説明

遺伝子治療薬を送達する方法

本発明は、哺乳類対象における標的臓器の脈管構造に、遺伝子治療薬のような様々な治療薬を圧力増強送達するための方法を提供する。哺乳類の肝臓全体、または単肝葉における標的化遺伝子治療のための方法が開示される。開示される方法は侵襲性を最小限に抑えたカテーテルに基づく手順に依存し、標的臓器は隔絶され、遺伝子治療薬で局所的に処理される。本方法は、組織のより効率的で局所的なトランスフェクションを提供し、ヒト対象における遺伝子治療に十分適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2002年6月24日に提出された米国特許仮出願第60/390,444号の優先権を主張するものであり、これはその全体が参照として組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は哺乳類対象の標的臓器に治療薬を投与するための方法に関する。より具体的には、本発明は、標的臓器、例えば肝臓を隔絶し、侵襲性を最小限に抑えた経皮経カテーテル法を用いて処理する遺伝子送達法に関する。本発明はさらに、標的臓器の隔絶した脈管構造への直接的な遺伝子治療薬の圧力増強送達に関する。哺乳類の肝臓全体への、または単肝葉への標的化遺伝子送達のための方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
遺伝子治療は、存在している異常を治す、または細胞に新しい有益な機能を提供する外来性遺伝物質の細胞内送達である。肝臓は、血清タンパク質の代謝および産生におけるその中心的役割のために、遺伝子治療のための重要な標的臓器である。肝特異的な遺伝子産物の異常に起因する、または分泌タンパク質の肝産生から恩恵を受ける可能性のある、多数の既知の疾患が存在する。家族性高コレステロール血症、血友病、リソソーム蓄積症(ゴーシェ病およびファブリー病を含む)はほんの一部の例である。多くのそのような疾患は、遺伝子治療に適している可能性がある(Siatskasら、J. Inherit Metab. Dis. 2001, 24 (Suppl. 2): 25-41; Barrangerら、Expert Opin. Biol. Ther. 2001, 1(5): 857-867; Barrangerら、Neurochem. Res. 1999, 24(5): 601-615)。
【0004】
外来性遺伝物質を肝臓の細胞の中へ送達するために、様々な方法が開発されている。一般に、それぞれの方法はある一定の欠点を有している。例えば、レトロウイルス・ベクターを使用した生体外遺伝子治療では、宿主から肝細胞を得て培養し、生体外でその肝細胞をトランスフェクションし、その後それらを宿主の肝臓中へ移植し戻すことが必要となる(Grossmanら、Nat. Genet. 1994, 6: 335-341)。この方法は複雑で時間がかかり、多くの欠点を負う。あるいは、直接的な肝臓へのレトロウイルス・ベクターの送達は、継続的で増大した内因性肝細胞の増殖を必要とし、それは部分肝切除を余儀なくさせる(Ferryら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1991, 88: 8377-8381;Kayら、Hum. Gene Ther. 1992, 3:641-647)。アデノウイルス遺伝子導入ベクターをラットの門脈に注入すると、肝臓における高レベルの導入遺伝子発現が観察されるが(Rosefeldら、Science 1991, 252: 431-434)、そのような発現は一時的であり、ベクターの連続的な注入が必要とされる。加えて、循環系に注入すると、既に存在する抗体がウイルス・ベクターを速やかに中和する可能性がある。組換えアデノウイルス・ベクターの全身性注入により、連続投与におけるそのようなベクターの効果が中和性宿主免疫反応により限定されることが示された(Yangら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 1994, 91: 4407-4411; Kozarskyら、J. Biol. Chem. 1994, 269: 13695-13702)。肝臓のトランスフェクションのためのアデノ随伴ウイルス(AAV)の全身性投与では、比較的多数のウイルス粒子(およそ1011〜1013程度のウイルスゲノム/kg)の送達が必要とされる(Mountら、Blood 2002, 99: 2670-2676)。ヒト対象の治療に必要とされる所要数のウイルス粒子の産生を実現するのは難しいと考えられる。
【0005】
「剥き出しの」プラスミドDNAの注入のような、非ウイルス性遺伝子導入法も記載されている。しかしながら、遺伝子導入のレベルが通常は低すぎて、臨床応用には十分でない(Maloneら、J. Biol. Chem. 1994, 269: 29903-29907; Hickmanら、Hum. Gene Ther. 1994, 5: 1477-1483)。カチオン性リポソーム媒介遺伝子導入は、剥き出しのプラスミドDNAによるトランスフェクションよりはるかに効率的であることが見出されたが、遺伝子導入のレベルは通常は依然としてウイルス・ベクターほど高くない(Liuら、J. Biol. Chem. 1995, 270 : 24864-24870)。
【0006】
