説明

遺伝子の発現の変化を指標とした、被験化合物の除草活性の評価方法。

【課題】本発明は、植物遺伝子の発現の変化を指標として、被験化合物の除草活性の有無を評価する方法を提供することを課題とする。また、該評価方法を用いた除草活性を有する化合物のスクリーニング方法を提供することを課題とする。さらに、上記の除草活性の有無を評価する方法または除草活性を有する化合物のスクリーニング方法に用いるオリゴヌクレオチド対、およびこれらのオリゴヌクレオチド対を含むキットを提供することを課題とする。
【解決手段】
本願発明者らは上記課題を解決するために、まず、作用点が明確にされている十数種の除草剤を植物(イネ)に処理し、除草剤別に遺伝子発現パターンを網羅的に解析し、特徴的なパターンを示す遺伝子群を選抜した。選択された遺伝子の発現をRT-PCRにより検出し、遺伝子の発現量を指標として、除草活性を有する物質のスクリーニングが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物遺伝子の発現の変化を指標として、被験化合物の除草活性の有無を評価する方法に関する。また、該評価方法を用いた除草活性を有する化合物のスクリーニング方法に関する。さらに、上記の除草活性の有無を評価する方法または除草活性を有する化合物のスクリーニング方法に用いるオリゴヌクレオチド対、およびこれらのオリゴヌクレオチド対を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
農薬研究開発は多くのプロセスからなっており、除草剤活性が認められてから上市まで約10年、場合によっては十数年を必要とする。そのプロセスの中で初期段階に行う初期スクリーニングの現在の手法は、数万種類におよぶ除草剤候補化合物を直接植物に処理して一定期間後に生じる変化を目視で評価するという方法で行われている。この段階では非常に弱い活性であっても、その後の展開によっては大商品に育つケースもある為、どんなに些細なシグナルでも見落とさないことが大切であり、経験を積んだ生物研究者による観察が必要である。ちなみに、供試されたサンプルが上市までたどり着く確率は5万分の1あるいはそれ以下ともいわれる。また、この過程では除草剤候補化合物の数だけ植物を準備する必要があり、土を充填したポットの準備、ターゲットとする雑草の播種、温室または専用の圃場での生育と除草剤候補化合物の植物への処理などといった多大な手間と時間を必要とする。
【0003】
このように、現在の薬剤スクリーニングの手法では時間・空間および人的コストが膨大に必要なほか、目視では検出できない生体内の重大な変化を見逃すという大きな欠点がある。迅速な農薬開発に必要な初期スクリーニングの効率の向上には、数十万という豊富な除草剤候補薬剤を少量(数ミリグラム単位)で可能な限り多数評価することが必要不可欠であり、これらを可能にする手法の開発が期待されている。
【0004】
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
【特許文献1】特開2003−230391
【特許文献2】特開平5−199877
【非特許文献1】Duke et al., Pest Manag Sci. 2003 Jun-Jul;59(6-7):708-17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、植物遺伝子の発現の変化を指標として、被験化合物の除草活性の有無を評価する方法を提供することである。さらに、該評価方法を用いた除草活性を有する化合物のスクリーニング方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明者らは正確・簡便・迅速で多検体同時に評価が可能なスクリーニング方法を開発すべく鋭意研究を行い、遺伝子発現を指標とした除草剤スクリーニングシステムを開発した。本方法では、まず、作用点が明確にされている十数種の除草剤を植物(イネ)に処理し、除草剤別に遺伝子発現パターンを網羅的に解析し、特徴的なパターンを示す遺伝子群を選抜した。選択された遺伝子の発現をRT-PCRにより検出し、遺伝子の発現量を指標として、除草活性を有する物質のスクリーニングが可能となった。除草剤処理に使用する植物は生化学実験で使用する連結チューブ内で幼苗期まで生育させ、これに直接除草剤処理を行い、植物組織からのRNA抽出と遺伝子発現解析を連続して行うことで、正確・簡便・迅速で、かつ、多検体同時の評価を可能にした。さらに、連結チューブ内で生育した幼苗を利用することで数ミリグラムという少量の薬剤で除草剤処理が可能となった。
【0007】
即ち、本発明者らは、植物遺伝子の発現の変化を指標として、被験化合物の除草活性の有無を評価する方法、および該評価方法を用いた除草活性を有する化合物のスクリーニング方法を開発することに成功し、これにより本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、より具体的には、以下の〔1〕〜〔13〕を提供する。
〔1〕植物遺伝子の発現の変化を指標として、被験化合物の除草活性の有無を評価する方法。
〔2〕〔1〕に記載の方法であって、
(a) 植物に除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子群の発現量を、植物に被験化合物を接触させた場合において接触前後で測定する工程
(b) 植物に除草剤を接触させた場合における接触前後での該遺伝子群の発現量の変化と、植物に被験化合物を接触させた場合における接触前後での該遺伝子群の発現量の変化を比較する工程
を含み、被験化合物接触前後での該遺伝子群の発現量の変化が、除草剤接触前後での該遺伝子群の発現量の変化と一致する場合に、被験化合物が除草活性を有するものと判定される方法。
〔3〕植物がイネ科の植物である、〔2〕に記載の方法。
〔4〕除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子群が、配列番号1〜41およびこれらのホモログから選択される少なくとも1つの遺伝子である〔2〕に記載の方法。
〔5〕除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子群の発現量の定量に、RT-PCR法が用いられる、〔2〕に記載の方法。
〔6〕配列番号1〜41に記載のゲノムDNA配列のそれぞれにハイブリダイズする5〜50塩基のプライマー対の群から選択される少なくとも1組のプライマー対を用いて、RT-PCR法を行う〔5〕に記載の方法。
〔7〕配列番号:42と43、44と45、46と47、48と49、50と51、52と53、54と55、56と57、58と59、60と61、62と63、64と65、66と67、68と69、70と71、72と73、74と75、76と77、78と79、80と81、82と83、84と85、86と87、88と89、90と91、92と93、94と95、96と97、98と99、100と101、102と103、104と105、106と107、108と109、110と111、112と113、114と115、116と117、118と119、120と121、122と123から選択される少なくとも1組のプライマー対を用いて、RT-PCR法を行う〔5〕に記載の方法。
〔8〕配列番号:44と45、60と61、66と67、74と75、80と81、82と83、88と89、92と93、96と97、102と103、108と109、110と111、112と113、122と123の14組のプライマー対を用いて、RT-PCR法を行う〔5〕に記載の方法。
〔9〕RT-PCR法が、1stepRT-PCR法または2stepRT-PCR法のどちらかである、〔5〕〜〔8〕のいずれかに記載の方法
〔10〕RT-PCR法が、リアルタイムRT-PCR法である、〔5〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕以下の(a)および(b)の工程を含む、除草活性を有する化合物のスクリーニング方法。
(a) 〔2〕〜〔10〕のいずれかに記載の方法により、複数の被験化合物ついて、除草活性の有無を評価する工程。
(b) 複数の被験化合物から、除草活性を有すると評価された化合物を選択する工程。
