説明

遺伝子発現の転写後抑制を相乗的に生じさせることができる方法および組成物

本発明は、標的プレmRNAにおける予め選択された領域を標的とする修飾U1snRNAと、siRNA型、shRNA型および/またはmiRNA型の遺伝子発現抑制剤の併用による遺伝子発現の転写後阻害用組成物、および前記組み合わせの、好ましくないタンパク質の過剰発現により生じる疾患の治療のための使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写後における遺伝子発現の抑制方法に関し、より詳細には、各成分を別個に使用したときに得られるよりも高い抑制レベルを得ることができる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子発現を効率的且つ特異的に阻害することは、遺伝子療法プロトコルおよび機能的遺伝子研究の基礎となるものである。ある遺伝子の発現は、細胞に有害に作用して、遺伝性疾患において優性阻害である感染細胞におけるウイルス遺伝子の発現、または発現が制限されるべき遺伝子、例えば、癌遺伝子の発現などの疾患を生じることがある。これらの毒性遺伝子の発現を阻害すると、それらが引き起こす疾患が治癒するであろう。さらに、ゲノムおよびタンパク質の研究により、多数の遺伝子(それらのうちの一部は未知の機能を有する)を単離することができる。これらの手法により、それらの発現レベルによるか、あるいはこのような発現を調節する条件によりこれらの遺伝子を分類できるが、しかしそれらの機能についてはあまり知ることができない。これらの遺伝子の発現を系統的および特異的に阻害できれば、それらの機能を決定できる簡単なプロトコルを開発することができるであろう。
【0003】
遺伝子の発現を特異的に阻害する最も簡単な方法は、それから転写されるRNAの安定性を減少させるか、あるいはそれがタンパク質への翻訳をブロックすることである。アンチセンス技術(アンチセンスリボザイムおよびオリゴヌクレオチド)に基づく最も使用されている従来の系は、あまりうまくいかなかった。その理由は、機能するためには「生体内」標的RNAと相互作用する必要があり、またそれらは通常タンパク質で被覆されていて、これらの相互作用からそれらを保護する二次および三次構造を形成するからであると思われる。
【0004】
遺伝子の発現を特異的に阻害する別法として、RNA干渉を用いてRNAの安定性を減少させることがある。この手法によれば、長さが21−22ヌクレオチドであり、突出した3’端を有する2つの相補的RNA鎖から構成されているRNA二本鎖からなる、いわゆる低分子干渉RNA(siRNA)を用いることにより意図する遺伝子の特異的分解を促進することができる(Elbashir,S.M.ら、Genes Dev.、2001年、15:188−200)。siRNAは、mRNAの分解が生じるRISCと称される多タンパク質複合体における相補配列mRNAとハイブリダイズする。しかしながら、siRNAを使用することに基づく遺伝子抑制方法は、化学合成によりsiRNAを調製するためのコストが、とりわけ動物モデルに使用したり、将来ヒトに使用するのに大量に必要とするときには、高くなるため困難となる。siRNA合成にともなう高コストの問題を回避するために、shRNAから実際の細胞でsiRNAが産生する方法が開発された。しかしながら、この手法では、特異性を最高にするとともに毒性を最も低くする配列を選択するのを容易にする必要がある。さらに、siRNAを使用することは、ハイブリダイズするsiRNAの特異性が最も高く、毒性が最も低くなるように標的mRNAの最適な部位を同定するのに、過度の実験が要求されること、および副作用、例えば、インターフェロンに対する応答の活性化および「標的外れ(Off−Target)」(標的とは異なる転写物に対する完全に相補的でない(非特異的)RNA鎖の結合が一連の好ましくない影響を生じる)のため、より困難となる。
【0005】
核内低分子リボヌクレオタンパク質(snRNP)(これらのうちの一部は、プレmRNAの特異的配列と相互作用し、核におけるmRNAの成熟プロセスの種々の段階に関与する)の機能特性を使用することが、別法としてあげられる。U1snRNPの場合、タンパク質U1A、70K、U1CおよびRNA分子(U1snRNA)に結合した7つのSmタンパク質により形成される。RNAの5’端は、塩基対合により、プレmRNAのスプライシング部位で、除去される配列であるイントロンの5’端とハイブリダイズする。この相互作用は、U1snRNAと直接または間接的に相互作用するタンパク質および後でプロセシングされるmRNAと直接的または関接的に相互作用するタンパク質により安定化される。U1snRNPがプレmRNAと相互作用すると、イントロンの除去を決定づける他のタンパク質とsnRNPの一連の結合が誘発される。これを可能にするためには、U1snRNAがプレmRNAから分離される必要がある。
【0006】
さらに、U1snRNPがRNAに結合すると、プロセシングおよびポリアデニル化機構の周辺配列に対する作用が阻害される。U1snRNPのタンパク質70Kは、ポリアデニル化複合体のポリ(A)ポリメラーゼ(PAP)サブユニットのカルボキシ末端に結合して、その機能を阻害することができる(Gundersonら、1997年、Genes&Dev.11:761−773.)。
【0007】
プロセシングおよびポリアデニル化機構に対するU1snRNPによる阻害は、遺伝子発現を制御するために使用されてきた。したがって、標的mRNAの3’末端エクソンに特異的に結合して標的mRNAを分解するように、イントロンスプライシング領域の認識に関与するU1snRNA領域を修飾できることが記載された。この方法は、レポーター遺伝子(US20030082149号、Beckley,S.A.ら、2001年、Mol.Cell.Biol.、21:2815−2825、Furth,P.A.ら、1994年、Mol.Cell.Biol.、14:5278−5289、Fortes,P.ら、2003年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、100:8264−8269およびEP1384784)および内在性遺伝子(上記Furth,P.A.ら、上記Fortes,P.ら、およびLiu,Pら、2004年、Nucleic Acid Res.、32:1512−1517)の発現を減少させるために適用された。Sajicらは、ウイルスHIV−1RNAの末端エクソンに特異的な修飾U1がHIV−1ゲノムから得られた転写産物の発現を阻害する能力、したがってウイルスの複製を阻害する能力について記載している(Nucleic Acids Res.、2007年、35:247−255)。
【0008】
しかしながら、生体内において標的遺伝子の発現を阻害するのにU1snRNAを使用することは、最高の特異性および最も低い毒性で最大の阻害を実現できる良好な標的配列を見出すのが困難であることから、限界がある。したがって、そしてRNAiの場合でも起こるように、低細胞内U1濃度で効果的な抑制レベルに達することができて、毒性が減少し、そして生体内での抑制方法の適用もまた可能となるように、U1snRNAに基づいた遺伝子抑制方法を改良する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、ある標的遺伝子に特異的な修飾U1snRNAと、同じ標的遺伝子を対象とする遺伝子発現抑制剤とを併用すると、各々の剤を別個に使用したときよりも強く標的遺伝子の発現を阻害することを見出した。
【0010】
したがって、第一の態様によれば、本発明は、一つもしくはいくつかの容器またはパーツからなるキットを含んでなる組成物に関し、該組成物は
(i)U1snRNAまたはU1snRNAをコードするポリヌクレオチドを少なくとも含んでなる第一成分であって、前記U1snRNAが、標的プレmRNAの3’末端エクソンの予め選択された領域に特異的に結合するように、イントロンの5’端のGUコンセンサス配列に対する結合配列が修飾されており、かつ前記標的プレmRNAの成熟を阻害することができるものである、第一成分と、
(ii)(i)で定義したU1snRNAの標的であり、かつ前記標的mRNAの生体内抑制を生じさせることができる前記プレmRNAのプロセシングから得られるmRNAの予め選択された領域を特異的に標的とする、少なくとも一種の遺伝子発現抑制剤を含んでなる第二成分とを含んでなるものである。
【0011】
第二の態様によれば、本発明は、ポリヌクレオチドに関し、該ポリヌクレオチドは
(i)標的プレmRNAの3’末端エクソンの予め選択された領域に特異的に結合するように、イントロンの5’端のGUコンセンサス配列に対する結合配列が修飾されており、かつ前記標的プレmRNAのプロセシングを阻害することができる、少なくとも一種のU1snRNAをコードする配列と、
(ii)(i)で定義したポリヌクレオチドによりコードされている前記U1snRNAの標的であり、かつ前記標的mRNAの生体内抑制を生じさせることができる前記プレmRNAのプロセシングから得られるmRNAの予め選択された領域を特異的に標的とする抑制剤をコードする配列と
を含んでなるものである。
【0012】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含んでなる発現ベクター、本発明のベクターを含んでなる細胞、および本発明のポリヌクレオチドを含んでなるトランスジェニック動物に関する。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、薬剤として使用するための、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、または本発明の細胞を有する本発明の組成物またはキットに関する。
【0014】
別の態様によれば、本発明は、感染症疾患、腫瘍性疾患、新生物疾患、または神経変性疾患の治療または予防のための本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、または本発明の細胞を有する本発明の組成物またはキットに関する。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、感染症疾患、腫瘍性疾患、新生物疾患、または神経変性疾患の治療または予防のための、生体系における標的遺伝子発現の生体外または生体内転写後阻害の非治療的方法に関し、その方法は、生体系を本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の細胞を有する本発明の組成物またはキットと接触させることを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】RNAu阻害機構についての図である。U1snRNP分子のsnRNA5’端が、その配列がプレmRNA標的の3’末端エクソンの予め選択された領域と相補的であるように修飾されている。U1snRNP分子が塩基対合により予め選択された配列に結合すると、標的RNAのポリアデニル化(pA)の阻害、したがって、遺伝子発現の阻害が生じる。この図にしたがって修飾されたU1snRNA分子も、U1iと称される。
【図2】強shRNAを用いたレポーター遺伝子発現阻害とU1iを用いた発現阻害との相乗作用を示す図である。対照プラスミドをトランスフェクションした細胞におけるルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼ標的配列158に対してshRNAを発現するプラスミドの一回分量または一回分量の半量(それぞれshRNAαLuc158およびshRNAαLuc158/2)、ルシフェラーゼに対してU1iを発現するプラスミドの一回分量または一回分量の半量(それぞれU1iαLucおよびU1iαLuc/2)、およびshRNAαLuc158の一回分量の半量とU1iαLucの一回分量の半量(shRNAαLuc158/2+U1iαLuc/2)について算出した。対照(非阻害)細胞のルシフェラーゼ活性を、残りの例で得られたルシフェラーゼ活性によって割ることにより得た阻害率が示されている。エラーバーは、9個の独立した測定値の標準偏差を表す。
【図3】強shRNAを用いたレポーター遺伝子発現阻害とU1iを用いた発現阻害との相乗作用を示す図である。対照プラスミドをトランスフェクションした細胞におけるルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼ標的配列1546に対してshRNAを発現するプラスミドの一回分量または一回分量の半量(それぞれshRNAαLuc1546およびshRNAαLuc1546/2)、ルシフェラーゼに対してU1iを発現するプラスミドの一回分量または一回分量の半量(それぞれU1iαLucおよびU1iαLuc/2)、およびshRNAαLuc1546の一回分量の半量とU1iαLucの一回分量の半量(shRNAαLuc1546/2+U1iαLuc/2)について算出した。対照(非阻害)細胞のルシフェラーゼ活性を、残りの例で得られたルシフェラーゼ活性によって割ることにより得た阻害率が示されている。エラーバーは、9個の独立した測定値の標準偏差を表す。
【図4】中shRNAを用いたレポーター遺伝子発現阻害とU1iを用いた発現阻害との相乗作用を示す図である。対照プラスミドをトランスフェクションした細胞におけるルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼ標的配列163に対してshRNAを発現するプラスミドの一回分量または一回分量の半量(それぞれshRNAαLuc163およびshRNAαLuc163/2)、ルシフェラーゼに対してU1iを発現するプラスミドの一回分量または一回分量の半量(それぞれU1iαLucおよびU1iαLuc/2)、およびshRNAαLuc163の一回分量の半量とU1iαLucの一回分量の半量(shRNAαLuc163/2+U1iαLuc/2)について算出した。対照(非阻害)細胞のルシフェラーゼ活性を、残りの例で得られたルシフェラーゼ活性によって割ることにより得た阻害率が示されている。エラーバーは、9個の独立した測定値の標準偏差を表す。
【図5】弱shRNAを用いたレポーター遺伝子発現阻害とU1iを用いた発現阻害との相乗作用を示す図である。対照プラスミドをトランスフェクションした細胞におけるルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼ標的配列154に対してshRNAを発現するプラスミドの一回分量または一回分量の半量(それぞれshRNAαLuc154およびshRNAαLuc154/2)、ルシフェラーゼに対してU1iを発現するプラスミドの一回分量または一回分量の半量(それぞれU1iαLucおよびU1iαLuc/2)、およびshRNAαLuc154の一回分量の半量とU1iαLucの一回分量の半量(shRNAαLuc154/2+U1iαLuc/2)について算出した。対照(非阻害)細胞のルシフェラーゼ活性を、残りの例で得られたルシフェラーゼ活性によって割ることにより得た阻害率が示されている。エラーバーは、9個の独立した測定値の標準偏差を表す。
【図6】強shRNAを用いたときの相乗効果のロバストネスの解析を示す図である。対照プラスミドをトランスフェクションした細胞におけるルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼ標的配列1546(1546)に対してshRNAを発現するプラスミドの量を減少(1、1/2、1/4、1/8および1/20)していった場合、ルシフェラーゼ(U1iαLuc)に対してU1iを発現するプラスミドの量を減少(1、1/2、1/4、1/8および1/20)していった場合、U1iαLucの一回分量の半量と組み合わせてshRNAαLuc1546の量を減少(1/2、1/4、1/8および1/20)していった場合、およびshRNAαLuc1546の一回分量の半量と組み合わせてU1iαLucの量を減少(1/2、1/4、1/8および1/20)していった場合について算出した。対照(非阻害)細胞のルシフェラーゼ活性を、残りの例で得られたルシフェラーゼ活性によって割ることにより得た阻害率が示されている。エラーバーは、9個の独立した測定値の標準偏差を表す。