既知の遺伝子治療薬(ウイルス性および非ウイルス性)の多くは、それらの全身性投与への適用を限定させる可能性のある悪い副作用を引き起こす可能性がある。従って、遺伝子治療研究にとっての主要な課題の1つは、高度に標的化された方法で身体の特定の場所に薬剤を送達することである。米国特許第6,265,387号は、剥き出しのプラスミドDNAを含む、釣り合い的に非常に大量の高張液の静脈注射を介して、マウス肝臓をトランスフェクションするための方法について記載している。大部分の遺伝子導入は肝臓で起こるが、脾臓、肺、および腎臓のようなその他の臓器にも、かなり少なくはあるが影響が及ぶ。そのようなアプローチは、必要とされる比較的高い注入量および肝臓以外の臓器の無差別なトランスフェクションのために、ヒトにおいて臨床的に実現可能でない。トランスフェクションをより良く肝臓に限定するため、また例えばイヌのようなより大きな種における注入量を制限するために、肝臓からの静脈流出を外科手術用鉗子によって一時的に遮断すれば、大静脈または門脈のいずれかへのプラスミドDNAの高用量の流体力学的送達により高レベルの遺伝子導入を生じ得ることが、以前に示されている(Zhangら、Hum. Gene Ther. 1997, 8: 1763-1772)。しかしながら、この方法で必要とされる開腹術的遮断および釣り合い的に非常に高容量の注入は、心臓力学的不安定性および死亡の危険性を含むこの手順の危険性を増大させ、この方法をヒト対象において臨床的に実現不可能にさせている。
【0007】
血管の隔絶された部分に比較的少量のトランスフェクション薬を送達するために、特別に設計されたバルーン閉塞カテーテルが用いられている(米国特許第5,298,531号および第6,135,976号)。しかしながら、注入速度および圧力に従来のパラメータを使用した場合、そのようなカテーテルを使用する方法は、一般に血管内腔の小さな部分の表面を裏打ちする内皮細胞のトランスフェクションに適するのみである。対照的に、容量血管および二重の血管供給が、注入液の速やかな減少と、その結果としての貧しいトランスフェクション効率の原因となるので、肝臓のような臓器全体のトランスフェクションのためにこのような方法を用いることには問題がある。
【0008】
従って、ヒト対象における肝遺伝子治療における進歩は、高度に標的化され、持続性のあるやり方で所望のレベルの導入遺伝子発現をもたらす、遺伝子送達法の進歩に大きく依存する。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、哺乳類の肝臓のような蓄積臓器を隔絶して、遺伝子治療におけるような治療薬で処理する方法に関する。本発明の方法では、侵襲性を最小限に抑えたカテーテルに基づく手順を採用する。1つの方法においては、バルーン閉塞バルーン・カテーテルが単一肝静脈内で近位に連結され、治療液はこのように隔絶された標的葉の血管を介し、肝実質まで、カテーテルを経由して拡張した(閉塞)バルーンを超え流体力学的に送達される(本明細書において「葉送達」と呼ぶ)。速い注入速度によって、脈管構造の隔絶された部分の内側における、圧力の所望の一過性の増大がもたらされる。バルーンの位置を変えて異なる血管を閉塞することによって、同じ手順の間に複数の葉を順次処理することができる。処理が極めて局部的なので、1つの臓器の様々な部分を、そうでなければ不適合な可能性のある異なった治療薬で、同じ手順において処理することができる。または、閉塞バルーンが大静脈の肝臓内部分において静脈流出を遮断している状態で、側孔が肝静脈中のバルーンを越えて位置する血管内注入カテーテルを、所定の肝葉を処理するために使用することができる。血管内カテーテルの位置を異なる血管に移すことによって、同じ手順の間に複数の葉を順次処理することができる。
【0010】
本発明によるもう1つの方法においては、臓器全体からの静脈流出を、肝静脈流出に近位および遠位双方における下大静脈内のバルーン・カテーテルの留置によって一過性に閉塞し、遺伝子治療薬を、血管内注入カテーテルによって、拡張した(閉塞している)バルーン間のスペースに、圧力を少なくとも一過性に上昇させて従属する臓器実質の供給または排出をする隔絶された血管樹を満たすのに十分な速度および容量において、注入する(本明細書において、標的化全体臓器送達と呼ぶ)。この方法が、適当な圧力において、隔絶された肝臓にDNA含有溶液を送達するために用いられると、極めて効果的な遺伝子導入が実現される。一部の態様においては、遺伝子治療溶液は、10から100、10から80、10から50、20から100、20から80、および20から50mmHgの範囲のなかから選択される圧力増大をもたらすために十分な速度で、流体力学的に注入される。さらなる態様においては、圧力増大は、15から100、15から80、15から50、10から30、および10から20mmHgの範囲のなかから選択される。一部の態様においては、圧力増大は少なくとも15mmHgである。一部の関連する態様においては、カテーテルは少なくとも300psi、好ましくは1200psiの注入圧力に耐える定格である。
【0011】
発明の詳細な説明
「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)を意味し、適切な場合にはリボ核酸(RNA)も意味する。本用語には、同等物として、ヌクレオチド類似体、および一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドが含まれることもまた理解されるべきである。ポリヌクレオチドの例には、限定するものではないが、プラスミドDNAまたはその断片、ウイルスDNAまたはRNA、アンチセンスRNA、その他が含まれる。「プラスミドDNA」という用語は、環状である二本鎖DNAを意味する。