〔12〕〔2〕〜〔10〕のいずれかに記載の被験化合物の除草活性の有無を評価する方法、または〔11〕に記載の除草活性を有する化合物のスクリーニング方法に用いるPCRプライマー対であって、配列番号1〜41に記載のゲノムDNAのそれぞれにハイブリダイズする5〜50塩基のプライマー対。
〔13〕 〔2〕〜〔10〕のいずれかに記載の被験化合物の除草活性の有無を評価する方法、または〔11〕に記載の除草活性を有する化合物のスクリーニング方法に用いるPCRプライマー対であって、配列番号:42と43、44と45、46と47、48と49、50と51、52と53、54と55、56と57、58と59、60と61、62と63、64と65、66と67、68と69、70と71、72と73、74と75、76と77、78と79、80と81、82と83、84と85、86と87、88と89、90と91、92と93、94と95、96と97、98と99、100と101、102と103、104と105、106と107、108と109、110と111、112と113、114と115、116と117、118と119、120と121、122と123のいずれかに記載の、プライマー対。
〔14〕〔12〕または〔13〕に記載の少なくとも一つのプライマー対を含む、除草剤のスクリーニング用キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法は「植物遺伝子の発現の変化を指標とする」ことがポイントであり、従来の農薬開発とは全く視点が異なるだけでなく、より正確・精密・簡便・迅速な開発系が確立されることが考えられる。また、本発明の方法を利用することにより、より高機能で環境負荷の少ない除草剤開発が可能になるだけでなく、殺菌・殺虫剤などの安全性評価への技術応用が期待できる。
【0010】
除草活性を有する化合物のスクリーニングの手法を行う際に、現在では被験化合物を植物に直接処理し、一定時間後にその効力を目視により評価を行うため、時間・空間および人的コストが膨大に必要なほか、目視では検出できない生体内の重大な変化を見逃すという大きな欠点がある。一方、本願発明者らが開発した除草活性を有する化合物のスクリーニングシステムは遺伝子発現変化を指標とすることで、目視では検出できない生体内での変化を正確に検出でき、発現変化の解析にRT-PCR法を適用することにより、発現量の差を正確に調べることが可能である。また、連結チューブ内で生育させた幼苗に被験化合物を処理することで、多数の被験化合物を多検体同時に処理することが可能であり、数十万種類とも言われる除草剤候補薬剤の初期スクリーニングが迅速に行うことが出来る。また、連結チューブ内で生育させた幼苗を利用することで数ミリグラムという少量の薬剤で除草剤処理が可能となり、環境負荷の少ない除草剤開発が可能となった。さらに、本方法および本方法内で使用した遺伝子を利用して、除草活性を有する化合物のスクリーニングのみならず、殺菌・殺虫剤などの安全性評価や農作物における病気感染の早期診断等への技術応用が大いに期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、植物遺伝子の発現の変化を指標として、被験化合物の除草活性の有無を評価する方法に関する。
本発明における除草活性とは、植物の生育を抑制させる、より具体的には、植物を枯らす、あるいは枯らさなくとも植物の生育を阻害する活性を言う。
【0012】
本発明における被験化合物としては、特に制限はなく、例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチド、DNAなどの単一化合物、並びに、化合物ライブラリ、遺伝子ライブラリの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、雑菌、殺虫剤、発酵微生物産出物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞抽出物、真核単細胞抽出物もしくは動物細胞抽出物等を挙げることができる。上記被験試料は必要に応じて適宜標識して用いることができる。標識としては、例えば、放射標識、蛍光標識等を挙げることができる。また、上記被験試料に加えて、これらの被験試料を複数種混合した混合物も含まれる。
本発明における除草の対象となる植物としては、特に制限されず、所望の植物を除草の対象とすることができる。所望の植物としては、好ましくは、イネ科雑草、広葉雑草等に分類される雑草を挙げることができる。
【0013】
イネ科雑草とは、稲のように細長い葉を持った雑草で、植物分類上のイネ科に属し、葉脈が平行である植物のことをいう。イネ科雑草としては、イヌビエ、エノコログサ、キンエノコロ、ムラサキエノコロ、スズメノカタビラ、スズメノテッポウ、ニワホコリ、アキメヒシバ、メヒシバ、カゼクサ、カモガヤ、ススキ、スズメノヒエ、チガヤ、チカラシバ、ヨシ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、広葉雑草とは、イネ科雑草以外で、クローバー、タンポポ、チドメグサなどに代表される、葉の形が広い雑草で、葉脈が網状である植物のことをいう。広葉雑草としては、アカザ(アカザ科)、コアカザ(アカザ科)、シロザ(アカザ科)、ヤエムグラ(アカネ科)、イヌガラシ(アブラナ科)、スカシタゴボウ(アブラナ科)、ナズナ(アブラナ科)、ウキヤガラ(カヤツリグサ科)、カヤツリグサ(カヤツリグサ科)、タイツリスゲ(カヤツリグサ科)、ヒンジカヤツリ(カヤツリグサ科)、ミズガヤツリ(カヤツリグサ科)、アメリカセンダングサ(キク科)、オオアレチノギク(キク科)、オナモミ(キク科)、ノゲシ(キク科)、ノボロギク(キク科)、ハキダメギク(キク科)、ヒメムカシヨモギ(キク科)、ブタクサ(キク科)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
上記以外の雑草としては、カラスノエンドウ(マメ科)、スズメノエンドウ(マメ科)、ヒメクグ(カヤツリグサ科)、セイヨウタンポポ(キク科)、チドメグサ(セリ科)、シロツメクサ(マメ科)、ゼニゴケ(コケ類)、スギナ(トクサ科)、クズ(マメ科)等も挙げることができる。
雑草はその発生の違いにより、一年生雑草または多年生雑草と分類されるが、本発明では、どちらの分類の植物も使用することができる。
一年生雑草とは、毎年新しい種子によって発生する雑草のことであり、春に発芽して秋に枯れる雑草と、秋に発芽して越冬し、春から夏に枯れる越年生の一年生雑草が存在する。また、多年生雑草は、種子で発生後、地上部は一旦枯れるが地下部が生き残り、翌年再生する宿根性の雑草であり、多くの多年生雑草は種子で繁殖し、根づいて宿根草となるが、なかには地下茎が伸びて繁殖するものも存在する。
【0015】
本発明の植物遺伝子の発現の変化を指標として、被験化合物の除草活性の有無を評価する方法は、以下の2つの工程により行うことが出来る。
まず第1の工程において、植物に除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子群の発現量を、植物に被験化合物を接触させた場合において接触前後で測定する。
本発明において「植物」とは、植物全体または植物の一部であってもよく、「植物の一部」とは、通常、葉(好ましくは、リーフディスク等の葉の一部)、種子または培養細胞を指すが、これらに特に限定されない。
除草剤を接触させる植物、および被験化合物を接触させる植物は、異なる種の植物であってもよいが、好ましくは同じ科であり、より好ましくは同一の植物であることが望ましい。本発明において得られた結果は、除草剤および被験化合物を接触させた植物と異なる種であっても適用することが出来る。
【0016】
また、本発明において「接触」は、植物の状態に応じて行う。例えば、植物全体または該植物の一部への被験化合物の散布、あるいは、該植物の破砕物への被験化合物の添加等を挙げることができるが、これらの方法に制限されない。植物の一部が培養細胞の場合には、該細胞の培養液への被験化合物の添加あるいは、被験化合物がタンパク質の場合には、該タンパク質を発現するDNAベクターを、植物または該植物の一部を構成する細胞へ導入することにより、上記「接触」を行うことも可能である。
【0017】
実施例に記載するように、チューブ内で植物を生長させ、該チューブに被験化合物を含む溶液を添加することで、「接触」を行うことも可能である。
