説明

遺伝子多型と生活習慣との組み合わせを利用した高血圧症のリスクの診断法

【課題】 過剰飲酒、喫煙、肥満、塩分過剰摂取、または運動との組み合わせにより高血圧症のリスクを予測する方法の提供。
【解決手段】 本発明によれば、過剰飲酒の習慣を有する被験者では計6種の遺伝子多型のいずれか、肥満の被験者では計6種の遺伝子多型のいずれか、塩分過剰摂取の習慣を有する被験者では計7種の遺伝子多型のいずれか、定期的運動の習慣を有さない被験者では計6種の遺伝子多型のいずれか、ならびに喫煙の習慣を有する被験者では1種の遺伝子多型をリスクファクターとして、高血圧症のリスクを予測する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、遺伝子多型と生活習慣との組み合わせを利用した高血圧症のリスクの予測法に関する。
【0002】
背景技術
高血圧症患者の90%以上は、遺伝素因や環境因子がその原因として複雑に関与している本態性高血圧症の患者である。本態性高血圧症は我が国において3000万人以上が罹患している最も多い疾患と考えられている。本態性高血圧症はそれ自体無症候であることが多いが、脳卒中、虚血性心疾患、腎不全等の発症に強く関与する。従って、本態性高血圧症の制圧により、これらの重篤な疾患の発症を抑制できると考えられる。
【0003】
本態性高血圧症は、遺伝的要因だけでなく、生活習慣とも深く関連することが知られている。本態性高血圧症と同様に生活習慣と深く関連する動脈硬化症については、生活習慣と遺伝的要因との交互作用に関する報告がなされている(非特許文献1:Inamoto N, Katsuya T, Kokubo Y, Mannami T, Asai T, Baba S, Ogata J, Tomoike H, Ogihara T: Association of methylenetetrahydrofolate reductase gene polymorphism with carotid atherosclerosis depending on smoking status in a Japanese general population. Stroke 34: 1628-1633, 2003)。この報告は、MTHFR(methylenetetrahydrofolate reductase)遺伝子中の多型と頚部エコーとの関係に関するものであるが、そのなかで、ある遺伝子型を有する女性の喫煙群におけるプラークが、同遺伝子型を有する非喫煙群と比較して大きく肥厚することが示されている(交互作用P値=0.04)。このことから、MTHFR遺伝子の前記遺伝子型を有する女性では、非喫煙群と比べて、喫煙群で頚動脈硬化の発症リスクが高いことが示唆される。
【0004】
一方で、高血圧症については、生活習慣と遺伝的要因との交互作用に関する報告はなされていない。
【0005】
【非特許文献1】Inamoto N, Katsuya T, Kokubo Y, Mannami T, Asai T, Baba S, Ogata J, Tomoike H, Ogihara T, Stroke 34: 1628-1633, 2003.
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、過剰飲酒、喫煙、肥満、塩分過剰摂取、または運動と、特定の遺伝子多型との組み合わせにより、高血圧症のリスクが予測可能となるとの知見を得た。本発明はこの知見に基づくものである。
【0007】
従って、本発明は、過剰飲酒、喫煙、肥満、塩分過剰摂取、または運動との組み合わせにより高血圧症のリスクを予測する方法、ならびにこの方法に用いることができる診断用キットの提供を目的とする。
【0008】
そして、本発明の第一の態様による診断用キットは、過剰飲酒の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測するための診断用キットであって、
(i)IGF1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号1で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記IGF1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(ii)EDNRA遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号2で表されるヌクレオチド配列中の第465番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記EDNRA遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iii)EDNRA遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号2で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記EDNRA遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iv)TGFB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号3で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記TGFB1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(v)MCT1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号4で表されるヌクレオチド配列中の第728番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がアデニン(A)またはチミン(T)である前記MCT1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、ならびに
(vi)MCT1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号4で表されるヌクレオチド配列中の第2175番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記MCT1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子
からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなるものである。
【0009】
さらに、本発明の第一の態様による方法は、過剰飲酒の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測する方法であって、
(i)IGF1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号1で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(ii)EDNRA遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号2で表されるヌクレオチド配列中の第465番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(iii)EDNRA遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号2で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(iv)TGFB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号3で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(v)MCT1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号4で表されるヌクレオチド配列中の第728番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、および
(vi)MCT1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号4で表されるヌクレオチド配列中の第2175番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程
からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなるものである。
【0010】
さらに、本発明の第二の態様による診断用キットは、肥満の被験者が高血圧症になるリスクを予測するための診断用キットであって、
(i)ADRA2B遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号5で表されるヌクレオチド配列中の第2266〜2274番目のヌクレオチド残基群が存在するか否かを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基群が存在する、または欠失した前記ADRA2B遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(ii)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号6で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記PER3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iii)CACNA1A遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号7で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記CACNA1A遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iv)PLA2G7遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号8で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記PLA2G7遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(v)PDE4D遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号9で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がアデニン(A)またはチミン(T)である前記PDE4D遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、ならびに
(vi)PDE4D遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号10で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記PDE4D遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子
からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなるものである。
【0011】
さらに、本発明の第二の態様による方法は、肥満の被験者が高血圧症になるリスクを予測する方法であって、