【0012】
「導入遺伝子」という用語は、組織もしくは臓器の細胞中に導入されるポリヌクレオチドであって、適当な条件下で発現させることができ、または別の方法で細胞に有益な特性を与えるポリヌクレオチドを意味する。導入遺伝子は望ましい治療上の結果に基づいて選択される。それは、例えばホルモン、酵素、受容体、またはその他の関心対象のタンパク質をコードする可能性がある。例えば、家族性高コレステロール血症の治療において、LDL受容体をコードする導入遺伝子が用いられうる(Kobayashiら、J. Biol. Chem. 271: 6852-6860)。
【0013】
「トランスフェクション」という用語は、「遺伝子導入」という用語と区別なく用いられ、ポリヌクレオチドの細胞内導入を意味する。「トランスフェクション効率」は、トランスフェクションの対象となる細胞に取り込まれる導入遺伝子の相対量を意味する。実際には、トランスフェクション効率は、トランスフェクション手順の後に発現したレポーター遺伝子産物の量によって見積もられる。
【0014】
「トランスフェクション薬」という用語は、「遺伝子治療薬」および「治療薬」という用語と区別なく用いられ、細胞内に送達されるポリヌクレオチドを含んでいる任意の溶液、混合物、またはその他の調製物を意味する。トランスフェクション薬は通常、「発現ベクター」と呼ばれ「遺伝子送達ベクター」としても知られる、導入遺伝子と連結した担体ポリヌクレオチドを含み、選択的に、細胞壁を越えたポリヌクレオチドの運搬を容易にしうるその他の化合物を含む。典型的に、そのような化合物は細胞表面およびポリヌクレオチド自身の帯電を減じ、または細胞壁の透過性を増大させる。例として、カチオン性リポソーム、リン酸カルシウム、ポリリジン、血管内皮成長因子(VEGF)、その他が含まれる。例えばNaCl、糖、またはポリオールを含む高張液を、細胞外浸透圧を増大させることによってトランスフェクション効率を増大させるために用いることができる。遺伝子治療溶液には、プロテアーゼおよびリパーゼのような酵素、弱洗剤(mild detergent)、ならびにその他の細胞膜透過性を増大する化合物が含まれる可能性もある。本発明の方法は、トランスフェクション薬のいかなる特定の組成にも限定されず、それが対象に毒性ではなくまたはその毒性が許容限界内である限り、任意の適当な薬剤で実行することができる。
【0015】
「流体力学的な注入」という用語は、血管スペースおよび従属する臓器実質の内側に超全身性圧力を生じるのに十分な速度および容量における血管内注入を意味する。この圧力増加は、流出遮断なしの全身注入におけるように一過性か、または流出遮断を伴う標的化全体臓器注入におけるように持続性である可能性がある。流体力学的な注入は、所定容量の溶液状治療薬を所定の速度で送達するようにプログラム化された動力注入装置によって速度および容量制御されてもよい。流体力学的な注入は、注入サイクルの間に血管内圧または実質内圧をモニターするフィードバック機構により動力注入機を調整することによって圧力制御されてもよい。速度制御および圧力制御された流体力学的な注入は、本明細書において「制御圧力注入」と呼ぶ。本発明の方法は、本方法が対象に過度に有害でない限り、立ち上がり速度、ピーク圧、または持続期間を考慮せずに、任意の適当な圧力特性で実行することができる。
【0016】
本発明の方法における顕著な特色は、臓器の脈管構造の隔絶された部分への遺伝子治療薬の送達が、その一部分または複数部分における増大した圧力の下で実行されるということである。一過性の圧力増大は、治療溶液の流体力学的な注入によって実現される。この圧力の増大は、注入の直前の体脈管構造の隔絶された部分における圧力と、注入の間の上昇したまたは超全身性圧力との違いに相当する。一部の態様においては、注入の全容量(通常、標的臓器の容量のおよそ10〜50%)が、10から100、10から80mmHg、10から50、20から100、20から80、および20から50mmHgの範囲のなかから選択される圧力増大を生じるのに十分な速度で流体力学的に注入される。さらなる態様においては、圧力増大は、15から100、15から80、15から50、10から30、および10から20mmHgの範囲のなかから選択される。一部の態様においては、圧力増大は少なくとも15mmHgである。一部の関連する態様においては、カテーテルは少なくとも300psi、好ましくは1200psiの注入圧力に耐える定格である。トランスフェクション効率の比較により、治療薬の流体力学的な送達が、外部からの同等またはより高い圧力の局所適用に対してかなり有利であることが示される。本発明は、全身送達と比較し、かなり低い用量の遺伝子治療薬の送達によって肝臓のような標的臓器の極めて効率的なトランスフェクションを可能にし、非標的臓器の曝露を減少させることができる。
【0017】
本発明の1つの態様においては、肝臓の単葉を制御圧力注入を用いてトランスフェクションする。図1に描かれているように、カテーテルは、既知の介入および外科技術を用い、大静脈を介して希望の肝静脈へ進める。バルーン閉塞バルーン・カテーテルは、頚静脈または大腿静脈のいずれかを介したカテーテルの導入後、選択された肝静脈の管腔内に留置する。トランスフェクション薬の血管内・経カテーテル注入の直前に、カテーテル上のバルーンを拡張させて静脈流出を遮断することによって、注入した溶液を隔絶した標的葉の実質に閉じ込める。