【図7】中shRNAを用いたときの相乗効果のロバストネスの解析を示す図である。対照プラスミドをトランスフェクションした細胞におけるルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼ標的配列163(163)に対してshRNAを発現するプラスミドの量を減少(1、1/2、1/4、1/8および1/20)していった場合、ルシフェラーゼ(U1iαLuc)に対してU1iを発現するプラスミドの量を減少(1、1/2、1/4、1/8および1/20)していった場合、U1iαLucの一回分量の半量と組み合わせてshRNAαLuc163の量を減少(1/2、1/4、1/8および1/20)していった場合、およびshRNAαLuc163の一回分量の半量と組み合わせてU1iαLucの量を減少(1/2、1/4、1/8および1/20)していった場合について算出した。対照(非阻害)細胞のルシフェラーゼ活性を、残りの例で得られたルシフェラーゼ活性によって割ることにより得た阻害率が示されている。エラーバーは、9個の独立した測定値の標準偏差を表す。
【図8】shRNAを用いた内在性遺伝子の阻害と、U1iを用いたときの発現阻害との相乗作用を示す図である。A.HeLa細胞に、Notch1標的配列1または2に対してshRNAを発現する二回分量のプラスミド(それぞれshRNA1αNotch1x2およびshRNA2αNotch1x2)またはshRNAを発現するプラスミドの一回分量と、U1iαMockまたはU1iαNotch1を発現するプラスミドの一回分量との混合物をトランスフェクションした。トランスフェクションしてから48時間後に細胞抽出物を採取し、Notch1の量を、ウエスタンブロットにより評価した。B.Aで記載したような細胞、またはU1iαMockでトランスフェクションもしくはU1iαNotch1の一回分量または2回分量でトランスフェクションした細胞に、NF−κB依存性プロモーター下、ルシフェラーゼを発現するプラスミドをトランスフェクションした。ルシフェラーゼ活性は、相対単位で表した。エラーバーは、9個の独立した測定値の標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、ある標的遺伝子に特異的なU1snRNAと、同じ標的遺伝子を対象とする遺伝子発現抑制剤とを併用すると、各々の剤を別個に使用したときよりも強く標的遺伝子の発現を阻害することを見出した。
【0018】
いずれの理論に拘束されることを意図しないが、相乗効果は、プレmRNAのプロセシングにおいて、二つの成分が異なる位置で作用することによるものと思われる。したがって、修飾U1は、核内で、プレmRNAのポリアデニル化を阻害することにより作用し、その結果として、細胞質ゾルへの輸送を阻害し、一方で遺伝子発現抑制剤は、細胞質ゾル内で、U1阻害剤の存在下でうまく成熟できるmRNAに作用して、その分解または翻訳の阻害を引き起こすと思われる。標的プレmRNAのポリアデニル化を阻害することができる修飾U1は、以下U1iと称する。
【0019】
したがって、第一に態様によれば、本発明は、
(i)少なくともU1snRNAまたはU1snRNAをコードするポリヌクレオチドを含んでなる第一成分であって、U1snRNAが、標的プレmRNAの3’末端エクソンの予め選択された領域に特異的に結合するように、イントロンの5’端のGUコンセンサス配列に対する結合配列が修飾されており、かつ標的プレmRNAの成熟を阻害することができるものである、第一成分と、
(ii)(i)で定義したU1snRNAの標的であり、そして標的mRNAの抑制を生じさせることができるプレmRNAのプロセシングから得られるmRNAの予め選択された領域を特異的に標的とする、少なくとも一種の遺伝子発現抑制剤を含んでなる第二成分とを含んでなる、一つもしくはいくつかの容器またはパーツからなるキットにより構成されている組成物に関する。
【0020】
したがって、本発明の組成物は2成分を含んでなり、これらの2成分は同一の容器に入れられていてもよいし、または物理的に分離された状態でもよい。さらに、本発明は、また上記で定義した成分(i)および(ii)を含んでなる組成物に関する。
【0021】
本発明による組成物の第一成分
本発明の組成物またはキットの第一成分は、標的プレmRNAの3’末端エクソンの予め選択された領域に特異的に結合するように、イントロンの5’端のGUコンセンサス配列に対する結合配列が修飾されているU1snRNAをコードするポリヌクレオチドであり、標的プレmRNA3’端のプロセシングを防ぐことができるものである。3’端のプロセシングは、非ポリアデニル化プレmRNAからポリアデニル化mRNAを形成するのに必要な工程であると理解される(コンセンサスポリアデニル化部位のプロセシングおよびポリ(A)+尾部の付加)。これらの修飾U1snRNAは、対応するsnRNPに組み込まれて修飾snRNPを生じる。修飾snRNPは、イントロンプロセシング部位のプレmRNAに結合する代わりに、U1snRNAの修飾領域の配列特異性によって特定の領域でプレmRNAに結合している。この相互作用は、核内へのプレmRNAの隔離、プレmRNAの成熟低下、そして次にはコードされたタンパク質の産生の減少をもたらす、ポリアデニル化機構の停止を生じる。標的プレmRNAの発現阻害を起こす修飾U1snRNAの能力から、これらの修飾U1は、U1iとして知られている。U1の効果は、ひいては遺伝子発現の低下または阻害である。
【0022】
修飾U1snRNAの「イントロンの5’端のGUコンセンサス配列に結合する配列」は、いわゆるU1部位または5’プロセシング部位(5’−スプライス部位)との塩基対合により相互作用するU1iの5’端により形成される領域として理解される。その領域は、AG/GURAGUコンセンサス配列(但し、Rは、プリンであり、および/エクソン/イントロン境界を示す)により特徴づけられる、イントロンの5’領域のプレmRNAに見られ、プレmRNAのプロセシング機構がエクソン−イントロン境界を決定できるようにするものである。この領域は、U1snRNA配列の5’端の1〜11位のヌクレオチドに対応している(Zhuang、YおよびWeiner、A.M:1986年、Cell、46:827−835)。
【0023】
プレmRNAのU1部位に結合するコンセンサス配列の「修飾」は、コンセンサス配列が、U1snRNAのプレmRNAのU1部位への結合能力が大幅に損失することにより生じる多数の突然変異を含むとともに、U1snRNAが、標的プレmRNAの予め選択された領域との塩基対合により二重鎖を形成することができる新たな相補性を獲得するものとして理解される。本発明にしたがって修飾したU1部位に結合する配列と標的プレmRNAの予め選択された領域間の相補性度は、3〜16ヌクレオチドであることができ、好ましくは8〜16ヌクレオチド、そしてより好ましくは10〜11ヌクレオチドである。しかしながら、標的遺伝子の発現を阻害する最大効率は、U1部位を形成する10〜11ヌクレオチドが、標的プレmRNAの予め選択された部位に相補的になるように修飾されているときに見られる(図1参照)。したがって、U1iは、前記領域が、標的プレmRNAの予め選択された部位において11または10の連続したヌクレオチドと完全に相補的であるように1〜11または2〜11の位置の全てのヌクレオチドにおいて修飾されているのが好ましいであろう。当業者には、U1iを生成するために必要なことは、標的配列に見られるものとは異なる天然のU1において、それらのヌクレオチドを修飾することだけであることは理解されるであろう。
【0024】
当業者には、様々な生物のU1snRNA配列が知られていることは理解されるであろう。したがって、特定のU1snRNAの配列が知られていれば、天然U1snRNAに相当するか、あるいはイントロン5’端と相互作用する領域の一つ以上のヌクレオチドが修飾されているかを判定することができる。
【0025】
修飾U1の5’領域に相補配列として組み込むために予め選択される標的mRNAの領域は、対応するプレmRNAの末端エクソンに位置している。上記Fortesらが示している、標的配列がポリアデニル化配列から1000ヌクレオチド以上離れて位置しているときでさえ、レポーター遺伝子RNAの末端エクソンを標的とする修飾U1がRNAの分解を引き起こすことができるということから、標的配列のポリアデニル化部位までの距離は、特に関係はない。
【0026】
標的配列の最適最小長さが10ヌクレオチドであるならば、前記長さの配列についての結合部位は、10ヌクレオチド毎に一回ランダムに出現する。このことは、ヒトゲノムでは約3000回出現することを意味する。しかしながら、エクソンがヒトゲノムの約2%のみを構成していること、および修飾U1を用いたshRNAが介在した阻害では、ポリアデニル化シグナル(AAUAAA)を含む転写産物の末端エクソンで非構造化領域への対合を必要とすることから、阻害の特異性がはるかに大きくなる。抑制を実施する細胞が由来する生体の3’末端エクソンにおいて最小回数出現する標的部位を選択することが好ましい。
【0027】
考えられる標的の出現頻度は、配列比較により決定できる。典型的には、配列比較のために、一つの配列が参照配列としての役割を果たし、それと試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いるとき、試験配列と参照配列をコンピュータに入れ、必要に応じてサブ配列座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。好ましくは、デフォルトプログラムパラメータを使用してもよいし、あるいは別のパラメータを指定してもよい。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一度を算出する。
【0028】
本明細書で使用される「比較ウインドウ」は、19〜600、通常約50〜約200、より一般的に約100〜約150からなる群から選択される連続位置数のうちのいずれか一つのセグメントを参照することを含み、配列を同一連続位置数の参照配列と最適に整列した後、これらの2つの配列を比較することができる。比較のための配列アラインメントの方法は、当該技術分野において周知である。比較のための最適な配列アラインメントは、例えば、局部相同アルゴリズム(SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.、1981年、2:482)によるか、相同アラインメントアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch、J.MoI.Biol.、1970年、48:443)によるか、類似性検索法(PearsonおよびLipman、Proc.Natl Acad.Sci.USA、1988年、85:2444)によるか、アルゴリズムをコンピュータを用いて実施(GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WI)することによるか、またはマニュアルアラインメントおよび視覚的検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1995補遺)参照)により行なうことができる。
【0029】
配列の同一度(%)および配列の類似性(%)を決定するのに好適なアルゴリズムの好ましい例は、それぞれ、Altschulら、Nucl.Acids Res.、1977年、25:3389−3402およびAltschulら、J.MoI.Biol.、1990年、215:403−410に記載されている、BLASTアルゴリズムおよびBLAST2.0アルゴリズムである。BLASTおよびBLAST2.0を、本明細書に記載のパラメータとともに使用して、配列同一度(%)を求める。BLAST解析を行なうためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Information(国立生物工学情報センター)から公的に入手可能である。このアルゴリズムは、まずクエリー配列における長さWの短いワード(word)を同定することによって、ハイスコア配列ペア(HSP)を同定することを含む。この短いワードは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列された場合に、ある正の値の閾値スコアTに一致するか、または満足するかのいずれかである。Tは、隣接ワードスコア閾値と称される(上記Altschulら)。これらの最初の隣接するワードのヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すために検索を開始するための基礎として役立つ。そのワードのヒットは、累積のアラインメントスコアを増加することができる限りは、各々の配列に沿って、両方の方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一対のマッチング残基についての報酬スコア:常に0)およびパラメータN(ミスマッチング残基についてのペナルティスコア:常に0)を用いて算出される。アミノ酸配列については、スコア付けマトリックスを使用して、累積スコアを算出する。各々の方向におけるワードのヒットの伸長は、以下の場合に停止する:累積のアラインメントスコアがその達成された最大値から量Xだけ低下した場合;1つ以上のネガティブスコアの残基アラインメントの蓄積によって、その累積スコアがゼロ以下になった場合;または、いずれかの配列の末端に到達した場合。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTプログラム(ヌクレオチド配列について)は、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=ー4、および両方の鎖の比較を、デフォルトとして使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコア付けマトリックス(HenikoffおよびHenikoff()Proc.Nat’l.Acad.Sci.、USA、1989年、89:10915参照)、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=ー4、および両方の鎖の比較を使用する。
【0030】
好ましくは、本発明の組成物において使用される修飾U1snRNAは、標的プレmRNAの配列にしたがって修飾したイントロンの5’端のGUコンセンサス配列に対する結合配列が標的部位と同一または実質的に同一であるように選択される。2つ以上の核酸またはポリペプチド配列に関連した用語「同一の」または「同一度」(%)とは、上記したデフォルトパラメータでBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを用いて測定するか、マニュアルアラインメントおよび可視検査(例えば、NCBIウェブサイト等参照)により測定したときに、同じ(同一)であるか、または特定の割合(%)の同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する2つ以上の配列またはサブ配列を意味する(すなわち、比較ウインドウまたは指定領域に対して最大一致となるように比較し、整列したときに、標的配列の特定の領域に対して、少なくとも70%同一、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の割合で同一)。その結果、このような配列は、「実質的に同一」であると言われる。
【0031】
関連配列を有する一群のタンパク質を抑制すべきである場合、あるいは抑制されるべきmRNAの正確な特定の配列が分からない(例えば、異なる血清型を示すウイルスタンパク質の場合)場合、いくつかのタンパク質を同時抑制することができるU1阻害剤を作成することができる。このためには、抑制されるべきタンパク質群のヌクレオチド配列内の保存配列を同定する必要がある。これは、当業者に周知のアルゴリズムを使った配列の多重アラインメントによって実施できる(例えば、Chennaら、2003年、Nucleic Acids Res.、31:3497−3500に記載のClustalWアルゴリズム)。種々の遺伝子のうちの保存配列領域を同定したら、タンパク質群に特異的なU1snRNAを設計するための標的として使用できる共通領域を作成する。5’配列が、この群に属する種々のもののうちの保存配列を標的とするU1阻害剤の作成により、この群に属するいくつかのものを同時抑制することができる。この群に属するものが高度の同一性を示し、U1阻害剤を作成するための標的として選択することができる複数の保存領域がある場合、上記パラグラフで示したように決定した抑制を実施する生体のRNAの3’末端エクソンにおいて最小出現回数のものを選択する。