接触させる被験化合物の濃度および接触させる時間は、特に限定されないが、接触後枯死あるいは生育が停止することが分かっている場合には、接触させる被験化合物の濃度の幅および、接触時間の幅をあらかじめ設定することも出来る。例えば、接触後2〜3日で枯死あるいは生育が停止する濃度を1倍とし、その20倍、100倍に希釈した薬液を使用することも出来る。また接触時間としては、通常24時間であるが、特にこの時間に制限されない。
【0018】
また、植物に除草剤を接触させる場合には、単独の種類の除草剤のみを接触させてもよいし、複数の除草剤を混合したものを接触させてもよい。また、被験化合物についても、単独の種類の化合物のみを接触させてもよいし、複数の化合物を混合したものを接触させてもよい。被験化合物に既知の除草剤を混合して接触させることも出来る。
「植物に除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子群」は、除草剤で処理する前の植物、および、除草剤で処理した後の植物からそれぞれRNAを抽出し、当業者に公知の方法により発現量の差を検出することで決定することが出来る。
【0019】
発現量の差を検出するための当業者に公知の方法としては、例えば、RT-PCR(リアルタイムPCR)法、ノーザンブロッティング法、ウエスタンブロッティング法、抗原抗体反応を利用した方法、マイクロアレイを利用した方法、大量シーケンシングによる方法、およびプロテインチップによる方法を挙げることができる。好ましくはマイクロアレイを用いた方法を挙げることができ、本方法としては、植物のcDNAライブラリーを用いたマイクロアレイおよび、人為的に設計したオリゴDNAライブラリーを用いたマイクロアレイを挙げることができる。人為的に設計したオリゴDNAとは、植物の個々の遺伝子に特異的でかつハイブリダイゼーション中の二次構造などを考慮した遺伝子配列をコンピュータ上で計算し設計したオリゴDNAであり、cDNAアレイに比べるとより正確性の高い遺伝子発現解析が可能になる。より有効な薬剤スクリーニング遺伝子を探索する為に、本発明者らが開発した遺伝子プロファイリングシステム(GEPAS;Gene Expression Profile Analysis System:イネ3’末端特異的cDNAライブラリーの遺伝子配列情報を一括してコンピュータで管理し、遺伝子発現レベルの解析が可能なシステム)から、様々な環境下(例えば低温ストレス、作用点の異なる数種の除草剤処理下など)で特徴的な遺伝子発現変化を示した遺伝子について遺伝子特異的オリゴDNAを作製してマイクロアレイに用いることも可能である。遺伝子特異的なオリゴDNAの設計には、オリゴDNA設計支援サイトPROBEmer(http://probemer.cs.loyola.edu)を利用することもできる。
【0020】
本発明において植物に除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子群とは、除草剤で接触させる前の植物および接触させた後の植物の間で2倍以上(例えば、2,3,4または5倍以上)の遺伝子発現差が見られた遺伝子のことをいう。ここでいう発現の差とは、発現量が増加している場合、減少している場合のどちらも含むものである。
上記「発現量が増加している」とは、除草剤で処理しない場合と比較して、一定時間内に一度でも発現量が増加することを意味する。具体的には、発現量の一過的な増加、および継続的な増加を示す。また、上記の「発現量が減少している」とは、除草剤で処理しない場合と比較して、一定時間内に一度でも発現量が減少することを意味する。具体的には、発現量の一過的な減少、および継続的な減少を示す。
本発明をイネ科の植物への除草活性の判定に適用する場合には、植物に除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子群として、配列番号:1〜41に記載の塩基配列およびこれらのホモログから選択される少なくとも1つの遺伝子を使用することが出来る。
【0021】
ホモログには、配列番号:1〜41に記載の塩基配列にコードされるタンパク質と同等の機能を有し、かつ高い相同性を持つタンパク質をコードする塩基配列等も含まれる。高い相同性とは、アミノ酸配列全体で、少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%,96%,97%,98%,99%以上)の配列の同一性を指す。さらにホモログには、配列番号:1〜41に記載の塩基配列からなるDNAにハイブリダイズするDNAも含まれる。ハイブリダイゼーションにおける条件は当業者であれば適宜選択することができるが、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、5×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、5×SSC 、0.1%SDSの条件である。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1%SDSの条件である。
【0022】
本発明の、植物に除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子群の発現量を定量する際には、当業者に公知の方法によって行うことができる。例えば、該生合成酵素のmRNAを定法に従って抽出し、このmRNAを鋳型としたノーザンハイブリダイゼーション法、またはRT-PCR法を実施することによって該遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。さらに、DNAアレイ技術を用いて、該生合成酵素の発現レベルを測定することも可能である。
また、該生合成酵素を含む画分を定法に従って回収し、該生合成酵素の発現をSDS-PAGE等の電気泳動法で検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うこともできる。
【0023】
また、該生合成酵素に対する抗体を用いて、ウェスタンブロッティング法を実施し、該生合成酵素の発現を検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うことも可能である。該生合成酵素の検出に用いる抗体としては、検出可能な抗体であれば、特に制限はないが、例えばモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体の両方を利用することができる。該抗体は、当業者に公知の方法により調製することが可能である。ポリクローナル抗体であれば、例えば、次のようにして取得することができる。該生合成酵素、あるいはGSTとの融合タンパク質として大腸菌等の微生物において発現させたリコンビナントタンパク質、またはその部分ペプチドをウサギ等の小動物に免疫し血清を得る。これを、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、該生合成酵素や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することにより調製する。また、モノクローナル抗体であれば、例えば、該生合成酵素またはその部分ペプチドをマウス等の小動物に免疫を行い、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞を分離し、該細胞とマウスミエローマ細胞とをポリエチレングリコール等の試薬を用いて融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、該生合成酵素に結合する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、該生合成酵素や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することで、調製することが可能である。
【0024】
本発明では好ましくはRT-PCR法を用いて、遺伝子群の発現定量を行うことが出来る。RT-PCR法を行う際には、リアルタイムPCR法を適用して、発現量を定量してもよい(すなわちリアルタイムRT-PCR法を用いることが可能である)。リアルタイムPCR法とは、PCRの増幅量をリアルタイムでモニターし解析する方法であり、電気泳動が不要で、迅速性と定量に優れている測定法である。本方法では、まず段階希釈した既知量のDNAをスタンダードとしてPCRを行い、増幅が指数関数的に起こる領域で一定の増幅産物量になるサイクル数(threshold;Ct値)を横軸に、初発のDNA量を縦軸にプロットし、検量線を作成する。その後、被検試料についても同様の条件下で反応を行いCt値を求め、検量線から被検試料におけるRNAを測定し、発現定量を行うものである。通常、リアルタイムPCRのモニターは、蛍光試薬を用い、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化した装置にて行う。