【0018】
本発明のもう1つの態様においては、単肝葉を制御圧力条件下でトランスフェクションする。バルーン閉塞バルーン・カテーテル(図3に描かれているとおり)、または遠位側孔を有する血管内注入カテーテルを、選択した肝静脈の管腔内に留置する。閉塞バルーンは下大静脈の肝臓部分の中に留置して肝静脈流出を遮断する。トランスフェクション薬の経カテーテル注入の前に、バルーンを拡張させて静脈流出を遮断することによって、注入した溶液を隔絶した標的葉の実質に閉じ込める。側孔を有するカテーテルを介した注入は、それが注入溶液のより大きな分散によって組織への衝撃損傷の危険性を減ずるため、より高速の注入を可能にする。
【0019】
本発明のもう1つの態様においては、単葉を流体力学的な注入を利用してトランスフェクトする。バルーン閉塞バルーン・カテーテルは、選択した肝静脈の管腔内に留置する。先端付近に側孔を有する血管内注入カテーテルを、大静脈を介して選択した肝静脈に進め、側孔がバルーン閉塞バルーンを越えた状態で留置する。トランスフェクション薬の血管内・経カテーテル注入の前に、バルーン閉塞バルーンを拡張させて静脈流出を遮断することによって、注入液を隔絶された標的葉の実質に閉じ込める。
【0020】
本発明のもう1つの態様においては、トランスフェクション薬を単一の流体力学的な注入によって肝臓全体に送達する。図4に描かれているように、2つの別個の2内腔カテーテルによって送達され下大静脈中の肝静脈流出の上位および下位双方で拡張させたバルーンの使用を介して、肝臓を隔絶する。次に側孔がバルーン間に位置する血管内カテーテルを介してトランスフェクション薬が注入され、肝静脈を介して肝実質全体へ逆行して流れる。図6に描かれているように、側孔を有する血管内カテーテルがバルーン閉塞バルーン・カテーテルの1つと合体していてもよく、配備しなければならないカテーテルの数を減じ、送達カテーテルに沿った圧力のロスを除きうる。開腹術的血管切開の代わりに侵襲性を最小限に抑えた画像誘導経皮術を用いてカテーテルを血管を経由して送達し、標的臓器の血管流出の遮断を達成することができる。
【0021】
本発明の全ての態様において、バルーンは、処置の間における標的臓器の血管流出の非外傷性の遮断を確実にするために、それぞれの患者の血管の大きさに調整されている。所望の溶液は、カテーテルを介して隔絶された血管スペースの中へ制御された速度および容量で注入される。対象の腹部肝臓上に圧縮ベルトが巻かれ、注入の間に隔絶した臓器の膨張を制限することによって、所定の圧力を生みだすのに必要な注入溶液の容量を抑えうる。
【0022】
例えば、電気穿孔法、および超微粒気泡(超微粒気泡ブースター)を伴うかまたは伴わない超音波媒介音波穿孔法のような物理的方法が、トランスフェクション効率を増大させるために、本発明の方法とともに使用しうる。例えば、本発明の方法により得られた発現レベルが、治療には適するが、処置の間に発生する高い肝臓内圧力のために受け入れ難い組織損傷の危険性がある場合には、より低い注入量により同じ治療効果を達成すべく、カテーテルに基づく限局性送達と共にトランスフェクションと並行した超音波処理を用いうる。標準的な治療上の超音波条件(1 MHz)を用いて肝臓の透過化を増大させることができる。超音波は、トランスフェクション薬の送達に先立ち、同時に、または続いて、肝臓に経皮的に適用することができる。超音波処理の効果をさらに増大させるため、超微粒気泡ブースターとしても知られるガス状の超微粒気泡(直径0.1〜100μm)が混ざるように遺伝子治療薬の溶液を調製することが可能である。超微粒気泡は、例えば、ガス環境下で超音波によって溶液を前処理することによって作り出される。トランスフェクションの効率をさらに一層増大させるため、遺伝子治療薬の送達前に肝臓を治療超音波で処理することもできる。
【0023】
本発明の方法には、遺伝子治療過程におけるトランスフェクション薬の使用が含まれるが、本方法は、制御された圧力で隔絶された臓器に診断または治療溶液を標的化送達することが望ましい場面における、化学療法もしくはその他の薬学的な薬剤、幹細胞、または画像化造影剤の治療的注入に対して、同様に十分適用される。
【0024】
以下の代表的な例は、本発明を限定することではなく、説明することを意図している。代表的な手順はウサギで実施されているが、それらはヒト対象において臨床的に適したパラメータの範囲内で首尾よく実施される。
【0025】
実施例
全ての例において、ニュージーランドホワイト・ウサギはMillbrook Breeding Lab(Amherst、マサチューセッツ州)より入手した。カテーテルおよびガイドワイヤは、Boston Scientific (Natick、マサチューセッツ州) またはCook (Bloomington、インディアナ州)より入手した。動力注入装置およびオプティレイ350造影剤はMallinckrodt (Hazelwood、ミズーリ州)より入手した。脈管構造の隔絶部分における圧力は、Blood Pressure Analyzer(Micro-Med、Louisville、ケンタッキー州)を使用し、(非注入の)バルーン・カテーテルの1つを介して測定した。実施例中に記載した条件下では、圧力における10〜60mmHgの増大は、5から15ml/秒の注入速度で実現された。
【0026】
実施例1 葉送達