(i)ADRA2B遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号5で表されるヌクレオチド配列中の第2266〜2274番目のヌクレオチド残基群が存在するか否かを同定する工程、
(ii)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号6で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(iii)CACNA1A遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号7で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(iv)PLA2G7遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号8で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(v)PDE4D遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号9で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、および
(vi)PDE4D遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号10で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程
からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなるものである。
【0012】
さらに、本発明の第三の態様による診断用キットは、塩分過剰摂取の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測するための診断用キットであって、
(i)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号11で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記PER3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(ii)MMP1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号12で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記MMP1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iii)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号13で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記PER3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iv)NOS3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号14で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはチミン(T)である前記NOS3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(v)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号15で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記PER3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(vi)PAFAH2遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号16で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはアデニン(A)である前記PAFAH2遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、ならびに
(vii)GREB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号17で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記GREB1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子
からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなるものである。
【0013】
さらに、本発明の第三の態様による方法は、塩分過剰摂取の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測する方法であって、
(i)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号11で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(ii)MMP1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号12で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(iii)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号13で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(iv)NOS3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号14で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(v)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号15で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(vi)PAFAH2遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号16で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、および
(vii)GREB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号17で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程
からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなるものである。
【0014】
さらに、本発明の第四の態様による診断用キットは、定期的運動の習慣を有さない被験者が高血圧症になるリスクを予測するための診断用キットであって、
(i)CTLA4遺伝子領域ゲノム配列に含まれる配列番号18で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはチミン(T)である前記CTLA4遺伝子領域ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(ii)CTLA4遺伝子領域ゲノム配列に含まれる配列番号19で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記CTLA4遺伝子領域ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iii)HPCAL1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号20で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記HPCAL1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iv)DNMBP遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号21で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記DNMBP遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(v)XDH遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号22で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかグアニン(G)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がアデニン(A)またはグアニン(G)である前記XDH遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、ならびに
(vi)GREB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号23で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記GREB1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子
からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなるものである。
【0015】
さらに、本発明の第四の態様による方法は、定期的運動の習慣を有さない被験者が高血圧症になるリスクを予測する方法であって、
(i)CTLA4遺伝子領域ゲノム配列に含まれる配列番号18で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(ii)CTLA4遺伝子領域ゲノム配列に含まれる配列番号19で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(iii)HPCAL1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号20で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(iv)DNMBP遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号21で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(v)XDH遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号22で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかグアニン(G)であるかを同定する工程、および
(vi)GREB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号23で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程
からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなるものである。
【0016】
さらに、本発明の第五の態様による診断用キットは、喫煙の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測するための診断用キットであって、