【0025】
「RT-PCR法」としては、1 step RT-PCR法および2 step RT-PCR法を挙げることができる。
1 step RT-PCR法とは、1つの反応系中に逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、プライマー、dNTPなどが入っており1回の実験で逆転写反応およびPCR反応を同時に行うことができるものである。本方法はRNAを直接反応溶液中へ添加するだけでよく、煩雑な操作が無いため、コンタミを防ぐと同時に、多検体を同時に扱うことが可能であり、多検体の遺伝子発現レベルの評価に向いている方法である。
2 step RT-PCR法とは、逆転写反応およびPCR反応をそれぞれ分けて行う方法である。
2 step RT-PCRは1 step RT-PCRに比べると実験上の操作が多少煩雑となるが、実験で使用する試薬のコストが1 step RT-PCRよりも約1/3以下で済むというメリットがある。
RT-PCR法の実験条件については、実施例に記載の条件を挙げることが出来るが、本条件に限定されるものではない。
本発明において、RT-PCR法を行う場合は、植物に除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子をPCR反応によって増幅するために、適当なプライマーを選択する必要がある。
【0026】
本発明において、プライマーとは、標的の核酸分子(例えば、DNA 分子)の増幅または重合化の際に、ヌクレオチドモノマーの共有結合により伸長する、一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドのことを指す。プライマーとしては、標的の核酸分子に、選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを挙げることが出来る。選択的にハイブリダイズするとは、あらかじめ定められた配列をもつ分子(すなわち第2 のポリペプチド)がDNAまたはRNAの試料中に存在する場合、適切にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で、ハイブリダイズする、二本鎖 になる、または本質的に互いにのみ結合する核酸分子を指す。ストリンジェントな条件とは、例えば、通常、42℃、 2×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC 、0.1%SDSの条件であり、さらに好ましくは、65℃、0.1×SSCおよび0.1%SDSの条件であるが、これらの条件に特に制限されない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。プライマーの設計には、プライマー設計支援サイトPrimer3等を利用することが出来る。プライマーは、例えば市販のオリゴヌクレオチド合成機により作製してもよいし、制限酵素処理等によって取得される二本鎖DNA断片として作製してもよい。プライマーのサイズは様々であってよく、例えば、約5〜約500塩基、約5〜約100塩基、約5〜約50塩基、約5〜約25塩基、約5〜約10塩基、約5〜約6塩基のサイズを挙げることが出来、好ましくは5〜50塩基のサイズである。
【0027】
本発明をイネ科の植物に使用する場合には、RT-PCR法において、配列番号1〜41に記載のゲノムDNA配列のそれぞれにハイブリダイズする5〜50塩基のプライマー対の群から選択される少なくとも1組のプライマー対を用いることが出来る。また、好ましくは、配列番号42と43、44と45、46と47、48と49、50と51、52と53、54と55、56と57、58と59、60と61、62と63、64と65、66と67、68と69、70と71、72と73、74と75、76と77、78と79、80と81、82と83、84と85、86と87、88と89、90と91、92と93、94と95、96と97、98と99、100と101、102と103、104と105、106と107、108と109、110と111、112と113、114と115、116と117、118と119、120と121、122と123から選択される少なくとも1組のプライマー対を用いることが出来る。さらに、より好ましくは、配列番号:44と45、60と61、66と67、74と75、80と81、82と83、88と89、92と93、96と97、102と103、108と109、110と111、112と113、122と123の10組のプライマー対を用いることが出来る。
【0028】
本方法の第2の工程では、植物に除草剤を接触させた場合における接触前後での該遺伝子群の発現量の変化と、植物に被験化合物を接触させた場合における接触前後での該遺伝子群の発現量の変化を比較する。
除草剤を接触させた場合の発現パターンと被験化合物を接触させた場合の発現パターンを比較する方法としては、クラスター解析ソフト{EPCLUST(http://ep.ebi.ac.uk/EP/EPCLUST)やCluster (http://rana.lbl.gov/EisenSoftware.htm, Eisen et al. (1998) PNAS 95:14863-14868)や GEPAS ( http://gepas.bioinfo.cnio.es/cgi-bin/treeview, Herrero et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31(13): 3461-3467) などを使用して、除草剤を接触させた場合の発現パターンにどの被験化合物の発現パターンが類似しているかをコンピューター上で計算させ、迅速に比較を行う方法などが挙げられる。このようなクラスター解析ソフトを使用する際に必要なデータ処理の一例として、被験化合物への接触後の遺伝子発現量の値を接触前の遺伝子発現量の値で割り算し、その値をlog2に変換し、これらの値をクラスター解析に利用することが挙げられる。「遺伝子発現量」の値とはリアルタイムPCRによる遺伝子発現解析の結果から得た数値を意味する。
【0029】
このような手法は被験化合物が数百以上の数量であった場合には有効であり、被験化合物が数十〜百程度の数量であった場合には、上記のように処理したデータ値を、例えばエクセルファイルなどの表計算ソフトウェアのファイル形式で一覧できるようにしておき、目視で判断することも可能である。
発現の変化の比較においては、まず初めにそれぞれの植物遺伝子の発現量をlog2比で表し、クラスター解析を行う。クラスター解析は、クラスター解析ソフトウエアEPCLUST(http://ep.ebi.ac.uk/EP/EPCLUST)を用いて行うことが可能である。
本発明の被験化合物の除草活性の有無を評価する方法においては、最終的に被験化合物が、除草活性を示すか否かを判定する。被験化合物接触前後での該遺伝子群の発現量の変化が、除草剤接触前後での該遺伝子群の発現量の変化と一致する場合に、被験化合物が除草活性を有するものと判定し、一致しない場合には、被験化合物が除草活性を持たないと判定する。
【0030】
上記の「除草剤」としては、除草活性を有する薬剤であれば特に制限されず、例えばイネ科に効果のある除草成分(セトキシジム、ビスピリバック、パラコート、ビフェノックス、アトラジン、DCMU、ノルフルラゾン、フルリドン、ピラゾレート、グリホサート、グルホシネート、ビアラホス)、イネ科に効果のないとされる除草成分(DCPA、アシフルオルフェン、2,4-D、MCPA、トリクロピル)、作用点が明確でないとされる除草成分(ジフェンゾコート、クミルロン、ダイムロン、ピリブチカルブ)等を挙げることが出来る。
また、上記の「一致する」には、完全に一致する場合の他、実質的に一致する場合も含まれる。従って、発現の変化が完全に一致する場合以外に、発現の変化が類似している場合も、本発明においては、発現の変化が一致するものとして判定を行う。