ウサギの頚静脈に、下顎骨の下縁に始まり尾方に伸長する2.5cmの傍正中縦切開を介してアクセスした。バルーン閉塞バルーン・カテーテルは、図1に描かれているように、大静脈を介して希望の肝静脈中へ進めた。筋膜は平滑に切開し右外頚静脈を露出した。20ゲージの血管カテーテル針を頚静脈に挿入した。または、よりヒトに用いられる可能性のあるアプローチである、画像誘導経皮針を使用して静脈にアクセスすることができる。透視ガイド(fluoroscopic guidance)下において、0.018インチのテフロン被膜ガイドワイヤを血管カテーテルを通して同軸上に配置し、透視ガイド下において肝静脈中へ誘導した。血管カテーテルはガイドワイヤ越しに5F(French)のバルーン閉塞バルーン・カテーテルと交換し、それを標的肝葉静脈中へ選択的に誘導した。ガイドワイヤを取り除き、少量の非イオン性ヨウ素化造影剤を注入して透視法的に適切な位置決めを確認した。バルーン閉塞バルーンは造影剤と共に拡張させ、選択された血管の閉塞は少量の造影剤の注入によって確認した。次におよそ2mg/kgのpCF1-SEAPプラスミド(pGZB-sCATプラスミドの同時投与を伴うかもしくは伴わずに)、または7mgのpGZB-αガラクトシダーゼA(α-gal)プラスミドを含む生理食塩水(7.5〜15%マンニトールを含有するかもしくは含有しない)を含むトランスフェクション薬の一定分量(5〜15ml/キログラム体重)を、様々な速度で血管内カテーテルを介して隔絶された葉へ注入した。
【0027】
pCF1-SEAPプラスミドの特徴は、Yewら、Hum. Gen Ther. 1997, 8:575-584に記載されている。pCF1-SEAPプラスミドは、レポーター遺伝子である分泌型のアルカリホスファターゼ(SEAP)を含む。pGZB-sCATプラスミドは、レポーター遺伝子産物クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)の細胞(組織)内発現のためのレポーター遺伝子を含む。アルファ・ガラクトシダーゼは、pGZB-α-galプラスミドによってコードされている、非効率的に分泌されるレポーター遺伝子産物である。
【0028】
トランスフェクションの全体的効率は、トランスフェクション後1〜3日の動物の血清中のSEAPの濃度を測定することにより評価した。ウサギ血清は65℃に加熱して内因性アルカリホスファターゼを変性させ、Sigma-Aldrich(St. Louis、ミズーリ州)のアルカリホスファターゼ試薬および標準としてCalbiochem(LaJolla、カリフォルニア州)のヒト胎盤アルカリホスファターゼを用い、製造者の説明書に従ってSEAP活性を分析した。表1に示されているように、血清SEAPレベルは1〜50μg/mlの範囲内であった。これらのレベルは、高容量の(流体力学的)尾静脈注入後のマウスにおいて達成されたレベルより16〜800倍低かった。トランスフェクションの効率は、用いた注入量、注入速度、およびDNA濃度に依存していた。
【0029】
単先端孔カテーテルではおよそ5ml/秒の最大注入速度が達成可能であり、より高い速度では肝静脈および従属する実質に損傷を生じた。複数の側孔を持つカテーテルでは、重大な肝損傷なしに15ml/秒までの注入速度が達成された。
【0030】
単葉静脈のバルーン閉塞による葉注入によって、透視画像下で造影剤の再循環が示される。観察によると、ボーラスは最初、閉塞箇所から遠位の、隔絶された葉の実質全体に渡り分布する。そのすぐ後、造影剤が逆行性に門脈を満たしつつあるところが視覚化され、速やかにしかしより低い濃さで残りの(非隔絶の)肝実質に分布する。加えて、注入物の一部は門脈から逆行性に上腸間膜静脈および脾静脈へ分布する。最終的に、注入ボーラスは肝静脈に移動し、大静脈を経由して全身静脈によって右心房に戻る。注入後数秒以内に、腎皮質における造影剤の密集が見られ、このとき分布が全身性であることが示される。
【0031】
肝臓におけるトランスフェクション分布を評価するために、αガラクトシダーゼの発現を測定した。分析はZieglerら、Hum. Gene Ther. 1999, 10: 1667-1682に記載の手順に従い行った。
【0032】
図2に示されているαガラクトシダーゼ発現のレベルにより、肝臓の非隔絶部位への注入剤の再配分が生じることが確認される。門脈再配分は、隔絶された標的葉における対応するレベルと比べ桁違いに低いレベルのトランスフェクションの原因となる。しかしながら、門脈再配分のため、アルファ・ガラクトシダーゼ発現のレベルが、非隔絶肝においてさえ、低圧(非流体力学的)全身注射によって達成され得るレベルをなお顕著に超えている。
【0033】
(表1)葉送達を用いたトランスフェクション後のSEAP発現のレベル

* 2つの肝葉は手順の間にわたり連続してトランスフェクトした。
** 閉塞バルーンを越える相当の漏出が観察された。
【0034】
実施例2 流出遮断を伴う葉送達
実施例1に記載されているような葉送達法により、高圧送達が、蓄積臓器の閉塞バルーンから遠位の部分に限定される。葉送達手順の間、残りの肝臓における圧力を増大させるため、肝大静脈に留置したバルーン・カテーテルで肝静脈口を覆うことによって全ての肝静脈の流出遮断が実現できる。
【0035】
本手順を行うために、大腿静脈に、大腿溝から下方に伸展する縦皮膚切開によって大腿中央からアクセスした。筋膜は平滑に切開し神経血管束を露出した。大腿静脈は結合している動脈および神経から慎重に切り離した。大腿静脈の1〜2cm部分を分離し遠位で結紮した。7Fの導入鞘を結紮から近位で大腿静脈に挿入した。透視ガイドを利用してガイドワイヤを下大静脈内へ進めた。14mm×4cmの非準拠バルーン付きの5Fのカテーテルを、鞘を介してガイドワイヤ越しに大静脈の肝臓部分内へ通した。鞘の外径はウサギ大腿静脈に比して大きいため、本手順を血管損傷なしにウサギのモデルにおいて再現することは困難である。この合併症はヒト対象では予測されない。