APOC3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号24で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかグアニン(G)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはグアニン(G)である前記APOC3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子を含んでなるものである。
【0017】
さらに、本発明の第五の態様による方法は、喫煙の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測する方法であって、
APOC3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号24で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかグアニン(G)であるかを同定する工程を含んでなるものである。
【0018】
本発明によれば、被験者の特定の遺伝子多型部位におけるヌクレオチド残基を同定することにより、該被験者の生活習慣(過剰飲酒、喫煙、肥満、塩分過剰摂取、運動)に応じて、高血圧症のリスクを予測することが可能となる。さらに、リスクの原因となる遺伝子多型に対応する生活習慣を改善することにより、その被験者において高血圧症を効率的に予防または治療することが可能となる。本発明によれば、出生前および出生直後の診断も可能である。
【発明の具体的説明】
【0019】
本明細書において「過剰飲酒の習慣」とは、一日当りの飲酒量が日本酒(アルコール濃度が約15%)に換算して270ml以上であることを意味する。また、「過剰飲酒の習慣を有する被験者」という用語は、その被験者が検査の時に既に過剰飲酒の習慣を有している場合のみならず、将来においてその習慣を有する場合をも含む。
【0020】
本明細書において「肥満」とは、BMI(体格指数:Body Mass Index)が25kg/m以上であることを意味する。また、「肥満の被験者」という用語は、その被験者が検査の時に既に肥満である場合のみならず、将来において肥満となる場合をも含む。
【0021】
本明細書において「塩分過剰摂取の習慣」とは、身長、体重、および年齢から1日クレアチニン排泄量を求め、尿中クレアチニン量から塩分排泄量を推計し(Kawasaki T, Uezono K, Itoh K, Ueno M. Prediction of 24-hour urinary creatinine excretion from age, body weight and height of an individual and its application. Japanese Journal of Public Health. 1991 Aug;38(8):567-74)、その値が12g/日以上であることを意味する。また、「塩分過剰摂取の習慣を有する被験者」という用語は、その被験者が検査の時に既に塩分過剰摂取の習慣を有している場合のみならず、将来においてその習慣を有する場合をも含む。
【0022】
本明細書において「定期的運動の習慣」とは、運動の種類にかかわらず、日常生活において定期的に(例えば、1日1回、2〜3日に1回、週に1回など)運動することを意味する。また、「定期的運動の習慣を有さない被験者」という用語は、その被験者が検査の時に定期的運動の習慣を有していない場合のみならず、将来その習慣を有さなくなる場合をも含む。
【0023】
本明細書において「喫煙の習慣」とは、日常的に煙草、葉巻などを吸うことを意味し、例えば、一日当り1回でも喫煙することを意味する。また、「喫煙の習慣を有する被験者」という用語は、その被験者が検査の時に既に喫煙の習慣を有している場合のみならず、将来においてその習慣を有する場合をも含む。
【0024】
本明細書において「IGF1遺伝子」とは、インスリン様増殖因子1を発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_019546.15としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのプロモーター領域に含まれる配列番号1中の第501残基において、シトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「IGF1-T1844C多型」という。)を有する。
【0025】
本明細書において「EDNRA遺伝子」とは、エンドセリン受容体A型を発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_016606.16としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号2中の第465残基において、シトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「EDNRA-JST045660多型」という。)を有し、さらに、配列番号2中の第501残基において、グアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「EDNRA-JST045659多型」という。)を有する。
【0026】
本明細書において「TGFB1遺伝子」とは、トランスフォーミング増殖因子β1を発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_011109.15としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号3中の第501残基において、シトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「TGFB1-rs1982073多型」という。)を有する。
【0027】
本明細書において「MCT1遺伝子」とは、モノカルボン酸トランスポーター1を発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_019273.16としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号4中の第728残基において、アデニン残基(A)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「MCT1-JST146677多型」という。)を有し、さらに、配列番号4中の第2175残基において、シトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「MCT1-JST146675多型」という。)を有する。
【0028】
本明細書において「ADRA2B遺伝子」とは、α2Bアドレナリン受容体を発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_026970.9としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号5中の第2266〜2274残基の存在または不存在による多型(以下「ADRA2B-Glu12/Glu9多型」という。)を有する。ADRA2B-Glu12/Glu9多型において配列番号5中の第2266〜2274残基が存在する場合には、その周辺のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列においてグルタミン酸(Glu)の12個の繰り返しがみられ、前記残基群が存在しない場合には、グルタミン酸(Glu)の9個の繰り返しがみられる。
【0029】
本明細書において「PER3遺伝子」とは、ショウジョウバエのX染色体上に見られるper遺伝子のヒトにおける相同遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_028054.12としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号6中の第501残基において、シトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「Per3-C7319T多型」という。)を有する。さらに、この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号11中の第501残基において、シトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「Per3-T1918C多型」という。)を有する。さらに、この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号13中の第501残基において、シトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「Per3-C47179T多型」という。)を有する。さらに、この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号15中の第501残基において、シトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「Per3-C48039T多型」という。)を有する。
【0030】
本明細書において「CACNA1A遺伝子」とは、カルシウムチャンネルα1Aサブユニットを発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_011295.10としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号7中の第501残基において、グアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「CACNA1A-rs16027多型」という。)を有する。
【0031】
本明細書において「PLA2G7遺伝子」とは、ホスホリパーゼA2グループVIIを発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_007592.13としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号8中の第501残基において、グアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「PLA2G7-rs1805017多型」という。)を有する。
【0032】
本明細書において「PDE4D遺伝子」とは、ホスホジエステラーゼ4Dを発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_006431.13としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号9中の第501残基において、アデニン残基(A)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「PDE4D-SNP24多型」という。)を有する。さらに、この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号10中の第501残基において、グアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「PDE4D-SNP41多型」という。)を有する。
【0033】
本明細書において「MMP1遺伝子」とは、マトリックスメタロプロテイナーゼ1を発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_033899.5としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号12中の第501残基において、グアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「MMP1-A2510G多型」という。)を有する。