【0032】
本発明によるU1snRNAをコードするポリヌクレオチドは、U1iが発現される細胞内でポリヌクレオチドの転写を可能とするプロモーターに動作可能に結合することができる。本発明を実施するのに好適なプロモーターは、U1プロモーターなどの構成的プロモーター、またはポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40、CMV,トリ肉腫ウイルス,B型肝炎ウイルス,メタロチオネイン遺伝子プロモーター、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子プロモーター、レトロウイルスのLTR領域、免疫グロブリン遺伝子プロモーター、アクチン遺伝子プロモーター、EF−1アルファ遺伝子プロモーターなどの真核生物ウイルスゲノム由来のプロモーターが挙げられ、さらに、遺伝子の発現が、分子または外因性信号、例えば、テトラサイクリンシステム、NFカッパーB/紫外線システム、Cre/Loxシステム、および熱ショック遺伝子プロモーターなどの付加に依存する誘導性プロモーター、WO/2006/135436号に記載の調節可能RNAポリメラーゼIIプロモーター、さらに、組織特異的プロモーター(例えば、WO2006012221号に記載のPSAプロモーター)が挙げられるが、これらには限定されない。好ましい実施態様によれば、プロモーターは、構成的に作用するRNAポリメラーゼIIプロモーターである。
【0033】
また、発現を抑制すべきである遺伝子が組織において特異的に発現される場合には、組織特異的プロモーターを使用することも可能である:
−H/K−ATPアーゼベータサブユニットプロモーター、K19プロモーター、メタロチオネインプロモーター、TFF1プロモーター、TFF2プロモーター、FOXa/HNF2ガンマプロモーターなどの胃特異的プロモーター、
−エラスターゼプロモーター、Pdx−1プロモーター、インスリンプロモーター、またはホスホグリセリン酸キナーゼプロモーターなどの膵臓特異的プロモーター、
−クララ細胞分泌タンパク質プロモーター、サーファクタントタンパク質Cプロモーターなどの肺特異的プロモーター
−マウス乳癌ウイルスプロモーターまたはホエイ酸性タンパク質プロモーターなどの乳房特異的プロモーター、
−ケラチンプロモーターまたはK14プロモーターを含む皮膚特異的プロモーター、
−EBVプロモーターl2などの食道特異的プロモーター、
−主要尿タンパク質プロモーターまたはアルブミンプロモーターなどの肝臓特異的プロモーター、
−ビリンプロモーターまたはFABP−TS4プロモーターなどの結腸特異的プロモーター、
−クリプチジン−2プロモーター、前立腺特異的抗原プロモーター、C(3)1プロモーター、94アミノ酸(PSP94)を有する前立腺から分泌されるタンパク質プロモーター、またはプロバシンプロモーターなどの前立腺特異的プロモーター、
−ウロモジュリンプロモーター、タムーホースフォールタンパク質プロモーター、またはタイプ1ガンマ−グルタミントランスペプチターゼプロモーターなどの腎臓特異的プロモーター、
−ウロプラキンプロモーターまたはウロヒンギンプロモーターなどの膀胱特異的プロモーター、
−ウテログロビンプロモーターなどの子宮特異的プロモーター。
【0034】
さらに、Chen,Xら(Nucleic Acids Res.、2006年、34、Database Issue)によって記載されているTiProD組織特異的プロモーターデーターベースに記載のいずれの組織特異的プロモーターも本発明に使用することができる。
【0035】
本発明による組成物の第二成分
本発明による組成物の第二成分は、本発明の第一成分の一部分を形成しmRNAの発現抑制を引き起こすことができるU1iが標的とする標的プレmRNAのプロセシングから生成するmRNAに特異的な遺伝子発現抑制剤または遺伝子発現抑制剤の組み合わせである。
【0036】
「遺伝子発現抑制剤」は、いわゆるRNA干渉プロセス(RNAi)によって、標的mRNAの分解やその翻訳の阻害を引き起こす化合物と理解される。このプロセスにおいて、二本鎖RNA(dsRNA)は、RNase型III(ダイサー)によりRNAをsiRNAに変換することによって、遺伝子発現の抑制を引き起こすことができる。siRNA鎖の一つが、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と称されるリボヌクレオタンパク質複合体に組み込まれる。RISC複合体は、このRNAの一本鎖を使用して、分解されるかあるいは翻訳の阻害を受ける、RISCに組み込まれたsiRNAのRNA鎖に少なくとも一部が相補的であるmRNA分子を同定する。したがって、RISCに組み込まれたsiRNA鎖は、ガイド鎖またはアンチセンス鎖として知られている。トランジエントまたはセンス鎖として知られている他の鎖は、siRNAから除去され、標的mRNAと部分的に相同である。RISC複合体によって標的mRNAが分解されると、結果としてmRNAおよびコードしている対応タンパク質の発現レベルの低下を生じる。また、RISCは、標的mRNAの翻訳を阻害することにより、発現の低下を引き起こす。
【0037】
本発明に関連して、「mRNAの発現抑制を引き起こすことができる」薬剤は、細胞内にある場合、予め選択された配列を含む標的mRNAに結合し、その分解を生じさせることができる薬剤をコードすることができる薬剤、あるいは予め選択された配列を含む標的mRNAに結合し、その分解を生じさせることができる薬剤として理解される。
【0038】
標的mRNAに対してRNAi反応を引き起こし、そして本発明の第二成分に組み込むことができる抑制剤には、以下のものがある:
(i)siRNA
(ii)shRNA
(iii)miRNA
(iv)(i)、(ii)、または(iii)に記載の薬剤をコードするポリヌクレオチド、および
(v)(i)〜(iv)に記載の一つまたはいくつかの薬剤の組み合わせ。
ここで、薬剤(i)、(ii)、および(iii)は、RNAに基づくものであり、成分(iv)は、DNAに基づくものである。
【0039】
(i)siRNA
siRNAは、RNA干渉により標的遺伝子の発現を阻害できる薬剤である。siRNAは、化学的合成または生体外転写により得ることができる。siRNAは、通常15〜40ヌクレオチドの長さの2本RNA鎖から構成されており、1〜6ヌクレオチドの3’および/または5’張り出し領域を含むことができる。張り出し領域の長さは、siRNA分子の全長とは無関係である。siRNAは、標的メッセンジャーの分解または転写後抑制により作用する。本発明のsiRNAは、標的mRNAの予め選択された領域と実質的に相同である。「実質的に相同」とは、siRNAがRNA干渉により、標的mRNAの分解を引き起こすことができるように、標的mRNAと十分に相補的、または似ている配列を有していることであると理解される。実質的に相同は、上記で定義した実質的に同一を意味することもある。干渉を引き起こすのに好適なsiRNAには、以下のようなRNAから生成するsiRNA、さらに様々な化学修飾を含むsiRNAなどがある:
−ホスホロチオエート結合などの、ヌクレオチド間の結合が天然で生じる結合とは異なるsiRNA、
−siRNA鎖と、フルオロフォアなどの機能性試薬との接合、
−2’位水酸基を種々の官能基で修飾することよる、siRNA鎖の端、特に3’端の修飾
−2’−O−メチルリボースp2’−O−フルオロリボースなどの、2’位にO−アルキル化部位等の修飾糖を有するヌクレオチド、
−ハロゲン化塩基(例えば、5−ブロモウラシルおよび5−ヨードウラシル)、アルキル化塩基(例えば、7−メチルグアノシン)のような、修飾塩基を有するヌクレオチド。
【0040】
本発明におけるsiRNAは、当業者に周知の一連の技術を用いて得ることができる。例えば、siRNAは、従来のDNA/RNA合成装置により、ホスホラミダイト基で保護したリボヌクレオシドから化学的に合成できる。
【0041】
(ii)shRNA
別の方法によれば、本発明における第二成分は、shRNA(低分子ヘアピンRNA)である。shRNAは、本発明においては、ヘアピン領域により結合した2つの逆平行鎖からなるRNA分子として理解され、逆平行鎖の一つの配列が、標的mRNAの予め選択された領域に対して相補的なものである。shRNAは、短いアンチセンス配列(19〜25ヌクレオチドを有する)からなり、5〜9ヌクレオチドのループ、そしてセンス鎖がそれに続く。shRNAは、従来のDNA/RNA合成装置により、ホスホラミダイト基で保護されたリボヌクレオシドから化学的に合成でき、あるいは生体外転写によりポリヌクレオチドから得ることができる。shRNAは、細胞内でRNaseダイサーにより処理されて、ヘアピン領域が除去され、先に記載したようなsiRNAを生じる。また、shRNAは、先にsiRNAについて記載したような異なる化学修飾を含むことができる。
【0042】
(iii)miRNA
miRNAまたはmicroRNAは、細胞内に天然に見られ、mRNAの分解や翻訳を調節することにより、遺伝子発現の特異性の制御に関与している小さいRNA分子である。miRNAは、22−ヌクレオチドを有する一本鎖RNA分子であり、それは、大きな一次転写産物(プリmiRNA)として合成され、核内でDrosha RNaseIII型により処理されて、60塩基対の「ヘアピン」前駆体(プレmiRNA)を生じる。これらの分子は、細胞質へ輸送され、第2ヌクレアーゼ(ダイサー)により処理されて成熟形態(miRNA)となる。miRNAは、リボヌクレオタンパク質RISC複合体に組み込まれ、そこで作用して、成熟mRNA−RISC複合体と標的mRNAの相同領域との間、特にmiRNA鎖のいわゆる「シード」領域(5’端の2〜7ヌクレオチド)間の対合により標的mRNAの分解を引き起こし、mRNAの分解および/または翻訳減衰を生じる。miRNAは、mRNA細胞の半減期を調節することにより作用する内在性分子であるが、内在性mRNA(例えば、miR−30)の構造を変更してsiRNAをコードする配列を含むことができること、および修飾miRNAを使用して内在性標的遺伝子の分解を引き起こすことができることが明らかとなった(WO03093441号)。また、mir−26aステム領域に組み込まれたsiRNA配列は、RNAiエフェクターとして働いて、相同のmRNAの分解を引き起こすことも明らかとなった(McManus,M.T.ら、2002年、RNA、8:842−850)。どちらの場合でも、miRNAステムに導入されたヌクレオチド配列は、標的遺伝子と100%同一であることが示された。
【0043】
本発明の組成物に使用するのに好適なmiRNAは、19〜約24ヌクレオチド、好ましくは、21または22ヌクレオチドで構成されている。miRNAは、RNA転写物に高特異的にハイブリダイズするように設計することができる。一つの非相補的ヌクレオチドだけが、miRNA鎖における位置に応じて、阻害レベルを減少できることから、miRNAは、標的mRNAと100%同一または実質的に同一(すなわち、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、またはそれ以上のミスマッチを許容)であることを示すように設計することが好ましい。miRNAは、標的mRNAの翻訳されない5’領域、コード領域、または3’領域を標的とするように設計することができる。
【0044】
miRNAは、ステムーループ領域を含んでなるプレmiRNAをプロセッシングすることにより得られる。この構造は、リボヌクレアーゼによって、好ましくはダイサーのようなリボヌクレアーゼIII型によって認識され、成熟miRNAを形成するように設計することができる。ステムーループ構造は、40〜100ヌクレオチド、好ましくは50〜70ヌクレオチド、より好ましくは20〜30ヌクレオチドを有することができる。ステムは、二本鎖を形成する鎖の少なくとも一つにおいて、完全に相補的な二本鎖を含んでなることができ、またはさらに非相補的領域を含むことができる。好ましくは、非相補的領域は、あまり多くなく(例えば、1、2、または3)、そしてサイズの面では3以下のヌクレオチドから構成されている。ループ末端は、4以上のヌクレオチド(好ましくは25以下)を含んでなることができる。ループは、サイズが6〜15ヌクレオチドであることが好ましい。
【0045】
miRNAの効率的なプロセシングおよび機能は、典型的には、miRNAが、Zeng等(RNA、2003年、9:112−123)により記載されているような一定の構造的要件を有するときだけ可能である。本発明のmiRNAは、ステム領域が予め選択されたmRNAの標的配列で置き換えられたmirR−30構造に基づいていることが好ましい。ループ領域にmiR−30が存在することは、望ましいけれども、絶対に必要ということではない。この理由は、ループ領域がmiR−30で見られるループ配列と70%超、好ましくは79%超、さらに好ましくは86%超、さらにより好ましくは93%超同一であるという一定のばらつきを許容することができるからでる。同一度は、上記した方法のいずれかを用いて決定できる。
【0046】
本発明を実施するのに好適なmiRNAは、WO03093441号公報に記載されているような内在性miR−30miRNAに基づくもの、またはWO03029459号公報に記載されているような内在性miRNAに基づくものである。
【0047】
(iv)siRNA、shRNAまたはmiRNAをコードするポリヌクレオチド
本発明における第二成分は、転写により上記したsiRNA、shRNAおよび/またはmiRNAを生じるポリヌクレオチドとして準備することができる。shRNAまたはmiRNAをコードするポリヌクレオチドにおいて、それらは、ヘヤピンまたはステム−ループ領域により接続しているshRNAおよびmiRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖を含んでなる配列の転写を調節する単一のプロモーター領域を含んでなる。原則として、いずれのプロモーターもshRNAおよびmiRNAの発現に使用することができる。ただし、プロモーターは、siRNAが発現する細胞と適合するものである。したがって、本発明を実施するのに好適なプロモーターには、U1iの発現について上記したものなどがある。好ましい実施態様によれば、プロモーターは、構造的に作用するRNAポリメラーゼIIIプロモーターである。RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、5SRNA、tRNA、RNA7SL、およびsnRNAU6などの限られた遺伝子で見られる。
【0048】
さらに、siRNAをコードするポリヌクレオチドは、2つの転写単位を含んでなる。これらの各々は、siRNA(センスおよびアンチセンス)で形成した鎖の一つの転写を調節するプロモーターにより構成されている。siRNAをコードするポリヌクレオチドは、収束性または分岐転写単位を含むことができる。分岐転写ポリヌクレオチドにおいて、siRNAを形成する各DNA鎖をコードする転写単位は、ポリヌクレオチドに平行に位置しており、各DNA鎖の転写が、自らのプロモーター(同じまたは異なってもよい)に依存している(Wang,J.ら、2003年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、100:5103−5106およびLee,N.S.ら、2002年、Nat.Biotechnol.、20:500−505)。収束性転写ポリヌクレオチドにおいて、siRNAを生成するDNA領域は、二つの反転したプロモーターが側面に位置しているDNA領域のセンス鎖およびアンチセンス鎖を形成する。センスおよびアンチセンスRNA鎖の転写後、機能性siRNAに対応するハイブリッドを形成する。反転した転写単位を含んでなるポリヌクレオチドに好適なプロモーターの組み合わせには、2U6プロモーター(Tran,N.ら、2003年、BMC Biotechnol.、3:21)、マウスU6プロモーターおよびヒトH1プロモーター(Zheng,L.ら、2004年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101:135−140およびWO2005026322号)、およびヒトU6プロモーターおよびマウスH1プロモーター(Kaykas,A.&Moon,R.、2004年、BMC Cell Biol.、5:16)などが挙げられる。好ましい実施態様によれば、センスおよびアンチセンスsiRNA鎖は、様々なプロモーターにより制御される。さらに好ましい実施態様によれば、両方の転写単位は、収束するように配向している。好ましい実施態様によれば、RNAポリメラーゼIII型プロモーターは、ヒトおよびマウス由来のH1およびU6遺伝子のプロモーターである。さらに好ましい実施態様によれば、プロモーターは、ヒトまたはマウス由来の2U6プロモーター,マウスU6プロモーターおよびヒトH1プロモーター、またはヒトU6プロモーターおよびマウスH1プロモーターである。