【0036】
ウサギは全身性にヘパリン処置した。バルーンは、肝静脈内のバルーン閉塞バルーン・カテーテルによるトランスフェクション薬の注入の直前に拡張させた。バルーンの拡張に続き、導入鞘を介して少量のX線造影剤を注入し、下大静脈においてバルーンが確実に血流を遮断するようにした。次に生理食塩水中7mgのpCF1-SEAPプラスミドおよび15%のマンニトールを含む70mlのトランスフェクション薬を、5ml/秒で単一隔絶葉に血管内カテーテルを介して注入した。その直後、カテーテルおよび鞘を回収し、血流遮断(hemostasis)を達成した。図3に見られるようにX線造影剤の密集が隔絶葉を際だたせていたが、より低濃度の造影剤が門脈を経て残りの肝臓に逆行性に再循環した。
【0037】
血清SEAPのレベルは、実施例1に記載された手順により測定したところ37μg/mlであった。これらの結果によって、肝静脈流出のバルーン・カテーテル遮断を伴う葉送達が、遺伝子導入に関し、流出遮断を伴わない複数葉への連続的葉送達と同じくらい効率的であることが示される(表1、実験71a-d、73a-d)。
【0038】
実施例3 門脈経由の葉送達
先行の研究者により、肝臓を蓄積臓器として用いるトランスフェクション薬溶液の送達は、門脈経由でも達成される可能性があることが示唆されている。リアルタイムの超音波誘導下で主要な門脈を確認し、エコー源性アクセス針により経皮経肝穿刺を経てアクセスした。調節換気はアクセス手順中に横隔膜運動を制限するのに便利であった。透視制御下において、少量のX線造影剤を注入し、針の位置を確認した。針を介してガイドワイヤを導入し、その針を血管カテーテルの鞘と交換した。位置を再度確認してから、生理食塩水中7mgのpCF1-SEAPプラスミドおよび15%のマンニトールを含む70mlのトランスフェクション薬を門脈に注入した。経皮的アクセスの撤去後、デジタル圧力によって血流遮断を達成した。
【0039】
本方法によって処置されたウサギの血清において達成された血清SEAPの濃度は、実施例1に記載された手順により測定したところ0.2から0.8μg/mlの範囲であった。ウサギにおいては、ヒトよりはるかに大きな割合の門脈が肝外にあるため、本アプローチを用いたアクセスおよび本手順後の適切な血流遮断を達成することは困難である。この理由により、注入の間に流出遮断を試みず超全身性圧力は達されなかった。これらの因子は、ヒト対象における同等な手順に関し制限的とは予測されない。
【0040】
実施例4 標的化全体臓器送達
単一の流体力学的注入によって肝臓全体に遺伝子治療薬を送達するために、肝静脈流出の上方および下方の両方において下大静脈中で拡張させたバルーンの使用を介して、肝臓を隔絶する。次にバルーン間にトランスフェクション薬溶液が注入され、肝実質全体へ肝静脈を介して逆行性に流れる。本方法の一形態が図4に示されている。この形態においては、バルーン閉塞バルーンを、上方から頚静脈を介して下大静脈における右心房と最上位の肝静脈との間の位置に、また下方から大腿静脈を介して下大静脈における最上位の腎静脈と最下位の肝静脈の間の位置に進める。先端付近に複数の側孔を持つ4Fのピッグテールカテーテルを、反対側の大腿静脈を介して、下大静脈における2つのバルーン閉塞バルーンの間の位置に進める。ピッグテールカテーテルによる遺伝子治療溶液の注入の直前に、バルーンを拡張させて肝臓を隔絶する。
【0041】
本方法のほかの態様においては、バルーン閉塞バルーンが、図6に描かれているように、2つの別個の2内腔カテーテルによって、または、図7および図8に描かれているように、単一の4内腔カテーテルによって送達されうる。
【0042】
高レベルの遺伝子トランスフェクションを実現するのに十分な速度および容量における注入により、注入の間の血管および肝皮膜の伸長への、そして注入に伴い生じる急速な容積付加への血管迷走神経応答に関係すると思われる、一過性の心臓力学的不安定性(除脈および低血圧)が生じる可能性がある。注入直前におけるグリコピロレートのような抗コリン薬によるウサギの前処置が、この応答を防止する。この例においては、食塩水中100μg/mlのpGZB-sCATプラスミド、100μg/mlのpCF1-SEAPプラスミド、および15%マンニトールを含むトランスフェクション薬溶液を8〜10ml/秒の速度で注入した。この溶液からのマンニトールの除去は、発現の増大およびより低い毒性をもたらした。
【0043】
観察された血清SEAPのレベルは、実施例1に記載された手順により測定したところ、流体力学的尾静脈注入に続くマウスにおけるレベルの1/20から1/2の間の範囲であった。SEAP測定の結果は、表2に表されている。
【0044】
トランスフェクション後1日で、死後のウサギから中心組織肝試料を得、Leeら、Hum. Gene Ther. 1996, 7: 1701-1717に記載の手順に従いCAT発現を分析した。
【0045】