【0031】
また、本発明の除草活性の有無の評価方法を利用して、効率的に除草活性を有する化合物をスクリーニングすることができる。本発明は、このような除草活性を有する化合物のスクリーニング方法も提供する。
本発明の上記スクリーニング方法は、本発明の除草活性の有無の評価方法により、複数の被験化合物について、除草活性の有無を評価し、次いで、複数の被験化合物から、除草活性を有すると評価された化合物を選択する。
上記「複数の被験化合物」としては、例えば、前述した被験化合物に加えて、これらの被験化合物を複数種混合した混合物も含まれる。本発明の上記スクリーニング方法によって取得される化合物を有効成分として含む薬剤は、有効な除草剤となるものと期待される。
本発明は、被験化合物の除草活性の有無の評価方法、または除草活性を有する化合物のスクリーニング方法に用いるPCRプライマー対に関する。
本プライマー対としては、配列番号1〜41に記載のゲノムDNAのそれぞれにハイブリダイズする5〜50塩基のプライマー対を上げることが出来る。ハイブリダイズの条件については、上記の記載のハイブリダイズ条件を適用することが可能である。
【0032】
また、本プライマー対としては、好ましくは、配列番号42と43、44と45、46と47、48と49、50と51、52と53、54と55、56と57、58と59、60と61、62と63、64と65、66と67、68と69、70と71、72と73、74と75、76と77、78と79、80と81、82と83、84と85、86と87、88と89、90と91、92と93、94と95、96と97、98と99、100と101、102と103、104と105、106と107、108と109、110と111、112と113、114と115、116と117、118と119、120と121、122と123のいずれかに記載の、オリゴヌクレオチド対を挙げることが出来る。
【0033】
本発明は、上記に記載のオリゴヌクレオチド対を含む、除草剤のスクリーニング用キットに関する。
このようなキットには、上記に記載の除草活性の有無の評価判定の、遺伝子発現定量工程や発現比較工程に使用されるものを含みうる。植物を生育し、そのまま被験化合物の接触を行う連結チューブや、対照となる既知の除草剤等に関してもこれらのキットに含まれるものとする。
また、被検試料からRNAを抽出する際に用いる試薬等も含む。例えば、RT-PCR法を行う際の、蛍光基質、ポリメラーゼ、緩衝液等を挙げることができる。その他、蒸留水、塩、緩衝液、タンパク質安定剤、保存剤等が含まれていてもよい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕植物の準備と除草剤処理
実験に利用した植物は典型的な単子葉植物であるイネ(日本晴)を使用した。直径4 mmのジルコニアビーズを8連結チューブ(QIAGEN社製)に1個ずつ入れた後、イネ種子(玄米)を1粒、200 μl RO水を入れた。30℃で48時間暗黒下に静置し、グロースチャンバー(30℃、明期16時間、暗期8時間、相対湿度60%、光強度400 μE/m2/s)で5日間培養した。高さ5 cmに植物が生長したら、アスピレーターでRO水を取り除き、段階的に希釈した21種類の除草剤溶液を200 μlずつ入れ、グロースチャンバーに24時間静置した。除草剤は農薬業界で精力的に研究されている作用点を含め11種の異なる作用点に注目し(表1)、イネ科に効果のある除草成分(セトキシジム、ビスピリバック、パラコート、ビフェノックス、アトラジン、DCMU、ノルフルラゾン、フルリドン、ピラゾレート、グリホサート、グルホシネート、ビアラホス)、イネ科に効果のないとされる除草成分(DCPA、アシフルオルフェン2,4-D、MCPA、トリクロピル)および作用点が明確でない除草成分(ジフェンゾコート、クミルロン、ダイムロン、ピリブチカルブ)を含む市販の農薬あるいは試薬を計21種類使用した。本文中に記載した作用点(1)〜(11)についての詳細は表1に示す。遺伝子発現のパターン化に利用した各除草剤の濃度は、処理後2〜3日で枯死あるいは生育が停止する濃度を1倍とし、その20倍、100倍に希釈した薬液を使用した。対照区はRO水のみを処理した。本方法の目的である除草剤のスクリーニングにおいては、イネ科に効果のないとされる除草成分であっても、枯死あるいは生育が停止する濃度を利用して遺伝子発現解析を行うことは有効な手法であると考え、以下の実験を行った。
【表1】

【0035】
〔実施例2〕RNA抽出
除草剤処理後、8連結チューブに100 μl 抽出バッファー(3 M KCl、300 mM Tris-HCl、30 mM EDTA、3% β-メルカプトエタノール)、300 μl 酸性フェノール、60 μl クロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)、30 μl 3M 酢酸ナトリウム(pH 5.2)、直径5 mmのジルコニアボール1個を入れ、粉砕装置ミキサーミルMM300(Retch社製)を用いて300 Hzで3分間×2回粉砕した。これを2000 rpmで30分間遠心分離し、上清150 μlを新しい96ウェルプレートに移した。等量のイソプロパノールを加えてよく混合し、3000 rpmで30分間遠心分離を行った。上清を捨て、70%エタノールで沈殿を洗浄し、3000 rpmで10分間遠心分離を行った。上清を捨て、乾燥後、DEPC水に溶解し全RNAを得た。
【0036】
〔実施例3〕cDNAアレイ
当社で作製したイネの3’末端特異的cDNAライブラリーから約200クローンを選び、鋳型として大腸菌培養液を3 μl、反応液の全量を100 μlとし、96ウェルプレート(ABgene)でPCRを行った。反応液の組成は終濃度が10 mM Tris-HCl(pH 8.3)、50 mM KCl、0.2 mM dNTPs、1.5 mM MgCl2、0.2 μM Primer mix、0.025 U/μl AmpliTaq Gold DNA polymerase (Applied Biosystems)となるように調製した。PCR条件は95℃で10分間熱変性後、95℃で30秒間、55℃で1分間、72℃で1分間の反応を40回繰り返し、最後に72℃、7分間の反応を行った。反応終了後、等量のイソプロパノールを加え、よく混合した。-20℃に一晩静置後、4℃で3000 rpm×1時間遠心分離を行った。上清を捨て乾燥後、50% DMSOに溶解した。これをSpotArray24 (PerkinElmer)を用いてDNAマイクロアレイ用コートグラスDMSO対応TYPE1高密度化アミノ基導入タイプ(松浪硝子)に個々のクローンを5回ずつスポットした。スポット後、室温で30分間以上放置し、完全に乾燥させ、UVクロスリンカー(STRATAGENE)を用いて250 mJoulesのエネルギーでUVクロスリンクし、cDNAをスライドに固定した。スライドをスライド・ラックに移し、1% SDS を含む3×SSCで1分間穏やかに振とう洗浄した。スライドを滅菌蒸留水中に移し、室温で5分間静置して洗浄した。この操作を2回行った。次にスライドを沸騰させた蒸留水に2分間浸した。スライドを速やかに取り出し、室温で遮光しながら完全に乾くまで静置した。これをrice cDNA Chipとした。使用するまでは遮光・乾燥させ、室温で保存した。
【0037】
薬剤処理区および無処理区の植物から抽出した全RNA5 μgをLabelStar Array Kit(QIAGEN)を使用し、付属のプロトコールに従い、それぞれCy5およびCy3(PerkinElmer)で蛍光標識を行った。標識後、キット内の精製カラムを使用してプローブを精製し、30 μlの蛍光標識cDNAプローブを得た。これに20×SSC(300 mM 塩化ナトリウム、300 mM クエン酸ナトリウム)を終濃度が5×SSCとなるように加え、95℃で3分間熱変性を行った。熱変性後直ちに4℃で急冷し、終濃度が0.5%となるように10 %(w/v) SDSを加え、よく混合した。エタノールで洗浄したギャップカバーグラス(24×50mm)(松浪硝子)をrice cDNA Chipのスポットした表面全体を覆うように乗せた。ギャップカバーグラスの隙間から空気が入らないように注意して精製したプローブ液を注いだ。SYNTHETECH OVEN HA-1(BM機器)で65℃、18時間インキュベーションした後、0.1% SDS を含む2×SSC溶液内でギャップカバーグラスを静かにはがし、0.1% SDS を含む2×SSCで20 分間、0.1% SDS を含む0.2×SSCで20 分間、0.2×SSCで数十秒、0.05×SSCで数十秒の順に洗浄した。洗浄は全て暗室で行った。洗浄後300 rpmで軽く遠心分離を行い、室温で乾燥させた。その後ScanArray Express(PerkinElmer)で蛍光パターンを読み取り、それぞれのシグナル強度を数値化した。この値を薬剤処理区および無処理区との間で比較することによって遺伝子発現差を解析した。これらの解析結果から、両者の間で2倍以上の遺伝子発現差が認められ、かつ、薬剤ごとあるいはいくつかの薬剤に共通して発現変動を示す遺伝子を19個選抜した。これら19個の遺伝子名を以下に示す。