【0049】
(v)一種以上のsiRNA、shRNA、miRNAおよび/またはそれらをコードする一種以上のポリヌクレオチドの組み合わせ
本発明における第二成分は、(i)、(ii)、(iii)、および(iv)で示されている一種以上の成分により構成することができる。したがって、本発明は、一種以上のsiRNA、一種以上のshRNA、一種以上のmiRNAおよび/または前記ポリヌクレオチドをコードする一つまたはいくつかのポリヌクレオチドの併用を意図している。様々な抑制剤が、同一のmRNAの様々な領域を標的とすることができる。
【0050】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物またはパーツからなるキットの成分(ii)は、少なくとも一種のshRNAをコードする配列を含んでなるポリヌクレオチドである。
【0051】
本発明によるベクター構築および遺伝子構築
本発明における第一成分をコードするポリヌクレオチド、さらにはsiRNA、miRNA、および/またはshRNAをコードし、そして本発明における第二成分を構成するポリヌクレオチドは、それ自体を単離することができ、または好適な宿主細胞でポリヌクレオチドを増殖できるベクターの一部を構成することもできる。ポリヌクレオチドを挿入するのに好適なベクターは、pUC18、pUC19、ブルースクリプト(Bluescript)およびそれらの誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、Co1E1、pCR1、RP4、ファージ、およびpSA3およびpAT28などの「シャトル」ベクターなどの原核生物の発現ベクター;2ミクロンプラスミド型のベクター、組込み型プラスミド、YEPベクター、セントロメアプラスミドなどの酵母の発現ベクター;pAC系のベクターおよびpVLベクターなどの昆虫細胞の発現ベクター;pIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pORE系などの植物の発現ベクター;および市販のバキュロウイルスシステムを使用し、昆虫細胞にトランスフェクトするのに好適なバキュロウイルスを含む真核細胞の発現ベクターから得られるベクターである。真核細胞用のベクターは、好ましくはウイルスベクター(アデノウイルスおよびレトロウイルス、特にレンチウイルスなどのアデノウイルスに随伴するウイルス)、さらにpSilencer4.1−CMV(Ambion社)などの非ウイルスベクター、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg、pHMCV/Zeo、pCR3.1、pEFI/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAX1、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびPKSV−10、pBPV−1、pML2d、およびpTDT1などがある。
【0052】
好ましい実施態様によれば、U1iRNAをコードするポリヌクレオチドおよびsiRNA、shRNA、またはmiRNAをコードするポリヌクレオチドは、同一のベクターの一部分を構成する。別の実施態様によれば、U1iRNAをコードするポリヌクレオチドおよびsiRNA、shRNA、またはmiRNAをコードするポリヌクレオチドは、単一のベクターの一部分を構成する。
【0053】
ベクターは、ベクターを細胞に接触させた後、ベクターが組み込まれた細胞を同定するレポーター遺伝子または標識遺伝子を含んでなることが好ましい。本発明に有用なレポーター遺伝子には、lacZ、ルシフェラーゼ、チミジンキナーゼ、GFPなどが挙げられる。本発明に有用な標識遺伝子には、例えば、アミノグリコシドG418耐性をもたらすネオマイシン耐性遺伝子;ハイグロマイシン耐性をもたらすハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子;オルニチンデカルボキシラーゼ(2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン(DFMO))の阻害剤耐性をもたらすODC遺伝子;メトトレキサート耐性をもたらすジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子;ピューロマイシン耐性をもたらすピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子;ゼオシン耐性をもたらすble遺伝子;9−ベータ−D−キシロフラノースアデニン耐性をもたらすアデノシンデアミナーゼ遺伝子;N−(ホスホンアセチル)−L−アスパラギン酸塩存在下、細胞を成長させるシトシンデアミナーゼ遺伝子;アミノプテリン存在下、細胞を成長させるチミジンキナーゼ遺伝子;キサンチン存在下およびグアニン不存在下、細胞を成長させるキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子;トリプトファンに代わりインドール存在下、細胞を成長させる大腸菌(E.coli)のtrpB遺伝子;および細胞がヒスチジンの代わりにヒスチジノールを使用するようになる大腸菌(E.coli)のhisD遺伝子が挙げられる。選択した遺伝子は、真核細胞(例えば、CMVまたはSV40プロモーター)において、その遺伝子の発現に好適なプロモーター、最適化した翻訳開始部位(例えば、いわゆるKozak規則またはIRESに続く部位)、例えば、SV40ポリアデニル化またはホスホグリセリン酸キナーゼ部位などのポリアデニル化部位,ベータ−グロブリン遺伝子イントロンなどのイントロンをさらに含んでなるプラスミドに組み込まれる。別法として、同じベクター内にレポーター遺伝子および標識遺伝子の両方を同時に組み合わせて使用することが可能である。
【0054】
好ましい実施態様によれば、ベクターは、ウイルスベクターである。さらに好ましい実施態様によれば、本発明の第一または第二成分の発現に使用されるベクター(但し、DNAに基づくもの)は、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、SV40、およびアルファウイルスからなる群より選択されるウイルスベクターである。
【0055】
siRNAを設計する基礎とされる標的mRNAの領域は限定されず、そしてコード配列の領域(開始コドンと終止コドン間)含んでいてもよく、あるいは非翻訳5’または3’領域の配列を含んでいてもよい。好ましくは、この領域の長さは、21〜50ヌクレオチドであろう。
【0056】
siRNA、shRNA、およびmiRNAを設計する基準は、当業者に広く知られている(例えば、Birmingham,A.ら、2007年、Nature Protocols、2:2068−2078;Ladunga,I.、2006年、Nucleic Acids Res.、35:433−440およびMartineau,H.、Pyrah,I.、2007年、Toxicol.Pathol.、35:327−336、およびPeiおよびTuschl、2006年、Nature Methods、3:670−676を参照)。
【0057】
標的遺伝子の発現を阻害するのに好適なU1iの設計基準は、上記で説明した通りである(Fortes,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2003年、100:8264−8269およびSajic,Rら、2006年、Nucleic Acids Res.、35:247−255参照)。好ましくは、U1iを設計するための基礎としてみなされる標的プレmRNAの領域は、Fortesら(前掲)により示された3’末端領域のみを含んでなる。
【0058】
好ましい実施態様によれば、本発明における、パーツからなるキットの成分(i)または組成物の成分(i)は、いくつかのU1snRNAまたは種々のU1iをコードするいくつかのポリヌクレオチドを含んでなり、これらの全ては同一の標的mRNAの種々の領域を標的としている。このように、U1iの相乗的阻害効果は、Fortesら(上記)およびSajicら(上記)に示されているようにして得ることができる。
【0059】
別の好ましい実施態様によれば、本発明における、パーツからなるキットの成分(ii)または組成物の成分(ii)が、(i)で定義したU1snRNAの標的であり、そして標的mRNAの生体内抑制を生じさせることができるプレmRNAのプロセシングから得られるmRNAの異なる予め選択された領域を特異的に標的とする、いくつかの遺伝子発現抑制剤を含んでなる。
【0060】
さらに好ましい実施態様によれば、本発明における、パーツからなるキットのまたは組成物の成分(i)が、いくつかのU1snRNAまたは、同じ標的プレmRNAの異なる予め選択された領域に特異的に結合するように、イントロンの5’端のGUコンセンサス配列に対する結合配列が修飾されているU1snRNAをコードするいくつかのポリヌクレオチドを含んでなり、パーツからなるキットまたは組成物の成分(ii)が、(i)で定義したU1snRNAの標的であり、そして標的mRNAの生体内抑制を生じさせることができるプレmRNAのプロセシングから得られるmRNAの異なる予め選択された領域を特異的に標的とする、いくつかの遺伝子発現抑制剤を含んでなる。
【0061】
本発明による組成物は、単一の容器に双方の成分を含んでいてもよく、または二つの成分がいくつかの容器に物理的に分離されていてもよく、この場合、「本発明のキット」と称される。「キット」は、本発明では、包装して輸送および貯蔵できるようにされた、本発明による組成物の二つの異なる成分を含む製品として理解される。キット成分を包装するのに好適な材料には、ガラス、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど)、ボトル、バイアル、紙、エンベロープなどが挙げられる。さらに、本発明のキットは、キットの成分を同時、逐次または別個投与することについての説明書を備えてなることができる。その説明書は、印刷物の形態、または装置により読み取ることができるように説明書が記憶されている電子支援媒体の形態、例えば、電子記憶媒体(磁気ディスク、テープ、および同様のもの)、光媒体(CD−ROM、DVD)であることができる。さらに、または、その媒体は説明書を提供するインターネットアドレスを含むことができる。
【0062】
本発明における二官能性ポリヌクレオチド
本発明者らは以下を提案する。すなわち、本発明における第二成分がDNAに基づくものであり、したがって、siRNA、shRNA、またはmiRNAをコードする配列から構成されている場合、単一のポリヌクレオチドと、本発明における第一成分の配列でありU1iをコードし、処置されるべき生体を、単一投与により同時相乗効果を得るのに必要な2つの成分と接触させることができる配列との組み合わせであってもよい。したがって、別の態様によれば、本発明は、
(i)標的プレmRNAの3’末端エクソンの予め選択された領域に特異的に結合するように、イントロンの5’端のGUコンセンサス配列に対する結合配列が修飾されており、そして標的プレmRNAのプロセシングを阻害することができる少なくとも一種のU1snRNAをコードする配列と、
(ii)(i)で定義したポリヌクレオチドがコードするU1snRNAの標的であり、そして標的mRNAの生体内抑制を生じさせることができるプレmRNAのプロセシングから得られるmRNAの予め選択された領域を特異的に標的とする、抑制剤をコードする配列とを含んでなる、ポリヌクレオチド(以下、本発明の二官能性ポリヌクレオチドと称する)に関する。
【0063】
好ましい実施態様によれば、本発明の二官能性ポリヌクレオチドの成分(ii)は、少なくとも一種のsiRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖を含んでなり、少なくとも一種のプレmiRNA、または少なくとも一種のshRNAをコードする。
【0064】
別の態様によれば、本発明は、
(i)標的プレmRNAの3’末端エクソンの予め選択された領域に特異的に結合するように、イントロンの5’端のGUコンセンサス配列に対する結合配列が修飾されており、かつ標的プレmRNAの成熟を阻害することができるU1snRNAをコードする配列と、
(ii)少なくとも一種のsiRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖をコードする配列、少なくとも一種のプレmiRNAをコードする配列、または少なくとも一種のshRNAをコードする配列(siRNA、プレmiRNAおよび/またはshRNAは、(i)で定義したポリヌクレオチドがコードするU1snRNAの標的であり、かつ標的mRNAの生体内抑制を生じさせることができるプレmRNAのプロセシングから得られるmRNAの予め選択された領域に特異的に結合している)とを含んでなるポリヌクレオチドに関する。
【0065】
本発明による二官能性ポリヌクレオチドは、通常、発現調節領域に結合しているが、その領域はU1iをコードする配列および抑制剤をコードする配列と同一であってもよいし、または異なっていてもよい。ポリヌクレオチドの発現に好適なプロモーターは、U1iの発現で上記したものと同じである(構造的、調節可能、および組織特異的)。
【0066】
同様に、本発明による二官能性ポリヌクレオチドは、発現ベクターの一部を構成することができる。したがって、別の態様によれば、本発明は、本発明による二官能性ポリヌクレオチドを含んでなる発現ベクターに関する。本発明によるポリヌクレオチドをクローニングまたは増殖するのに好適なベクターは、U1iをコードするポリヌクレオチドまたはsiRNA、shRNAおよび/またはmiRNAをコードするポリヌクレオチドの発現で先に述べたことと実質的に同じものである。本発明によるポリヌクレオチドの発現ベクターは、ウイルスベクターであることが好ましく、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、SV40、およびアルファウイルスからなる群より選択されるベクターであることがより好ましい。
【0067】
別の態様によれば、本発明は、本発明による二官能性ポリヌクレオチドを含んでなる細胞または本発明の二官能性ポリヌクレオチドを含んでなるベクターに関する。本発明による組成物の発現に好適な宿主細胞には、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞、および細菌細胞が挙げられるが、これらには限定されない。細菌細胞には、バチルス属、ストレプトマイシン属、およびブドウ球菌属などのグラム陽性細菌細胞、エシェリキア属およびシュードモナス属などのグラム陰性細菌細胞が挙げられるが、これらには限定されない。真菌細胞には、サッカロミセス、ピヒア・パストリス、およびハンセヌラ・ポリモルファなどの酵母細胞が好ましい。昆虫細胞には、ショウジョウバエ細胞およびSf9細胞が挙げられるが、これらには限定されない。植物細胞には、特に、穀物、薬草、観賞植物、または球根植物などの作物が挙げられる。上記細胞に、アグロバクテリウム媒介遺伝子導入、葉片の形質転換、ポリエチレングリコールにより誘導する形質転換、エレクトロポレーション、超音波処理、マイクロインジェクション、および遺伝子銃などの周知の技術を用い、本発明の二官能性ポリヌクレオチドをトランスフェクトする。本発明の二官能性ポリヌクレオチドを挿入するのに好適な哺乳類細胞は、CHO(チャイニーズハムスター)細胞、COS細胞、BHK細胞、HeLa細胞、911、AT1080、A549、293、またはPER.C6が挙げられる。