図5に示されているように、このアプローチは、肝実質の全体に渡り高いレベルの組織トランスフェクションをもたらす(図2と比較されたい)。葉送達の結果として得られる限局性分布とは対照的に、導入遺伝子発現は肝実質の全体に渡り分布する。図9は、様々な容積(体重kg毎に5、10、および15ml)のDNA含有溶液の注入の間の、2つの閉塞バルーンの間の大静脈の領域における典型的な圧力特性を示す。提示されたデータが注入の間の圧力の変化を表すように、基礎大静脈圧が差し引かれている。圧力は、一方または両方のバルーン・カテーテルの注入内腔を血圧分析器の変換機と連結することによってモニターした。図10は、様々な容積(5、10、および15ml/kg体重)のDNA含有溶液のトランスフェクションの24時間後におけるウサギの血清中のSEAP発現を示す。全ての動物に、同じ用量のDNA(2.0mg/kg pGZB-sCATを伴うかまたは伴わない2.5mg/kg pCF1-SEAP)を10ml/秒の速度で注入した。pGZB-sCATの追加は、SEAP発現レベルに影響しなかった。
【0046】
(表2)標的化全体臓器送達後のSEAP発現のレベル

* 低い発現は低い注入量に関係するようである。
【0047】
実施例5 腹部バンド固定
3カテーテル・アプローチを用いた全体臓器送達を評価する研究の間、多くの動物において、門脈系を介し造影剤の重大な損失が生じていることが注目された。加えて、注入の間に肝臓が膨張する能力は、注入の間に達成され得る血管内圧力を制限している可能性があることが推論された。門脈脈管構造を介した容積損失を制限し、減じた容量を使いつつも血管内圧を増大させるために、肝臓が膨張する能力を減じ門脈に圧力を加えるようなやり方で、腹部をバンド固定した。
【0048】
ウサギの腹部を血圧カフでバンド固定し、それを注入直前に30または60mmHgのどちらかに膨張させた。透視検査により観察されたところでは、この操作により脈管構造中の造影剤の濃さが増大する一方で、実質の染色は減少した。圧力モニタリングによって、血圧カフの追加により、同じ注入量を用いバンド固定をしない動物で観察されるものより、注入の間に大静脈において著しく高い圧力がもたらされることが示唆された。しかしながら本手順においては、その他の点では同じ送達条件(10ml/kg、10ml/秒、2.5mg/kg pCF1-SEAP)を用いつつバンド固定しない動物で観察されたものより、極めて低い全体的な発現レベルとなった(表3)。バンド固定しない動物における全体的なSEAP発現レベルは、23.22±14.87μg/ml(n=4、表2、実験番号0255a-b、0259a-b)であった。同じ送達条件下において、30および60mmHgに膨張させたカフをした動物におけるSEAP発現レベルは、それぞれ2.51±3.49(n=6)および12.53±15.72μg/ml(n=6)であった(表3)。
【0049】
本明細書は、本明細書中に引用され、その全てがそれらの全体において参照として本明細書に組み入れられる参考文献の教示を考慮することによって、最も完全に理解される。本明細書中の態様は、本発明の態様の説明を提供するものであり、本発明の適用範囲を制限すると解釈されるべきではない。当業者であれば、多くのその他の態様が請求の範囲に記載されている発明に包含されていること、そして本明細書および実施例は例示的なものとしてのみ考慮されることが意図され、本発明の真の適用範囲および意図は特許請求の範囲によって示されることを認識するものである。
【0050】
(表3)腹部バンド固定を伴う標的化全体臓器送達後のSEAP発現のレベル

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】頚静脈を介して導入したバルーン閉塞バルーン・カテーテルを活用した肝遺伝子治療の葉送達法を示したものである;その他の経血管経路(たとえば大腿静脈)もまた利用することが可能である。
【図2】葉送達後およそ24時間における、肝実質組織における遺伝子発現の分布を示したものである。
【図3】肝静脈を下大静脈の流出遮断との組み合わせにおいて利用した単肝葉への高圧葉注入後における、遺伝子治療薬の分布を示したものである。
【図4】3カテーテル法を用いた標的化全体臓器送達を示したものである。
【図5】流出遮断と組み合わせた、大静脈を介する標的化全体臓器送達後における、遺伝子発現の分布を示したものである。
【図6】肝臓の流出遮断と組み合わせた大静脈への制御圧力注入を介する、肝臓への全体臓器送達のための2カテーテル法を示したものである。
【図7】肝臓の流出遮断と組み合わせた大静脈への注入を介する、肝臓への制御圧力標的化全体臓器送達のためのカテーテル系を描いたものである。
【図8】肝臓の流出遮断と組み合わせた大静脈への注入を介する、肝臓への標的化全体臓器送達のための単一カテーテルの留置を示したものである。
【図9】様々な容量(5、10、および15ml/kg体重)のDNA含有溶液を注入する間における、2つの閉塞バルーンの間に隔絶した肝脈管構造における代表的な圧力特性を示したものである。データが注入の間の圧力変化を表すように、基礎大静脈圧が差し引かれている。圧力は、バルーン・カテーテルのうち一方または両方の注入内腔を血圧分析器の変換機と連結することによってモニターした。
【図10】様々な容量(5、10、および15ml/kg体重)のDNA含有溶液のトランスフェクション後24時間のウサギの血清におけるSEAP発現を示している。全ての動物は、同じ用量のDNA(2.0mg/kg pGZB-sCATの存在または非存在下における2.5mg/kg pCF1-SEAP)を10ml/秒の速度で注入した。pGZB-sCATの添加はSEAP発現レベルに影響しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類対象の選択された臓器に遺伝子治療を行うための方法であって、