【0034】
本明細書において「NOS3遺伝子」とは、一酸化窒素合成酵素3を発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_007914.12としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号14中の第501残基において、グアニン残基(G)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「NOS3-JST117269多型」という。)を有する。
【0035】
本明細書において「PAFAH2遺伝子」とは、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ2を発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_037485.3としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号16中の第501残基において、シトシン残基(C)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「PAFAH2-AH2-17518多型」という。)を有する。
【0036】
本明細書において「GREB1遺伝子」とは、乳癌タンパク質中のエストロゲンにより調節される遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_005334.14としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号17中の第501残基において、グアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「GREB1-45718多型」という。)を有する。さらに、この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号23中の第501残基において、グアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「GREB1-22923多型」という。)を有する。
【0037】
本明細書において「CTLA4遺伝子」とは、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4を発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_005403.13としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、その約4.3kb下流の遺伝子領域に含まれる配列番号18中の第501残基において、グアニン残基(G)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「CTLA4region-56JO31多型」という。)を有する。さらに、この遺伝子は、その約0.2kb下流の遺伝子領域に含まれる配列番号19中の第501残基において、グアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「CTLA4region-48CT60多型」という。)を有する。
【0038】
本明細書において「HPCAL1遺伝子」とは、カルシウム結合タンパク質であるhippocalcin-like 1を発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_005334.14としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号20中の第501残基において、グアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「HPCAL1-JST126159多型」という。)を有する。
【0039】
本明細書において「DNMBP遺伝子」とは、ダイナミン結合タンパク質を発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_030059.11としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号21中の第501残基において、シトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「KIAA1010-JST090923多型」という。)を有する。
【0040】
本明細書において「XDH遺伝子」とは、キサンチンデヒドロゲナーゼを発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_022184.13としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号22中の第501残基において、グアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「XDH-XDA109063多型」という。)を有する。
【0041】
本明細書において「APOC3遺伝子」とは、アポリポプロテインC−IIIを発現する遺伝子であり、そのゲノム配列はアクセス番号:NT_077584.1としてGenBankに登録されている。この遺伝子は、そのゲノム配列に含まれる配列番号24中の第501残基において、グアニン残基(G)とシトシン残基(C)との一塩基多型(以下「APOC3-rs5128多型」という。)を有する。
【0042】
過剰飲酒の習慣を有する被験者、特に男性の被験者において、IGF1-T1844C多型におけるTアレル、特にTT型、EDNRA-JST045660多型におけるCアレル、EDNRA-JST045659多型におけるAアレル、TGFB1-rs1982073多型におけるCアレル、特にCC型、MCT1-JST146677多型におけるTアレル、特にTT型、もしくはMCT1-JST146675多型におけるCアレル、またはこれらの任意の組み合わせが検出された場合には、その被験者が高血圧症になるリスクが高いものと判定することができる。すなわち、被験者、特に男性の被験者において、これらのアレルまたは遺伝子型が検出された場合には、その被験者が過剰飲酒の習慣を有すると、高血圧症になるリスクが高くなるものと判定することができる。
【0043】
肥満の被験者、特に男性の被験者において、ADRA2B-Glu12/Glu9多型における配列番号5中の第2266〜2274残基を含まないアレル、もしくはCACNA1A-rs16027多型におけるAアレル、またはこれらの任意の組み合わせが検出された場合には、その被験者が高血圧症になるリスクが高いものと判定することができる。すなわち、被験者、特に男性の被験者において、これらのアレルまたは遺伝子型が検出された場合には、その被験者が肥満であると、高血圧症になるリスクが高くなるものと判定することができる。
【0044】
肥満の被験者、特に女性の被験者において、Per3-C7319T多型におけるTアレル、PLA2G7-rs1805017多型におけるAアレル、PDE4D-SNP24多型におけるTアレル、特にTT型、もしくはPDE4D-SNP41多型におけるAアレル、特にAA型、またはこれらの任意の組み合わせが検出された場合には、その被験者が高血圧症になるリスクが高いものと判定することができる。すなわち、被験者、特に女性の被験者において、これらのアレルまたは遺伝子型が検出された場合には、その被験者が肥満であると、高血圧症になるリスクが高くなるものと判定することができる。
【0045】
塩分過剰摂取の習慣を有する被験者、特に男性の被験者において、Per3-T1918C多型におけるTアレル、Per3-C47179T多型におけるTアレル、NOS3-JST117269多型におけるGアレル、Per3-C48039T多型におけるTアレル、もしくはPAFAH2-AH2-17518多型におけるCアレル、特にCC型、またはこれらの任意の組み合わせが検出された場合には、その被験者が高血圧症になるリスクが高いものと判定することができる。すなわち、被験者、特に男性の被験者において、これらのアレルまたは遺伝子型が検出された場合には、その被験者が塩分過剰摂取の習慣を有すると、高血圧症になるリスクが高くなるものと判定することができる。
【0046】
塩分過剰摂取の習慣を有する被験者、特に女性の被験者において、MMP1-A2510G多型におけるGアレル、もしくはGREB1-45718多型におけるGアレル、特にGG型、またはこれらの任意の組み合わせが検出された場合には、その被験者が高血圧症になるリスクが高いものと判定することができる。すなわち、被験者、特に女性の被験者において、これらのアレルまたは遺伝子型が検出された場合には、その被験者が塩分過剰摂取の習慣を有すると、高血圧症になるリスクが高くなるものと判定することができる。
【0047】
定期的運動の習慣を有さない被験者、特に男性の被験者において、CTLA4region-56JO31多型におけるTアレル、特にTT型、CTLA4region-48CT60多型におけるAアレル、特にAA型、KIAA1010-JST090923多型におけるTアレル、特にTT型、もしくはXDH-XDA109063多型におけるGアレル、またはこれらの任意の組み合わせが検出された場合には、その被験者が高血圧症になるリスクが高いものと判定することができる。すなわち、被験者、特に男性の被験者において、これらのアレルまたは遺伝子型が検出された場合には、その被験者が定期的に運動しないと、高血圧症になるリスクが高くなるものと判定することができる。
【0048】
定期的運動の習慣を有さない被験者、特に女性の被験者において、HPCAL1-JST126159多型におけるAアレル、特にAA型、もしくはGREB1-22923多型におけるAアレル、またはこれらの任意の組み合わせが検出された場合には、その被験者が高血圧症になるリスクが高いものと判定することができる。すなわち、被験者、特に女性の被験者において、これらのアレルまたは遺伝子型が検出された場合には、その被験者が定期的に運動しないと、高血圧症になるリスクが高くなるものと判定することができる。
【0049】
喫煙の習慣を有する被験者、特に男性の被験者において、APOC3-rs5128多型におけるCアレル、特にCC型が検出された場合には、その被験者が高血圧症になるリスクが高いものと判定することができる。すなわち、被験者、特に男性の被験者において、これらのアレルまたは遺伝子型が検出された場合には、その被験者が喫煙の習慣を有すると、高血圧症になるリスクが高くなるものと判定することができる。
【0050】
本発明による診断用キットは、上述の各生活習慣との関連において、被験者が高血圧症になるリスクの予測に用いられるものである。このキットには、それぞれの生活習慣に対応する多型部位におけるヌクレオチド残基を同定することのできる核酸分子であって、該多型部位にかかるいずれかのアレルのゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含む核酸分子が含まれる。
【0051】