【0068】
別の実施態様によれば、本発明は、本発明による二官能性ポリヌクレオチドがゲノムに組み込まれた非ヒトトランスジェニック動物に関する。
【0069】
非ヒト動物を得る方法は、本発明による二官能性ポリヌクレオチドを、生殖系列細胞を含む全ての細胞型に分化可能な幹細胞のゲノムに挿入するときにだけ実施できるものであると理解できる。これらは、胚細胞(EC)または胚性生殖細胞(EGC)である。胚幹細胞(ESC)は、着床前の胞胚期における胚の内部細胞塊由来のものである。マウスおよびヒトの胚幹細胞の何種類かが知られており、例えば、マウスでは、ESC、TBV2、R1、およびD3細胞などが確立されている。これらの細胞は、好適な培養条件で非分化状態のまま生体内培養でき、胚盤胞との組み合わせ、そして偽妊娠仮親の子宮に挿入した結果として、生体内で正常な成長を開始する能力を保持している。胚性生殖細胞(EGC)は、胎児の生殖隆起から培養した始原生殖細胞(PGC)に由来するものである。通常、修飾GDNF部を運ぶ本発明のESC細胞およびEGC細胞は、宿主胚盤胞、つまり宿主胚盤胞の胞胚腔に注入するか、または桑実胚期、すなわち、無ゾーン桑実胚までの8個細胞期の未受精卵と一緒に培養し、改変ESC細胞は成長中の胚の内部細胞塊に組み込まれるのが好ましい。
【0070】
一部の細胞が宿主胚盤胞に由来し、一部が改変ESC細胞に由来することから、胚盤胞に注入したトランスジェニック同腹子はキメラと呼ばれる。宿主胚は、代わりの偽妊娠雌または中間宿主に移され、継続して成長する。その結果、手順により、体細胞系組織および生殖系組織が、遺伝子工学により得られるESC細胞由来の細胞とレセプター胚盤胞との混合物を含んでなるキメラ動物が提供される。通常、幹細胞および胚盤胞は、キメラ動物が異なる色の斑点をもつことができるように異なる皮膚色素沈着をもつ動物から得られる。したがって、これらのキメラ動物は生殖系のトランスジェニック動物、つまり、その特性が生殖により同腹子に移るように動物の生殖細胞に修飾遺伝子をもつ動物が得られるまで再び同種と掛け合わす。生殖系のトランスジェニック動物は、例えば、同腹子を観察してその特性をもつことを判定することにより、またはトランスジェニック動物の生殖細胞を検査して、遺伝率が一致するように組み込まれた導入遺伝子が存在しているかを判定することにより同定できる。これらの動物はその後、所望の特性であるが、モザイクを示さない一卵性の動物が得られるように他の動物と掛け合わされる。
【0071】
本明細書に記載の非ヒトトランスジェニック動物は、上記のESC細胞の方法とは異なる方法、例えば、単細胞胚の前核に標的化構築物を前核注入する方法またはトランスフェクションしたESC細胞を基本としない他の遺伝子標的方法により生産することができることを理解すべきである。
【0072】
いずれかの好適な非ヒト哺乳動物を使用して、本明細書に記載の非ヒトトランスジェニック哺乳動物を生産することができる。例えば、好適な哺乳動物は、齧歯動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、テンジクネズミ、スナネズミ)、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、イヌ、イノシシ、または霊長類であることができる。但し、この場合、全体的に良好な健康状態、良好な胚機能、胚の良好な前核可視性、および良好な生殖能力を得るために動物の特定系統または系統群が選択される。好ましい実施態様によれば、使用される動物は、マウスである。C57BL/6またはC57BL/6xDBA/2Fitなどの系統、またはFVB系統(チャールズ・リバー研究所、Boston,Mass.、ジャクソン研究所、Bar Harbor,MEまたはTaconic研究所から購入)が使用されることが多い。好ましい系統は、129sv系統であり、さらにC57BL/6またはDBA/1などのH2b、H−26、またはH−2qハプロタイプを有するものである。
【0073】
本発明による組成物の医学的用途
本発明者らは、本発明による組成物が、標的遺伝子の発現を相乗的に、すなわち、各成分を単独で作用させるよりもより効率的に、阻害できることを明らかにした。これにより、含まれる各成分が病因に関与するタンパク質のmRNAを標的とする組成物を、医薬品として使用できる。したがって、別の態様によれば、本発明は、医学分野での使用または薬剤として使用するための、上記で記載した本発明の組成物および本発明の二官能性ヌクレオチドに関する。当業者は、ある遺伝子の過剰発現により起こる、または一定の遺伝子の発現を減少させることを必要とする疾患または病気のすべての治療に組成物を使用できることができることを理解できるであろう。
【0074】
当業者には、本発明による組成物の投与には、様々な可能性があることが理解できるだろう。組成物の二つの成分は、別個または同じ分子の形で投与してもよい。
【0075】
さらに、第一成分および第二成分の両方をそのまま阻害分子として投与してもよい。つまり、成分(i)はU1snRNAの形で投与してもよく、成分(ii)はそのままRNA系の抑制剤、例えば、siRNA、miRNA、shRNAとして投与してもよい。別法として、第一成分はU1snRNAをコードするポリヌクレオチドとして提供することができ、および/または、第二成分はDNA系、つまり抑制剤をコードするポリヌクレオチドを含んでなるものである。後者の場合、ポリヌクレオチドは、第一成分および第二成分の両方を含んでなる単一のポリヌクレオチドとして、または別個のポリヌクレオチドとして、つまり、同時、別個または逐次的のいずれかで投与してもよい。
【0076】
したがって、本発明は、投与計画の様々な組み合わせを意図しており、その組み合わせは状況に応じて医師により決定される。
−同時投与:
−成分(i)はU1snRNAそれ自体であり、成分(ii)はRNA系抑制剤である。
−成分(i)はU1snRNAそれ自体であり、成分(ii)は、DNA系、つまり、抑制RNA分子をコードするポリヌクレオチドを含んでなる。
−成分(i)は、U1snRNAそれ自体をコードするポリヌクレオチドであり、成分(ii)は、RNA系抑制剤である。
−成分(i)は、U1snRNAそれ自体をコードするポリヌクレオチドであり、成分(ii)は、DNA系抑制剤、つまり、抑制RNA分子をコードするポリヌクレオチドを含んでなる。この場合、両方のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチドの一部分を構成してもいいし、あるいは別個のポリヌクレオチドとして提供することもできる。
−分別投与または逐次投与:
−成分(i)は、U1snRNAそれ自体であり、成分(ii)は、RNA系抑制剤である。
−成分(i)は、U1snRNAそれ自体であり、(ii)は、DNA系、つまり、抑制剤をコードするポリヌクレオチドを含んでなる。
−成分(i)は、U1snRNAそれ自体をコードするポリヌクレオチドであり、成分(ii)は、RNA系抑制剤である。
−成分(i)は、U1snRNAそれ自体をコードするポリヌクレオチドであり、成分(ii)は、DNA系、つまり、抑制剤をコードするポリヌクレオチドを含んでなる。この場合、両方のポリヌクレオチドは、別個のポリヌクレオチドとして提供する必要がある。
【0077】
当業者であれば、第一成分および第二成分の両方がDNA型、つまり活性RNA分子をコードするポリヌクレオチドとして使用される場合、対応するポリヌクレオチドは、ベクターにおいて提供してもよいことが理解できるだろう。別個または逐次輸送の場合、各ポリヌクレオチドは異なるベクターの一部分を構成する。同時投与の場合、両方のポリヌクレオチドを、異なるベクターにおいて提供してもよいし、両方のポリヌクレオチドを含んでなる単一のベクターにおいて提供してもよい。
【0078】
本発明による組成物を設計するための標的として使用することができる遺伝子としては、例えば、癌遺伝子;転写因子、レセプター、酵素、構造タンパク質、サイトカイン、サイトカインレセプター、レクチン、セレクチン、免疫グロブリン、キナーゼ、ホスファターゼ、プロリン、血管新生ポリペプチド、プロテアーゼおよびアポトーシスプロセスに関与するタンパク質をコードする遺伝子;接着分子をコードする遺伝子;表面レセプターをコードする遺伝子;腫瘍細胞の転移または侵襲過程に関与するタンパク質をコードする遺伝子;成長因子をコードする遺伝子;多剤耐性遺伝子(MDR1);リンホカイン、サイトカイン、免疫グロブリン、T−細胞レセプター、MHC抗原、DNAおよびRNAポリメラーゼをコードする遺伝子;アミノ酸、核酸、腫瘍抑制遺伝子、5−リポオキシゲナーゼ、ホスホリパーゼA2、プロテインキナーゼC、p53、p16、p21、MMAC1、p73、zac1、C−CAM、BRCA1、Rb、Harakiri、AdE1B、ICE−CED3プロテアーゼ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、TNF、GMCSF、インターフェロン、CFTR、EGFR、VEGFR、IL−2レセプター、エストロゲンレセプター、Bcl−2ファミリーの一部(Bcl−2またはBcl−xL)、ras、myc、neu、raf、erb、src、fins、jun、trk、ret、gsp、hstおよびabl、アミロイド前駆体タンパク質、アンギオスタチン、エンドスタチン、METH−1、METH−2、IX因子、VIII因子、コラーゲン、サイクリン依存性キナーゼ、サイクリンD1、サイクリンE、WAF1、cdk4阻害剤、MTS1、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、エリスロポエチン、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、SCF、トロンボポエチン、BNDF、BMP、GGRP、EGF、FGF、GDNF、GGF、HGF、IGF−1、IGF−2、KGF、ミオトロフィン、NGF、OSM、PDGF、ソマトロフィン、TGF−ベータ、TGF−アルファ、VEGF、TNF−アルファ、TNF−ベータ、カテプシンK、シトクロムP−450、ファルネシルトランスフェラーゼ、グルタチオン−Sトランスフェラーゼ、ヘパラナーゼ、HMGCoAシンテターゼ、n−アセチルトランスフェラーゼ、フェニルアラニン水酸化酵素、ホスホジエステラーゼ、rasのカルボキシ末端プロテアーゼ、Notch、テロメラーゼ、TNF−変換酵素、カドヘリンE、カドヘリンN、セレクチン、CD40、ANF、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、グルカゴン、ゴナドトロピン、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、ソマトトロピン、インスリン、レプチン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、PTH、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、免疫グロブリンCTLA4、血球凝集素、MHC、VLA−4、カリクレイン−キニノーゲン−キニンCD4系、sis、hst、ras、abl、mos、myc、fos、jun、H−ras、ki−ras、c−fins、bcl−2、L−myc、c−myc、gip、gsp、HER−2、ボンベシンレセプター、GABAレセプター、EGFR、PDGFR、FGFR、NGFR、インターロイキンレセプター、イオンチャンネルレセプター、ロイコトリエンレセプターアンタゴニスト、リポタンパク質レセプター、オピオイドレセプター、サブスタンスPレセプター、レチノイン酸およびレチノイドレセプター、ステロイドレセプター、T−細胞レセプター、甲状腺ホルモンレセプター、TNFレセプター、tPAレセプター、カルシウムポンプ、プロトンポンプ、Na/Ca交換体、MRP1、MRP2、P170、LRP、cMOAT、トランスフェリン、APC、brca1、brca2、DCC、MCC、MTS1、NF1、NF2、nm23、p53、およびRbの合成など代謝過程に関与する遺伝子が挙げられるが、これらには限定されない。
【0079】
本発明による組成物は、感染症疾患、腫瘍性疾患、新生物疾患、または神経変性疾患に関与する遺伝子を標的とすることができる。したがって、別の態様によれば、本発明は、感染症疾患、腫瘍性疾患、新生物疾患、または神経変性疾患の治療または予防のための、本発明の組成物またはキット、本発明の二官能性ポリヌクレオチド、または二官能性ポリヌクレオチドを含んでなるベクターまたは細胞を提供する。
【0080】
さらに別の態様によれば、本発明は、感染症疾患、腫瘍性疾患、新生物疾患、または神経変性疾患の治療または予防のための薬剤を調製するための、本発明の組成物またはキット、本発明の二官能性ポリヌクレオチド、または本発明の二官能性ポリヌクレオチドを含んでなるベクターまたは細胞の使用を提供する。
【0081】
さらに別の態様によれば、本発明は、本発明の組成物またはキット、本発明の二官能性ポリヌクレオチド、または本発明の二官能性ポリヌクレオチドを含んでなるベクターまたは細胞を、それを必要としている患者に投与することを含んでなる感染症疾患、腫瘍性疾患、新生物疾患、または神経変性疾患の治療方法を提供する。
【0082】
好ましい実施態様によれば、本発明による組成物は、前記生物の病原性に必要不可欠な病原体遺伝子、さらに宿主と相互作用する病原体に必要不可欠な宿主遺伝子を標的とすることができる。この場合、組成物は、感染症疾患、例えば、ウイルスおよび細菌感染症など治療するのに好適なものである。したがって、別の態様によれば、本発明は、感染症疾患の治療または予防のための、本発明の二官能性ポリヌクレオチド、本発明のベクターまたは本発明の細胞を有する本発明の組成物またはキットに関する。別の実施態様によれば、本発明は、感染症疾患の治療または予防のための薬剤を調製するための、本発明の二官能性ポリヌクレオチド、本発明のベクターまたは本発明の細胞を有する本発明の組成物またはキットの使用に関する。
【0083】
本発明の組成物により治療可能なウイルス感染症は、重症急性呼吸器症候群(SARS)に関与するコロナウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトT−細胞リンパ向性ウイルス(HTLV)1型および2型、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)1型および2型、サイトメガロウイルス、パピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、エプスタイン・バールウイルス、ポックスウイルス、インフルエンザウイルス、風疹ウイルス、狂犬病ウイルス、センダイウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、ライノウイルス、レオウイルス、および麻疹ウイルスに関係する疾患や病気が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
