アルキルの付加;
(d)−C(O)R(ここに、RはC−C16アルキル(独立してアリール、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン、−SH及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい);アリール(独立してC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい);アリールC−Cアルキル(独立してC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい)である);
−NR(ここに、R及びRは独立して水素、C−Cアルキル、アリール又はアリールC−Cアルキルである);
−OR(ここに、RはC−C16アルキル(独立してアリール、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい)、アリール(独立してC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい)、アリールC−Cアルキル(独立してC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、−NH、−OH、ハロゲン及び−CFから選択される1以上の置換基で任意に置換されてもよい)である);又は
5−ピロリジン−2−オンの付加;
(e)−SO(ここに、Rはアリール、アリールC−Cアルキル又はC−C16アルキルである)の付加;
(f)任意にC−Cアルキル又は−SR(ここに、Rは水素又はC−Cアルキルである)で置換されてもよいスクシニミド基の形成;
(g)メチオニンスルホキシドの付加;
(h)ビオチニル−6−アミノヘキサン酸(6−アミノカプロン酸)の付加;及び
(i)−C(=NH)−NHの付加。
【請求項14】
N末端修飾がアセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、メチオニン、メチオニンスルホキシド、3−フェニルプロピオニル、フェニルアセチル、ベンゾイル、ノルロイシン、D−ヒスチジン、イソロイシン、3−メルカプトプロピオニル、ビオチニル−6−アミノヘキサン酸(6−アミノカプロン酸)及び−C(=NH)−NHから選択される基の付加である、請求項13記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項15】
N末端修飾がアセチル又はヘキサノイルの付加である、請求項14記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項16】
以下のアミノ酸配列:
【化3】

を含む、請求項1記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト、並びに1以上の薬理学的に許容できる希釈剤、担体及び賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
薬剤としての使用のための、請求項1から16のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項19】
非インスリン依存性糖尿病もしくはインスリン依存性糖尿病の治療、又は摂食抑制における使用のための、請求項1から16のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項20】
非インスリン依存性糖尿病もしくはインスリン依存性糖尿病の治療、又は摂食抑制のための医薬の製造のための、請求項1から16のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニストの使用。
【請求項21】
薬理学的有効量の請求項1から16のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニストを投与することを含む、必要とする患者における非インスリン依存性糖尿病もしくはインスリン依存性糖尿病の治療、又は摂食抑制の方法。
【請求項22】
非インスリン依存性糖尿病もしくはインスリン依存性糖尿病の治療、又は摂食抑制のための、請求項1から16のいずれか1項に記載のVPAC2受容体ペプチドアゴニストを含む、医薬組成物。
【請求項23】
本明細書実施例に実質的に記載されている、VPAC2受容体ペプチドアゴニスト。

【公表番号】特表2009−529007(P2009−529007A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557448(P2008−557448)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/062414
【国際公開番号】WO2007/133828
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】