本発明において「ハイブリダイズする」とは、ある核酸分子がストリンジェントな条件下で標的ヌクレオチド分子にハイブリダイズし、標的ヌクレオチド分子以外のヌクレオチド分子にはハイブリダイズしないことを意味する。ストリンジェントな条件は、具体的な核酸分子とその相補鎖との二重鎖の融解温度Tm(℃)およびハイブリダイゼーション溶液の塩濃度などに依存して決定することができ、例えば、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)等を参照することができる。例えば、使用する核酸分子の融解温度よりわずかに低い温度下でハイブリダイゼーションを行なうと、核酸分子を標的ヌクレオチド分子に特異的にハイブリダイズさせることができる。本発明の好ましい実施態様によれば、あるポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子は、そのポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドの全部または一部の配列を含んでなるものとされる。
【0052】
本発明において「核酸分子」は、DNA、RNA、およびPNA(peptide nucleic acid)を含む意味で用いられる。本発明の好ましい実施態様によれば、核酸分子はDNAである。
【0053】
本発明に用いられる核酸分子のヌクレオチド配列は、当業者により適宜設計されうる。例えば、本発明に用いられる核酸分子は、プロモーター領域、ターミネーター領域、エクソン、およびイントロンのいずれにハイブリダイズする部分をも含むことができる。
【0054】
本発明に用いられる核酸分子は、各標的遺伝子における多型部位のヌクレオチドの同定において、核酸プローブとして用いることができる。この目的のためには、本発明に用いられる核酸分子は、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなることが好ましい。
【0055】
本発明に用いられる核酸分子を核酸プローブとして用いる場合、核酸分子の鎖長は10〜100ヌクレオチドとすることが好ましく、より好ましくは少なくとも12ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも13ヌクレオチド、さらに好ましくは13〜50ヌクレオチドとする。
【0056】
また、本発明に用いられる核酸分子は、各標的遺伝子における多型部位のヌクレオチドの同定において、核酸増幅用プライマーとして用いることができる。この目的のためには、本発明に用いられる核酸分子は、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域を核酸増幅法において増幅することができるものであることが好ましい。
【0057】
本発明に用いられる核酸分子を核酸増幅用プライマーとして用いる場合、核酸分子の鎖長は10〜50ヌクレオチドとすることが好ましく、より好ましくは少なくとも12ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、さらに好ましくは15〜30ヌクレオチドとする。
【0058】
本発明の他の好ましい実施態様によれば、本発明に用いられる核酸分子の鎖長は、15〜100ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも17ヌクレオチド、さらに好ましくは17〜50ヌクレオチドとする。このような鎖長を有する核酸分子は、特に夾雑物を含む核酸試料において、各標的遺伝子上の多型部位のヌクレオチドを同定する上で好ましいものである。
【0059】
核酸増幅法は、通常、プライマーのペアを用いて実施される。よって、本発明による診断用キットは、各標的遺伝子上の上記多型部位におけるヌクレオチドの同定に用いることのできるプライマーペアを含むことができる。
【0060】
このようなプライマーペアを構成する2本のプライマーとしては、上述の核酸分子を用いることができる。このようなプライマーは、増幅の対象となる領域のヌクレオチド配列に基づいて当業者が適宜設計することができる。例えば、プライマーペアの一方のプライマーを、増幅対象領域のヌクレオチド配列中における5’末端部分の配列を有するものとし、他方のプライマーを、増幅対象領域の相補鎖のヌクレオチド配列中における5’末端部分の配列を有するものとすることができる。
【0061】
本発明による方法は、上述の各生活習慣との関連において、被験者が高血圧症になるリスクの予測に用いられるものである。この方法には、それぞれの生活習慣に対応する上述の多型部位におけるヌクレオチド残基を同定する工程が含まれる。この方法は、本発明による診断用キットを用いることにより、好適に実行することができる。
【0062】
一つの実施態様によれば、本発明による診断用キットに含まれる核酸分子を用いて、被験者由来の核酸試料を鋳型とする核酸増幅法を行ない、得られた増幅産物中において上記各多型部位のヌクレオチドを同定することができる。
【0063】
この方法による診断に当たっては、例えば、被験者から血液等の試料を採取し、得られた試料からゲノムDNA等の核酸試料を抽出し、得られた核酸試料を鋳型として、前記核酸分子を用いて核酸増幅法を実施し、得られた増幅産物のヌクレオチド配列を解析することにより、各標的遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定することができる。核酸増幅法およびこれによる前記ヌクレオチドの同定法としては、当技術分野において公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、核酸増幅法としてはPCR法等を用いることができる。
【0064】
核酸増幅法により得られた増幅産物のヌクレオチド配列の解析は、例えば、シークエンス用プライマーを用いるダイレクトシークエンス法等により容易に行なうことができる。このような方法は当技術分野において周知であり、例えば、市販のキットを用いて実施することができる。
【0065】
本発明による方法においては、アレル特異的PCR法を実施できるようにプライマーを設計することもできる。具体的には、一方のプライマーを多型部位に対合できるように設計し、他方のプライマーを多型部位を含まない領域に対合できるように設計することができる。このように設計されたプライマーペアを用いて核酸増幅法を実施すると、核酸試料中に前記多型にかかるいずれかのアレルが存在する場合には増幅産物が得られ、これが存在しない場合には増幅産物が得られない。従って、この場合には、増幅産物の有無を検出することにより特定のアレルの有無を判定することができる。
【0066】
他の実施態様によれば、本発明による診断用キットに含まれる核酸分子と被験者由来の核酸試料とのハイブリダイゼーションを行ない、次いでハイブリダイゼーション複合体の存在を検出することができる。ハイブリダイゼーション複合体の存在は、上記各多型にかかるいずれかのアレルの存在を示す。このハイブリダイゼーション法を用いる方法は、上述の核酸増幅法を用いる方法により得られる増幅産物に対して適用することもできる。
【0067】
この方法による診断に当たっては、例えば、被験者から血液等の試料を採取し、得られた試料からゲノムDNA等の核酸試料を抽出し、ストリンジェントな条件下、前記核酸分子とのハイブリダイゼーションの有無を検出することにより、各標的遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定することができる。核酸試料は、必要であれば、制限酵素処理等を施し、ハイブリダイゼーションに適切な長さとすることもできる。ハイブリダイゼーション法とこれによる前記ヌクレオチドの同定法としては、当技術分野において公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、サザンハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等の技術を用いることができ、これらの方法については、例えば、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)を参照することができる。
【0068】
各標的遺伝子における上記各多型が一塩基多型である場合において、該一塩基多型部位のヌクレオチドを同定するためには、本発明による診断用キットに含まれる核酸分子をプライマーとして使用するプライマーエクステンション法を用いることもできる。プライマーエクステンション法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、上記のプライマーエクステンション法としては、SNaPshotTM法またはPyrosequencing法として知られる方法が用いられる。
【0069】
SNaPshotTM法においては、一塩基多型の部位に隣接するプライマーであって、伸長反応によりその3’末端に付加するヌクレオチドが前記一塩基多型の部位に相補的なものとなるプライマーが用いられる。このようなプライマーを使用し、被験者からの核酸試料を鋳型としてプライマーの伸長反応が行なわれるが、その際にddNTP(ジデオキシNTP)を用いることにより、伸長反応は、上記の多型部位に対応する一個のヌクレオチドを取り込んだ時点で終了する。取り込まれたヌクレオチドは、蛍光標識等で予め標識しておくことにより容易に同定され、従って、多型部位のヌクレオチドが同定される。このような方法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0070】
Pyrosequencing法においては、被験者からの核酸試料を鋳型とするプライマーの伸長反応の際に、4種のdNTPを1種ずつ反応させる。dNTPのいずれかが取り込まれると、等量のピロリン酸塩(PPi)が遊離し、遊離したPPiはスルフリラーゼと反応してATPを生成させ、このATPによりルシフェラーゼの反応が起こり、発光が起こる。従って、ある特定のdNTPを加えたときに発光が起こった場合には、そのdNTPに対応するヌクレオチドが取り込まれたことが明らかとなり、これにより核酸試料中の対象部位のヌクレオチドが同定される。この方法においては、dNTPが用いられるため、SNaPshotTM法で用いられるような多型部位に隣接するプライマーを用いる必要はなく、数塩基はなれたプライマーを用いてもよい。このような方法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0071】
各標的遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定する場合には、さらに、本発明による診断用キットに含まれる核酸分子をプローブおよび/またはプライマーとして使用する遺伝子型決定法(タイピング法)を用いることもできる。遺伝子型決定法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプローブおよび/またはプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、上記の遺伝子型決定法としては、TaqMan PCR法として知られる方法が用いられる。
【0072】
TaqMan PCR法においては、上記各多型部位のヌクレオチドを含む領域に対して、両アレルのそれぞれに特異的にハイブリダイズする2種のプローブであって、それぞれ別の蛍光標識物質が5’末端に付され、その蛍光標識に対するクエンチャー(消光物質)が3’末端に付されてなるプローブ(TaqManプローブ)が用いられ、これらをPCR反応液中に添加して、被験者由来の核酸試料を鋳型とするPCR反応を行なう。TaqManプローブおよびPCR用のプライマーとしては、本発明による診断用キットに含まれる核酸分子を用いることができ、それらの具体的なヌクレオチド配列は、当業者であれば適宜決定することができる。また、2種の蛍光標識物質は、互いに識別可能な組合せであればよく、そのような蛍光標識物質の組合せはそれぞれのクエンチャーとともに当業者に公知のものを用いることができるが、好ましくはFAM、VIC、およびTETのいずれかの組合せを用いる。
【0073】
TaqMan PCR法においては、まず、各アレルにTaqManプローブがハイブリダイズし、プライマーからの伸長反応がそのハイブリダイゼーション領域に到達した際にTaqDNAポリメラーゼの作用によって蛍光標識物質が遊離する。遊離した蛍光標識物質はクエンチャーの作用を受けないため、蛍光を発する。従って、この方法によれば、各アレルの存在量に対応する強度の各蛍光を観察することができ、これにより、被験者の遺伝子型が容易に決定される。