本発明の組成物により治療可能な細菌性疾患(便宜上、酵母および真菌障害、酵母および真菌疾患も含まれる)は、アシネトバクター種(Acinetobacter sp.)、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、アルガリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデス・オバタス(Bacteroides ovatus)、バクテロイデス・ウレオリティカス(Bacteroides ureolyticus)、バクテロイデス・ブルガータス(Bacteroides vulgatus)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・ビンセンティ(Borrelia vincentii)、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus)、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)、ブルセラ・スイス(Brucella suis)、カンピロバクター(ビブリオ)フィータス(Campylobacter(Vibrio)fetus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クラミジア属(Chlamydia spp.)、シトロバクター・ディバーサス(Citrobacter diversus)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、コリネバクテリウム・ジェイケイウム(Corynebacterium jeikeium)、クロストリディウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ラモサム(Clostridium ramosum)、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)、クロストリディウム属(Clostridium sp.)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、コリネバクテリウム・ジフセリエ(Corynebacterium diphtheriae)、エドワードシエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、クレブシエラ・オザエナエ(Klebsiella ozaenae)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・リノスクレロモチス(Klebsiella rhinoscleromotis)、レプトスピラ・イクテロヘモルハギア(Leptospira icterohemorrhagiae)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコプラズマ属(Mycoplasma spp.)、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoea)、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)、ペプトストレプトコッカス・アネロビウス(Peptostreptococcus anaerobius)、ペプトストレプトコッカス・アサッカロリティカス(Peptostreptococcus asaccharolyticus)、ペプトストレプトコッカス・マグヌス(Peptostreptococcus magnus)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、プレボテラ・ビビア(Prevotella bivia)およびプレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、リケッチア
プロワツェキイ(Rickettsia prowazeki)、リケッチア・ツツガムシ(Rickettsia tsutsugumushi)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、シゲラ・ディセンテリエ(Shigella dysenteriae)、シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ソンネ(Shigella sonnei)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、ストレプトコッカスC群(Streptococcus group C)、ストレプトコッカスG群(Streptococcus group G)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・シミュランス(Staphylococcus simulans)、スタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、ストレプトコッカス・エクイナス(Streptococcus equinus)、ストレプトコッカス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、トキソプラズマ・ゴンディ(Streptococcus pyogenes)、トレポネーマ・カラテネウム(Treponema carateneum)、トレポネーマ・パリズム(Treponema pallidum)、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)、およびエルシニア・シュードツベルクローシス(Yersinia pseudotuberculosis)に関連する障害および疾患が挙げられるが、これらには限定されない。
【0085】
別の実施態様によれば、本発明の組成物およびキットならびに本発明の二官能性ポリヌクレオチドは、腫瘍形成および/または新生形成過程に関与する遺伝子を標的とし、したがって、新生形成過程および異なる種類の癌、例えば、血液癌(例えば、白血病またはリンパ腫)、神経癌(例えば、星状細胞腫またはグリア芽腫)、黒色腫、乳癌、肺癌、頭部および頸部癌、胃腸腫瘍(例えば、胃癌、膵臓癌または結腸癌)、肝臓癌、腎細胞癌、泌尿生殖器癌(例えば、卵巣癌、膣癌、子宮頸癌、膀胱癌、精巣癌、および前立腺癌)、骨腫瘍および血管腫瘍に対して活性な組成物が得られる。したがって、別の態様によれば、本発明は、腫瘍性疾患または新生物疾患の治療または予防のための、本発明の二官能性ポリヌクレオチド、本発明のベクター、または本発明の細胞を有する本発明の組成物またはキットに関する。別の実施態様によれば、本発明は、腫瘍性疾患または新生物疾患の治療または予防用医薬品を調製するための、本発明の二官能性ポリヌクレオチド、本発明のベクター、または本発明の細胞を有する本発明の組成物またはキットの使用に関する。
【0086】
別の実施態様によれば、本発明の組成物および二官能性ポリヌクレオチドは、網膜色素変性症、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、牛海綿状脳症(BSE)、カナバン病、コケーン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レヴィー小体認知症、マシャド・ジョセフ病(3型脊髄小脳失調)、多発性硬化症、多系統萎縮症、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハー病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、統合失調症、シュピールマイアーフォークトシェーグレンバッテン病(バッテン病としても知られている)、脊髄小脳失調、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群、脊髄癆などの神経変性過程に関与する遺伝子を標的とする。したがって、別の態様によれば、本発明は、神経変性疾患の治療または予防のための、本発明の二官能性ポリヌクレオチド、本発明のベクター、または本発明の細胞を有する本発明の組成物またはキットに関する。別の実施態様によれば、本発明は、神経変性疾患の治療または予防用医薬品を調製のための、本発明の二官能性ポリヌクレオチド、本発明のベクター、または本発明の細胞を有する本発明の組成物またはキットの使用に関する。
【0087】
別の態様によれば、本発明は、本発明の組成物または本発明の二官能性ポリヌクレオチドを一種以上の薬学的に許容される担体と一緒に含んでなる医薬に関する。薬学的に許容される担体は、固体または液体であることができる。固体担体には、香料、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、賦形剤、滑剤、圧縮剤、結合剤、または錠剤崩壊剤としても作用することができる一種以上の物質を含んでなることができる。それらはまた封入材料でもある。粉剤では、担体は微粉化固体であり、微粉化した有効成分と混合する。錠剤では、有効成分が、適当な特性の中で必要とされる圧縮特性を有する担体と混合され、所望の形状と大きさに圧縮される。粉剤と錠剤は、有効成分を最大99%含むことができる。好適な固体担体には、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂などがある。
【0088】
液体担体は、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ、エリキシル剤、および圧縮組成物の調製に使用される。有効成分は、薬学的に許容される液体担体、例えば、水、有機溶媒、両方の混合物、薬学的に許容される油または脂質などに溶解または懸濁することができる。液体担体は、可溶化剤、乳化剤、界面活性剤、緩衝剤、防腐剤、甘味剤、香料、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘性調節剤、安定剤、または浸透圧調節剤などの他の薬学的に好適な添加剤を含むことができる。経口投与または非経口投与用に好適な液体担体には、水(特に、前述の添加剤、例えば、セルロース誘導体、可能であれば、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含んでいる)、アルコール(一価アルコールまたは多価アルコール、例えば、グリコールを含んでいる)およびそれらの誘導体、および油(例えば、分留ヤシ油またはピーナッツ油)が挙げられる。非経口投与については、担体は、また、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどのエステル油であってもよい。無菌液体担体は、非経口投与に有用な液体形状の無菌組成物である。圧縮組成物用の液体担体は、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に好適な推進剤であってもよい。
【0089】
無菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、筋肉注射、腹腔内注射、皮下注射に好適である。無菌溶液は、また静脈内投与することができる。また、その組成物は、液体または固体の形状で経口投与することもできる。経肺投与も意図される。
【0090】
医薬組成物は、例えば、錠剤またはカプセルのような形状でもよい。その形状では、組成物は好適な有効成分量を含む投与量単位に細かく分割する。その投与量単位の形状は、包装した粉体、バイアル、ブリスター、プレフィルドシリンジ、または液体を含む小袋などの包装組成物であってもよい。投与量単位の形状は、例えば、カプセルや錠剤であってもよく、またはこれらの組成物のいずれかを適当量を包装した形でもよい。治療で用いられる投与量は、医師により主観的に決定される必要がある。
【0091】
さらに、本発明の化合物は、薬学的に許容される賦形剤を用いて製剤化することにより液体、クリーム、またはローションとして使用することができ、患部に塗ることができる。
【0092】
さらに、本発明は、医薬組成物、特に本発明における第一成分および第二成分を構成する核酸の投与用、または本発明の二官能性ポリヌクレオチドの投与用に調製した医薬組成物を意図している。医薬組成物は、第一成分および第二成分の両方を含んでなり、両方が裸のままのDNA系さらにはRNA系である、すなわち、生体のヌクレアーゼによる分解から核酸を保護する化合物が欠如している状態であるならば、トランスフェクションに用いられる試薬に関連する毒性を除く利点を伴う。裸の化合物に好適な投与経路には、血管内、腫瘍内、頭蓋内、腹腔内、脾臓内、筋肉内、網膜下、皮下、粘膜、局所、または経口経路(Templeton、2002年、DNA Cell Biol.、21:857−867)などがある。これらの化合物が裸の状態で投与されたときの免疫反応を誘導する能力に関する事柄がHeidelら(Nat.Biotechnol.、2004年、22:1579−1582)により最初に調査された。siRNAを腹腔内および静脈内投与した後の血漿インターロイキンおよびインターフェロンレベルを測定したところ、免疫反応が観察されず、一方で、同時に、siRNAの全身投与も十分に許容できるものであることが分かった。
【0093】
別の実施態様によれば、本発明の組成物およびポリヌクレオチドは、いわゆる「ハイドロダイナミック(Hydrodynamic)投与」によって投与され、これにより組成物が生体の血管内に高速および多量に導入されることにより、より拡散した分布の高トランスフェクションレベルが得られる。この手法を改善したものでは、多臓器で、外来遺伝子(Lewisら、2002年、Nat.Gen.,32:107−108;McCaffreyら、2002年、Nature、418:38−39)および内在性遺伝子(Songら、2003年、Science,Nat.Med.、9:347−351)の裸siRNAにより抑制の陽性結果を得ることができる。分子間移動の有効性は、液体の投与量や注入速度に直接依存していることが判明した(Liuら、1999年、Science、305:1437−1441)。マウスでは、投与量を、3〜5秒間において体重10gあたり1mlに最適化した(Hodgesら、2003年、Exp.Opin.Biol.Ther.、3:91−918)。siRNAをハイドロダイナミック投与した後にsiRNAの生体内細胞トランスフェクションが起きる正確な機構はよく知られていない。マウスの場合では、尾静脈投与は心拍数を超える速度で行い、そして投与する液体は上大静脈に蓄積すると考えられる。液体はそれから臓器の血管に移動し、その後血管の穿孔を通過して血管外スペースに到達する。このようにして、siRNAは血液と混合する前に標的生物の細胞に接触するので、ヌクレアーゼによる分解の可能性が低下する。好ましい実施態様によれば、本発明の組成物の第一成分を構成するU1iと本発明の組成物の第二成分を構成するRNA系の成分の両方は、それらの安定性増加に寄与する構造の修飾を含むことができる。ヌクレアーゼに対する感受性を減少する好適な修飾には、2’−O−メチル(Czaudernaら、2003年、Nucleic Acids Res.、31:2705−2716)および2’−フルオロピリミジン(Layzerら、2004年、RNA、10:766−771)などが挙げられる。
【0094】
本発明の組成物およびポリヌクレオチドを投与して、コレステロールまたは細胞膜介して転位を引き起こすことができる化合物、例えば、WO07069090号(Lindgren,A.ら、2000年、Trends Pharmacol.Sci.、21:99−103;Schwarze,S.R.ら、2000年、Trends Pharmacol.Sci.、21:45−48、Lundberg,M.ら、2003年、Mol.Therapy、8:143−150およびSnyder,E.L.およびDowdy,S.F.、2004年、Pharm.Res.、21:389−393)に記載のHIV−1TATタンパク質由来のTATペプチド、キイロショウジョウバエアンテナペディアタンパク質のホメオドメインの第3へリックス、単純ヘルペスウイルスのVP22タンパク質、アルギニンオリゴマーおよびペプチドなどと接合したリポソームの一部を形成することができる。別法として、本発明の第二成分がDNAに基づくものであるとき、それを投与して、プラスミドベクターまたはウイルスベクターの一部を形成することができる。これらは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはレトロウイルスに基づくものであることが好ましく、特にマウス白血病ウイルス(MLV)またはレンチウイルス(HIV、FIV、EIAV)に基づくウイルスであることが好ましい。
【0095】