【0038】
<cDNAアレイ実験により選抜した遺伝子(相同性検索結果)>
薬剤スクリーニング遺伝子番号1:EST(プライマー配列番号42、43)
薬剤スクリーニング遺伝子番号2:EST(プライマー配列番号44、45)
薬剤スクリーニング遺伝子番号3:DRE binding factor 2 (DBF2)(プライマー配列番号46、47)
薬剤スクリーニング遺伝子番号4:EST(プライマー配列番号48、49)
薬剤スクリーニング遺伝子番号5:EST(プライマー配列番号50、51)
薬剤スクリーニング遺伝子番号6:EST(プライマー配列番号52、53)
薬剤スクリーニング遺伝子番号7:EST(プライマー配列番号54、55)
薬剤スクリーニング遺伝子番号8:EST(プライマー配列番号56、57)
薬剤スクリーニング遺伝子番号9:protein translation factor SUI1 homolog (GOS2 protein)(プライマー配列番号58、59)
薬剤スクリーニング遺伝子番号10:isopentenyl pyrophosphate:dimethyllallyl pyrophosphate isomerase(プライマー配列番号60、61)
薬剤スクリーニング遺伝子番号11:EST(プライマー配列番号62、63)
薬剤スクリーニング遺伝子番号12:EST(プライマー配列番号64、65)
薬剤スクリーニング遺伝子番号13:chloroplastic glutamine synthetase(プライマー配列番号66、67)
薬剤スクリーニング遺伝子番号14:cytsolic glutamine synthetase(プライマー配列番号68、69)
薬剤スクリーニング遺伝子番号15:ferredoxin-dependent glutamate synthase (プライマー配列番号70、71)
薬剤スクリーニング遺伝子番号16:cytsolic ascorbate peroxidase(プライマー配列番号72、73)
薬剤スクリーニング遺伝子番号17:polyubiquitin (RUBQ2) (プライマー配列番号74、75)
薬剤スクリーニング遺伝子番号18:heat shock protein 90(プライマー配列番号76、77)
薬剤スクリーニング遺伝子番号19:chlorophyll a/b-binding apoprotein CP24 (プライマー配列番号78、79)
【0039】
〔実施例4〕1 step RT-PCRによる確認
cDNAアレイ実験から選抜した19遺伝子についてABI PRISM 7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems)で1 step RT-PCRを行った。本方法は1つの反応系中に逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、プライマー、dNTPなどが入っており1回の実験で逆転写とPCR反応が行うことができる為、組織より抽出したRNAを直接反応溶液中へ添加するだけでよい。このように、煩雑な操作がないため、多検体の遺伝子発現レベルの評価に向いている方法である。反応液の組成は終濃度が10 mM Tris-HCl(pH 8.3)、50 mM KCl、0.5 mM dNTPs、4 mM MgCl2、0.6 μM 遺伝子特異的プライマー、0.2×SYBR GreenI(SIGMA)、0.16 pmol/μl 5-ROX、0.0625 U/μl AmpliTaq Gold DNA Polymerase(Applied Biosystems)、0. 625 U/μl ReverTra Ace(TOYOBO)、0. 25 U/μl RNase inhibitor(TOYOBO)、全RNA 200 ngとなるように調製した。内部標準として18S rRNAを用いた。PCR条件は48℃で30分間逆転写反応後、95℃で10分間熱変性し、94℃で30秒間、55℃で1分間、72℃で1分間の反応を38回繰り返した。反応終了後、同社の解析ソフトABI PRISM7000 SDS Softwareで遺伝子発現解析を行った。目的遺伝子の発現量は内部標準遺伝子18S rRNAの発現量で標準化した。それぞれの薬剤処理区において無処理区の1.6倍以上の遺伝子発現差が認められた遺伝子に注目し解析を行った。その結果、薬剤ごとあるいはいくつかの薬剤に共通して特徴的な遺伝子発現パターンを示す4個の遺伝子を選抜した(図1)。ビフェノックスと2,4-Dに類似作用を持つ薬剤を除き、作用点に関係なく植物を枯らす除草剤をスクリーニングする目的には、薬剤スクリーニング遺伝子番号2、10、13の組み合わせで使用し、無処理区に対する薬剤処理区の遺伝子発現レベルが上昇あるいは低下した薬剤をスクリーニングする。ビフェノックス、ピラゾレートおよび作用点不明薬剤に類似作用を持つ薬剤を除き、作用点に関係なく植物を枯らす除草剤をスクリーニングする目的には、薬剤スクリーニング遺伝子番号10、13、17の組み合わせで使用し、無処理区に対する薬剤処理区の遺伝子発現レベルが上昇あるいは低下した薬剤をスクリーニングする。フルリドンおよびパラコートに類似作用を持つ薬剤をスクリーニングする目的には、薬剤スクリーニング遺伝子番号10を使用し、無処理区に対する薬剤処理区の遺伝子発現レベルが上昇した薬剤をスクリーニングする。このように、遺伝子発現レベルの変化を指標として除草剤のスクリーニングが可能となった。
【0040】
1 step RT-PCRにより選抜した薬剤スクリーニング遺伝子(相同性検索結果)
薬剤スクリーニング遺伝子番号2:EST(プライマー配列番号44、45)
薬剤スクリーニング遺伝子番号10:isopentenyl pyrophosphate:dimethyllallyl pyrophosphate isomerase(プライマー配列番号60、61)
薬剤スクリーニング遺伝子番号13:chloroplastic glutamine synthetase(プライマー配列番号66、67)
薬剤スクリーニング遺伝子番号17:polyubiquitin (RUBQ2) (プライマー配列番号74、75)
【0041】
〔実施例5〕オリゴDNAアレイ
オリゴDNAアレイ実験で使用するそれぞれのオリゴDNAは、個々の遺伝子に特異的でかつハイブリダイゼーション中の二次構造などを考慮した遺伝子配列をコンピュータ上で計算しデザインを決定する為、cDNAアレイに比べるとより正確性の高い遺伝子発現解析が可能になる。そこで本発明者らは、より有効な薬剤スクリーニング遺伝子を探索する為に、当社で作製した遺伝子プロファイリングシステム(GEPAS; Gene Expression Profile Analysis System, イネ3’末端特異的cDNAライブラリーの遺伝子配列情報を一括してコンピュータで管理し、遺伝子発現レベルの解析が可能なシステム)から、様々な環境下(低温ストレス、作用点の異なる数種の除草剤処理下など)で特徴的な遺伝子発現変化を示した142個の遺伝子について遺伝子特異的オリゴDNAを作製した。遺伝子特異的なオリゴDNAの設計には、オリゴDNA設計支援サイトPROBEmer(http://probemer.cs.loyola.edu/)を利用した。これをSpotArray24 (PerkinElmer)を用いてDNAマイクロアレイ用コートグラスDMSO対応TYPE1高密度化アミノ基導入タイプ(松浪硝子)に個々のオリゴDNAを5回ずつスポットした。スポット後、70℃で60分間静置し、UVクロスリンカー(STRATAGENE)を用いて100 mJoulesのエネルギーでUVクロスリンクし、オリゴDNAをスライドに固定した。スライドをスライド・ラックに移し、1% SDS を含む3×SSCで1分間穏やかに振とう洗浄した。スライドを滅菌蒸留水中に移し、室温で5分間静置して洗浄した。この操作を2回行った。次にスライドを100%エタノールに数秒間浸した。スライドを速やかに取り出し、室温で遮光しながら完全に乾くまで静置した。これをrice Oligo DNA Chipとした。使用するまでは遮光・乾燥させ、室温で保存した。