【0074】
本発明による診断用キットは、上述の核酸分子に加えて、上記各種標的遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定するための具体的方法に応じて、その方法に用いられる試薬類、反応容器、説明書等を含んでいてもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるれものではない。
【0076】
例1:遺伝子多型および生活習慣と高血圧症との関連
本研究においては、吹田市在住の市民から性および年齢により階層的に選ばれた、国立循環器病センター(National Cardiovascular Center of Japan)における1880人の受診者を対象とした。遺伝子解析に先立ち、被験者全員から遺伝子解析についてのインフォームドコンセントを取得した。被験者全員から採血し、得られた血液を遺伝子解析用のサンプルとした。被験者の血圧測定は2回行い、その平均値をとり、収縮期血圧(SBP)140mmHg以上もしくは拡張期血圧(DBP)90mmHg以上の被験者または降圧剤服用中の被験者を高血圧症と判定した。また、被験者は、喫煙者、飲酒者、高コレステロール症(総コレステロール220mg/dL以上またはコレステロール低下薬服用中)、糖尿病(空腹時血糖値126mg/dL以上、もしくは非空腹時血糖値200mg/dL以上でHbA1C6.5%以上、または糖尿病薬服用中)に分類した。被験者全体の各種データを表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
被験者全員のサンプルにおいて、高血圧感受性の候補遺伝子と考えた遺伝子中の計638種の多型についてTaqMan PCR法によるタイピングを行った。TaqMan PCR法は、TaqManシステム(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いて行なった。PCR産物の蛍光は、ABI PRISM(登録商標)7900HT Sequence Detection System(ABI)を用いて測定した。
【0079】
生活習慣については、一日当りの飲酒量が日本酒(アルコール濃度が約15%)に換算して270ml以上である場合を過剰飲酒と定義し、BMI(体格指数:Body Mass Index)が25kg/m以上である場合を肥満と定義し、身長、体重、および年齢から1日クレアチニン排泄量を求め、尿中クレアチニン量から塩分排泄量を推計し(Kawasaki T, Uezono K, Itoh K, Ueno M. Prediction of 24-hour urinary creatinine excretion from age, body weight and height of an individual and its application. Japanese Journal of Public Health. 1991 Aug;38(8):567-74)、その値が12g/日以上である場合を塩分過剰摂取と定義した。
【0080】
遺伝子と生活習慣との高血圧における交互作用を求めるために、以下のロジスティック回帰モデルを用いた(Witte JS. Gene-environment interaction. In: Elston R. Olson J, Palmer L, eds. Biostatistical Genetics and Genetic Epidemiology. Cleveland, Ohio: John Wiley &Sons; 2002:297-299)。
Logit p = β0 + βgxg + βexe + βgexge
【0081】
上記の式において、xgとxeはそれぞれ遺伝子と生活習慣のデータ項であり、β0は切片項、βgは遺伝子多型の主要効果の係数、βeは生活習慣の主要効果の係数を表す。Logitスケールでβgeは遺伝子多型と生活習慣との交互作用の係数を表す。本研究では、交互作用のp値が0.05未満のもので、生活習慣の有無別に分け、それぞれの群でロジスティック回帰分析を行い、生活習慣要因(+)のp値が0.05未満であったものを生活習慣と遺伝子との交互作用のある遺伝子多型とした。ここでの調整変数として、年齢、BMI、過剰飲酒をモデルに組み込んだ。その分析結果を、以下の表2〜6に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
表2から明らかなように、過剰飲酒との交互作用において高血圧症との関連性が見られる16種類の遺伝子多型のうち、交互作用p値が0.01未満のものは、IGF-T1844C、EDNRA-JST045659、EDNRA-JST045660、TGFB1-rs1982073、MCT1-JST146675-GA、およびMCT1-JST146677の6種類であった。このことから、これら6種類の遺伝子多型において、表2の「モデル」欄の下段に示される遺伝子型を保有している被験者が過剰飲酒の習慣を有すると、その被験者が高血圧症になるリスクが高くなることが明らかとなった。
【0088】
表3から明らかなように、肥満との交互作用において高血圧症との関連性が見られる20種類の遺伝子多型のうち、交互作用p値が0.01未満のものは、ADRA2B-Glu12/Glu9、Per3-C7319T、CACNA1A-rs16027、PLA2G7-rs1805017、PDE4D-SNP24-AT、およびPDE4D-SNP41-GAの6種類であった。このことから、これら6種類の遺伝子多型において、表3の「モデル」欄の下段に示される遺伝子型を保有している被験者が肥満であると、その被験者が高血圧症になるリスクが高くなることが明らかとなった。
【0089】
表4から明らかなように、塩分過剰摂取との交互作用において高血圧症との関連性が見られる15種類の遺伝子多型のうち、交互作用p値が0.01未満のものは、Per3-T1918C、MMP1-A2510G、Per3-C47179T、NOS3-JST117269-TG、Per3-C48039T、PAFAH2-AH2-17518-CA、およびGREB1-45718-AGの7種類であった。このことから、これら7種類の遺伝子多型において、表4の「モデル」欄の下段に示される遺伝子型を保有している被験者が塩分過剰摂取の習慣を有すると、その被験者が高血圧症になるリスクが高くなることが明らかとなった。
【0090】
表5から明らかなように、定期的な運動との交互作用において高血圧症との関連性が見られる21種類の遺伝子多型のうち、交互作用p値が0.01未満のものは、CTLA4 region-48CT60-GA、CTLA4 region-56JO31-GT、HPCAL1-JST126159、KIAA1010-JST090923-GA、XDH-XDA109063-GA、およびGREB1-22923-GAの6種類の遺伝子多型であった。このことから、これら6種類の遺伝子多型において、表5の「モデル」欄の下段に示される遺伝子型を保有している被験者が定期的な運動の習慣を有さないと、その被験者が高血圧症になるリスクが高くなることが明らかとなった。
【0091】
表6から明らかなように、喫煙との交互作用において高血圧症との関連性が見られる10種類の遺伝子多型のうち、交互作用p値が0.01未満のものは、APOC3-rs5128-GCの1種類であった。このことから、この遺伝子多型において、表6の「モデル」欄の下段に示される遺伝子型を保有している被験者が喫煙の習慣を有すると、その被験者が高血圧症になるリスクが高くなることが明らかとなった。
【0092】
以上の通り、各生活習慣要因との交互作用において、上述の遺伝子多型における遺伝子型を同定することにより、被験者が高血圧症になるリスクを予測することができる。さらに、高血圧症のリスクが高いと判定された被験者に対して、判定に用いられた遺伝子多型に対応する生活習慣の改善を指導することにより、該被験者における高血圧症の予防または治療が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過剰飲酒の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測するための診断用キットであって、
(i)IGF1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号1で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記IGF1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(ii)EDNRA遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号2で表されるヌクレオチド配列中の第465番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記EDNRA遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iii)EDNRA遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号2で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記EDNRA遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iv)TGFB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号3で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記TGFB1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(v)MCT1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号4で表されるヌクレオチド配列中の第728番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がアデニン(A)またはチミン(T)である前記MCT1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、ならびに
(vi)MCT1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号4で表されるヌクレオチド配列中の第2175番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記MCT1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子
からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなる、診断用キット。
【請求項2】
前記被験者が男性である、請求項1に記載の診断用キット。
【請求項3】
診断用キットに含まれる少なくとも一種の核酸分子が、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである、請求項1に記載の診断用キット。
【請求項4】
診断用キットに含まれる少なくとも一種の核酸分子が、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域を核酸増幅法において増幅することができるものである、請求項1に記載の診断用キット。
【請求項5】
過剰飲酒の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測する方法であって、