別の実施態様によれば、医薬組成物が第一成分および第二成分により構成される場合、その組成物が本発明の組成物の第一成分および第二成分を同時、逐次または別個に使用することについての説明書を含んでなることができる。したがって、別の態様によれば、本発明は、組成物の第一成分および第二成分を同時、逐次または別個に使用することについての説明書を含んでなる本発明の組成物またはキットに関する。さらに別の態様によれば、本発明は、同時、逐次または別個に使用するための組み合わせ製剤としての本発明の組成物またはキットに関する。
【0096】
当業者は、投与計画および治療の対象となる患者を、本発明にしたがって決定することができることを理解できるだろう。推奨投与量は、違う患者に対して間違った薬剤を不正な投与量で処方することを防止する情報として、製品のラベルに表示してあり、処方する人が対象となる患者のグループにしたがって、投与量の調整を予測できる。
【0097】
投与計画は、医師および他の臨床学的な要因により決められ、上記した方法の一つにしたがって決めることが好ましい。医学では、周知の通り、患者への投与量は多くの要因、例えば、患者のサイズ、体の表面積、年齢、投与される化合物の詳細、性別、投与時間および投与経路、総体的な健康、および同時に他の薬剤が投与されるかどうかなどに依存している。経過は、定期的検査を通じて観察することができる。
【0098】
本発明による組成物は、体重1キログラムあたり10mg未満の量で投与でき、好ましくは、体重1キログラムあたり5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0.00005、または0.00001mg未満の量で、そして、200nmol未満の量のRNA剤、すなわち、体重1キログラムあたり約4.4x1016コピーまたは体重1キログラムあたり1500、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、または0.075nmol未満の量で投与できる。単位投与量を、注入投与、吸入投与または局所投与できる。本発明の組成物および二官能性ヌクレオチドは、標的mRNAが発現する器官に直接投与できる。この場合、器官あたり0.00001mg〜3mg、好ましくは器官あたり0.0001〜0.001mg、器官あたり約0.03〜3.0mg、器官あたり約0.1〜3.0mg、または器官あたり0.3〜3.0mgを投与する。
【0099】
投与量は治療する病気の重症度および反応に依存し、投与量は、数日〜数ヶ月間または病気の寛解が確認されるまで変更することができる。至適投与量は、患者体内の薬剤濃度を定期的に測定することにより決めることができる。至適投与量は、動物モデルを使った事前の生体外または生体内アッセイから得られるEC50値から決めることができる。単位投与量を、一日に一回または一日に一回未満、好ましくは2、4、8、または30日毎に一回未満で投与することができる。また、一般的に初回量より少量である一回または数回の維持量の後で初回量を投与することができる。維持量の投与計画では、1日あたりおよび体重1キログラムあたり0.01μg〜1.4mg、例えば、1日あたりおよび体重1キログラムあたり10、1、0.1、0.01、0.001、または0.00001mgの投与量で患者を治療することを含むことができる。維持量は、多くても5、10、または30日毎に投与することが好ましい。治療は、患者が患っている疾患の種類、重症度および患者の状態にしたがって変更できる期間継続する必要がある。治療後、患者の経過を観察して、疾患が治療に反応しない場合には投与量を増加すべきかどうか決定し、あるいは疾患の改善が認めらる場合もしくは望ましくない副作用が認められる場合に投与量を減少するかどうかを決定する必要がある。
【0100】
1日投与量は、特定の状況にしたがって一回で投与してもいいし、2回以上に分けて投与してもよい。連続投与または頻回投与が望ましい場合、埋め込み式のポンプ、半永久的なカテーテル(静脈内、腹腔内、嚢内、または関節包内)、または貯蔵器など、投与用の機器を使用するのが望ましい。
【0101】
別の態様によれば、本発明は、標的遺伝子発現の転写後阻害のための生体外および生体内非治療的方法に関し、本発明の組成物または二官能性ヌクレオチドを生体モデルに接触させることを含んでなる。生体モデルは、細胞培養物または動物であることが好ましい。
【0102】
細胞培養への応用に好適な組成物およびポリヌクレオチドの場合では、ポリヌクレオチドが細胞内部へ到達できるための様々な手法がある。一方では、細胞を裸のポリヌクレオチドと接触させることが可能である。細胞をそのポリヌクレオチドに接触させると、エンドソーム区画へは到達できるが、機能状態で細胞質に到達できない(Lingor,P.ら、2004年、Biochem.Biophys.Res.Commun.、315:1123−1133)。したがって、ポリヌクレオチドは、マイクロインジェクションまたはエレクトロポレーションによって投与することが好ましい。または、DNAおよびRNAポリヌクレオチドのトランスフェクション用に、特に、カチオン性リポソーム、膜透過性ペプチド、アテロコラーゲン、ポリアスパラギン酸ポリエチレングリコールとリン酸カルシウムのポリマーからなる有機無機ナノ粒子混成物(Kakizawaら、2004年;J.Control Rel.、97:345−356;Minakuchiら、2004年、Natl.Acids Res.、32:109およびMuratovskaおよびEccles、2004年、Fed.Euro.Biochem.Soc.Lett.、558:63−68)などの適当な試薬を用いた化学的トランスフェクションを使うことが可能である。別の実施態様によれば、本発明のポリヌクレオチドは、発現ベクターを使用して投与することができる。明らかに、本発明の組成物の第二成分がDNAに基づくものであるとき、この手法が唯一の方法である。
【0103】
別法として、細胞による捕獲を増加することができる化学的部分で、本発明の組成物を構成する薬剤を改良することができる。したがって、本発明を構成する薬剤を、ペプチドおよび有機化合物などの異なる種類の化合物と接合することができる。接合は、当業者に知られている方法、例えば、核酸をポリアルキルシアノアクリレート(PACA)のナノ粒子に結合するLambertら(Drug Deliv.、2001年、Rev.:47:99−112)の方法;核酸をナノ粒子に結合したFattalら(J.Control Release 1998年、53:137−143)が記載している方法;挿入剤、疎水性基、ポリカチオンまたはPACAナノ粒子に特異的な核酸を記載しているSchwabら(Ann.Oncol.、1994年、5 Suppl.4:55−58)の方法;および核酸をナノ粒子に結合したGodardら(Eur.J.Biochem.、1995年、232:404−410)が記載している方法により実施できる。
【0104】
別の実施態様によれば、本発明による薬剤は、陽イオン性基を含み且つ発現抑制剤の二本鎖と結合できる脂溶性部分に結合している。好適な脂溶性薬剤には、コレステロール、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンA,葉酸、カチオン性着色剤(例えば、Cy3)、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リソコール酸、03−(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジンなどがある。
【0105】
抑制効果は、表現型の変化を検出することにより、またはRNAハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、DNAマイクロアレイ、ウエスタンブロット法、RIA、ELISA、およびFACSによる遺伝子発現の観察などの手法によって、あるmRNAまたはそれがコードするタンパク質の発現レベルの変化を検出する生化学的手法を使い観測できる。動物モデルまたは培養細胞モデルにおいては、レポーター遺伝子または毒物に耐性のある遺伝子の発現の修飾(その産物を容易に検出できる)を検出することが可能である。好適なレポーター遺伝子には、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータガラクトシダーゼ(LacZ)、ベータグルクロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)、およびそれらの誘導体などがある。好適な選択マーカーには、アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキサート、ホスフィノトリシン、ピューロマイシン、およびテトラサイクリンに対する耐性をコードする遺伝子などがある。
【0106】
別法として、転写後遺伝子発現を抑制する非治療的方法は、発現が抑制されるべき遺伝子が発現している動物モデルに適用できる。この場合、遺伝子発現抑制剤が、遺伝子発現の転写後抑制を起こすべき動物における組織または器官に到達する必要がある。そのために、本発明の薬剤を患者へ治療目的で投与するための上記したいずれかの方法を使用することができる。好ましい実施態様によれば、本発明は、同じ機能的経路で関与するタンパク質をコードする様々な標的mRNAを標的とする組成物の投与を意図している。本発明の組成物の組み合わせの使用による阻害対象となる機能的経路には、解糖、糖新生、クレブス回路、ペントースリン酸経、グリコーゲン合成、カルビン回路、トリアシルグリセリド分解、脂肪酸の活性化、ベータ酸化、脂肪酸デノボ合成、コレステロール合成、尿素サイクル、シキミ酸経路、アミノ酸の合成、酸化的リン酸化、光合成、プリン合成、ピリミジン合成、ヒスチジン代謝、ポルフィリン代謝、イノシトール代謝などがあるが、これらに限定されない。当業者には、前述の経路の様々な段階、さらに各段階に関与する酵素が知られており、したがって、前記プロセスの各段階で関与する一つまたはいくつかの遺伝子に特異的なU1iおよび他の発現抑制剤の開発が、プレmRNAおよびmRNAにおける標的配列を選択する上記した基準がU1iまたは同様の抑制剤により認識されるより大きな可能性がある場合には、日常の実験により実施できることが理解できるであろう。
【0107】
遺伝子治療は、生体外または生体内技術による細胞内への治療遺伝子の挿入に基づいており、遺伝子導入の最も重要な応用の一つである。文献には、生体外または生体内遺伝子治療に好適なベクターおよび方法が記載され、そして当業者に知られている;例えば、Giordano、Nature Medicine 2(1996年)、534−539;Schaper、Circ.Res 79(1996年)、911−919;Anderson、Science 256(1992年)、808−813;Isner、Lancet 348(1996年)、370−374;Muhlhauser、Circ.、Res 77(1995年)、1077−1086;Wang、Nature Medicine 2(1996年)、714−716;WO94/29469号;WO97/00957号またはSchaper、Current Opinion in Biotechnology 7(1996年)、635−640およびそこにあげられている文献参照。遺伝子は、細胞に直接挿入するか、あるいはリポソームまたはウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター)により挿入するように設計することができる。その細胞は、非ヒト生殖系列細胞、非ヒト胚細胞または非ヒト卵細胞、またはそれらの細胞から誘導される細胞であることが好ましい。より好ましくは、成体幹細胞または非ヒト胚幹細胞である。上記から明らかなように、本発明の使用において、核酸配列は、特定の細胞で本発明のポリペプチドの発現および/または融合を起こす調節要素に動作可能に結合していることが好ましい。本発明に従って使用するのに好適な遺伝子分配システムは、特に、リポソーム、レセプター媒体分配システム、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどの裸のDNAおよびウイルスベクターなどを含んでもよい。遺伝子治療をする体の特異的な部位への核酸分配システムは、またWilliams(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88(1991年)、2726−2729)に記載されている微粒子銃分配システムを使用することによって実現できる。組み換えDNAを細胞にトランスフェクトする標準的な方法は、分子生物学の当業者によく知られた方法であり、例えば、WO94/29469号、また上記を参照されたい。遺伝子治療は、本発明の組み換えDNA分子またはベクターを患者に直接投与することによって、または本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを生体外で細胞にトランスフェクトし、トランスフェクトした細胞を患者に投与することによって行なわれる。
【0108】
本発明において特に好ましい遺伝子治療ベクターは、パルボウイルスベクターである。したがって、本発明の好ましい態様では、本発明は、動物パルボウイルスの使用、特にディペンドウイルス、例えば、感染性ヒトAAVまたは感染性サルAAVの使用、および本発明のキットの組成物の導入および/または発現用ベクターとして使用するためのそれらの成分(例えば、動物パルボウイルスゲノム)に関する。
【0109】
パルボウイルス科ファミリーのウイルスは、小型DNAをもつ動物ウイルスである。パルボウイルス科ファミリーは、脊椎動物に感染するパルボウイルス亜科と昆虫に感染するデンソウイルス亜科の二つの亜科に分けることができる。パルボウイルス亜科は、ここでは、パルボウイルスと呼び、ディペンドウイルス属が含まれる。それらの属の名前から推定できるように、ディペンドウイルスは、通常細胞培養において増殖感染するためにアデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスによる重感染が必要であるという点で他に類がない。ディペンドウイルス属には、一般的にヒト(例えば、血清型2、3A、3B、5、および6)または霊長類(例えば、血清型1および4、サルが起源と考えられているが、ヒトにも感染する)に感染するAAVや他の温血動物に感染する近縁ウイルス(例えば、ウシ、イヌ、ウマ、およびヒツジアデノ随伴ウイルス)が含まれる。さらに、AAV血清型およびAAV血清型由来のハイブリッドAAVベクターを作製する方法に関する情報が、Wuら(2006年、Molecular Therapy 14:316−327)により記載されている。本発明は、AAVには限定されず、等しく二種以上の異なるAAV血清型に由来するハイブリッドAAVベクター、ならびに他のパルボウイルスおよびそれらのハイブリッドに適用できる。遺伝子治療にAAVベクターを使用することに関する技術は、例えば、WO2007/046703号およびWO2007/148971号に記載されている。
【0110】
したがって、本発明の組成物またはポリヌクレオチドは、少なくとも一つのパルボウイルスまたはAAV逆方向末端反復配列(ITR)が側に位置している、意図する本発明の配列のポリヌクレオチドを含んでなるベクターを指すことがある「組み換えパルボウイルスベクターまたはAAVベクター」(「rAAVベクター」)を使用して供給することができる。本発明の組成物は、2つのrAAVベクター(各々がこのような組成物の成分のうちの一つをコードする)を用いて供給することができる。本発明において使用するのに好適なrAAVベクターは、感染ウイルス粒子がAAVrepおよびAAVcap遺伝子産生物(すなわち、AAVRepおよびAAVCapタンパク質)を発現している昆虫宿主細胞内に存在するとき、複製され、感染ウイルス粒子内に取り込まれる。rAAVベクターが大きな核酸構築物(例えば、染色体または、クローニングあるいはトランスフェクションに使用されるプラスミドまたはバキュロウイルスなどの他のベクター)に組み込まれる場合、rAAVベクターは、「プロベクター」と呼ばれ、AAV取り込み機能および必要なヘルパー機能の存在下で、複製およびキャプシド化により「レスキュー」されることができる。
【0111】
以下、本発明を実施例により説明するが、これらの実施例は説明の目的で記載され、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0112】
実施例1.