【0042】
薬剤処理区および無処理区の植物から抽出した全RNA5 μgをLabelStar Array Kit(QIAGEN)を使用し、付属のプロトコールに従い、それぞれCy5およびCy3(PerkinElmer)で蛍光標識を行った。標識後、キット内の精製カラムを使用してプローブを精製し、30 μlの蛍光標識cDNAプローブを得た。これに20×SSC(300 mM 塩化ナトリウム、300 mM クエン酸ナトリウム)、100%ホルムアミド、10%SDSをそれぞれ終濃度が5×SSC、50%ホルムアミド、0.5%SDSとなるように加え、95℃で3分間熱変性を行った。熱変性後直ちに25℃に静置した。エタノールで洗浄したギャップカバーグラス(24×50mm)(松浪硝子)をRice Oligo DNA Chipのスポットした表面全体を覆うように乗せ、ギャップカバーグラスの隙間から空気が入らないように注意して精製したプローブ液を注いだ。SYNTHETECH OVEN HA-1(BM機器)で60℃、18時間インキュベーションした後、0.1% SDS を含む2×SSC溶液内でギャップカバーグラスを静かにはがし、0.1% SDS を含む1×SSCで5 分間、0.1% SDS を含む0.1×SSCで5 分間、蒸留水で数十秒の順に洗浄した。洗浄は全て暗室で行った。洗浄後300 rpmで数秒遠心分離を行い、室温で乾燥させた。その後ScanArray Express(PerkinElmer)で蛍光パターンを読み取り、それぞれのシグナル強度を数値化した。この値を薬剤処理区および無処理区との間で比較することによって遺伝子発現差を解析した。これらの解析結果から、両者の間で2倍以上の遺伝子発現差が認められ、かつ、薬剤ごとあるいはいくつかの薬剤に共通して発現変動を示す遺伝子を22個選抜した。これら22個の遺伝子名を以下に示す。
【0043】
<オリゴDNAアレイ実験により選抜した遺伝子(相同性検索結果)>
薬剤スクリーニング遺伝子番号20:cytosolic glutathione reductase(プライマー配列番号80、81)
薬剤スクリーニング遺伝子番号21:acetyl-CoA carboxylase(プライマー配列番号82、83)
薬剤スクリーニング遺伝子番号22:sucrose synthase (プライマー配列番号84、85)
薬剤スクリーニング遺伝子番号23:putative ketol-acid reductoisomerase (プライマー配列番号86、87)
薬剤スクリーニング遺伝子番号24:ribulose 1,5-bisphosphate carboxylase large subunit (プライマー配列番号88、89)
薬剤スクリーニング遺伝子番号25:glutathione S-transferase(プライマー配列番号90、91)
薬剤スクリーニング遺伝子番号26:putative dehydration-responsive protein RD22 precursor(プライマー配列番号92、93)
薬剤スクリーニング遺伝子番号27:metallothionein-like protein(プライマー配列番号94、95)
薬剤スクリーニング遺伝子番号28:phosphoribosylanthranilate transferase(プライマー配列番号96、97)
薬剤スクリーニング遺伝子番号29:glutathione peroxidase 1 (GPX1) (プライマー配列番号98、99)
薬剤スクリーニング遺伝子番号30:carbonic anhydrase(プライマー配列番号100、101)
薬剤スクリーニング遺伝子番号31:Zn-induced protein(プライマー配列番号102、103)
薬剤スクリーニング遺伝子番号32:mitogen-activated protein kinase(プライマー配列番号104、105)
薬剤スクリーニング遺伝子番号33:translation elongation factor-1 alpha(プライマー配列番号106、107)
薬剤スクリーニング遺伝子番号34:EST(プライマー配列番号108、109)
薬剤スクリーニング遺伝子番号35:putative acyl-CoA synthetase(プライマー配列番号110、111)
薬剤スクリーニング遺伝子番号36:1-aminocyclopropane-1-carboxylate oxidase 1(ACC oxidase 1)(プライマー配列番号112、113)
薬剤スクリーニング遺伝子番号37:cytsolic glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(プライマー配列番号114、115)
薬剤スクリーニング遺伝子番号38:chalcone synthase(プライマー配列番号116、117)
薬剤スクリーニング遺伝子番号39:AP22.64 aminopeptidase-like protein (プライマー配列番号118、119)
薬剤スクリーニング遺伝子番号40:EST(プライマー配列番号120、121)
薬剤スクリーニング遺伝子番号41:EST(プライマー配列番号122、123)
【0044】
〔実施例6〕2 step RT-PCRによる確認
全RNA 1 μgを用いてReverTra Dash(TOYOBO)に付属のプロトコールに従って逆転写反応を行い(ランダムプライマー使用)、cDNAを合成した。マイクロアレイ実験から選抜した18遺伝子についてそれぞれ遺伝子特異的なプライマーを設計し、逆転写反応済みの溶液を15倍希釈したものを鋳型として、ABI PRISM 7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems)でリアルタイムPCRを行った。プライマー設計には、プライマー設計支援サイトPrimer3(http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi)を利用した。内部標準として18S rRNAを用いた。反応液の組成は終濃度が10 mM Tris-HCl(pH 8.3)、50 mM KCl、0.2 mM dNTPs、2.5 mM MgCl2、0.3 μM Primer mix、0.2×SYBR GreenI(SIGMA)、0.16 pmol/μl 5-ROX、0.0225 U/μl AmpliTaq Gold DNA Polymerase(Applied Biosystems)となるように調製した。PCR条件は95℃で10分間熱変性後、95℃で10分間熱変性し、94℃で30秒間、55℃で1分間、72℃で1分間の反応を38回繰り返した。反応終了後、同社の解析ソフトABI PRISM7000 SDS Softwareで遺伝子発現解析を行った。目的遺伝子の発現量は内部標準遺伝子18S rRNAの発現量で標準化した。それぞれの薬剤処理区において無処理区の2倍以上の遺伝子発現差が認められた遺伝子に注目し解析を行った。その結果、薬剤ごとあるいはいくつかの薬剤に共通して特徴的な遺伝子発現パターンを示す10個の遺伝子を選抜した(図2)。これら10個の遺伝子名を以下に示す。作用点(2)を除き、作用点に関係なく植物を枯らす除草剤をスクリーニングする目的には、薬剤スクリーニング遺伝子番号20、24、26の組み合わせで使用し、無処理区に対する薬剤処理区の遺伝子発現レベルが上昇あるいは低下した薬剤をスクリーニングする。作用点(2)に類似の作用を持つ薬剤をスクリーニングする目的には、薬剤スクリーニング遺伝子番号21を使用し、無処理区に対する薬剤処理区の遺伝子発現レベルが上昇した薬剤をスクリーニングする。作用点(1)および(6)に類似の作用を持つ薬剤をスクリーニングする目的には、薬剤スクリーニング遺伝子番号41を使用し、無処理区に対する薬剤処理区の遺伝子発現レベルが上昇した薬剤をスクリーニングする。作用点(8)および(11)に類似の作用を持つ薬剤をスクリーニングする目的には、薬剤スクリーニング遺伝子番号31を使用し、無処理区に対する薬剤処理区の遺伝子発現レベルが上昇した薬剤をスクリーニングする。作用点(11)に類似の作用を持つ薬剤をスクリーニングする目的には、薬剤スクリーニング遺伝子番号28あるいは36を使用し、無処理区に対する薬剤処理区の遺伝子発現レベルが上昇した薬剤をスクリーニングする。MCPAおよびアトラジンに類似の作用を持つ薬剤をスクリーニングする目的には、薬剤スクリーニング遺伝子番号34を使用し、無処理区に対する薬剤処理区の遺伝子発現レベルが上昇した薬剤をスクリーニングする。作用点(5)および(10)に類似の作用を持つ薬剤をスクリーニングする目的には、薬剤スクリーニング遺伝子番号35を使用し、無処理区に対する薬剤処理区の遺伝子発現レベルが低下した薬剤をスクリーニングする。