(i)IGF1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号1で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(ii)EDNRA遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号2で表されるヌクレオチド配列中の第465番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(iii)EDNRA遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号2で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(iv)TGFB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号3で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(v)MCT1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号4で表されるヌクレオチド配列中の第728番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、および
(vi)MCT1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号4で表されるヌクレオチド配列中の第2175番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程
からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなる、方法。
【請求項6】
前記被験者が男性である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
肥満の被験者が高血圧症になるリスクを予測するための診断用キットであって、
(i)ADRA2B遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号5で表されるヌクレオチド配列中の第2266〜2274番目のヌクレオチド残基群が存在するか否かを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基群が存在する、または欠失した前記ADRA2B遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(ii)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号6で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記PER3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iii)CACNA1A遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号7で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記CACNA1A遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iv)PLA2G7遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号8で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記PLA2G7遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(v)PDE4D遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号9で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がアデニン(A)またはチミン(T)である前記PDE4D遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、ならびに
(vi)PDE4D遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号10で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記PDE4D遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子
からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなる、診断用キット。
【請求項8】
前記被験者が男性であり、前記(i)の核酸分子および前記(iii)の核酸分子からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなる、請求項7に記載の診断用キット。
【請求項9】
前記被験者が女性であり、前記(ii)の核酸分子、前記(iv)の核酸分子、前記(v)の核酸分子、および前記(vi)の核酸分子からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなる、請求項7に記載の診断用キット。
【請求項10】
診断用キットに含まれる少なくとも一種の核酸分子が、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである、請求項7に記載の診断用キット。
【請求項11】
診断用キットに含まれる少なくとも一種の核酸分子が、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域を核酸増幅法において増幅することができるものである、請求項7に記載の診断用キット。
【請求項12】
肥満の被験者が高血圧症になるリスクを予測する方法であって、
(i)ADRA2B遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号5で表されるヌクレオチド配列中の第2266〜2274番目のヌクレオチド残基群が存在するか否かを同定する工程、
(ii)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号6で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(iii)CACNA1A遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号7で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(iv)PLA2G7遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号8で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(v)PDE4D遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号9で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、および
(vi)PDE4D遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号10で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程
からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなる、方法。
【請求項13】
前記被験者が男性であり、前記工程(i)および前記工程(iii)からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記被験者が女性であり、前記工程(ii)、前記工程(iv)、前記工程(v)、および前記工程(vi)からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
塩分過剰摂取の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測するための診断用キットであって、
(i)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号11で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記PER3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(ii)MMP1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号12で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記MMP1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iii)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号13で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記PER3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iv)NOS3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号14で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはチミン(T)である前記NOS3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(v)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号15で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記PER3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(vi)PAFAH2遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号16で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはアデニン(A)である前記PAFAH2遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、ならびに
(vii)GREB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号17で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記GREB1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子
からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなる、診断用キット。
【請求項16】
前記被験者が男性であり、前記(i)の核酸分子、前記(iii)の核酸分子、前記(iv)の核酸分子、前記(v)の核酸分子、および前記(vi)の核酸分子からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなる、請求項15に記載の診断用キット。
【請求項17】