1.1試薬
【0113】
実験で使用されたshRNA/miRNAの一覧:
【表1】

【0114】
shRNA/miRNAの配列
A:5’配列;B:センス(トランジエントストランド);C:ループ;D:アンチセンス(ガイド鎖);E:終結シグナル
【表2】

【0115】
配列1〜4は、シグマ社から得た。配列5(Purowら、Cancer Res.、(2005年)65:2353−63)と配列6は、実験室で、その配列を含むオリゴヌクレオチドをプラスミドpSuper(Brummelkampら、Science、(2002年)296:550−3)にクローニングすることにより得た:
【表3】

【0116】
全ての場合において、配列を、細胞内にトランスフェクトされた時に発現するように設計されたプラスミドpSuperのBglII−HindIIサイトにクローニングする。shRNAの発現は、細胞の核で起こり、そこから細胞質に輸送され、そこでプロセシングされてsiRNAを生成する。これは、活性化して塩基対合により標的mRNAを認識し、その分解を活性化する抑制機構と相互作用する。配列1〜5において、標的RNAは、ホタルルシフェラーゼ[Photinus pyralis(遺伝子バンクアクセッション番号M15077)]である。配列6および7は、Notch1遺伝子(NP_060087.3)を対象としている。全てのクローンの配列は、ABI Prism 310シーケンサー(Applied Biosystems社製)によって確認された。プラスミドDNAは、トランスフェクトする前にMaxiprepキット(Marlingen社製)により精製した。
【0117】
実験で使用したU1/U1isnRNAの一覧
【表4】

参考文献:
(1)Fortes P.ら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2003年、100:8264−8269)
(2)Fortes P.ら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2003年、100:8264−8269およびWO02083908号)
【0118】
ループ3において4カ所の点突然変異を有する内因性U1snRNAの5’末端の配列と同一の配列を含むU1snRNA(U1αMock)を、対照として使用した。このループにおいて2つのグアノシンとハイブリダイズしている2つのシトシンを、互いに置き換えた。得られた分子は、内因性U1snRNPとは機能的な面で差はない。以前、レポーター遺伝子の3’UTR部において内因性U1snRNAとハイブリダイズする配列を付加すると、このレポーター遺伝子の発現が阻害されることが立証された。このことは、この系が機能するということを裏付けている。
【0119】
U1iαLucは、U1WT配列から構築された。この配列では、3つの位置(太字および下線で示してある)で突然変異が起きた。修飾U1snRNAを、U1snRNPの標的を含むレポーター遺伝子と同時トランスフェクションすると、レポーター遺伝子の発現が阻害されることが観察された。非常に多くの構築物を、3’UTRの種々の位置において試験し、そして非常に数多くの試験管内研究により、種々の修飾U1snRNAを作るための一連の条件が確立された。これらの基準を以下に示す:
−U1snRNAは、標的mRNAの3’末端エクソンに結合しているときだけ阻害する。
−U1snRNAは、従来のポリアデニル化機構によりポリアデニル化されるmRNAを特異的に阻害する。
−いくつかのU1snRNAは、相乗的に作用する。
−U1snRNAとその標的との間の結合は、その発現を阻害するには少なくとも7ntでなければならない。
−U1snRNAの5’部を延長する場合、このU1snRNAがさらに阻害する。
−標的配列の近接性が、U1snRNAが介在する阻害に影響する。
【0120】
U1αNotch1配列は、偽配列またはルシフェラーゼ配列とは全く異なり、U1の最初の12ヌクレオチドの突然変異に由来する。
【0121】
1.2ルシフェラーゼ遺伝子発現阻害の実験モデル
HeLa細胞(ATCCから入手)を、10%BFS(ウシ胎仔血清)および1%ストレプトマイシンを補充したDMEM培地中、5%CO環境下で培養した。培養試薬は全てInvitrogen社のものを使用した。使用したプラスミドは全て、Aparicioら(J.Virol.、1006、80:12236−47)に準じてリン酸カルシウムを使用して細胞にトランスフェクトした。さらに、ウミシイタケルシフェラーゼを発現する対照プラスミド(pSV−RL、Promega社)および他の蛍ルシフェラーゼを発現する対照プラスミドは、siRNAおよびU1(pGL−3、プロモーター、Promega社)の標的配列でトランスフェクトした。Orion IIプレートルミノメーター(Berthold社)において、Aparicioら、2006年、Virol.80:12236−47にしたがって、細胞抽出物をトランスフェクション48時間後に採取し、ルシフェラーゼの発現を、その活性を測定することで定量した(デュアルルシフェラーゼシステム、Promega社)。
【0122】
1.3内因性Notch遺伝子発現阻害の実験モデル
対照としてU1iαNotch1またはU1αMockを発現するpGEMプラスミド(Promega社)、またはshRNA1αNotch1またはshRNA2αNotch1を発現するpGEMプラスミド(Promega社)を、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社)を使用してヒーラ細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション48時間後、72時間後に細胞抽出物を採取し、Notch1の蓄積を、特異的な抗体(C−20 sc−6014−R、Santa Cruz Biotechnology社)を使用し、化学発光により現像し(Perkin Elmer)、そして定量化する(Image Quant ECL、Amersham社)ウエスタンブロットにより定量した。また、アクチン濃度を、各々負荷対照として定量した。また、Notch1活性は、NFκB核内移行能を測定することにより評価した。NFκB活性は、ルシフェラーゼ遺伝子がNFκBによりプロモーター下で誘導可能であるプラスミド(Stratagene社)からルシフェラーゼの発現を活性化する能力を測定することにより定量した。この系を使用して、上記で記載したようにルシフェラーゼを測定した。
【0123】
実施例2
種々のsnRNAU1および干渉RNAのルシフェラーゼ遺伝子発現に及ぼす影響
阻害を、ルシフェラーゼに対してのshRNAの一回分量または一回分量の半量の存在下、U1iαLucの一回分量または一回分量の半量の存在下、またはshRNAの一回分量の半量とU1iαLucの一回分量の半量との混合物の存在下で試験した。得られた結果(図2〜5)から、両方の手法を用いて得たときの阻害が、各系を別個に用いたときに得られる阻害よりも大きいことからみて、相乗効果があることが明らかである。さらに、U1iの一回分量の半量+shRNAの一回分量の半量を用いたときに得られた阻害は、同一のU1iの一回分量または同一のshRNAの一回分量を用いたときに得られた阻害よりも大きいことから、相乗効果はしっかりしたものであると言える。強shRNA、すなわち、10〜20倍の阻害を生じさせるshRNA(図2および3)、中shRNA、すなわち、4倍の阻害を生じさせるsnRNA(図4)および弱shRNA、すなわち、2倍の阻害を生じさせるshRNA(図5)で検出されることを考慮すると、相乗効果は、使用されるshRNAの阻害能とは無関係であると言える。さらに、相乗効果があることにより、shRNAまたはU1iの最大投与量で得られるよりも大きな阻害を維持しながら、shRNAの投与量またはU1iの投与量を強shRNA(図6)または中shRNA(図7)を使用する場合の8〜20倍減少させることができる。
【0124】
実施例3
種々のshRNAU1および干渉RNAのNotch1遺伝子発現に及ぼす影響
3.1U1snRNAと成熟干渉RNA(shRNA)との組み合わせ
阻害についての相乗効果は、阻害剤と同時トランスフェクションした外来遺伝子でのみ機能すると言えるであろう。内在性遺伝子に対して、阻害について相乗効果があったかどうかを知るために、Notch1の阻害を分析した。Notch1は、ウエスタンブロット(図8A)および核NFκBの量を減少する能力により測定した。後者の場合、ルシフェラーゼ遺伝子が、プロモーター下、NFκBにより誘導可能であるプラスミドを使用した(図8B)。阻害は、Notch1に対するshRNAの一回分量または一回分量の半量、U1iαNotch1の一回分量(8マイクログラム)または一回分量の半量(4マイクログラム)、またはshRNAの一回分量の半量とU1iαNotch1の一回分量の半量との混合物の存在下で試験した。結果から、両方の手法を用いて得たときの阻害が、各系を別個に用いたときに得られる阻害よりも大きいことからみて、相乗効果があることが明らかである(図8)。さらに、U1iの一回分量の半量+shRNAの一回分量の半量を用いたときに得られた阻害は、同一のU1iの一回分量または同一のshRNAの一回分量を用いたときに得られた阻害よりも大きいので、相乗効果はしっかりしたものであると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つもしくはいくつかの容器またはパーツからなるキットを含んでなる組成物であって、
(i)少なくともU1snRNAまたはU1snRNAをコードするポリヌクレオチドを含んでなる第一成分であって、前記U1snRNAが、標的プレmRNAの3’末端エクソンの予め選択された領域に特異的に結合するように、イントロンの5’端のGUコンセンサス配列に対する結合配列が修飾されており、かつ前記標的プレmRNAのプロセシングを阻害することができるものである、第一成分と、
(ii)(i)で定義したU1snRNAの標的であり、かつ前記標的mRNAの生体内抑制を生じさせることができる前記プレmRNAのプロセシングから得られるmRNAの予め選択された領域を特異的に標的とする、少なくとも一種の遺伝子発現抑制剤を含んでなる第二成分とを含んでなる、組成物。
【請求項2】
前記第二成分に含まれる抑制剤が、
(i)siRNA、
(ii)miRNA、
(iii)shRNA、
(iv)(i)、(ii)、または(iii)に記載の薬剤をコードするポリヌクレオチド、および
(v)(i)〜(iv)の一つまたはいくつかの薬剤の組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の組成物またはキット。
【請求項3】
成分(ii)が、少なくとも一種のshRNAをコードする配列を含んでなるポリヌクレオチドである、請求項2に記載の組成物またはキット。
【請求項4】
成分(i)が、同じ標的プレmRNAの異なる予め選択された領域に特異的に結合するようにイントロンの5’端のGUコンセンサス配列に対する結合配列が修飾されているU1snRNAをコードするいくつかのポリヌクレオチドを含んでなり、および/または成分(ii)が、(i)で定義したU1snRNAの標的であり、かつ前記標的mRNAの生体内抑制を生じさせることができる前記プレmRNAのプロセシングから得られるmRNAの異なる予め選択された領域を特異的に標的とする、いくつかの遺伝子発現抑制剤を含んでなる、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物またはキット。
【請求項5】
前記第二成分が抑制剤をコードするポリヌクレオチドであり、前記ポリヌクレオチドと第一成分を構成しているポリヌクレオチドが単一のベクターの一部分を形成する、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物またはキット。
【請求項6】
前記単一のベクターが、ウイルスベクターである、請求項5に記載の組成物またはキット。
【請求項7】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、SV40、およびアルファウイルスからなる群から選択されるものである、請求項6に記載の組成物またはキット。
【請求項8】
(i)標的プレmRNAの3’末端エクソンの予め選択された領域に特異的に結合するように、イントロンの5’端のGUコンセンサス配列に対する結合配列が修飾されており、かつ前記標的プレmRNAのプロセシングを阻害することができる、少なくとも一種のU1snRNAをコードする配列と、
(ii)(i)で定義したポリヌクレオチドによりコードされている前記U1snRNAの標的であり、かつ前記標的mRNAの生体内抑制を生じさせることができる、前記プレmRNAのプロセシングから得られるmRNAの予め選択された領域を特異的に標的とする抑制剤をコードする配列と
を含んでなる、ポリヌクレオチド。
【請求項9】
抑制剤をコードする配列が、少なくとも一種のsiRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖を含んでなり、少なくとも一種のプレmiRNAまたは少なくとも一種のshRNAをコードする、請求項8で定義されるポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記配列(i)および(ii)が、発現調節領域に動作可能に結合してなる、請求項8または9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
配列(i)および(ii)の前記発現調節配列が異なるものである、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含んでなる、発現ベクター。
【請求項13】
前記発現ベクターが、ウイルスベクターである、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、SV40、およびアルファウイルスからなる群より選択されるものである、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
請求項12〜14に記載のベクターを含んでなる、細胞。
【請求項16】
ゲノム中に組み込まれた請求項8〜11に記載のポリヌクレオチド、請求項12〜14のいずれかに記載のベクター、または請求項15に記載の細胞を含んでなる非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項17】
医学分野での使用または薬剤としての使用のための、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物またはキット、請求項8〜11のいずれかに記載のポリヌクレオチド、請求項12〜14のいずれかに記載のベクター、または請求項15に記載の細胞。
【請求項18】
感染症疾患、腫瘍性疾患、新生物疾患、または神経変性疾患の治療または予防のための、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物またはキット、請求項8〜11のいずれかに記載のポリヌクレオチド、請求項12〜14のいずれかに記載のベクター、または請求項15に記載の細胞。
【請求項19】
感染症疾患、腫瘍性疾患、新生物疾患、または神経変性疾患の治療または予防のための薬剤調製用の請求項1〜7のいずれかに記載の組成物またはキット、請求項8〜11のいずれかに記載のポリヌクレオチド、請求項12〜14のいずれかに記載のベクター、または請求項15に記載の細胞の使用。
【請求項20】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物またはキット、請求項8〜11のいずれかに記載のポリヌクレオチド、請求項12〜14のいずれかに記載のベクター、または請求項15に記載の細胞を、それを必要としている患者に投与することを含んでなる、感染症疾患、腫瘍性疾患、新生物疾患、または神経変性疾患の治療方法。
【請求項21】
前記感染症疾患は、ウイルスにより引き起こされる感染症疾患である、請求項18に記載の組成物またはキット、請求項19に記載の使用、または請求項20で定義される方法。
【請求項22】
ウイルスによって引き起こされる感染症疾患が、HBV、HCV、またはHIVによる感染である、請求項21に記載の組成物、キット、または方法。
【請求項23】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物またはキット、請求項8〜11のいずれかに記載のポリヌクレオチド、請求項12〜14のいずれかに記載のベクター、または請求項15に記載の細胞、および薬学的に許容される担体を含んでなる医薬組成物。
【請求項24】
前記第一成分および前記第二成分を同時、逐次または別個に使用することについての説明書を備えてなる、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物またはキット。
【請求項25】
同時使用、分別使用、または逐次使用のための組み合わせ製剤としての、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物またはキット。
【請求項26】
生体系における標的遺伝子発現の生体外または生体内転写後阻害の非治療的方法であって、前記系を、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物、請求項8〜11のいずれかに記載のポリヌクレオチド、請求項12〜14のいずれかに記載のベクター、または請求項15に記載の細胞と接触させることを含んでなる、方法。
【請求項27】
前記生体モデルが、動物モデルである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記転写後阻害が、同じ機能的経路に関与する2つ以上の標的mRNAの阻害を含む、請求項26または27に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2011−510647(P2011−510647A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544739(P2010−544739)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/ES2009/000045
【国際公開番号】WO2009/095517
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(506061716)プロイェクト、デ、ビオメディシナ、シーマ、ソシエダッド、リミターダ (34)
【氏名又は名称原語表記】PROYECTO DE BIOMEDICINA CIMA, S.L.
【Fターム(参考)】