(a)少なくとも1つのカテーテルが1つまたは複数の閉塞部材を有する、1つまたは複数のカテーテルを臓器の脈管構造中に留置するステップ;
(b) カテーテルで体液の流れを閉塞することによって、脈管構造の一部分を隔絶するステップ;
(c)遺伝子治療薬を、増大した圧力下において、脈管構造の隔絶された部分の中へ送達するステップ;および
(d) 遺伝子治療薬を、治療的有効量の薬剤をトランスフェクションするために十分な期間、脈管構造の隔絶された部分の中に持続させるステップ;
を含む方法。
【請求項2】
カテーテルがバルーン閉塞バルーンカテーテルである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
圧力の増大が、10から100、10から80、および10から50mmHgの範囲のなかから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
圧力の増大が、20から100、20から80、および20から50mmHgの範囲のなかから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
遺伝子治療薬が血管内カテーテルによって送達される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
カテーテルの壁強度が少なくとも300psiの注入圧力に耐える定格である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
カテーテルの壁強度が少なくとも1200psiの注入圧力に耐える定格である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
遺伝子治療薬が経皮針によって送達される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
遺伝子治療薬が核酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
核酸がプラスミドDNAである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
核酸がウイルス性発現ベクターである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
臓器が肝臓である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
脈管構造の部分が下大静脈の肝臓内部分を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
脈管構造の部分が門脈の肝臓内部分を含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
脈管構造の部分が肝動脈の一部を含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
臓器が単肝葉である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
脈管構造の部分が肝静脈の一部を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
遺伝子治療薬の送達と同時に、隔絶された標的臓器を覆う胴体のまわりのベルトによって血管および臓器の膨張を押さえ付けるステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
遺伝子治療薬の送達に先立ち、または同時に、標的臓器を治療超音波で処理するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
遺伝子治療薬が超微粒気泡ブースターを含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
膜を透過性にする化合物を脈管構造の隔絶された部分に送達するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
哺乳類対象に抗コリン薬を投与するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
圧力の増大が、15から100、15から80、15から50、10から30、および10から20mmHgの範囲のなかから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
圧力の増大が少なくとも15mmHgである、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−501177(P2006−501177A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−516079(P2004−516079)
【出願日】平成15年6月24日(2003.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/019639
【国際公開番号】WO2004/001049
【国際公開日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(593119583)ジェンザイム・コーポレイション (17)
【氏名又は名称原語表記】Genzyme Corporation
【Fターム(参考)】