以上より、遺伝子発現レベルの変化を指標として除草剤のスクリーニングが可能となった。
【0045】
<2 step RT-PCRにより選抜した薬剤スクリーニング遺伝子(相同性検索結果)>
薬剤スクリーニング遺伝子番号20:cytosolic glutathione reductase(プライマー配列番号80、81)
薬剤スクリーニング遺伝子番号21:acetyl-CoA carboxylase(プライマー配列番号82、83)
薬剤スクリーニング遺伝子番号24:ribulose 1,5-bisphosphate carboxylase large subunit (プライマー配列番号86、87)
薬剤スクリーニング遺伝子番号26:putative dehydration-responsive protein RD22 precursor(プライマー配列番号92、93)
薬剤スクリーニング遺伝子番号28:phosphoribosylanthranilate transferase(プライマー配列番号96、97)
薬剤スクリーニング遺伝子番号31:Zn-induced protein(プライマー配列番号102、103)
薬剤スクリーニング遺伝子番号34:EST(プライマー配列番号108、109)
薬剤スクリーニング遺伝子番号35:putative acyl-CoA synthetase(プライマー配列番号110、111)
薬剤スクリーニング遺伝子番号36:1-aminocyclopropane-1-carboxylate oxidase 1(ACC oxidase 1)(プライマー配列番号112、113)
薬剤スクリーニング遺伝子番号41:EST(プライマー配列番号122、123)
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】cDNAライブラリを用いた際に選抜された薬剤スクリーニング遺伝子の発現解析結果を示す図である。
【図2】オリゴDNAを用いた際に選抜された薬剤スクリーニング遺伝子の発現解析結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物遺伝子の発現の変化を指標として、被験化合物の除草活性の有無を評価する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
(a) 植物に除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子群の発現量を、植物に被験化合物を接触させた場合において接触前後で測定する工程
(b) 植物に除草剤を接触させた場合における接触前後での該遺伝子群の発現量の変化と、植物に被験化合物を接触させた場合における接触前後での該遺伝子群の発現量の変化を比較する工程
を含み、被験化合物接触前後での該遺伝子群の発現量の変化が、除草剤接触前後での該遺伝子群の発現量の変化と一致する場合に、被験化合物が除草活性を有するものと判定される方法。
【請求項3】
植物がイネ科の植物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子群が、配列番号1〜41およびこれらのホモログから選択される少なくとも1つの遺伝子である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
除草剤を接触させた場合に発現量が実質的に変化する遺伝子群の発現量の定量に、RT-PCR法が用いられる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
配列番号1〜41に記載のゲノムDNA配列のそれぞれにハイブリダイズする5〜50塩基のプライマー対の群から選択される少なくとも1組のプライマー対を用いて、RT-PCR法を行う請求項5に記載の方法。
【請求項7】
配列番号:42と43、44と45、46と47、48と49、50と51、52と53、54と55、56と57、58と59、60と61、62と63、64と65、66と67、68と69、70と71、72と73、74と75、76と77、78と79、80と81、82と83、84と85、86と87、88と89、90と91、92と93、94と95、96と97、98と99、100と101、102と103、104と105、106と107、108と109、110と111、112と113、114と115、116と117、118と119、120と121、122と123から選択される少なくとも1組のプライマー対を用いて、RT-PCR法を行う請求項5に記載の方法。
【請求項8】
配列番号:44と45、60と61、66と67、74と75、80と81、82と83、88と89、92と93、96と97、102と103、108と109、110と111、112と113、122と123の14組のプライマー対を用いて、RT-PCR法を行う請求項5に記載の方法。
【請求項9】
RT-PCR法が、1stepRT-PCR法または2stepRT-PCR法のどちらかである、請求項5〜8のいずれかに記載の方法
【請求項10】
RT-PCR法が、リアルタイムRT-PCR法である、請求項5〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
以下の(a)および(b)の工程を含む、除草活性を有する化合物のスクリーニング方法。
(a) 請求項2〜10のいずれかに記載の方法により、複数の被験化合物ついて、除草活性の有無を評価する工程。
(b) 複数の被験化合物から、除草活性を有すると評価された化合物を選択する工程。
【請求項12】
請求項2〜10のいずれかに記載の被験化合物の除草活性の有無を評価する方法、または請求項11に記載の除草活性を有する化合物のスクリーニング方法に用いるPCRプライマー対であって、配列番号1〜41に記載のゲノムDNAのそれぞれにハイブリダイズする5〜50塩基のプライマー対。
【請求項13】
請求項2〜10のいずれかに記載の被験化合物の除草活性の有無を評価する方法、または請求項11に記載の除草活性を有する化合物のスクリーニング方法に用いるPCRプライマー対であって、配列番号:42と43、44と45、46と47、48と49、50と51、52と53、54と55、56と57、58と59、60と61、62と63、64と65、66と67、68と69、70と71、72と73、74と75、76と77、78と79、80と81、82と83、84と85、86と87、88と89、90と91、92と93、94と95、96と97、98と99、100と101、102と103、104と105、106と107、108と109、110と111、112と113、114と115、116と117、118と119、120と121、122と123のいずれかに記載の、プライマー対。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の少なくとも一つのプライマー対を含む、除草剤のスクリーニング用キット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−223112(P2006−223112A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37605(P2005−37605)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(500301371)株式会社植物ゲノムセンター (16)
【Fターム(参考)】