前記被験者が女性であり、前記(ii)の核酸分子および前記(vii)の核酸分子からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなる、請求項15に記載の診断用キット。
【請求項18】
診断用キットに含まれる少なくとも一種の核酸分子が、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである、請求項15に記載の診断用キット。
【請求項19】
診断用キットに含まれる少なくとも一種の核酸分子が、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域を核酸増幅法において増幅することができるものである、請求項15に記載の診断用キット。
【請求項20】
塩分過剰摂取の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測する方法であって、
(i)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号11で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(ii)MMP1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号12で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(iii)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号13で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(iv)NOS3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号14で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(v)PER3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号15で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(vi)PAFAH2遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号16で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、および
(vii)GREB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号17で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程
からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなる、方法。
【請求項21】
前記被験者が男性であり、前記工程(i)、前記工程(iii)、前記工程(iv)、前記工程(v)、および前記工程(vi)からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記被験者が女性であり、前記工程(ii)および前記工程(vii)からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
定期的運動の習慣を有さない被験者が高血圧症になるリスクを予測するための診断用キットであって、
(i)CTLA4遺伝子領域ゲノム配列に含まれる配列番号18で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはチミン(T)である前記CTLA4遺伝子領域ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(ii)CTLA4遺伝子領域ゲノム配列に含まれる配列番号19で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記CTLA4遺伝子領域ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iii)HPCAL1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号20で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記HPCAL1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(iv)DNMBP遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号21で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはチミン(T)である前記DNMBP遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、
(v)XDH遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号22で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかグアニン(G)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がアデニン(A)またはグアニン(G)である前記XDH遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子、ならびに
(vi)GREB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号23で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がグアニン(G)またはアデニン(A)である前記GREB1遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子
からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなる、診断用キット。
【請求項24】
前記被験者が男性であり、前記(i)の核酸分子、前記(ii)の核酸分子、前記(iv)の核酸分子、および前記(v)の核酸分子からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなる、請求項23に記載の診断用キット。
【請求項25】
前記被験者が女性であり、前記(iii)の核酸分子および前記(vi)の核酸分子からなる群から選択される少なくとも一種の核酸分子を含んでなる、請求項23に記載の診断用キット。
【請求項26】
診断用キットに含まれる少なくとも一種の核酸分子が、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである、請求項23に記載の診断用キット。
【請求項27】
診断用キットに含まれる少なくとも一種の核酸分子が、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域を核酸増幅法において増幅することができるものである、請求項23に記載の診断用キット。
【請求項28】
定期的運動の習慣を有さない被験者が高血圧症になるリスクを予測する方法であって、
(i)CTLA4遺伝子領域ゲノム配列に含まれる配列番号18で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(ii)CTLA4遺伝子領域ゲノム配列に含まれる配列番号19で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(iii)HPCAL1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号20で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程、
(iv)DNMBP遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号21で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかチミン(T)であるかを同定する工程、
(v)XDH遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号22で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がアデニン(A)であるかグアニン(G)であるかを同定する工程、および
(vi)GREB1遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号23で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がグアニン(G)であるかアデニン(A)であるかを同定する工程
からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなる、方法。
【請求項29】
前記被験者が男性であり、前記工程(i)、前記工程(ii)、前記工程(iv)、および前記工程(v)からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記被験者が女性であり、前記工程(iii)および前記工程(vi)からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含んでなる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
喫煙の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測するための診断用キットであって、
APOC3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号24で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかグアニン(G)であるかを同定しうる核酸分子であって、該ヌクレオチド残基がシトシン(C)またはグアニン(G)である前記APOC3遺伝子ゲノム配列を含むポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子を含んでなる、診断用キット。
【請求項32】
前記被験者が男性である、請求項31に記載の診断用キット。
【請求項33】
診断用キットに含まれる少なくとも一種の核酸分子が、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである、請求項31に記載の診断用キット。
【請求項34】
診断用キットに含まれる少なくとも一種の核酸分子が、同定の対象となるヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド上の領域を核酸増幅法において増幅することができるものである、請求項31に記載の診断用キット。
【請求項35】
喫煙の習慣を有する被験者が高血圧症になるリスクを予測する方法であって、
APOC3遺伝子ゲノム配列に含まれる配列番号24で表されるヌクレオチド配列中の第501番目のヌクレオチド残基がシトシン(C)であるかグアニン(G)であるかを同定する工程を含んでなる、方法。
【請求項36】
前記被験者が男性である、請求項35に記載の方法。

【公開番号】特開2006−67902(P2006−67902A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255361(P2004−255361)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】